説明

カッターシャツ用カフス地縫い装置

【課題】形状が異なる多種類のカフスを縫製する場合であって、ある程度のサイズ幅で共通の部材を使用してカフスを縫製することができ、設備コストを低減する。異なるサイズ、形状のカフスへ縫製を切換える場合であっても、二次元方向に対するカフス地の移動量を制御することにより多種類のカフスを縫製することができる。カフスを取出して集積することができ、カフスの縫製及び集積の作業時間を短縮する。
【解決手段】回動位置保持部材63により押え板65の回動を規制した状態でカフス地縫送手段7及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材63による押え板65の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板65の凹部65aに係合した状態でカフス地縫送手段7及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地の角部を湾曲状に縫製及び切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターシャツの構成部材であるカフス(袖口)を縫製するカッターシャツ用カフス地縫い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すようにカッターシャツを製造するには、該カッターシャツのサイズに応じて各種サイズに応じた襟、袖、ヨーク、カフス、前身等の構成部材を予め縫製し、各サイズ毎に対応する構成部材を組み合わせて縫製することにより製造している。
【0003】
その内、構成部材であるカフスを縫製するには、例えばドイツ法人 ディルコップ・アドラー社製のカフス地縫い装置が知られている。該カフス地縫い装置は、上から芯布、表布及び裏布が重ね合わされたカフス地が載置され、縫製されるカフスの外形状に一致する複数のゲージを等間隔に回転可能に配置し、該ゲージの所定停止位置にミシンを配置すると共に該ミシンの回転方向下手におけるゲージの停止位置にカッター装置を配置した構造からなる。
【0004】
そして上記カフス地縫い装置にあっては、先ずカフス地供給位置へ回動されたゲージ上にカフス地をセットした後、該カフス地がセットされたゲージを回動してミシン位置に停止させて所定のカフス形状に一致するパターンでカフス地を縫製し、次に縫製されたカフス地が載置されたゲージをカッター位置へ回動し、該位置にてカフス地を縫製位置から所定幅の外側で切断し、次にゲージを集積位置へ回動して縫製及び外縁が切断されて縫製されたカフスを集積するように構成される。
【0005】
しかし、上記カフス地縫い装置にあっては、形状が異なる多種類のカフスを縫製するには、縫製されるカフス形状に一致する多種類のゲージを必要とするため、設備コストが増大する問題を有している。また、縫製されるカフスを切換えるには、カフス地が載置されるゲージを該カフスに対応する形状のゲージに交換すると共に縫製パターンをカフス形状に対応して変更しなければならず、パターン変更に伴うゲージ等の交換作業に手間と時間がかかり、カフス地縫い装置の実質的稼働時間が短くなってカフス縫製を効率的に行えなかった。更に、縫製されたカフスを取出して集積するには、少なくともカフス縫製時間及びカフス地切断時間を必要とし、実質的なカフス縫製時間が長くなって縫製作業効率が悪い問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−60401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、形状が異なる多種類のカフス地を縫製するには、縫製されるカフス形状に一致する多種類のゲージを必要とするため、設備コストが増大する点にある。縫製されるカフスを切換えるには、カフス地が載置されるゲージを該カフスに対応する形状のゲージに交換すると共に縫製パターンをカフス形状に対応して変更しなければならず、パターン変更に伴うゲージ等の交換作業に手間と時間がかかり、カフス地縫い装置の実質的稼働時間が短くなってカフス縫製を効率的に行えない点にある。縫製されたカフスを取出して集積するには、少なくともカフス縫製時間及びカフス地切断時間を必要とし、実質的なカフス縫製時間が長くなって縫製作業効率が悪い点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1は、カフス裏布、カフス表布及び芯布が重ね合わされた平面長方形状のカフス地を縫製位置に設けられた切断刃付きミシンによりカフス形状に一致して縫製すると共に該縫製線から外側へ所定幅をおいた端縁を切断除去してカフスを縫製するカッターシャツ用カフス地縫い装置において、テーブル本体の搬入側上面にて袖側端部が所定の幅で折返されたカフス地を位置出しされた状態で保持するカフス地セット手段と、上記テーブル本体に対して切断刃付きミシンに近づく方向及び離間する方向の前後方向へ往復移動制御される前後走行体に昇降可能で、かつ回動可能に支持された押え板及び該押え板の回動を規制する回動位置保持部材を有したカフス地縫送手段と、上記カフス地縫送手段を上記カフス地セット手段及び縫製位置間の左右方向へ移動制御すると共に縫製位置へ移動されたカフス地縫送手段の押え板を左右方向へ往復移動制御するカフス地移送手段と、切断刃付きミシンに設けられ、押え板の各角部に設けられた凹部に係合して該押え板を回動可能に支持する軸部材とを備え、回動位置保持部材により押え板の回動を規制した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材による押え板の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板の凹部に係合した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地角部を湾曲状に縫製及び切断することを最も主要な特徴とする。
【0009】
請求項2は、カフス裏布、カフス表布及び芯布が重ね合わされた平面長方形状のカフス地を縫製位置に設けられた切断刃付きミシンによりカフス形状に一致して縫製すると共に該縫製線から外側へ所定幅をおいた端縁を切断除去してカフスを縫製するカッターシャツ用カフス地縫い装置において、テーブル本体の搬入側上面にて袖側端部が所定の幅で折返されたカフス地を位置出しされた状態で保持するカフス地セット手段と、上記テーブル本体に対して切断刃付きミシンに近づく方向及び離間する方向の前後方向へ往復移動制御される前後走行体に昇降可能で、かつ回動可能に支持された押え板及び該押え板の回動を規制する回動位置保持部材を有したカフス地縫送手段と、上記カフス地縫送手段を上記カフス地セット手段及び縫製位置間の左右方向へ移動制御すると共に縫製位置へ移動されたカフス地縫送手段の押え板を左右方向へ往復移動制御するカフス地移送手段と、切断刃付きミシンに設けられ、押え板の各角部に設けられた凹部に係合して該押え板を回動可能に支持する軸部材と、縫製位置に移動したカフス地縫送手段及びカフス地セット手段間の間隔をおいてカフス地縫送手段と一体に移動し、上下方向へ移動可能に設けられた押圧部材を有し、カフス地縫送手段がカフス地セット手段個所へ移動した際に下降した押圧部材により縫製及び切断されたカフスを押圧して保持し、カフス地縫送手段が縫製位置へ移動するのに伴って保持されたカフスをテーブル本体外へ排出して集積するカフス集積手段とを備え、回動位置保持部材により押え板の回動を規制した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材による押え板の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板の凹部に係合した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地の角部を湾曲状に縫製及び切断することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、形状が異なる多種類のカフスを縫製する場合であって、ある程度のサイズ幅で共通の部材を使用してカフスを縫製することができ、従来のように各サイズ毎にゲージを準備する必要がなく、設備コストを低減することができる。また、異なるサイズ、形状のカフスへ縫製を切換える場合であっても、二次元方向に対するカフス地の移動量を制御することにより多種類のカフスを縫製することができ、縫製作業効率を高めることができる。更に、カフスの縫製サイクル内で縫製されたカフスを取出して集積することができ、カフスの縫製及び集積の作業時間を短縮して製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カフス地縫い装置の平面図である。
【図2】カフス地縫い装置の正面図である。
【図3】カフス地縫い装置の左側面図である。
【図4】カフス地セット部を示す説明図である。
【図5】カフス地移送手段を示す説明図である。
【図6】カフス地縫送手段を示す説明図である。
【図7】ミシン部における糸切断部材及び作動軸部材を示す説明図である。
【図8】カフス集積手段を示す説明図である。
【図9】縫製及び切断されるカフス地の概略を示す説明図である。
【図10】カフス地のセット状態を示す説明図である。
【図11】セットされたカフス地の上方に押え板を移動した状態を示す説明図である。
【図12】ミシン本体によるカフス地の縫製及び切断開始時の状態を示す説明図である。
【図13】カフス地における角部の縫製及び切断開始時の状態を示す説明図である。
【図14】カフス地における角部の縫製及び切断終了時の状態を示す説明図である。
【図15】縫製及び切断されたカフスを示す説明図である。
【図16】次位のカフス地上方に押え板を移動した状態を示す説明図である。
【図17】次位のカフス地を縫製位置へ移動するのに伴って縫製されたカフスを集積位置へ移動した状態を示す説明図である。
【図18】カフスを集積する作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
回動位置保持部材により押え板の回動を規制した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材による押え板の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板の凹部に係合した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地角部を湾曲状に縫製及び切断することを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0013】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1乃至図9に示すように、カフス地縫い装置1は、カフス地セット手段3、カフス地移送手段5、カフス地縫送手段7、ミシン部9及びカフス集積手段11から構成され、その内のカフス地セット手段3はテーブル本体13の図示右側、ミシン部9はテーブル本体13の図示中央部、カフス集積手段11はミシン部9から該ミシン部9とカフス地セット手段3の間隔をおいたテーブル本体13の図示左側にそれぞれ配置される。
【0014】
上記カフス地セット手段3は、テーブル本体13の図示右端に該テーブル本体13の上面から所要の高さで配置され、テーブル本体13の長手方向(図示する左右方向)と直交する前後方向へ延出する折返し板15と、該テーブル本体13の右側テーブル面に形成された2本の長孔17内にて昇降可能に設けられ、図示する前後方向へ延出する前後定規板19と、各前後定規板19を昇降するエアーシリンダ等の上下作動部材21と、各前後定規板19周囲のテーブル面に形成された吸引孔23から空気を吸引してテーブル面にセットされたカフス地25を吸着する吸着部材27とから構成される。
【0015】
また、カフス地セット手段3におけるテーブル面の後部には、テーブル面の長手方向(図示する左右方向)へ延出する左右定規板20が設けられ、テーブル面上にセットされるカフス地25の後端部を定規出しする。
【0016】
上記カフス地25は、カッターシャツのカフスを構成するカフス裏布25a、カフス表布25b及び芯布25cを順に重ね合せたもので、各種サイズに対応する大きさの長方形状に裁断される。上記折返し板15は、上面に袖側が所要の幅で突出した状態で載置されたカフス地25の突出側を重ね合せ状態で折返して折目を形成する際に使用する。
【0017】
上記前後定規板19は、袖側が上記のように折返されたカフス地25をテーブル面にセットする際に上端部がテーブル面から所要の高さで突出し、押し当てられる折返し側端部によりカフス地25を定規出しする。折返し側端部が各前後定規板19に押し当てられて定規出しされた2枚のカフス地25は、テーブル面上にて左右対称に配置される。
【0018】
上記吸着部材27は、上記吸引孔23を含むテーブル面の下面にて上記前後定規板19及び上下作動部材21を覆うように設けられる隔壁板27a及び隔壁板27aに設けられて排気する排気装置(ブロアー)の排気部材から構成され、前後定規板19に折返し部を押し当ててカフス地25をテーブル面上にセットする際に該カフス地25を吸引してセット状態を保つ。
【0019】
カフス地移送手段5は、カフス地送り機構部7を上記カフス地セット手段3と縫製位置の間で往復移動する機構で、倍速構造からなる。
即ち、テーブル本体13の正面には、上記カフス地セット手段3及び縫製位置間の距離の1/2に応じた長さで図示する左右方向へ延出するガイドレール29が設けられ、該ガイドレール29には、テーブル本体13に設けられたエアーシリンダ等の走行作動部材33が連結された走行体31が図示する左右方向へ往復移動するように支持される。該走行体31には、上記カフス地セット手段3及び縫製位置間の距離の1/2に応じた長さで図示する左右方向へ延出する走行アーム35が設けられ、該走行アーム35には、図示する左右方向へ延出するガイドレール37及びラックギャ39が設けられる。該ガイドレール37には、カフス地送り機構部7が設けられる左右走行体41が図示する左右方向へ往復移動するように支持される。該左右走行体41には、数値制御可能なサーボモータ等の第1電動モータ43が設けられ、該第1電動モータ43の出力軸に取り付けられたピニオンギャ(図示せず)は、上記ラックギャ39に噛合わされる。
【0020】
上記カフス地移送手段5は、走行作動部材33の作動及び第1電動モータ43の駆動に伴ってカフス地送り機構部7が設けられた左右走行体41を上記カフス地セット手段3及び縫製位置の間で倍速移動させる。
【0021】
カフス地縫送手段7は、左右対称にセットされて縫製位置へ移送された2枚のカフス地25を後述するミシン部9によりカフスパターンに基づいて縫製すると共に縫製線より外側の周縁を切断する際にミシン部9に対してカフス地25をカフスパターンに従って直線状及び湾曲状に送る。
【0022】
即ち、上記左右走行体41には、側面L字形の走行フレーム45の起立部が固定され、該走行フレーム45の水平部は、テーブル面の上方にて前後方向へ延出する。該走行フレーム45の水平部には、前後方向へ延出するガイドレール47が設けられ、該ガイドレール47には、前後走行体49が前後方向へ移動するように支持される。上記前後走行体49には、前後方向へ延出するラックギャ51が取付けられ、該ラックギャ51には、上記水平部に固定された数値制御可能に第2電動モータ53の出力軸に固定されたピニオンギャ(図示せず)が噛合わされ、該第2電動モータ53の駆動に伴って前後走行体49がミシン部9に近づく方向及び遠ざかる方向へ移動される。
【0023】
上記前後走行体49の先端側には、垂下部が設けられ、該垂下部には、上下方向へ延出するガイドレール55が設けられる。該ガイドレール55には、垂下部に設けられたエアーシリンダ等の上下動部材57に連結された昇降体59が昇降するように支持され、上下動部材57の作動に伴って昇降体59をテーブル面に近づく位置と遠ざかる位置の間で昇降させる。
【0024】
上記昇降体59には、回動取付け盤61が回転可能に支持され、該回転取付け盤61の外周側には、例えば8個の凹部61aが周方向の等分割位置に設けられる。また、上記回動取付け盤61における回転中心の対角位置に応じた昇降体59には、エアーシリンダ、電磁ソレノイド等の2個の回動位置保持部材63が、そのロッド61aが上記凹部61aへ係合するように設けられる。
【0025】
上記回動取付け盤61の下面には、押え板65が取付けられる。該押え板65は、各種サイズに対してある程度の幅で共通の大きさに形成され、折返し側端部相互間に所要の間隔をおいてセットされた左右一対のカフス地25の中央部分を押圧する大きさで、各角部が縫製されるカフスに応じた湾曲状に形成される。また、押え板65の各角部には、該押え板65の回動中心になる凹部65aが形成される。
【0026】
上記押え板65は、上記回動取付け盤61に対して位置決めされた状態で磁気吸着されて取り付けられる。回動取付け盤61に対する押え板65の位置決め手段としては、回動取付け盤61の下面に位置決めピン(図示せず)を設け、該位置決めピンを押え板65に形成された凹部65aに係合して両者を位置決めすればよい。
【0027】
なお、前後走行体49には、回動取付け盤61の上面に形成された孔等(図示せず)に対する光の照射状態に基づいてテーブル面上における押え板65の向き、即ち、該押え板65の長手方向が図示する左右方向又は前後方向を向いているのかを検知するフォトセンサ等の向き検知器(図示せず)が取り付けられている。
【0028】
ミシン部9のミシン本体67は、ミシン針から所要の間隔をおいた個所にカフス地25の外周縁を切断する切断刃を備えた従来公知のミシン装置で、その詳細な説明に付いては、省略する。上記ミシン本体67には、エアーシリンダ、電磁ソレノイド等の作動部材69aのロッドに切断刃69bを設けた糸切断部材69及びカフスの湾曲部を縫製及び切断する際に押え板65の凹部65aに係合して押え板65の回動中心を設定するエアーシリンダ、電磁ソレノイド等の作動部材71aに係合軸71bを設けた作動軸部材71がそれぞれ設けられる。
【0029】
なお、ミシン本体67は、フォトセンサ等のカフス地検知器(図示せず)がカフス地移送手段5及びカフス地縫送手段7により搬入れるカフス地25における後部左端を検出した後に所定の時間、又は第1電動モータ43に印加される駆動パルスが所定数に達した際にミシン駆動してカフス地25を縫製すると共に縫製線に沿って外縁を切断する。また、カフス地25から切断された切断屑は、ミシン本体67におけるミシン針周辺の開口から吸引除去される。
【0030】
カフス集積手段11は、新たなカフス地25を縫製及び切断するために縫製位置へ搬入する動作に伴ってカフス地25から縫製及び切断形成されたカフス25aを多段集積する。即ち、左右走行体41の図示する左側には、左右方向へ延出する取付けアーム73の基端部が固定され、該取付けアーム73の先端部には、テーブル本体13の前後方向中央部へ延出する取付け板75が固定される。該取付け板75には、上下方向に軸線を有したエアーシリンダ等の昇降作動部材77が設けられ、該昇降作動部材77のロッドには、図示する左右方向に長いが押圧部材79が取付けられる。なお、図中の符号81は、取付け盤75に対して上下方向に軸線を有して上下方向へ摺動するように支持される左右一対のガイドロッドで、各ガイドロッド81の下部は、上記押圧部材79に固定される。
【0031】
上記テーブル本体13の図示する左端には、前後一対の支持テーブル83がカフス25aの前後幅より短い間隙を設け、かつ縫製及び切断形成されたカフス95の前後幅に応じて位置調整できるように設けられる。上記テーブル本体13の図示する左端後方部には、左右一対の垂直フレーム85が設けられ、該垂直アーム85の上部には、先端部が上記支持テーブル83間の間隙上方へ突出する取付け板87が取付けられ。そして該取付け板87には、上下方向に軸線を有したエアーシリンダ等の上下作動部材89が取付けられ、該上下作動部材89のロッドには、上記間隙内に進入可能な押込み部材91が取付けられる。なお、図中の符号93は、上下方向に軸線を有して取付け板87に摺動するように支持されて下部が押込み部材91に固定されるガイドロッドである。
【0032】
押込み部材91の下降位置に応じたテーブル本体13の図示する左端部には、集積板97が設けられている。該集積板97は、テーブル本体13に対して固定的、又は集積板97に対するカフス95の集積に伴って昇降する構造のいずれであってもよい。図はテーブル本体13に集積板97を固定的に設けた例を示す。なお、集積板97に応じたテーブル本体13に押出し部材(図示せず)を設け、集積板97上に所定枚数のカフス95が集積された際に押出し部材を作動して集積されたカフス95を排出可能にしてもよい。
【0033】
次に、上記のように構成されたカフス地縫い装置1の作用を説明すると、作業者は、押返し板15上に対してカフス裏布25a、カフス表布25b及び芯布25cが順に重ね合わされたカフス地25を、その袖側端部が所要の幅で突出するように載置した後、突出側端部を折返し、次に押返し側端部を把持しながら該カフス地25を、その折返し側端部が前後定規板に、また長手方向端部が左右定規板20に当接するように位置決めしながらテーブル面上にセットする。
【0034】
上記作業を繰り返して他のカフス地25を、その折返し側端部がセットされた先のカフス地25の折返し側端部に対して所要幅の間隔をおいて対向するようにセットする。このとき、テーブル面上にセットされた2枚のカフス地25は、吸引孔23からの排気によりテーブル面上に吸着され、そのセット状態が保たれる。なお、前後定規板19は、後述するカフス地移送手段5の駆動開始時に作動される上下作動部材21によりその上端がテーブル面より下方に位置するように下降される。(図10参照)
【0035】
次に、上記状態にてスタートボタン(図示せず)がON操作されると、昇降体59が上昇した状態で走行作動部材33を作動して走行体31をテーブル本体13に対して図示する右方に向かって移動させながら第1電動モータ43を駆動して走行アーム35に対して左右走行体41を図示する右方へ移動し、同期したタイミングで作動及び駆動してカフス地縫送手段7を、その押え板65がテーブル面上で吸着保持された2枚のカフス地25の中央部の上方に位置するように移動させる。このとき、上記押え板65は、作動される回動位置保持部材63のロッドが凹部61aに係合し、その長手方向が前後方向を向くように位置決めされている。(図11参照)
【0036】
次に、上記状態にて上下動部材57を作動して昇降体59を下降して押え板65によりセットされた2枚のカフス地25をテーブル面上に押付けて保持させた後、上記カフス地移送手段5の走行作動部材33及び第1電動モータ43をそれぞれ復動してカフス地縫送手段7を縫製位置側へ移動させる。このとき、上記押え板65によりテーブル面上に押付けられた2枚のカフス地25は、カフス地縫送手段7の移動に伴ってテーブル面上を滑走して縫製位置側へ移動される。
【0037】
そしてテーブル面上を滑走する2枚のカフス地25の内、図示する左方のカフス地25の後方左端がカフス地検知器により検出された後に該後方左端における図示するA点がミシン針に位置する予め設定された所要時間経過後のタイミングで第1電動モータ43を駆動制御して走行アーム35に対してカフス地縫送手段7を図示する左方へ移動しながらミシン本体67をミシン駆動して押え板65の端縁に沿って2枚のカフス地25における後端縁を直線状に縫製すると共に切断刃により縫製線より所要幅をおいた外側縁を切断して除去する。(図12参照)
【0038】
なお、上記縫製時においては、ミシン針が2枚のカフス地25相互間に位置する際には、ミシン本体67により空縫いされてカフス地25相互が空縫いの糸で?がった状態になる。本実施例にあっては、A点からミシン縫いを開始してカフス地25の相互間に至ったタイミング、即ちカフス地縫送手段7を左右方向へ移動する第1電動モータ43の駆動パルス数がカフス地25の相互間に至る予め設定された所定数に達した際に、糸切断部材69を作動してカフス地25相互間に空縫いされた糸を切断してカフス地25相互を分離可能にする。
【0039】
上記縫製及び切断により縫製箇所が図示するB点に至ると、回動位置保持部材63を復動して凹部61aに対するロッドの係合を解除して回動取付け盤61を回動可能にさせると共に作動軸部材71の作動部材71aを作動して係合軸71bを押え板65の凹部65aに係合し、該位置を中心に押え板65を回動可能にさせる。そして該状態にて第1電動モータ43及び第2電動モータ53を駆動制御して押え板65を上記作動軸部材71のロッドを中心に左右方向及び前後方向の二次元方向へ移動してカフス地25の図示する右側後方を予め設定された所要の曲率で湾曲状に縫製及び切断動作させる。(図13参照)
【0040】
なお、第1電動モータ43及び第2電動モータ53を駆動制御するデータは、縫製されるカフス95の外形状パターン毎にプログラムされて制御手段の記憶手段に記憶され、縫製しようとするカフス95の外形状に基づいて記憶手段から所望のパターンデータを読み出して第1電動モータ43及び第2電動モータ53を駆動制御することにより実行する。
【0041】
そして上記湾曲部の縫製及び切断により縫製箇所が図示するC点に至ると、押え板65の長手方向が左右方向を向いた状態になり、この状態にて上記作動軸部材71の作動部材71aを復動して凹部65aに対する係合軸71bの係合を解除すると共に回動位置保持部材63を作動してロッドを凹部61aに係合して押え板65を回動規制した状態で第2電動モータ53を駆動制御して押え板65を前後方向へ移動しながらカフス地25の長手方向端縁を直線状に縫製及び切断する。そして上記作業の繰り返しにより2枚のカフス地25の端縁を直線状及び湾曲状に縫製及び切断してカフス95を縫製する。(図14及び図15参照)
【0042】
カフス95の縫製作業終了後に上下動部材57を復動して昇降体59を上昇させて押え板65によるカフス95の押圧を解除した後に第1電動モータ43を駆動制御してカフス地縫送手段7をカフス地セット手段3側へ移動させる。このとき、カフス地縫送手段7の移動により縫製位置に取り残された2枚のカフス25の上方に押圧部材79が移動される。(図16参照)
【0043】
そして新たに縫製及び切断される2枚のカフス地25を上記した動作により縫製位置へ移動開始するタイミングまたはセットされた2枚にカフス地25をテーブル面上に押付けるために上下動部材57が作動されたタイミングで昇降作動部材77を作動して押圧部材79を下降して2枚のカフス95の前方側をテーブル面上に押付けた状態でカフス地縫送手段7を縫製位置へ移動することによりテーブル面上にて2枚のカフス9をカフス集積手段11側へ滑走させてカフス25の前後方向端部を対応する支持テーブル83上へ移載させる。(図17参照)
【0044】
そして各支持テーブル83上にカフス25の前後方向端部が載置されると、上下作動部材89を作動して押込み部材91を下降して各支持テーブル83上に載置されたカフス95の前後方向中間部を下方へ押込んで集積板97上に集積させる。(図18参照)
【0045】
本実施例は、縫製しようとするカフス95のサイズが異なる場合であってもある程度の幅の共通の押え板65を使用してカフス生地25をカフス95の外形状に応じて縫製すると共に縫製線から外側へ所定の幅をおいた位置にて切断してカフス95を製造することができ、従来のようにカフスの各サイズ毎にゲージ板を使用することなく、設備コストを低減することができる。また、サイズ毎にゲージ板を交換する必要がなく、装置の稼働停止時間を少なくして製造効率を高めることができる。更に、縫製及び切断作業のサイクル内で縫製されたカフス95の集積作業まで完了することができ、作業効率が優れている。
【0046】
本発明は、ミシン部9のミシン本体67を切断機能付きミシンから縁かがり縫いしながら端縁を切断する機能を備えたロックミシンへ交換することにより手拭きタオル、台拭きタオル、眼鏡拭き布等のように端縁が直線状及び湾曲状に縁かがり縫いされた用途にも実施することができる。その場合、縁かがり縫い及び切断に付いての詳細な作用は、本実施例に示した説明と実質的に同様で重複するため、詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0047】
1 カフス地縫い装置
3 カフス地セット手段
5 カフス地移送手段
7 カフス地縫送手段
9 ミシン部
11 カフス集積手段
13 テーブル本体
15 折返し板
17 長孔
19 前後定規板
20 左右定規板
21 上下作動部材
23 吸引孔
25 カフス地
25a カフス裏布
25b カフス表布
25c 芯布
27 吸着部材
27a 隔壁板
29 ガイドレール
31 走行体
33 走行作動部材
35 走行アーム
37 ガイドレール
39 ラックギャ
41 左右走行体
43 第1電動モータ
45 走行フレーム
47 ガイドレール
49 前後走行体
51 ラックギャ
53 第2電動モータ
55 ガイドレール
57 上下動部材
59 昇降体
61 回動取付け盤
61a 凹部
63 回動位置保持部材
65 押え板
65a 凹部
67 ミシン本体
69 糸切断部材
69a 作動部材
69b 切断刃
71 作動軸部材
71a 作動部材
71b 係合軸
73 取付けアーム
75 取付け板
77 昇降作動部材
79 押圧部材
81 ガイドロッド
83 支持テーブル
85 垂直フレーム
87 取付け板
89 上下作動部材
91 押込み部材
93 ガイドロッド
95 カフス
97 集積板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフス裏布、カフス表布及び芯布が重ね合わされた平面長方形状のカフス地を縫製位置に設けられた切断刃付きミシンによりカフス形状に一致して縫製すると共に該縫製線から外側へ所定幅をおいた端縁を切断除去してカフスを縫製するカッターシャツ用カフス地縫い装置において、
テーブル本体の搬入側上面にて袖側端部が所定の幅で折返されたカフス地を位置出しされた状態で保持するカフス地セット手段と、
上記テーブル本体に対して切断刃付きミシンに近づく方向及び離間する方向の前後方向へ往復移動制御される前後走行体に昇降可能で、かつ回動可能に支持された押え板及び該押え板の回動を規制する回動位置保持部材を有したカフス地縫送手段と、
上記カフス地縫送手段を上記カフス地セット手段及び縫製位置間の左右方向へ移動制御すると共に縫製位置へ移動されたカフス地縫送手段の押え板を左右方向へ往復移動制御するカフス地移送手段と、
切断刃付きミシンに設けられ、押え板の各角部に設けられた凹部に係合して該押え板を回動可能に支持する軸部材と、
を備え、回動位置保持部材により押え板の回動を規制した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材による押え板の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板の凹部に係合した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地角部を湾曲状に縫製及び切断するカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項2】
カフス裏布、カフス表布及び芯布が重ね合わされた平面長方形状のカフス地を縫製位置に設けられた切断刃付きミシンによりカフス形状に一致して縫製すると共に該縫製線から外側へ所定幅をおいた端縁を切断除去してカフスを縫製するカッターシャツ用カフス地縫い装置において、
テーブル本体の搬入側上面にて袖側端部が所定の幅で折返されたカフス地を位置出しされた状態で保持するカフス地セット手段と、
上記テーブル本体に対して切断刃付きミシンに近づく方向及び離間する方向の前後方向へ往復移動制御される前後走行体に昇降可能で、かつ回動可能に支持された押え板及び該押え板の回動を規制する回動位置保持部材を有したカフス地縫送手段と、
上記カフス地縫送手段を上記カフス地セット手段及び縫製位置間の左右方向へ移動制御すると共に縫製位置へ移動されたカフス地縫送手段の押え板を左右方向へ往復移動制御するカフス地移送手段と、
切断刃付きミシンに設けられ、押え板の各角部に設けられた凹部に係合して該押え板を回動可能に支持する軸部材と、
縫製位置に移動したカフス地縫送手段及びカフス地セット手段間の間隔をおいてカフス地縫送手段と一体に移動し、上下方向へ移動可能に設けられた押圧部材を有し、カフス地縫送手段がカフス地セット手段個所へ移動した際に下降した押圧部材により縫製及び切断されたカフスを押圧して保持し、カフス地縫送手段が縫製位置へ移動するのに伴って保持されたカフスをテーブル本体外へ排出して集積するカフス集積手段と、
を備え、回動位置保持部材により押え板の回動を規制した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段のいずれか一方を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地を直線状に縫製及び切断する一方、回動位置保持部材による押え板の回動規制を解除すると共に軸部材を押え板の凹部に係合した状態でカフス地縫送手段及びカフス地移送手段を移動制御して縫製位置へ移送されたカフス地の角部を湾曲状に縫製及び切断するカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれかにおいて、カフス地セット手段は、少なくともカフス地の移送方向と直交する前端及び後端のいずれか一方に当接して定規出しする左右定規部材を有すると共にテーブル面上にセットされたカフス地を吸引して保持する吸着部材を有したカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれかにおいて、カフス地移送手段は、カフス地セット手段及び縫製位置相互間の1/2のストロークで往復移動可能に支持された走行体及び該走行体を上記ストロークで往復移動する走行作動部材と、上記ストロークに一致する長さで上記走行体に対して往復移動可能に支持された左右走行体及び該左右走行体を上記ストロークで往復移動する数値制御可能な電動モータとを備えた倍速構造からなるカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項5】
請求項1及び2のいずれかにおいて、カフス地縫送手段は、カフス地移送手段に対して前後方向へ往復移動可能に支持される前後走行体と、該前後走行体を数値制御可能に往復移動する第2電動モータと、前後走行体に対して昇降可能に支持される昇降体と、該昇降体を昇降する上下動部材と、昇降体に対して回動可能に軸支される回動取付け盤と、上記昇降体に設けられて回動取付け盤の回動位置を保持する回動位置保持部材と、上記回動取付け盤に対して位置決めされて着脱可能に取付けられ、カフス地の縫製パターンより小さい相似形状の押え板とからなるカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項6】
請求項5において、押え板は、上記回動取付け盤に対して磁気吸着されて取り付けられるカッターシャツ用カフス地縫い装置。
【請求項7】
請求項1及び2のいずれかにおいて、カフス集積手段は、カフス地縫送手段に対してカフス地セット手段及び縫製位置間の長さでカフス地セット手段と反対の方向へ延出する取付けアームの先端部に押圧部材を昇降可能に設けたカッターシャツ用カフス地縫い装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−125290(P2012−125290A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277017(P2010−277017)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(391063673)株式会社友縫機械 (4)
【Fターム(参考)】