説明

エンジンの始動装置及びそれに用いる一方向クラッチ

【課題】 クランク軸をベルトなどの無端伝動部材を介して駆動するようにしたエンジン始動装置Aを、簡単で安価な構成としながら、耐久性の問題を招くことなくエンジン運転中の駆動ロスを低減する。
【解決手段】 ガイドホイール1にケース10を軸心X回りに回転可能に組み付け、そのケース10に支持されたニードルローラ30が揺動可能に支持する揺動プレート40の摩擦面40aとガイドホイール1の摩擦面1aとの間に平ベルト50を巻き掛け、ケース10の回転に伴う慣性力により揺動プレート40を回動させて、これにより平ベルト50の一方のスパンを押圧し、初張力を付与するようにしたベルト式の一方向クラッチCにおいて、その平ベルト50のゴム層に鉄粉を混入し、磁石60によりガイドホイール1の摩擦面1aから離れるように半径方向外方に付勢する。一方向クラッチCのケース10をクランクプーリP1と一体に構成して、それをクランク軸70上に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸を無端伝動部材を介して駆動するようにしたエンジン始動装置に関し、より詳しくは、その始動装置において使用する一方向クラッチの構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃費の低減及びCO2排出量の抑制などを目的として、アイドル時にエンジンを自動で停止するようにした制御システム(アイドルストップシステム)は広く知られている。このようなシステムでは、発進操作等のエンジン再始動要求に対して即座にエンジンを始動しなくてはならないが、始動モータによりクランク軸を駆動する一般的な構成では、その始動モータのピニオンギヤの押し出しやソレノイドの応答遅れなどからタイムラグが発生しやすく、始動時間がやや長くなるきらいがある。
【0003】
また、そのようにエンジンがアイドル状態になる度に停止及び再始動を行うとすると、信号や渋滞などで車両が停止し再発進する度に、ピニオンギヤとフライホイールギヤとの噛み合いによる高周波の騒音が発生して、乗員に不快感を与えるという問題もある。
【0004】
さらに、イグニッションスイッチが操作されたときにのみ始動する通常のシステムに比べると、エンジンの始動回数が格段に多くなることから、前記ピニオンギヤとフライホイールギヤとの噛み合い回数が著しく多くなって、耐久性の問題を生じる虞れもある。
【0005】
そこで、始動モータとエンジンのクランク軸とを例えばVリブドベルトなどの無端伝動部材により連結して、エンジン始動時には、そのベルトなどを介してクランク軸を駆動するというシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このものではエンジン始動後、クランク軸の回転に連れて始動モータが回転しないように、クランク軸とクランクプーリとの間、或いは始動モータの出力軸とモータプーリとの間に一般的な機械式の一方向クラッチを配設して、動力の伝達を遮断するようにしている。
【0006】
ところで、従来から知られている一方向クラッチとしては、前記一般的な機械式のものの他に、例えば特許文献2に記載されているように、2軸間に巻き掛けられたベルトを介して該2軸間でのトルク伝達を行う2軸ベルト伝動機構の原理を応用したもの(以下、ベルト式の一方向クラッチともいう)がある。
【0007】
前記ベルト式一方向クラッチは、互いに相対回転可能に組み付けた2つの回転部材を、それぞれ駆動側及び従動側に連結するとともに、この両者間に摩擦伝動ベルトを巻き掛けてその張力を調整することにより、2つの回転部材が所定の向きに相対回転しようとするときには、該両回転部材間でベルトを介してトルクが伝達されるようにし、一方、該両回転部材が前記とは逆向きに相対回転しようとすると、ベルトが弛んで回転部材が空回りし、これによりトルクが遮断されるようにしている。
【0008】
そのようなベルト式一方向クラッチは、精密機器である一般的な機械式の一方向クラッチに比べて高い精度を要求される部品が少なくて済み、構造が簡単であることから、低コストで製造できるというメリットがある。
【特許文献1】特開2001−153010号公報
【特許文献2】特開平9−317796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記従来からのエンジン始動装置(特許文献1のもの)のようにクランク軸乃至モータ軸に機械式の一方向クラッチを配設した場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、まず、一方向クラッチをクランク軸に(即ちクランク軸とクランクプーリとの間に)配設した場合、このクランクプーリの直径が比較的大きいことから、エンジン始動時にはかなり大きな負荷トルクがかかることになり、信頼性を確保するのが難しい。
【0010】
また、エンジンの始動時と始動後の例えばアイドル運転時などとではエンジン回転数の差が小さいので、クランク軸に配置した場合には回転数差を利用してクラッチを断接、切換えることが難しく、このことからエンジン始動時のクラッチの接続(エンゲージ)不良を招いたり、反対にアイドル運転時などに動力の遮断が不完全なものになってしまい、部品の摩耗による耐久性の低下を招いたりする虞れがある。
【0011】
さらに、仮に前記機械式の一方向クラッチに代えて、前記特許文献2のようなベルト式のものを用いたとしても、このものにおいて動力を遮断するときに前記の如く空回りする回転部材の摩擦面と摩擦伝動ベルトとがエンジンの運転中、滑り続ける状態になることから、前記機械式のものと同様に摩耗による耐久性の低下が懸念される。
【0012】
一方、前記機械式、ベルト式を問わず、一方向クラッチをモータ側に配設すれば、このモータ側のプーリ径がクランク側よりも小さいことから、前記大きな負荷トルクやエンゲージ不良の問題を回避できる可能性はあるが、この場合にはモータ側で動力を遮断する構成となるため、エンジンの運転中はクランク軸によってベルトが常に駆動されることとなり、無駄なエネルギーロスが発生するとともに、そのベルトの耐久性についても不利になる。
【0013】
尚、前記従来技術文献(特許文献1)にも記載されているが、エンジンの始動装置において動力の断接の切換えに電磁クラッチを用いることは、大幅なコストアップ、エンジンの寸法増大及び車両重量の増大など多くの点で問題があり、現実的とは言い難い。
【0014】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クランク軸をベルトなどの無端伝動部材を介して駆動するようにしたエンジンの始動装置において、その駆動力を一方向にのみ伝えるための一方向クラッチの構造に工夫を凝らし、簡単で安価な構成でもって、耐久性の問題を招くことなく、エンジン運転中の駆動ロスを減らせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明では、公知のベルト式一方向クラッチに改良を加えて、動力遮断時に摩擦伝動ベルトが回転部材の摩擦面と非接触状態に保たれるようにした上で、これをエンジンのクランク軸と入出力部材との間に配設した。
【0016】
具体的に、請求項1の発明では、エンジンの始動時にクランク軸を無端伝動部材を介してモータにより駆動するようにしたエンジンの始動装置を対象として、前記無端伝動部材を前記クランク軸及びモータの出力軸にそれぞれ配設された入出力部材と噛み合い伝動するものとし、前記クランク軸とその入出力部材との間に、少なくとも該入出力部材の回転中にその回転方向の駆動力をクランク軸へ伝達するように一方向クラッチを設ける。
【0017】
そして、前記一方向クラッチとして、前記クランク軸に回転一体に連結され、外周側に断面円形状の摩擦面を有する第1の回転部材と、前記クランク軸の入出力部材に回転一体に連結されるとともに、前記第1回転部材にその摩擦面の中心軸線回りに回転可能に組み付けられた第2の回転部材と、前記第1回転部材の摩擦面に巻き掛けられるとともに、その摩擦面の半径方向外方に離間するように前記第2回転部材に設けられた係合部と係合して、それら両回転部材間に2つのスパンを形成する摩擦伝動ベルトと、前記第2回転部材が前記モータからの駆動力によって回転されるときに、この回転に伴う慣性力によって動作して、当該第2回転部材の第1回転部材に対する相対回転により緩み側スパンとなる前記摩擦伝動ベルトの一方のスパンを押圧する可動部材と、前記摩擦伝動ベルトを前記第1回転部材の摩擦面から離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段と、を備えたベルト式のものを採用する構成とする。
【0018】
前記の構成により、エンジンの始動時にモータが作動して、その出力軸上の入出力部材が回転すると、この回転が無端伝動部材を介してクランク軸上の入出力部材に伝達され、この入出力部材と一体に一方向クラッチの第2回転部材が回転するようになる。そして、その回転に伴う慣性力(例えば遠心力)により可動部材が動作して、摩擦伝動ベルトの一方のスパンを押圧することで、この摩擦伝動ベルトが第1回転部材の摩擦面に押し付けられ、両者間に摩擦力が作用するようになる。
【0019】
そのように第2回転部材の回転が始まるときには、クランク軸に連結された第1回転部材は停止しているので、この第1回転部材に対する前記第2回転部材の相対回転により、両者間に巻き掛けられた摩擦伝動ベルトの2つのスパンのうちの一方が緩み側に、また他方が張り側になるが、その緩み側になる一方のベルトスパンが前記のように可動部材によって押圧されているので、摩擦伝動ベルトの張力は維持乃至増大されることになり、この摩擦伝動ベルトを介して前記第1及び第2回転部材の間でトルクが伝達される状態、即ち一方向クラッチがトルクを伝達する状態になる。これにより、モータからの駆動トルクがクランク軸に伝達されて、エンジンが始動する。
【0020】
そうしてエンジンが始動した後にモータが停止すると、そのモータ軸上の入出力部材と無端伝動部材とが停止し、これによりクランク軸上の入出力部材も回転を停止することになるが、一方向クラッチにおいてクランク軸に連結された第1回転部材は回転するので、この第1回転部材は、前記入出力部材とともに停止した第2回転部材に対して前記始動開始時とは逆向きに相対回転することになる。
【0021】
このときには、前記のように第2回転部材が停止していることから可動部材は動作せず、この可動部材によって前記のようにベルトが押圧されることがないため、摩擦伝動ベルトは弛んで第1回転部材との間でトルクを伝達しない状態になる。つまり、一方向クラッチがトルクを遮断する状態になり、クランク軸が回転していても、モータは勿論、無端伝動部材も連れ回りすることがないから、エンジン駆動力の無駄なロスが発生しない。
【0022】
その際、前記一方向クラッチの内部では、クランク軸に連結された第1回転部材は回転するものの、前記のように弛んだ摩擦伝動ベルトが付勢手段により半径方向外方に付勢されて、第1回転部材の摩擦面から離れ、両者が非接触状態に保たれて滑ることがないので、摩耗による耐久性の低下を招くこともない。
【0023】
尚、エンジン始動直後は第2回転部材が惰性で回転しており、これにより可動部材が動作するが、クランク軸の自立回転に伴い、一方向クラッチにおける第1及び第2回転部材の相対回転の向きが始動時とは逆になるので、前記可動部材の動作によって押圧される摩擦伝動ベルトの一方のスパンは張り側スパンになり、このときに緩み側となる他方のベルトスパンでは張力を維持することができないので、摩擦伝動ベルトは速やかに弛んで第1回転部材の摩擦面から離れるようになる。
【0024】
前記のようなベルト式の一方向クラッチは、摩擦伝動ベルトの抗張力を高めるとともに、ベルトの軸荷重を受ける部材の強度を高めることで、機械式のものに比べて容易に耐負荷を大きくできるので、エンジン始動時にかなり大きな負荷トルクがかかるクランク軸に配設しても、問題はない。
【0025】
また、始動装置全体で見ると、無端伝動部材をクランク軸及びモータ軸の各入出力部材と噛み合い伝動するものとしているので、例えば冷間などエンジン始動時のクランク駆動負荷トルクが最も大きくなるときでも滑りが発生することはなく、エンジンを確実に始動できる。
【0026】
そのように噛み合い伝動する部材として、具体的には、無端伝動部材を歯付ベルトとし、入出力部材を歯付ベルト用プーリとすることができる(請求項2の発明)。こうすれば、サイレントチェーンとスプロケットを使用するのに比べて低コストで、静粛且つ確実な動力伝達が行える。
【0027】
次に、前記一方向クラッチのより具体的な構成として、第2回転部材の係合部を、第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に位置する外周に断面円弧状の摩擦面を有するものとし、摩擦伝動ベルトは端部を有しないものとして、前記第1回転部材の摩擦面と第2回転部材の係合部の摩擦面とに跨って巻き掛ける構造とすることができる(請求項3の発明)。こうすれば、第1及び第2回転部材の組み付け時に両者の摩擦面に跨るようにエンドレスの摩擦伝動ベルトを巻き掛けることにより、一方向クラッチの組立が比較的容易なものとなる。
【0028】
その場合に、好ましいのは、前記第1回転部材の摩擦面の半径方向外方において該摩擦面の中心軸線に平行に延びるようにして、第2回転部材に軸部を設けるとともに、前記第2回転部材の係合部を当該第2回転部材とは別体として前記軸部に揺動可能に支持させて、これを可動部材とし、さらに、この可動部材を、前記第2回転部材の回転に伴う慣性力により前記軸部の周りに回動して、摩擦伝動ベルトの一方のスパンを内周側から押圧するように構成することである(請求項5の発明)。
【0029】
このように構成すれば、摩擦伝動ベルトに初張力を付与するための可動部材を、そのベルトが巻き掛けられる係合部と兼用することができ、一方向クラッチの構成をさらに簡単なものとすることができる。このことによってコストのさらなる低減が図られる。
【0030】
或いは、前記一方向クラッチの別の具体構成として、前記第1回転部材の摩擦面に巻き掛けた摩擦伝動ベルトの両端部を、それぞれ、第2回転部材の係合部に止着する構造とすることもできる(請求項4の発明)。
【0031】
また、前記一方向クラッチにおいて摩擦伝動ベルトを第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に付勢する付勢手段は、例えば、摩擦伝動ベルトに磁性体を設けるとともに、第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に離間させて第2回転部材に磁石を設けることによって、比較的簡単に構成することができる(請求項6の発明)。
【0032】
本願の請求項7の発明は、前記のようなエンジン始動装置にて使用できるように改良が施されたベルト式一方向クラッチである。具体的には、外周に断面円形状の摩擦面を有し、駆動側及び従動側のうちの一方に連結される第1の回転部材と、該第1回転部材にその摩擦面の中心軸線回りに回転可能に組み付けられ、前記駆動側及び従動側のうちの他方に連結される第2の回転部材と、前記第1回転部材の摩擦面の半径方向外方において該摩擦面の中心軸線に平行に延びるように前記第2回転部材に設けられた軸部と、前記第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に位置する外周に断面円弧状の摩擦面を有し、前記軸部にその軸心回りに揺動可能に支持された可動部材と、前記第1回転部材の摩擦面と前記可動部材の摩擦面との間に2つのスパンを形成するように巻き掛けられた摩擦伝動ベルトと、を備えたベルト式一方向クラッチであって、前記可動部材が、前記第2回転部材の回転に伴う慣性力によって、前記軸部の回りに、前記摩擦伝動ベルトの一方のスパンを押圧する向きに回動するように構成されており、また、前記摩擦伝動ベルトを前記第1回転部材の摩擦面から離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段をさらに備えることを特長とするものである。
【0033】
前記構成のベルト式一方向クラッチをエンジンのクランク軸に配置して、エンジン始動時には無端伝動部材を介してモータ側からクランクプーリなどの入出力部材に駆動力を入力し、これを前記一方向クラッチによってクランク軸に伝達するように構成すれば、請求項1の発明と同じ作用が得られる。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明したように、本願発明に係る一方向クラッチ及びそれを用いたエンジン始動装置によると、エンジンのクランク軸と入出力部材との間にベルト式の一方向クラッチを配設し、その一方向クラッチにおいて、クランク軸に連結された第1回転部材の摩擦面から摩擦伝動ベルトが離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段を設けて、動力遮断時には摩擦伝動ベルトが第1回転部材の摩擦面と非接触状態に保たれるようにしたので、両者の摩耗による耐久性の低下を招くことがない。
【0035】
また、クランク軸に設けた一方向クラッチによってトルクを遮断できるので、クランク軸が回転していても、無端伝動部材が連れ回りすることがなく、エンジン駆動力の無駄なロスが発生しない。
【0036】
さらに、比較的構成が簡単で安価なベルト式の一方向クラッチを用いることで、コストの低減が図られるとともに、ベルトの抗張力及びその軸荷重を受ける部材の強度を高めることで、始動時の大きな負荷トルクにも耐えられるものとなる。
【0037】
特に請求項3の発明では、2つの回転部材の摩擦面に跨るようにエンドレスの摩擦伝動ベルトを巻き掛けるだけでよいので、一方向クラッチの組立が容易なものとなる。
【0038】
また、請求項5の発明によると、前記のように摩擦伝動ベルトを巻き掛ける部材の一部を、当該ベルトに初張力を付与するための可動部材として兼用できるので、構成の簡略化によりコストのさらなる低減が図られる。
【0039】
また、請求項6の発明では、摩擦伝動ベルトを第1回転部材の摩擦面と非接触状態に保つための付勢手段を、磁性体と磁石によって簡単に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン始動装置Aの概略構成を示し、この始動装置Aは、それ自体は図示しないエンジンのクランク軸70上にシンクロプーリ(歯付ベルト用プーリ)からなるクランクプーリP1を配設する一方、始動モータ(図示せず)の出力軸S上にも同じくシンクロプーリからなるモータプーリP2を配設し、それら両プーリP1,P2間にシンクロベルトB(歯付ベルト)を巻き掛けてなるものである。
【0042】
前記クランク軸70とクランクプーリP1との間には、該クランクプーリP1の回転方向(図の時計回りの向き)の駆動力をクランク軸70へ伝達するように一方向クラッチCが設けられており、これにより、エンジン始動時には前記シンクロベルトBを介してモータによりクランク軸70を回転駆動することができる一方、エンジン始動後はクランク軸70の回転がモータ側へ伝わらないようになる。
【0043】
尚、図示の符号P3は、シンクロベルトBの緩み側スパンを押圧して、所定の張力状態に維持するためのテンションプーリであり、この他、この実施形態のエンジンには、図示しないが、前記クランク軸70によりベルトを介して補機を駆動する補機駆動システムが並設されている。
【0044】
図2及び図3は、前記クランクプーリP1に配設された一方向クラッチCの構造を示し、この一方向クラッチCは、外周に断面円形状の摩擦面1aを有する平プーリからなるガイドホイール1(第1回転部材)と、このガイドホイール1にその軸心X回りに回転可能に組み付けられるとともに、当該ガイドホイール1の外周側を収容する中空ドーナツ状のケース10(第2回転部材)とを備えている。前記ガイドホイール1は、従動側であるエンジンのクランク軸70に同軸状に連結されており、一方、ケース10は、その外周面全周に亘って前記シンクロベルトBの歯形に対応するピッチで複数の溝部10a,10a,…(図2に1つのみ示す)が形成されていて、それ自体が該シンクロベルトBと噛み合うクランクプーリP1を構成している。
【0045】
前記のガイドホイール1は、そのボス部2においてクランク軸70に連結されるようになっている。このボス部2には、クランク軸70を挿通するための連結孔3が該ボス部2を軸方向に貫通するように設けられており、連結孔3の内周には、クランク軸70にガイドホイール1をキー結合するためのキー溝4(図3にのみ示す)が設けられている。また、ボス部2外周の軸方向中央には、半径方向外方に向かって突出する円板状のディスク部6が周設されていて、このディスク部6の周縁には、該ディスク部6を外周側から覆うように円筒部7が設けられており、この円筒部7の外周面が前記の摩擦面1aとされている。
【0046】
また、前記ボス部2の軸方向両端部の外周には、それぞれ、該ボス部2の軸方向中央部の外周よりも小径の軸受座面5,5が形成されており、これら軸受座面5,5上には、ガイドホイール1にケース10を回転可能に組み付けるための一対のベアリング20,20の内輪が、ガイドホイール1と一体回転するように外嵌合状態で取り付けられている。
【0047】
一方、前記のケース10は、前記ガイドホイール1の軸方向に一側と他側とに2分割され、図2において右側に位置する一側ケース部材11と左側に位置する他側ケース部材12とからなる。これらケース部材11,12の内周側には、対応するベアリング20の外輪上にそれぞれ外嵌合される円筒状の内周壁部11a,12aが軸方向に向かい合うように設けられており、これら内周壁部11a,12aは、対応するベアリング外輪上に回転一体に外嵌合された状態で結合されている。
【0048】
また、前記各ケース部材11,12の外周側には、円筒状の外周壁部11b,12bが軸方向に向かい合うように設けられており、これら外周壁部11b,12bの先端部同士が接合して、両者が一体的にケース10の外周部を構成している。すなわち、前記一側ケース部材11の外周壁部11bには周方向に等間隔を空けて、4つの雌ねじ穴がそれぞれ外周壁部11bの端面に開口するように設けられ、一方、他側ケース部材12の外周壁部12bにはボルト孔が貫通形成されている。そして、4つのボルト13,13,…が、それぞれ前記他側ケース部材12のボルト孔に挿通されて、その先端側が前記一側ケース部材11の雌ねじ穴に螺着されることで、2つのケース部材11,12が一体に結合されている。
【0049】
尚、前記一側ケース部材11の外周壁部11bは、軸方向について他側ケース部材12に比べて長く形成されていて、その一側ケース部材11の外周壁部11bに、シンクロベルトBの歯と噛み合う前記溝部10a,10a,…が形成されている。
【0050】
この実施形態の一方向クラッチCでは、前記ガイドホイール1の摩擦面1aから半径方向外方(図3の上方)に離間して、軸部材であるニードルローラ30がガイドホイール1の軸心Xに平行に延びる軸心Qに沿って配置されている。このニードルローラ30の両端部は、それぞれ、前記各ケース部材11,12の本体部(前記内外周の壁部同士を繋ぐ穴あき円板状の部分)内面に形成されたボス部14,15の軸穴に嵌入されており、これによりニードルローラ30はケース10と一体に回転するようになっている(尚、軸部材はケース10に一体成形してもよい)。
【0051】
前記のニードルローラ30には、ガイドホイール1の摩擦面1aの半径方向外方に位置する外周に断面円弧状の摩擦面40aを有する可動部材としての揺動プレート40が、該ニードルローラ30の軸心Q回りに揺動可能に支持されている。具体的には、揺動プレート40の周方向中央部位に対し周方向一端側(図3の左端側)に偏位した位置には、貫通孔41が軸方向に延びるように設けられており、ニードルローラ30は、この貫通孔41に挿通されて揺動プレート40を支持している。
【0052】
前記ガイドホイール1の摩擦面1aと前記揺動プレート40の摩擦面40aとに跨って、該ガイドホイール1及び揺動プレート40の間に2つのスパンを形成するようにして、摩擦伝動ベルトである平ベルト50が巻き掛けられている。この平ベルト50は、ゴム製であって、内部には心線51が埋設されており、また、ベルト内周面には図外の帆布層が設けられてなる。さらに、この実施形態の平ベルト50には、ゴム層の中に分散するようにして、磁性体である鉄粉が練り込まれている。
【0053】
前記揺動プレート40は、図3のようにガイドホイール1の軸心Xに沿って見て、その揺動中心であるニードルローラ30の軸心Qに対し、揺動プレート40の周方向他端側(図3の右端側)に重心Gが位置している。このため、前記ケース10の回転により遠心力(軸心Xの半径方向の慣性力)が作用すると、揺動プレート40は前記ニードルローラ30の回りに図の反時計回りの向きに回動し、該揺動プレート40の周方向他端側(同図の右端側)が平ベルト50の一方のスパン(図の右側のスパン)を内周側から押圧するようになる。
【0054】
つまり、前記揺動プレート40は、モータからの駆動力により一方向クラッチCのケース10(クランクプーリP1)がシンクロベルトBを介して図の時計回りに回転されるときに、これにより緩み側スパンとなる平ベルト50の一方のスパン(図の右側のスパン)を押圧して、該平ベルト50に初張力を付与するように構成されている。
【0055】
そして、この実施形態の一方向クラッチCでは、前記ガイドホイール1の摩擦面1aから前記揺動プレート40に対し反対側(図3の下方)で半径方向外方に離れた部位に、その摩擦面1aに巻き付いている平ベルト50を囲むように磁石60が配設されている。すなわち、一側ケース部材11の本体部内面から軸方向に延びる延出壁部16が、ガイドホイール1の摩擦面1aを所定間隔を空けて略半周に亘り取り囲むように断面半円形状に形成されていて、この延出壁部16の内周面に接着などにより磁石60が固定されている。
【0056】
そのようにガイドホイール1に巻き付いている平ベルト50を取り囲んで磁石60が配設されていて、一方、その平ベルト50のゴム層に鉄粉が混入されていることから、該平ベルト50には、それを前記ガイドホイール1の摩擦面1aから半径方向外方に引き離すように磁力が作用することになる。そのため、前記のように揺動プレート40の回動によって緩み側スパンが押圧されているとき以外は、平ベルト50はガイドホイール1の摩擦面1aから離れて、該摩擦面1aとは非接触の状態に保たれるようになる。
【0057】
言い換えると、この実施形態の一方向クラッチCには、前記平ベルト50のゴム層に混入された鉄粉と、この平ベルト50からガイドホイール1の摩擦面1aの半径方向外方に離間して設けられた磁石60とからなり、その平ベルト50を前記摩擦面1aから離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段が設けられている。
【0058】
次に、前記の如き構成の一方向クラッチCを備えたエンジン始動装置Aの作動を、図4及び図5を参照して、特に一方向クラッチCの作動状態について詳しく説明する。
【0059】
まず、エンジンの始動時には、モータの作動によりモータプーリP2が回転し、この回転がシンクロベルトBによりクランクプーリP1、即ち一方向クラッチCのケース10に伝達されて、当該ケース10が図4に示すように時計回りに回転するようになる。この回転が始まる瞬間にはクランク軸70に連結されたガイドホイール1は停止しているから、該ガイドホイール1に対する前記ケース10の相対回転によって、両者間に巻き掛けられた平ベルト50の2つのスパンのうちの一方(図の右側のスパン)が緩み側になる。
【0060】
また、前記ケース10の回転により発生する遠心力Fにより、揺動プレート40がニードルローラ30の回りに図の反時計回りに回動して、その周方向他端側(同図の右端側)が、前記緩み側となる平ベルト50の一方のスパン(図の右側のスパン)を内周側から押圧するようになる。これにより平ベルト50はガイドホイール1の摩擦面1a及び揺動プレート40の摩擦面40aに押し付けられ、それぞれ、グリップ力が確保されるようになる(即ち、平ベルト50に初張力が付与される)。
【0061】
そうなると、前記ケース10のガイドホイール1に対する図時計回りの相対回転によって、平ベルト50の同図左側のスパンがケース10の側に引っ張られるようになり、このスパンが張り側スパンになるとともに、このことによっても揺動プレート40には図の反時計回りの回転力が作用する。すなわち、揺動プレート40の周方向他端側(同図右端側)が平ベルト50の同図右側の緩み側スパンを半径方向外方に向かってより強く押圧するようになり、これにより平ベルト50の張力が増加することで、ガイドホイール1からケース10へ平ベルト50を介してトルクが伝達される状態、つまり、一方向クラッチCがトルクを伝達する状態になる。これにより、クランク軸70が駆動されて、エンジンが始動する。
【0062】
そうしてエンジンが始動すると、クランク軸70は自立回転を始め、これに連結されたガイドホイール1が図の時計回りに回転するようになる。そして、始動直後の吹け上がりによってクランク軸70の回転数が急上昇すると、一方向クラッチCにおいてケース10が惰性で前記始動時と同じ向きに回転していても、これをクランク軸70、即ちガイドホイール1の回転上昇が追い越して、このガイドホイール1とケース10とが前記始動時とは逆向きに相対回転するようになる。
【0063】
その際、前記のようにケース10が惰性で回転していれば、その遠心力により揺動プレート40が回動して平ベルト50を押圧することになるが、前記のようにガイドホイール1とケース10との相対回転の向きが始動時とは逆向きになるので、今度は、ガイドホイール1の回転に従って平ベルト50の同図右側のスパンがガイドホイール1の側に引っ張られ、これにより、揺動プレート40は同図の時計回りに回動することになる。
【0064】
つまり、前記エンジン始動時とは逆に、平ベルト50の同図右側のスパンが張り側スパンになるので、揺動プレート40の周方向他端側(同図右端側)は、たとえ遠心力を受けていても、平ベルト50の張り側スパンによりガイドホイール1の側に押されて半径方向内方に変位することになる。即ち、揺動プレート40はニードルローラ30の回りに同図時計回りに回動し、これにより平ベルト50の張力が大幅に低下する。
【0065】
この際、揺動プレート40の周方向一端側(同図左端側)は半径方向外方に変位するので、その分、緩み側スパンが押圧されるようにはなるが、揺動プレート40の前記周方向一端側は、周方向他端側よりも短いので、平ベルト50の張力を増加させる程には押圧できず、結局、張力は速やかに低下して、平ベルト50はガイドホイール1と揺動プレート40との間でトルク伝達を行わない状態になる。
【0066】
これにより、一方向クラッチCにおいてクランク軸70に連結されたガイドホイール1とケース10、即ちクランクプーリP1との間のトルク伝達が遮断されるため、エンジン始動後にモータが停止すれば、図5に示すように、モータプーリP2、シンクロベルトB及びクランクプーリP1(一方向クラッチCのケース10)がいずれも速やかに停止し、クランク軸70に連結されたガイドホイール1のみが時計回りに回転するようになる。こうして、エンジン運転中であってもモータは勿論、シンクロベルトBもクランク軸70と連れ回りすることがないので、エンジン駆動力の無駄なロスが発生しない。
【0067】
また、そのときには、前記のように一方向クラッチCのケース10が停止していることから揺動プレート40には遠心力が作用せず、この揺動プレート40によって前記エンジン始動時のように平ベルト50が押圧されることがない。このため平ベルト50は弛み、図の下側半周の部位が磁石60により引き寄せられて、ガイドホイール1の摩擦面1aから離れ、これにより両者が非接触状態に保たれるようになる。こうしてエンジン運転中は一方向クラッチCの内部でガイドホイール1の摩擦面1aと平ベルト50とが滑らないようになり、摩耗による耐久性の低下を招く虞れがなくなる。
【0068】
したがって、本実施形態に係るエンジン始動装置Aによると、まず、それぞれシンクロプーリからなるクランクプーリP1及びモータプーリP2にシンクロベルトBを巻き掛けて、これによりモータのトルクをエンジンのクランク軸70に伝達するようにしたので、例えば冷間などエンジン始動時のクランク駆動負荷トルクが最も大きくなるときでも、滑りが発生することがなく、エンジンを確実に始動できる。
【0069】
一方で、エンジンの運転中は、クランク軸70に設けた一方向クラッチCによってトルクを遮断できるので、モータは勿論、シンクロベルトBも連れ回りすることがなく、エンジン駆動力の無駄なロスが発生しない。
【0070】
しかも、前記の一方向クラッチCをベルト式のものとして、これによりトルクを遮断する際にはクランク軸側のガイドホイール1の摩擦面1aから平ベルト40が離れるように磁石60により半径方向外方に付勢して、該平ベルト50を摩擦面1aと非接触状態に保つようにしたので、両者の摩耗による耐久性の低下を招くこともない。
【0071】
また、比較的構成が簡単で安価なベルト式の一方向クラッチCを用いることで、コストの低減が図られるとともに、その一方向クラッチCにおいて平ベルト50の抗張力及びその軸荷重を受ける部材の強度を高めれば、始動時の大きな負荷トルクを受けるクランク軸70に配設しても問題は生じない。
【0072】
尚、前記の実施形態では、クランクプーリP1及びモータプーリP2にシンクロベルトBを巻き掛けて、これによりモータのトルクをクランク軸70に伝えるようにしているが、これに限らず、チェーンやスプロケットを用いることもできる。
【0073】
また、前記の実施形態では、一方向クラッチCの第1回転部材を平プーリからなるガイドホイール1によって構成しているが、第1回転部材の形状は要求される条件等に応じて適宜設計することができる。
【0074】
また、前記の実施形態では、一方向クラッチCのケース10を2つのケース部材11,12によって構成しているが、そのように分割する必要がなければ、一体成形するようにしてもよいし、複数の部材に分割する場合でも、分割する部材の数や各分割部材の形状等については、必要に応じて適宜設計することができる。
【0075】
また、前記の実施形態では、一方向クラッチCのケース10により第2回転部材を構成し、さらにクランクプーリP1も一体に構成するようにしているが、第2回転部材の形状については特に限定されないし、ケース10とクランクプーリP1とは別々に構成して組み合わせるようにしてもよい。
【0076】
さらに、前記実施形態の一方向クラッチCでは、可動部材である揺動プレート40をケース10(第2回転部材)の回転による遠心力、即ち半径方向への慣性力によって回動させるようにしているが、これに加えて、ケース10が停止状態から回転を始めるときに周方向に作用する慣性力によっても、前記遠心力と同じ向きに回動させるようにすることができる。
【0077】
すなわち、前記の実施形態では図3に示すように、揺動プレート40の重心Gが、その揺動中心であるニードルローラ30の軸心Qに対して軸心Xの半径方向内方に位置しているため、ケース10が停止状態から図の時計回りに回転し始める瞬間は、図6(a)に模式的に示すように、ニードルローラ30から作用する周方向の力f1と、これにより見かけ上、重心Gに作用する反力f2(周方向の慣性力)とによって、前記軸心Qの回りに図の時計回りの向き(遠心力とは反対向き)の回転モーメントが発生してしまう。
【0078】
そこで、同図(b)に示すように、プレート本体44aの外周側に錘部44bを付加した構造の異形の揺動プレート44を採用し、その重心Gをニードルローラ30の軸心Qに対し軸心Xの半径方向外方に位置付けるようにすれば、ケース10が図の時計回りに回転し始める瞬間に、揺動プレート44には周方向の力f1とその見かけの反力f2(慣性力)によって図の反時計回りの向き(遠心力と同じ向き)の回転モーメントが発生して、平ベルト50を押圧するようになる。このことで、エンジン始動時に一方向クラッチCは、より早くモータからの駆動力をクランク軸70に伝える状態になって、始動時間の短縮が図られる。
【0079】
また、前記実施形態の一方向クラッチCでは、ケース10に揺動可能に支持した揺動プレート40に平ベルト50を巻き掛けて、この平ベルト50の一方のスパンを揺動プレート40自体の回動によって押圧するようにしているが、これに限らず、平ベルト50の一方のスパンを押圧するための可動部材は、この平ベルト50の巻き掛けられる部位(係合部)とは別に設けてもよい。
【0080】
また、エンドレスの平ベルト50をガイドホイール1と揺動プレート40とに跨って巻き掛けるのではなく、ガイドホイール1に巻き掛けた平ベルト50の両端をそれぞれケース10側の係合部に止着するようにしてもよい。
【0081】
さらにまた、前記実施形態の一方向クラッチCでは、ゴム製の平ベルト50により摩擦伝動ベルトを構成しているが、摩擦伝動ベルトとしては、必要とされる抗張力や可撓性を有していて、各摩擦面との間に必要とされる程度の摩擦力を発生させることができるものであれば、例えば金属製のもの等、特に限定されるものではない。
【0082】
また、前記実施形態の一方向クラッチCでは、平ベルト50のゴム層に鉄粉を混入させて、この平ベルト50をガイドホイール1の摩擦面1aから離れるように磁石60により半径方向外方に付勢するようにしているが、これに限らず、ベルト50に鉄板などの磁性体を張り付けて、磁石60により引き寄せるようにしてもよい。
【0083】
加えて、前記の実施形態では、自動車用エンジンの始動装置Aについて説明しているが、本発明に係るエンジンの始動装置は、自動車用に限らず、種々のエンジンに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上、説明したように、本発明は、クランク軸をベルトなどを介して駆動するようにしたエンジンの始動装置において、簡単で安価な構成で且つ耐久性の問題を招くことなく、エンジン運転中の駆動ロスを減らせるものなので、種々のエンジンにおいて有用であり、特にエンジンの始動の頻度が高いハイブリッド自動車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジン始動装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図3のII−II線における一方向クラッチの断面図である。
【図3】一方向クラッチから他側ケース部材などを取り外して、クランク軸と反対の側から見た状態を示す図である。
【図4】エンジン始動時にモータからの駆動トルクを伝える状態を示す模式図である。
【図5】エンジン始動後にクランク軸からのトルクを遮断する状態を示す図4相当図である。
【図6】ケースの回転開始時に周方向の慣性力によって遠心力と同じ向きに回動するようにした他の実施形態に係る揺動プレートの説明図である。
【符号の説明】
【0086】
A エンジン始動装置
B シンクロベルト(歯付ベルト)
C 一方向クラッチ
P1 クランクプーリ(歯付ベルト用プーリ)
P2 モータプーリ(歯付ベルト用プーリ)
1 ガイドホイール(第1回転部材)
1a 摩擦面
10 ケース(第2回転部材)
30 軸部材(軸部)
40 揺動プレート(可動部材)
40a 摩擦面
50 平ベルト(摩擦伝動ベルト)
60 磁石(付勢手段)
70 クランク軸
X 回転軸心(第1回転部材の摩擦面の中心軸線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの始動時にクランク軸を、無端伝動部材を介してモータにより駆動するようにしたエンジンの始動装置であって、
前記無端伝動部材は、前記クランク軸及びモータの出力軸にそれぞれ配設された入出力部材と噛み合い伝動するものであり、
前記クランク軸とその入出力部材との間で、少なくとも当該入出力部材の回転中にその回転方向の駆動力をクランク軸へ伝達するように一方向クラッチが設けられ、
前記一方向クラッチが、
前記クランク軸に回転一体に連結され、外周側に断面円形状の摩擦面を有する第1の回転部材と、
前記クランク軸の入出力部材に回転一体に連結されるとともに、前記第1回転部材にその摩擦面の中心軸線回りに回転可能に組み付けられた第2の回転部材と、
前記第1回転部材の摩擦面に巻き掛けられるとともに、その摩擦面の半径方向外方に離間するように前記第2回転部材に設けられた係合部と係合して、該両回転部材間に2つのスパンを形成する摩擦伝動ベルトと、
前記第2回転部材が前記モータからの駆動力によって回転されるときに、この回転に伴う慣性力によって動作して、当該第2回転部材の第1回転部材に対する相対回転により緩み側スパンとなる前記摩擦伝動ベルトの一方のスパンを押圧する可動部材と、
前記摩擦伝動ベルトを前記第1回転部材の摩擦面から離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段と、
を備えていることを特長とするエンジンの始動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの始動装置において、
無端伝動部材は歯付ベルトであり、入出力部材は歯付ベルト用プーリであることを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のエンジンの始動装置において、
第2回転部材の係合部は、第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に位置する外周に断面円弧状の摩擦面を有し、
摩擦伝動ベルトは、端部を有しないものであって、前記第1回転部材の摩擦面と前記第2回転部材の係合部の摩擦面とに跨って巻き掛けられていることを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれかに記載のエンジンの始動装置において、
第1回転部材の摩擦面に巻き掛けられた摩擦伝動ベルトの両端部が、それぞれ第2回転部材の係合部に止着されていることを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項5】
請求項3に記載のエンジンの始動装置において、
第1回転部材の摩擦面の半径方向外方において該摩擦面の中心軸線に平行に延びるように、第2回転部材に軸部が設けられており、
可動部材は、前記第2回転部材の係合部が該第2回転部材とは別体とされて、その軸部に揺動可能に支持されたものであって、当該第2回転部材の回転に伴う慣性力により前記軸部の周りに回動して、摩擦伝動ベルトの一方のスパンを内周側から押圧するように構成されていることを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のエンジンの始動装置において、
付勢手段は、摩擦伝動ベルトに設けられた磁性体と、第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に離間して第2回転部材に設けられた磁石とからなることを特徴とするエンジンの始動装置。
【請求項7】
外周に断面円形状の摩擦面を有し、駆動側及び従動側のうちの一方に連結される第1の回転部材と、
前記第1回転部材に、その摩擦面の中心軸線回りに回転可能に組み付けられ、前記駆動側及び従動側のうちの他方に連結される第2の回転部材と、
前記第1回転部材の摩擦面の半径方向外方において該摩擦面の中心軸線に平行に延びるように前記第2回転部材に設けられた軸部と、
前記第1回転部材の摩擦面の半径方向外方に位置する外周に断面円弧状の摩擦面を有し、前記軸部にその軸心回りに揺動可能に支持された可動部材と、
前記第1回転部材の摩擦面と前記可動部材の摩擦面との間に跨って、該両部材間に2つのスパンを形成するように巻き掛けられた摩擦伝動ベルトと、を備え、
前記可動部材は、前記第2回転部材の回転に伴う慣性力によって、前記軸部の回りに、前記摩擦伝動ベルトの一方のスパンを押圧する向きに回動するように構成され、
前記摩擦伝動ベルトを前記第1回転部材の摩擦面から離れるように半径方向外方に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする一方向クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−242132(P2006−242132A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61388(P2005−61388)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】