説明

エンコーダ

【課題】受光素子が発生する信号のうちエンコーダ信号に寄与しない直流成分が比較的大きいエンコーダにおいても、低電圧で利用したい場合や、所望の変位検出精度を実現したい場合の両者に対応することができるようにすること。
【解決手段】所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1とエンコーダヘッド2との相対変移を検出するエンコーダにおいて、上記エンコーダヘッド2は、上記エンコーダの出力が1相以上の周期性を有するエンコーダ信号であるときに、上記エンコーダ信号の振幅中心に設定する基準電圧を発生する基準電圧発生回路24と、上記基準電圧発生回路24で発生した基準電圧を変更する基準電圧可変手段25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールとエンコーダヘッドとの相対変移を検出するエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、位相の異なる複数の周期信号を発生するようにしたものである。これらの出力は、サイクルを計数するための処理回路に供給して、進行方向、位置、変位、変位速度などを測定することができる。
【0003】
図6は、例えば特許文献1に開示されているような従来のエンコーダの構成を示す図である。光源101には、その印加電流を決める抵抗102が直列に接続されている。上記光源101からの光は、上記光源101に対して相対的に移動する、周期的な光学パターンを有するスケール103に照射され、該スケール103からの反射光、回折光、散乱光、透過光などの強度変化によって、上記スケール103の移動量を検出するための受光素子104A,104Bに入射する。上記受光素子104Aと104Bとは、互いに位相が180度異なる配置となっている。
【0004】
上記受光素子104A,104Bが発生する光電流は、それぞれ抵抗105Aと演算増幅器106A、及び抵抗105Bと演算増幅器106Bからなる電流/電圧変換回路に入力され、それぞれ電圧信号VPA,VPABに変換される。上記電圧信号VPA,VPABには、スケール103からの強度変化の成分である交流成分以外に、一定の強度の光成分である直流成分と、上記電圧信号VPA,VPABの両者に等しく乗っているノイズとが含まれる。それらを除去するために、減算手段107において、VREF−(VPAB−VPA)なる演算が行われる。ここで、VREFは基準電圧である。以上によって強度変化のみを信号成分とする周期信号VAが得られる。ここで、上記基準電圧VREFは、抵抗108と109で電源電圧VCCを分圧することで発生され、演算増幅器106A,106Bや減算手段107に供給されて、周期信号の基準としている。
【0005】
なお、エンコーダは、図6に示すような信号処理を行い、位相の異なる複数の周期信号を得て、エンコーダ信号としている。
【0006】
またエンコーダは、上記に得た例えば位相差が90度の2相の周期信号からさらに位相を数十から数千に分割してさらに細かい変位を検出することもできる。
【特許文献1】特開平6−26817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで従来は、上記交流成分と、上記直流成分とをそれぞれの上記受光素子104Aと104Bとに対応した電流/電圧変換回路に供給して電圧信号に変換し、その後、位相が180度異なる上記電流/電圧変換回路にて変換された電圧信号同士を上記減算手段107にて引き算することにより、略等しく含まれる上記直流成分を無くしていた。また、エンコーダのノイズの少ない所定の電圧変化量を有するエンコーダ信号を得るためには、上記電流/電圧変換回路において十分大きな電圧信号として、上記減算手段107での増幅はなるべく行わないことが望ましくなる。
【0008】
ところで、小型化、低価格化、電源電圧の低電圧化を図るために、光透過性樹脂の中に光源と受光素子と光源ドライバ、信号処理回路などを搭載したIC(受光素子を同一ICに混載しても良い)などを実装することが考えられる。しかしながら、そのような構成とした場合、上記スケール103からの反射光、回折光、散乱光などに伴う交流成分と直流成分以外に、樹脂の中で反射、散乱されてスケール103と受光素子104A,104Bとの相対変位による強度変化がない上記直流成分が従来より大きな割合として発生する。このようなエンコーダの場合、従来の構成では、エンコーダ信号に寄与しない上記直流成分が大きくなるため、電流/電圧変換回路などの信号変換時において、受光素子104A,104Bが発生した交流成分の電流信号を十分振幅の大きな電圧信号として後段へ伝えることができなかったり、電流/電圧変換回路の出力レンジを振り切り、エンコーダ信号が歪んだり、後段に信号が伝わらないなどの問題が発生する。この問題は、特に電源電圧VCCが小さいときに顕著である。また、このようなエンコーダ信号は、エンコーダ信号を逓倍して高分解能な変位検出を行おうとしても、エンコーダ信号の振幅から位相角を求めて逓倍を行うにもかかわらず振幅が小さかったりSN比が悪いなどから、高精度に出来ないという問題にもなる。
【0009】
低電圧化した場合の問題は、反射型のエンコーダに限らず、透過型のエンコーダについても同様である。
【0010】
本発明は、この点に注目し、受光素子が発生する信号のうちエンコーダ信号に寄与しない直流成分が比較的大きいエンコーダにおいても、低電圧で利用したい場合や、所望の変位検出精度を実現したい場合の両者に対応することが可能な構成のエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエンコーダの一態様は、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールとエンコーダヘッドとの相対変移を検出するエンコーダにおいて、
上記エンコーダヘッドは、
上記エンコーダの出力が1相以上の周期性を有するエンコーダ信号であるときに、上記エンコーダ信号の振幅中心に設定する基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
上記基準電圧発生回路で発生した基準電圧を変更する可変手段と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールと、エンコーダヘッドとの相対変位によりエンコーダヘッドが出力する周期的なエンコーダ信号において、エンコーダ信号の中心電圧である基準電圧を変更できる構成となっているため、低電圧で利用したい場合と、所望の変位検出精度を実現したい場合とで、それぞれの場合に適した基準電圧を設定できるので、両者に対応したエンコーダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。
【0015】
即ち、該エンコーダは、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1と、エンコーダヘッド2とからなり、上記エンコーダスケール1と上記エンコーダヘッド2とは、相対変位する。
【0016】
上記エンコーダヘッド2は、光源21(可干渉光源を含む)を搭載している。この光源21が出射した光は、上記エンコーダスケール1を照射して反射,回折,散乱が起こり、上記エンコーダヘッド2に再度入射する。この再度入射した光は、上記エンコーダスケール1と上記エンコーダヘッド2との相対変位に伴って光量が変化し、この変化する光の信号を受光素子22で検出する。上記受光素子22が検出した信号は、信号処理回路23へ供給され、該信号処理回路23にてエンコーダ信号に変換されて、上記エンコーダヘッド2の出力信号となる。なお、上記信号処理回路23は、図6に示した従来のエンコーダについて説明したとおり、上記受光素子22で発生した電流信号を電流/電圧変換回路で電圧信号に変換し、変位に依存しない信号成分を除去する。また、後述する第4実施形態で説明するように、所定のゲインを掛ける回路などを含んでも良い。
【0017】
上記エンコーダヘッド2(信号処理回路23)が出力する信号は、図2に示すような略正弦波状の信号である。図2で示している略正弦波状の信号は、位相差が90度の2相のエンコーダ信号を表している。これらのエンコーダ信号振幅の中心の電圧は、基準電圧に等しい。この基準電圧は、図1の上記エンコーダヘッド2内で発生することもでき、基準電圧発生回路24で発生させる。そして、該基準電圧発生回路24で発生した基準電圧を信号処理回路23に供給し、上記エンコーダヘッド2の出力信号であるエンコーダ信号の基準電圧として利用したり、信号処理の基準電圧として利用したりする。また、上記光源21の駆動回路(図示せず)も、この基準電圧を利用して駆動しても良い。
【0018】
そして、上記基準電圧発生回路24で発生する基準電圧は、基準電圧可変手段25により、所定の電圧から異なる電圧に変化させることができる構成となっている。
【0019】
上記構成によれば、上記エンコーダスケール1と上記エンコーダヘッド2との相対変位により上記受光素子22が出力した信号を電流/電圧変換回路にて電圧信号に変換する際、変位に依存しない信号成分や、変位に伴う信号成分の大きさや、電源電圧による電流/電圧変換回路が歪みなく処理することのできる入出力レンジの余裕に応じて、基準電圧可変手段25において変化させることにより、用途によって上記エンコーダヘッド2が適切なエンコーダ信号を出力することが可能となる。
【0020】
例えば、周期信号であるエンコーダ信号の1/4周期の分解能を得ることができれば良いが、電源電圧は極力下げたいという場合には、電流/電圧変換回路の基準電位を電流/電圧変換回路のレンジを最大限にとることができる値に設定し、エンコーダ信号の基準電圧を電源電圧の略1/2程度に設定する。このような設定とすると、低い電源電圧においてもノイズに対して最大限に大きな信号を得ることができる。また、電源電圧は定めないが、分解能をエンコーダ信号1周期の数千分の一に分割したり、分割した信号の間隔をより等しくしてリニアリティを向上させたい場合には、電源電圧を適度な大きさに設定し、電流/電圧変換回路、及びエンコーダ信号の基準電圧ともに電源電圧の略1/2程度に設定するか、エンコーダ信号の基準については受信する側の回路の中心電位付近に合わせると良い。
【0021】
なお、電源電圧の略1/2の電圧は、電源電圧とGNDとの間に抵抗値の等しい直列抵抗を設置し、中間から得る方法も考えることができるが、この場合、電源のノイズやリップル、及び変動の影響がエンコーダ信号に影響を与える可能性があり、好ましくない。
【0022】
以上のような本発明の第1実施形態によれば、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1と、エンコーダヘッド2との相対変位によりエンコーダヘッド2が出力する周期的なエンコーダ信号において、エンコーダ信号の中心電圧である基準電圧を可変できる構成となっているため、エンコーダヘッド2を動作させる電源電圧の少なくとも2電位以上の場合にエンコーダの性能を区別することができるようになる。したがって、電源電圧が小さな値から利用したいエンコーダヘッドであっても、電源電圧が高い場合にはエンコーダ信号のSN比が良く、歪みの少ない略正弦波状のエンコーダ信号、つまり、高い位相分割が可能であり、且つ、位相間隔がより等しいリニアリティの高い信号を出力するエンコーダヘッドとしても利用することが可能となる。
【0023】
即ち、本実施形態によれば、1つのエンコーダヘッド2で、複数のそれも用途が異なる場面、つまり、電源電圧が低く分解能の低い用途から、分解能が求められる用途まで幅広く利用することができるエンコーダを提供することを可能としている。
【0024】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0025】
図3は、本第2実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。なお、図1と同じ構成物については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0026】
即ち、本実施形態に係るエンコーダは、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1と相対変位するエンコーダヘッド3を備え、該エンコーダヘッド3は、光源21、受光素子22、信号処理回路23、基準電圧発生回路24、選択手段31、及びバンドギャップリファレンス回路32を備えている。
【0027】
本実施形態においては、上記基準電圧発生回路24は、複数の基準電圧(基準電圧1、…、基準電圧n)を発生し、上記選択手段31は、これらの中から各使用状態に応じてひとつを選択して上記信号処理回路23に供給する。なお、上記選択手段31は、当該エンコーダヘッド3の外部よりの指示により、選択設定される。
【0028】
また、上記バンドギャップリファレンス回路32は、電源電圧や、温度変化に対する電圧変化を極力抑え、一定の電圧を発生する回路である。上記基準電圧発生回路24は、このように、使用する際の温度や、リップルやノイズの載った電源電圧によらず、略一定の電圧を発生することが可能なバンドギャップリファレンス回路32が出力する電圧を利用する構成としている。
【0029】
以上のような本実施形態によれば、予め想定しておいた各利用状況における基準電圧を準備しておくことができ、また、各利用状況に応じて指示する設定を選択することができるようになるため、一構成のエンコーダをエンコーダの利用者の目的に応じて使い分けることができるようになる。
【0030】
なお、上記複数の基準電圧(基準電圧1、…、基準電圧n)は、選択手段31でひとつを選択してエンコーダ信号の基準電圧として選択することができるようにしているが、他の信号処理回路で必要な電流/電圧変換回路の基準電圧や、光源21の駆動回路(図示せず)の基準電圧など、複数個所に必要な基準電圧を利用状況ごとに異なる基準電圧の組み合わせで選択することができるようにしても良い。
【0031】
また、図3では、基準電圧発生回路24を一つで記載しているが、複数としても良いことは勿論である。
【0032】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0033】
図4は、本第3実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。なお、図1及び図3と同じ構成物については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0034】
即ち、本実施形態に係るエンコーダは、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1と相対変位するエンコーダヘッド4を備え、該エンコーダヘッド4は、光源21、受光素子22、信号処理回路23、選択手段31、バンドギャップリファレンス回路32、第1基準電圧発生回路411、第2基準電圧発生回路412、スイッチ421,422、回路動作停止/動作手段43、及び記憶手段44を備えている。
【0035】
本実施形態においては、基準電圧を発生する回路として第1基準電圧発生回路411と第2基準電圧発生回路412とがあり、これらが発生する基準電圧を信号処理回路23へ供給する際に、選択手段31がどちらかを選択する。上記第1基準電圧発生回路411,第2基準電圧発生回路412と信号処理回路23との間には、スイッチ421,422が配置され、該スイッチ421,422は、上記選択手段31の選択に応じて相補的にON/OFFが切り換えられる。
【0036】
また、回路動作停止/動作手段43は、上記第1基準電圧発生回路411及び第2基準電圧発生回路412のうちの使用しない回路について、回路動作に必要な電力を遮断するものであり、これにより、消費電流を削減させることが可能となっている。この回路動作停止/動作手段43は、上記選択手段31から指示を受けて制御を行っている。
【0037】
さらに、上記選択手段31で選択した設定は、記憶手段44に記憶しておき、この記憶手段44の設定により、上記スイッチ421,422や回路動作停止/動作手段43を動作させる。この記憶手段44としては、電気的なメモリによる記憶方法のほか、複数の端子間をワイヤーボンドで接続する方法、バンプで接続する方法や、銀ペーストで接続する方法など、導電性のある接続部材で物理的に接続する記憶方法などでも効果に変わりは無い。
【0038】
なお、上記選択手段31は、当該エンコーダヘッド4の外部よりの指示により、選択設定される。
【0039】
以上のような本実施形態によれば、予め想定しておいた各利用状況における基準電圧を準備しておくことができ、また、各利用状況に応じて指示する設定を選択することができるようになるため、一構成のエンコーダをエンコーダの利用者の目的に応じて使い分けることができるようになる。
【0040】
また、使用していないときの回路を停止しておくので、エンコーダの消費電力も低く抑えることができる。さらに、選択手段31の選択設定内容を記憶する記憶手段44を有しているので、当該エンコーダの利用方法が決まった段階で、予め選択設定をしておくことができる。従って、該エンコーダの使用者が各設定をしなくても利用できる。
【0041】
なお、図4では、基準電圧発生回路を2系統、スイッチを2系統の場合で説明したが、数に制限は無く、任意の系統を配置しても効果に変わりは無い。
【0042】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0043】
図5は、本第4実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。なお、図1、図3及び図4と同じ構成物については、同じ参照符号を付すことで、その説明を省略する。
【0044】
即ち、本実施形態に係るエンコーダは、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケール1と相対変位するエンコーダヘッド5を備え、該エンコーダヘッド5は、光源21、受光素子22、信号処理回路23、選択手段31、バンドギャップリファレンス回路32、第1基準電圧発生回路411、第2基準電圧発生回路412、スイッチ421,422、回路動作停止/動作手段43、及び電源電圧判定手段51を備えている。また、上記信号処理回路23は、当該信号処理回路23内のエンコーダ信号に所定のゲインを与えるゲイン切替手段52を有している。
【0045】
ここで、上記電源電圧判定手段51は、該エンコーダヘッド5に印加される電源電圧の電圧を少なくとも2段階以上で判別する構成となっており、例えば3Vと5Vとを識別する手段である。
【0046】
また、上記ゲイン切替手段52は、選択手段31によって設定されるエンコーダ信号の基準電圧に応じて、出力するエンコーダ信号の振幅を変える構成となっている。
【0047】
以上のような本実施形態によれば、エンコーダ利用者が必要な電源電圧を供給するだけで、予め設定してある少なくとも2種類以上の設定で利用することが可能となる。例えば、3Vを印加した場合には、分解能やリニアリティを多少犠牲にしてもよい場合の設定としてあり、選択手段31によって例えば1.5V程度の基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路411が選択され、ゲイン切替手段52は、同じく選択手段31によってエンコーダヘッド5が出力するエンコーダ信号振幅が1VPP程度になる小さなゲインを選択されるようにすることができる。また、例えば、電源電圧に5Vを印加した場合には、分解能やリニアリティを求めてよい場合の設定として、選択手段31によって例えば2.5V程度の基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路412が選択され、ゲイン切替手段52は、同じく選択手段31によってエンコーダヘッド5が出力するエンコーダ信号振幅が3VPP程度になる所定のゲインを選択されるようにすることができる。
【0048】
以上、第1乃至第4実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0049】
例えば、各実施形態中の構成物が一部なかったり、他の実施形態中に記載してきた構成物を持ち込んでも、基本的な効果が同じであることは明白である。
【0050】
また、上記エンコーダヘッド2乃至5の構成は、当該エンコーダヘッド中で共に構成することができる構成物を半導体基板上に構成することにより、非常に小型のエンコーダヘッドを安価に、また多用途用に実現することが可能となる。
【0051】
なお、各実施形態は、反射型のエンコーダについて記載してきたが、透過型のエンコーダについても、本発明は同様に適用可能である。
【0052】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0053】
(1) 所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールとエンコーダヘッドとの相対変移を検出するエンコーダにおいて、
上記エンコーダヘッドは、
上記エンコーダの出力が1相以上の周期性を有するエンコーダ信号であるときに、上記エンコーダ信号の振幅中心に設定する基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
上記基準電圧発生回路で発生した基準電圧を変更する可変手段と、
を具備することを特徴とするエンコーダ。
【0054】
(対応する実施形態)
この(1)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第1乃至第4実施形態が対応する。それらの実施形態において、エンコーダスケール1が上記エンコーダスケールに、エンコーダヘッド2乃至5が上記エンコーダヘッドに、基準電圧発生回路24、第1,第2基準電圧発生回路411,412が上記基準電圧発生回路に、基準電圧可変手段25、選択手段31、選択手段31,スイッチ421,422,記憶手段44、選択手段31,スイッチ421,422,電源電圧判定手段51が上記可変手段に、それぞれ対応する。
【0055】
(作用効果)
この(1)に記載のエンコーダによれば、所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールと、エンコーダヘッドとの相対変位によりエンコーダヘッドが出力する周期的なエンコーダ信号において、エンコーダ信号の中心電圧である基準電圧を可変できる構成となっているため、エンコーダヘッドを動作させる電源電圧の少なくとも2電位以上の場合にエンコーダの性能を区別することができるようになる。したがって、電源電圧が小さな値から利用したいエンコーダヘッドであっても、電源電圧が高い場合にはエンコーダ信号のSN比が良く、歪みの少ない略正弦波状のエンコーダ信号、つまり、高い位相分割が可能であり、且つ、位相間隔がより等しいリニアリティの高い信号を出力するエンコーダヘッドとしても利用することが可能となる。
【0056】
(2) 上記基準電圧発生回路は、複数の基準電圧を発生し、
上記可変手段は、上記複数の電圧のなかから1つを選択する選択手段を有することを特徴とする(1)に記載のエンコーダ。
【0057】
(対応する実施形態)
この(2)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第2乃至第4実施形態が対応する。それらの実施形態において、選択手段31が上記選択手段に対応する。
【0058】
(作用効果)
この(2)に記載のエンコーダによれば、予め想定しておいた各利用状況における基準電圧を準備しておくことができ、また、各利用状況に応じて指示する設定を選択することができるようになるため、一構成のエンコーダをエンコーダの利用者の目的に応じて使い分けることができるようになる。
【0059】
(3) 上記基準電圧発生回路は、バンドギャップリファレンス回路で発生した一定の電圧を基にして上記複数の基準電圧を発生することを特徴とする(2)に記載のエンコーダ。
【0060】
(対応する実施形態)
この(3)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第2乃至第4実施形態が対応する。それらの実施形態において、バンドギャップリファレンス回路32が上記バンドギャップリファレンス回路に対応する。
【0061】
(作用効果)
この(3)に記載のエンコーダによれば、使用する際の温度や、リップルやノイズの載った電源電圧によらず、略一定の電圧を利用できるので、一定の基準電圧を発生することができる。
【0062】
(4) 上記可変手段は、上記選択手段の選択に応じて、上記複数の基準電圧から1つを切り替え出力するスイッチを更に有することを特徴とする(2)又は(3)に記載のエンコーダ。
【0063】
(対応する実施形態)
この(4)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第3及び第4実施形態が対応する。それらの実施形態において、スイッチ421,422が上記スイッチに対応する。
【0064】
(作用効果)
この(4)に記載のエンコーダによれば、スイッチを用いることで、確実な切り替えが行える。
【0065】
(5) 上記可変手段は、電源電圧の値を判定する判定手段を更に有し、
上記選択手段は、上記判定手段によって判定された上記電源電圧の値によって上記複数の電圧のなかから1つを選択することを特徴とする(2)乃至(4)の何れかに記載のエンコーダ。
【0066】
(対応する実施形態)
この(5)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第4実施形態が対応する。その実施形態において、電源電圧判定手段51が上記判定手段に対応する。
【0067】
(作用効果)
この(5)に記載のエンコーダによれば、エンコーダ利用者が必要な電源電圧を供給するだけで、予め設定してある少なくとも2種類以上の設定で利用することが可能となる。
【0068】
(6) 上記可変手段は、上記スイッチの設定を記憶しておく記憶部を更に有し、
上記選択手段は、上記記憶部に記憶された上記スイッチの設定に従って上記スイッチを切り替えることを特徴とする(4)に記載のエンコーダ。
【0069】
(対応する実施形態)
この(6)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第3実施形態が対応する。その実施形態において、記憶手段44が上記記憶部に対応する。
【0070】
(作用効果)
この(6)に記載のエンコーダによれば、当該エンコーダの利用方法が決まった段階で、予め選択設定をしておくことができるので、該エンコーダの使用者が各設定をしなくても利用できる。
【0071】
(7) 上記記憶部は、上記スイッチの設定を電気的に記憶するメモリ手段であることを特徴とする(6)に記載のエンコーダ。
【0072】
(対応する実施形態)
この(7)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第3実施形態が対応する。
【0073】
(作用効果)
この(7)に記載のエンコーダによれば、選択設定内容を書き替えることが可能となる。
【0074】
(8) 上記記憶部は、上記スイッチの設定を物理的な回路接続によって記憶する導電性接続手段であることを特徴とする(6)に記載のエンコーダ。
【0075】
(対応する実施形態)
この(8)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第3実施形態が対応する。
【0076】
(作用効果)
この(8)に記載のエンコーダによれば、確実に選択設定内容を記憶できる。
【0077】
(9) 上記エンコーダヘッドは、上記基準電圧の変更に伴って、上記1相以上の周期性を有するエンコーダ信号振幅の大きさを変更させる手段を更に具備することを特徴とする(1)乃至(8)の何れかに記載のエンコーダ。
【0078】
(対応する実施形態)
この(9)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第4実施形態が対応する。その実施形態において、ゲイン切替手段52が上記エンコーダ信号振幅の大きさを変更させる手段に対応する。
【0079】
(作用効果)
この(9)に記載のエンコーダによれば、基準電圧に応じて最適なエンコーダ信号振幅が得られる。
【0080】
(10) 上記基準電圧発生回路は、上記複数の基準電圧を発生するための複数の電圧発生回路を有し、
上記エンコーダヘッドは、上記複数の電圧発生回路のうち、上記選択手段で選択していない基準電圧を発生する電圧発生回路の動作を停止させる回路動作停止/動作手段を更に具備することを特徴とする(2)乃至(8)の何れかに記載のエンコーダ。
【0081】
(対応する実施形態)
この(10)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第3及び第4実施形態が対応する。それらの実施形態において、第1,第2基準電圧発生回路411,412に、回路動作停止/動作手段43が上記回路動作停止/動作手段に、それぞれ対応する。
【0082】
(作用効果)
この(10)に記載のエンコーダによれば、使用していないときの回路を停止しておくので、エンコーダの消費電力を低く抑えることができる。
【0083】
(11) 上記エンコーダヘッドは、半導体回路として構成されることを特徴とする(1)乃至(10)の何れかに記載のエンコーダ。
【0084】
(対応する実施形態)
この(11)に記載のエンコーダに関する実施形態は、第1乃至第4実施形態が対応する。
【0085】
(作用効果)
この(11)に記載のエンコーダによれば、非常に小型のエンコーダヘッドを安価に、また多用途用に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。
【図2】図2は、エンコーダ信号を説明するための波形図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第4実施形態に係るエンコーダの構成を示す図である。
【図6】図6は、従来のエンコーダの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1…エンコーダスケール、 2〜5…エンコーダヘッド、 21…光源、 22…受光素子、 23…信号処理回路、 24…基準電圧発生回路、 25…基準電圧可変手段、 31…選択手段、 32…バンドギャップリファレンス回路、 43…回路動作停止/動作手段、 44…記憶手段、 51…電源電圧判定手段、 52…ゲイン切替手段、 411…第1基準電圧発生回路、 412…第2基準電圧発生回路、 421,422…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期のパターンが形成されたエンコーダスケールとエンコーダヘッドとの相対変移を検出するエンコーダにおいて、
前記エンコーダヘッドは、
前記エンコーダの出力が1相以上の周期性を有するエンコーダ信号であるときに、前記エンコーダ信号の振幅中心に設定する基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
前記基準電圧発生回路で発生した基準電圧を変更する可変手段と、
を具備することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記基準電圧発生回路は、複数の基準電圧を発生し、
前記可変手段は、前記複数の電圧のなかから1つを選択する選択手段を有することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記基準電圧発生回路は、バンドギャップリファレンス回路で発生した一定の電圧を基にして前記複数の基準電圧を発生することを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記可変手段は、前記選択手段の選択に応じて、前記複数の基準電圧から1つを切り替え出力するスイッチを更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記可変手段は、電源電圧の値を判定する判定手段を更に有し、
前記選択手段は、前記判定手段によって判定された前記電源電圧の値によって前記複数の電圧のなかから1つを選択することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記可変手段は、前記スイッチの設定を記憶しておく記憶部を更に有し、
前記選択手段は、前記記憶部に記憶された前記スイッチの設定に従って前記スイッチを切り替えることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記記憶部は、前記スイッチの設定を電気的に記憶するメモリ手段であることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記記憶部は、前記スイッチの設定を物理的な回路接続によって記憶する導電性接続手段であることを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記エンコーダヘッドは、前記基準電圧の変更に伴って、前記1相以上の周期性を有するエンコーダ信号振幅の大きさを変更させる手段を更に具備することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記基準電圧発生回路は、前記複数の基準電圧を発生するための複数の電圧発生回路を有し、
前記エンコーダヘッドは、前記複数の電圧発生回路のうち、前記選択手段で選択していない基準電圧を発生する電圧発生回路の動作を停止させる回路動作停止/動作手段を更に具備することを特徴とする請求項2乃至8の何れかに記載のエンコーダ。
【請求項11】
前記エンコーダヘッドは、半導体回路として構成されることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−97873(P2009−97873A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266769(P2007−266769)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】