説明

オルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】 超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を効率良く中和できる、オルガノポリシロキサンの製造方法を提供する。
【解決手段】 トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を、塩化ナトリウム、塩化カリルム等のアルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物で中和し、生成した中和塩およびハロゲン化水素を分離することを特徴とするオルガノポリシロキサンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンの製造方法に関し、詳しくは、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を効率良く中和できる、オルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸によりオルガノポリシロキサンを製造する方法は公知であり、該オルガノポリシロキサン中の超強酸を中和するためには、通常、水洗後、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の中和剤を添加するが、中和に要する時間が長く、前記超強酸を完全に中和することができず、得られるオルガノポリシロキサン中に超強酸が残存することによる、該オルガノポリシロキサンの耐熱性が低いという問題があった。このため、シラザン化合物と水とを添加する方法(特許文献1参照)、また、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムを添加し、該アンモニウム塩の分解温度以上に加熱する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
しかし、これらの方法においても、得られるオルガノポリシロキサン中の超強酸が十分に中和されなかったり、また、超強酸の他に酢酸等の酸を併用した場合には、超強酸のみを選択的に中和することは困難であった。また、ケイ素原子結合水素原子や塩基と作用する有機官能性基を有するオルガノポリシロキサンを製造する際には、塩基性の強い中和剤を使用することができず、中和剤の種類が限定されるという問題があった。また、得られるオルガノポリシロキサンの安定性を考慮し、塩基性の弱い中和剤を使うと、生成する中和塩がオルガノポリシロキサンの精製の際の加熱により分解し、再び酸を遊離し、オルガノポリシロキサンの再平衡反応を促進するという問題があった。
【特許文献1】特開昭62−41228号公報
【特許文献2】特開平3−170531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を効率良く中和できる、オルガノポリシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の製造方法は、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を、アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物で中和し、生成した中和塩およびハロゲン化水素を分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法は、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を効率良く中和できるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法では、はじめに超強酸によりオルガノポリシロキサンを製造するが、この超強酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびメタンスルホン酸が例示される。また、本発明の製造方法で得られるオルガノポリシロキサンは限定されず、その分子構造としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、樹枝状、および網目状が挙げられる。また、このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している基としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基等のアクリル官能性基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;水酸基が挙げられる。また、このオルガノポリシロキサンの重合度、分子量は特に限定されないが、その数平均分子量が200以上であることが好ましい。
【0008】
超強酸によりオルガノポリシロキサンを製造する方法としては、例えば、環状のオルガノシロキサンおよび/または直鎖状のオルガノシロキサンを再平衡反応する方法、あるいはオルガノシロキサンとアルコキシシランを平衡反応させ、該アルコキシシラン中のケイ素原子結合アルコキシ基をオルガノシロキシ基に置換する方法が挙げられる。
【0009】
再平衡反応によりオルガノポリシロキサンを製造する方法において、その原料となる環状オルガノシロキサンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ウンデカメチルシクロヘキサシロキサンが例示され、また、直鎖状オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジヒドロキシジシロキサンが例示される。
【0010】
一方、平衡反応によりオルガノポリシロキサンを製造する方法において、その原料となるオルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンが例示され、また、アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチル(3−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3−メタクリロキシプロピル)ジエトキシシラン等のジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン等のモノアルコキシシランが例示される。
【0011】
また、上記の平衡反応において、超強酸の他に酢酸等のカルボン酸、さらには上記の平衡反応を促進するための無水酢酸等のカルボン酸無水物を添加してもよい。特に、本発明の製造方法では、超強酸の他にこれらの酸が存在しても、超強酸を選択的に中和することができる。なお、上記の平衡反応の進行は、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析することにより追跡することができる。
【0012】
本発明の製造方法は、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を、アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物で中和することを特徴とする。このアルカリ金属のハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化物;ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化物が例示される。また、このアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩化物;臭化マグネシウム、臭化カルシウム等の臭化物;ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等のヨウ化物が例示される。特に、超強酸を効率良く中和することができることから、アルカリ金属のハロゲン化物が好ましく、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法では、アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の添加量は特に限定されないが、具体的には、超強酸に対して当量以上であり、好ましくは、1〜500当量の範囲内であり、特に好ましくは、1〜100当量の範囲内である。また、中和の条件は特に限定されないが、その反応温度は0〜200℃の範囲内であることが好ましく、特に、25〜100℃の範囲内であることが好ましい。
【0014】
次いで、本発明の製造方法では、中和により生成した中和塩およびハロゲン化水素をオルガノポリシロキサンから分離する。ハロゲン化水素はオルガノポリシロキサン中に不活性ガスをバブリングすることにより、不活性ガスと一緒に系外に除去することもできるが、一般には、減圧により除去することができる。また、中和塩はオルガノポリシロキサンを水洗あるいは濾別することにより分離することができる。また、本発明の製造方法では、必要に応じて蒸留することにより、目的のオルガノポリシロキサンを精製することができる。
【0015】
さらに、本発明の製造方法では、オルガノポリシロキサンからハロゲン化水素を分離し、次いで、ハイドロタルサイト類で処理することにより、超強酸あるいはその塩を分離し、オルガノポリシロキサンの保存安定性、耐熱性を向上させることができる。このハイドロタルサイト類は、マグネシウム、アルミニウムを含む層状構造の化合物であり、KW500、KW1000(以上、協和化学工業株式会社製)として入手可能である。
【0016】
ハイドロタルサイト類で処理する場合、その添加量はオルガノポリシロキサンの分子構造および不純物の量により異なるため特に限定されないが、具体的には、オルガノポリシロキサン100重量部に対して0.01〜100重量部であることが好ましく、さらには、0.01〜50重量部であることが好ましく、特には、0.01〜1重量部であることが好ましい。
【0017】
ハイドロタルサイト類で処理する条件は、オルガノポリシロキサンの粘度、不純物の量により異なるため特に限定されないが、処理の温度は0〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に、20〜50℃の範囲内であることが好ましい。また、処理の方法も、反応容器に直接投入する方法、充填式カラムを通過させる方法など目的に応じて適宜選択すればよい。また、処理した溶液を、必要に応じて、更に、ろ過、蒸留などの操作を行ってもよい。
【実施例】
【0018】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造方法を実施例、比較例により詳細に説明する。
【0019】
[実施例1]
テトラキス(ジメチルシロキシ)シランの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン296g(2.20mol)、酢酸221g(3.68mol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.42g(2.8mmol)を投入し、45℃に加熱した。次いで、滴下ロートから、テトラメトキシシラン140g(0.92mol)を40分かけて滴下した。滴下終了後、45℃で30分間保温した。その後、反応温度が45℃に保たれるように、滴下ロートより無水酢酸188g(1.84mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後に、反応混合物をガスクロマトグラフィー(以下、GC)により分析し、目的物の前駆体であるトリス(ジメチルシロキシ)メトキシシランの消失を確認した後、塩化ナトリウム8.2g(0.14mol)を加えた。中和反応は、45℃に保ち、N2バブリングを行いながら行った。中和終了後、低沸分を減圧により除去した。続いて、残存する酢酸を除去するために水洗を行い、その後、減圧蒸留により目的物であるテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン261.3g(沸点=91℃/22mmHg、収率=86.6%、純度=99.4%)を得た。この減圧蒸留の過程で、酸による再平衡化反応は確認されなかった。
【0020】
[実施例2]
テトラキス(ジメチルシロキシ)シランの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン296g(2.20mol)、酢酸221g(3.68mol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.42g(2.8mmol)を投入し、45℃に加熱した。次いで、滴下ロートから、テトラメトキシシラン140g(0.92mol)を40分かけて滴下した。滴下終了後、45℃で30分間保温した。その後、反応温度が45℃に保たれるように、滴下ロートより無水酢酸188g(1.84mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了の15分後に、反応混合物をGCにより分析し、目的物の前駆体であるトリス(ジメチルシロキシ)メトキシシランの消失を確認した後、塩化カリウム10.4g(0.14mol)を加えた。中和反応は、45℃に保ち、N2バブリングを行いながら行った。中和終了後、低沸分を減圧により除去した。続いて、残存する酢酸を除去するために水洗を行い、その後、減圧蒸留を行うことにより目的物であるテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン261.3g(沸点=91℃/22mmHg、収率=86.6%、純度=99.4%)を得た。この減圧蒸留の過程で、酸による再平衡化反応は確認されなかった。
【0021】
[実施例3]
3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた200mlの四つ口フラスコに、ヘキサメチルジシロキサン58.3g(0.36mol)、酢酸28.8g(0.48mol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.04g(0.3mmol)を投入し、45℃に加熱した。次いで、滴下ロートから、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40g(0.16mol)を5分かけて滴下した。滴下終了後、45℃で60分間保温した。その後、反応温度が45℃に保たれるように、滴下ロートより無水酢酸24.5g(0.24mol)を30分かけて滴下した。滴下終了の30分後、反応混合物をGCにより分析し、目的物の前駆体である3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシランの消失を確認した後、塩化カリウム1.00g(13mmol)を加えた。N2バブリングを行いながら45℃で1時間反応させた。中和終了後、低沸分を減圧により除去し、最終的には70℃/20mmHg/O2含有N2バブリングの条件でストリッピングした。次いで、中和塩をろ過し、目的物である3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランを得た。この3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン中のトリフレートイオンの濃度は1ppmであった。次いで、この3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランをハイドロタルサイト類(協和化学工業株式会社製のキョーワード500SN)0.35g(3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランに対して0.5重量%となる量)を投入し、室温で2時間攪拌した後、ろ過を行うことにより3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン64.1g(収率=95.0%、純度=95.0%)を得た。この3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン中にはトリフレートイオンは全く検出されなかった。
【0022】
[実施例4]
3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シランの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン260g(1.94mol)、酢酸195g(3.25mol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.22g(1.5mmol)を投入し、45℃に加熱した。次いで、滴下ロートから、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン268g(1.08mol)を40分かけて滴下した。滴下終了後、45℃で60分間保温した。その後、反応温度が45℃に保たれるように、滴下ロートより無水酢酸165g(1.62mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了の30分後、反応混合物をGCにより分析し、目的物の前駆体である3−メタクリロキシプロピルビス(ジメチルシロキシ)メトキシシランの消失を確認した後、塩化カリウム5.5g(74.8mmol)を加えた。中和反応は45℃に保ち、N2バブリングを行いながら行った。次に、重合禁止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を適量加え、低沸分を減圧により除去し、最終的には70℃/20mmHg/O2含有N2バブリングの条件でストリッピングし、低沸分がほぼ除去されたことをGCにより確認して、目的物である3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シランを得た。次いで、この3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シランにハイドロタルサイト類(協和化学工業株式会社製のキョーワード500SN)2.06g(3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シランに対して0.5重量%となる量)投入し、室温で2時間攪拌した後、ろ過を行うことにより3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シラン405.2g(収率=98.6%、純度=94.0%)を得た。この3−メタクリロキシプロピルトリス(ジメチルシロキシ)シラン中にはトリフレートイオンは全く検出されなかった。
【0023】
[実施例5]
テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シランの合成
2ガス置換した攪拌装置付き4つ口フラスコに、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン29.8g(162mmol)、酢酸15.6g(260mmol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.03g(0.2mmol)を45℃で攪拌しながら、テトラメトキシシラン10g(66mmol)を5分かけて滴下した。反応混合物の温度を45℃に維持した。45℃で30分間攪拌した後、無水酢酸13.3g(130mmol)を滴下した。定期的にGCで反応の進行をモニターしたところ、無水酢酸の滴下終了後、約3時間で反応は完結した。次いで、塩化カリウム0.75g(10mmol)を投入して反応を停止させた後、低沸分を減圧することにより除去し、塩をろ過することにより目的物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン25.6g(収率=90.0%、純度=93.1%)を得た。このテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン中のトリフレートイオンの濃度は1ppmであり、保存安定性には問題ない量であった。
【0024】
[実施例6]
分子鎖両末端ケイ素原子結合水素原子含有ジメチルポリシロキサンの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた200mlの四つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン87g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン11.3g、トリフルオロメタンスルホン酸0.05g(0.3mmol)を秤量し、50℃に加熱した。50℃に維持したまま、5時間熟成した。反応終了後、塩化カリウム1.3g(17mmol)を加え、窒素ガスを吹き込みながら50℃で1時間かけて中和した。その後、減圧ストリッピングし、分子鎖両末端ケイ素原子結合水素原子含有ジメチルポリシロキサン(数平均分子量=1387、重合度=17)を得た。次に、このジメチルポリシロキサンにハイドロタルサイト類(協和化学工業株式会社製のキョーワード500SN)0.42g(ジメチルポリシロキサンに対し0.5重量%となる量)を添加し、室温で2時間処理した。その後、ろ過して、ジメチルポリシロキサン84g(収率=85%)を得た。このジメチルポリシロキサン中にはトリフレートイオンは全く検出されなかった。
【0025】
[比較例1]
3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
攪拌棒、冷却管、滴下ロート、温度計を備えた200mlの四つ口フラスコに、ヘキサメチルジシロキサン58.3g(0.36mol)、酢酸28.8g(0.48mol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸0.04g(0.3mmol)を投入し、45℃に加熱した。次いで、滴下ロートから、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40g(0.16mol)を5分かけて滴下した。滴下終了後、45℃で60分間保温した。その後、反応温度が45℃に保たれるように、滴下ロートより無水酢酸24.5g(0.24mol)を30分かけて滴下した。滴下終了の30分後、反応混合物をGCにより分析し、目的物の前駆体である3−メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メトキシシランの消失を確認した後、炭酸カルシム1.33g(13mmol)を加えた。N2バブリングを行いながら45℃で1時間反応させた。中和終了後、低沸分を減圧により除去し、最終的には70℃/20mmHg/O2含有N2バブリングの条件でストリッピングした。次いで、塩をろ過することにより、目的生成物である3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン64.1g(収率=95.0%、純度=95.0%)を得た。この3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン中のトリフレートイオンの濃度は8ppmであり、保存安定性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の製造方法は、超強酸により製造されたオルガノポリシロキサンと作用することなく、該オルガノポリシロキサン中の該超強酸を効率良く中和することができるので、ケイ素原子結合水素原子または官能性基を有する各種オルガノポリシロキサンの製造方法として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超強酸により製造されたオルガノポリシロキサン中の該超強酸を、アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲン化物で中和し、生成した中和塩およびハロゲン化水素を分離することを特徴とするオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
超強酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはメタンスルホン酸であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属のハロゲン化物が、塩化ナトリウム、または塩化カリウムであることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ土類金属のハロゲンの添加量が、超強酸に対して当量以上であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
ハロゲン化水素を分離したオルガノポリシロキサンを、さらにハイドロタルサイト類で処理することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。


【公開番号】特開2006−160831(P2006−160831A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351499(P2004−351499)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】