説明

エンジンの燃料制御装置

【課題】過給機の作動開始及び停止の過渡時においても燃料噴射量を最適に維持するに好適なブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置を提供する。
【解決手段】吸気通路11のスロットル弁15よりも上流位置に過給機13を備え、前記吸気通路11の過給機13よりも上流位置を、第1ブローバイガス通路21を介してクランクケースCCの内部に接続すると共に、流量制御弁23を備える第2ブローバイガス通路22を介して前記吸気通路11のスロットル弁15よりも下流位置をクランクケースCCに接続するブローバイガス処理装置を備えるエンジンEの燃料制御装置であり、前記過給機13の過給状態と非過給状態との間における動作移行時に一時的に燃料噴射量を増減調整する制御手段10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置に関し、特に、過給機の非作動時および作動時の両方においてブローバイガスの換気を行うブローバイガス処理装置を備えるエンジンに好適なエンジンの燃料制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から過給機の非作動時および作動時の両方にブローバイガスの換気を行うエンジンのブローバイガス処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、吸気通路のスロットル弁よりも上流位置に設けられた過給機と、吸気通路の過給機よりも上流位置をクランクケースの内部に接続する第1ブローバイガス通路と、吸気通路のスロットル弁よりも下流位置をクランクケースに接続する第2ブローバイガス通路と、第2ブローバイガス通路に設けられて吸気負圧により開弁し、クランクケース側から吸気通路の前記下流位置側へのブローバイガスの移動を許容する流量制御弁とを備える。そして、過給機による過給時に、閉弁した流量制御弁を通して吸気通路の前記下流位置側からクランクケース側への所定量の新気の移動を許容すべく、流量制御弁の弁座および弁体間に切欠を設けるようにしている。
【特許文献1】特開2004−60475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例のブローバイガス処理装置をエアフロメータにより計量した吸入空気量に基づいて燃料噴射量を設定する燃料制御装置を備えたエンジンに適用した場合、過給機の作動開始及び停止の過渡時にブローバイガス処理装置に流れる空気流の方向が変化するため、エアフロメータで検知した空気量と燃焼室に導入される空気量とが一時的に異なることとなる。このため、最適な燃料噴射量に対して一時的にリッチとなったりリーンとなったりして、未燃焼HCの増加により燃費が悪化したり、トルク不足となり運転性が低下することが予想される。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、過給機の作動開始及び停止の過渡時においても燃料噴射量を最適に維持するに好適なブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸気通路のスロットル弁よりも上流位置に過給機を備え、前記吸気通路の過給機よりも上流位置を、第1ブローバイガス通路を介してクランクケースの内部に接続すると共に、流量制御弁を備える第2ブローバイガス通路を介して前記吸気通路のスロットル弁よりも下流位置をクランクケースに接続するブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置であり、前記過給機の過給状態と非過給状態との間における動作移行時に一時的に燃料噴射量を増減調整する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、過給時においてもブローバイガスの還流を可能とするブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置であり、過給機の過給状態と非過給状態との間における動作移行時に一時的に燃料噴射量を増減調整する制御手段を備えるため、過給機の作動開始及び停止の過渡時においても燃料噴射量を最適に維持することができる。このため、最適な燃料噴射量に対して一時的にリッチとなったりリーンとなったりすることが抑制され、未燃焼HCの増加により燃費が悪化したり、トルク不足となり運転性が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のエンジンのブローバイガス処理装置の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は本発明を適用したブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置の第1実施形態を示すシステム構成図、図2は使用する流量制御弁の断面図、図3は還流量制御用のマップ、図4は燃料噴射量補正制御のフローチャート、図5及び図6は過給機の作動時−非作動時の過渡時における作動状態を説明する説明図である。
【0009】
図1において、自動車用のエンジンEの吸気通路11には、その吸気の流れの上流側から下流側に向けて、エアクリーナ12、ターボチャージャ若しくはスーパチャージャの過給機を構成するコンプレッサ13、インタークーラ14、スロットル弁15、図示しないコレクタおよび吸気マニホールド16が配置される。吸気マニホールド16とエンジンEの図示しないクランクケース内とを接続する第2ブローバイガス通路22に、エンジンEのコントロールユニット10により開度が制御される流量制御弁23が配置され、また、ターボチャージャのコンプレッサ13の上流とエンジンEの図示しないクランクケース内とが第1ブローバイガス通路21により接続されている。前記第1ブローバイガス通路21と第2ブローバイガス通路22とは、ブローバイガスが溜まるエンジンEのクランクケースの内部を経由して互いに連通されている。前記ターボチャージャのコンプレッサ13には、図示しないが、非過給時にターボチャージャをバイパスして吸気を通過させるバイパス通路及びバイパス弁が配置されている。なお、第1ブローバイガス通路21、クランクケース内空間及び第2ブローバイガス通路22は、総称してブローバイガス通路(符号なし)ともいう。
【0010】
前記流量制御弁23は、図2に示すように、弁座31と弁座31にスライド移動して嵌合する弁棒32とから構成された弁部30と、弁棒32をスライド方向に駆動するステップモータ35で構成された駆動部とを備える。
【0011】
前記弁部30の弁座31は、弁棒32に嵌り合う穴31Aと、穴31Aの壁面に軸方向一端側(図中の下側)で浅く軸方向他端側で深く形成されて穴31Aの軸方向に延びる複数の溝で形成された弁開口部31Bを備える。また、弁部30の弁棒32は、前記弁座31の穴31Aに嵌り込み、軸方向先端側に移動されることで、弁開口面積を減少させて、閉弁に至り、軸方向に引込まれる(図中上方に移動させる)ことで弁開口面積を増加させるようにしている。
【0012】
前記駆動部は、ケース36に回転可能に支持され前記弁棒32に対してねじ係合したロータ37と、ロータ37の周囲に隙間を介して配置されたステータ38とからなり、指令されたステップ数に応じてロータ37の回転角度位置を制御するステップモータ35で構成されている。そして、コントロールユニット10よりの指令ステップ数に応じてロータ37の回転角度位置が調整され、指令ステップ数がゼロである場合にはロータ37にねじ係合している弁棒32を最前進位置にスライド移動させて弁座31の下端位置に係合させて弁開口面積を最少(閉弁)とする。また、指令ステップ数に応じて弁棒32を後退させて弁座31との相対隙間を増加させて、その弁開度を調整可能としている。このように、駆動力が大きいステップモータ35を使用することで、過給圧がかかった状態でも流量制御弁23が作動させることができ、流量制御ができる。また、過給圧がエンジンE内に直接加わることが防止できる。
【0013】
前記コントロールユニット10には、吸気マニホールド16(コレクタ)の圧力を検出するマニホールド圧センサ25よりのマニホールド圧信号、エアクリーナ12下流の吸気通路11の圧力を検出する大気圧センサ24よりの大気圧信号及びエアフロメータ26よりの吸入空気量信号、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセル開度センサ27よりのアクセル開度信号、エンジンEの図示しないクランク角度を検出するポジションセンサ28よりのエンジン回転数信号、等が入力される。そして、これらの入力信号に基づいて、前記流量制御弁23の開度を制御する他、スロットル弁15の開度、燃料噴射弁29の燃料噴射量、点火時期、過給機の動作等を制御する。
【0014】
以上の構成のエンジンEのブローバイガス処理装置は、アクセル開度がゼロ近辺であり且つエンジン回転数が低いアイドリング運転状態、及び、アクセルペダルの踏込みが少なくターボチャージャが非作動となるエンジンEの低負時には、エンジンEが発生する吸気負圧により、新気がエアクリーナ12、コンプレッサ13(図示しないバイパスバルブ)、インタークーラ14、スロットル弁15及び吸気マニホールド16を経てエンジンEに吸入される。このとき、吸気マニホールド16に作用する吸気負圧で、エアクリーナ12を通過した新気の一部がコンプレッサ13上流から第1ブローバイガス通路21、クランクケース、第2ブローバイガス通路22および流量制御弁23、吸気マニホールド16を経てエンジンEに吸入される。クランクケース内のブローバイガスは前記新気と共にエンジンEに吸入されることで、クランクケースの換気が行われてブローバイガスに含まれるNOx等によるエンジンEの潤滑油の劣化が最小限に抑えられる。
【0015】
その際の還流量は、図3に示すように、アイドリング運転状態においては、例えば、12[L/min]と最少とされ、エンジン回転数が低中速回転領域(例えば、〜5000[rpm])においては、例えば、60[L/min]と最大流量とされ、高速回転領域(例えば、5000[rpm]〜)では、例えば、30[L/min]と半減されるよう設定されている。このように、高速回転領域で還流量を少なく制御することでオイル消費の低減が可能である。そして、目標とする換気量となるよう、吸気マニホールド16及び上流側吸気通路11間の圧力差に応じて流量制御弁23の弁開度が調整される。
【0016】
また、アクセルペダルの踏込みが大きくターボチャージャが作動するエンジンEの高負荷時には、コンプレッサ13の下流側の吸気通路11に設けられた吸気マニホールド16に過給圧が発生するため、吸気マニホールド16の内圧がクランクケースの内圧よりも高くなる。このため、吸気マニホールド16内の高圧の新気が前記第2ブローバイガス通路22及び流量制御弁23を通過し、クランクケース、第1ブローバイガス通路21を経てコンプレッサ13上流側に還流する。その際に、クランクケース内のブローバイガスは前記新気と共に上流側吸気通路11に戻されてエンジンEに吸入されることで、クランクケースの換気が行われてブローバイガスに含まれるNOx等によるエンジンEの潤滑油の劣化が最小限に抑えられる。
【0017】
その際の還流量は、図3に示すように、エンジン回転数が低中速回転領域(例えば、〜5000[rpm])においては、例えば、60[L/min]と最大流量とされ、高速回転領域(例えば、5000[rpm]〜)では、例えば、30[L/min]と半減されるよう設定されている。そして、目標とする換気量となるよう、吸気マニホールド16及び上流側吸気通路11間の圧力差に応じて流量制御弁23の弁開度が調整される。
【0018】
図4に示すルーチンは過給状態から非過給状態、若しくは、非過給状態から過給状態への過渡時における燃料噴射量を補正制御するフローチャートであり、コントロールユニット10において実行される。以下、これについて説明する。
【0019】
先ずステップ1において、アクセル開度センサ27よりのアクセル開度信号、上流側吸気通路11の圧力と吸気マニホールド16の圧力とが大気圧センサ24及びマニホールド圧センサ25よりの圧力信号、過給機の作動状態、エアフロメータ26による吸入空気量、等が読込まれ、ステップS2へ進む。ステップS2では、現在のアクセル開度の前回値に対する開度差が設定値を超えているか否かが判定され、超えている場合にステップ3へ進み、過給機の作動状態が、過給状態から非過給状態、若しくは、非過給状態から過給状態へ変化したか否かが判定され、ここで、過給状態が変化した場合に、次のステップ4へ進んで、燃料噴射量の補正制御が開始される。
【0020】
しかしながら、ステップ2の現在のアクセル開度の前回値に対する開度差が設定値を超えているか否かの判定、または、ステップ3の過給機の作動状態の変化判定のいずれかが否定される場合には、燃料噴射量の補正制御が開始されず、今回の処理ステップが終了される。
【0021】
燃料噴射量の補正制御が開始されるステップ4では、大気圧センサ24及びマニホールド圧センサ25よりの圧力信号により両者間の圧力差と流量制御弁23の開度とに基づいて、その時点の流量制御弁23を通過しているブローバイガスの還流量が演算され、ステップ5へ進む。
【0022】
ステップ5では、ステップ2でのアクセル開度の変化が増加であるか否かが判定され、増加である場合とは過給機の作動が開始された場合でありステップ6へ進み、減少である場合とは過給機の作動が停止された場合でありステップ7へ進む。
【0023】
アクセル開度が増加されて過給機が作動された場合に進むステップ6では、燃料噴射量(減量)補正してステップ8へ進む。前記燃料噴射量(減量)補正は、例えば、(エアフロメータ26による吸入空気量−流量制御弁23による還流量)/エアフロメータによる吸入空気量、により演算する。これは、エアフロメータ26による吸入空気量の全量が過給機によりコレクタ(吸気マニホールド16)へ供給されるがその増量(還流量分)が追いつかない(時間遅れを伴う)ため、その一部がコレクタ(吸気マニホールド16)から分流されてブローバイガス通路へ流れることに起因する。このため、一時的にエアフロメータ26により計測した流量に対して流量制御弁23へ流れる還流量を減算した空気量が燃焼室に導かれることとなり、その分(割合(エアフロメータ26による吸入空気量−流量制御弁23による還流量)/エアフロメータ26による吸入空気量)だけ燃料噴射量を減量させないと、燃焼室内の空燃比がリッチ(過濃化)となることを意味する。
【0024】
また、アクセル開度が減少されて過給機が非作動とされた場合に進むステップ7では、燃料噴射量(増量)補正してステップ8へ進む。前記燃料噴射量(増量)補正は、例えば、(エアフロメータ26による吸入空気量+流量制御弁23による還流量)/エアフロメータ26による吸入空気量、により演算する。これは、エアフロメータ26による吸入空気量の全量にブローバイガスの還流量を加えた空気量が過給機によりコレクタ(吸気マニホールド16)へ供給されていたものが、スロットル弁開度の減少と過給機の停止により絞られるが、直ぐにはブローバイガス通路への還流量を差引いた流量へは時間遅れを伴う。また、スロットル弁開度の減少と過給機の停止により、ブローバイガス通路への強制逆流する還流量が発生され、コレクタ(吸気マニホールド16)へ流入させることとなる。このため、一時的にコレクタ(吸気マニホールド16)へ流入する空気は、エアフロメータ26による吸入空気量前後の空気量とブローバイガス通路を還流する還流量とが加算されたものとなる。即ち、一時的にエアフロメータ26により計測した流量に対して流量制御弁23へ流れる還流量を加算した空気量が燃焼室に導かれることとなり、その分(割合(エアフロメータ26による吸入空気量+流量制御弁23による還流量)/エアフロメータ26による吸入空気量)だけ燃料噴射量を増量させないと、燃焼室内の空燃比がリーン(希薄化)となることを意味する。
【0025】
そして、ステップ8では、コレクタ(吸気マニホールド16)内の圧力が目的とした圧力(過給圧若しくは負圧)で安定したか否かが判定され、圧力変化の途中にある場合には、ステップ4〜ステップ6、若しくは、ステップ4〜ステップ7が繰り返し実行される。コレクタ(吸気マニホールド16)内の圧力は時間の経過に伴って変化し、これに伴いステップ4での流量制御弁23を通過する還流量も変化してゆく。そして、ステップ8でコレクタ(吸気マニホールド16)内の圧力が目的とした圧力(過給圧若しくは負圧)で安定したと判定された場合には、ステップ9へ進み、過渡時の燃料補正制御を終了させて、一連の処理を終了させる。
【0026】
図5はアクセル開度が減少されて過給機が非作動とされた場合の吸気流動状態を説明する説明図であり、図6はアクセル開度が増加されて過給機が作動とされた場合の吸気流動状態を説明する説明図である。
【0027】
先ず、アクセル開度が減少されて過給機が作動状態から非作動状態に変化される場合の吸気流動状態を、図5の説明図に基づいて説明する。
【0028】
図5(A)は過給時の状態を示し、吸入空気量F1がエアフロメータ26で計測され、第1ブローバイガス通路21から戻る還流量F2と合流され、スーパチャージャで構成された過給機13により下流に送られ、スロットル弁15を介してコレクタ16A(吸気マニホールド16)に導入される(導入量F1+F2)。この時のコレクタ圧は過給機13による供給により正圧となっている。導入された空気は、一部(F2)がブローバイガス通路22に分流され流量制御弁23を経由してエンジンEのクランクケースCC内に供給される。そして、残余の空気量(F1)が燃焼室Aに導入される。
【0029】
この状態からアクセルペダルを急激に戻すと連動してスロットル開度も急激に減少し、過給機13の過給動作が停止される。スロットル弁開度の減少と過給機13の停止により、吸気通路11を介してのコレクタ16Aへの流入が絞られるが、その慣性によりコレクタ16Aへの流入が継続され、直ぐには第1ブローバイガス通路21への還流量F2を差引いた流量(F1−F2)への流量変化は時間遅れを伴う。
【0030】
一方、スロットル弁開度の減少と過給機13の停止により、第1ブローバイガス通路21への強制逆流する還流量F2が発生され、ブローバイガス通路を経由してコレクタ16A(吸気マニホールド16)へ流入させる還流量F2は急激に増加する。この還流量F2は、マニホールド負圧と大気圧との差圧と流量制御弁23の開度とにより決定され、マニホールド圧の負圧への低下に応じて増加される。
【0031】
このため、図5(B)に示すように、一時的にコレクタ16Aへ流入する空気は、吸気通路11を経由して導入される吸入空気量(F1前後)とブローバイガス通路を還流する還流量(F2)とが加算された空気量(F1+F2)となり、これがエンジンEの燃焼室に導入されることとなる。
【0032】
即ち、一時的にエアフロメータ26により計測した流量F1分に流量制御弁23へ流れる還流量F2を加算した空気流(F1+F2)が燃焼室Aに導かれることとなり、その分(割合(エアフロメータ26による吸入空気量F1+流量制御弁23による還流量F2)/エアフロメータ26による吸入空気量F1)だけ燃料噴射量を増量させて(ステップ7)、燃焼室A内の空燃比がリーン(希薄化)となることを防止することができる。
【0033】
なお、上記過渡時の変化は、コレクタ圧(吸気マニホールド圧)が所定値に安定されることにより、吸気通路11を流れる空気量が(F1−F2)と収束し、ブローバイガス通路を流れる空気量が(F2)と収束することにより、非過給時の燃料噴射量に移行可能となり、一連の補正制御が終了される。
【0034】
次に、アクセル開度が増加されて過給機13が非作動状態から作動状態に変化される場合の吸気流動状態を、図6の説明図に基づいて説明する。
【0035】
図6(A)は非過給時の状態を示し、吸入空気量F1がエアフロメータ26で計測され、第1ブローバイガス通路21への還流量F2を分流し、スーパチャージャで構成された過給機13をバイパスするバイパスバルブBを経由して下流に送られ、スロットル弁15を介してコレクタ16A(吸気マニホールド16)に導入される(導入量F1−F2)。この時のコレクタ圧は過給機13の非作動により負圧となっている。導入された空気(F1−F2)は、エンジンEのクランクケースCC内及び流量制御弁23を経由する第2ブローバイガス通路22からの還流空気(F2)と合流して、空気量(F1)として燃焼室Aに導入される。
【0036】
この状態からアクセルペダルを急激に踏込むと連動してスロットル開度も急激に増大し、過給機13の過給動作が開始される。スロットル弁開度の増加と過給機13の動作開始により、吸気通路11を介してのコレクタ16Aへの流入が促進されるが、その空気の慣性によりコレクタ16Aへの流入増加が遅れ、直ぐには第2ブローバイガス通路22への還流量F2を加算した流量(F1+F2)への流量変化は時間遅れを伴う。
【0037】
一方、スロットル弁開度の増加と過給機13の作動開始により、コレクタ16A(吸気マニホールド16)から第2ブローバイガス通路22への分流する還流量F2が発生され、コレクタ圧(吸気マニホールド圧)の上昇に伴い、第2ブローバイガス通路22へ流入させる還流量F2は急激に増加する。この還流量F2は、マニホールド圧と大気圧との差圧と流量制御弁23の開度とにより決定され、マニホールド圧の正圧への上昇に応じて増加される。
【0038】
このため、図6(B)に示すように、一時的に、吸気通路11を経由して導入される吸入空気量(F1相当)から第2ブローバイガス通路22へ還流する還流量(F2)を減算した空気量(F1−F2)がコレクタ16Aに残り、これがエンジンEの燃焼室Aに導入されることとなる。
【0039】
即ち、一時的にエアフロメータ26により計測した流量F1分から流量制御弁23へ流れる還流量F2を減算した空気流(F1−F2)が燃焼室Aに導かれることとなり、その分(割合(エアフロメータ26による吸入空気量F1−流量制御弁23による還流量F2)/エアフロメータ26による吸入空気量F1)だけ燃料噴射量を減量させて(ステップ6)、燃焼室A内の空燃比がリッチ(過濃化)となることを防止することができる。
【0040】
なお、上記過渡時の変化は、コレクタ圧(吸気マニホールド圧)が所定値に安定されることにより、吸気通路11を流れる空気量が(F1+F2)と収束し、ブローバイガス通路を流れる空気量が(F2)と収束することにより、過給時の燃料噴射量に移行可能となり、一連の補正制御が終了される。
【0041】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0042】
(ア)吸気通路11のスロットル弁15よりも上流位置に過給機13を備え、前記吸気通路11の過給機13よりも上流位置を、第1ブローバイガス通路21を介してクランクケースCCの内部に接続すると共に、流量制御弁23を備える第2ブローバイガス通路22を介して前記吸気通路11のスロットル弁15よりも下流位置をクランクケースCCに接続するブローバイガス処理装置を備えるエンジンEの燃料制御装置であり、前記過給機13の過給状態と非過給状態との間における動作移行時に一時的に燃料噴射量を増減調整する制御手段10を備える。このため、過給機13の作動開始及び停止の過渡時においても燃料噴射量を最適に維持することができ、最適な燃料噴射量に対して一時的にリッチとなったりリーンとなったりすることが抑制され、未燃焼HCの増加により燃費が悪化したり、トルク不足となり運転性が低下することを防止できる。
【0043】
(イ)一時的な燃料噴射量の増減調整は、過給機13の過給状態と非過給状態とでブローバイガス通路に対して流動方向が反転されるブローバイガスの還流量に基づいて制御されるため、燃焼室Aに導入される空気量の増減に対応することができる。
【0044】
(ウ)一時的に燃料噴射量を増減調整は、過給機13の非過給状態から過給状態への動作移行時には減量補正されるため、燃焼室A内の空燃比が過濃となることを抑制でき、未燃焼HCの排出を低減でき、燃費を向上させることができる。
【0045】
(エ)一時的に燃料噴射量を増減調整は、過給機13の過給状態から非過給状態への動作移行時には増量補正されるため、燃焼室A内の空燃比が希薄となることを抑制でき、出力トルクが一時的に不足して運転性が悪化することを抑制できる。
【0046】
(オ)一時的に燃料噴射量を増減調整は、過給機13の過給状態と非過給状態との間における動作移行後の前記スロットル弁15下流の吸気マニホールド16の圧力変化が収束する時点で終了されるため、過渡時の制御が定常状態まで継続されることはない。
【0047】
(カ)吸気通路11のスロットル弁15より下流側の吸気マニホールド16内の圧力を検出するマニホールド圧センサ25と、前記過給機13より上流の吸気通路11内の圧力を検出する大気圧センサ24と、を備え、前記ブローバイガスの還流量は、マニホールド圧センサ25及び大気圧センサ24で検出された両圧力の圧力差と前記流量制御弁23の弁開度とにより演算されるため、高精度のブローバイガスの還流量を判定でき、燃料噴射量を精度よく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態を示すブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置の第1実施形態を示すシステム構成図。
【図2】同じく使用する流量制御弁の断面図。
【図3】還流量制御用のマップ。
【図4】燃料噴射量補正制御のフローチャート。
【図5】過給機の作動時−非作動時の過渡時における作動状態を説明する説明図。
【図6】過給機の非作動時−作動時の過渡時における作動状態を説明する説明図。
【符号の説明】
【0049】
E エンジン
10 コントロールユニット
11 吸気通路
12 エアクリーナ
13 コンプレッサ(過給機)
14 インタークーラ
15 スロットル弁
16 吸気マニホールド(コレクタ)
21 第1ブローバイガス通路
22 第2ブローバイガス通路
23 流量制御弁
24 大気圧センサ
25 マニホールド圧センサ
29 燃料噴射弁
35 ステップモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路のスロットル弁よりも上流位置に過給機を備え、前記吸気通路の過給機よりも上流位置を、第1ブローバイガス通路を介してクランクケースの内部に接続すると共に、流量制御弁を備える第2ブローバイガス通路を介して前記吸気通路のスロットル弁よりも下流位置をクランクケースに接続するブローバイガス処理装置を備えるエンジンの燃料制御装置であり、
前記過給機の過給状態と非過給状態との間における動作移行時に一時的に燃料噴射量を増減調整する制御手段を備えることを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
【請求項2】
前記一時的な燃料噴射量の増減調整は、過給機の過給状態と非過給状態とで前記ブローバイガス通路に対して流動方向が反転されるブローバイガスの還流量に基づいて制御されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料制御装置。
【請求項3】
前記一時的な燃料噴射量の増減調整は、過給機の非過給状態から過給状態への動作移行時には減量補正されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料制御装置。
【請求項4】
前記一時的な燃料噴射量の増減調整は、過給機の過給状態から非過給状態への動作移行時には増量補正されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料制御装置。
【請求項5】
前記一時的な燃料噴射量の増減調整は、前記過給機の過給状態と非過給状態との間における動作移行後の前記スロットル弁下流の吸気マニホールドの圧力変化が収束する時点で終了されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のエンジンの燃料制御装置。
【請求項6】
前記吸気通路のスロットル弁より下流側の吸気マニホールド内の圧力を検出するマニホールド圧センサと、
前記過給機より上流の吸気通路内の圧力を検出する大気圧センサと、を備え、
前記ブローバイガスの還流量は、マニホールド圧センサ及び大気圧センサで検出された両圧力の圧力差と前記流量制御弁の弁開度とにより演算されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のエンジンの燃料制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−90811(P2010−90811A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261863(P2008−261863)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】