説明

カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを製造することのできるカラーフィルターの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルターの製造方法は、着色剤と、樹脂材料と、前記樹脂材料を溶解させる液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを用いたインクジェット方式によるカラーフィルターの製造方法であって、基板を準備する基板準備工程と、カラーフィルター用インクを液滴として吐出し、基板上にカラーフィルター用インクを付与するインク付与工程と、基板を加熱してカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、固形状の着色部を形成する加熱工程とを有し、加熱工程では液性媒体の主成分とは異なる有機溶剤の存在雰囲気下で液性媒体の除去を行い、有機溶剤は液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性が高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層(着色部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
ところで、このように、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法は、生産性に優れている。しかしながら、インクジェットヘッドを用いて製造されたカラーフィルターは、フォトリソグラフィー法によって製造されたカラーフィルターと比較して明度、コントラスト比が劣る問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−2815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを製造することのできるカラーフィルターの製造方法を提供すること、また、該カラーフィルターの製造方法によって製造されるカラーフィルター、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルターの製造方法は、着色剤と、樹脂材料と、前記樹脂材料を溶解させる液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを用いたインクジェット方式によるカラーフィルターの製造方法であって、
基板を準備する基板準備工程と、
前記カラーフィルター用インクを液滴として吐出し、前記基板上に前記カラーフィルター用インクを付与するインク付与工程と、
前記基板を加熱して前記カラーフィルター用インクから前記液性媒体を除去し、固形状の着色部を形成する加熱工程とを有し、
前記加熱工程では、前記液性媒体の主成分とは異なる有機溶剤の存在雰囲気下で、前記カラーフィルター用インク中の前記液性媒体の除去を行い、
前記有機溶剤は、前記液性媒体の主成分よりも前記樹脂材料の溶解性が高いことを特徴とする。
これにより、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを製造することのできるカラーフィルターの製造方法を提供することができる。
【0007】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、20℃の前記有機溶剤に対する前記樹脂材料の溶解度は、20℃の前記主成分の前記有機溶剤に対する樹脂材料の溶解度よりも高いものであることが好ましい。
これにより、インクジェット法を用いて製造され、明度およびコントラスト比に特に優れたカラーフィルターを製造することのできるカラーフィルターの製造方法を提供することができる。
【0008】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記加熱工程では、前記液性媒体の除去時における雰囲気の前記有機溶媒の体積率は、0.01〜3.0v/v%であることが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクの外表面に適量の有機溶剤を取り込ませることができる。
【0009】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記有機溶剤の20℃における粘度は、0.3〜4.0mPa・sであることが好ましい。
これにより、液性媒体除去時におけるカラーフィルター用インクの外表面付近の粘度をより低いものとすることができる。
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記有機溶剤の大気圧下における沸点は、50〜230℃であることが好ましい。
これにより、形成される着色部から有機溶剤をより確実に除去することができるとともに、液性媒体除去時においては有機溶剤は好適にカラーフィルター用インクの外表面にとりこまれ、樹脂材料を溶解させることができる。
【0010】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記加熱工程では、前記液性媒体の除去は、前記基板を30〜150℃に加熱して行われることが好ましい。
これにより、基板上でのカラーフィルター用インクの対流を抑制しつつ、カラーフィルター用インクから好適に液性媒体を除去でき、形成される着色部をより平坦なものとすることができる。
【0011】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセトン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンよりなる群から選択されるものであることが好ましい。
これにより、樹脂材料をより効率よく溶解させることができるとともに、カラーフィルター用インクの外表面付近をより確実に低粘度化させることができる。また、これらの有機溶剤は、比較的低沸点であり、最終的に得られる着色部から確実に除去される。
【0012】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記液性媒体の主成分は、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択されるものであることが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクは、十分に低粘度を保つことができ、液性媒体除去時におけるカラーフィルター用インクの外表面の粘度を十分に低いものとすることができる。
【0013】
本発明のカラーフィルターでは、前記カラーフィルター用インクは、前記着色部形成時に、形成される前記着色部を平坦化させる平坦化剤を含むものであることが好ましい。
これにより、形成される着色部をより平坦なものとすることができ、カラーフィルターは、明度およびコントラスト比に特に優れたものとなる。
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体Wを含むことが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

これにより、液性媒体除去時において、有機溶剤によってセル中のカラーフィルター用インクの表面付近にある樹脂材料が溶解した際に、カラーフィルター用インクの表面付近の粘度を低く保つことができ、セル中のカラーフィルター用インクの表面を平坦なものとすることができる。
【0014】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zを含むことが好ましい。
【化5】

【化6】

【化7】

これにより、液性媒体除去時において、有機溶剤によってセル中のカラーフィルター用インクの表面付近にある樹脂材料が溶解した際に、カラーフィルター用インクの表面付近の粘度を低く保つことができ、セル中のカラーフィルター用インクの表面を平坦なものとすることができる。
【0015】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含む重合体X、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含む重合体Yのうち、少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

これにより、製造されるカラーフィルターは、より長期にわたってカラーフィルターの明度およびコントラスト比が優れたものとして維持される。
【0016】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルターの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
これにより、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを提供することができる。
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明のカラーフィルターの製造方法は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造方法であり、液滴吐出装置によってカラーフィルター用インクを基板上に吐出し、カラーフィルター用インクを乾燥させて、着色部を形成し、複数の着色部を有するカラーフィルターを得るものである。
まず、カラーフィルターの製造方法の説明に先立ち、本発明のカラーフィルターの製造方法に用いられるカラーフィルター用インク、カラーフィルター用インクの製造方法、およびカラーフィルター用インクから構成されるカラーフィルター用インクセットについて説明する。
【0018】
《カラーフィルター用インク》
次に、本発明のカラーフィルターを製造するのに用いられるカラーフィルター用インクについて詳細に説明する。
カラーフィルター用インク(以下、単にインクとも言う。)は、着色剤と、着色剤を分散または溶解させる液性媒体と、樹脂材料とを含むものである。
以下、本発明のカラーフィルターを製造するのに好適に用いられるカラーフィルター用インクの構成材料について詳細に説明する。
【0019】
<着色剤>
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色)を有している。着色剤は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。カラーフィルター用インクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができる。
【0020】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
カラーフィルター用インクが着色剤として顔料を含むもの(顔料インク)である場合、着色剤として染料を含むもの(染料インク)に比べて、製造されるカラーフィルターの耐光性等をすぐれたものとすることができる。
特に、カラーフィルター用インクが、顔料(赤色顔料)として、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、および/または、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(赤色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、後に詳述するような分散剤、樹脂材料と併用することによる効果がより顕著に発揮され、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができる。この結果、セルへのインク付与時においては、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(14)または下記式(15)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0022】
【化14】

【0023】
【化15】

【0024】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(緑色顔料)として、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(緑色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、従来においては、安定的に分散させるのが極めて困難な材料であった。しかしながら、本発明者は、C.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、スルホン化された顔料誘導体を副顔料として同時に含むことにより、カラーフィルター用インク中における分散安定性を優れたものとすることができることを見出した。これにより、カラーフィルター用インクの発色性をさらに優れたものとすることができるとともに、着色部形成時において、顔料が高濃度化することによるカラーフィルター用インクのチキソトロピック性の上昇を抑制することができる。また、カラーフィルター用インク中における顔料の長期保存性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0025】
顔料として、C.I.ピグメントグリーン58とスルホン化された顔料誘導体とを含む場合、スルホン化された顔料誘導体として、下記式(16)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるカラーフィルターにおいて、より優れたコントラストの画像を表示することができる。
【0026】
【化16】

【0027】
C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、カラーフィルター用インク中における顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、2〜32重量部であるのが好ましく、7〜28重量部であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。
【0028】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(青色顔料)として、C.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(青色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0029】
カラーフィルター用インクが着色剤として顔料を含むもの(顔料インク)である場合、顔料の平均粒径は、10〜200nmであるのが好ましく、20〜180nmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターインクの吐出安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性(耐光性等)を十分に優れたものとし、カラーフィルターにおける発色性、コントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0030】
また、染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247;C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397;C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55;C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46;C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101;C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126;C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34;C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48;C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163;C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227;C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42;C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40;C.I.アシッドグリーン16;C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185;C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
カラーフィルター用インク中における着色剤の含有率は、2〜25wt%であるのが好ましく、3〜20wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。
【0032】
<液性媒体>
液性媒体(液状媒質)は、カラーフィルター用インクにおいて、着色剤を分散または溶解する機能を有するものである。そして、通常、カラーフィルター用インクを構成する液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。また、液性媒体は樹脂材料を溶解させる溶剤としても機能する。
【0033】
液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)または多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
液性媒体としては、これらの中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される化合物を主成分として含むことが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクは、十分に低粘度を保つことができ、液性媒体除去時におけるカラーフィルター用インクの外表面の粘度を十分に低いものとすることができる。また、着色剤、樹脂材料等を比較的多量にインク中に含ませた場合であっても、インクの物性の変化が比較的少ないものとなる。また、カラーフィルター用インク中に顔料が含まれる場合、顔料の含有率を高くした場合であっても、顔料の長期分散安定性を十分に優れたものとすることができ、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクのチキソトロピック性の上昇が抑制される。また、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、液性媒体が上記のような化合物で構成されたものであると、後述するようなカラーフィルターの製造方法において、セル内全体に、カラーフィルター用インクを確実に濡れ広がるようにすることができる。
なお、本明細書において、液性媒体の「主成分」とは、液性媒体中においてもっとも重量換算での含有量が大きい化合物を指す。
【0035】
また、液性媒体中における液性媒体の主成分の含有量は、50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、80wt%以上であることがさらに好ましい。
また、液性媒体は、後述するようなカラーフィルターの製造方法において、液性媒体の除去時に用いられる有機溶剤を一部含むものであってもよい。このような場合、液性媒体中における有機溶剤の含有量は、10wt%以下であることが好ましく、5wt%以下であることがより好ましい。
【0036】
また、液性媒体の25℃での粘度は、0.5〜20mPa・sであることが好ましく、1〜18mPa・sであることがより好ましい。このように、液性媒体が十分に低い粘度であることにより、カラーフィルター用インクの粘度を十分に低いものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴の均一性、吐出量の安定性を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書において、液体の粘度の測定は、例えば、E型粘度計(例えば、東機産業社製RE-01)を用いて行うことができ、特に、JIS Z8803に準拠して行うことができる。
【0037】
液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、160〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0038】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0039】
カラーフィルター用インク中における液性媒体の含有率は、50〜98wt%であるのが好ましく、55〜95wt%であるのがより好ましく、65〜93wt%であるのがさらに好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な着色濃度を確保することができる。
【0040】
<樹脂材料>
カラーフィルター用インクは、形成される着色部の基板に対する密着性を向上させる等の目的で、樹脂材料(バインダー樹脂)を含んでいる。
カラーフィルター用インクに用いることのできる樹脂材料としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含むことが好ましい。着色部の形成時においてこのような硬化性樹脂を硬化させることにより、形成された着色部は、硬質で耐久性に優れたものとなる。
【0041】
このような硬化性樹脂としては、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体W、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
【化21】

【0047】
【化22】

【0048】
【化23】

【0049】
重合体W、Zは、ともにカラーフィルター用インク中において、着色剤を均一に分布させ、カラーフィルター用インクの粘度を低く保つ機能を有する。特に、重合体W、Zは、顔料の周囲に存在して顔料の粒子同士の凝集を防止し、顔料の分散安定性を優れたものとして維持する。そして、重合体W、Zは、カラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際においても、カラーフィルター用インクの粘度の上昇を抑制することができる。
そして、カラーフィルターの製造時において、後述するような有機溶剤によってセル中のカラーフィルター用インクの表面付近にある樹脂材料が溶解した際に、カラーフィルター用インクの表面付近の粘度を低く保つことができ、セル中のカラーフィルター用インクの表面を平坦なものとすることができる。
【0050】
また、着色部の形成の過程において、重合体W、Zによってカラーフィルター用インク中に着色剤は均一に分布することができ、形成される着色部にも着色剤は均一に分布できるものとなる。特に、液性媒体が除去される条件下においても、カラーフィルター用インク中において顔料の粒子の分散安定性が保たれる。
以上より、このようなカラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、その表面がより平坦になり、かつ着色剤が均一に分布するものとなり、カラーフィルターはコントラスト比および明度に特に優れたものとなる。
【0051】
また、重合体W、Zは、着色剤(特に顔料)をインク中において均一に分布(分散)させることができるため、インクを吐出部(ノズル)から吐出する際において、吐出されるインクの液滴の量の均一性、吐出される液滴の着弾精度等(吐出安定性ともいう)、カラーフィルター用インクの長期保存性を長期にわたって優れたものとすることができる。
また、重合体W、Zは、エポキシ基を有し、硬化性樹脂であるが、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)を有している。このような特性を有することにより、カラーフィルター用インクの保存時等において、重合体W、Zが不本意に硬化反応を起こすことが防止され、カラーフィルター用インクは、長期にわたって粘度等の物性の変化が少ないものとなる。この結果、長期にわたってカラーフィルター用インクの吐出安定性が優れたものとなる。一方で、カラーフィルター用インクを所定の温度以上に加熱することにより、重合体W、Zは素早く硬化反応を起こし、カラーフィルター用インクが硬化する。
【0052】
また、カラーフィルター用インクは重合体W、Zを含むことにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。
また、重合体W、Zは、上述したように顔料の分散安定性を向上させることに加え、機械的な力に対して極めて優れた安定性を有している。このため、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体の微分散時に重合体W、Zを好適に用いることができる。これについては後述する。
【0053】
以下、本発明のカラーフィルター用インクに用いることができる樹脂材料の各成分について詳述する。
[重合体W]
重合体Wは、上記式(1)で表される単量体成分w1と上記式(2)で表される単量体成分w2と上記式(3)で表される単量体成分w3と上記式(4)で表される単量体成分w4とを含むものである。重合体Wとしては、例えば、下記式(17)で表されるものがある。
【0054】
【化24】

【0055】
重合体Wは、上述したような重合体Z、Wを含むことによる共通した機能に加え、重合体Wを含むことによる以下のような特有の機能を有する。
まず、カラーフィルター用インクは重合体Wを含むことにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。このため、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
なお、重合体Wは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Wが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分w1、w2、w3およびw4を含有するものである。
【0056】
(単量体成分w1)
重合体Wは、上記式(1)で表される単量体成分w1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分w1は、重合体Wにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Wの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Wの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0057】
重合体W中における単量体成分w1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、25〜75wt%であるのが好ましく、40〜60wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分w2、w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w1を含有しているのが好ましい。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分w1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。以下、重合体Wの他の各単量体の含有率、重合体Z、X、Yの各単量体の含有率についても同様とする。
【0058】
(単量体成分w2)
重合体Wは、上記式(2)で表される単量体成分W2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、カラーフィルター用インクが顔料に加え分散剤を含むものである場合においては、単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性のみならず、分散剤の分散安定性も特に優れたものとすることができる。その結果、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0059】
重合体W中における単量体成分w2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜25wt%であるのが好ましく、5〜15wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1および後に詳述する単量体成分w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w2を含有しているのが好ましい。
【0060】
(単量体成分w3)
重合体Wは、上記式(3)で表される単量体成分w3を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
【0061】
また、単量体成分w3は、重合体Wにおいて、上述した単量体成分w1等と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、第2の加熱工程で施す高い温度での熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、高い温度の加熱環境下で行う第2の加熱においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。
【0062】
重合体W中における単量体成分w3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5〜50wt%であるのが好ましく、10〜40wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2および後に詳述する単量体成分w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w3を含有しているのが好ましい。
【0063】
(単量体成分w4)
重合体Wは、上記式(4)で表される単量体成分w4を単量体成分として含有してなるものである。
重合体Wが単量体成分w4を含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。
【0064】
また、単量体成分w4を単量体成分として含有することにより、樹脂材料全体としての疎水性を好適に調整することができ、樹脂材料を構成する各重合体の親和性、相溶性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0065】
重合体W中における単量体成分w4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、3〜40wt%であるのが好ましく、5〜30wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2、w3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w4を含有しているのが好ましい。
【0066】
なお、重合体Wは、上述した単量体成分w1、w2、w3、w4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Wが、その他の単量体成分(単量体成分w1、w2、w3、w4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体W中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0067】
重合体Wの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Wの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0068】
[重合体Z]
重合体Zは、上記式(5)で表される単量体成分z1と上記式(6)で表される単量体成分z2と上記式(7)で表される単量体成分z3とを含むものである。重合体Zとしては、例えば、下記式(18)で表されるものがある。
【0069】
【化25】

【0070】
重合体Zは、上述したような重合体Z、Wを含むことによる共通した機能に加え、重合体Zを含むことによる以下のような特有の機能を有する。
前述したように、重合体Zは、硬化性樹脂であり、後述する着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の硬化に寄与する成分であるが、形成される着色部に適度な柔軟性を与え、着色部が設けられる基板等に変形(例えば、熱膨張、熱収縮等)が生じた場合であっても、その変形に追従し、基板等に対する着色部の密着性を保持させる機能を有している。これにより、例えば、製造されるカラーフィルターが画像表示に伴う急激な温度変化に繰り返しさらされた場合においても良好な密着性を保持することができ、光漏れ(白抜け、輝点)等の問題が発生するのをより確実に防止することができる。すなわち、カラーフィルターの耐久性が特に優れたものとなり、長期にわたって優れた明度およびコントラスト比が維持される。
なお、重合体Zは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Zが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分z1、z2およびz3を含有するものである。
【0071】
(単量体成分z1)
重合体Zは、上記式(5)で表される単量体成分z1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)をより確実に防止しつつ、高い温度下で加熱を行う第2の加熱においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分z1は、重合体Zにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Zの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Zの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとすることができる。
【0072】
重合体Z中における単量体成分z1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、50〜95wt%であるのが好ましく、60〜85wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分z2、z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z1を含有しているのが好ましい。
【0073】
(単量体成分z2)
重合体Zは、上記式(6)で表される単量体成分Z2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりをより良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部をより好適に形成することができる。また、カラーフィルター用インクが顔料に加え分散剤を含むものである場合においては、単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性のみならず、分散剤の分散安定性も特に優れたものとすることができる。その結果、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0074】
また、カラーフィルター用インクが重合体W、Zの両方を含む場合、重合体Zが単量体成分z2を含有することにより、重合体Wと重合体Zとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0075】
重合体Z中における単量体成分z2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、3〜35wt%であるのが好ましく、10〜25wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1および後に詳述する単量体成分z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z2を含有しているのが好ましい。
【0076】
(単量体成分z3)
重合体Zは、上記式(7)で表される単量体成分z3を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z3は、前述した単量体成分w1等と同様に、後述する着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の硬化に寄与する成分であるが、単量体成分w1等が、形成される着色部の硬度を高いものとする機能を有しているのに対し、単量体成分z3は、形成される着色部に適度な柔軟性を与え、着色部が設けられる基板等に変形(例えば、熱膨張、熱収縮等)が生じた場合であっても、その変形に追従し、基板等に対する着色部の密着性を保持させる機能を有している。
【0077】
また、単量体成分z3は、重合体(重合体Z)中において、上述した単量体成分w1等と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)では反応性が十分に低いのに対し、第2の加熱工程で施す熱処理のような高い温度の加熱環境下においては、十分な反応性を有するものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分z3を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることをより確実に防止することができる。
【0078】
重合体Z中における単量体成分z3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜30wt%であるのが好ましく、5〜20wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1、z2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z3を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Zは、上述した単量体成分z1、z2、z3以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0079】
重合体Zが、その他の単量体成分(単量体成分z1、z2、z3以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Z中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Zの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
【0080】
また、重合体Zの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
また、樹脂材料は、重合体W、重合体Z以外の硬化性樹脂をさらに含むものであってもよい。
このような硬化性樹脂としては、例えば、以下に述べるような重合体X、重合体Yが挙げられる。重合体X、Yは、主に着色部を硬質なものとして形成することに寄与する。カラーフィルター用インクが重合体W、Zとともに重合体X、Yを含むことにより、形成される着色部はより硬質なものとなり、製造されるカラーフィルターの耐久性が特に優れたものとなる。すなわち、より長期にわたってカラーフィルターの明度およびコントラスト比が優れたものとして維持される。また、重合体X、Yは、上述したような重合体W、Zとの親和性に優れ、これらを混合した場合であっても、カラーフィルター用インクの粘度は低いものとなる。さらに、カラーフィルター用インクに重合体X、Yを比較的多量に含ませた場合であっても、カラーフィルター用インクの粘度は低いものとして維持される。このため、カラーフィルター用インクは液滴の吐出安定性に優れたものとなる。
【0081】
[重合体X]
重合体Xは、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含むものである。重合体Xとしては、例えば、下記式(19)で表されるものがある。
【0082】
【化26】

【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
【化30】

【0087】
このような重合体Xを含むことにより、カラーフィルター用インクに含まれる樹脂材料を構成する各重合体成分の親和性(樹脂材料全体としての親和性)を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の透明性を非常に高いものとすることができる。このようなことから、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラストの低下等をより確実に防止することができる。また、重合体Xを含むことにより、樹脂材料全体としての硬化反応のスイッチング特性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。このようなことから、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
なお、重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x2、x3およびx4を含有するものである。
【0088】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(8)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0089】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0090】
(単量体成分x2)
重合体Xは、上記式(9)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分x1や後に詳述する単量体成分x3とともに含有すること)により、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での第2の加熱工程において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりをより良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、重合体Yと重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとすることができる。
【0091】
重合体X中における単量体成分x2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5〜60wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0092】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(10)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。これにより、加熱工程の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0093】
また、単量体成分x3は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、第2の加熱工程で施す高い温度での熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0094】
また、単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、重合体Xと、他の重合体W、Z、Yとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0095】
重合体X中における単量体成分x3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2および後に詳述する単量体成分x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのが好ましい。
【0096】
(単量体成分x4)
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇することをより確実に防止することができる。
【0097】
また、単量体成分x4は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、第2の加熱工程で施す熱処理のような加熱環境下における反応性をさらに高めることができる。これにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。
また、単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0098】
重合体X中における単量体成分x4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x4を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Xは、上述した単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0099】
重合体Xが、その他の単量体成分(単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体X中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Xの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0100】
[重合体Y]
重合体Yは、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含むものである。重合体Yとしては、例えば、下記式(20)で表されるものがある。重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1およびy2を含有するものである。
【0101】
【化31】

【0102】
【化32】

【0103】
【化33】

【0104】
(単量体成分y1)
重合体Yは、上記式(12)で表される単量体成分y1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0105】
また、重合体Yが単量体成分y1を含有することにより、重合体Y中における単量体成分y2の反応性が必要以上に高くなることを防止することができる。その結果、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分y1を含有することにより、硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。
また、単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0106】
重合体Y中における単量体成分y1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分y2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y1を含有しているのが好ましい。
【0107】
(単量体成分y2)
重合体Yは、上記式(13)で表される単量体成分y2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分y1とともに含有すること)により、加熱環境下で行う第2の加熱工程においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。特に、高い温度で加熱を行う第2の加熱工程において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりを良好なものとすることができるとともに、前述した重合体Wを、硬化反応に好適に関与させることができ、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分y2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0108】
また、重合体Yが単量体成分y2を含有することにより、後に詳述する重合体Wとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0109】
重合体Y中における単量体成分y2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10〜70wt%であるのが好ましく、20〜60wt%であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分y1の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y2を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Yは、上述した単量体成分y1、y2以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0110】
重合体Yが、その他の単量体成分(単量体成分y1、y2以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Y中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Yの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
【0111】
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
なお、上述した各重合体は、最終的に上述したような構造(各単量体成分に対応する各部分構造)を有していればよく、上述した各単量体成分そのものを用いて合成されたものであってもよいし、上述した単量体成分とは異なる成分(前駆体、誘導体等)を用いて合成されたものであってもよい。
【0112】
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5〜18wt%であるのが好ましく、1〜15wt%であるのがより好ましく、3〜10wt%であるのがさらに好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率をC[wt%]、カラーフィルター用インク中における顔料の含有率をC[wt%]としたとき、0.2≦C/C≦9.0の関係を満足するのが好ましく、0.3≦C/C≦5.0の関係を満足するのがより好ましく、0.4≦C/C≦3.5の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、製造されるカラーフィルターの着色部を十分に平坦にしつつ、着色部の着色濃度を十分に高いものとすることができる。
なお、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料は、上述した以外の重合体(例えば、熱可塑性の重合体や上述した重合体W、Z、X、Y以外の硬化性の重合体)を含むものであってもよい。
【0113】
<平坦化剤>
カラーフィルター用インクは、着色部を平坦化する平坦化剤を含むことが好ましい。平坦化剤は、着色部の形成時において、着色部を平坦化させるものである。これにより、着色部は、より容易かつ確実に上述した関係を満足することができる。
カラーフィルター用インクに用いることのできる平坦化剤としては、カラーフィルター製造時に着色部を平坦化させる機能を有するものであればよいが、例えば、多価アルコール、レベリング剤が挙げられる。
【0114】
[多価アルコール]
多価アルコールは、着色部の形成時において、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を低下させる機能を有する。
上述したように、セル内に付与されたカラーフィルター用インクから液性媒体を除去するが、このような場合において、液性媒体の除去に伴ってセル中のカラーフィルター用インク中における着色剤や樹脂材料等の固形分濃度が上昇する。そして、液性媒体の除去に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇しやすい。カラーフィルター用インクは、多価アルコールを含むことにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性の上昇が抑制される。したがって、カラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造時において、後述するような溶剤がカラーフィルター用インクの表面付近の樹脂材料を溶解した際に、カラーフィルター用インクの表面付近にある部分は容易に流動化し、重力等の力によって平坦化する。この結果、カラーフィルター用インクは、平坦な状態で固化し、形成される着色部はより平坦なものとなる。
また、このような多価アルコールは、着色部を形成する際に加熱することにより、分解または揮発してカラーフィルター用インクから除去される。このため、形成された着色部には多価アルコールが残存しにくく、インクに含まれる多価アルコールによる着色部の色度、明度等の変化が極めて少ないものである。
【0115】
カラーフィルター用インクに用いることのできる多価アルコールとしては、上述したようにカラーフィルター用インクのチキソトロピック性を低下させるものであればよいが、例えば、ジオール化合物のオリゴマーが使用でき、具体的には、グリコール類のオリゴマー等を用いることができる。このような化合物は、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を容易に下げることができる。特に、平坦化剤がグリコール類のオリゴマーである場合、上述したような効果はより顕著なものとなる。
【0116】
グリコール類のオリゴマーを構成するグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール等のプロパンジオール、各種ブタンジオール、各種ペンタンジオール、各種ヘキサンジオール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組みあわて用いることができる。これらのうち、エチレングリコールまたは、1,2−プロパンジオールをグリコール類として用いることが好ましい。また、エチレングリコールと1,2−プロパンジオールとが混合して縮合したグリコール類のオリゴマーを用いてもよいし、エチレングリコールのオリゴマーと1,2−プロパンジオールのオリゴマーとを混合して用いてもよい。
【0117】
また、多価アルコールは、多価アルコールとして、グリコール類のオリゴマーを用いる場合、末端の水酸基は、置換されていないことが好ましい。これにより、インクのチキソトロピック性をより低下させることができる。また、カラーフィルター用インクの後述するような基板(特にガラス基板)への親和性が優れたものとなり、カラーフィルター用インクは、セル中に好適に濡れ広がることができ、より容易に上述したような関係を満足する着色部を形成することができる。
【0118】
多価アルコールがオリゴマーである場合、多価アルコールの重合度は、3〜40であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させることができる。
また、多価アルコールの分子量は150〜2000であることが好ましく、180〜1000であることがより好ましく、180〜500であることがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させることができる。
【0119】
また、多価アルコールは、25℃、1atmの雰囲気下において、液体であることが好ましい。このように、多価アルコールが液体であることにより、カラーフィルター用インク中に均一に混合することができるとともに、液性媒体除去時におけるカラーフィルター用インクの固形分を相対的に少ないものとすることができる。このため、液性媒体除去時におけるインクのチキソトロピック性の上昇をより確実に抑制することができる。
【0120】
また、多価アルコールは、上述したような雰囲気下で液体である場合、回転式粘度計を用いて25℃、60rpmの条件で測定した粘度η60[mPa・s]は、40〜400mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・sであることがより好ましい。このように比較的粘度の高い液体を用いることにより、着色部の形成時において、セル中のカラーフィルター用インクは、セル内での対流が抑制される。
【0121】
また、カラーフィルター用インク中における多価アルコールの含有量は、0.3〜15.0wt%であることが好ましく、0.4〜13.0wt%であることがより好ましく、0.5〜6.0wt%であることがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させつつ、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0122】
なお、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性の指標としては、例えば、回転式のE型粘度計を用いて2つの異なる回転数での粘度を測定した場合の、得られた粘度の比(チキソ指数)で表わすことができる。具体的には、25℃のカラーフィルター用インクを回転数6rpmの条件で測定した粘度をη[mPa・s]、25℃のカラーフィルター用インクを回転数60rpmの条件で測定した粘度をη60[mPa・s]としたとき、カラーフィルター用インクのチキソ指数は、η/η60とすることができる。なお、η/η60が大きいほど、チキソトロピック性が高いものである。
また、カラーフィルター用インクのチキソ指数(η/η60)は、具体的には、1.06以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましく、1.03以下であることがさらに好ましく上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0123】
[レベリング剤]
レベリング剤は、インクの表面張力を低下させることにより、着色部を平坦化させる機能を有する。詳しく説明すると、カラーフィルター用インク中にレベリング剤が含まれることにより、セル中に付与されたカラーフィルター用インクは、その最表層にレベリング剤が集中する。このカラーフィルター用インクの最表層に集まってレベリング剤によって、カラーフィルター用インクの最表層は、表面張力が低下し、最表層に生じた凹凸は、平坦になる。このため、着色部は、平坦で、均一な厚さとなる。また、インクがレベリング剤を有することにより、長期にわたって低粘度で流動性を維持する重合体W、Zの効果と相乗的に作用することができる。
【0124】
このようなレベリング剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を用いることができる。レベリング剤の具体例としては、メガファックF−443,F−444,F−445,F−446,F−470,F−471,F−472SF,F−474,F−475,F−477,F−478,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−484,F−486,F−487,F−489,R−30(以上、大日本インキ化学工業(株)社製);ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム(株)製);サーフィノール104、サーフィノール82、サーフィノール2502、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノール61、サーフィノール2502、サーフィノール82、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF37、サーフィノールDF58、サーフィノールDF75、サーフィノールDF210、サーフィノールCT111、サーフィノールCT121、サーフィノールCT131、サーフィノールCT136、サーフィノールCT151、サーフィノールTG、サーフィノールGA、サーフィノールPSA−336、ダイノール604、エンバイロジェムAD−01、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−004、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4036、オルフィンEXP.4051F、オルフィンSPC、オルフィンAF−103、オルフィンAF−104、オルフィンAK−02、オルフィンSK−14、オルフィンAE−3、オルフィンPD−003、オルフィンPD−201、オルフィンPD−202、オルフィンPD−301、オルフィンB、オルフィンP、オルフィンY、オルフィンA、オルフィンSTG、オルフィンSPC(以上、日信化学工業(株)社製);フォスファノールML−200、フォスファノールML−220、フォスファノールRD−510Y、フォスファノールRS−410、フォスファノールRS−610、フォスファノールRS−710、フォスファノールRL−210、フォスファノールRL−310、フォスファノールRB−410、フォスファノールRD−720N(以上、東邦化学工業(株)社製);Lanco Flow L、Lanco Flow U、SOLSPERSE20000(以上、Lubrizol Deutschland GmbH社製);フタージェント100、フタージェント100C、フタージェント110、フタージェント140A、フタージェント150、フタージェント150CH、フタージェントA−K、フタージェント501、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント222F、FTX−218、フタージェント300、フタージェント310、フタージェント400SW、フタージェント251、FTX−212M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C(以上、(株)ネオス社製);サーフロンS−111n、サーフロンS−113、サーフロンS−121、サーフロンS−131、サーフロンS−132、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−381、サーフロンS−383、サーフロンS−393、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40、サーフロンSA−100(以上、AGCセイミケミカル(株)社製);ユニダインDS−401、ユニダインDS−403、ユニダインNS−1602、ユニダインNS−1603、ユニダインNS−1605(以上、日進化成(株)社製)等が挙げられる。このような界面活性剤の中でも、ノニオン系の界面活性剤を用いるのが好ましい。これにより、形成される着色部の表面がより平坦化される。
【0125】
このようなノニオン系の界面活性剤の具体的な例としては、商品名として、メガファックF−443,F−444,F−445,F−446,F−470,F−471,F−472SF,F−474,F−475,F−477,F−478,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−484,F−486,F−487,F−489,R−30(以上、大日本インキ化学工業(株)社製);サーフィノール104、同左82、同左2502、同左420、同左440、同左465、同左485(以上、日信化学工業(株)社製);ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム(株)社製);フタージェント250、フタージェント25、フタージェント222F、FTX−218、フタージェント251、FTX−212M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C(以上、(株)ネオス社製)等が挙げられる。この中でも、大日本インキ化学工業(株)社製のメガファックF−444,F−484,F−479,F−477,F−489,F−487が特に好ましい。これにより、形成される着色部の表面はより確実に平坦化され、結果として、各部位での色むら、濃度むらがより確実に押さえられたカラーフィルターを得ることができる。また、このようなカラーフィルターを備えた画像表示装置では、表示部を見る角度によって、例えば、表示画像が暗くなるといった不具合をより確実に防止することができる。
また、カラーフィルター用インク中におけるレベリング剤の含有量は、0.005〜5.0wt%であることが好ましく、0.01〜2.0wt%であることがより好ましい。これにより、形成される着色部は、より平坦で均一な厚さとなる。
【0126】
<分散剤>
カラーフィルター用インクには、分散剤が含まれていてもよい。これにより、着色剤として顔料が含まれる場合、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散性を向上させることができ、インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。特に、重合体Wまたは重合体Zと分散剤とを併用することにより、これらの効果が相乗的に作用し合い、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。
【0127】
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、ヒノアクトKF−1000、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
特に、カラーフィルターインクは、分散剤として、所定の酸価を有する分散剤(以下、酸価分散剤とも言う)と、所定のアミン価を有する分散剤(以下、アミン価分散剤とも言う)とを含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、カラーフィルター用インクの粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立される。その結果、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0129】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)、ヒノアクトKF−1000(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0130】
また、アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
上記のような分散剤(酸価分散剤およびアミン価分散剤)を用いることにより、形成される着色部の色味に悪影響を与えることなく、インク中における顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
【0131】
酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、アミン価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
また、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零であるのが好ましい。
【0132】
アミン価分散剤と酸価分散剤とを併用する場合、アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、25〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、酸価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。なお、分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0133】
また、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零であるのが好ましい。
また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、カラーフィルター用インク中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、当該カラーフィルター用インク中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
また、分散剤としては、上記以外の分散剤を用いてもよい。
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、0.5〜8wt%であるのがより好ましい。
【0134】
<その他の成分>
本発明のカラーフィルター用インクは、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、各種架橋剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等のオニウム塩等の熱酸発生剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等の光酸発生剤;各種重合開始剤;酸架橋剤;増感剤;光安定剤;発光材料;接着性改良剤;各種重合促進剤;各種光安定化剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤等が挙げられる。
【0135】
架橋剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、多官能エポキシモノマー、多官能アクリルモノマー、多官能ビニルエーテルモノマー、多官能オキセタンモノマー等を用いることができる。多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイト等のエステル基含有酸無水物が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸無水物が好ましい。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。また、多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸が好ましい。また、多官能エポキシモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製、商品名セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードGT401、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードPB3600、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。また、多官能アクリルモノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートトリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能ビニルエーテルモノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能オキセタンモノマーの具体例としては、キシリレンジオキセタン、ビフェニル型オキセタン、ノボラック型オキセタン等が挙げられる。
【0136】
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、前記の中でも、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。熱酸発生剤のより具体的な例としては、商品名として、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業社製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、CP−66、CP−77(旭電化工業社製品、商品名)、FC−520(3M社製品、商品名)等が挙げられる。
【0137】
光酸発生剤は、光により酸を発生する成分であり、より具体的な例としては、商品名として、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製、商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー(株)社製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達社製品、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学社製、商品名)、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)等が挙げられる。
【0138】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4〜12mPa・sであるのが好ましく、5〜11mPa・sであるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0139】
≪カラーフィルター用インクの製造方法≫
次に、上述したようなカラーフィルター用インクの製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態では、上述したようなカラーフィルター用インクの製造方法の一例として、着色剤として顔料を用い、樹脂材料として重合体Wおよび重合体Zのうち少なくとも一方を含む場合について説明する。
本実施形態の製造方法は、重合体Wおよび重合体Zのうち少なくとも一方が分散樹脂として溶剤に溶解した分散樹脂溶液を調製する分散樹脂溶液調製工程と、分散樹脂溶液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行い、顔料分散体を得る微分散工程と、顔料分散体と樹脂材料等とを混合する混合工程とを有する。
【0140】
<分散樹脂溶液調製工程>
分散樹脂溶液調製工程においては、重合体Wおよび重合体Zのうち少なくとも一方が分散樹脂として溶剤に溶解した分散樹脂溶液を調製する。このように、後述する顔料を微分散させる工程(微分散工程)に先立って、顔料と混合する液体(分散樹脂溶液)を調整することにより、原料として用いられる顔料粒子の凝集体を容易かつ確実に微粒子化(解砕)することができるとともに、微粒子化した顔料粒子の再度の凝集を防止することができる。これは、重合体W、Zが顔料粒子の周囲に存在することにより、顔料粒子同士の接触が防止され、顔料粒子同士の凝集が妨げられたものと考えられる。また、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0141】
また、本明細書において、分散樹脂とは、顔料の凝集体を微分散する際に顔料の凝集体と混合して用いて、微分散の効率を向上させるために用いる樹脂をいう。また、分散樹脂は、微分散の効率を向上させるだけでなく、一旦分散した顔料の粒子の凝集を防止することもできる。また、製造されたインクにおいては、分散樹脂は、他の樹脂とともにバインダー樹脂として機能する。
【0142】
また、本工程においては、分散剤を用いるのが好ましい。これにより、重合体W、Zと分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。また、本工程において分散剤を用いる場合、(重合体W、Zと溶剤との混合に先立って、または、重合体W、Zと溶剤との混合時に、)分散剤と溶剤とを含む混合物を攪拌する(分散剤を予備分散する)のが好ましい。これにより、得られる重合体W溶液中において、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができ、分散剤の機能をより効果的に発揮させることができる。ところで、上述した酸価分散剤およびアミン価分散剤は、本来、互いに電気的に引き付け合い易いという性質を有しているが、本実施形態のように、顔料の微分散(微分散工程)に先立って、分散剤を予備分散することにより、分散剤として酸価分散剤およびアミン価分散剤を用いた場合であっても、酸価分散剤およびアミン価分散剤を、会合状態を十分に解いた状態で、顔料粒子の表面に均一かつ安定的に付着させることができ、分散剤同士の凝集、顔料粒子同士の凝集等をより確実に防止することができ、顔料の分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0143】
本工程で調製する分散樹脂溶液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤を含む場合は、その含有率の総和)は、特に限定されないが、5〜30wt%であるのが好ましく、6〜25wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散樹脂溶液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、40〜80wt%であるのが好ましく、53〜75wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。なお、溶剤としては、目的とするカラーフィルター用インクを構成する液性媒体と同一の組成を有するものを用いてもよいし、異なる組成のものを用いてもよい。本工程で、溶剤として、目的とするカラーフィルター用インクを構成する液性媒体とは異なる組成を有するものを用いた場合、例えば、後の工程で、所定の液体(溶剤)で希釈したり、減圧処理、加熱処理等を伴う液体(溶剤)の置換を行ったりすることにより、最終的に得られるカラーフィルター用インクにおいて、所望の組成を有する液性媒体とすることができる。
【0144】
また、分散樹脂溶液中には、重合体W、Z以外の樹脂材料が含まれるものであってもよい。例えば、分散樹脂溶液は、熱可塑性樹脂等の他の樹脂材料を含むものであってもよい。
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、分散樹脂溶液を得ることができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0145】
攪拌機を用いた攪拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体W、Z、分散剤等の熱等による劣化、変性等をより確実に防止することができる。
【0146】
<微分散工程>
次に、上記工程で得られた分散樹脂溶液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
上記のように、本工程で用いられる分散樹脂溶液は重合体Wまたは重合体Zのうち少なくとも一方を含むものであるため、顔料の微粒子化(解砕)を効率よく行うことができ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。これは、上述したように本工程において、重合体W、Zが顔料粒子の周囲に存在することにより、顔料粒子同士の接触が防止され、顔料の微粒子化(解砕)を促進するとともに、微粒子化した顔料粒子が再凝集すること防止するためであると考えられる。
【0147】
ところで、上述したように重合体W、Zは、硬化性樹脂である。重合体W、Zは、機械的な力に対しては安定な化合物である。このため、本工程において、分散樹脂として重合体W、Zを好適に用いることができる。
また、分散樹脂として熱可塑性樹脂等の硬化反応を起こさない樹脂を用いることも考えられるが、このような樹脂を用いた場合、製造されるカラーフィルター用インクの粘度が高いものとなりやすく、カラーフィルター用インクの粘度が高い場合、着色部の形成時の液性媒体の除去時において比較的早い段階でカラーフィルター用インクの流動性が失われやすい。また、最終的にカラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の硬度、耐薬品性、耐溶剤性が低く、カラーフィルターの耐久性が劣るものとなりやすい。これに対し、本実施形態では、硬化性樹脂である重合体W、Zを分散樹脂として用いることにより、カラーフィルター用インクに含まれる硬化性樹脂以外の樹脂を減らすことができるため、上記の問題を解決でき、最終的にカラーフィルター用インクを用いて形成されるカラーフィルターの耐久性をより優れたものとすることができる。
【0148】
また、一般の硬化性樹脂を分散樹脂として用いると、顔料の分散時において硬化反応が始まりやすく、増粘してインクを製造することが困難となる。
また、本実施形態では、顔料を微分散させる工程(微分散工程)において無機ビーズを多段で添加する。微分散工程において、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率を特に優れたものとすることができ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子を十分に小さいものとすることができる。特に、酸価分散剤およびアミン価分散剤を併用する場合においては、このような材料を用いることによる効果と、重合体W溶液調製工程および多段での微分散工程を有する方法を用いることによる効果とが、相乗的に作用し合い、最終的に得られるカラーフィルター用インクは、顔料の分散安定性、および、液滴の吐出安定性が、非常に優れたものとなり、非常に優れたコントラストのカラーフィルターの製造に用いることができるもののとなる。
【0149】
本工程は、無機ビーズを多段で添加することにより行うものであればよく、3段以上に分けて無機ビーズを添加するものであってもよいが、無機ビーズを2段で添加するのが好ましい。これにより、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0150】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0151】
[第1の処理]
本工程では、まず、前述した重合体W溶液調製工程で調製した分散樹脂溶液に顔料を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。
第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。これにより、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
【0152】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましく、0.5〜1.2mmであるのがさらに好ましい。
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0153】
分散樹脂溶液に添加する顔料の使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
第1の処理は、顔料、第1の無機ビーズを重合体W溶液に添加した状態で、各種攪拌機を用いて攪拌することにより行うことができる。
【0154】
第1の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、第1の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、重合体W、Z、分散剤等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0155】
[第2の処理]
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。
第2の処理は第1の無機ビーズを含む状態で行うものであってもよいが、第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0156】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0157】
第2の処理は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
第2の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
【0158】
また、第2の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、分散剤等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0159】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。言い換えると、n段目の処理で用いる無機ビーズ(第nの無機ビーズ)の平均粒径は、(n−1)段目の処理で用いる無機ビーズ(第(n−1)の無機ビーズ)の平均粒径よりも小さいものであるのが好ましい。
なお、微分散工程(例えば、第1の処理、第2の処理)においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0160】
<混合工程>
上記のような微分散工程で得られた顔料分散体を、平坦化剤、追加の樹脂材料等のカラーフィルター用インクに用いる材料と混合する(混合工程)。これにより、カラーフィルター用インクが得られる。本工程では、例えば、平坦化剤、重合体X、Y等の硬化性樹脂を顔料分散体と混合することができる。また、上述したような重合体W、Z、分散剤等の材料をさらに追加して顔料分散体と混合するものであってもよい。
【0161】
本工程は、第2の処理で用いた第2の無機ビーズを除去した状態で行うのが好ましい。第2の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
本工程は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0162】
攪拌機を用いた攪拌処理時間(本工程の処理時間)は、特に限定されないが、1〜60分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
【0163】
なお、本工程では、前記工程で用いた溶剤とは異なる組成の液体を添加してもよい。これにより、前述した分散樹脂溶液調製工程での重合体W、Zの溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。
また、本工程においては、顔料分散体とカラーフィルター用インクの材料との混合に先立って、または、顔料分散体とカラーフィルター用インクの材料との混合の後に、前記工程で用いた溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、分散樹脂溶液調製工程、微分散工程での溶剤の組成と、最終的に得られるカラーフィルター用インクでの液性媒体の組成とを異なるものとすることができる。その結果、前述した分散樹脂溶液調製工程での重合体W、Zの溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。溶剤の除去は、例えば、対象とする液体を、減圧雰囲気下に置いたり、加熱したりすることにより行うことができる。
【0164】
《インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセットが用いられる。本発明においては、カラーフィルターの製造において、上述したようなカラーフィルター用インクが、少なくとも1種の着色部の形成に用いられることが好ましく、全色の着色部の形成に用いられるのがより好ましい。
【0165】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、本発明のカラーフィルターの製造方法について説明する。
図2は、本発明のカラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0166】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、基板を準備する基板準備工程と、カラーフィルター用インクを液滴として吐出し、前記基板上に前記カラーフィルター用インクを付与するインク付与工程と、基板を加熱して前記カラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、固形状の着色部を形成する加熱工程とを有する。また、加熱工程では、液性媒体の主成分とは異なる有機溶剤の存在雰囲気下で、カラーフィルター用インク中の液性媒体の除去を行うものであり、有機溶剤は、液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性が高いものである。
【0167】
上述したように、一般に、着色部の形成は、セル中に付与したカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、カラーフィルター用インクを固化させることによって行われる。このような場合、セル中のカラーフィルター用インク中における着色剤や後述するような樹脂材料等の固形分濃度が上昇し、液性媒体の除去に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇する。液性媒体を除去するにつれて、カラーフィルター用インクは、粘度が上昇することにより流動性を失い、固化する。
【0168】
また、インクを加熱によって乾燥する際には、セル中において、インクの外表面から液性媒体が揮発することによりインクが熱対流する現象(ベナードセル現象)が起こる。また、セル中のインク内で熱分布が生じることにより、インク中の液性媒体の揮発は、セルの特定の部分から起こりやすい。このため、セル中のカラーフィルター用インクは、均一な厚さとならず、凹凸ができやすい。そして、セル中のカラーフィルター用インクは、その外表面から粘度が上昇するため、外表面が凹凸を有した状態で固化しやすい。この結果、従来のインクジェット法によって製造されるカラーフィルターは、形成される着色部の表面に凹凸が多いものとなっていた。
【0169】
以上のように、形成される着色部が平坦にならない場合や、着色部内において着色部が均一に分布しない場合、製造されるカラーフィルターの明度やコントラスト比が高いものとならない問題があった。
これに対し、本発明では、液性媒体の主成分とは異なり、液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性の高い有機溶剤の雰囲気下において、カラーフィルター用インクの液性媒体の除去を行う。
【0170】
これにより、カラーフィルター用インクの外表面付近にある樹脂材料に対し雰囲気中にある有機溶剤が取り込まれ、当該有機溶剤は樹脂材料を溶解する。この結果、カラーフィルター用インクの外表面付近は、低粘度化して流動性が高いものとなる。このため、カラーフィルター用インクの外表面付近が長期にわたって高い流動性を有することができ、この結果、カラーフィルター用インクの外表面付近は、重力、表面張力等の力によって平坦なものとなった状態で固化することができる。
また、本発明では、有機溶剤は、液性媒体の主成分とは異なる成分を用いる。このように、液性媒体の主成分とは異なる成分を有機溶剤として用いることにより、カラーフィルター用インクからの液性媒体の揮発を円滑に行いつつ、カラーフィルター用インクの外表面付近に有機溶剤を取り込ませることができる。
【0171】
また、本発明では、有機溶剤は、液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性が高いものである。これにより、液性媒体の大部分が揮発した際においても、有機溶剤はカラーフィルター用インクの外表面付近に付着し、樹脂材料を好適に溶解することができる。これに対し、樹脂材料の有機溶剤への溶解性が液性媒体の主成分への溶解性よりも低いものであると、液性媒体の大部分が揮発した際において、有機溶剤はカラーフィルター用インクに付着しても樹脂材料を好適に溶解することができない。このため、カラーフィルター用インクの外表面付近の粘度を低下させることができず、カラーフィルター用インクの外表面付近に生じた凹凸を平坦なものとすることができない。
【0172】
図2に示すように、本実施形態では、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式によりカラーフィルター用インク2を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(1d)と、基板11を加熱することによりカラーフィルター用インク2から液性媒体を除去し、固形状の着色部12とする加熱工程(1e)とを有している。なお、本実施形態では、加熱工程は、比較的穏やかな条件で基板11の加熱を行い、液性媒体を除去する第1の加熱工程と、第1の加熱工程よりも高い温度で基板11の加熱を行い着色部12を形成する第2の加熱工程とを有する。
【0173】
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0174】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0175】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0176】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、カラーフィルター用インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のカラーフィルター用インク2を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上のカラーフィルター用インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0177】
カラーフィルター用インク2の吐出は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からカラーフィルター用インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにカラーフィルター用インク2が圧縮空気によって供給される。
【0178】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
【0179】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルター用インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、カラーフィルター用インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0180】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0181】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0182】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
【0183】
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図3の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0184】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはカラーフィルター用インク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がカラーフィルター用インク2を吐出するノズルとして機能する。
【0185】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、カラーフィルター用インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0186】
図に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給されるカラーフィルター用インク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0187】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からカラーフィルター用インク2が供給される。
【0188】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からカラーフィルター用インク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にカラーフィルター用インク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0189】
また、ノズルプレート128は、ステンレスで構成された基材と、基材を覆うようにして設けられ主としてシリカ化合物で構成されたシリカ膜と、シリカ膜を覆うようにして設けられ、フルオロアルキル化合物を含む撥液膜とによって構成されている。
また、シリカ膜は、撥液膜とステンレスの基材とを密着させる機能を有するとともに、ステンレスの基材を保護する機能を有する。
【0190】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるカラーフィルター用インク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
【0191】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するカラーフィルター用インク2を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的にカラーフィルター用インク2を付与することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のカラーフィルター用インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してカラーフィルター用インクを吐出する構成であってもよい。
【0192】
<加熱工程>
次に、基板11を加熱し、セル14内のカラーフィルター用インク2から液性媒体を除去することにより、固形状の着色部12とする(1e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
上述したように、本実施形態では、加熱工程は、比較的穏やかな条件で基板11の加熱を行い、液性媒体を除去する第1の加熱工程と、第1の加熱工程よりも高い温度で基板11の加熱を行い着色部12を形成する第2の加熱工程とを有している。このような場合、液性媒体を除去する第1の加熱工程において、有機溶剤雰囲気下で基板11の加熱を行う。
【0193】
[第1の加熱工程]
比較的穏やかな条件で基板11の加熱を行い、液性媒体の大部分を除去する。また、液性媒体を除去する第1の加熱工程において、有機溶剤を含む雰囲気下で基板11の加熱を行う。
第1の加熱処理にて比較的低温で基板11を加熱することにより、カラーフィルター用インク2の対流を防止しつつ、穏やかに液性媒体の大部分を除去することができる。また、有機溶剤雰囲気下で液性媒体の除去を行うことにより、カラーフィルター用インク2の外表面付近にある樹脂材料を有機溶剤により溶解させて、カラーフィルター用インク2の外表面付近の粘度を低いものとしながら、液性媒体の除去を行うことができる。すなわち、カラーフィルター用インク2中の液性媒体の大部分が除去された際にも、カラーフィルター用インク2の外表面付近の粘度は比較的低いものとなっており、重力、表面張力等の力により、カラーフィルター用インク2の表面は平坦なものとして固化する。
【0194】
また、特に、カラーフィルター用インク2に重合体W、Zが含まれている場合、カラーフィルター用インク2は粘度の上昇が好適に抑制される。このため、液性媒体の揮発量が少なくなりカラーフィルター用インク2の対流が抑制された状態において、カラーフィルター用インク2の表面をより平坦なものとすることができる。また、樹脂材料に硬化性樹脂が含まれる場合、比較的低温で加熱することにより、不本意な樹脂材料の硬化反応を防止することができる。
【0195】
有機溶剤の基板11の周辺への供給は、特に限定されないが、例えば、基板11が存在する系へ有機溶剤を噴霧して供給する方法、有機溶剤が液体状で存在する槽に泡状の気体を通過させて当該気体に有機溶剤を溶解させた後に、有機溶剤が混在する当該気体を基板11が存在する系へ供給する方法(バブリング装置による供給方法)、溶剤下に超音波振動子を設置し、超音波を発生させることにより溶剤を振動させて霧状の溶剤を散布させる方法(超音波加湿法)この中でも、噴霧して供給する方法、およびバブリング装置による供給方法は、雰囲気中にある有機溶剤の濃度を容易に調節することができるため、好ましい。
【0196】
バブリング装置に供給方法を用いる場合、有機溶剤は、加熱されていてもよい。これにより、有機溶剤をより効率よく基板11の周辺へ供給でき、基板11の周辺に存在する有機溶剤の量を容易に調節することができる。このような場合、有機溶剤の温度は、50〜150℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましい。
また、有機溶剤を通過させる気体の流量は、カラーフィルター周辺の空間の容量に従って決定することができるが、例えば、0.3〜5.0ml/minであることが好ましく、0.5〜3.0ml/minであることがより好ましい。
【0197】
また、供給される気体は特に限定されないが、空気、N、O、Ar、Ne、CO等の各種気体を用いることができる。この中でも、Nは、安定な物質であるとともに、大量に入手することが容易であるため、好ましい。
また、供給される気体は、脱水処理が施されていることが好ましい。
また、有機溶剤を噴霧して供給する方法を用いる場合、有機溶剤は、例えば、気体とともにノズルから噴霧することができる。これにより、より均一かつ微細な液滴を噴霧することができ、基板11の周辺に存在する有機溶剤の量を容易に調節することができる。有機溶剤とともに供給する気体としては、特には限定されず、例えば上述したような気体が挙げられる。
【0198】
また、このような場合、供給する気体の圧力は、2〜10kPaであることが好ましく、3〜7kPaであることがより好ましい。
また、基板11の周辺の雰囲気は、例えば、加熱前から有機溶剤を含む雰囲気下とし、これを維持するように上述したような方法で有機溶剤を供給してもよい。また、加熱前に有機溶剤を含む雰囲気とし、さらなる有機溶剤を供給しなくてもよい。
【0199】
また、上述したように、有機溶剤は、液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性が高いものである。
樹脂材料の有機溶剤への溶解性また、樹脂材料の液性媒体の主成分への溶解性の指標としては、例えば、有機溶剤または液性媒体に対する、樹脂材料の溶解度を用いることができる。溶解度は、ある固体(容質)が、一定の温度の100gの液体(溶媒)に溶解する限界重量(g)をいう。特に、本明細書では、溶解度としては、20℃、100gの液体(液性媒体、有機溶剤)に対する樹脂材料の溶解する限界の重量(g)をいう。
【0200】
上述したような溶解度について、20℃の有機溶剤:100gに対する樹脂材料の溶解度をSol(a)[g]、20℃の液性媒体:100gに対する樹脂材料の溶解度をSol(b)[g]としたとき、Sol(a)>Sol(b)であることが好ましく、Sol(a)−2.0>Sol(b)であることがより好ましく、Sol(a)−6.0>Sol(b)であることがさらに好ましい。これにより、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0201】
また、有機溶剤の20℃における粘度は、0.30〜4.0mPa・sであることが好ましく、0.40〜2.0mPa・sであることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク2の外表面付近の粘度をより低いものとすることができる。
また、有機溶剤の大気圧下における沸点は、50〜230℃であることが好ましく100〜170℃であることがより好ましい。これにより、形成される着色部12から有機溶剤をより確実に除去することができるとともに、好適にカラーフィルター用インク2の外表面に付着することができ、樹脂材料を溶解させることができる。
【0202】
本発明で用いることのできる有機溶剤としては、液性媒体の主成分と異なり、液性媒体の主成分よりも樹脂材料の溶解性が高いものであれば特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0203】
この中でも、有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセトン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンから選択されるものを用いることが好ましい。これにより、樹脂材料をより効率よく溶解させることができるとともに、カラーフィルター用インクの外表面付近をより確実に低粘度化させることができる。また、これらの有機溶剤は、比較的低沸点であり、最終的に得られる着色部12から確実に除去することができる。
【0204】
第1の加熱工程では、記液性媒体の除去時における雰囲気の前記有機溶媒の体積率は、0.01〜3.0v/v%であることが好ましく、0.05〜2.0v/v%であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク2の外表面に適量の有機溶剤を取り込ませることができる。
また、上述したような第1の加熱工程において、加熱された基板11の温度は、特に限定されないが、30〜150℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましい。これにより、基板11上でのカラーフィルター用インク2の対流を抑制しつつ、カラーフィルター用インク2から好適に液性媒体を除去できる。また、カラーフィルター用インク2に多価アルコールが含まれる場合、多価アルコールが揮発または分解することを防止することができ、カラーフィルター用インク2の流動性がより長期にわたって高いものして保たれる。また、樹脂材料に硬化性樹脂が含まれる場合、硬化性樹脂の硬化をより確実に防止することができる。
また、第1の加熱工程の時間は、特に限定されないが、3〜50分であることが好ましく、5〜40分であることがより好ましい。
【0205】
[第2の加熱工程]
次に、第1の加熱工程よりも高い温度で基板11の加熱を行い着色部12を形成する。このように、第2の加熱工程では、比較的高い温度で基板11を加熱することにより、第1の加熱処理では除去できなかった液性媒体を完全に除去することができる。また、樹脂材料に硬化性樹脂材料が含まれる場合、第1の加熱工程において表面が平坦な状態となったカラーフィルター用インク2を、樹脂材料(硬化性樹脂材料)を反応させて、効率よくその形状で硬化させることができる。また、カラーフィルター用インク2に多価アルコールが含まれている場合、多価アルコールを効率よく揮発または分解させて除去することができる。
【0206】
また、上述したような第2の処理において、加熱された基板11の温度は、特に限定されないが、120〜280℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。これにより、第1の加熱工程では除去できなかった液性媒体を完全に除去することができる。また、カラーフィルター用インク2に多価アルコールが含まれている場合、多価アルコールを効率よく揮発または分解させて除去することができる。また、本工程で、第1の処理において表面が平坦となったカラーフィルター用インク2を、効率よくその形状で硬化させることができる。
【0207】
また、第2の加熱工程の時間は、特に限定されないが、25〜150分であることが好ましく、30〜100分であることがより好ましい。
また、第2の加熱工程においては、例えば、活性エネルギー線の照射や、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く等の処理を行ってもよい。活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、硬化性樹脂材料の硬化反応を確実に進行させることができ、基板11等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。活性エネルギー線としては、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線、g線、i線、エキシマレーザー等を使用することができる。また、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置くことにより、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、液性媒体を確実に除去することができ、基板11、形成される着色部12等への悪影響の発生がより確実に防止される。
【0208】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インクおよび後述するようなカラーフィルターの製造方法を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したようなカラーフィルター用インク2を用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0209】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0210】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0211】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクを用いて形成されたものである。
着色部12は、上述したような製造方法によって形成されたものであるため、平坦なものとなっている。このため、カラーフィルター1は、明度およびコントラスト比に優れ、信頼性が高いものとなっている。
【0212】
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0213】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0214】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3.5μmであるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0215】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図7は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0216】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図中下側)から出射する。
【0217】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
【0218】
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0219】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0220】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0221】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0222】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0223】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、透過すじ、色むら、濃度むら等の問題を特に生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0224】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、硬化性樹脂材料を硬化させるもの、すなわち、着色部形成工程を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0225】
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、本発明のカラーフィルターにおいては、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
【0226】
また、前述した実施形態では、着色部が、光の三原色に対応する3種(3色)の着色部を備える場合について中心的に説明したが、着色部の種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、カラーフィルターは、4種以上の色の着色部を備えるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、着色部形成工程では、2段階の加熱処理を行うものとして説明したが、一度の加熱処理によって着色部を形成するものであってもよいし、一度の加熱処理において、加熱温度を変化させるものであってもよい。
【実施例】
【0227】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:180重量部を入れて、85℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(1)で表される単量体成分(化合物)w1:188重量部、上記式(2)で表される単量体成分(化合物)w2:34重量部、上記式(3)で表される単量体成分(化合物)w3:74重量部、上記式(4)で表される単量体成分(化合物)w4:74重量部、ラジカル開始剤としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:64重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:386重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分w1、w2、w3、w4を含み上記式(17)で表される重合体Wとしての重合体W1を得た。
【0228】
(合成例2〜8)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した7種の重合体(重合体W2〜W8)が得られた。
【0229】
(合成例9〜12)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体W’1〜W’4)が得られた。
【0230】
(合成例13)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:246重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(5)で表される単量体成分(化合物)z1:273重量部、上記式(6)で表される単量体成分(化合物)z2:36重量部、上記式(7)で表される単量体成分(化合物)z3:41重量部、ラジカル開始剤としての:39重量部をメトキシブチルアセテート:360重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。
その後、フラスコ内にグリシジルメタクリレート:26重量部、メトキノン:2重量部を加え、110℃で10時間反応させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分z1、z2、z3を含み上記式(18)で表される重合体Zとしての重合体Z1を得た。
【0231】
(合成例14〜18)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例13と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した5種の重合体(重合体Z2〜Z6)が得られた。
【0232】
(合成例19、20)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例13と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した2種の重合体(重合体Z’1、Z’2)が得られた。
【0233】
(合成例21)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(8)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(9)で表される単量体成分(化合物)x2:90重量部、上記式(10)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、上記式(11)で表される単量体成分(化合物)x4:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分x1、x2、x3、x4を含み上記式(19)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
【0234】
(合成例22〜25)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例21と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体X2〜X5)が得られた。
【0235】
(合成例26)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(12)で表される単量体成分(化合物)y1:200重量部、上記式(13)で表される単量体成分(化合物)y2:100重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分y1、y2を含み上記式(20)で表される重合体Yとしての重合体Y1を得た。
【0236】
(合成例27〜30)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例26と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体Y2〜Y5)が得られた。
【0237】
合成例1〜30での重合体の合成に用いた材料の種類、使用量(合成例1〜30で合成した重合体の組成)を表1にまとめて示した。なお、表中、「S」は溶媒(溶剤)のことを意味し、特に、「S1」はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのことを示し、「S2」は1,3−ブチレングリコールジアセテートのことを示し、「S3」は2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートのことを示し、「S4」はビス(2−ブトキシエチル)エーテルのことを示し、「S5」は3−エトキシプロピオン酸エチルのことを示す。また、表中には、各重合体の重量平均分子量Mwをあわせて示した。なお、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1〜3の範囲内であった。
【0238】
【表1】

【0239】
[2]カラーフィルター用インク(インクセット)の調製
(インクセット1)
酸価分散剤としてのディスパービック111と、アミン価分散剤としてのディスパービック166と、重合体W1と、溶剤(液性媒体)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌を行うことにより、分散樹脂溶液を得た(分散樹脂溶液調整工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0240】
次に、以下に述べるようにして、分散樹脂溶液調整工程で得られた分散樹脂溶液に、顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた分散樹脂溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントレッド177と上記式(14)で表される顔料誘導体との混合物と、C.I.ピグメントレッド254と上記式(15)で表される顔料誘導体との混合物と、上記式(16)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用いた。また、このとき、分散樹脂溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0241】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートで希釈した。
【0242】
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
次に、上記のようにして得られた顔料分散体に、重合体X1と、重合体Y1と、多価アルコールとしてのポリエチレングリコール#300(重量平均分子量:300)と、レべリング剤としてのメガファックF−444(大日本インキ化学工業(株)社製)とを加え、混合した(樹脂材料混合工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を得た。得られたRインクの顔料の含有率は、7.3wt%であった。
【0243】
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。Rインクを構成する顔料の平均粒径、Gインクを構成する顔料の平均粒径、Bインクを構成する顔料の平均粒径は、それぞれ、70nm、70nm、70nmであった。また、Gインクの顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58、上記式(16)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末を用い、最終的なGインク中の顔料の含有率を10.1wt%とした。また、Bインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、最終的なBインク中の顔料の含有率を4.9wt%とした。
【0244】
(インクセット2〜14)
カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表2、表3に示すように変更した以外は、前記インクセット1と同様にしてカラーフィルター用インク(インクセット)を調製した。
なお、上記各実施例および各比較例では、いずれも、重合体Z、Z’、W、W’を用いる場合には、これらを分散樹脂溶液調整工程で用い、重合体X、Yについては、混合工程で用いた。また、各重合体は、合成に用いた溶剤中に溶解させた溶液の状態で上記各実施例に使用した。なお、上記の各実施例、各比較例、および後述の表中の重合体の含有量、使用量は、溶液そのもののではなく、溶液中の各重合体の量を基にして記載した。
【0245】
前記各実施例および各比較例でのカラーフィルター用インクの構成成分の種類、含有量等を表3、表4にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177と式(14)で表される顔料誘導体との混合物「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(15)で表される顔料誘導体との混合物「PR254D」、式(16)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「SPD」、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、ディスパービック111(酸価:50KOHmg/g)を「DA1」、ディスパービック2095(酸価:13KOHmg/g)を「DA2」、ディスパービック9075(アミン価:12KOHmg/g)を「DA3」、ディスパービック166(アミン価:115KOHmg/g)を「DA4」、ポリエチレングリコール#300(平均重量分子量:300、粘度:70mPa・s)を「PEG1」、ポリエチレングリコール#400(平均重量分子量:400、粘度:90mPa・s)を「PEG2」、ポリエチレングリコール#200(平均重量分子量:200、粘度:50mPa・s)を「PEG3」、ポリエチレングリコール#600(平均重量分子量:600、粘度:135mPa・s)を「PEG4」、ポリプロピレングリコール#400(分子量:400、粘度:70mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG1」、ポリプロピレングリコール#1000(平均重量分子量:1000、粘度:150mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG2」、ポリプロピレングリコール#2000(平均重量分子量:2000、粘度:310mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG3」、レベリング剤(メガファックF−444、大日本インキ化学工業(株)社製))を「F444」、レベリング剤(オレフィンSPC、日信化学工業(株)社製)を「SPC」で示した。なお、分散剤の酸価は、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求め、アミン価は、DIN 16945に準拠する方法により求めた。
【0246】
なお、各インクセットで用いた、C.I.ピグメントレッド177と式(14)で表される顔料誘導体との混合物中における式(14)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。また、前記実施例および比較例で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(15)で表される顔料誘導体との混合物中における式(15)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。
【0247】
【表2】

【0248】
【表3】

【0249】
[4]カラーフィルターの製造
(実施例1)
上記のようにして得られたインクセット1を用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した(基板準備工程)。
【0250】
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した(隔壁形成工程)。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁(セル)の高さは、2.1μmであった。また、セルの短辺方向の長さは、150μm、長辺方向の長さは、460μmであった。
【0251】
次に、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、基板に対して液滴吐出ヘッドをセルの短辺方向に相対的に移動させつつ、インクを吐出した(インク付与工程)。この際、3色の着色インクを用いた。各セル内には、形成される着色部の平均厚さが2.0μmとなるような量のカラーフィルター用インクを付与した。
【0252】
その後、チャンバー囲まれたホットプレート上にて80℃で10分間の加熱処理を施した(第1の加熱工程)。このとき、有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、バブリング装置により有機溶剤をチャンバー内に供給した。このとき、100℃に加温されたプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対し、脱水処理を施したNガスを1.0ml/minの流量で通過させて有機溶剤の供給を行った。また、チャンバー内の雰囲気における有機溶剤の体積率が、1.0v/v%となるように有機溶剤の供給を行った。
次に、200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、3色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の着色部が形成された(第2の加熱工程)。これにより、図3に示すようなカラーフィルターが得られた。
【0253】
(実施例2〜10)
用いるインクセット、第1の加熱工程での条件を表4、表5に示すものに変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。なお、噴霧には、チャンバーに設置された直径0.2mmのノズルから溶剤とともに脱水処理を施した空縮Nガスを同時に噴霧することにより行った。
(比較例1〜4)
用いるインクセット、第1の加熱工程での条件を表4、表5に示すものに変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。
【0254】
[5]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[5.1]着色部の平坦性評価
各実施例および各比較例のカラーフィルターについて、表面粗さ測定機(KLA−Tencor社製、商品名:P−15)を用いて各着色部の最大の高さTmax[μm]と最小の高さTmin[μm]とを測定し、Tmin/Tmaxについて、下記の5段階の基準に従い、評価した。なお、Tmin/Tmaxは、各カラーフィルターの色ごとに求めたものであり、各色について無作為に100個の着色部を選んで測定した最大の高さと最小の高さとの比を平均して求めた。
【0255】
A:0.86≦Tmin/Tmax≦1.00
B:0.80≦Tmin/Tmax<0.86
C:0.76≦Tmin/Tmax<0.80
D:0.72≦Tmin/Tmax<0.76
E:Tmin/Tmax<0.72
【0256】
[5.2]色むら、濃度むら
前記各実施例および各比較例のカラーフィルターの製造方法によって製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、5000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0257】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0258】
[5.3]コントラスト比の評価
[5.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、淡色表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR)を求め、下記のようにして評価を行った。
【0259】
赤色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3300以上。
B:CRが2100以上3300未満。
C:CRが2100未満。
【0260】
緑色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが11500以上。
B:CRが5700以上11500未満。
C:CRが5700未満。
【0261】
青色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3000以上。
B:CRが2700以上3000未満。
C:CRが2700未満。
【0262】
[5.4]明度の評価
[5.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置について、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d、光源としてC光源使用)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求め、赤色光、緑色光、青色光の3色のY値の平均を白色光の明度Yとして、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0263】
A:明度Yが29.2以上。
B:明度Yが28.5以上29.2未満。
C:明度Yが27.8以上28.5未満。
D:明度Yが27.2以上27.8未満。
E:明度Yが27.2未満。
【0264】
[5.5]耐久性の評価
前記各実施例および各比較例のカラーフィルターの製造方法を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、21〜30枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
[5.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、淡色表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR)を求めた。
【0265】
次に、上記の液晶表示装置からカラーフィルターを取り外した。
取り外した各カラーフィルターを、20℃の環境下に1.5時間、次いで、70℃の環境下に2.5時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−25℃の環境下に2.5時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計32回繰り返した(合計240時間)。
【0266】
その後、これらのカラーフィルターを用いて、再び、図7に示すような液晶表示装置を組み立てた。
これらの液晶表示装置を用いて、液晶表示装置を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、淡色表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR’)を求め、コントラスト比の低下率((1−CR’/CR)×100%)について、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0267】
A:コントラスト比の低下率が3%未満。
B:コントラスト比の低下率が3%以上、5%未満。
C:コントラスト比の低下率が5%以上、8%未満。
D:コントラスト比の低下率が8%以上、10%未満。
E:コントラスト比の低下率が10%以上。
【0268】
なお、上記の各評価においては、各カラーフィルターについて、同様の条件で観察、測定を行った。
これらの結果を、表4、表5に示す。なお、表中ΔSolは、樹脂材料の20℃の有機溶剤100gに対する溶解度をSol(a)[g/100g]、液性媒体の20℃の有機溶剤100gに対する溶解度をSol(b)[g/100g]、ΔSol=Sol(a)−Sol(b)で示されるものである。また、表中、「OS1」を「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「OS2」を「γ−ブチロラクトン」、「OS3」を「酢酸ブチル」、「OS4」を「アセトン」、「OS5」を「メチルエチルケトン」、「OS6」を「メチルアルコール」、「OS7」を「エチルアルコール」で示した。また、表中、チャンバー内での有機溶剤の体積率[v/v%]は、ガスクロマトグラフィー法により測定した。また、有機溶剤の20℃での粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製RE-01)を用い、JIS Z8803に準拠して行った。
【0269】
【表4】

【0270】
【表5】

【0271】
表4、表5から明らかなように、本発明では、製造されるカラーフィルターの着色部が平坦なものであり、明度、コントラスト比に優れていた。また、製造されたカラーフィルターは、色むら、濃度むら、光漏れの発生が抑制されていた。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のカラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0273】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、樹脂材料と、前記樹脂材料を溶解させる液性媒体とを含むカラーフィルター用インクを用いたインクジェット方式によるカラーフィルターの製造方法であって、
基板を準備する基板準備工程と、
前記カラーフィルター用インクを液滴として吐出し、前記基板上に前記カラーフィルター用インクを付与するインク付与工程と、
前記基板を加熱して前記カラーフィルター用インクから前記液性媒体を除去し、固形状の着色部を形成する加熱工程とを有し、
前記加熱工程では、前記液性媒体の主成分とは異なる有機溶剤の存在雰囲気下で、前記カラーフィルター用インク中の前記液性媒体の除去を行い、
前記有機溶剤は、前記液性媒体の主成分よりも前記樹脂材料の溶解性が高いことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項2】
20℃の前記有機溶剤に対する前記樹脂材料の溶解度は、20℃の前記主成分の前記有機溶剤に対する樹脂材料の溶解度よりも高いものである請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記液性媒体の除去時における雰囲気の前記有機溶媒の体積率は、0.01〜3.0v/v%である請求項1または2に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記有機溶剤の20℃における粘度は、0.3〜4.0mPa・sである請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
前記有機溶剤の大気圧下における沸点は、50〜230℃である請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、前記液性媒体の除去は、前記基板を30〜150℃に加熱して行われる請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセトン、酢酸ブチル、メチルエチルケトンよりなる群から選択されるものである請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項8】
前記液性媒体の主成分は、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択されるものである請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項9】
前記カラーフィルター用インクは、前記着色部形成時に、形成される前記着色部を平坦化させる平坦化剤を含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルター。
【請求項10】
前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体Wを含む請求項1ないし9のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項11】
前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zを含む請求項1ないし10のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【化5】

【化6】

【化7】

【請求項12】
前記カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含む重合体X、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含む重合体Yのうち、少なくとも一方を含むものである請求項1ないし11のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法によって製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項14】
請求項13に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−113058(P2010−113058A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284124(P2008−284124)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】