説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】本発明は、階調マスクの半透明領域および透過領域が隣接している領域で光の干渉による露光不良パターンが生じ難いカラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成された半透明膜とを有し、上記透明基板が露出した透過領域および上記透明基板上に上記半透明膜が設けられた半透明領域を有し、上記透過領域および上記半透明領域が隣接するパターンを有し、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、上記透過領域および上記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、上記透過領域から上記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであることを特徴とする階調マスクを用いることにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの製造方法であって、階調マスクを用いたハーフトーン露光によってカラーフィルタにおける各種部材を形成する、カラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。
【0003】
このような液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの製造効率を向上させる等の目的から、例えば階調マスクを用いて、オーバーコート層とスペーサとを一括して形成する方法、配向制御用突起とスペーサとを一括して形成する方法、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの反射部に形成される反射部用着色層と透過部に形成される透過部用着色層とを一括して形成する方法等が提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0004】
上記階調マスクの一例としては、例えば図18に示すような、透明基板102と、透明基板102上に形成され、露光光を所望の透過率で透過する半透明膜103と、その半透明膜103上に形成された露光光を実質的に遮光する遮光膜104とを有するものが挙げられる。このような階調マスクは、透明基板102が露出した、光を透過する透過領域113と、遮光膜104によって実質的に光を透過しない遮光領域111と、半透明膜103によって透過する光の量が調整された半透明領域112とを有し、これらの透過率差によって階調を出すことができる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−171623号公報
【特許文献2】特開2007−171624号公報
【特許文献3】特開2007−178649号公報
【特許文献4】特開2007−178662号公報
【特許文献5】特開2007−178688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような階調マスクを用いて例えばカラーフィルタの各種部材を形成する場合等、半透明領域および透過領域が隣接している領域では、各領域を通過した光の位相のずれによって、干渉波が生じやすくなる。そのため、半透明領域に対応する領域で、目的とするパターンに各種部材を形成すること等が困難となる場合があった。
【0007】
例えば図4に示すように、上記のような階調マスクを用いてポジ型感光性樹脂を露光し配向制御用突起51とスペーサ52とを一括して形成した場合、光の位相のずれの影響で干渉が生じ、配向制御用突起51の膜厚が半透明領域と透過領域との境界付近で薄膜になり、露光不良パターンが生じてしまうことがある。そのため、カラーフィルタと液晶駆動側基板とを対向させて液晶表示装置とした際に、上記の露光不良パターンにより液晶の配向不良が生じ、高品質な表示が困難となる。
【0008】
また、例えば半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの反射部に形成される反射部用着色層と透過部に形成される透過部用着色層とを一括して形成した場合、階調マスクの半透明領域を利用して形成する反射部用着色層の膜厚が半透明領域と透過領域との境界付近で薄膜になり、露光不良パターンが生じてしまうことがある。そのため、反射部側の光路長が均一とならず、透過率が不均一となったり、着色層の色味が変化してしまったりする。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、階調マスクの半透明領域および透過領域が隣接している領域で光の干渉による露光不良パターンが生じ難いカラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、基板上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、上記感光性樹脂層を、階調マスクを用いて露光し、現像して、上記ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を同時に形成する異種部材形成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記階調マスクが、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成された半透明膜とを有し、上記透明基板が露出した透過領域および上記透明基板上に上記半透明膜が設けられた半透明領域を有し、上記透過領域および上記半透明領域が隣接するパターンを有し、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、上記透過領域および上記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、上記透過領域から上記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、階調マスクが、上記のシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであるので、透過領域および半透明領域が隣接している領域において、回折光の干渉による影響を少ないものとすることができる。したがって本発明においては、所定の階調マスクを用いることにより、目的とするパターン状にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層をパターニングすること等が可能となり、異種部材を高精細に形成すること等が可能となる。
【0012】
上記発明においては、上記階調マスクが、上記半透明領域の波長365nmでの透過率をT(%)、上記透過領域を通過した露光光に対する上記半透明領域を通過した露光光の位相の遅れをδ(rad)とした場合に、−δ/ln(T/100)が0.4以下であることが好ましい。−δ/ln(T/100)が上記範囲であることにより、上述したように、透過領域および半透明領域が隣接している領域において、光の干渉による影響を少ないものとすることができるからである。
【0013】
また本発明においては、上記階調マスクにおける上記半透明膜が、クロム、チタン、ニッケル、ニッケル合金およびタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。このような半透明膜であれば、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れを、比較的小さくすることができるからである。
【0014】
さらに本発明においては、上記階調マスクにおいて、上記透明基板上に遮光膜がパターン状に形成され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域を有していてもよい。この場合、上記半透明領域が上記透明基板上に上記半透明膜のみが設けられた領域となる。
【0015】
また本発明は、上述したカラーフィルタの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、各領域を通過した光の位相のずれによる干渉波の影響が少ないものとすることができ、目的とするパターン状にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層をパターニングすること等が可能となり、異種部材を高精細に形成すること等が可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法およびカラーフィルタについて詳細に説明する。
【0018】
A.カラーフィルタの製造方法
まず、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、上記感光性樹脂層を、階調マスクを用いて露光し、現像して、上記ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を同時に形成する異種部材形成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記階調マスクが、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成された半透明膜とを有し、上記透明基板が露出した透過領域および上記透明基板上に上記半透明膜が設けられた半透明領域を有し、上記透過領域および上記半透明領域が隣接するパターンを有し、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、上記透過領域および上記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、上記透過領域から上記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のカラーフィルタの製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に用いられる階調マスクの一例を示す模式図である。なお、図1(a)は図1(b)のA−A線断面図である。図1(a)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上にパターン状に半透明膜3および遮光膜4が形成されたものである。また、図1(b)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有しており、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有している。
上記階調マスクは、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものとなる。
【0020】
シミュレーションでは、一般的なフレネル回折に基づく、下記の数式(1)により、基板上の点Pでの光の振幅Eを、対応する階調マスクの開口部(透過領域)の各点からの球面波の積分値として計算により求め、さらに、下記の数式(2)により、点Pでの光強度Iを、計算により求めることができる。
図2は、下記の数式(1)による基板31上の点Pでの光強度分布の計算を説明するための図であり、階調マスク1の開口部(透過領域13)の任意の点Qと、基板31上の任意の点Pとの位置関係を示した模式図である。図2において、点Sは点Qを通過した露光光32が直進した場合の基板31上の位置である。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、数式(1)において、k=2π/λであり、Eは基板上の点Pにおける光の振幅、Aは入射光の強度によって決まる定数、λは入射光の波長、δは線分QSと線分QPのなす角、rは点Qから点Pまでの距離、iは虚数単位である。
【0023】
I=E×E (2)
ここで、数式(2)において、EはEの共役複素数である。
【0024】
なお、上記の計算は、階調マスクの開口部(透過領域)および基板上を有限の微小区間に区切り、計算機により行うものとする。
【0025】
図1に示す階調マスクを用いて、光強度分布をシミュレーションにより求めた結果を図3に示す。なお、図3は、図1(b)のB−B線部分に相当する。シミュレーション条件は、露光ギャップ:150μm、Collimation:1.5°、露光波長:365nm、半透明領域の透過率:30%(365nm)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れ(位相差):0.02radまたは1.22rad、半透明領域の線幅:15μm、露光方式:プロキシミティ露光方式とした。
【0026】
図3(a)の場合、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少しており、光強度分布に変曲点をもたない。一方、図3(b)の場合、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少せずに増加する部分がある。
【0027】
図3(b)のような光強度分布を示す階調マスクを用いて露光を行うと、光の干渉によって半透明領域に対応する領域の膜厚が透過領域との境界付近で薄膜になりやすい。
図4は、図3(b)のような光強度分布を示す階調マスクを用いて、配向制御用突起およびスペーサを形成する例である。まず、図4(a)に例示するように、基板21上に遮光部22および着色層23を形成し、着色層23上に透明電極層24を形成し、その透明電極層24上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層25を形成する。次いで、図4(b)に例示するように、上記階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層25に光50を照射すると、光の位相のずれ等の影響で干渉が生じ、配向制御用突起51の膜厚が半透明領域12と透過領域13との境界付近で薄膜になり、露光不良パターンが生じてしまう。この場合、実際に得られるパターンとシミュレーション結果とは一致しているといえる。
【0028】
これに対し、図3(a)のような光強度分布を示す階調マスクを用いて露光を行うと、光の干渉による露光不良パターンの発生を抑制することができる。
図5は、図3(a)のような光強度分布を示す階調マスクを用いて、配向制御用突起およびスペーサを形成する例である。まず、図5(a)に例示するように、基板21上に遮光部22および着色層23を形成し、着色層23上に透明電極層24を形成し、その透明電極層24上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層25を形成する。次いで、図5(b)に例示するように、上記階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層25に光50を照射すると、光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに配向制御用突起51およびスペーサ52を形成することができる。この場合も、実際に得られるパターンとシミュレーション結果とは一致しているといえる。
【0029】
このようにカラーフィルタの異種部材を形成する際に所定の階調マスクを用いた場合には、階調マスクが、上述のシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであるので、干渉による露光不良パターンの発生を抑制することができ、解像性を向上させることが可能である。したがって本発明においては、目的とするパターン状に感光性樹脂をパターニングすることができ、カラーフィルタの異種部材を高精細に形成すること等が可能となる。
【0030】
本発明に用いられる階調マスクは、上述したようにシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、かつ、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、光強度分布に変曲点をもたないものである。
シミュレーションにより得られる光強度分布は、露光ギャップ、露光波長、露光方式などに応じて異なるので、シミュレーション条件は、実際に階調マスクを用いる際の露光条件と同様とすればよい。
【0031】
なお、「透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域」とは、透過領域および半透明領域の境界から半透明領域に向けて5μm以内の領域、および、透過領域および半透明領域の境界から透過領域に向けて5μm以内の領域をいう。
また、「変曲点をもたない」とは、上に凸の状態から上に凹の状態に変わる点、または、上に凹の状態から上に凸の状態に変わる点を有さないことをいう。
透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないことは、シミュレーション結果により確認するものとする。この際、階調マスクを通過する前の露光光の相対強度、すなわち透過領域を通過した露光光の相対強度を1としたときに、±0.001以内の変化は誤差とする。
【0032】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、各工程ごとに詳しく説明する。
【0033】
1.感光性樹脂層形成工程
本発明における感光性樹脂層形成工程は、基板上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する工程である。
【0034】
本発明に用いられるポジ感光性樹脂としては特に限定されるものではなく、一般的に使用されるものを用いることができる。本発明により形成される異種部材は感光性樹脂からなるものであるので、形成する部材に応じて、使用するポジ型感光性樹脂を選択すればよい。具体的には、ノボラック樹脂をベース樹脂とした感光性樹脂等が挙げられる。
【0035】
上記ポジ感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を使用することができる。
【0036】
塗布後の感光性樹脂層の厚みは、形成する異種部材に応じて適宜調整される。例えば図5に示すように、異種部材のうち、最も高い(最も厚い)部材の高さ(厚み)に適合するように、感光性樹脂層の厚みが調整される。図5の例においては、スペーサの高さに適合するように感光性樹脂層の厚みが調整される。
【0037】
上記の感光性樹脂組成物の塗布後は、感光性樹脂層に対して加熱処理(プリベーク)を施してもよい。
【0038】
本発明に用いられる基板としては、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製1737ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式による液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。
【0039】
2.異種部材形成工程
本発明における異種部材形成工程は、感光性樹脂層を、階調マスクを用いて露光し、現像して、ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を同時に形成する工程である。
以下、階調マスク、および異種部材の形成方法について説明する。
【0040】
(1)階調マスク
本発明に用いられる階調マスクは、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成された半透明膜とを有し、上記透明基板が露出した透過領域および上記透明基板上に上記半透明膜が設けられた半透明領域を有し、上記透過領域および上記半透明領域が隣接するパターンを有する階調マスクであって、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、上記透過領域および上記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、上記透過領域から上記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものである。
以下、階調マスクの各構成について説明する。
【0041】
(i)透過領域および半透明領域
本発明に用いられる階調マスクにおける透過領域は、透明基板が露出した領域である。
また、本発明に用いられる階調マスクにおける半透明領域は、透明基板上に半透明膜が設けられた領域である。後述するように、階調マスクが遮光領域を有する場合には、半透明領域は、透明基板上に半透明膜のみが設けられた領域となる。
【0042】
ここで、光の干渉による露光不良パターンの発生は、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れによるものである。透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れが比較的大きい場合には、光の干渉による露光不良パターンが生じやすく、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れが比較的小さい場合には、光の干渉による露光不良パターン生じにくくなる。
【0043】
したがって、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れを、干渉波を生じない程度に小さくすることが好ましい。この位相差限界は半透明領域の透過率によって異なる。具体的には、半透明領域の波長365nmでの透過率をT(%)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れをδ(rad)とした場合に、−δ/ln(T/100)が、干渉波を生じない程度に小さいことが望ましい。より具体的には、−δ/ln(T/100)が0.4以下であることが好ましい。−δ/ln(T/100)を上記範囲とすることにより、干渉の影響を小さくし、所望のパターンを形成することができるからである。一方、−δ/ln(T/100)が上記範囲を超えると、光の回り込み等による干渉の影響が大きくなり、感光性樹脂を露光した際に、露光不良パターンが生じるおそれがある。
【0044】
なお、上記各領域を通過した露光光の位相は、商品名MPM−100(レーザーテック社製)により測定することができる。これにより、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れδを求めることができる。
また、半透明領域の波長365nmでの透過率Tは、階調マスクの透明基板の透過率をリファレンス(100%)として、半透明領域の透過率を測定することにより算出することができる。透過率を測定する装置としては、紫外・可視分光光度計(例えば日立U-4000等)、またはフォトダイオードアレイを検出器としている装置(例えば大塚電子MCPD等)を用いることができる。
【0045】
−δ/ln(T/100)を上記範囲内とする方法としては、後述するように、半透明膜の材料の屈折率や半透明膜の膜厚を制御する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明に用いられる階調マスクは、異なる透過率特性をもつ複数種類の半透明領域を有していてもよい。この場合、多階調マスクとすることができる。例えば、後述するように半透明膜を複数層が積層されたものとすることにより、異なる透過率特性をもつ複数種類の半透明領域を設けることができる。
【0047】
透過領域および半透明領域の形状としては、透過領域および半透明領域が隣接するパターンとなるものであれば特に限定されるものではなく、本発明に用いられる階調マスクの用途に応じて適宜選択される。例えば、円形、矩形、多角形、線形など、種々の形状が挙げられる。中でも、図1(b)に例示するような半透明領域12が透過領域13に囲まれているパターンとなる形状が好ましい。
半透明領域が透過領域に囲まれているパターンの場合、特に半透明領域の形状が円形、線形等であることが好ましい。
【0048】
(ii)半透明膜
本発明に用いられる階調マスクにおける半透明膜は、透明基板上にパターン状に形成されるものであり、透過率調整機能を有するものである。
【0049】
上述したように、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れは比較的小さいことが好ましく、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れが所定の値以下となることが好ましい。
このような光の位相差を実現可能な半透明膜の材料としては、例えば、クロム、チタン、ニッケル、ニッケル合金、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、コバルト、コバルト合金等の金属が挙げられる。これらの中でも、パターニング性の観点から、クロム、チタン、ニッケル、ニッケル合金、タンタルが好ましい。すなわち、半透明膜が、クロム、チタン、ニッケル、ニッケル合金およびタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0050】
半透明領域は、透明基板上に半透明膜のみが設けられた領域であり、透過領域は、透明基板が露出した領域である。したがって、半透明膜の位相差が比較的小さい場合には、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れを比較的小さくすることができる。
【0051】
半透明領域は、透明基板上に半透明膜のみが設けられた領域であり、透過領域は、透明基板が露出した領域である。したがって、半透明膜の位相差が比較的小さい場合には、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れを比較的小さくすることができる。
【0052】
この半透明膜の位相差は、半透明膜を構成する材料の屈折率と、半透明膜の膜厚との積で示される。そのため、半透明膜を構成する材料は、屈折率が比較的小さいことが好ましい。
このような屈折率が比較的小さい材料としては、例えば、クロム、タンタル、チタン等の金属、およびこれらの金属を含む化合物などが挙げられる。
【0053】
ここで、半透明膜として金属を一般的な手法により成膜する場合、微量の酸素および窒素が膜中に通常含まれてしまう。本発明の効果を実現するためには、金属を用いて成膜された半透明膜中の金属の含有量は、97%以上であることが好ましく、中でも99%以上であることが好ましい。また、金属を用いて成膜された半透明膜中の窒素の含有量は、3%以下であることが好ましく、中でも2%以下であることが好ましい。さらに、金属を用いて成膜された半透明膜中の酸素の含有量は、3%以下であることが好ましく、中でも2%以下であることが好ましい。
【0054】
また、半透明膜の透過率としては、特に限定されるものではない。
【0055】
半透明膜は、単層であってもよく、上述した材料からなる膜が複数層積層されたものであってもよい。なお、半透明膜が上述した材料からなる膜が複数層積層されたものである場合には、膜の積層数としては、通常2層〜3層程度とすることが好ましく、特に2層とすることが位相差の制御等の面から好ましい。
【0056】
また、半透明膜の透過率はその膜厚により変わるため、半透明膜の膜厚は目的とする透過率に応じて適宜選択される。
【0057】
半透明膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
例えば、スパッタリング法によりクロムを用いて半透明膜を成膜する場合は、Arガス等のキャリアガスを反応装置内に導入し、Crターゲットを用いた反応性スパッタリング法にて半透明膜を成膜することができる。この際、Arガス等のキャリアガスの他に、窒素ガス等が反応装置内に導入されることがあるが、各ガスの流量の割合を制御することで半透明膜の組成が制御されることから、Arガスの流量を1とすると窒素ガスの流量比は0.2以下であることが好ましい。
【0058】
また、半透明膜は、上記半透明領域の形状に応じて、透明基板上にパターン状に形成される。
【0059】
(iii)透明基板
本発明に用いられる階調マスクにおける透明基板は、一般にフォトマスクに用いられる基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等の光学研磨された低膨張ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。中でも、石英ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れている。
【0060】
(iv)遮光領域および遮光膜
本発明に用いられる階調マスクは、透明基板上に遮光膜がパターン状に形成されており、透明基板上に遮光膜が設けられた遮光領域を有していてもよい。
【0061】
遮光領域は、透明基板上に遮光膜が形成された領域であればよく、透明基板上に遮光膜のみが形成されていてもよく、透明基板上に遮光膜および半透明膜が形成されていてもよい。透明基板上に遮光膜および半透明膜が形成されている場合、透明基板、遮光膜および半透明膜の積層順としては特に限定されるものではなく、図1(a)に例示するように透明基板2/半透明膜3/遮光膜4の順であってもよく、図6(a)に例示するように透明基板2/遮光膜4/半透明膜3の順であってもよく、図6(b)に例示するように半透明膜3/透明基板2/遮光膜4の順であってもよい。
【0062】
遮光領域の形状としては、透過領域および半透明領域が隣接するパターンとなるものであれば特に限定されるものではなく、本発明に用いられる階調マスクの用途に応じて適宜選択される。例えば、円形、矩形、多角形、線形など、種々の形状が挙げられる。
【0063】
また、本発明に用いられる階調マスクにおける遮光膜は、透明基板上にパターン状に形成されるものである。
遮光膜は、実質的に露光光を透過しないものであり、露光波長における平均透過率が0.1%以下であることが好ましい。このような遮光膜としては、一般にフォトマスクに用いられる遮光膜を用いることができ、例えば、クロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、チタン等の金属の膜、あるいは、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等の金属の酸化物や窒化物などの膜が挙げられる。また、ニッケル合金、コバルト合金、ニッケル−コバルト合金、およびこれらの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などの膜も用いることができる。
【0064】
中でも、遮光膜としては、クロム、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等のクロム系膜;ニッケルを主成分とするNi−Cu−TiおよびNi−Ta−Cu−Ti、ならびにこれらの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物等のニッケル合金系膜;コバルトを主成分とするCo−Cu−TiおよびCo−Ta−Cu−Ti、ならびにこれらの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物等のコバルト合金系膜;ニッケルおよびコバルトを主成分とするNi−Co−Cu−Ti、およびその酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物等のニッケル−コバルト合金系膜が好適に用いられる。上記クロム系膜は、単層であってもよく、2層以上が積層されたものであってもよい。
【0065】
また、遮光膜は、低反射機能を有していてもよい。低反射機能により、露光光の乱反射を防止することができるので、より鮮明なパターンを形成することができる。遮光膜に低反射機能を付加するには、例えば遮光膜表面に露光光の反射を防止する酸化クロム等のクロム化合物を含有させればよい。この場合、遮光膜が、表面に向かって徐々に含有成分が変化する傾斜界面により形成されたものであってもよい。
【0066】
遮光膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、遮光膜の種類等によって適宜選択される。例えばクロム膜の場合には50nm〜150nm程度であることが好ましい。
【0067】
また、遮光膜の成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。
【0068】
遮光膜は、上記遮光領域の形状に応じて、透明基板上にパターン状に形成される。
【0069】
(v)階調マスク
本発明に用いられる階調マスクは、上記の半透明領域および透過領域が形成されているものであれば特に限定されるものではなく、上述したように遮光領域が形成されていてもよく、さらには必要に応じて例えばアライメント用の領域等が形成されていてもよい。
【0070】
また、階調マスクの大きさとしては、用途に応じて適宜調整されるが、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の製造に用いられる場合には、300mm×400mm〜1,600mm×1,800mm程度とすることができる。
【0071】
本発明に用いられる階調マスクの製造方法は、透明基板上に半透明膜をパターン状に形成することにより、透過領域および半透明領域が隣接するパターンを有するように所定の位置に透過領域および半透明領域を配置することができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0072】
また、透過領域および半透明領域に加えて、遮光領域を有する階調マスクを作製する場合には、階調マスクの製造方法は、透明基板上に半透明膜および遮光膜をパターン状に形成することにより、透過領域および半透明領域が隣接するパターンを有するように所定の位置に透過領域、半透明領域、および遮光領域を配置することができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0073】
中でも、階調マスクの製造方法は、半透明膜を形成するための材料として、この階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、上記透過領域および上記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、上記透過領域から上記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものとなる材料を選択し、上記材料を用いて上記半透明膜を成膜する半透明膜成膜工程を有することが好ましい。
【0074】
なお、階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないことについては、上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
また、半透明膜を形成するための材料として、半透明領域の波長365nmでの透過率をT(%)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れをδ(rad)とした場合に、−δ/ln(T/100)が0.4以下となる材料を選択することが好ましい。
【0076】
なお、上記半透明領域の波長365nmでの透過率をT(%)、上記透過領域を通過した露光光に対する上記半透明領域を通過した露光光の位相の遅れをδ(rad)とした場合に、−δ/ln(T/100)が0.4以下となることについては、上記「A.階調マスク」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0077】
また、階調マスクの製造方法については、一般的な方法を適用することができ、例えば特開2007−178649号公報等に詳しく記載されている。
【0078】
(2)異種部材の形成方法
本発明においては、ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を同時に形成することができる。
なお、「異種部材」とは、厚みおよび高さの少なくともいずれか一つが異なる部材をいう。異種部材の機能は同一であっても異なっていてもよい。ここで、厚みとは、部材自体の厚みであり、高さとは、基板からの高さをいう。
【0079】
本発明により形成される異種部材としては、露光工程を経て形成される種々の部材を挙げることができる。形成可能な異種部材としては、感光性樹脂を用いて形成することができるものであればよい。具体的には、液晶表示装置用カラーフィルタについては、スペーサおよび配向制御用突起、高さの異なるスペーサ、オーバーコート層およびスペーサ、オーバーコート層およびギャップ調整層、透過部用着色層および反射部用着色層、透過部用配向制御用突起および反射部用配向制御用突起などを挙げることができる。また、有機EL表示装置用カラーフィルタについては、白色パターン用オーバーコート層および赤色・緑色・青色パターン用オーバーコート層などが挙げられる。
【0080】
形成可能な異種部材について図面を用いて説明する。
図7は、本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図であり、図8は、図7に示す階調マスクを用いて、高さの異なるスペーサ(低スペーサ・高スペーサ)を形成する例である。なお、図7(a)は図7(b)のC−C線断面図である。
図7(a)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上にパターン状に半透明膜3および遮光膜4が形成されたものである。また、図7(b)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有しており、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有している。
このような図7に示す階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図8に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに低スペーサ53および高スペーサ54を形成することができる。なお、図8においては、基板21上に遮光部22および着色層23が形成され、着色層23上に透明電極層24が形成されており、その透明電極層24上に低スペーサ53および高スペーサ54が形成される。
【0081】
図9は、本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図であり、図10は、図9に示す階調マスクを用いて、オーバーコート層およびギャップ調整層を形成する例である。なお、図9(a)は図9(b)のD−D線断面図である。
図9(a)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上にパターン状に半透明膜3および遮光膜4が形成されたものである。また、図9(b)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有しており、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有している。
このような図9に示す階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図10に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンにオーバーコート層55およびギャップ調整層56を形成することができる。なお、図10においては、基板21上に遮光部22および着色層23が形成されており、その着色層23上にオーバーコート層55およびギャップ調整層56が形成される。ギャップ調整層56が設けられている領域は反射部r、ギャップ調整層が設けられていない領域は透過部tである。
【0082】
図11は、図9に示す階調マスクを用いて、厚みの異なる反射部用着色層および透過部用着色層を形成する例である。
図9に示す階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図11に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに反射部用着色層57および透過部用着色層58を形成することができる。なお、図11においては、遮光部22が形成された基板21上に反射部用着色層57および透過部用着色層58が形成される。反射部用着色層57が設けられている領域は反射部r、透過部用着色層58が設けられている領域は透過部tである。
【0083】
図12は、図9に示す階調マスクを用いて、厚みの異なる反射部用着色層および透過部用着色層を形成する例であり、ギャップ調整層上の反射部用着色層の厚みを薄くする例である。
図9に示す階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図12に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに反射部用着色層59および透過部用着色層60を形成することができる。なお、図12においては、遮光部22およびギャップ調整層26が形成された基板21上に反射部用着色層59および透過部用着色層60が形成される。ギャップ調整層26および反射部用着色層59が設けられている領域は反射部r、透過部用着色層60が設けられている領域は透過部tである。
【0084】
図13は、本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図であり、図14は、図13に示す階調マスクを用いて、高さの異なる透過部用配向制御用突起および反射部用配向制御用突起を形成する例であり、透過部用配向制御用突起および反射部用配向制御用突起の厚みを均一にする例である。なお、図13(a)は図13(b)のE−E線断面図である。
図13(a)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上にパターン状に半透明膜3および遮光膜4が形成されたものである。また、図13(b)に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有しており、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有している。
このような図13に示す階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図14に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに透過部用配向制御用突起61および反射部用配向制御用突起62を形成することができる。なお、図13においては、基板21上に遮光部22および着色層23が形成され、着色層23上にギャップ調整層26および透明電極層24が形成されており、その透明電極層24上に透過部用配向制御用突起61および反射部用配向制御用突起62が形成される。ギャップ調整層26が設けられている領域は反射部r、ギャップ調整層が設けられていない領域は透過部tである。
【0085】
図15は、厚みの異なる赤色・緑色・青色パターン用オーバーコート層および白色パターン用オーバーコート層を形成する例であり、赤色・緑色・青色パターン用オーバーコート層および白色パターン用オーバーコート層の高さを均一にする例である。
図15に例示するように、階調マスク1は、透明基板2上にパターン状に半透明膜3および遮光膜4が形成されたものであり、透明基板2上に遮光膜4が設けられた遮光領域11と、透明基板2上に半透明膜3のみが設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有しており、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有している。
このような階調マスク1を介してポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層に光50を照射すると、図15に例示するように、半透明領域12と透過領域13との境界付近で光の干渉による露光不良パターンは発生せず、所望のパターンに赤色・緑色・青色パターン用オーバーコート層63および白色パターン用オーバーコート層64を形成することができる。なお、図15においては、基板21上に遮光部22および着色層(赤色パターン23R、緑色パターン23G、青色パターン23B)が形成されており、その着色層上に赤色・緑色・青色パターン用オーバーコート層63および白色パターン用オーバーコート層64が形成される。着色層(赤色パターン23R、緑色パターン23G、青色パターン23B)が設けられていない領域は、光がそのまま透過する白色パターンWである。
【0086】
中でも、本発明は、スペーサおよび配向制御用突起の同時形成、高さの異なるスペーサの同時形成などに適用することが好ましい。
【0087】
本工程においては、まず、感光性樹脂層を階調マスクを介して露光する。露光方式としては、上述したようにシミュレーションを行った場合に、透過領域および半透明領域の境界から所定の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度を単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものとすることができれば、特に限定されるものではなく、例えばプロキシミティ露光方式、ミラープロジェクション露光方式等を挙げることができる。この露光により、照射部分で酸発生反応が生じる。
【0088】
上記の露光後は、現像が行われる。現像により、感光性樹脂層が部分的に除去される。感光性樹脂としてポジ型感光性樹脂を用いるので、露光により分解した部分が選択的に除去され、その他の部分が残存する。透過領域から露光された部位では酸発生反応が十分に進行するのに対し、半透明領域から露光された部位では酸発生反応が不十分となるので、形状、厚み、高さ等の異なる異種部材を同時に形成することができる。
この現像は、一般的な現像方法に従って行うことができる。
【0089】
また、露光および現像後、形成された異種部材に対して加熱処理(ポストベーク)を施してもよい。この加熱処理は、例えば温度100〜250℃、処理時間10〜60分程度で適宜設定することができる。
【0090】
3.その他の工程
本発明においては、感光性樹脂層形成工程前または異種部材形成工程後に、カラーフィルタにおける各種部材を形成する工程を必要に応じて行うことができる。
【0091】
例えば、基板上に着色層を形成する着色層形成工程を行うことができる。着色層は、通常、赤色パターン、緑色パターンおよび青色パターンから構成されるものである。
着色層は、例えば所望の着色剤を含有する感光性樹脂組成物を使用したフォトリソグラフィー法等により形成することができる。さらに、着色層の形成方法としては、印刷法、電着法、転写法、インクジェット法等の一般的な方法を使用することもできる。
着色層の厚みは、例えば0.5〜3.0μmの範囲で設定することができる。
【0092】
また例えば、基板上に遮光部(ブラックマトリックスという場合もある。)を形成する遮光部形成工程を行うことができる。遮光部は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等によりクロム等の金属薄膜を形成し、この金属薄膜をパターニングすることにより形成することができる。この場合、遮光部の厚みは、200〜5000Å程度とすることができる。
また、遮光部は、カーボン微粒子等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物等を用いて樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングすることにより形成することもできる。さらに、遮光部は、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂組成物を用いて樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングすることにより形成することもできる。
【0093】
さらに例えば、基板上に透明電極層を形成する透明電極層形成工程を行うことができる。透明電極層の形成材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、またはその合金等を挙げることができる。
透明電極層の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な成膜方法を用いることができる。
この透明電極層の厚みは、例えば200〜5000Å程度とすることができる。
【0094】
また例えば、基板上にギャップ調整層を形成するギャップ調整層形成工程を行うことができる。ギャップ調整層の形成材料としては、例えば感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド、ポジレジスト、カルド樹脂、ポリシロキサン、ベンゾシクロブテン等を挙げることができる。
ギャップ調整層の形成方法としては、上記材料を用いて例えばフォトリソグラフィー法等により、形成することができる。
【0095】
さらに例えば、異種部材を覆うように配向膜を形成する配向膜形成工程を行うことができる。配向膜は、例えば可溶性ポリイミド、ポリアミック酸タイプポリイミド、変性ポリイミド等の有機化合物を、一般的な印刷法、塗布方法により塗布し、その後、焼成することにより形成することができる。
配向膜の厚みは、500〜1000Å程度とすることができる。
【0096】
4.用途
本発明のカラーフィルタの製造方法は、所定の階調マスクを用いていることから、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造、特に大型の液晶表示装置用のカラーフィルタの製造に適している。
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、モノクロの液晶表示装置用の基板の製造に適用することもできる。
【0097】
B.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、上述したカラーフィルタの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするものである。
本発明のカラーフィルタは、ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を有するものであり、この異種部材を構成するポジ型感光性樹脂が同一であるものである。
なお、異種部材については、上記「A.カラーフィルタの製造方法」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、カラーフィルタのその他の構成としては、一般的なカラーフィルタと同様とすることができる。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0099】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(階調マスクの作製)
光学研磨された390mm×610mmの合成石英基板上にクロム膜(遮光膜)が厚み100nmで成膜されている常用のマスクブランク上に、市販のフォトレジスト(東京応化工業社製 ip−3500)を厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレートで15分ベークした後、フォトマスク用レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で、所望の遮光膜中間パターンを描画した。
次に、専用のデベロッパー(東京応化工業社製 NMD3)で現像し、遮光膜用レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをエッチング用マスクとし、クロム膜をエッチングし、さらに残ったレジストパターンを剥膜することで、所望の遮光膜中間パターンを得た。クロム膜のエッチングには、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)を用いた。クロム膜のエッチング時間は、60秒であった。
【0100】
次いで、遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、クロム膜(半透明膜)を下記の条件でスパッタリング法にて成膜した。このとき、半透明膜の膜厚は10nmとした。
<成膜条件>
・ガス流量比 Ar:N2=5:1
・パワー:1.3kW
・ガス圧:3.5mTorr
次に、半透明膜上に市販のフォトレジスト(東京応化製 ip−3500)を再度、厚み600nmで塗布し、120℃に加熱されたホットプレート上で15分ベークした。
続いて半透明膜パターンとなる像を再度、レーザ描画装置(マイクロニック社製 LRS11000−TFT3)で描画し、専用デベロッパー(東京応化社製 NMD3)で現像し、レジストパターンを得た。
次に、レジストパターンをマスクとして、市販の硝酸セリウム系ウェットエッチャント(ザ・インクテック社製 MR−ES)で半透明膜および遮光膜をエッチングし、半透明膜パターンおよび遮光膜パターンを得た。エッチングは半透明膜および遮光膜に対して行った。
最後に残ったレジストを剥膜し、パターン寸法検査、パターン欠陥検査などの検査工程を経て、必要に応じてパターン修正を行い、階調マスクを得た。
【0101】
(カラーフィルタの作製)
基板として、大きさが100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、基板の片側全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み1000Å)を形成した。このクロム薄膜上にポジ型感光性レジスト(東京応化工業(株)製 OFPR−800)を塗布し、所定のマスクを介して露光、現像してレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、クロム薄膜をエッチングして、線幅20μm、ピッチ100μmのブラックマトリックスを形成した。
【0102】
次に、下記組成の赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0103】
<赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・赤顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 クロモフタルレッドA2B) 4.8重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトールイエローD1819) 1.2重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907) 1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0104】
<緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・緑顔料(アビシア社製 モナストラルグリーン9Y−C) 4.2重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトールイエローD1819) 1.8重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907) 1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0105】
<青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲンブルーL6700F) 6.0重量部
・顔料誘導体(アビシア社製 ソルスパース5000) 0.6重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 2.4重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907) 1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0106】
なお、上記のポリマーIは、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.
9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0107】
次いで、ガラス基板上にブラックマトリックスを覆うように赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、赤色パターン用のフォトマスクを介して、露光、現像して、赤色パターンを形成した。この赤色パターンは、長方形状(100μm×300μm)とした。
その後、緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、同様の操作により、緑色パターン、青色パターンを形成した。これにより、赤色パターン、緑色パターン、青色パターンが配列された着色層を形成した。
【0108】
次に、ブラックマトリックス、着色層を覆うように酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極層(厚み1500Å)をスパッタリング法により形成した。
【0109】
次に、透明電極層上にポジ型感光性樹脂組成物(ロームアンドハース社製LC100VL、固形分量15%)をスピンコート法により塗布し、減圧乾燥後、100℃にて3分間プリベークした。その後、上記の階調マスクを介して下記条件にて露光した。
<露光条件>
・露光量:50mJ/cm2(I線換算)
・露光ギャップ:150μm
次いで、水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、その後、230℃、30分間の加熱処理を施し、スペーサおよび配向制御用突起を同時形成した。
【0110】
[比較例1]
(階調マスクの作製)
下記のように半透明膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
遮光膜中間パターンが形成された基板について、パターン寸法検査、パターン欠陥検査、必要に応じてパターン修正を行い、よく洗浄した後、酸化窒化炭化クロム膜(半透明膜)を下記の条件でスパッタリング法にて成膜した。このとき、酸化窒化炭化クロム膜の膜厚は33nmとした。
<成膜条件>
・ガス流量比 Ar:CO2:N2=1:0.5:0.5
・パワー:1.5kW
・ガス圧:3mTorr
【0111】
(カラーフィルタの作製)
実施例1と同様にして、カラーフィルタを作製した。
【0112】
[実施例1および比較例1の評価]
実施例1、比較例1の階調マスクについて、光強度分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション条件は、露光ギャップ:150μm、Collimation:1.5°、露光波長:365nm、半透明領域の透過率T:30%(365nm)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れ(位相差)δ:0.02radまたは1.22rad、半透明領域の線幅:15μm、露光方式:プロキシミティ露光方式とした。シミュレーション結果を図3に示す。
実施例1の階調マスク(図3(a))では、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないことがわかった。一方、比較例1の階調マスク(図3(b))では、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少せず、光強度分布に変曲点をもっていた。
【0113】
実施例1、比較例1の階調マスクを用いて形成されたスペーサおよび配向制御用突起の断面形状を走査型電子顕微鏡にて観察し、寸法を測定した。なお、スペーサの断面形状は截頭円錐となっているものを○とし、配向制御用突起の断面形状はかまぼこ状になっているものを○、突起周辺部に意図しないパターンが残るものを×とした。評価結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
実施例1の階調マスクを露光プロセスに用いることにより、スペーサおよび配向制御用突起として最適な形状および寸法をもつパターンを形成することができた。
【0116】
[実施例2]
図16に示すような、透明基板2上に半透明膜3が設けられた半透明領域12と、透明基板2が露出した透過領域13とを有し、半透明領域12と透過領域13とが隣接するパターンを有する階調マスク1について、光強度分布をシミュレーションにより求めた。なお、図16(a)は図16(b)のF−F線断面図である。
【0117】
シミュレーション条件は、露光ギャップ:150μm、Collimation:1.5°、露光波長:365nm、半透明領域の透過率T:10%〜90%(365nm)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れ(位相差)δ:0.01rad〜1.28rad、半透明領域の線幅:15μm、露光方式:プロキシミティ露光方式とした。
【0118】
シミュレーション結果から、光強度分布の形状を評価した。ここで、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないを○とし、それ以外を×とした。光強度分布の形状の評価と、−δ/ln(T/100)の値を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
シミュレーションを行った場合に、−δ/ln(T/100)が0.4以下のときには、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないことがわかった。
【0121】
[実施例3]
(階調マスクの作製)
半透明膜の膜厚を16nmとし、高さの高いスペーサを形成するための遮光領域と、高さの低いスペーサを形成するための半透明領域とを有するように、遮光膜および半透明膜をパターン描画した以外は、実施例1と同様にして階調マスクを作製した。
【0122】
(カラーフィルタの作製)
スペーサおよび配向制御用突起を形成するかわりに、上記階調マスクを使用して高さの異なるスペーサを形成する以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0123】
[比較例2]
(階調マスクの作製)
半透明膜の膜厚を52nmとし、高さの高いスペーサを形成するための遮光領域と、高さの低いスペーサを形成するための半透明領域とを有するように、遮光膜および半透明膜をパターン描画した以外は、比較例1と同様にして階調マスクを作製した。
【0124】
(カラーフィルタの作製)
スペーサおよび配向制御用突起を形成するかわりに、上記階調マスクを使用して高さの異なるスペーサを形成する以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0125】
[実施例3および比較例2の評価]
実施例3、比較例2の階調マスクについて、光強度分布をシミュレーションにより求めた。シミュレーション条件は、露光ギャップ:150μm、Collimation:1.5°、露光波長:365nm、半透明領域の透過率T:15%(365nm)、透過領域を通過した露光光に対する半透明領域を通過した露光光の位相の遅れ(位相差)δ:0.03radまたは1.93rad、半透明領域の直径:30μm、露光方式:プロキシミティ露光方式とした。シミュレーション結果を図17に示す。
実施例3の階調マスク(図17(a))では、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないことがわかった。一方、比較例2の階調マスク(図17(b))では、透過領域および半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、透過領域から半透明領域に向けて光強度が単調に減少せず、光強度分布に変曲点をもっていた。
【0126】
実施例3、比較例2の階調マスクを用いて形成された高さの異なるスペーサの断面形状を走査型電子顕微鏡にて観察し、寸法を測定した。なお、スペーサの断面形状は截頭円錐となっているものを○とし、突起周辺部に意図しないパターンが残るものを×とした。評価結果を表3に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
表3より、実施例3の階調マスクを用いることにより、高さの異なるスペーサとして最適な形状および寸法をもつパターンを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明に用いられる階調マスクの一例を示す模式図である。
【図2】光強度分布のシミュレーションを説明するための図である。
【図3】シミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】従来のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図である。
【図7】本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図である。
【図8】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図9】本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図である。
【図10】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図11】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図12】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図13】本発明に用いられる階調マスクの他の例を示す模式図である。
【図14】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図15】本発明のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す模式図である。
【図16】実施例2における階調マスクを示す模式図である。
【図17】実施例3および比較例2における階調マスクのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図18】従来の階調マスクの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0130】
1 … 階調マスク
2 … 透明基板
3 … 半透明膜
4 … 遮光膜
11 … 遮光領域
12 … 半透明領域
13 … 透過領域
21 … 基板
25 … 感光性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にポジ型感光性樹脂からなる感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、前記感光性樹脂層を、階調マスクを用いて露光し、現像して、前記ポジ型感光性樹脂からなる異種部材を同時に形成する異種部材形成工程とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記階調マスクが、透明基板と、前記透明基板上にパターン状に形成された半透明膜とを有し、前記透明基板が露出した透過領域および前記透明基板上に前記半透明膜が設けられた半透明領域を有し、前記透過領域および前記半透明領域が隣接するパターンを有し、当該階調マスクを用いて露光する際の光強度分布のシミュレーションを行った場合に、前記透過領域および前記半透明領域の境界から5μm以内の距離の領域で、前記透過領域から前記半透明領域に向けて光強度が単調に減少し、光強度分布に変曲点をもたないものであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記階調マスクが、前記半透明領域の波長365nmでの透過率をT(%)、前記透過領域を通過した露光光に対する前記半透明領域を通過した露光光の位相の遅れをδ(rad)とした場合に、−δ/ln(T/100)が0.4以下であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記階調マスクにおける前記半透明膜が、クロム、チタン、ニッケル、ニッケル合金およびタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むこと特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記階調マスクにおいて、前記透明基板上に遮光膜がパターン状に形成され、前記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域を有し、前記半透明領域が前記透明基板上に前記半透明膜のみが設けられた領域であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−47968(P2009−47968A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214496(P2007−214496)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】