説明

エンジン始動のためのチャージ・バイパス・システム

【課題】車両のエンジン始動システムを提供する。
【解決手段】エンジン始動システムは、エンジンとチャージシステムを含む。車両は、エンジンの速度を測定するためのエンジン速度センサも含む。チャージシステムはエンジンと結合されており、チャージポンプを含む。車両はさらに、制御ユニットおよびチャージシステムの流体温度を感知するための温度センサを含む。温度センサは制御ユニットに電気的に結合されている。バイパスシステムはチャージシステムに流体結合しており、バルブ116とソレノイド134を含む。ソレノイド134は、速度センサで測定される速度および温度センサで感知される温度に反応してバルブ116を制御するために、制御ユニットがソレノイドに電圧を加えるように、制御ユニットに電気的に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの始動の開始、特に冷間時のエンジン始動を改善するためのバイパスシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
低温では、従来のエンジンは始動が難しいことがある。エンジンのタイプにより、これにはいくつかの理由がある。例えば、バッテリーで作動するエンジンでは、低温時にバッテリーがしばしば問題を起こす。バッテリーは、その内部に電子を生成する化学物質を含み、バッテリー内部の化学反応は、低温ではより遅い速度で起こるため、電子の生成が低下する。結果として、冷間時のエンジンを始動しようとする時、始動モーターの持つエネルギーは少なく、そのため低温であるほどエンジンは始動が遅くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低温時にエンジンの始動が困難である別の理由は、始動システム内のオイルの粘度である。油粘度は低温では増加し、そのためエンジンを始動するのがより難しくなる。
【0004】
例えば、従来的なクローラーローダーでは、システムを始動するクローラーエンジン内部の圧力は、チャージングポンプによって高められる。ローダーには、機械を駆動するための動力を生成するエンジンを含み、エンジン始動の間にエンジンはチャージングポンプに結合しているシャフトを回転する。通常運転中、ポンプの内部のオイルは、ポンプが回転し圧力を増加することを可能にする粘度を持つ。しかし、低温では、チャージングポンプの内部のオイルは粘度が増加し、シャフトによって動かされることに抵抗する。この抵抗はエンジンにかかる寄生負荷を生じ、エンジンの始動をより困難にする。すなわち、寄生負荷のためにエンジンを始動できない場合、エンジンは始動しないかまたは始動が困難である。
【0005】
そのため、低温時にエンジンを始動するより良い方法を提供するニーズが存在する。特に、低温時にエンジンを始動する時、寄生負荷を減少させることに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの典型的実施形態では、エンジンとチャージシステムを含む車両のエンジン始動システムが提供されている。車両は、エンジンの速度を測定するためのエンジン速度センサも含む。チャージシステムはエンジンと結合されており、チャージポンプを含む。車両はさらに、制御ユニットおよびチャージシステムの流体温度を感知するための温度センサを含む。温度センサは制御ユニットに電気的に結合されている。バイパスシステムはチャージシステムに流体結合しており、バルブとソレノイドを含む。ソレノイドは、速度センサで測定される速度および温度センサで感知される温度に反応してバルブを制御するために、制御ユニットがソレノイドに電圧を加えるように、制御ユニットに電気的に結合される。
【0007】
本開示の一つの態様では、チャージシステムは第一および第二のチャージポンプを含むことができる。異なる態様では、車両はさらに、バイパスシステムに流体結合した貯留層を含むトランスミッションシステムを含むことができる。別の態様では、安全バルブはチャージポンプと流体結合し、フィルタはチャージポンプと安全バルブの間で流体結合することができる。
【0008】
異なる態様では、エンジン始動システムは、第一の流体経路、第二の流体経路、および第三の流体経路を含むことができる。第一の流体経路は、チャージポンプとバイパスの入口の間に定義される。第二の流体経路は、バイパスシステムの入口と安全バルブの間に定義される。第三の流体経路は、バイパスシステムの入口と貯留層の間に定義される。バイパスシステムのバルブがその閉鎖位置にある時、第一の流体経路は第二の流体経路と流体結合している。または、バルブが開放位置にある時、第一の流体経路は第三の流体経路と流体結合している。
【0009】
この実施形態の一つの形態では、バイパスシステムは、入口、第一の出口、および第二の出口を含むことができる。第一の入口はチャージポンプに流体結合され、第一の出口は安全バルブに流体結合され、第二の出口は貯留層に流体結合され得る。この別の形態では、バルブは開放位置と閉鎖位置を含む。バルブが開放位置にある時、入口は第二の出口に流体結合され、バルブが閉鎖位置にある時、入口は第一の出口に流体結合される。
【0010】
異なる実施形態では、冷間時の始動の際の車両のエンジンへの寄生負荷を減少させるための方法が提供される。方法にはエンジンの速度を測定することが含まれる。車両のチャージシステムを通って流れる流体の温度が測定され、測定速度が第一の閾値未満であるかどうか、および測定温度が第二の閾値未満であるかどうかが決定される。方法は、バイパスシステムを通して貯留層に流れる流体の少なくとも一部を迂回させること、およびエンジンへの寄生負荷を減少させることも含む。
【0011】
この実施形態の一つの形態では、方法は、バイパスバルブを開放するためにソレノイドに電圧を加えることを含む。この別の形態では、方法は、温度が0℃以下の時に流体の流れの少なくとも一部を迂回させることを含む。方法は、測定されたエンジン速度が300RPM以下の時、流体の流れの少なくとも一部を迂回させることも含み得る。寄生負荷は、チャージ圧力を減らすことによって減少させることができる。
【0012】
別の実施形態では、エンジン始動システムを通してエンジンへの寄生負荷を減少させるための方法が提供される。エンジン始動システムは、チャージポンプ、チャージ安全バルブ、およびバイパスシステムを含む。バイパスシステムは、入口、第一の出口、第二の出口、ソレノイド、およびバイパスバルブを含む。方法は、(a)エンジンの速度を測定すること、(b)エンジン始動システムの流体温度をセンサで測定すること、(c)エンジン始動システムを加圧すること、(d)流体をチャージポンプからバイパスシステムの第一の出口を通してチャージ安全バルブに導くこと、(e)流体の一部を第二の出口を通して迂回させること、および(f)エンジンへの寄生負荷を減少させることを含む。
【0013】
一つの態様では、方法は、測定されたエンジン速度が第一の閾値未満で、測定された温度が第二の閾値未満の場合、ステップ(d)〜(f)を実施する。異なる態様では、方法は、測定されたエンジン速度が第一の閾値以上または測定された温度が第二の閾値以上の場合は、ステップ(e)と(f)をスキップする。方法は、測定された速度が第一の閾値未満で測定された温度が第二の閾値未満の場合、ソレノイドに電圧を加えることをさらに含み得る。
【0014】
別の態様では、方法は、測定されたエンジン速度が閾値を越えたら、バイパスシステムの第二の出口を閉鎖することを含む。方法は、エンジン始動システムの圧力を安全圧力未満に減少させることも含み得る。別の態様では、方法は、制御ユニットから信号を受け取ること、バイパスシステムのソレノイドに電圧を加えること、バイパスバルブを閉鎖位置から少なくとも部分的開放位置に動かすこと、およびバイパスシステムの入口から第二の出口への流路を形成することを含む。
【0015】
本開示では、バイパスシステムは、エンジンへの寄生負荷を減少させる手段を提供する。これは流体温度が閾値温度以下で、エンジンがまだ始動していない時に特に当てはまる。流体の粘度は通常運転中より高いが、チャージシステム内の圧力はバイパスシステムで減少させることができ、従って寄生負荷を減少させる。これにより低温でエンジンを始動させることが容易になる。
【0016】
別の利点は、一旦エンジンが始動したら、チャージシステムが通常運転に戻るように、バイパスシステムを解除できることである。すなわち、低温でのエンジン始動を支援するためにバイパスシステムを作動させることができるが、一旦エンジンが始動したらバイパスシステムを解除できる。バイパスシステムの制御性機能のこの向上によって、従来のエンジン始動システムの多くの制限が克服される。
【0017】
本発明の上述の態様およびそれらを取得する方法は、本発明の実施形態の以下の説明を添付の図面と合わせて参照することによってより明らかとなり、本発明そのものがより良く理解されるはずである。
【0018】
対応する参照番号は、いくつかの図を通して対応する部品を示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、エンジン始動のためのチャージングシステムの概略図であり、
【図2】図2は、冷間時エンジン始動のためのバイパスシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に記述される本発明の実施形態は、包括的であることも、以下に詳述される正確な形態に本発明を限定することも意図していない。むしろ、実施形態は、他の当業者が本発明の原理と実践を評価し理解できるように選択・記述されている。
【0021】
本開示では、低温でのエンジン始動中の寄生負荷を減少させるために、流体の流れを迂回させる手段がシステムに組み込まれる。この開示の目的では、低温とは、車両のエンジンまたはトランスミッションシステムのオイルの温度を指す。オイルの温度は最初に測定され、測定値に基づいて、システムは通常状態下で実施するかまたは寄生負荷を減少させるためにバイパスシステムを作動させることができる。この一例が図1に示されている。
【0022】
車両のエンジン始動システム100の典型的実施形態が図1に示されている。エンジン始動システム100は、車両に対して動力を生成するためのエンジン102を含む。エンジン102は、ディーゼルまたは水力機関などの任意のエンジンであり得る。エンジン102は、第一の静水圧ポンプ104と第二の静水圧ポンプ106を駆動するための動力を提供する。第一の静水圧ポンプ104と第二の静水圧ポンプ106は、車両のハイドロスタティックトランスミッションシステムの一部である。第一の静水圧ポンプ104は第一の静水圧モーター(非表示)を駆動し、第二の静水圧ポンプ106は第二の静水圧モーター(非表示)を駆動する。モーターもハイドロスタティックトランスミッションシステムの一部であり、第一および第二の静水圧ポンプに沿って、オイルが流れる閉ループ流れ回路を形成する。センサ114は、ハイドロスタティックトランスミッションシステムを通って流れるオイルの温度を測定でき、測定値を車両制御ユニット112に送信する。
【0023】
システム100は、第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110も含む。第一および第二のチャージポンプは、エンジン102に結合されており、トランスミッションシステムの一部を形成する。始動時にエンジン102が始動し始めるにつれ、これはポンプシャフト(非表示)を回転させ、次に第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110を回転させる。両方のチャージポンプが回転するにつれ、各ポンプはチャージ圧力およびシステム100を通る流体の流れを増大させる。システム100内のチャージ圧力は、チャージ圧力センサ124で測定できる。図1に示されるように、チャージ圧力センサ124は車両制御ユニット112と通信することができる。圧力センサは、Sensata 3PP8シリーズの圧力センサなど任意の既知のセンサであり得る。
【0024】
安全バルブ122は、第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110に流体結合している。圧力がシステム100内で増大し、オイルは第一および第二のチャージポンプからフィルタ120を通って安全バルブ122へと流れる。安全バルブ122は圧力閾値を持つ。チャージ圧力が閾値を越えるまで、安全バルブ122は閉鎖されている。しかし、一旦チャージ圧力が閾値を越えると安全バルブ122は開き、オイルはバルブを通って流れることができる。
【0025】
非限定的例では、安全バルブ122は320psiの圧力設定または閾値を持つことができる。安全バルブ122は、バネ力を持つバネ(非表示)を含むことができる。安全バルブ122を開いて流体の流れを通すために、チャージ圧力は、安全バルブ122のバネ力とバルブ122の反対側にかかる油圧によって生じる圧力差を克服しなければならない。
【0026】
第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110がシステム100内のチャージ圧力を増加し続けるにつれ、チャージ圧力の増加によってエンジン102への寄生負荷が生じる。通常運転中は、寄生負荷は容易に克服することができ、エンジンはごく普通に作動する。しかし、システム100内のオイルの粘度が増すと、エンジンへの寄生負荷は大きくなり、エンジンはこの負荷を克服できない場合がある。オイルの粘度は低温でより大きくなるので、寄生負荷の増加のために、エンジンは始動に困難をきたすことがある。特に、安全バルブ122での圧力差は、低いオイル温度ではずっと大きく、バルブを開いてシステム100内で増加したチャージ圧力を解放するのがより困難となる。
【0027】
寄生負荷を減少させる(すなわち、チャージ圧力を減少させる)ために、システム100にはバイパスシステムを含めることができる。図1と2を参照すると、典型的バイパスシステム200は、バイパスバルブ116とソレノイド134を含む。一つの実施形態では、バイパスバルブ116は任意の既知の圧力バイパスバルブであり得る。例えば、バイパスバルブ116は、HydraForce,Inc.製のSP16−20、両方向、通常閉鎖比例弁であり得る。バイパスバルブ116はソレノイド134によって電気的に制御され得る。図1に示されるように、ソレノイド134は車両制御ユニット112に電気的に結合され得る。従って、車両制御ユニット112は、ソレノイドに電圧を加えるために信号を送ることができ、これによってバイパスバルブ116が開く。同様に、車両制御ユニット112はソレノイド134の電源を切ってバルブ116を閉じることができる。
【0028】
バイパスシステム200は、少なくとも1つの入口と少なくとも2つの出口を含む。図1と2の図解実施形態では、バイパスシステム200は、第一の入口126と第二の入口128を持つ。第一のチャージポンプ108は、第一の入口126に流体結合しており、第二のチャージポンプ110は第二の入口128に流体結合している。従って、チャージポンプはエンジン102によって回転させられ、オイルの流れはバイパスシステム200の第一および第二の入口を通過する。
【0029】
図解のバイパスシステム200は、第一の出口130、第二の出口132およびバイパス出口136も含む。第一の出口130および第二の出口132は、フィルタ120と安全バルブ122に流体結合している。従って、第一の出口130と第二の出口132を通過するチャージ圧力が、チャージ圧力センサ124で測定される。一方、バイパスバルブ136は貯留層118に流体結合している。貯留層118は、トランスミッションシステムの一部であるタンクまたは水だめであり得る。表示のように、貯水槽118に流れ込むオイルは、次に第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110を通って還流する。
【0030】
バイパスシステム200の働きがさらに図2で図示されている。上述の非限定的例では、安全バルブ122は320psiの圧力設定または閾値を持つ。ここでも、この値は制限を意図するものではなく、本開示の利点をさらに説明するための例としてのみ提供されている。しかし、320psiの圧力設定または閾値は通常運転に対するものである。オイルの温度がずっと低く、そのため粘度がより大きい場合、安全バルブ122が開く前に、チャージ圧力は500psiを超えなければならないことがある。これによって、冷間時始動の間にエンジン102への寄生負荷が生じ、エンジン102を始動するのが困難になる。
【0031】
冷間時始動の間のチャージ圧力を減少させるために、バイパスバルブ116を少なくとも一部開いて、オイルまたは他の流体がバイパス出口136を通過するのを可能にし得る。一つの態様では、バイパスバルブ116は、完全に開放しているかまたは完全に閉鎖している。別の態様では、バルブ116は、車両制御ユニット112から送られる信号次第で、徐々に開放され得る。従って、オイルがバイパスシステムの第一の入口126を通過するにつれ、オイルは第一の流路202(またはチャネル)を通って流れる。同様に、第二の入口128を通過するオイルは、第二の流路204(またはチャネル)を通過する。通常運転中、すなわちバイパスバルブ116が閉じている時、第一の流路202を通過するオイルは、第三の流路206を介して第一の出口130を通るように導かれる。第一の流路202と第三の流路206は、互いに流体結合している。同様に、バイパスバルブ116が閉じている時、第二の流路204を通過するオイルは、第四の流路208を介して第二の出口132を通るように導かれる。第二の流路204と第四の流路208は、互いに流体結合している。
【0032】
しかし、バイパスバルブ116が開いている時は、別の流路210がバイパスシステム200内に形成される。オイルはそれでも第一の出口130と第二の出口132を通過できるが、オイルの少なくとも一部は第五の流路210を通過することができる。第五の流路210はバイパスバルブ116の入口と流体連結しており、第六の流路212はバイパスバルブ116の出口と流体連結している。オイルがバイパスバルブ116を通って貯留層118に迂回されるようにバイパスバルブ116が開いている時、第五の流路210と第六の流路212は流体結合している。バイパスバルブ116を通したオイルの迂回は、チャージ圧力センサ124で測定されるチャージ圧力を減少させる。さらに重要な事には、安全バルブ122での流体圧力が減少し、そのためエンジン102への寄生負荷が減少する。
【0033】
一つの実施形態では、エンジン102は既知の任意の方法(例えば、キーを回す、またはボタンを押す)で始動できる。トランスミッションシステム内のオイルの温度を送信することによって、温度センサ114は車両制御ユニット112と通信する。オイルの温度に応じて、車両制御ユニット112はバイパスバルブ116を制御できる。一つの態様では、温度が閾値より低い場合、車両制御ユニット112はバイパスバルブ116を開放する。この閾値は例えば0℃であり得る。または、閾値は10℃、−10℃またはその間の任意の温度であり得る。これはエンジンのタイプにもよる。ほとんどの従来型のエンジンは、特定のエンジンに関連する要因のために、低温での始動が困難である。しかし、チャージポンプによってエンジンに加えられる追加的寄生負荷は、特に低温でのエンジンの始動能力をさらに阻害する。
【0034】
従って、冷間時のエンジン始動時、温度センサ114はハイドロスタティックトランスミッションシステムのオイルの温度を測定し、その測定値を車両制御ユニット112に通信する。エンジンが始動される前に、オイルの温度が閾値より低い場合、車両制御ユニット112はバイパスバルブ116を開放することができる。図1の実施形態を参照すると、エンジン102が始動したかどうかを決定するために、車両制御ユニット112はエンジン102、特にエンジンコントローラ138と通信することができる。エンジンコントローラ138は、エンジン102のクランク軸上またはその近くに配置されたエンジン速度センサ140からエンジン速度データを受け取ることができる。一つの態様では、車両制御ユニット112は、エンジン速度が300RPM未満の場合、エンジン102が始動しなかったと決定できる。別の態様では、車両制御ユニット112は、エンジン速度が700RPM未満の場合、エンジンが始動しなかったと決定できる。エンジン速度の閾値(例えば、300RPM)は、使用されるエンジンおよびコントローラのタイプによって異なることがある。従って、エンジンが始動する前、車両制御ユニット112はエンジンコントローラ138と温度センサ114と通信して、バイパスバルブ116を開放すべきか閉鎖すべきかを決定する。
【0035】
エンジン102が始動し始める時、第一のチャージポンプ108と第二のチャージポンプ110がエンジン102によって回転駆動されるにつれて、システム100内の圧力が増加する。オイルはシステム100を強制的に通過させられ、第一の入口126および第二の入口128を通ってバイパスシステム200に入る。温度測定値が温度閾値より低い場合(および、エンジン速度センサ140がエンジン速度閾値未満のエンジン速度を伝える場合)は、車両制御ユニット112はソレノイド134に信号を送り電圧を加える。ソレノイド134に電圧を加えることによって、第一の入口126と第二の入口128を通って流れるオイルがバイパスバルブ116とバイパス出口136を通って部分的に迂回されるように、バイパスバルブ116は少なくとも部分的に開く。オイルの残りの流れは、第一の出口130と第二の出口132を通過する。オイルが迂回されるにつれ、チャージ圧力センサ124で測定されるチャージ圧力が減少し、そのためエンジン102にかかる寄生負荷が減少する。
【0036】
エンジン102が始動されると、エンジン速度センサ140が継続的にエンジン速度を測定し、これをエンジンコントローラ138に伝える。エンジンコントローラ138はエンジン速度測定値を車両制御ユニット112に送信する。エンジン速度が第二のエンジン速度閾値を越えたら、車両制御ユニット112はソレノイド134の電源を切ってバイパスバルブ116を閉じることができる。一つの態様では、第二のエンジン速度閾値は第一のエンジン速度閾値(例えばエンジン始動前)と同じであり得る。または、第一のエンジン速度閾値は第二のエンジン速度閾値よりも低い値であり得る。例えば、第二のエンジン速度閾値は、エンジンのタイプによっては600〜800RPMであり得る一方、第一のエンジン速度閾値は250〜350RPMの間であり得る。一旦ソレノイド134の電源が切られると、バイパスバルブ116が閉じ、流れはバイパス出口136を通して迂回されなくなる。この実施形態では、オイルの温度はバイパスバルブ116を開くためにのみ使用される。しかし、別の実施形態では、エンジン速度とオイルの温度はバイパスバルブ116を開くか閉じるかを決定するために使用される。
【0037】
上述のエンジン始動システム100を使用した試験結果はバイパスシステムの利点をさらに強調する。第一の試験では、チャージ圧力は、バイパスシステム200が全体的システム100から取り外された状態でチャージ圧力センサ124によって測定された。この例では、温度センサ114で測定されたオイルの温度が0℃未満の冷間時始動の間、チャージ圧力は約500psiで横ばいになり始めた。
【0038】
第二の試験では、図1に示されるようにバイパスシステム200がシステム100に加えられた。ここでも、エンジン始動の間、測定されたオイルの温度は0℃未満であったが、冷間時始動の間、バイパスバルブ116が開き、チャージ圧力は160psiに減少した。
【0039】
同様の試験では、オイルの温度の測定値が約−20℃で、バイパスバルブ116が開いて流れを貯留層118に迂回させる時、エンジン102への寄生負荷が約68%減少することを示す結果が得られた。
【0040】
別のエンジン始動システムでは、安全バルブ122の圧力設定はより低くてもよい。例えば、安全バルブ122はより低いバネ力を持つバネを含み得る。従って、チャージ圧力がシステム100内で増加する時、安全バルブ122はより低い圧力で開くことができ、そのためチャージ圧力センサ124で測定されるチャージ圧力が減少する。例えば、圧力設定は320psiよりはむしろ140psiであり得る。
【0041】
別の代替的エンジン始動システムでは、車両制御ユニット112を使用して安全バルブ122の圧力設定を調整できる。この特定の実施形態では、車両制御ユニット112は、チャージ圧力を減少させるために安全バルブ122の圧力設定を調整するか、または上述のようにバイパスシステム200を通して流れを迂回させることができる。他の例では、車両制御ユニット112は安全バルブ122の圧力設定を減らし、流れを迂回させるためにソレノイド134に電圧を加えることができる。これらの代替的実施形態は、冷間時始動中にエンジンにかかる寄生負荷を減少させる追加的方法を提供する。
【0042】
本発明の原理を組み入れた典型的実施形態を上記で開示してきたが、本発明は開示実施形態に限定されない。それよりむしろ、この出願はその一般的原理を使用する本発明の任意の変形、用途、または適合を網羅するよう意図されている。さらに本出願は、本発明に関連し添付の請求項の限度内に含まれる、当技術分野で既知または慣習的な実施の範囲に入る、本開示からの逸脱を網羅するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジン始動システムであって、
エンジンおよび前記エンジンの速度を測定するためのエンジン速度センサと、
前記エンジンと結合されているチャージシステムであって、チャージポンプを含むチャージシステムと、
制御ユニットおよび前記チャージシステム内の流体温度を感知するための温度センサであって、前記制御ユニットに電気的に結合されている温度センサと、
前記チャージシステムに流体結合されているバイパスシステムであって、バルブおよび前記制御ユニットに電気的に結合されているソレノイドを含むバイパスシステムと、
を備え、
前記制御ユニットは前記ソレノイドに電圧を加え、前記速度センサで測定された前記速度と前記温度センサで感知された前記温度とに応じて、前記バイパスシステムを通る前記流体の流れを制御すること、
を特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記チャージシステムは、第一のチャージポンプと第二のチャージポンプを含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、トランスミッションシステムをさらに備え、前記トランスミッションシステムは前記バイパスシステムに流体結合している貯留層を備える、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記チャージポンプに流体結合している安全バルブをさらに含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記チャージポンプと前記バイパスの入口との間に定義される第一の流体経路と、
前記バイパスシステムの入口と前記安全バルブとの間に定義される第二の流体経路と、
前記バイパスシステムの入口と前記貯留層の間に定義される第三の流体経路と、
をさらに備え、
前記バルブが閉鎖位置にある時、前記第一の流体経路は前記第二の流体経路と流体結合しており、
前記バルブが開放位置にある時、前記第一の流体経路は前記第三の流体経路と流体結合している、
システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、前記チャージポンプと前記安全バルブとの間に流体結合されたフィルタをさらに含む、システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムであって、前記バイパスシステムは、入口、第一の出口、および第二の出口を備え、前記入口は前記チャージポンプと流体結合しており、前記第一の出口は前記安全バルブと流体結合しており、前記第二の出口は前記貯留層と流体結合している、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、前記バルブは開放位置と閉鎖位置とを備え、前記バルブが前記開放位置にある時、前記入口は前記第二の出口と流体結合し、前記バルブが前記閉鎖位置にある時、前記入口は前記第一の出口と流体結合している、システム。
【請求項9】
冷間時始動の間に車両におけるエンジンへの寄生負荷を減少させる方法であって、
エンジンの速度を測定することと、
チャージシステムを通って流れる流体の温度を測定することと、
前記測定された速度が第一の閾値未満であり、前記測定された温度が第二の閾値未満であるかどうかを判断することと、
前記流体の少なくとも一部を、バイパスシステムを通して迂回させることと、
前記エンジンへの前記寄生負荷を減少させることと、
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記バイパスシステムのバルブを開くためにソレノイドに電圧を加えることをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記測定された温度が0℃以下の時に、前記流体の少なくとも一部を迂回させることをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記測定されたエンジン速度が300RPM以下の時に、前記流体の少なくとも一部を迂回させることをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、前記チャージシステムのチャージ圧力を減少させることをさらに含む、方法。
【請求項14】
エンジン始動システムを通じてエンジンにかかる寄生負荷を減少させる方法であって、
前記エンジン始動システムはチャージポンプ、チャージ安全バルブ、およびバイパスシステムを含み、前記バイパスシステムは入口、第一の出口、第二の出口、ソレノイド、およびバイパスバルブを含み、前記方法は、
(a)エンジンの速度を測定することと、
(b)センサで前記エンジン始動システムの流体温度を測定することと、
(c)前記エンジン始動システムを加圧することと、
(d)前記チャージポンプから前記バイパスシステムの前記第一の出口を通して前記流体の流れを前記チャージ安全バルブに導くことと、
(e)前記第二の出口を通して前記流体の一部を迂回させること、
(f)前記エンジンへの前記寄生負荷を減少させること。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記測定されたエンジン速度が第一の閾値未満であり、前記測定された温度が第二の閾値未満である場合、ステップ(d)〜(f)を実施することをさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記測定されたエンジン速度が第一の閾値以上でありまたは前記測定された温度が第二の閾値以上である場合は、ステップ(e)と(f)をスキップすることをさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記測定された速度が第一の閾値未満であり、前記測定された温度が第二の閾値未満である場合、前記ソレノイドに電圧を加えることをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記測定されたエンジン速度が閾値を越えたら、前記バイパスシステムの前記第二の出口を閉鎖することをさらに含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記エンジン始動システムの前記圧力を安全圧力未満に減少させることをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、
車両制御ユニットから信号を受け取ることと、
前記バイパスシステムの前記ソレノイドに電圧を加えることと、
前記バイパスバルブを前記閉鎖位置から少なくとも部分的に開いた位置に移動させることと、
前記バイパスシステムの前記入口から前記第二の出口への流路を形成することと、
を更に備える方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−183993(P2012−183993A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−18858(P2012−18858)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(301027579)ディア・アンド・カンパニー (6)
【Fターム(参考)】