説明

カテナリ型炉

【課題】ストリップ材の熱処理の温度条件を変化させることなく、且つ、ストリップ材を損傷させずに、ストリップ材を支持する支持ローラを交換できるカテナリ型炉を提供する。
【解決手段】ストリップ材3を支持して回転可能な複数の支持ローラ7を周上長手方向に設けた回転ドラム5と、回転ドラム5の回転の際に支持ローラ7に替わってストリップ材3を支持する回転可能な補助ローラ9とを有し、回転ドラム5によって炉体2を封止するカテナリ型炉1において、回転ドラム5に補助ローラ9を収容する収容溝10を設けることで、ストリップ材3の支持ローラ7による支持位置と補助ローラ9による支持位置とを接近させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストリップ材を連続して熱処理するカテナリ型炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリップ材を連続して熱処理するカテナリ型炉では、炉内でストリップ材を支持する必要があり、そのために炉内に支持ローラを配置するのが一般的である、支持ローラは損傷等によって交換が必要になるが、炉の運転を停止して支持ローラを交換すると、炉の冷却および再昇温のために非常に長い停止時間が必要であるため、稼働率が大きく低下してしまう。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、2本の支持ローラを回転ドラムの周上長手方向に設け、回転ドラムを回転することで、ストリップ材を支持する支持ローラを入れ替えるようにする技術が知られている。回転ドラムは、炉体の開口に配置され、一方の支持ローラを炉体の外側に露出させるので、カテナリ型炉の運転を止めることなく、損傷した支持ローラを新しいものに交換可能にする。
【0004】
そのような回転ドラムを使用する問題点として、回転ドラムと炉体との隙間が大きく、熱効率が悪くなることがある。特許文献2には、そのようなカテナリ型炉の熱効率を高めるために、炉体と回転ドラムとの間を封止でき、回転ドラムを回転するときには回転ドラムから離間するシール部材を設ける発明が開示されている。しかしながら、シール部材の駆動のためには、複雑な駆動機構が必要である。
【0005】
また、回転ドラムを使用する他の問題点として、回転ドラムの回転時に、回転ドラムがストリップ材を擦過して傷付けるという問題がある。特許文献3には、回転ドラムの周速がストリップ材の搬送速度に等しくなるように、回転ドラムを駆動する駆動機構を設ける発明が記載されている。しかしながら、回転ドラムの擦過によるストリップ材の損傷を完全に防止するためには、質量が決して小さくない回転ドラムの周速を一瞬にしてストリップ材の搬送速度まで加速する必要がある。高出力の駆動機構を採用したとしても、ストリップ材を擦過して傷付けるのを完全に防止できる程に回転ドラム加速することは難しい。
【0006】
そこで、特許文献4には、回転ドラムを回転させるときだけ上昇して、支持ローラに替わってストリップ材を支持する補助ローラを設ける発明が記載されている。そのような補助ローラは、通常時には、ストリップ材と接触しないように支持ローラよりも下方に退避している必要があり、回転ドラムと干渉させないためには、支持ローラからある程度離れた位置に設ける必要がある。
【0007】
しかしながら、支持ローラと補助ローラが離れていると、支持ローラに支持されているときと補助ローラに支持されているときとで、ストリップ材が搬送される経路が異なってしまう。炉内には、バーナの配置等に応じて温度分布があり、ストリップ材の搬送経路が変更されることによって、僅かながら熱処理の温度条件が変化してしまう。近年、熱処理の高度化が進み、そのような温度条件の変化が問題視されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平2−33767号公報
【特許文献2】特開平10−265855号公報
【特許文献3】特開平9−249920号公報
【特許文献4】特開平9−296227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題点に鑑みて、本発明は、ストリップ材の熱処理の温度条件を変化させることなく、且つ、ストリップ材を損傷させずに、ストリップ材を支持する支持ローラを交換できるカテナリ型炉、および、シール性の高い支持ローラの交換機構を備えるカテナリ型炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明によるカテナリ型炉は、ストリップ材を支持して回転可能な複数の支持ローラを周上長手方向に設けた回転ドラムと、前記回転ドラムの回転の際に前記支持ローラに替わって前記ストリップ材を支持する回転可能な補助ローラとを有し、前記回転ドラムによって炉体を封止するカテナリ型炉において、前記回転ドラムに前記補助ローラを収容する収容溝を設けたものとする。
【0011】
この構成によれば、補助ローラの使用により、支持ローラの交換時にストリップ材が回転ドラムに接触せず、ストリップ材を傷付けることがない。また、通常の運転時には回転ドラムに設けた収容溝に補助ローラを収容できるようにしたので、支持ローラがストリップ材を支持する位置と、補助ローラがストリップ材を支持する位置とが接近している。これにより、支持ローラで支持するときと補助ローラで支持するときのストリップ材の搬送経路が殆ど変わらないので、ストリップ材に対する炉内温度の分布が維持される。これにより、支持ローラを交換するときにも、ストリップ材に加えられる熱量の分布が変化せず、熱処理の温度条件が一定に保たれる。
【0012】
また、本発明のカテナリ型炉において、前記回転ドラムは、前記支持ローラの回転軸と前記収容溝に収容したときの前記補助ローラの中心の回転軸との間の角度位置を真上にして停止してもよい。
【0013】
回転ドラムは、支持ローラを保持する部分および収容溝の部分では炉体を封止できない。通常、炉体の開口は水平であるので、回転ドラムの回転軸の前後で炉体の開口幅は等しくなる。このため、支持ローラを頂点にして、回転ドラムを停止すると、支持ローラの前後に収容溝の幅以上の開口が必要になる。そこで、支持ローラと補助ローラとの間を真上にすることで、炉体の開口幅を小さくすることができる。また、補助ローラを回転ドラムの回転中心の真上近くに収容するほうが、補助ローラを回転ドラムに対して鉛直方向に相対移動させたときに、回転ドラムの回転に干渉しない位置まで補助ローラを突出させるのに必要な移動距離が少なくて済む。
【0014】
また、本発明のカテナリ型炉は、前記補助ローラが昇降可能であり、前記炉体の側壁に設けた前記支持ローラの軸を受け入れる軸貫通溝を封止可能な可動の封止部材をさらに有してもよい。
【0015】
この構成によれば、補助ローラを昇降することで、ストリップ材を支持ローラから持ち上げて支持し、且つ、回転ドラムを回転するために、回転ドラムおよび支持ローラの回転範囲の外に補助ローラを退避させることができる。このためには、炉体の側壁に補助ローラの軸が貫通する軸貫通溝が必要であるが、通常運転時には封止部材によって軸貫通溝の上部を封止することで、熱効率の低下を防止できる。
【0016】
また、本発明のカテナリ型炉において、前記支持ローラは、前記回転ドラムの外周円の内側に配設され、前記回転ドラムは、前記支持ローラの近傍が前記外周円の内側に後退した形状をしていてもよい。
【0017】
この構成によれば、支持ローラを回転ドラムの外周円の内側に配設することで、回転ドラムの回転に必要な空間の半径を小さくしている。同時に、回転ドラムの形状を、支持ローラの両側を切除して外周円よりも後退させた形状とすることで、支持ローラに支持されているストリップ材に回転ドラムが接触しないようにしている。これにより、回転ドラムを回転させるためのクリアランスを確保するための駆動量を小さくすることができ、駆動機構を簡素化できる。
【0018】
また、本発明のカテナリ型炉において、前記回転ドラムは、昇降可能であって、上昇して前記炉体に圧接され、下降して前記炉体との間に回転のためのクリアランスを確保してもよい。
【0019】
この構成によれば、回転ドラムを炉体に圧接して隙間をなくすので、炉体の封止が確実である。また、隙間を封止するための別部材が不要であるために構造が簡素になる。
【0020】
また、本発明のカテナリ型炉において、前記炉体の前記回転ドラムが圧接される部分の下側をテーパ状に拡げてもよい。
【0021】
炉体の回転ドラムが圧接される部分は、回転ドラムの倣い形状とする必要があるが、完全な倣い形状にしてしまうと、炉体が下降したときにできる回転ドラムと炉体との間の回転ドラムの回転のための径方向のクリアランスは、炉体の下側ほど、つまり、回転ドラムの角度位置が頂点から離れているほど小さくなる。そこで、回転ドラムが圧接される部分の下側をテーパ状に拡げることで、クリアランスを大きくし、回転ドラムの昇降距離を小さくできる。
【0022】
また、本発明によるカテナリ型炉の異なる態様は、ストリップ材を支持して回転可能な複数の支持ローラを周上長手方向に設けた回転ドラムと、前記回転ドラムの回転の際に前記ストリップ材を支持する補助ローラとを有し、前記回転ドラムによって炉体を封止するカテナリ型炉において、前記回転ドラムは、昇降可能であって、上昇して前記炉体に圧接され、下降して前記炉体との間に回転のためのクリアランスを確保するものとする。
【0023】
この構成によれば、回転ドラムを炉体に圧接して隙間をなくすので、炉体の封止が確実である。また、隙間を封止するための別部材が不要であるために構造が簡素になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、通常の運転時には、回転ドラムに設けた収容溝に支持ローラの交換時にストリップ材を保持する補助ローラを収容するので、支持ローラがストリップ材を支持する位置と、補助ローラがストリップ材を支持する位置とが接近しており、熱処理の条件が一定に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態のカテナリ型炉のストリップ材搬送方向に直交する断面図である。
【図2】図1のカテナリ型炉の通常運転時のストリップ材搬送方向の炉内における部分断面図である。
【図3】図1のカテナリ型炉の回転ドラムの斜視図である。
【図4】図1のカテナリ型炉の支持ローラ交換時のストリップ材搬送方向の炉内における部分断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図1のカテナリ型炉の支持ローラ交換時のストリップ材搬送方向の炉体外での部分断面図である。
【図7】図1のカテナリ型炉の支持ローラ交換時のストリップ材搬送方向の炉体外における部分断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のカテナリ型炉の通常運転時のストリップ材搬送方向の炉内における部分断面図である。
【図9】図8のカテナリ型炉の支持ローラ交換時のストリップ材搬送方向の炉内における部分断面図である。
【図10】本発明に係る回転ドラムの代案の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の第1実施形態のカテナリ型炉1を示す。カテナリ型炉1は、耐熱材からなる炉体2の内部を不図示のバーナで加熱し、炉体2の内部を搬送する金属ストリップ材3を連続的に加熱処理するものである。図1には、ストリップ材3の搬送方向に直交する断面、図2には、ストリップ材3の中央における断面が示されている。
【0027】
カテナリ型炉1は、図2に示すように、炉体2の底壁が部分的に高くなっており、その部分に炉体2を横断し、下向きに開口する支持開口4が形成されている。支持開口4は、図3に示すような、例えばキャスタブルセラミックを概略円柱状にモールド成形してなり、その中心軸周りに回転可能な回転ドラム5によって封止されるようになっている。
【0028】
図1に示すように、回転ドラム5のシャフトに設けた支持部材6には、ストリップ材3を支持するための2本の支持ローラ7が回転可能に保持されている。支持ローラ7は、図3に示すように、それぞれ、回転ドラム5の外周に長手方向に延伸して設けた支持溝8に収容されている。支持ローラ7は、図2に示すように、回転ドラム5の軸周りに180°の間隔で配設されており、その外周が回転ドラム5の外周円の内側に位置するように保持されている。
【0029】
図2に示すように、回転ドラム5は、支持ローラ7の近傍、つまり、支持溝8のストリップ材3搬送方向のエッジ部分が、回転ドラム5の外周円の内側に後退するように削り取られた形状を有し、支持ローラ7が支持するストリップ材3に回転ドラム5が接触しないようにクリアランスを形成している。
【0030】
また、カテナリ型炉1は、支持ローラ7の近傍に配置され、支持ローラ7に替わってストリップ材を支持可能な補助ローラ9を有する。補助ローラ9は、不図示の駆動機構によって昇降可能、且つ、回転可能に保持されており、上昇時には、図2に二点鎖線で示すように、ストリップ材3を支持ローラ7から持ち上げて支持する。また、補助ローラ9は、下降時には、支持ローラ7よりも低い位置まで下がり、支持ローラ7に支持されているストリップ材3に接触しないように退避する。このとき、補助ローラ9は、回転ドラム5に、支持溝8にそれぞれ隣接するように設けた2本の収容溝10のいずれかに、例えば図3に二点鎖線で示すように収容されるようになっている。
【0031】
収容溝10は、回転ドラム5が2本の支持ローラ7のいずれかを回転ドラム5の中心軸の真上よりも補助ローラ9と反対側に所定の小さい角度だけ傾けた角度位置に停止したときに、補助ローラ9を収容できる。つまり、回転ドラム5は、支持ローラ7の中心軸と収容溝に収容した補助ローラ9の中心軸との間の角度位置を真上にして停止するようになっている。
【0032】
図2に示すように、炉壁の厚みにより形成される支持開口4の内側端面は、上側半分が回転ドラム5に倣う円筒面であり、下側半分が上側部分から不連続に拡がるテーパ状の平面である。また、支持開口4の端面には、セラミック繊維によって形成された弾性のあるフェルトからなる弾性部材11が貼着されている。
【0033】
さらに、回転ドラム5は、図1に示すように、流体圧シリンダ12のような昇降機構によって昇降可能に保持されており、上昇して支持開口4に圧接されることにより、支持開口4を封止する。このとき、弾性部材11は、炉体2と回転ドラム5との隙間をシールするとともに、炉体2および回転ドラム5の圧接時の衝撃による破損を防止する緩衝材の役目を果たす。
【0034】
カテナリ型炉1において、支持ローラ7を交換する場合、先ず、補助ローラ9を上昇して、補助ローラ9にストリップ材3を支持させる。そして、図4に示すように、回転ドラム5を下降させることで、回転ドラム5を炉体2の支持開口4から離間させて、回転ドラム5の外周周りに空間を設ける。この状態で、回転ドラム5を180°回転させることで、回転ドラム5の上側に保持されてストリップ材3を支持していた支持ローラ7と、回転ドラム5の下側に保持されていた支持ローラ7とを入れ替える。
【0035】
そして、再び回転ドラム5を上昇させて炉体2に圧接して支持開口4を封止する。回転ドラム5の上側に移動した支持ローラ7が炉内の熱気で十分に熱せられたなら、補助ローラ9を下降して、回転ドラム5の収容溝10の中に収容し、隣接する支持ローラ7にストリップ材3を受け渡す。回転ドラム5の下側に移動した支持ローラ7は、炉体2の外側に保持されているので、カテナリ型炉1の運転が継続されていても、外気によって冷却され、カテナリ型炉1を停止することなく新品と交換できる。つまり、次にストリップ材3を支持する支持ローラ7を事前に準備しておくことができる。
【0036】
カテナリ型炉1は、回転ドラム5に補助ローラ9を収容する収容溝10を設けているので、支持ローラ7と補助ローラ9とが非常に近い位置に配置されている。このため、支持ローラ7によって支持されているときのストリップ材3の搬送の軌道と、補助ローラ9によって支持されているときのストリップ材3の搬送の軌道とが殆ど変化しない。炉体2の内部は、バーナの配置等に応じて位置によって温度が異なるが、支持ローラ7の交換時にもストリップ材3の搬送経路が変化しないため、熱処理の温度条件が変わらない。
【0037】
また、カテナリ型炉1では、円筒状の回転ドラム5の外面が支持開口4に圧接されるので、別の部材によってシールする場合と比べて、支持開口4の周長に対する圧接面積、つまり、シール面積を大きく取ることができる。このために、カテナリ型炉1は、支持開口4からの高温空気の漏れが少なく、熱効率が高い。
【0038】
カテナリ型炉1において支持開口4は水平に開口しているため、回転ドラム5によって封止するためには、支持開口4のストリップ材搬送方向前後の端面が、回転ドラム5の回転軸に対して前後に対称な位置にある必要がある。本実施形態のカテナリ型炉1では、回転ドラム5は、支持ローラ7の中心軸と補助ローラ9の中心軸との間の角度位置を真上にして、支持溝8と収容溝10とを回転ドラム5の中心軸の両側に振り分けるように停止するようになっているので、支持開口4の幅(ストリップ材搬送方向の長さ)が、支持溝8および収容溝10の幅の合計よりも僅かに大きいだけであり、支持開口4が小さい。これによっても、カテナリ型炉1は、支持開口4を封止しやすくしている。
【0039】
また、図5に二点鎖線で示すように、支持開口4の内側端面を完全な回転ドラム5の倣い形状にすると、回転ドラム5を鉛直方向に下降させたとき、下側程、炉体2と回転ドラム5との間の回転ドラム5の径方向の隙間、つまり、回転ドラム5を回転させるためのクリアランスが小さくなる。そこで、カテナリ型炉1では、上述のように支持開口4の端面の下側をテーパ状に拡げることで、回転ドラム5の移動距離が小さくても、炉体2の下側においても十分なクリアランスを得られるようにしている。
【0040】
また、回転ドラム5が回転する際には、回転ドラム5と補助ローラ9との間にも、十分な隙間が必要である。カテナリ型炉1は、支持ローラ7の中心軸と補助ローラ9の中心軸との間の角度位置を真上にして回転ドラム5を停止するので、補助ローラ9の移動方向が、回転ドラム5の径方向に近い角度になる。これにより、補助ローラ9が回転ドラム5の外周円(回転領域)から離脱するのに必要な回転ドラム5との相対的な移動距離が短くて済む。
【0041】
さらに、図6に、カテナリ型炉1の支持開口4の側端部、つまり、炉体2の側面を示し、支持開口4の封止に係る付帯的な構造を説明する。支持開口4は、炉体2の側壁においては、回転ドラム5に倣う概略半円形の開口となっており、回転ドラム5に当接する部分全体に弾性部材11が延伸して貼着されている。また、炉体2の側壁には、補助ローラ9の上昇時に図7に示すように補助ローラ9の軸を受け入れるために、回転ドラム5の倣い形状から上方に延伸する軸貫通溝13が形成されている。
【0042】
そして、炉体2の外側には、軸貫通溝13を囲むように、冷却水が循環される水冷ジャケット14が設けられている。さらに、水冷ジャケット14の外側には、水冷ジャケット14に面し、補助ローラ9と共に昇降する、断熱性材料からなる封止部材15が設けられている。封止部材15は、補助ローラ9と共に下降して軸貫通溝13を封止する。また、封止部材15には、支持ローラ7の回転軸を受け入れる溝16が形成されている。
【0043】
このように、カテナリ型炉1では、軸貫通溝13を封止部材15で封止しているので、補助ローラ9の軸の周囲から炉内の空気が逃げない。また、封止部材15を冷却するために水冷ジャケット14を設けたことで、通常の耐熱温度を有する材料によって封止部材15を形成できる。尚、カテナリ型炉1においては、図示しないが、回転ドラム5、支持ローラ7および補助ローラ9も、冷却水を循環させて冷却できるような公知の冷却可能な構造にすることが望ましい。
【0044】
続いて、図8、9に、本発明の第2実施形態のカテナリ型炉1aを示す。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態では、回転ドラム5aは、概略正六角柱状に形成されている。この例が示すように、本発明における回転ドラム5aは、必ずしも円柱状でなくてもよい。
【0045】
このカテナリ型炉1aの支持開口4の内側端面は、回転ドラム5aの形状に倣って、下側が拡がったテーパ状の平面である。本実施形態では、回転ドラム5aは、支持ローラ7を頂点にして停止した状態で、収容溝10に補助ローラ9を受け入れられるように設計されている。
【0046】
カテナリ型炉1aでは、補助ローラ9は昇降不能であり、回転ドラム5aが、図9に示すように、補助ローラ9が回転の邪魔にならない位置まで下降する。支持ローラ7は、回転ドラム5aの下降に伴って下降することにより、補助ローラ9にストリップ材3を受け渡す。尚、このカテナリ型炉1aの支持ローラ7は、回転ドラム5aの外周円よりも突出しているため、回転ドラム5aの回転に際しては、支持ローラ7の回動を考慮したクリアランスを設ける必要がある
【0047】
また、本発明における収容溝は、その形状がいわゆる溝型である必要はなく、回転ドラムの外周を部分的に掘り下げた形状であればいかなる形状であってもよい。例えば、図10に示す回転ドラム5bでは、回転ドラム5bを平面的に削り取って形成されたスペースが、支持ローラ7を受け入れる支持溝と一体化された収容溝17であると理解される。
【0048】
また、本発明における回転ドラムは、概略形状を円柱状または正多角柱状にすることで、回転時するためのスペースを確保するのに必要な下降距離を短くできるが、炉体の支持開口を封止できる形状であればいかなる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,1a…カテナリ型炉
2…炉体
3…ストリップ材
4…支持開口
5,5a,5b…回転ドラム
6…支持部材
7…支持ローラ
8…支持溝
9…補助ローラ
10…収容溝
11…弾性部材
12…流体圧シリンダ
13…軸貫通溝
14…水冷ジャケット
15…封止部材
17…収容溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ材を支持して回転可能な複数の支持ローラを周上長手方向に設けた回転ドラムと、前記回転ドラムの回転の際に前記支持ローラに替わって前記ストリップ材を支持する回転可能な補助ローラとを有し、前記回転ドラムによって炉体を封止するカテナリ型炉において、
前記回転ドラムに前記補助ローラを収容する収容溝を設けたことを特徴とするカテナリ型炉。
【請求項2】
前記回転ドラムは、前記支持ローラの回転軸と前記収容溝に収容したときの前記補助ローラの中心の回転軸との間の角度位置を真上にして停止することを特徴とする請求項1に記載のカテナリ型炉。
【請求項3】
前記補助ローラが昇降可能であり、
前記炉体の側壁に設けた前記支持ローラの軸を受け入れる軸貫通溝を封止可能な可動の封止部材をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のカテナリ型炉。
【請求項4】
前記支持ローラは、前記回転ドラムの外周円の内側に配設され、前記回転ドラムは、前記支持ローラの近傍が前記外周円の内側に後退した形状をしていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカテナリ型炉。
【請求項5】
前記回転ドラムは、昇降可能であって、上昇して前記炉体に圧接され、下降して前記炉体との間に回転のためのクリアランスを確保することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカテナリ型炉。
【請求項6】
前記炉体の前記回転ドラムが圧接される部分の下側をテーパ状に拡げたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカテナリ型炉。
【請求項7】
ストリップ材を支持して回転可能な複数の支持ローラを周上長手方向に設けた回転ドラムと、前記回転ドラムの回転の際に前記ストリップ材を支持する補助ローラとを有し、前記回転ドラムによって炉体を封止するカテナリ型炉において、
前記回転ドラムは、昇降可能であって、上昇して前記炉体に圧接され、下降して前記炉体との間に回転のためのクリアランスを確保することを特徴とするカテナリ型炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−127200(P2011−127200A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288164(P2009−288164)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】