説明

オイルポンプ装置

【課題】ポンプハウジングのポンプ組込空間内に、ポンプと、電動モータとを容易に組み込むことができるオイルポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプハウジング10のポンプ組込空間13に、エンジンに接続される駆動軸2と、駆動軸2の外周に配設されるポンプ40と、ポンプ40の外周に配置されかつ電動モータ30とがそれぞれ内設される。駆動軸2と、ポンプ40と、電動モータ30のモータロータ33との三者間には、遊星歯車機構51が配設されて三者が連結される。ポンプ40と駆動軸2との間には、駆動軸2の一方向への回転によるトルクはポンプ40に伝達し、反対方向へはトルク伝達を断つ一方向クラッチ機構45が配設される。ポンプ40は、駆動軸2から一方向クラッチ機構45を介してのトルク伝達と、電動モータ30から遊星歯車機構51を介してのトルク伝達との少なくとも一方のトルク伝達を受けて駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はオイルポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンの作動時において、各種機構の潤滑、作動、制御等を行うオイルを供給するために、自動変速機にオイルポンプが組み込まれるポンプハウジングが配設されることが知られている。
また、車両の一時停止の際、エンジンを一時停止させるアイドリングストップシステムが搭載された車両が知られている。
このようなアイドリングストップシステムが搭載された車両において、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に伴ってオイルポンプが停止するため、自動変速機内のクラッチ機構等に油圧を供給することができなくなる。
このため、アイドリングストップシステムが搭載された車両において、自動変速機内のクラッチ機構等に油圧を供給する電動ポンプを自動変速機の外部に設置することが知られている。
しかしながら、各種形式が異なる車両において、電動ポンプを設置するスペースを確保することが困難となる場合があり、この場合には、アイドリングストップシステムを採用することができなくなる。
また、従来、例えば、特許文献1に開示されているように、エンジンと、油圧作動機器へ作動油を吐出するオイルポンプと、オイルポンプを駆動するための駆動軸に接続されるとともにシャフトを介してエンジンに接続された遊星歯車機構と、出力軸を介して遊星歯車機構に接続された電動モータとを備えたオイルポンプ駆動システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたオイルポンプ駆動システムにおいては、遊星歯車機構を介してエンジンに接続されたオイルポンプの駆動軸の回転を、電動モータの出力軸の回転によって変速させることができる。従って、オイルポンプによって吐出される作動油の吐出量を調整して、オイルポンプによって作動油が過剰に吐出されることを抑制することができる。また、遊星歯車機構を介して、電動モータのみによってオイルポンプを駆動することができるため、例えばエンジンが停止している場合にも、油圧作動機器へ油圧供給を行うことができる。
しかしながら、引用文献1においては、自動変速機のポンプハウジング内に電動モータ及び遊星歯車機構を組み込むことが困難である。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、ポンプハウジングのポンプ組込空間内に、ポンプと、電動モータとを容易に組み込むことができるオイルポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るオイルポンプ装置は、ポンプハウジングのポンプ組込空間に、エンジンに接続される駆動軸と、この駆動軸の外周に配設されるポンプと、このポンプの外周に配置されかつ電動モータを構成するモータステータ及びモータロータとがそれぞれ内設され、
前記駆動軸と、前記ポンプと、前記モータロータとの三者間には、遊星歯車機構が配設されて前記三者が連結され、
前記ポンプと前記駆動軸との間には、前記駆動軸の一方向への回転によるトルクは前記ポンプに伝達し、反対方向へはトルク伝達を断つ一方向クラッチ機構が配設され、
前記ポンプは、前記駆動軸から前記一方向クラッチ機構を介してのトルク伝達と、前記電動モータから前記遊星歯車機構を介してのトルク伝達との少なくとも一方のトルク伝達を受けて駆動される構成にしてあることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、エンジンの作動時には、駆動軸からのトルクが一方向クラッチ機構を介してポンプに伝達され、ポンプが駆動される。
また、エンジンの作動時において、モータステータのコイルを通電させてモータロータを駆動させることで、遊星歯車機構を介してポンプの回転数を増速させることができる。 これによって、エンジンの低速回転領域において必要なオイル量を不足なく吐出することができる。
言い換えると、従来においては、エンジンの低速回転領域において必要なオイル量を確保するために、ポンプの吐出容量が設定される。これによって、ポンプが大型化すると共に、エンジンの高速回転領域において、ポンプからのオイルの吐出量が過剰となる。
これに対し、エンジンの低速回転領域において、モータステータのコイルを通電させてモータロータを駆動させることで、遊星歯車機構を介してポンプの回転数を増大させることができる。
これによって、必要なオイル量を不足なく吐出することができるため、ポンプを小型化することができる。
ポンプの外径寸法を小さくしてポンプを小型化することによって、ポンプハウジングのポンプ組込空間において、ポンプの外周に電動モータ(モータステータ及びモータロータ)を容易に組み込むことができる。
さらに、ポンプを小型化した分だけ高速回転領域におけるオイルの過剰な吐出量を抑制することができる。
また、エンジンの停止時には、モータステータのコイルを通電させてモータロータを駆動させることで、遊星歯車機構を介してポンプを駆動することができる。
これによって、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に必要なオイル量を吐出することができる。
【0008】
請求項2に係るオイルポンプ装置は、請求項1に記載のオイルポンプ装置であって、
ポンプのオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数であり、かつ駆動軸からのトルク伝達によって前記ポンプが駆動されたときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、仮に、電動モータに作動不良が生じた場合においても、駆動軸からのトルク伝達によって駆動されるポンプのオイル吐出量によって車両の走行が可能となる。
【0010】
請求項3に係るオイルポンプ装置は、請求項1又は2に記載のオイルポンプ装置であって、
ポンプは、外周面の周方向に複数の外歯が形成されたインナギアと、このインナギアの複数の外歯と噛み合う複数の内歯が内周面の周方向に形成されたアウタギアとを備えた内接ギヤポンプによって構成され、
前記インナギアの内周面には、径方向内方へ突出された端板が形成され、この端板の中心部と駆動軸の外周面との間に一方向クラッチ機構が配設される一方、
モータロータは、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石が交互に配設された円筒部と、この円筒部の一端部内周面から前記駆動軸の外周面に向けて形成され、かつ中心部に前記駆動軸又はこの駆動軸と同一中心線上に配設される軸体の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する円板部とを備え、
前記インナギアの端板と、前記モータロータの円板部との間に、遊星歯車機構が収納される収納空間が構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、インナギアの端板の中心部と駆動軸の外周面との間に配設される一方向クラッチ機構によって、駆動軸の一方向への回転によるトルクがポンプのインナギアに伝達されてインナギアが駆動される。また、モータロータが駆動軸よりも相対的に速く回転されることで、駆動軸に係わることなくインナギアが円滑に回転(駆動)される。
また、ポンプのインナギアの端板とモータロータの円板部との間に構成される収納空間に、遊星歯車機構を収納することができる。
【0012】
請求項4に係るオイルポンプ装置は、請求項3に記載のオイルポンプ装置であって、
遊星歯車機構は、収納空間に位置して駆動軸の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、
前記複数の遊星歯車を、中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとしてのインナギアの端板と、
前記複数の遊星歯車に噛み合う内歯を有し、モータロータの円板部に一体状に設けられた内歯歯車とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によると、ポンプのインナギアの端板は、複数の遊星歯車を中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとして機能する。
また、モータロータの円板部は、遊星歯車機構の内歯歯車を支持する支持部材として機能する。
これによって、ポンプのインナギアの端板と、モータロータの円板部との間の収納空間に、遊星歯車機構を合理的に配設して収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例1に係るオイルポンプ装置を示す縦断面図である。
【図2】同じくオイルポンプ装置のポンプハウジングにポンプと電動モータとが組み付けられた状態を拡大して示す縦断面図である。
【図3】同じく図2のIII−III線に沿うポンプの横断面図である。
【図4】同じく図2の矢印IVに沿うモータロータの円板部の連通孔を示す矢視図である。
【図5】同じくオイルポンプ装置の駆動軸と、モータロータと、ポンプのインナギアとの回転数(単位時間当たりの回転数)の関係を示す説明図である。
【図6】同じくオイルポンプ装置の駆動軸(エンジン)の回転数とオイルの吐出量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0016】
この発明の実施例1に係るオイルポンプ装置を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、自動変速機のトルクコンバータ1に組み付けられるオイルポンプ装置において、自動変速機のケーシング(図示しない)にボルトによって固定されるポンプハウジング10は、図1において左右に分割された第1、第2の両ハウジング体11、12がボルト(図示しない)によって結合されることで構成される。そして、第1、第2の両ハウジング体11、12の間には、ポンプ組込空間13が形成される。より具体的には、ポンプ組込空間13は、第1ハウジング体11の第2ハウジング体12に対向する内壁面の中心部に軸方向へ凹んで形成された組込凹部と、第2ハウジング体12の第1ハウジング体11に対向する内壁面とにより形成される。
また、第1、第2の両ハウジング体11、12の対向内壁面には、吸入ポート15、17と吐出ポート16、18とがそれぞれ形成されている。
さらに、第1ハウジング体11の組込凹部の底面には、後述するポンプ40のアウタギア46の外周面に嵌合してアウタギア46を回転可能に案内する突輪11aが形成されている。
また、第2ハウジング体12の中心部には、トルクコンバータ1のスリーブ2内に向けてステータシャフト5が配置されている。
【0017】
図2に示すように、ポンプ組込空間13には、エンジンに接続される駆動軸としてのトルクコンバータ1のスリーブ2と、このスリーブ2の外周に配設されるポンプ40と、このポンプ40の外周に配置されかつ電動モータ30を構成するモータステータ31及びモータロータ33とがそれぞれ内設されている。
そして、スリーブ2と、ポンプ40と、モータロータ33との三者間には、遊星歯車機構51が配設され、遊星歯車機構51によって前記三者2、40、33が連結されている。
【0018】
スリーブ2と、後に詳述するポンプ40のインナギア41の端板43との間には、スリーブ2の一方向への回転によるトルクはポンプ40に伝達し、反対方向へはトルク伝達を断つ一方向クラッチ機構45が配設されている。そして、ポンプ40は、スリーブ2から一方向クラッチ機構45を介してのトルク伝達と、電動モータ30から遊星歯車機構51を介してのトルク伝達との少なくとも一方のトルク伝達を受けて駆動される構成にしてある。
【0019】
図2と図3に示すように、電動モータ30のモータステータ31は、ポンプ組込空間13の内周壁面の径寸法に対応する外径寸法を有すると共に、ポンプ組込空間13の軸方向の長さ寸法とほぼ同じ長さ寸法を有して形成され、ポンプ組込空間13の内周壁面に回り止めされた状態で固定されている。
このモータステータ31は、鉄心部32aと、その鉄心部32aの内周面の周方向に形成された複数のコイル装着部に装着された複数のコイル32bとを備える。
【0020】
モータステータ31の内周に配設されるモータロータ33は、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石34aが交互に配設された円筒部34と、この円筒部34の内周面の一端部(第2ハウジング体12側)からスリーブ2の外周面に向けて形成され、かつ中心部がスリーブ2(又はスリーブ2と同一中心線上に配設される軸体、例えば、ステータシャフト5)の外周面に軸受(滑り軸受、又は転がり軸受)37を介して回転可能に外嵌する円板部35とを備えている。
【0021】
図2と図4に示すように、モータロータ33の円板部35には、両吸入ポート15、17及び両吐出ポート16、18をポンプ40のオイル閉込め部48を介して連通する二つの円弧状に連通孔38が形成されている。
なお、第2ハウジング体12に吸入ポート17と吐出ポート18とが形成されない場合には、モータロータ33の円板部35に連通孔38を形成する必要がない。
また、電動モータ30は、図示しない制御装置に接続され、設定されたプログラムに基づいて回転制御される。
【0022】
図2と図3に示すように、ポンプ40は、ポンプ組込空間13を構成する第1ハウジング体11の組込凹部の底面と、モータロータ33の円板部35との間に配設されている。
ポンプ40は、外周面の周方向には複数の外歯42が形成されたインナギア41と、インナギア41の複数の外歯42と噛み合う複数の内歯47が内周面の周方向に形成されたアウタギア46とを有する内接ギヤポンプによって構成されている。
また、インナギア41の内周面の第1ハウジング体11側端部には、径方向内方へ突出された端板43が形成され、この端板43の中心部とスリーブ2の外周面との間に、前記した一方向クラッチ機構45が配設されている。
【0023】
図3に示すように、ポンプ40のアウタギア46は、インナギア41の中心と偏心(図3中、偏心量Aだけ偏心)した状態で、第1ハウジング体11の突輪11aに回転可能に嵌込まれている。
また、インナギア41の外歯42と、アウタギア46の内歯47との間にはオイル閉込め部48が形成されている。そして、スリーブ2から一方向クラッチ機構45を介してのトルク伝達と、電動モータ30から遊星歯車機構51を介してのトルク伝達との少なくとも一方のトルク伝達を受けてインナギア41が回転し、これに伴ってアウタギア46が追従回転することでポンプ作用をなすようになっている。
また、ポンプ40のオイル吐出容量は、エンジン(スリーブ2)の回転数がアイドリング回転数Nであるときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されている。
また、図2と図3に示すように、ポンプ40のインナギア41の端板43と、モータロータ33の円板部35との間には、遊星歯車機構51が収納される収納空間50が構成されている。
【0024】
遊星歯車機構51は、収納空間50に位置してスリーブ2の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車52と、太陽歯車52に噛み合う複数の遊星歯車53と、複数の遊星歯車53を中心軸54を中心として回転可能に支持するキャリア55としてのインナギア41の端板43と、複数の遊星歯車53に噛み合う内歯を有し、モータロータ33の円板部35に一体状に設けられた内歯歯車56とを備えている。なお、内歯歯車56は、モータロータ33とは別個に製作された後、モータロータ33の円板部35に一体状に組み付けられてもよく、モータロータ33の円板部35に一体に形成されてもよい。
また、太陽歯車52の歯数をZaとし、遊星歯車53の歯数をZbとし、内歯歯車56の歯数をZcとし、スリーブ2(エンジンの出力軸)の回転数をω1とし、モータロータ33の回転数をω3としたときに、ポンプ40が図5に示す回転数で駆動(回転)されるように設定されている。
【0025】
すなわち、図5に示すように、エンジンの作動時で、かつモータステータ31のコイル32bが非通電状態にあるときには、スリーブ2のトルクが一方向クラッチ機構45を介してキャリア55としてのインナギア41の端板43に伝達されインナギア41が駆動される。
この際、遊星歯車機構51の太陽歯車52、遊星歯車53、モータロータ33の内歯歯車56は、相互の噛み合い位置を変えることなくスリーブ2と一体状をなして回転される。
これによって、ポンプ40のインナギア41と、モータロータ33とがエンジンの回転数ω1で回転される。
エンジンの作動時において、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33をエンジンの回転数ω1よりも大きい回転数ω3で回転させることで、遊星歯車機構51を介してポンプ40のインナギア41の回転数が増大されて回転される。
この際、ポンプ40のインナギア41は、(Zaω1+Zcω3)/(Za+Zc)の回転数で増速回転される。
【0026】
また、エンジンの停止時(一時停止(アイドルストップ))において、モータステータ31のコイル32bを通電させて回転数ω3で回転させることで、遊星歯車機構51を介してポンプ40のインナギア41の回転される。
この際、ポンプ40のインナギア41は{Zc/(Za+Zc)}×ω3の回転数で回転される。
【0027】
この実施例1に係るオイルポンプ装置は上述したように構成される。
したがって、エンジンの作動時には、駆動軸としてのスリーブ2からのトルクが一方向クラッチ機構45を介してポンプ40のインナギア41に伝達される。これによって、インナギア41が回転し、これに伴ってアウタギア46が追従回転することでポンプ作用をなす。
【0028】
図6に示すように、エンジンの作動時において、エンジンが低速回転領域にあるときには、変速が頻繁になされる場合があるため、必要とするオイル吐出量が多くなる。
このため、エンジンの低速回転領域では、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を駆動させることで、遊星歯車機構51を介してポンプ40のインナギア41をスリーブ2の回転数よりも大きい回転数で増速回転させる。
この際、ポンプ40のインナギア41は、一方向クラッチ機構45に拘束されることなく増速回転する。
これによって、エンジンの低速回転領域に必要なオイル吐出量を確保することができる。
言い換えると、従来においては、エンジンの低速回転領域において必要なオイル量を確保するために、ポンプの吐出容量が設定される。これによって、ポンプが大型化すると共に、エンジンの高速回転領域において、ポンプからのオイルの吐出量が過剰となる。
これに対し、エンジンの低速回転領域において、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を駆動させることで、遊星歯車機構51を介してポンプ40のインナギア41の回転数を増大させることができる。これによって、必要なオイル量を不足なく吐出することができるため、ポンプ40を小型化することができる。
ポンプ40の外径寸法を小さくしてポンプ40を小型化することによって、ポンプハウジング10のポンプ組込空間13において、ポンプ40の外周に電動モータ30(モータステータ31及びモータロータ33)を容易に組み込むことができる。
また、エンジンの高速回転領域においては、ポンプ40を小型化した分だけ、過剰なオイル吐出量を抑制することができる。この際、モータステータ31のコイル32bを非通電状態に保って電動モータ30を停止させる。
【0029】
エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を駆動させることで、遊星歯車機構51を介してポンプ40を駆動することができる。
これによって、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に自動変速機内のクラッチ機構等に必要なオイル量を吐出することができる。
この際、ポンプ40のインナギア41は、一方向クラッチ機構45に拘束されることなく回転する。
また、エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、必要なオイル量及び油圧は、エンジンの作動時に比べ少量でかつ低圧である。
【0030】
また、この実施例1において、ポンプ40のオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数Nであり、かつスリーブ2からのトルク伝達によってポンプ40が駆動されたときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定される。
これによって、仮に、電動モータ30に作動不良が生じた場合においても、スリーブ2からのトルク伝達によって駆動されるポンプ40のオイル吐出量によって車両の走行が可能となる。
【0031】
また、この実施例1において、ポンプ40のインナギア41の端板43とモータロータ33の円板部35との間に構成される収納空間50に、遊星歯車機構51を収納することができる。
また、この実施例1において、ポンプ40のインナギア41の端板43は、遊星歯車機構51の複数の遊星歯車53を中心軸54を中心として回転可能に支持するキャリア55として機能する。
また、モータロータ33の円板部35は、遊星歯車機構51の内歯歯車56を支持する支持部材として機能する。
これによって、ポンプ40のインナギア41の端板43と、モータロータ33の円板部35との間の収納空間50に、遊星歯車機構51を合理的に配設して収納することができる。
【0032】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 ポンプハウジング
11 第1ハウジング体
12 第2ハウジング体
13 ポンプ組込空間
15、17 吸入ポート
16、18 吐出ポート
30 電動モータ
31 モータステータ
33 モータロータ
34 円筒部
35 円板部
36 中心孔
37 軸受
40 ポンプ
41 インナギア
42 外歯
43 端板
45 一方向クラッチ機構
46 アウタギア
47 内歯
51 遊星歯車機構
52 太陽歯車
53 遊星歯車
54 中心軸
55 キャリア
56 内歯歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングのポンプ組込空間に、エンジンに接続される駆動軸と、この駆動軸の外周に配設されるポンプと、このポンプの外周に配置されかつ電動モータを構成するモータステータ及びモータロータとがそれぞれ内設され、
前記駆動軸と、前記ポンプと、前記モータロータとの三者間には、遊星歯車機構が配設されて前記三者が連結され、
前記ポンプと前記駆動軸との間には、前記駆動軸の一方向への回転によるトルクは前記ポンプに伝達し、反対方向へはトルク伝達を断つ一方向クラッチ機構が配設され、
前記ポンプは、前記駆動軸から前記一方向クラッチ機構を介してのトルク伝達と、前記電動モータから前記遊星歯車機構を介してのトルク伝達との少なくとも一方のトルク伝達を受けて駆動される構成にしてあることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルポンプ装置であって、
ポンプのオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数であり、かつ駆動軸からのトルク伝達によって前記ポンプが駆動されたときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されていることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルポンプ装置であって、
ポンプは、外周面の周方向に複数の外歯が形成されたインナギアと、このインナギアの複数の外歯と噛み合う複数の内歯が内周面の周方向に形成されたアウタギアとを備えた内接ギヤポンプによって構成され、
前記インナギアの内周面には、径方向内方へ突出された端板が形成され、この端板の中心部と駆動軸の外周面との間に一方向クラッチ機構が配設される一方、
モータロータは、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石が交互に配設された円筒部と、この円筒部の一端部内周面から前記駆動軸の外周面に向けて形成され、かつ中心部に前記駆動軸又はこの駆動軸と同一中心線上に配設される軸体の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する円板部とを備え、
前記インナギアの端板と、前記モータロータの円板部との間に、遊星歯車機構が収納される収納空間が構成されていることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のオイルポンプ装置であって、
遊星歯車機構は、収納空間に位置して駆動軸の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、
前記複数の遊星歯車を、中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとしてのインナギアの端板と、
前記複数の遊星歯車に噛み合う内歯を有し、モータロータの円板部に一体状に設けられた内歯歯車とを備えていることを特徴とするオイルポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72495(P2013−72495A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212251(P2011−212251)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】