説明

カムハウジング

【課題】長孔のメイン油路を廃止し、型構造を簡素化して金型コストを低減させる。
【解決手段】本発明のカムハウジング3は、両カムシャフト2が貫通してこれらのカムシャフト2を摺動可能に支持する支持壁3Aがカムシャフト2の軸方向に並んで複数設けられ、支持壁3Aにおけるカムシャフト2の摺動支持面32にオイルが順次供給されるメインハウジング30,31と、支持壁3Aにおける両カムシャフト2の間に配設されラッシュアジャスタ18が装着される装着凹部40が設けられたサブハウジング4とを備え、ハウジング本体30には、摺動支持面32からオーバーフローして流出したオイルを回収してサブハウジング4へ送り込むメイン供給路33,34,35が設けられており、サブハウジング4には、同供給路33,34,35から送り込まれたオイルを蓄えつつ装着凹部40へ供給するオイル貯留部42が設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラッシュアジャスタにオイルを供給するメイン油路をカムハウジングに設けたものとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。メイン油路は、カムハウジングに組み付けられるカムシャフトと並んで配置され、カムシャフトの軸方向に延びる長孔として成形されている。このような長孔を鋳造するに際しては、長孔を鋳抜きによって型抜きすべく、鋳抜きピンを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−75482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋳抜きピンが長くなると、型構造が複雑化するばかりか、金型コストが増加してしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、長孔のメイン油路を廃止し、型構造を簡素化して金型コストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一対のカムシャフトが回動可能に並設されたカムハウジングであって、両カムシャフトが貫通してこれらのカムシャフトを摺動可能に支持する支持壁がカムシャフトの軸方向に並んで複数設けられ、支持壁におけるカムシャフトの摺動支持面にオイルが順次供給されるメインハウジングと、支持壁における両カムシャフトの間に配設されラッシュアジャスタが装着される装着凹部が設けられたサブハウジングとを備え、メインハウジングには、摺動支持面から流出したオイルを回収してサブハウジングへ送り込むメイン供給路が設けられており、サブハウジングには、メイン供給路から送り込まれたオイルを蓄えつつ装着凹部内へ供給するオイル貯留部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、摺動支持面から流出したオイルを回収して、回収されたオイルを、メイン供給路とオイル貯留部を介して装着凹部内に供給することができる。このように、長孔のメイン油路を廃止することができ、型構造を簡素化して金型コストを低減させることができる。
【0008】
また、オイル貯留部にオイルを蓄えておくことができるので、エンジンを停止させてオイルポンプによるオイルの供給が停止した状態でも装着凹部内にオイルを供給することができる。したがって、ラッシュアジャスタ内でオイルの液面が低下することを防止できる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
メインハウジングは、カムシャフトを支持するハウジング本体と、ハウジング本体とともにカムシャフトを挟み込むカムキャップとを備えて構成され、ハウジング本体の摺動支持面には、第1供給路が周方向に延びて凹設され、ハウジング本体におけるカムキャップとの合わせ面には、第1供給路に連なる第2供給路が凹設され、ハウジング本体側の支持壁の外面には、第2供給路に連なる第3供給路が凹設され、これら第1、第2、および第3供給路によってメイン供給路が構成されている構成としてもよい。
このような構成によると、鋳抜きピンを用いることなく第1、第2、および第3供給路を設けることができ、型構造を簡素化することができる。
【0010】
サブハウジングの外面には、第3供給路に連なるサブ供給路が凹設されており、このサブ供給路と装着凹部との間にオイル貯留部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、第3供給路からサブ供給路を介してオイル貯留部にオイルを供給することができる。
【0011】
オイル貯留部は、サブハウジングに一つ設けられ、かつ、両カムシャフトに対応する両サブ供給路に共用とされている構成としてもよい。
このような構成によると、両サブ供給路に共用のオイル貯留部を設けることができるため、サブハウジングの型構造を簡素化することができる。
【0012】
オイル貯留部の上端開口には、オイルの流出を防ぐキャップが装着されている構成としてもよい。
このような構成によると、エンジンおよび車両の振動やスラントによるオイルこぼれをキャップによって防ぐことができる。
【0013】
オイル貯留部の上端における開口縁部には、オイルの流出を防ぐ傾斜面が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、オイルが傾斜面に飛散した場合でも、このオイルをオイル貯留部に戻すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長孔のメイン油路を廃止することができ、型構造を簡素化して金型コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1におけるカムハウジングの斜視図
【図2】カムハウジングの分解斜視図
【図3】ハウジング本体の平面図
【図4】カムハウジングの内部構造を示す断面図
【図5】図1における支持壁を拡大して示す拡大斜視図
【図6】装着凹部にラッシュアジャスタが装着された状態を示す断面図
【図7】実施形態2におけるキャップの装着状態を示す断面図
【図8】実施形態3における傾斜面を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態では、自動車用のDOHC(ダブルオーバーヘッドカム)タイプエンジンを構成するカムハウジング3を例示している。このカムハウジング3は、シリンダヘッド1とは別体で設けられている。また、カムハウジング3は、一対のカムシャフト2を回動可能に支持した状態でシリンダヘッド1にボルト締めされている。
【0017】
シリンダヘッド1は、複数のシリンダが並んで配されているシリンダブロック(図示せず)の上面においてヘッドガスケット(図示せず)を介してボルト締めにより固定されている。このシリンダヘッド1は、後述する両バルブ10,11を移動可能に支持するバルブ収容部1Aと、バルブ収容部1Aの外周壁から連続して立ち上がる外壁1Bとから構成されている。
【0018】
カムハウジング3は、図2に示すように、両カムシャフト2を下方から支持するハウジング本体30、両カムシャフト2を上方から押さえる複数のカムキャップ31、カムキャップ31をハウジング本体30にボルト締結する複数の締結ボルトB、後述するサブハウジング4などを備えて構成されている。両カムシャフト2は、図1に示すように、対向状態で並設された図示4つの支持壁3Aを貫通するように配設されている。ハウジング本体30には、各支持壁3Aを連結させる一対の連結壁3Bが設けられている。両連結壁3Bは、それぞれ、支持壁3Aの幅方向両側に配されており、カムシャフト2の軸方向に長い板状とされている。また、連結壁3Bの断面形状は、上下方向に長い略方形とされている。
【0019】
バルブ収容部1Aの下面には、図示左側の吸気通路8と図示右側の排気通路9とが開口している。シリンダと吸気通路8を連通する吸気ポート12の開口縁部には、吸気ポート12を開閉可能な吸気バルブ10が設けられている。同じく、シリンダと排気通路9を連通する排気ポート13の開口縁部には、排気ポート13を開閉可能な排気バルブ11が設けられている。なお、両バルブ10,11の構成はいずれも同一であって、以下の説明において重複する場合は、吸気バルブ10を代表として説明するものとし、以下単にバルブ10という。
【0020】
バルブ10は、円板状の弁部材10Aと、丸棒状のバルブステム10Bとから構成されている。シリンダヘッド1の内部には、バルブステム10Bを貫通させる貫通孔19が設けられており、この貫通孔19には、筒状のバルブガイド7が組み込まれている。バルブガイド7は、貫通孔19の内周面とバルブステム10Bの外周面とに密着している。バルブステム10Bは、バルブガイド7に対して摺動可能に保持されている。これにより、吸気通路8の内部から貫通孔19を通って外部にオイルが漏れ出すことを規制している。
【0021】
バルブステム10Bの上端は、バルブガイド7を貫通してシリンダヘッド1の上方へ突出している。バルブステム10Bの上端やや下方には、円板状のばね押さえ14が固着されている。一方、シリンダヘッド1の上面において貫通孔19の開口縁部は、ばね受け部19Aとされており、ばね押さえ14とばね受け部19Aとの間には、バルブスプリング15が圧縮状態で組み込まれている。このバルブスプリング15のばね力によって、常にはバルブ10の弁部材10Aが吸気ポート12を閉止するように付勢されている。
【0022】
カムシャフト2は、図4における図示左側の吸気側カムシャフト2Aと、図示右側の排気側カムシャフト2Bとからなる。両カムシャフト2A,2Bは並列して一対配されている。なお、両カムシャフト2A,2Bの構成はいずれも同一であって、以下の説明において重複する場合は、吸気側カムシャフト2Aを代表として説明するものとし、以下単にカムシャフト2という。カムシャフト2は、軸方向に沿って複数のカム16を有している。各カム16は、各シリンダと対応する位置に配され、カムシャフト2の軸心から一方向に突出するカムロブ16Aを有している。
【0023】
バルブ10とカム16との間には、ロッカアーム17が配されている。このロッカアーム17の略中央部には、カム16の回転運動に伴って従動可能な従動部17Aが設けられている。また、ロッカアーム17の両端部には、後述するラッシュアジャスタ18に対する受け面17Bとバルブ側接点17Cとが設けられている。従動部17Aは、常時カム16と接触した状態とされており、カム16の回転運動に伴って回転可能とされている。
【0024】
バルブ10の閉弁時においてバルブ側接点17Cとバルブステム10Bの上端との間には、所定のバルブクリアランスが設定されているものの、ラッシュアジャスタ18がバルブクリアランスを自動的に調整することで、バルブ側接点17Cとバルブステム10Bの上端とが常時接触するようにされている。これにより、ロッカアーム17は、受け面17Bを支点としてバルブ側接点17Cが揺動変位可能とされ、従動部17Aによってカム16の回転運動を往復運動に変換し、バルブ側接点17Cを通じてバルブ10に対して開閉動作を行わせることが可能となっている。
【0025】
カムシャフト2は、中実シャフトとされている。カムハウジング3の内部には、オイルを供給する油路(図示せず)が形成されており、この油路は、摺動支持面32に連通している。この油路から摺動支持面32にオイルが順次供給されることでカムシャフト2の外周面およびこれに摺動する摺動支持面32に油膜が形成され、円滑な回転動作が実現されている。
【0026】
また、カムシャフト2の上方には、エンジンルーム内を循環するオイルのオイル通路(図示せず)の一部が配索されている。このオイル通路のうち各カム16と対応する位置には、開口が設けられており、この開口から各カム16に向けてオイルが適宜供給されている。したがって、カム16の外周面に油膜が形成されて、カム16とロッカアーム17との焼き付き防止やこれらの冷却などが行われるようになっている。
【0027】
ハウジング本体30における両カムシャフト2の間には、サブハウジング4が配設されている。このサブハウジング4は、略方形のブロック状とされており、鋳造などの成形手段によってハウジング本体30と一体に設けられている。サブハウジング4の上面には、ラッシュアジャスタ18が装着される装着凹部40が設けられている。サブハウジング4には、両カムシャフト2の並び方向に並んだ一対の装着凹部40が設けられている。1つのサブハウジング4における装着凹部40の数は、カムシャフト2の本数と一致している。装着凹部40は、有底の円孔形状をなしている。
【0028】
ラッシュアジャスタ18は、図6に示すように、有底の筒状をなすボディ25と、ボディ25の内部を上下方向に移動可能でかつ中空構造をなすプランジャ26とを備えて構成されている。ボディ25の外径は、装着凹部40の内径とほぼ同じかこれよりもやや小さめに設定されている。ボディ25の外周面と装着凹部40の内周面との間にはオイルが充填されているため、ボディ25は、装着凹部40の内部で回動可能である。
【0029】
ボディ25の外周面には、全周に亘って縮径された第1縮径部25Aが周設されている。第1縮径部25Aの外周面と内周面との間には、ボディ25の内外を連通させる第1連通路25Bが貫通して設けられている。また、ボディ25の下端部における周縁部は弧状をなしており、この弧状をなす周縁部の内側部分は、装着凹部40の底面と摺動可能に面接触している。
【0030】
プランジャ26内には、低圧室27が設けられており、低圧室27を構成する天井壁23には、ロッカアーム17の受け面17Bにオイルを供給する供給口23Aが貫通して設けられている。一方、ボディ25の内部におけるプランジャ26の下方には、高圧室28が設けられている。低圧室27を構成する底壁24には、弁口29が貫通して設けられており、高圧室28は、弁口29を介して低圧室27と連通している。高圧室28には、大小2種類のスプリング21,22と球形のチェックボール20とが配されている。チェックボール20は、両スプリング21,22によって弁口29を閉止する方向に付勢され、弁口29の高圧室28側の開口縁部に密着している。これにより、低圧室27と高圧室28が区画されている。
【0031】
プランジャ26の外周面において第1連通路25Bと対応する高さ位置には、全周に亘って縮径された第2縮径部26Aが周設されている。第2縮径部26Aの外周面と内周面との間には、プランジャ26の内外を連通させる第2連通路26Bが貫通して設けられている。したがって、装着凹部40に供給されたオイルは、第1縮径部25A、第1連通路25B、第2縮径部26A、および第2連通路26Bを経由して低圧室27に送り込まれる。さらに、低圧室27に送り込まれたオイルは、弁口29を通って高圧室28に送り込まれる。すなわち、プランジャ26が上昇するときには、高圧室28の内圧が低圧室27の内圧よりも低くなって高圧室28にオイルが流入するものの、プランジャ26が下降するときには、弁口29がチェックボール20によって閉止されることになり、プランジャ26の外周面とボディ25の内周面との間を通って高圧室28のオイルが第2縮径部26A内にリークするようになっている。
【0032】
さて、図5に示すように、支持壁3Aにおけるカムシャフト2との摺動支持面32には、第1供給路33が周方向に延びて凹設されている。また、第1供給路33におけるサブハウジング4側の端部には、第2供給路34が連設されている。この第2供給路34は、ハウジング本体30におけるカムキャップ31との合わせ面に凹設されており、第1供給路33の端部から両カムシャフト2の並び方向に延びた後、直角に曲げられてサブハウジング4側に向かう略L字状とされている。さらに、第2供給路34におけるサブハウジング4側の端部には、第3供給路35が連設されている。この第3供給路35は、ハウジング本体30におけるサブハウジング4側の側面に凹設されており、第2供給路34の端部から下方に延びる直線状とされている。
【0033】
カムシャフト2を摺動支持面32に支持させると、第1供給路33がカムシャフト2によって上方から覆われるため、ハウジング本体30の内部に形成された長孔として油路が構成される。同様に、ハウジング本体30の合わせ面にカムキャップ31を載置すると、第2供給路34がカムキャップ31によって上方から覆われるため、ハウジング本体30の内部に形成された長孔として油路が構成される。一方、第3供給路35は、サブハウジング4側に開設された溝状の油路として構成されている。
【0034】
ここで、カムシャフト2の外周面にはオイルが順次供給されているため、このオイルは、第1供給路33からオーバフローして第2供給路34に流出することになる。すなわち、第2供給路34は、第1供給路33から流出したオイルを回収するとともに、このオイルを第3供給路35に送り込むように作用する。そして、第2供給路34から流出したオイルは、第3供給路35を通ってサブハウジング4の装着凹部40へ送り込まれる。
【0035】
ところで、サブハウジング4の上面には、一対のサブ供給路41が凹設されている。このサブ供給路41の一端は、第3供給路35に連なる形態とされており、サブ供給路41の他端は、装着凹部40に連なる形態とされている。サブ供給路41は、上方に開設された溝状の油路として構成されている。また、サブハウジング4の上面には、両サブ供給路41の他端同士を連結するようにしてオイル貯留部42が凹設されている。
【0036】
オイル貯留部42は、図6に示すように、サブハウジング4の上下方向における中央付近に至る深さをもって形成されている。ラッシュアジャスタ18の第1縮径部25Aは、オイル貯留部42に臨んで配置されている。オイル貯留部42は、一つのサブハウジング4に一つだけ設けられ、両サブ供給路41に共用とされている。オイル貯留部42は、第3供給路35から送り込まれたオイルを蓄えつつ装着凹部40へ供給し、このオイルが第1縮径部25A、第1連通路25B、第2縮径部26A、および第2連通路26Bを通って低圧室27に送り込まれることになる。
【0037】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、ラッシュアジャスタ18を装着凹部40内に装着する場合について説明する。このとき、装着凹部40内に残留する空気は、オイル貯留部42を通って外部に逃げることになるため、ラッシュアジャスタ18を装着凹部40の底面まで確実に挿入することができる。
【0038】
次に、オイルの流出経路について説明する。ハウジング本体30の摺動支持面32には、カムシャフト2内から順次供給されるオイルによって常には油膜が形成されており、第1供給路33内にもオイルが充填された状態となる。第1供給路33からオーバーフローして流出したオイルは、第2供給路34を同オイルで充填しつつ第3供給路35へと送られる。第3供給路35を通るオイルは、サブ供給路41に送られ、オイル貯留部42に貯留される。そして、オイル貯留部42から装着凹部40内にオイルが供給されることで、ラッシュアジャスタ18の内部にオイルが充填された状態となる。
【0039】
以上のように本実施形態では、オイル貯留部42にオイルを蓄えつつ装着凹部40内へオイルを供給するようにしたため、長期間エンジンを停止した場合であっても低圧室27のオイルの液面が低下することはなく、エンジン始動時に高圧室28にエアが吸い込まれて異音が発生することを防止できる。また、装着凹部40内にオイルを供給する手段として、長孔のメイン油路を廃止することができるため、長孔のメイン油路を成形する鋳抜きピンを廃止して型構造を簡素化するとともに金型コストを低減させることができる。
【0040】
また、ハウジング本体30とカムキャップ31の合わせ面に第1供給路33と第2供給路34を設けたため、鋳抜きピンを用いることなく、第1供給路33と第2供給路34を形成することができる。また、サブ供給路41を介してオイル貯留部42にオイルを供給するようにしたから、第3供給路35からオイル貯留部42にオイルが直接供給されることでオイル貯留部42におけるオイルの液面が揺れるなどしてオイル貯留部42からオイルが飛散することを防止しやすい。また、両サブ供給路41に共用のオイル貯留部42を設けたから、型構造を簡素化することができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態は、オイル貯留部42の上端開口に、オイルの流出を防ぐキャップ50を装着したものであって、その他の構成については実施形態1と同じである。また、実施形態1と同じ構成については、実施形態1と同一の符号を用いるものとする。キャップ50は、図示はしないものの、例えばボルト締結することによってサブハウジング4の上面に固定してもよい。このようなキャップ50を設置すると、車両の振動やスラントなどによるオイルこぼれを防ぐことができる。
【0042】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態は、サブ供給路41の代わりに、オイル貯留部42の上端における開口縁部に、オイルの流出を防ぐ傾斜面43を設けたものであって、その他の構成については実施形態1と同じである。また、実施形態1と同じ構成については、実施形態1と同一の符号を用いるものとする。傾斜面43は、ハウジング本体30におけるサブハウジング4側の面からサブハウジング4の上面にかけて斜め下方に延びる形態とされている。このような傾斜面43を設けると、車両の振動などによってオイルが傾斜面43に飛散した場合でも、このオイルをオイル貯留部42に戻すことができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではサブハウジング4をハウジング本体30と一体に設けているものの、本発明によると、サブハウジングをハウジング本体30とは別体に設けておき、このサブハウジングをハウジング本体30に対してボルト締結してもよい。
【0044】
(2)上記実施形態ではオイル貯留部42が上方に開口する形態で設けられているものの、本発明によると、ハウジング本体30とは別体でサブハウジングを形成するとともに、このサブハウジングの上面から側面にかけて開口する溝を形成し、この溝のうち側方に開口する部分をハウジング本体30によって塞ぐようにサブハウジングをハウジング本体30に組み付けることで上方のみに開口するオイル貯留部を設けてもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では両サブ供給路41に共用のオイル貯留部42を設けているものの、本発明によると、両サブ供給路41にそれぞれオイル貯留部を設けてもよい。
【0046】
(4)実施形態1および2ではサブ供給路41を設けているものの、本発明によると、サブ供給路41を設けなくてもよく、第3供給路35からオイル貯留部に直接オイルが流入するようにしてもよい。
【0047】
(5)上記実施形態ではカムシャフト2が中実シャフトとされているものの、本発明によると、中空シャフトとしてもよい。その場合には、中空シャフトの内部に油路を形成し、この油路から摺動支持面32にオイルを順次供給してもよい。
【0048】
(6)上記実施形態では支持壁3Aの片側のみにサブハウジング4を設けたものを例示しているものの、支持壁3Aの両側にそれぞれサブハウジング4を設けたもの(いわゆるDOHC4バルブ)も本発明に含まれる。この場合において、隣り合う支持壁3A間に配置された一対のサブハウジング4を互いに連結させることで一体となったサブハウジングを形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2…カムシャフト
3…カムハウジング
3A…支持壁
4…サブハウジング
18…ラッシュアジャスタ
30…ハウジング本体(メインハウジング)
31…カムキャップ(メインハウジング)
32…摺動支持面
33…第1供給路(メイン供給路)
34…第2供給路(メイン供給路)
35…第3供給路(メイン供給路)
40…装着凹部
41…サブ供給路
50…キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のカムシャフトが回動可能に並設されたカムハウジングであって、
両カムシャフトが貫通してこれらのカムシャフトを摺動可能に支持する支持壁が前記カムシャフトの軸方向に並んで複数設けられ、前記支持壁における前記カムシャフトの摺動支持面にオイルが順次供給されるメインハウジングと、
前記支持壁における前記両カムシャフトの間に配設されラッシュアジャスタが装着される装着凹部が設けられたサブハウジングとを備え、
前記メインハウジングには、前記摺動支持面から流出した前記オイルを回収して前記サブハウジングへ送り込むメイン供給路が設けられており、
前記サブハウジングには、前記メイン供給路から送り込まれた前記オイルを蓄えつつ前記装着凹部内へ供給するオイル貯留部が設けられているカムハウジング。
【請求項2】
前記メインハウジングは、前記カムシャフトを支持するハウジング本体と、前記ハウジング本体とともに前記カムシャフトを挟み込むカムキャップとを備えて構成され、
前記ハウジング本体の前記摺動支持面には、第1供給路が周方向に延びて凹設され、前記ハウジング本体における前記カムキャップとの合わせ面には、前記第1供給路に連なる第2供給路が凹設され、前記ハウジング本体側の前記支持壁の外面には、前記第2供給路に連なる第3供給路が凹設され、これら第1、第2、および第3供給路によって前記メイン供給路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカムハウジング。
【請求項3】
前記サブハウジングの外面には、前記第3供給路に連なるサブ供給路が凹設されており、このサブ供給路と前記装着凹部との間に前記オイル貯留部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のカムハウジング。
【請求項4】
前記オイル貯留部は、前記サブハウジングに一つ設けられ、前記両カムシャフトに対応する両サブ供給路に共用とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のカムハウジング。
【請求項5】
前記オイル貯留部の上端開口には、オイルの流出を防ぐキャップが装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のカムハウジング。
【請求項6】
前記オイル貯留部の上端における開口縁部には、オイルの流出を防ぐ傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のカムハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167647(P2012−167647A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31087(P2011−31087)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000185488)株式会社オティックス (305)
【Fターム(参考)】