説明

エンジン自動停止始動制御装置およびエンジン自動停止始動制御方法

【課題】エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後、所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動する際に、携帯機の電池切れによって車両と携帯機とでID認証が実施できずに、エンジンの自動始動ができない状態に陥ることを回避する。
【解決手段】スマートイグニッション機能を備え、ワンプッシュ操作でエンジンの始動・停止動作を行うことができるエンジン始動・停止制御システムを備えたエンジン自動停止始動制御装置おいて、携帯機との通信が途絶した場合はエンジンの自動停止を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワンプッシュ操作でエンジンの始動・停止動作を行うことができるエンジン始動・停止制御システムを備えたエンジン自動停止始動制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、信号待ちなので車両が停止しているような場面、つまりエンジン出力が不要な条件下でエンジンを自動停止させ、その後、エンジン出力が必要な所定条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動することで燃料の節約やエミッションの改善を行う装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年の車両においては、その基本性能や安全性の向上はもとより、その操作性の向上が求められている。そこで、こうした操作性の向上を目的として、従来、スマートイグニッション機能を有するエンジン始動・停止制御システムが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。この種のエンジン始動・停止制御システムでは、所有者(運転者)によって所持される携帯機が車両室内に侵入すると車両に配設されたエンジン制御装置との間で自動的に携帯機とエンジン制御装置とで相互通信によって認証処理が行われ、その認証処理が成立したことを条件としてエンジンが始動可能な状態となる。そして、車両室内に設けられた始動・停止操作部が操作されることによってエンジンの始動処理および停止処理が可能となっている。つまり、運転者は、車両に搭乗して、キーをキーシリンダに挿入させるという煩わしい操作をすることがなくなり、セキュリティを確保して操作性を向上させている。
【特許文献1】特開2003−148314
【特許文献2】特開2001−289142
【特許文献3】特開2001−311333
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

段落[0002]に記載のエンジン自動停止・自動始動する制御装置に、段落[0003]のスマートイグニッション機能を搭載した場合、エンジンが所定条件成立後に自動停止し、その後、所定の始動条件が成立して自動的にエンジンを始動する際に、スマートイグニッション機能を有する携帯機の電池が切れた場合(電池容量が少なく、通信が不可能な状態も含む)、携帯機とエンジン制御部とで相互通信が行えない。つまり、携帯機とエンジン制御部とで認証処理ができなくなり、エンジンを自動停止した後、エンジンを自動始動できなくなる虜がある。
【0005】
このような場合、エンジンの自動停止後からのエンジンの自動始動の際は、携帯機とエンジン制御部とで認証処理を実施せずにエンジンを始動するようにすればいい訳だが、携帯機と車両側とで認証処理を実施しないため、セキュリティ性(車両盗難)に欠けることになる。
【0006】
本発明は、この点に着目してなされたものであり、スマートイグニッション機能を備えた車両において、セキュリティ性を確保してエンジンの自動停止始動制御を可能とするエンジン自動停止始動制御装置およびエンジン自動停止始動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの始動中に前記携帯機との間の相互通信が途絶した場合、エンジンの自動停止を禁止することを要旨とする。
請求項2の発明は、携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの始動中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合、エンジンの自動停止を禁止することを要旨とする。
【0008】
請求項3の発明は、携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンの自動停止を禁止することを要旨とする。
【0009】
請求項4の発明は、携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンを自動始動させることを要旨とする。
【0010】
請求項5の発明は、携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止後、所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動する際に、携帯機との相互通信が途絶していた場合においても、車両盗難の可能性が低いと判断されたとき、前記認証処理によらずエンジンの自動始動を許可することを要旨とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載のセキュリティ性の確保とは、エンジンの自動停止後から所定の発進操作の間にドアの開錠操作が行われないこと要旨とする。
請求項7の発明は、請求項1から6に記載の前記エンジンの自動停止後から所定の発進操作によってエンジンを自動始動させる際、前記エンジンの回転数が所定値以上になったことを検知してから、前記携帯機との相互通信によって認証処理を実施することを要旨とする。
【0011】
請求項8の発明は、請求項2〜4に記載の携帯機の電池容量は携帯機から通信によって受信した携帯機の電池電圧から判断することを要旨とする。
請求項9の発明は、請求項2〜4に記載の携帯機の電池容量は携帯機から受信した電波の強さから判断することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によると、エンジンの始動中に携帯機と車両制御装置との間の相互通信が途絶した場合には、エンジンの自動停止を禁止している。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、自動でエンジンを再始動させる際に、携帯機と車両制御装置とで相互通信による認証処理ができないという事態に陥り、エンジンの自動停止後に自動始動ができなくなるという事態を回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、エンジンの始動中に携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンの自動停止を禁止している。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、自動でエンジンを再始動する際に、携帯機の電池切れ(電池容量が少なく通信不可能状態含む)によって、携帯機と車両制御装置とで相互通信による認証処理ができないという事態に陥り、エンジンの自動停止後に自動始動ができなくなるという事態を回避することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によると、エンジンの自動停止中に携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンの自動停止を禁止している。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、自動で再始動する際に、携帯機の電池切れ(電池容量が少なく通信不可能状態含む)によって、携帯機と車両制御装置とで相互通信による認証処理ができないという事態に陥る前に、エンジンの自動停止を禁止して、エンジンを自動始動させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によると、エンジンの自動停止中に携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンを自動始動させるようにしている。すなわち、エンジンを自動停止させた後に、自動で再始動する際に、携帯機の電池切れ(電池容量が少なく通信不可能状態含む)によって、携帯機と車両制御装置とで相互通信による認証処理ができないという事態に陥る前に、エンジンを自動始動させることが可能となる。
【0016】
請求項5の発明によると、エンジンの自動停止後、所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動する際に、携帯機との相互通信が途絶していた場合、車両のセキュリティ性が確保されていれば、エンジンを自動始動させることを許可している。すなわち、携帯機と車両制御装置とで認証処理が実行できないようなときでも、セキュリティ性が確保されていれば、エンジンの自動停止後からエンジンを自動始動する際においてはエンジンの始動を許可する。つまり、セキュリティ性の確保が確認できた場合は、エンジンの自動停止後からの自動始動を可能とし、走行不能になることを回避することができる。
【0017】
請求項6の発明によると、エンジンの自動停止後から所定の発進操作の間にドアの開錠操作が行われていない場合にセキュリティの確保できているとしている。すなわち、車室内に人の出入りがないような場合であれば、エンジンを始動してもセキュリティ性は確保できることになる。
【0018】
請求項7の発明によると、エンジンの自動停止後から所定の発進操作によってエンジンを自動始動させる際、エンジンの回転数が所定値以上になったことを検知してから、携帯機との相互通信によって認証処理を実行するようにしている。つまり、車両から自動始動処理要求があった場合に、携帯機は所定のIDコードを送信するようにしているため、エンジン始動時に確実に携帯機と車両制御装置とで認証処理を実行させることができ、セキュリティ性が向上する。
【0019】
請求項8の発明によると、携帯機の電池容量は携帯機から通信によって受信した携帯機の電池電圧から判断するようにしている。つまり、携帯機側でセンシングしている電池電圧を車両制御装置に通信でやり取りを行うことによって適切に携帯機の電池容量を検知してエンジンの自動停止始動制御を実施することができるようになる。
【0020】
請求項9の発明によると、携帯機の電池容量は携帯機から受信した電波の強さから判断するようにしている。つまり、通信で電池電圧のデータを送る必要もなく、かつ携帯機側の電池電圧を測定するためのセンサも不要となり、請求項8よりコスト低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図1〜図2に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、車両9は、車両制御装置6(照合制御部1、エンジン制御部2、エアコン制御部3、ボディ制御部4、送受信部5、通信線7,8などから構成される)を備えている。また、車両制御装置6は、携帯機10とIDコードの照合を実施して、車両9を制御している。
【0022】
携帯機10は、所有者(運転者)によって所持され、車両制御装置6(詳細には送受信部5)と相互通信可能となっている。詳しくは、携帯機10は、車両9から出力されたIDコード要求信号13を受信すると、所定のIDコード12を自動的に無線で送信する。このIDコード12は、所定周波数(例えば300MHz)の電波(IDコード信号14)として送信される。
【0023】
車両制御装置6は、送受信部5、照合制御部1、エンジン制御部2、エアコン制御部3、ボディ制御部4を備えている。また、各制御部1〜4は通信線7、8によって電気的に接続されている。
【0024】
また、各制御部1〜4は、図2に示すように、CPU、ROM、RAMからなるCPUユニットによって構成されている。
【0025】
次に、運転者が車室内に設けられた始動・停止SW101を操作してエンジンを始動する制御について説明する。本実施の形態において、始動・停止SW101はエンジン制御部2への入力信号21として接続されている。なお、始動・停止SW101は、モーメンタリ式の押しボタンスイッチによって構成されている。まず、エンジン制御部2は、始動・停止SW101から押圧操作信号が入力されたことに伴い、照合制御部1に照合確認要求信号120を送信する。
【0026】
照合制御部1は、送受信部5にIDコード要求信号151を出力する。送受信部5は、照合制御部1から出力されたIDコード要求信号151を所定周波数の電波(例えば134kHz)に変調し、その電波を車両室内にIDコード要求信号13を出力する。また送受信部5は、携帯機10から送信されたIDコード信号14を受信すると、そのIDコードをパルス信号に復調して照合制御部1に対して出力(IDコード受信信号150)する。
【0027】
照合制御部1は、送受信部5からIDコード受信信号150が入力されると、IDコード受信信号に含まれるIDコードと、自身で予め設定されたIDコードとの比較(IDコード照合)を行う。その結果、それらIDコード同士が一致したときは、照合制御部1は、エンジン制御部2に対して照合成立信号126を送信する。また、それらIDコード同士が不一致のときには、照合制御部1は、エンジン制御部2に対して照合不成立信号127を送信する。
【0028】
エンジン制御部2は、照合成立信号126を受信した際は、エンジンスタータモータ113を駆動させ、インジェクタ110、イグナイタ111を駆動して噴射、点火を行い、エンジンを始動させる。また、エンジン制御部2は、エンジン回転数センサ106からの入力により、エンジン回転数が所定回転数以上になったことを検知するとエンジンスタータモータ113の駆動を停止し、エンジンのみでエンジン自立運転を行う。なお、エンジン自立運転とは、エンジンスタータモータのようにエンジン外部からの動力を利用することなく、燃料の爆発によってエンジン単体でエンジンが駆動している状態のことである。また、エンジン制御部2は、照合不整合信号127を受信した際は、エンジンスタータモータ113、インジェクタ110、イグナイタ111の駆動を禁止する。また、エンジン制御部2はエンジン始動中に始動・停止SW101から押圧操作信号が入力されたことを検知すると、インジェクタ110、イグナイタ111の駆動を停止する。
【0029】
次にエンジン自動停止・自動始動について図3を用いて詳細に説明する。
従来、エンジン制御部2は、エンジンの始動中に、所定の停車条件(ステップS2、S3、S4、S5、S6、S7を満たす条件)に応答してエンジンを自動停止(ステップS10)する。しかし、本発明においては、エンジン制御部2は、所定停止条件(ステップS2、S3、S4、S5、S6、S7を満たす条件)以外にも、携帯機と通信途絶していないか(ステップS8)や、携帯機の電池電圧が所定値以下まで低下していないか(ステップS9)の条件を参照してエンジンの自動停止を許可する構成としている。ここで、ステップS9の電池電圧が所定値以下とは、最低限照合が行える電池容量に設定しておくとよい。
【0030】
ここで、携帯機10と通信途絶していないかのステップS8の処理は、図3には記載していないが、送受信部5と携帯機10とが通信可能状態であるかどうかを指す。つまり、通信途絶状態とは、送受信部5が携帯機10からの送信データを受信できない状態を指す。
【0031】
また、携帯機10の電池電圧が所定値以下かどうかの処理は、図3には記載していないが、携帯機10には携帯機10の電池11の電圧を検出するセンサ等が設けられており、携帯機10はこのセンシングした電池電圧値をIDコード信号14とは別のデータとして送受信部5に送信し、その電池電圧値を通信線7、8を介してエンジン制御部2に送信される。このようにして、エンジン制御部2は、この電池電圧値が所定値以下かどうかチェックできるようになっている。
また、ステップS8のかわりに、送受信部5にて携帯機10からの電波強度を測定し、この電波強度が所定値以下であれば、エンジンの自動停止を禁止する構成としてもよい。
【0032】
更に、従来、エンジン制御部2はエンジンの自動停止後所定の発進操作(ステップS13、S14、S15、S16、S17、S18)に応答して、携帯機とのID照合(ステップS21)を実施して照合成立ならエンジンを自動始動する。つまり、ステップS13では、車両が動いたことを検知するとエンジンを自動始動させる。車両が動いたどうかの検出は車速センサ105からの信号で判断するとよい。また、ステップS14は、運転者によってアクセルが踏まれたことを検知するとエンジンを自動始動させる。アクセルが踏まれたどうかの検出はアクセルセンサ103から判断するとよい。また、ステップS15では、運転者がブレーキを放したことを検知するとエンジンを自動始動させる。ブレーキが踏力はブレーキ圧センサ104から判断するとよい。また、ステップS16では、ブレーキ負圧が不足していることを検知するとエンジンを自動始動させる。ブレーキ負圧の検出はインマニ圧力センサ109から判断するとよい。ステップS17のエンジン始動要求信号124が入力されるとエンジンを自動始動させる。
ここで、エンジン始動要求信号124は、エアコン制御部3で作成された信号である。例えば、エアコン制御部3は、エアコンの温度設定SW133が暖房側に設定されており、ヒータ温度135が低いような状態を検出すると、ヒータの温度を高めるために、エンジン制御部2にエンジン始動要求信号124を送信する。
【0033】
また、本発明においては、エンジン自動停止中に携帯機10の電池11の電圧が所定値以下であることを検出する(ステップS20)とエンジンを自動始動させる。勿論、この際も携帯機10とのID照合(ステップS19)を実施し、照合成立の場合に噴射および点火の作動を続けて許可する。ここで、ステップS20の電池電圧が所定値以下とは、最低限照合が行える電池容量に設定しておくとよい。
【0034】
更に、エンジン自動停止後所定のエンジン始動条件(ステップS13、S14、S15、S16、S17、S18)に応答して、エンジンを自動始動させる際(ステップS24)に、携帯機10と通信途絶していた場合、エンジンの自動停止中にドアの開閉履歴がなければ(ステップS22)エンジンの自動始動(ステップS24)を許可する構成とする。
【0035】
ここで、ステップS22のドアの開閉履歴の処理方法は、ボディ制御部4でエンジンの自動停止中にドア開閉SWの履歴を検知し、ドアの開閉履歴信号125をエンジン制御部2に送信することにより、ドアの開閉履歴が判断できるようになっている。すなわち、ドアの開閉履歴がなければ、運転者の乗り降りはなく、車両盗難の可能性がないと判断できる構成となっている。
【0036】
また、図3に記載していないが、エンジンの自動停止後からエンジンの自動始動に際しての携帯機10とのID照合は、エンジン回転数が所定回転数以上になってからID照合を実施する構成にするとよい。つまり、ステップS13、S14、S15、S16、S17、S18によってエンジンを自動始動させる条件が成立すると、エンジン制御部2はエンジンスタータモータ113を駆動し、かつインジェクタ110およびイグナイタ111を駆動させ、噴射および点火を開始する。前記、エンジン始動動作によりエンジン回転数が所定回転数以上になってから携帯機とのID照合を実施する構成にすれば、エンジン自動始動の際に必ず携帯機10とID照合が確実に実施できるようになる。更に、エンジンを始動させるときにのみ、携帯機10とのID照合を実施する構成にすれば、携帯機10の電池を延命する効果も得られる。
【0037】
次にステップS25〜S28について説明する。ステップS25はエンジンは始動中でなく、かつエンジン自動停止中でないとき、即ち、運転者が車両に乗り込んで始動・停止SWの押圧操作によりエンジンを始動させるような状態である。ステップS25で始動・停止SWの押圧操作有(YES)の場合は、ステップ26でID照合を実施し、ID照合がOKの場合(YES)はステップ27でエンジンを始動させる。ID照合がNGの場合(NO)はS28でエンジンの停止状態を継続させ、エンジンを始動させない。
【0038】
図4から図7に本発明の一実施形態のタイミングチャートを示す。図4は、異常動作なし時(通信途絶なし時)のエンジン処理のフローチャートである。t1で運転者が車両に乗車して、車両電子制御装置6と携帯機10で認証OKフラグがオンになる。t2で運転者が始動・停止SWを押印してエンジンが始動する。t3で図3のS2〜S8の条件が成立してエンジンを自動停止する。t4で例えばブレーキをオフすることによってS4の条件が成立せず、エンジンを自動始動する。t5でエンジン回転数が所定回転数以上になって、車両電子制御装置6と携帯機10との認証処理を実施し、認証OKとなる。t6で運転者が始動・停止SWを押印してエンジンを停止する。t7で運転者が降車する。
【0039】
図5は、エンジン始動中に通信異常が発生したときのエンジン処理フローである。エンジン始動中に通信が途絶(t13)すると、図3のS8の条件が成立しないため、S2〜S7の条件が成立してもエンジンを自動停止することがなくなる。
図6は、エンジン自動停止中に通信途絶が発生し、かつドアの開錠が無かった時の処理フローである。t23で図3のS2〜S8の条件が成立してエンジンを自動停止する。t24で車両制御装置6と携帯機10との通信が途絶する。t25で例えばブレーキをオフすることによってS4の条件が成立せず、エンジンを自動始動する。t26でエンジンが所定回転数以上となり車両制御装置6と携帯機10とで認証処理を実行するが通信途絶のため認証処理は成立しない。しかし、エンジン自動停止中(t23〜t26の間)でドアの開錠がないため、セキュリティ性が確保できているとして、認証OKフラグをダミーでオンして、エンジン始動を継続する。
【0040】
図7は、エンジン自動停止中に通信途絶が発生し、かつドアの開錠が有った時の処理フローである。t33で図3のS2〜S8の条件が成立してエンジンを自動停止する。t34で運転者がドアの開錠を行う。t35で車両制御装置6と携帯機10との通信が途絶する。t36で例えばブレーキをオフすることによってS4の条件が成立せず、エンジンを自動始動する。t37でエンジンが所定回転数以上となり車両制御装置6と携帯機10とで認証処理を実行するが通信途絶のため認証処理は成立しない。また、エンジン自動停止中(t33〜t37の間)でドアの開錠が有るため、セキュリティ性が確保できていないとしてエンジンの自動始動は禁止してエンジンを停止する。t38で運転者が始動・停止SWを押印してエンジンを始動させようとしても、車両電子制御装置6と携帯機10とで認証OKとなっていないため、エンジンの始動を許可しない。このような場合、携帯機10の電池が切れると手動でもエンジンを始動させることができなくなるため、エマージェンシー用のキーシリンダを用意しておき、運転者がそのキーシリンダに携帯機の挿入してエンジンを始動できるよな構成としておけば、携帯機の電池が切れた場合でもエンジンを手動で始動できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例であるエンジン自動停止始動制御装置の概略図を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施例であるエンジン自動停止始動制御装置の概略図を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施例であるエンジン自動停止始動制御装置のスローチャートを示す構成図である。
【図4】本発明の一実施例であるエンジン処理フロー(異常なし時)
【図5】本発明の一実施例であるエンジン処理フロー(エンジン始動中に通信異常発生時)
【図6】本発明の一実施例であるエンジン処理フロー(エンジン自動停止中に通信途絶発生かつドアの開錠無しり時)
【図7】本発明の一実施例であるエンジン処理フロー(エンジン自動停止中に通信途絶発生かつドアの開錠有り時)
【符号の説明】
【0042】
1:照合制御部
2:エンジン制御部
3:エアコン制御部
4:ボディ制御部
5:送受信部
6:車両制御装置
7:通信線
8:通信線
9:車両
10:携帯機
11:電池
12:IDコード(携帯機側)
21:エンジン制御部へ入力信号
22:エンジン制御部の出力信号
23:エアコン制御部の入力信号
24:ボディ制御部の入力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、
前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの始動中に前記携帯機との間の相互通信が途絶した場合、エンジンの自動停止を禁止することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、
前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの始動中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合、エンジンの自動停止を禁止することを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、
前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンの自動停止を禁止することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、
前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止中に前記携帯機の電池容量が所定値以下であることを検知した場合には、エンジンを自動始動させることを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御装置であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定部を備え、
前記エンジン自動停止始動判定部は、エンジンの自動停止後、所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動する際に、携帯機との相互通信が途絶していた場合においても、車両盗難の可能性が低いと判断されたとき、前記認証処理によらずエンジンの自動始動を許可することを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
前記車両盗難の可能性が低いとは、エンジンの自動停止後から所定の発進操作の間にドアの開錠操作が行われないことを特徴とする請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記エンジンの自動停止後から所定の発進操作によってエンジンを自動始動する際、前記エンジンの回転数が所定値以上になったことを検知してから、前記携帯機との相互通信によって認証処理を実施することを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記携帯機の電池容量は携帯機から通信によって受信した携帯機の電池電圧から判断することを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記携帯機の電池容量は携帯機から受信した電波の強さから判断することを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の車両制御装置。
【請求項10】
その携帯機との相互通信によって認証処理が確立したことを条件としてエンジンの始動を許可する車両制御方法であって、
エンジンの始動中に、所定の停車条件に応答してエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止後は所定の発進操作に応答してエンジンを自動始動するエンジン自動停止始動判定ステップを備え、
前記エンジン自動停止始動判定ステップは、エンジンの始動中に前記携帯機との間で相互通信が途絶した場合、エンジンの自動停止を禁止することを特徴とする車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−133364(P2010−133364A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311138(P2008−311138)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】