説明

カメラモジュールおよびそれを備えた電子機器

【課題】基板と撮像素子との接着位置を正確に定めることを必要とせずに、撮像素子と基板上の端子との接触によるショートやリークを防ぐことができるとともに、撮像素子のサイズを変えることなくカメラモジュールの小型化を実現することができるカメラモジュールおよびそれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係るカメラモジュール1は、光を集光するレンズ10と、電極部を有し、当該レンズ10によって集光された光を入射させる撮像素子5と、端子6が形成された基板2と、当該基板2の端子形成面に上記撮像素子5を接着するためのダイアタッチ材13であって、上記端子6の厚さよりも大きいサイズを有するフィラー4を含有するダイアタッチ材13と、上記電極部と上記端子6とを電気的に接続する金属線7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーを含有するダイアタッチ材によって基板と撮像素子とを接着するカメラモジュール、およびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カメラモジュールを搭載した各種電子機器が提供されている。一般的なカメラモジュールの構成としては、基板と、撮像素子と、レンズとを備える構成が知られている(特許文献1および2)。
【0003】
図8は、この一般的なカメラモジュール101の構成を示す図である。同図に示すように、カメラモジュール101は、基板102と、撮像素子105と、レンズ110とを有する。基板102には、接着剤113により、レンズホルダー112が固定されている。レンズホルダー112には、レンズ110と、レンズバレル111と、赤外線カットフィルター109と、ガラスリッド108とが組み込まれている。
【0004】
同図に示すように、基板102と撮像素子105とはダイアタッチ材103により接着されている。また、撮像素子105の電極部(図示しない)と端子106とは金属線107により接続されている。
【0005】
また、このカメラモジュール101においては、撮像素子105と端子106とが接触することがないように、端子106から離れた位置において、端子106を覆うことなく、撮像素子105が配置されている。
【0006】
ところで、近年、電子機器を携帯する際の利便性等から、カメラモジュールを搭載した電子機器に関して、小型化の要請が強くなっている。それに伴いカメラモジュールの小型化の要請も強くなっている。撮像素子のサイズを変更することは容易でないため、当該小型化したカメラモジュールの内部に従来のサイズと同様のサイズの撮像素子を収容する必要がある。
【0007】
このような場合に、従来の構成と同様に、小型化したカメラモジュールに撮像素子を収容して、端子と撮像素子とが接触することを防ぐためには、基板と撮像素子との接着位置を正確に定める必要がある。つまり、カメラモジュールの内部の空間に余裕がないため、基板と撮像素子との接着位置が少しずれただけであっても、撮像素子と端子とが接触してしまう可能性があるため、基板と撮像素子との接着位置を正確に定める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−040428号公報(2011年2月24日公開)
【特許文献2】特開2010−161140号公報(2010年7月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基板への撮像素子の接着は、常に正確な位置に接着できるとは限らない。
【0010】
具体的に説明すると次のとおりである。図9および図10は、従来のカメラモジュール101の構成において、基板102と撮像素子105との接着位置がずれた様子を示す図である。図9は接着位置が図を正面からみて右側にずれた様子を示す図であり、図10は接着位置が図を正面からみて左側にずれた様子を示す図である。図9および図10に示すように、接着位置を正確に定めることが出来ない場合、撮像素子105と端子106とが接触してしまう。図9および図10の接触箇所200は、撮像素子105と端子106とが接触している箇所を示している。
【0011】
撮像素子105と端子106とが接触してしまうと、ショートやリークが生じる場合がある。ショートが生じると、回路が誤作動したり、回路に設計値を超える電流が流れたりするため、撮像素子105が異常に発熱して破損する虞がある。撮像素子105が破損すると、カメラモジュール101をカメラモジュールとして機能させることができなくなる。
【0012】
また、撮像素子105と端子106とが接触すると、本来電流が流れるはずのない撮像素子105と端子106との接触箇所200において、リーク電流が流れてしまう。そうすると、回路の誤作動、回路にて消費される電力の増加、回路における発熱量の増加、および、発熱に伴う撮像素子105の劣化等を引き起こす。したがって、リークが生ずる場合にも、撮像素子105が破損して、カメラモジュール101をカメラモジュールとして機能させることができなくなる。
【0013】
また撮像素子105と端子106とが接触することにより、撮像素子105が不都合に傾斜してしまう虞がある。本来ならば撮像素子105は基板102に沿って並行に設置されるべきである。しかし、上述のような現象が起きて傾斜してしまうことにより、レンズによって集光された光が所定の角度で撮像素子に入射することができない。すなわち、良好は撮像機能を果たすことができない。
【0014】
本発明は上記の課題を解決するために為されたものである。そして、その目的は、基板と撮像素子との接着位置を正確に定めることを必要とせずに、撮像素子と端子との接触によるショートやリークを防ぐことができるとともに、撮像素子のサイズを変えることなくカメラモジュールの小型化を実現することができるカメラモジュールおよびそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るカメラモジュールは、
光を集光するレンズと、
電極部を有し、上記レンズによって集光された光を入射させる撮像素子と、
端子が形成された基板と、
上記基板の端子形成面に上記撮像素子を接着するためのダイアタッチ材であって、上記端子の厚さよりも大きいサイズを有するフィラーを含有するダイアタッチ材と、
上記電極部と上記端子とを電気的に接続する金属線と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、端子の厚さよりも大きいサイズを有するフィラーがダイアタッチ材に含有されていることによって、撮像素子を、基板の端子形成面を高さの基準面として端子の高さ(厚さ)よりも高い位置に配置することができる。そのため、たとえ上述のように撮像素子が位置ズレを起こしても、撮像素子と基板上の端子とが接触することを防ぐことができるので、撮像素子と端子とが接触することによるショートやリークを防ぐことができる。
【0017】
すなわち、本発明の構成によれば、基板と撮像素子との接着位置がずれて、端子の表面を撮像素子が覆うことがあったとしても、撮像素子と端子とが接触することはない。よって、上述のようなショートやリークの問題を回避することができる。
【0018】
また従来構成の場合は、撮像素子と端子とが接触することにより、撮像素子が不都合に傾斜してしまい、レンズによって集光された光が所定の角度で撮像素子に入射することができず、良好は撮像機能を果たすことができない虞があった。これに対して、本発明の構成によれば、撮像素子と端子とが接触して撮像素子が不都合に傾斜することがないため、良好は撮像機能を果たすことができる。
【0019】
さらに、本発明に係るカメラモジュールにおいては、従来のカメラモジュールに比べて、カメラモジュールの内部に収容することができる撮像素子のサイズの幅を広げることもできる。つまり、カメラモジュールを備える電子機器のサイズがより小さくなった場合であっても、端子の厚さよりも大きいサイズを有するフィラーを含有したダイアタッチ材を用いることにより、撮像素子が端子の表面を覆う範囲があったとしても、撮像素子と端子とが接触することはなく、従来の撮像素子よりもサイズの大きい撮像素子も収容することが可能である。
【0020】
以上のことから、本発明の構成によれば、撮像素子のサイズを小型化することなく、カメラモジュールの小型化の要望に対して高い信頼性をもって応じることができる。
【0021】
また、本発明に係るカメラモジュールは、上記の構成に加えて、
上記ダイアタッチ材は、上記撮像素子における上記基板との対向面の面積の20〜99パーセントを覆っている、ことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、上記撮像素子における上記基板との対向面の面積の20〜99パーセントを覆っていることによって、上記撮像素子の傾きを20マイクロメートル以下に抑えることができる。
【0023】
より具体的には、撮像素子の傾き、すなわち、基板の一表面と、撮像素子における光入射面(撮像素子における基板の一表面との対向する面)とのなす傾斜角度が、次の条件を満たす角度であればよい。すなわち、まず、撮像素子が傾斜している(上記傾斜角度≠0°)と仮定すると、撮像素子における光入射面内には、「基板の一表面から最も離れた位置」と、「基板の一表面から最も離れた位置」とが存在することになる。そこで、基板の一表面から最も離れた位置を含む、基板の一表面と平行な面を仮定すると、当該平行な面と、上記「基板の一表面に最も近い位置」との間が離間している状態が実現される。この離間距離を20マイクロメートル以下に抑えることにより、撮像素子が傾斜して端子と接触することを防ぐことができる。
【0024】
また、上記の構成に代えて、本発明に係るカメラモジュールは、
上記ダイアタッチ材は、上記撮像素子における上記基板との対向面の全てを覆っていてもよい。
【0025】
上記構成によれば、撮像素子における上記基板との対向面の全てがダイアタッチ材により覆われているので、撮像素子の傾斜を効果的に抑え、撮像素子の端部と基板に形成した端子とを接触させないようにすることができる。
【0026】
さらに、本発明に係るカメラモジュールは、上記の、ダイアタッチ材が、上記撮像素子における上記基板との対向面の面積の20〜99パーセントを覆っている構成に加えて、
上記ダイアタッチ材は、上記基板と上記撮像素子との間において、複数箇所に分散して設けられていることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、撮像素子における基板との対向面の面積の20〜99パーセントをダイアタッチ材がカバーできれば、ダイアタッチ材を塗布する箇所は、複数箇所に分散されていてもよい。
【0028】
ダイアタッチ材を複数箇所に分散して形成することにより、ダイアタッチ材を熱硬化する際にダイアタッチ材の体積が収縮したとしても、その収縮の影響を抑えることができる。また、ダイアタッチ材を複数箇所に分散して形成することにより、基板の一表面と、撮像素子における光入射面とのなす傾斜角度を最小限にとどめることができる。すなわち、撮像素子の傾斜を効果的に抑え、撮像素子の端部と基板に形成した端子とを接触させないようにすることができる。
【0029】
このように構成しても、撮像素子の上記傾きを20マイクロメートル以下とすることができ、ダイアタッチ材の塗布箇所を限定しなくとも、撮像素子と端子との接触によるショート及びリークを防ぐことができる。
【0030】
また、本発明に係るカメラモジュールは、上記の構成に加えて、
上記フィラーは、ビーズであり、
上記ビーズの平均粒径は、±30パーセント以下であることが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、撮像素子を平行な状態に保つことができる。したがって、ビーズの粒径の偏差が大きい(ばらつきがある)場合に生じる可能性がある撮像素子と端子との接触を防ぐことができる。すなわち、撮像素子の端部が傾いて、当該端部が端子に接触することによるショートやリークを防止することができる。
【0032】
さらに、本発明に係るカメラモジュールは、上記の構成に加えて、
上記ダイアタッチ材に含有される上記フィラーの密度は、5〜95パーセントであることが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、ダイアタッチ材に含有されるフィラーの密度が5〜95パーセントであるため、ダイアタッチ材においてフィラーが偏ることがない。したがって、ダイアタッチ材におけるフィラーが偏ることによって生じる撮像素子の傾きを防ぐことができる。よって、撮像素子の一方の端面が傾いて、撮像素子と端子とが接触することによるショートやリークを防ぐことができる。
【0034】
また、本発明に係るカメラモジュールは、上記の構成に加えて、
上記レンズと上記撮像素子との間に、当該レンズへ入射した光のうち赤外線を遮断して可視光を透過するフィルターを、さらに備えていることが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、可視光のみを撮像素子に入射させることができる。
【0036】
また、本発明に係る電子機器は、上記課題を解決するために、
上述した構成のカメラモジュールを備えていることを特徴としている。
【0037】
上記構成によれば、撮像素子と端子とが接触することはない。したがって、ショートやリークによって撮像素子が破損することはないので、高品質のカメラモジュールを備えた電子機器を実現することができる。また、従来のサイズのままの撮像素子を小型化したカメラモジュールに備えることができる。すなわち、撮像素子のサイズを変更ぜすに小型化したカメラモジュールを備えた電子機器を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の少なくとも一つの実施形態に係るカメラモジュールは、基板と撮像素子との接着位置を正確に定めることを必要とせずに、撮像素子と端子との接触を防ぐことによりショートやリークを防ぐことができるとともに、従来の撮像素子から撮像素子のサイズを変えることなくカメラモジュールの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態であるカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図2】撮像素子の傾きを説明するための本発明の一実施形態であるカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態であるカメラモジュールのダイアタッチ材に含有されるフィラーの密度(分布)を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例におけるダイアタッチ材の塗布箇所を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態であるカメラモジュールのダイアタッチ材に含有されるフィラーの種類を説明するための説明図である。
【図7】本発明の一実施形態である電子機器のブロック図である。
【図8】従来のカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図9】従来のカメラモジュールにおいて、基板と撮像素子との接着位置がずれた様子を示す断面図である。
【図10】従来のカメラモジュールにおいて、基板と撮像素子との接着位置がずれた様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係るカメラモジュールおよびそれを備えた電子機器の一実施形態について、詳細に説明する。
【0041】
(1)カメラモジュール
図1は、本実施形態におけるカメラモジュール1の構成を示すための図である。本実施形態におけるカメラモジュールは、カメラおよびカメラ付き携帯電話等のカメラ機能を有する各種電子機器のカメラ素子として用いることができる。そのため、カメラモジュール1は、図1に示すように、基板2と、撮像素子5と、ガラスリッド8と、赤外線カットフィルター9と、レンズ10と、レンズバレル11と、レンズホルダー12とを有している。
【0042】
(基板)
上記基板2は、その一表面に、図示しないパターニングされた配線と端子6とが形成された基板である。
【0043】
基板2の当該一表面(端子形成面)には、さらに撮像素子5が配置されており、撮像素子5はダイアタッチ材13により基板2の当該一表面に接着されている。
【0044】
基板2における端子6は、ダイアタッチ材13に隣り合うように設けられており、端子6と撮像素子5の電極部(図示しない)とは、金属線7を用いたワイヤボンディングによって電気的に接続されている。ワイヤボンディングを用いることにより、基板2における実装面積を低減することができる。金属線7の材質としては、電気抵抗の低さ、および加工の容易さ等の理由から、金やアルミニウムが用いられることが多いが、他の材質を用いることもできる。
【0045】
また、基板2の一表面には、レンズホルダー12が固定されている。
【0046】
(レンズホルダー)
上記レンズホルダー12は、筒状の部材である。レンズホルダー12は、基板2の一表面に配置されている。レンズホルダー12は、接着剤(図示せず)により、基板2の一表面に固定されている。この接着材は従来周知のものを用いることができる。
【0047】
レンズホルダー12は、基板2の一表面に固定されている側に、撮像素子5を収容する空間が設けられている。そのため、レンズホルダー12は、遮光部材としても機能する。
【0048】
またレンズホルダー12における基板2から離れた側には、レンズ10を保持したレンズバレル11を保持することができる。後述するように、レンズバレル11はレンズ10と撮像素子5との距離を可変するために光軸方向に移動することができるように構成されている。このような構成の一形態としては、レンズバレル11の外周面にネジ山が形成されており、レンズホルダー12における基板2から離れた側の内周面にも当該ネジ山と螺合するネジ山が形成されており、図示しない駆動部材を用いて螺合する幅を可変させることで、上記距離を可変する。
【0049】
また、レンズホルダー12は、基板2の一表面に固定されている側と、基板2から離れた側との間に、ガラスリッド8を固定している。
【0050】
なお、レンズホルダー12の固定位置は、基板2の一表面に限らず、基板2の端面に固定されていてもよい。
【0051】
(レンズバレル)
上記レンズバレル11は、レンズ10を保持するための部材である。したがって、レンズバレル11の内側にはレンズ10が保持されている。レンズバレル11自体は、上述のように、レンズホルダー12に可動式で固定されている。
【0052】
レンズバレル11は、その上面において外部からの入射光を取り入れるための開口部14を備えている。すなわち、レンズバレル11が、レンズ10の撮像素子5に向いた面とは反対の面に開口部14を備えていることにより、外部からの光は、レンズ10へ入射する。
【0053】
レンズバレル11も、レンズホルダー12と同様に、遮光部材としても機能する。
【0054】
(レンズ)
上記レンズ10は、レンズバレル11の開口部14から入射する光を集光して撮像素子5へと出射する。レンズ10は、その側面、および撮像素子5に向いた面とは反対の面における外周にてレンズバレル11と接している。
【0055】
なお、図1では、レンズ10が2つ配設されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1枚でもよく、3枚以上であってもよい。さらに、図1では、レンズの両面が凸面となっているが、両面または一方の面が凹面になっているものであってもよい。また片面が平面であるレンズであってもよい。要するに、レンズは周知のあらゆる形状のレンズを用いることができる。
【0056】
(ガラスリッド)
上記ガラスリッド8は、撮像素子5とレンズ10との間に在って、レンズホルダー12に固定されている。
【0057】
ガラスリッド8のレンズ10に向いた面には、赤外線を遮断する上記赤外線カットフィルター9が蒸着されている。そのため、ガラスリッド8は外部から入射した光のうち赤外線を遮断する機能を有する。
【0058】
赤外線カットフィルター9およびガラスリッド8は、レンズ10から出射された光のうち赤外線を遮断して、可視光を透過させる。したがって、撮像素子5には、可視光が到達する。
【0059】
(撮像素子)
上記撮像素子5は、カメラモジュール1(レンズバレル11)の開口部14から、レンズ10、赤外線カットフィルター9、ガラスリッド8の順で通過した光を受光する。そのため、撮像素子5は、上述したように、ダイアタッチ材13により基板2の一表面に固定されている。
【0060】
撮像素子5はレンズ10が形成する被写体像を電気信号に変換するものである。つまり、撮像素子5はレンズ10から入射された入射光を光電変換するセンサーデバイスである。撮像素子5には、複数の画素がマトリックス状に配置された受光面(図示せず)が形成されている。撮像素子5としては、例えば、CCD(Charge−coupled device)またはCMOS(Complementary metal−oxide semiconductor)センサーIC(Integrated circuits)を用いることができる。撮像素子5は、カメラモジュール1に収容できる大きさである。
【0061】
近年のカメラモジュールを備える電子機器の小型化に伴い、カメラモジュール自体の小型化も要求される。カメラモジュールのサイズを小型化すると、その内部の空間に余裕がなくなり、撮像素子と端子との接触によるショートやリークが生ずる。この解決方法として、撮像素子を小型化する方法もある。しかしながら、撮像素子を小型化すると、カメラモジュールの解像度が低下する。しかし、後述するように、本発明においては、従来のカメラモジュールに備えられていた撮像素子と同じサイズの撮像素子5を用いた場合においても、カメラモジュールの小型化の要請を満たすことができる。
【0062】
(ダイアタッチ材)
上記ダイアタッチ材13は、撮像素子5を基板2に接着させるために用いられる。そのため、ダイアタッチ材13は、基板2の一表面上の、撮像素子5を配置する位置に形成される。
【0063】
ダイアタッチ材13は、ペースト3にフィラー4を含有させてなる。
【0064】
上記ペースト3は、Agペーストや絶縁ペースト等の周知のものを用いることができる。また、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコン樹脂等のペーストを用いることもできる。
【0065】
上記フィラー4は、基板2の一表面に塗布した際のダイアタッチ材13の厚さを、端子6の厚さよりも厚くするために用いられる。すなわち、基板2の一表面を高さの基準面として端子6の高さ(厚さ)よりも高い位置に撮像素子5を配置(保持)して、端子6と撮像素子5との接触を防ぐために用いられる。そのため、ダイアタッチ材13に含有されるフィラー4は、そのサイズが端子6の厚さよりも大きいものを用いる。
【0066】
このように、本発明においては、端子6の厚さよりもサイズの大きいフィラー4が、ダイアタッチ材13に含有されている。そのため、ダイアタッチ材13を基板2に塗布した際のダイアタッチ材13の厚さは、端子6の厚さよりも厚くなる。したがって、図1に示すように、端子6のレンズ10に向いた面を、撮像素子5が覆う部分があっても、端子6と撮像素子5とは離間しているため、端子6と撮像素子5とが接触することはない。また、基板2と撮像素子5との接着位置がずれた場合であっても、端子6と撮像素子5とが接触することはない。
【0067】
したがって、本発明に係るカメラモジュール1においては、撮像素子5と端子6とが接触することによるショートやリークが生ずることはない。
【0068】
また従来構成の場合は、撮像素子と端子とが接触することにより、撮像素子が不都合に傾斜してしまい、レンズによって集光された光が所定の角度で撮像素子に入射することができず、良好は撮像機能を果たすことができない虞があった。すなわち、本来は(設計上は)、撮像素子は基板の一表面に並行に配設されているべきであるが、端子との接触により、撮像素子が基板の一表面に対して傾斜してしまう事態が生じ得る。これに対して、本発明によれば、撮像素子5と端子6とが接触して撮像素子5が不都合に傾斜することがないため、撮像素子は基板の一表面に並行に配設されるので、カメラモジュール1として良好は撮像機能を果たすことができる。
【0069】
フィラー4は、そのサイズが端子6の厚さよりも大きいものであれば、成分および形状等は特に限定されない。ここで図6は、本発明におけるダイアタッチ材13に含有されるフィラー4の形状(種類)を説明するための説明図である。同図(a)は球形のフィラーを示す図であり、同図(b)は線形のフィラーを示す図であり、同図(c)は面形のフィラーを示す図であり、同図(d)は両端が枝葉状に分かれている線形のフィラーを示す図であり、同図(e)は梁形のフィラーを示す図である。本発明においては、同図(a)に示す球形のフィラーに限られず、同図(b)〜(e)に示すような形状のフィラーも用いることができる。
【0070】
しかし、球形のフィラー(いわゆるビーズ)を用いれば、フィラー同士の接触によるフィラーの損傷を避けることができるとともに、フィラーが基板2もしくは撮像素子5を傷付けることを避けることができる。また、球形のフィラー(いわゆるビーズ)を用いれば、撮像素子5を容易に平行な状態に保つことができる。
【0071】
加えて、本実施形態では、撮像素子5における基板2との対向面の面積の少なくとも20パーセントを覆うようにダイアタッチ材13を形成している。
【0072】
撮像素子5の上記対向面の面積の少なくとも20パーセントをダイアタッチ材13が覆うようにしていることにより、基板2の一表面に撮像素子5を配置する際に、撮像素子5が傾いたとしても、撮像素子5の傾きを所定の角度以下に抑えることができる。
【0073】
図2は、この点を説明する図である。本実施形態では、撮像素子5の傾き、すなわち、基板2の一表面と、撮像素子5における光入射面(撮像素子5における基板2の一表面との対向する面)とのなす傾斜角度θが、次の条件を満たす角度であればよい。すなわち、まず、撮像素子5が傾斜している(上記傾斜角度θ≠0°)と仮定すると、撮像素子5における光入射面内には、「基板2の一表面から最も離れた位置」と、「基板2の一表面から最も離れた位置」とが存在することになる。そこで、基板2の一表面から最も離れた位置を含む、基板2の一表面と平行な面を仮定すると、当該平行な面と、上記「基板2の一表面に最も近い位置」との間が離間している状態が実現される。本実施形態では、この離間距離Tが、20マイクロメートル以下に抑えるように構成されている。離間距離Tが、20マイクロメートル以下となるようにすることにより、撮像素子5が傾斜して端子6と接触することを防ぐことができる。
【0074】
撮像素子5の上記対向面の面積の20パーセントよりも小さな割合でダイアタッチ材13が覆っていると、撮像素子5の傾きを所定の角度以下に抑えること、すなわち、上記離間距離Tを20マイクロメートル以下に抑えることができず、傾斜した撮像素子5と、端子6とが接触する虞があるため、好ましくない。したがって、撮像素子5における基板2との対向面の面積の少なくとも20パーセントを覆うようにダイアタッチ材13を形成することが好ましい。
【0075】
このように、本実施形態によれば、上述のようにダイアタッチ材13の形成面積を規定して撮像素子5の傾きを制限しているため、傾斜により撮像素子5が端子6と接触する事態を回避することができる。端子6と撮像素子5との接触を確実に避けて、信頼性の高いカメラモジュール1を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態では、フィラー4の粒径(サイズ)のばらつきを制限することで、撮像素子5を基板2の一表面に沿って平行に保つことを可能にしている。
【0077】
具体的には、本実施形態では、フィラー4の平均粒径の偏差を±30パーセント以下としている。これにより、撮像素子5をほぼ平行な状態に保ちつつ、基板2の一表面に配置することができる。
【0078】
換言すれば、フィラー4の平均粒径の偏差が±30パーセントを超えると、撮像素子5がダイアタッチ材13上で傾斜してしまうため、好ましくない。したがって、フィラー4の平均粒径の偏差を±30パーセント以下とすることが好ましい。
【0079】
さらに本実施形態では、ダイアタッチ材13に含有されているフィラー4の密度を、5〜95パーセントとしている。
【0080】
図3は、ダイアタッチ材13に含有されるフィラー4の分布(密度)を示す平面図である。同図(a)は、粒径がほぼ揃っているフィラー4がダイアタッチ材13の95パーセント含有されているものを示している。すなわち、フィラー4の密度が95パーセントであるダイアタッチ材13を示している。一方、同図(b)は平均粒径の偏差が±30パーセントであるフィラー4がダイアタッチ材13の約40パーセント含有されているものを示す平面図である。同図(b)に示すダイアタッチ材13であっても、同図(a)に示すダイアタッチ材13と同等の効果を得ることができる。また、同図(c)は、ダイアタッチ材13の中で、平均粒径の偏差が±30パーセントであるフィラー4が、偏在している状態を示す平面図である。同図(c)では、撮像素子の基板との対向面の四隅にフィラー4が存在している。同図(b)に示すダイアタッチ材13であっても、同図(a)および(b)に示すダイアタッチ材13と同等の効果を得ることができる。
【0081】
一方、フィラー4の密度が5パーセントを下回る、すなわち、ダイアタッチ材13に含有されるフィラー4の量が少ないと、ダイアタッチ材13においてフィラー4が偏り、基板2の一表面に撮像素子5を配置する際に撮像素子5が傾く虞があるため、好ましくない。そのため、フィラー4の密度が5パーセント以上であることが好ましい。
【0082】
また、フィラー4の密度が95パーセントを上回る、すなわち、ダイアタッチ材13に含有されるフィラー4の量が過剰に多いと、ダイアタッチ材13を形成する工程において所望の流動性を確保することができないため、好ましくない。
【0083】
ダイアタッチ材13の形成方法は、従来周知の方法を用いることができ、一例としては塗布法が挙げられる。
【0084】
(2)電子機器
上述した本実施形態におけるカメラモジュール1は、例えば、携帯電話等の、カメラ機能を有する各種電子機器に搭載することができる。
【0085】
図7は、本実施形態におけるカメラモジュール1を備えた電子機器20のブロック図である。同図に示すように、電子機器20は、撮像部21と、メモリ部22と、表示部23と、通信部24と、画像出力部25とを備える。
【0086】
上記撮像部21は、被写体を撮影する。そのため、撮像部21はカメラモジュール1を備えている。撮像部21には、必要に応じて、照明素子などが設けられていてもよい。
【0087】
上記メモリ部22は、撮像部21による撮影により得られた画像データを記録用に所定の信号処理をした後にデータ記録する。メモリ部22としては、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Accese Memory)等の記録メディアなどを用いることができる。
【0088】
上記表示部23は、撮像部21による撮影により得られた画像データを表示用に所定の信号処理をした後に表示装置などの表示画面上に表示する。
【0089】
通信部24は、撮像部21による撮影により得られた画像データを通信用に所定の信号処理をした後に通信処理する。通信部24としては、送受信装置などを用いることができる。画像出力部25は、撮像部21による撮影により得られた画像データを印刷して出力する。
【0090】
本実施形態における電子機器20は、このカメラモジュール1を備えていることにより、ショートやリークによって撮像素子5が破損することがなく、カメラ機能を良好に保つことができる。
【0091】
また、本発明に係る電子機器20は、カメラモジュール1を備えることにより、従来の構成に比べて小型化したカメラモジュールを備えることが可能であり、電子機器自体の小型化も実現することができる。
【0092】
(3)本実施形態における効果
以上のように、本実施形態においては、撮像素子と端子とが接触することによるショートやリークを防ぐことができる。すなわち、基板と撮像素子とを接着するダイアタッチ材に端子の厚さよりもサイズの大きいフィラーを含有することにより、基板の一表面を高さの基準面として端子の高さ(厚さ)よりも高い位置であり、かつ端子と接触しない位置に、撮像素子を配置することができる。したがって、撮像素子と基板とが接着することはない。
【0093】
また、基板と撮像素子との接着位置がずれた場合であっても、基板の一表面を高さの基準面として端子の高さ(厚さ)よりも高い位置であり、かつ端子と接触しない位置に、撮像素子が配置されているため、撮像素子と端子とが接触することはない。よって、基板と撮像素子との接着位置を正確に定めなくとも、撮像素子と端子とが接触することはなく、ショートやリークが生ずることを防ぐことができる。
【0094】
以上のように、本発明においては、基板と撮像素子との接着位置がずれたとしても、撮像素子と端子とが接触することはない。したがって、基板と撮像素子との接着位置を正確に定めなくとも、撮像素子と端子との接触を防ぐことができることにより、ショートやリークを防ぐことができる。
【0095】
また、本実施形態においては、従来のカメラモジュールに備えられていた撮像素子とサイズが同じ撮像素子を、従来のカメラモジュールより小型化したカメラモジュールに備えることができる。すなわち、撮像素子のサイズを変更せずに、カメラモジュールの小型化を実現することができる。
【0096】
〔変形例〕
上述の実施形態においては、撮像素子と基板との間の一箇所にダイアタッチ材が塗布されている。
【0097】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、次のような変形例であってもよい。図4は、本変形例を表すカメラモジュールの変形構成を示した断面図であり、図1に相当する図である。また、図5は、本変形例におけるダイアタッチ材の塗布箇所を示す平面図である。
【0098】
図4に示すように、本変形例においては、撮像素子5と基板2との間における2箇所にダイアタッチ材13が塗布されている。また、図5に示すように、本変形例においては、撮像素子5と基板2との間における4箇所にダイアタッチ材13を塗布することもできる。
【0099】
このようにダイアタッチ材13を分散して形成する構成においても、撮像素子5の上記対向面の面積の少なくとも20パーセントをダイアタッチ材13が覆うようにしている。これにより、撮像素子5の傾きを20マイクロメートル以下に抑えることができる。
【0100】
さらに、本発明においては、ダイアタッチ材13を塗布する箇所は、2箇所以上であってもよい。つまり、基板2の一表面にダイアタッチ材13を塗布する箇所が複数箇所であっても、撮像素子5の上記対向面の面積の少なくとも20パーセントをダイアタッチ材13が覆うようにしていればよい。
【0101】
このような構成により、本変形例においても、撮像素子5と端子6とが接触することによるショートやリークを防ぐことができる。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のカメラモジュールは、カメラの部品として利用できる。そして、本発明の電子機器は、カメラおよびカメラ付き携帯電話等のカメラ機能を有する各種電子機器として幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 カメラモジュール
2 基板
3 ペースト
4 フィラー
5 撮像素子
6 端子
7 金属線
8 ガラスリッド
9 赤外線カットフィルター
10 レンズ
11 レンズバレル
12 レンズホルダー
13 ダイアタッチ材
14 開口部
20 電子機器
21 撮像部
22 メモリ部
23 表示部
24 通信部
25 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を集光するレンズと、
電極部を有し、上記レンズによって集光された光を入射させる撮像素子と、
端子が形成された基板と、
上記基板の端子形成面に上記撮像素子を接着するためのダイアタッチ材であって、上記端子の厚さよりも大きいサイズを有するフィラーを含有するダイアタッチ材と、
上記電極部と上記端子とを電気的に接続する金属線と、
を備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
上記ダイアタッチ材は、上記撮像素子における上記基板との対向面の面積の20〜99パーセントを覆っていることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
上記ダイアタッチ材は、上記撮像素子における上記基板との対向面の全てを覆っていることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
上記ダイアタッチ材は、上記基板と上記撮像素子との間において、複数箇所に分散して設けられていることを特徴とする請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
上記フィラーは、ビーズであり、
上記ビーズの粒径の偏差は、±30パーセント以下であることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
上記ダイアタッチ材に含有される上記フィラーの密度は、5〜95パーセントであることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
上記レンズと上記撮像素子との間に、当該レンズへ入射した光のうち赤外線を遮断して可視光を透過するフィルターを、さらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載のカメラモジュールを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5116(P2013−5116A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132649(P2011−132649)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】