説明

エンジン自動始動停止制御装置及びエンジン制御方法

【課題】 空調装置の暖房性能が十分に満たされるか否かを判定してエンジンを自動停止させることができるエンジン自動始動停止制御装置を提供する。
【解決手段】 所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるエンジン自動停止制御を行うと共に、エンジン自動停止制御によるエンジン停止中に所定の始動条件が成立すると、エンジンを始動させるエンジン自動始動制御を行うエコランECU10であって、ヒータ装置40を動作させている状態にあるときに、エンジンを冷却する冷却水の温度と、空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度とに基づいて、エンジンを自動停止させる停止条件を設定する手段と、設定された停止条件が成立した場合に、エンジンの停止を指示する手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン自動始動停止制御装置及びエンジン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の普及に伴い、排気ガスの排出量も増加傾向にある。排気ガスの排出量の増加が今後も続くと、地球温暖化、大気汚染など地球にとって深刻な問題となる。そこで、排気ガス量の低減等を目的として、所定のエンジン停止条件成立時にエンジン停止を指令し、その後の所定のエンジン始動条件成立時にエンジン再始動を指令するエコラン制御が車両に搭載されるようになってきた。
【0003】
図1を参照しながらエコラン制御について説明する。エコラン制御を行うエコランECU100は、車両が停止し、エコラン制御可能な状態になると、図1に示すようにエンジンEUC200に対してエコラン要求(エンジン停止要求)を出力する。エンジンECU200は、エコラン要求を受け付けると、燃料カットを実施し、エンジンを停止させる。
【0004】
また、エンジンの始動時には、エコランECU100がドライバの始動操作(シフト操作、ブレーキ操作、クラッチ操作など)を検出し、エンジンの始動要求をエンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、エコランECU100からの始動要求を受け付けると、燃料カットを解除してエコランECU100にスタータ駆動許可信号を出力する。エコランECU100は、スタータモータを駆動してエンジンを始動させる。
【0005】
このようなエコラン制御を実施することで、排気ガス量や燃料消費量を削減することができる。
しかしながら、エンジン停止条件が成立し、エンジンのアイドリングをストップをした場合、エンジンが停止するためエンジン水温が低下してしまう。エンジン水温が低下すると、エンジン水温を利用してユーザに温風を出力しているヒータの制御に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
図2を参照しながらエコラン制御がヒータの温度制御に影響を及ぼすケースについて説明する。
図2には、エコランモードに移行する直前に、車両に搭載されたヒータをオン、オフさせるブロアスイッチ(以下、ブロアSWと略記する)がオンされた場合のエコランECU100の制御手順を示す。
なお、エコランECU100によるエコランの制御状態には4つの状態がある。第1の状態は、エンジンの始動が完了し、エンジンが回転している「エンジン回転状態」である。第2の状態は、アイドリングストップ条件が成立し、エンジンECU200に対して燃料カットを要求している「アイドリングストップ準備状態」である。第3の状態は、アイドリングストップ制御によって、エンジンが停止している状態である「アイドリングストップ状態」である。第4の状態は、スタータモータを駆動してエンジンを始動させている状態である「エンジン始動状態」である。
【0007】
アイドリングストップ条件が設立し、第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する直前にブロアSWがオンされたものとする(図2(H)のタイミングa参照)。ブロアSWがオンされると、ブロアモータが駆動を開始し、ブロアファンによる送風空気が車室内に送風される。
ブロアSWがオンされると、エコランECU100はまずエンジン水温を判定する。このときのエンジン水温が例えば70℃の高温であったとする。エコランECU100は、エンジン水温が高く、ヒータのためにエンジンをオンさせておく必要がないと判定し、エコランを許可する。エコランモードへの移行が許可されると、上述した第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する(図2に示すタイミングb参照)。ここでは、エコランECU100は、エンジンECU200に対して燃料カットを要求する。
【0008】
エンジンECU200が燃料カットを行い、第3の状態である「アイドリングストップ状態」に移行すると(図2に示すタイミングc参照)、エコランECU100は、センサによって測定されたブロアファンの吹き出し口温度を取得して、メモリに記録する。ブロアファンの吹き出し口には、吹き出し口温度を測定するセンサが設けられている。
また、エコランECU100は、外気温センサによって測定された外気温を取得してメモリに記録する。
【0009】
エコランECU100には、図3に示すマップが用意されている。このマップは、車両周辺の外気温から、エンジンをオンさせる必要があるブロアファンの吹き出し温度を決定するマップである。図3に示すマップでは、外気温がマイナス20℃のときには吹き出し口温度は60℃、外気温度が5℃のときには吹き出し口温度は40℃に設定されている。
エコランECU100は、外気温センサによって測定された外気温を取得し、取得した外気温のときに、エンジンをオンさせる必要があるブロアファンの吹き出し温度をマップを参照して決定する(図3に示すマップから求めたエンジンON吹き出し温度)。この温度を以下では、第1しきい値温度と呼ぶ。図2に示す例では、図2(F)に示す外気温度が5℃であるので、マップを参照して第1しきい値温度は40℃に設定される。
【0010】
また、エコランECU100は、第3の状態である「アイドリングストップ状態」へ移行した時に吹き出し口温度センサからブロアファンの吹き出し口温度を取得する。そして、取得した吹き出し口温度から所定温度(例えば、本実施例では、8℃に設定)を減算した値を第2しきい値温度とする。人間工学的に、ヒータの温度が8℃前後低下すると人が寒いと感じる。そのため、第3の状態に移行したときのブロアファンの吹き出し口温度から所定温度を減算して第2しきい値温度を設定する。なお、この8℃という温度は、任意に変更可能である。また、図2に示す例では、アイドリングストップ状態に移行した際の吹き出し口温度が30℃であるので、30℃から8℃を減算した22℃が第2しきい値温度として設定される。
【0011】
次に、エコランECU100は、第1しきい値温度と第2しきい値温度とを比較して、温度の低いほうをエンジンをオンさせるしきい値温度(以下、エンジンONしきい値と呼ぶ)に設定する。ここで、温度の低い方をエンジンを始動させるしきい値に設定しているのは、アイドリングストップ状態はできる限り長く継続させたいが、外気温度に基づく人が寒いと感じる可能性がある温度と、温度低下量に基づく人が寒いと感じる可能性がある温度との両方の温度を実温度が下回った場合は、乗員が寒いと感じている可能性が高いと判定できるからである。図2に示す例では、第1しきい値温度は40℃であり、第2しきい値温度は22℃であるので、第2しきい値温度(22℃)をエンジンONしきい値に設定する。
【0012】
この後、エコランECU100は、ブロアファンの吹き出し口温度を監視する。第3の状態である「アイドリングストップ状態」では、エンジンが停止するためにエンジン水温も低下し、ヒータの吹き出し温度が低下してくる(図2に示すタイミングd〜e区間)。そして、エコランECU100は、吹き出し口温度がエンジンONしきい値である22℃を下回ると、エンジンをオンさせて「エンジン始動状態」の第4の状態に移行させる(図2に示すタイミングe参照)。
【0013】
特許文献1では、アイドルストップ状態のときに、ユーザが吹き出し温度条件として設定した温度よりも、吹き出し口の空気温度が高い場合には、アイドルストップ状態を停止してエンジンをオンさせる技術が開示されている。
【0014】
また、特許文献2では、エアコンによる冷房要求と、エンジンの自動停止とが重なった場合に、エアコンのコンプレッサの駆動を停止し、乗員が設定した目標車室内温度と実際の車室内温度との差が予め設定した値よりも大きくなった場合に、エアコンのコンプレッサの駆動を再開する。
【0015】
また、特許文献3では、エンジンを自動停止させた後、空調装置の入口空気温度が設定温度以下の場合には、直ちにエンジンを始動し、空調装置の入口空気温度が設定温度よりも高い場合には、エンジンの自動停止継続時間と、自動停止実施時間上限値とを比較して、自動停止継続時間が自動停止実施時間上限値を超えるとエンジンを始動させる。
【0016】
また、特許文献4では、冷却液温度センサによって検出された冷却液温度がアイドリングストップ開始冷却液温度以上となったところでアイドリングストップを許可している。
【0017】
【特許文献1】特開2006−240459号公報
【特許文献2】特開2000−179374号公報
【特許文献3】特許第3870904号公報
【特許文献4】特開2001−263123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
空調装置は、エンジンの冷却水を熱源とし、冷却水とブロアファンからの空気との間で熱交換を行って送風空気の加熱を行う。ブロアSWのオン直後は、空調装置からの送風空気の温度は低く、所定時間をかけて徐々に上昇していく。例えば、図2に示すタイミングa〜dの区間では吹き出し口温度が徐々に上昇し、未確定状態となっている。
【0019】
また、冷却水の温度は、水温センサで測定されるが、この水温センサはラジエータや機械式ウォータポンプ等が設けられた冷却水の冷却経路上に設けられている。エコラン制御中は、エンジンが停止するので、エンジンを駆動源とする機械式ウォータポンプの動作も停止する。従って、水温センサで測定される冷却経路上の冷却水の温度変化は小さい。
一方、冷却水の一部を車内暖房用として利用するための暖房用経路上の冷却水の温度は、ブロアファンからの送風空気に熱を奪われて温度変化が大きくなる。また、冷却水の温度低下率は、外気温やブロアファンの送風空気量によっても変動する。
従って、ブロアSWのオン直後にエコラン制御に移行すると、冷却経路上の冷却水の温度と、暖房用経路上の冷却水の温度とに温度差が生じる。水温センサでは、冷却経路側の冷却水の温度を測定することができても、暖房用経路側の冷却水の温度を測定することができない。このため、水温センサで測定されたエンジン水温だけからエコラン制御の許可判定を行っていると、空調装置の送風空気が所定温度を満たせず、エコラン制御中の暖房性能を満たすことができない状態が生じる可能性がある。
【0020】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、空調装置の暖房性能が十分に満たされるか否かを判定してエンジンを自動停止させることができるエンジン自動始動停止制御装置及びエンジン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かかる目的を達成するために本発明のエンジン自動始動停止制御装置は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるエンジン自動停止制御を行うと共に、前記エンジン自動停止制御によるエンジン停止中に所定の始動条件が成立すると、前記エンジンを始動させるエンジン自動始動制御を行うエンジン自動始動停止制御装置であって、前記エンジンを自動停止させる停止条件を設定する停止条件設定手段と、前記停止条件設定手段で設定された停止条件が成立した場合に前記エンジンの停止を指示するエンジン停止制御手段と、前記エンジン停止制御手段による前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度に基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定する始動条件設定手段と、前記始動条件設定手段で設定された始動条件が成立した場合に前記エンジンの始動を指示するエンジン始動制御手段と、を備え、前記停止条件設定手段は、前記空調装置を作動させている状態にある場合には、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを前記停止条件に含めることを特徴としている。
本発明は、空調装置を作動させている状態にある場合には、空調装置の吹き出し温度が所定温度以上であるこを条件にエンジンを自動停止させる。従って、空調装置の暖房性能が十分に満たされるか否かを判定してエンジンを自動停止させることができる。
また、エンジンを自動で停止させた後に、空調装置の吹き出し温度に基づいてエンジンを始動させる条件を設定するので、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【0022】
上記エンジン自動始動停止制御装置において、前記停止条件設定手段は、前記冷却水の温度が第1しきい値温度以上であり、前記空調装置の吹き出し温度が第2しきい値温度以上の状態が所定時間以上継続した場合を前記エンジン自動停止制御の前記停止条件として設定することを特徴としている。
従って、エンジン自動停止制御中に空調装置が空調性能を維持できるか否かを精度よく判定して、エンジンを停止させることができる。
【0023】
上記エンジン自動始動停止制御装置において、前記始動条件設定手段は、前記エンジン停止後の前記吹き出し温度に応じて、前記始動条件を再設定することを特徴としている。
従って、エンジン停止後の吹き出し温度に基づいてエンジンを始動させる条件を再設定するので、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【0024】
上記エンジン自動始動停止制御装置において、前記始動条件設定手段は、前記始動条件の設定を行った後に前記吹き出し温度が上昇している場合に、上昇した前記吹き出し温度に基づいて前記始動条件の再設定を行うことを特徴としている。
空調装置の吹き出し温度が上昇する側に変化したときには、エンジンを始動させる吹き出し温度条件が低いままであると、変化した吹き出し温度と吹き出し温度条件との温度差が大きくなる。すなわち、吹き出し温度が大きく低下しないとエンジンが自動で始動しない。このため、乗員が寒いと感じてしまう。そこで、変化した吹き出し温度に応じて吹き出し温度条件を変更することで、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【0025】
上記エンジン自動始動停止制御装置において、前記始動条件設定手段は、前記吹き出し温度をピークホールドし、該ピークホールドした吹き出し温度に基づいて前記始動条件の再設定を行うことを特徴としている。
従って、空調装置の吹き出し温度の変化をエンジンを始動させる吹き出し温度条件に的確に反映させることができる。
【0026】
本発明のエンジン自動始動停止制御装置は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるエンジン自動停止制御を行うと共に、前記エンジン自動停止制御によるエンジン停止中に所定の始動条件が成立すると、前記エンジンを始動させるエンジン自動始動制御を行うエンジン自動始動停止制御装置であって、前記エンジンを自動停止させる停止条件を設定する停止条件設定手段と、前記停止条件設定手段で設定された停止条件が成立した場合に前記エンジンの停止を指示するエンジン停止制御手段と、前記エンジン停止制御手段による前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記エンジンを冷却する冷却水の温度と、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度とに基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定する始動条件設定手段と、前記始動条件設定手段で設定された始動条件が成立した場合に前記エンジンの始動を指示するエンジン始動制御手段と、を備え、前記停止条件設定手段は、前記空調装置を作動させている状態にある場合には、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを前記停止条件に含めることを特徴としている。
【0027】
本発明のエンジン制御方法は、エンジンを自動停止させる停止条件を設定するステップと、設定された停止条件が成立した場合に、前記エンジンの停止を指示するステップと、前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度に基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定するステップと、設定された始動条件が成立した場合に、前記エンジンの始動を指示するステップと、を備え、前記停止条件には、前記空調装置を作動させている状態にある場合に、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、空調装置の暖房性能が十分に満たされるか否かを判定してエンジンを自動停止させることができる。また、また、エンジンを自動で停止させた後に、空調装置の吹き出し温度に基づいてエンジンを始動させる条件を設定するので、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
添付図面を参照しながら本発明の最良の実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
まず、図4を参照しながら本実施例の構成を説明する。なお、本明細書におけるエコの定義として、エコノミーとエコロジーの両方、又はいずれか一方の意味を持つものとする。エコノミーとは、燃料の消費を抑えて燃料を節約(省燃費)することを意味する。また、エコロジーとは、化石燃料の消費を抑えたり、又は化石燃料の燃焼などによって生じる有害物質や二酸化炭素の発生、排出を抑えることを意味する。
【0031】
図4に示す車両制御システムは、エコランECU10、エンジンECU21、メータECU22、ボディECU23、ブレーキECU24、電動パワーステアリングECU25、エアコンECU26等の複数のECUが通信バスに接続されている。
これら複数のECUは、CAN(Controller Area Network)等の通信プロトコルに従って通信を行う。
【0032】
エンジンECU21は、エンジンへの燃料噴射量を電子的に制御するEFI(Electronic Fuel Injection)に接続してエンジン出力を制御し、車両の走行スピードを調整している。
また、エンジンECU21は、エンジンの回転数がアイドル回転であった場合には、エコランECU10にエンジン停止許可信号を出力する。
また、エンジンECU21は、エコランECU10からの燃料カット要求に応じて、エンジンへの燃料供給をカットする。さらに、エコランECU10から燃料カット解除要求が出力されると、この要求に応じてエンジンに燃料を供給する。
【0033】
メータECU22は、各種センサ(不図示)からの検出信号を受け取り、各種演算等を実行することで、車速表示、エンジン回転数表示、シフト位置表示、燃料残量表示、水温表示等の表示を行うための出力を発生させる。
【0034】
ボディECU23は、ドアロック機構やパワーウィンドウ機構等の車両に搭載された機構を制御する。
【0035】
ブレーキECU24は、ディスクブレーキやドラムブレーキ等のブレーキを作動させて、車両の減速や停止などを電子的に制御する。
【0036】
電動パワーステアリングECU25は、回転角センサから送られる操作レバーの回転角の量に応じて操舵装置の駆動モータを駆動制御する。
【0037】
エアコンECU26は、ドライバの要求や車両の走行状態等に基づいてコンプレッサを駆動して空調制御を実施する。
【0038】
エコランECU10は、本発明の始動条件設定手段、エンジン始動制御手段、第1の温度条件設定手段、第2の温度条件設定手段、エンジン停止制御手段として機能する。具体的には、エコランECU10は、エンジンECU21や図示しない他の各種センサ等から自動停止条件及び自動始動条件を判断するための情報を受け取り、エンジンの運転時に自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、エンジンの停止時に自動始動条件が満たされるとスタータモータを起動させてエンジンを始動させるエコラン制御(この制御の詳細については後述する)を実行する。
また、エコランECU10は、各種センサからの信号を入力する入力端子を備え、この入力端子からブレーキが作動状態であることを示すブレーキ信号、変速機のシフトポジションを示すシフト信号、車速を示す車速信号、アクセルの開度を示すアクセル開度信号、エンジンの回転数を示すエンジン回転数信号、バッテリの電圧を示す電圧信号、エンジンの冷却水の温度を示すエンジン水温信号等を入力する。また、エコランECU10には、後述するエンジン水温センサ34で測定されたエンジン水温を示す信号、吹き出し口温度センサ43によって測定された吹き出し口温度を示す信号、ブロアSWのオン、オフを示すブロアSW信号が入力される。
【0039】
また、エコランECU10は、図4に示すトランジスタ12をオンすることで、スタータモータ17を駆動させる。
イグニッションキーで操作されるスタータスイッチ(以下、キーSWと略記する)14、ニュートラルスイッチ(以下、ニュートラルSWと略記する)15、スタータリレー16が接続された配線13には、トランジスタ12を介してバッテリからの電源ライン11が接続されている。エコランECU10のマイコン70によってトランジスタ12がオンされると、スタータリレー16のコイルが通電し、スタータリレー16がオンする。スタータリレー16がオンするとスタータモータ17にバッテリからの電力が供給され、スタータモータ17の作動によりエンジンが始動する。
【0040】
図5には、エコランECU10のマイコン70のハードウェア構成を示す。
マイコン70は、CPU71、ROM72、RAM73、NVRAM(Non Volatile RAM)74、入出力部75等を有している。CPU71は、ROM72に格納したプログラムを読み込んで、このプログラムに従った演算を行う。すなわち、ROM72に格納されたプログラムをCPU71が読み込むことで、後述するエコラン制御を実施する。また、RAM73には、演算結果のデータが書き込まれ、NVRAM74は、RAM73に書き込まれていたデータで、電源オフ時に保存の必要なデータが書き込まれる。
【0041】
図6には、エンジン30を冷却する冷却水の循環経路と、車室内を暖機するヒータ装置(空調装置)40の構成とを示す。冷却水の循環経路は、冷却水を冷却する冷却経路35と、冷却水の一部を車内暖房用として利用するためのヒータ経路50とから構成される。
冷却経路35には、冷却水を圧送するウォータポンプ31、シリンダブロック及びシリンダヘッド内のウォータジャケット32、熱交換器であるラジエータ33等が設けられている。また、冷却経路35には、エンジンから流出する冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ34が設けられている。エンジン水温センサ34で測定されたエンジン水温は、エコランECU10に出力される。
【0042】
ヒータ経路50は、エンジン30を通過した冷却水をヒータコア42に流入させる第1流路51と、ヒータコア42から流出する冷却水を冷却水経路へと戻す第2流路52とを有している。ヒータコア42において、第1流路51を介して流入した高温の冷却水と、ヒータ装置40のブロアファン41からの空気との間で熱交換が行われ、この熱交換によって、加熱された空気が車室内の暖房に利用される。また、ヒータ装置40の温風を車室内に導くダクトの吹き出し口付近には、温風の温度を測定する吹き出し口温度センサ43が設けられており、エコランECU10は、この吹き出し口温度センサ43によって測定された吹き出し口温度を取得する。
【0043】
なお、吹き出し口温度センサ43の取付け位置は、図6に示す例では送風空気を車室内へ送る各吹き出し口に分岐する前の集合部分に設けている。これ以外に、各吹き出し口への経路に分岐した後の部分にそれぞれ吹き出し口温度センサ43を設ける構成であってもよい。又、各吹き出し口への経路に分岐した後の部分の少なくとも1つに設けてもよい。
【0044】
次に、図7を参照しながら、エコランモードに移行する直前に、ブロアSWがオンされた場合のエコランECU10の制御手順を示す。
【0045】
アイドリングストップ条件が設立し、第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する直前にブロアSWがオンされたものとする(図7(I)参照)。ブロアSWがオンされると、ブロアモータ(不図示)が駆動を開始し、ブロアファン41による送風空気が車室内に送風される。但し、ブロアSWオン後、所定時間の間は吹き出し口温度センサ43の測定する吹き出し口温度の変化が大きく安定しない状態となる(図7に示すタイミングa〜cの区間)。
【0046】
ブロアSWがオンされると、エコランECU10はまずエンジン水温を判定する。このときのエンジン水温が例えば70℃の高温であったとする(図7(B)エンジン水温のタイミングaの温度参照)。エコランECU10は、エンジン水温が高く、ヒータのためにエンジンをオンさせておく必要がないと判定し、エコランを許可する。エコランモードへの移行が許可されると、第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する。ここでは、エコランECU10は、エンジンECU21に対して燃料カットを要求する。
なお、図7(A)のエコランモードに示す数字が、エコランモードを示している。例えば「2」は第2の状態を示し、「3」は第3の状態を示している。
【0047】
エンジンECU21が燃料カットを行い、第3の状態である「アイドリングストップ状態」に移行すると、エコランECU10は、吹き出し口温度センサ43によって測定されたブロアファン41の吹き出し口温度を取得して、RAM73に記録する。
また、エコランECU10は、外気温センサ(不図示)によって測定された外気温を取得し、取得した外気温をRAM73に記録する。
【0048】
次に、エコランECU10は、取得した外気温のときに、エンジンをオンさせる必要があるブロアファン41の吹き出し温度をマップを参照して決定する(図3に示すマップから求めたエンジンON吹き出し温度)。この温度を以下では、第1しきい値温度と呼ぶ。図7に示す例では、外気温センサで測定した外気温度が5℃であるので(図7(G)参照)、エコランECU10はマップを参照して第1しきい値温度を40℃に設定する(図7(D)のタイミングb点参照)。
【0049】
また、エコランECU10は、第3の状態である「アイドリングストップ状態」へ移行した時に取得したブロアファンの吹き出し口温度から所定温度(例えば、本実施例では、8℃に設定)を減算した値を第2しきい値温度とする(図7(E)のタイミングb参照)。
本実施例のエコランECU10は、吹き出し口温度センサ43によって測定される吹き出し口温度をピークホールドする。すなわち、吹き出し口温度の最大値が更新されるたびに、この最大値を吹き出し口温度に設定する。また、吹き出し口温度の変更に伴って、第2しきい値温度も随時変更していく。図7に示す例では、エコラン開始時の吹き出し口温度が30℃であったため、第2しきい値温度は22℃に設定されている。しかし、図7に示すタイミングcでは、吹き出し口が45℃となるため、第2しきい値温度も37℃に設定される。なお、図7に示すタイミングcは、吹き出し口温度が上がりきり、以降、エンジンが始動されるまで、吹き出し温度が下がる一方に変化する点である。また、図7のタイミングb〜cの区間に示す吹き出し口温度の点線は、ブロアSWがオンされてから十分な時間を経過した後にエコラン制御に移行した場合の吹き出し口温度の推移を示す。
【0050】
次に、エコランECU10は、第1しきい値温度と第2しきい値温度とを比較して、温度の低いほうをエンジンONしきい値に設定する。ここで、温度の低い方をエンジンを始動させるしきい値に設定しているのは、アイドリングストップ状態はできる限り長く継続させたいが、外気温度に基づく人が寒いと感じる可能性がある温度と、温度低下量に基づく人が寒いと感じる可能性がある温度との両方の温度を実温度が下回った場合は、乗員が寒いと感じている可能性が高いと判定できるからである。
エコラン開始時には、吹き出し口温度は30℃であったため、第2しきい値温度である22℃がエンジンONしきい値に設定される。しかしその後、ブロアSWをオンしてから吹き出し口温度が安定するまでには、数十秒かかるため、吹き出し口温度が徐々に上昇する。エコランECU10は、吹き出し口温度の最高値をピークホールドしているため、エンジンONしきい値も吹き出し口温度の上昇に合わせて変更される。図7に示すタイミングcでは、エンジンONしきい値は37℃に設定される。
【0051】
この後、エコランECU10は、ブロアファンの吹き出し口温度を監視し、吹き出し口温度がエンジンONしきい値である37℃を下回ると、エンジンをオンさせて「エンジン始動状態」の第4の状態に移行させる(図7に示すタイミングd参照)。
すなわち、エコランECU10は、エンジンの再始動が必要であると判定すると、エンジンECU21にスタータモータによるエンジンの駆動を要求する。エンジンECU21は、エンジンの回転数に応じて、エコランECU10からのスタータ駆動要求を許可するか否かを判定する。エコランECU10は、エンジンECU21からスタータ駆動を許可する許可信号を入力すると、図4に示すトランジスタ12をオンさせて、スタータモータ17を駆動させる。
【0052】
このように本実施例は、エンジンを停止させたときにヒータ装置40が作動している場合には、空調装置の吹き出し温度を測定し、吹き出し温度が上昇したときには、上昇した温度に基づいてエンジンを自動始動させる吹き出し温度条件を再設定する。従って、エンジン停止制御の直前にヒータ装置40がオン操作されても、エンジンを始動させる温度を適切な温度に設定することができ、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動することができる。
【0053】
また、第3の状態である「アイドリングストップ状態」へ移行した後に、ブロアSWがオンされた場合には、図8に示すように第1しきい値温度と第2しきい値温度との比較は行わずに、外気温度と車室内の温度との少なくとも一方に基づいて求めた第1しきい値温度を直ちにエンジンONしきい値に設定してもよい。また、第3の状態へ移行した後に、ブロアSWがオンされた場合には、直ちにエンジンを始動させてもよい。車両の状態が第3の状態であるときにブロアSWがオンされた場合には、ユーザは寒いと感じている。このため、エコランECU10は、第2しきい値温度、すなわち温風の吹き出し口温度によってエンジン30が始動するまでの時間が長くなることを抑制するため、外気温が低ければ直ちにエンジンをオンする。
【0054】
また、上述した実施例では、第1しきい値温度を外気温センサによって測定された外気温に基づいて算出しているが、車室内に温度センサを設けて、この温度センサによって測定された車室内の温度に基づいて第1しきい値温度を設定することもできる。
【0055】
なお、上述した実施例では、エコランを許可するか否かの判定は、エンジン水温で行っているのに対し、エコラン中にエンジンの始動を行うか否かの判定はブロアの吹き出し口温度を用いている。これは、本来、エンジン水温のほうが現状のヒータの性能を正確に推定できるが、エンジンが停止してエンジン冷却水を循環させるためのウォータポンプが停止している場合には、ヒータ付近のエンジン水温を正確に測定できなくなるためである。
また、エコランECU10は、エンジン水温が所定温度以上である、吹き出し口温度センサ43で測定される吹き出し口温度が所定温度以上であるという2つの条件のうちの少なくとも一方の条件が満たされた場合に、アイドリングストップを許可してエンジンを停止させる。
【実施例2】
【0056】
添付図面を参照しながら本発明の第2実施例を説明する。なお、第2実施例の構成は、上述した第1実施例と同一であるので構成の詳細な説明は省略する。
【0057】
図9を参照しながら、エコランモードに移行する直前に、ブロアSWがオンされた場合のエコランECU10の制御手順を示す。
【0058】
アイドリングストップ条件が設立し、第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する直前にブロアSWがオンされたものとする(図9(I)のタイミングa参照)。ブロアSWがオンされると、ブロアモータ(不図示)が駆動を開始し、ブロアファン41による送風空気が車室内に送風される。但し、ブロアSWオン後、所定時間の間は吹き出し口温度センサ43の測定する吹き出し口温度の変化が大きい安定しない状態となる(図9に示すタイミングa〜eの区間)。
【0059】
ブロアSWがオンされると、エコランECU10はまずエンジン水温を判定する。このときのエンジン水温が例えば70℃の高温であったとする(図9(B)にエンジン水温を示す)。
また、エコランECU10は、外気温センサ(不図示)によって測定された外気温を取得する。外気温を取得するとエコランECU10は、図3に示すマップを参照して、取得した外気温のときにエンジンをオンさせる必要があるブロアファン41の吹き出し口温度を求める。この温度を以下では、第1しきい値温度と呼ぶ。図9に示す例では、外気温センサで測定した外気温度が5℃であるので(図9(G)参照)、エコランECU10はマップを参照して第1しきい値温度を40℃に設定する(図9(E)のタイミングa参照)。
【0060】
次に、エコランECU10は、吹き出し口温度センサ43で測定される温風の吹き出し口温度を取得し、この吹き出し口温度と第1しきい値温度とを比較する。図9に示す例では、第1しきい値温度は40℃に設定されているので、エコランECU10は、吹き出し口温度センサ43で測定される吹き出し口温度が40℃に到達したか否かを判定する。図9に示す例では、図9(C)に示す吹き出し口温度がタイミングbで40℃に到達している。
吹き出し口温度が40℃に到達すると、エコランECU10は図9(D)に示す吹き出し口温度確定検出タイマのカウントを開始する。この吹き出し口温度確定検出タイマは、吹き出し口温度が第1しきい値温度以上である時にカウントを開始して、吹き出し口温度が第1しきい値温度よりも下回ると、カウントを終了する。
【0061】
本実施例では、エコランECU10がエコランを許可する条件として、2つの条件を設定している。
1つ目は、エンジン水温が所定温度以上の状態にあることであり、2つ目は、吹き出し口温度が第1しきい値以上の状態が所定時間以上継続することである。
水温センサ34によって測定されるエンジン水温が所定温度以上であるか否かだけを判断材料として、エコラン制御への移行を許可するか否かを判定していると、ヒータ装置40の送風空気が所定温度に到達せず、エコラン制御中の暖房性能を満たすことができない状態が生じる可能性がある。
このため、本実施例では、送風空気を車室内に導くダクトの吹き出し口付近に設けた吹き出し口温度センサ43により吹き出し口の温度を測定し、エコランECU10で吹き出し口温度が第1しきい値以上の状態が所定時間継続しているか否かを判定している。
第1しきい値温度は、外気温に応じて決定されたエンジンをオンさせる必要があるブロアファンの吹き出し口温度であるから、吹き出し口温度が第1しきい値温度以上であれば、エコラン制御中であってもヒータ装置40が暖房性能を満たすことができる。
なお、本実施例では2つ目の条件として、吹き出し口温度が第1しきい値以上の状態が所定時間以上継続したかを判定しているが、吹き出し口温度が第1しきい値以上の温度に上昇した場合には、2つ目の条件を満たしたと判定するようにしてもよい。
【0062】
吹き出し口温度確定検出タイマのカウントがT[sec]に到達し、エンジン水温が所定温度以上の状態にあると(図9(D)のタイミングc参照)、エコランECU10は、エコラン制御への移行を許可する。エコランモードへの移行が許可されると、第2の状態である「アイドリングストップ準備状態」に移行する(図9(A)のタイミングc参照)。ここでは、エコランECU10は、エンジンECU21に対して燃料カットを要求する。
【0063】
エンジンECU21が燃料カットを行い、第3の状態である「アイドリングストップ状態」に移行すると(図9(A)のタイミングd参照)、エコランECU10は、吹き出し口温度センサ43によって測定したブロアファン41の吹き出し口温度を取得する。そして、エコランECU10は、取得したブロアファンの吹き出し口温度から所定温度(例えば、本実施例では、8℃に設定)を減算した値を第2しきい値温度とする(図9(F)のタイミングd参照)。
本実施例のエコランECU10は、吹き出し口温度センサ43によって測定される吹き出し口温度をピークホールドする。すなわち、吹き出し口温度の最大値が更新されるたびに、この最大値を吹き出し口温度に設定する。また、吹き出し口温度の変更に伴って、第2しきい値温度も随時変更していく。図9に示す例では、第3の状態である「アイドリングストップ状態」に移行したときの吹き出し口温度が43℃であったため、第2しきい値温度は35℃に設定される。この後、吹き出し口温度が上昇しきり、以降、エンジンが始動されるまで吹き出し温度が下がる一方に変化する時点である、図9に示すタイミングeでは、吹き出し口温度が44℃であるので、第2しきい値温度も36℃に更新される。
【0064】
次に、エコランECU10は、第1しきい値温度と第2しきい値温度とを比較して、温度の低いほうをエンジンONしきい値に設定する。
第3の状態への移行時に、吹き出し口温度は43℃であったため(図9(C)のタイミングd参照)、第2しきい値温度である35℃がエンジンONしきい値に設定される。その後、吹き出し口温度が徐々に上昇し、エコランECU10も吹き出し口温度の最高値をピークホールドするため、エンジンONしきい値も吹き出し口温度の上昇に合わせて変更される。図9に示す例では、エンジンONしきい値は36℃に設定される。
【0065】
この後、エコランECU10は、ブロアファン41の吹き出し口温度を監視し、吹き出し口温度がエンジンONしきい値である36℃を下回ると、エンジンをオンさせて「エンジン始動状態」の第4の状態に移行させる。図9に示す例では、タイミングgで図9(H)の空調制御のためのエンジンONが要求される。なお、吹き出し口温度確定検出タイマは、吹き出し口温度が、第1しきい値温度である40℃よりも低下するとクリアされる(図9に示すタイミングf)。
【0066】
エコランECU10は、エンジンの再始動が必要であると判定すると、エンジンECU21にスタータモータ17によるエンジンの駆動を要求する。エンジンECU21は、エンジンの回転数に応じて、エコランECU10からのスタータ駆動要求を許可するか否かを判定する。エコランECU10は、エンジンECU21からスタータ駆動を許可する許可信号を入力すると、図4に示すトランジスタ12をオンさせて、スタータモータ17を駆動させる。
【0067】
このように本実施例は、エンジンを冷却するエンジン水温と、ヒータ装置40からの送風空気の温度とからエコラン制御を行うか否かを判定している。従って、エコラン制御に移行したときに、空調装置の空調性能が十分に満たされるか否かを判定してエコラン制御を行うか否かを判定することができる。
【0068】
また、送風空気の温度が第1しきい値温度以上である状態が所定時間以上継続した場合に、エコラン制御を許可することにより、エコラン制御に移行したときに空調装置が空調性能を維持できるか否かを精度よく判定することができる。
【0069】
また、エコランECU10は、エンジン停止後にエンジンを再始動させるか否かを判定するエンジンONしきい値をヒータ装置40の送風空気の温度に基づいて設定することで、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【0070】
また、エンジン停止後の送風空気の温度に応じて、エンジンONしきい値を変更することで、最適なタイミングでエンジンを再始動させることができる。
【0071】
また、エコランECU10は、送風空気の温度が上昇する側に変化するときに、エンジンONしきい値を変更する。送風空気の温度が上昇する側に変化したときには、再始動判定しきい値が低いままであると、変化した送風空気の温度とエンジンONしきい値との温度差が大きくなり、乗員が寒いと感じてしまう。そこで、エンジンONしきい値を変更することで、乗員が寒いと感じる前にエンジンを再始動させることができる。
【0072】
また、エコランECU10が上昇する送風空気の温度をピークホールドした値を用いてエンジンONしきい値を再設定しているので、送風空気の温度変化をエンジンONしきい値に的確に反映させることができる。
【0073】
なお、上述した実施例2では、第1しきい値温度を外気温センサによって測定された外気温に基づいて算出しているが、車室内に温度センサを設けて、この温度センサによって測定された車室内の温度に基づいて第1しきい値温度を設定することもできる。
また、エンジンを停止させてアイドリングストップを許可する条件として、ヒータ装置40からの送風空気の温度だけを判断材料としてもよい。すなわち、吹き出し口温度センサ43によって測定される吹き出し口温度が所定温度以上の状態にあるか否かを判定して、エンジンの停止を許可するか否かを判定する。
【0074】
上述した実施例は本発明の好適な実施の一例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えば、上述した実施例1では、エンジン停止条件が成立してエンジンが停止すると、所定時間が経過するまでは、吹き出し口温度の値をピークホールドしていくが、所定時間が経過すると、吹き出し口温度を所定時間内での最大値に固定してもよい。
【0075】
また、実施例1及び2では、エンジンの始動を行うしきい値温度を、外気温から求めた温度と、エンジン停止時の吹き出し口温度から求めた温度との低い方の温度を用いる構成にしているが、2つの温度の高いほうを用いたり、2つの温度の平均を取る等による新たな温度を算出するなど、さまざまな構成が可能である。
【0076】
また、上述した実施例1及び2では、エンジン停止後の吹き出し口温度をピークホールドすることで、エンジン停止後に上昇した吹き出し口温度を求める構成にしている。これ以外に、例えば、エンジンが停止する前の所定時間以内にブロアSWがオフからオンに変化した履歴が残っている場合など、エンジン停止後に吹き出し口温度が上昇する可能性があると判定した場合に、ブロアSWのオフからオンの時点や、エンジン停止の時点から、所定時間(吹き出し口温度が安定するのに要する平均的な時間など)後に取得した吹き出し口温度を用いるなど、さまざまな構成が可能である。
【0077】
また、上述した実施例1及び2で使用した外気温には、車両外の温度とほぼ同等であると判断できる位置に設けられた温度センサ(車室外の外気が取り込まれる部分に設けられたり、エンジン等の温度に影響を与える部位から離れて設けられたり等)で取得した温度や、車外から通信等で取得した車両付近の温度などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】エコランECUとエンジンECUとの通信例を示す図である。
【図2】エコランモードに移行する直前に、ブロアSWがオンされた場合のエコランECUの従来の制御手順を示す図である。
【図3】外気温度からエンジンをオンさせる吹き出し口温度を決定するマップの一例を示す図である。
【図4】車両制御システムの構成を示す図である。
【図5】マイコンのハードウェア構成を示す図である。
【図6】エンジンを冷却する冷却水の循環経路と、車室内を暖機するヒータの構成とを示す図である。
【図7】エコランモードに移行する直前に、ブロアSWがオンされた場合のエコランECUの制御手順であって、特にエコランモードからエンジンを再始動させる場合の制御手順を示す図である。
【図8】エコランモードに移行した後に、ブロアSWがオンされた場合のエコランECUの制御手順であって、特にエコランモードからエンジンを再始動させる場合の制御手順を示す図である。
【図9】ブロアSWがオンされた後に車両が停止した場合のエコランECUの制御手順と、エコランモードからエンジンを再始動させる場合のエコランECUの制御手順を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
10 エコランECU
11 マイコン
12 トランジスタ
13 キーSW
14 ニュートラルSW
16 スタータリレー
17 スタータモータ
21 エンジンECU
33 ラジエータ
34 エンジン水温センサ
40 ヒータ装置
41 ブロアファン
42 ヒータコア
43 吹き出し口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるエンジン自動停止制御を行うと共に、前記エンジン自動停止制御によるエンジン停止中に所定の始動条件が成立すると、前記エンジンを始動させるエンジン自動始動制御を行うエンジン自動始動停止制御装置であって、
前記エンジンを自動停止させる停止条件を設定する停止条件設定手段と、
前記停止条件設定手段で設定された停止条件が成立した場合に前記エンジンの停止を指示するエンジン停止制御手段と、
前記エンジン停止制御手段による前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度に基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定する始動条件設定手段と、
前記始動条件設定手段で設定された始動条件が成立した場合に前記エンジンの始動を指示するエンジン始動制御手段と、を備え、
前記停止条件設定手段は、前記空調装置を作動させている状態にある場合には、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを前記停止条件に含めることを特徴とするエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項2】
前記停止条件設定手段は、前記冷却水の温度が第1しきい値温度以上であり、前記空調装置の吹き出し温度が第2しきい値温度以上の状態が所定時間以上継続した場合を前記エンジン自動停止制御の前記停止条件として設定することを特徴とする請求項1記載のエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項3】
前記始動条件設定手段は、前記エンジン停止後の前記吹き出し温度に応じて、前記始動条件を再設定することを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項4】
前記始動条件設定手段は、前記始動条件の設定を行った後に前記吹き出し温度が上昇している場合に、上昇した前記吹き出し温度に基づいて前記始動条件の再設定を行うことを特徴とする請求項3記載のエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項5】
前記始動条件設定手段は、前記吹き出し温度をピークホールドし、該ピークホールドした吹き出し温度に基づいて前記始動条件の再設定を行うことを特徴とする請求項3又は4記載のエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項6】
所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるエンジン自動停止制御を行うと共に、前記エンジン自動停止制御によるエンジン停止中に所定の始動条件が成立すると、前記エンジンを始動させるエンジン自動始動制御を行うエンジン自動始動停止制御装置であって、
前記エンジンを自動停止させる停止条件を設定する停止条件設定手段と、
前記停止条件設定手段で設定された停止条件が成立した場合に前記エンジンの停止を指示するエンジン停止制御手段と、
前記エンジン停止制御手段による前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記エンジンを冷却する冷却水の温度と、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度とに基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定する始動条件設定手段と、
前記始動条件設定手段で設定された始動条件が成立した場合に前記エンジンの始動を指示するエンジン始動制御手段と、を備え、
前記停止条件設定手段は、前記空調装置を作動させている状態にある場合には、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを前記停止条件に含めることを特徴とするエンジン自動始動停止制御装置。
【請求項7】
エンジンを自動停止させる停止条件を設定するステップと、
設定された停止条件が成立した場合に、前記エンジンの停止を指示するステップと、
前記エンジンの停止中に、空調装置を作動させている状態にある場合には、前記空調装置から吹き出される空気の温度である吹き出し温度に基づいて、前記エンジンを自動始動させる始動条件を設定するステップと、
設定された始動条件が成立した場合に、前記エンジンの始動を指示するステップと、を備え、
前記停止条件には、前記空調装置を作動させている状態にある場合に、前記吹き出し温度が所定温度以上であることを含むことを特徴とするエンジン制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−84630(P2010−84630A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254730(P2008−254730)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】