説明

カードコネクタ

【課題】コプラナリティの測定および調整のための、基準を設けたカードコネクタの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るカードコネクタ1は、前端側に開口するメモリカード挿入口に連通して、前後に延びる受容空間60を有した絶縁材料製のハウジング50と、受容空間60に挿入されたメモリカード150の平面状のカード側端子と当接するように、一端が受容空間60に突出する複数のコンタクト130と、ハウジング50の開口上面を覆う金属材料製のシールド部材10とを有して構成される。カードコネクタ1の下面には、その製造過程の、例えば組み立て工程、検査工程および調整工程において、コプラナリティの測定基準として用いることが可能な22a、33a、85の突起を設けて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカードコネクタに関し、さらに詳細にはカードコネクタの下面の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやその周辺機器をはじめとする電気機器等において、情報を記憶するためのメモリデバイスとして、切手大のスモールメモリカード(具体的にはSDカードやMSカード等である。以下、メモリカードと称する)が重要な役割を果たしている。メモリカードは、カードコネクタを介して電気機器に接続され、このカードコネクタは、メモリカードをカードコネクタ内部に受容保持し、メモリカードに設けられた平面状のカード側端子と電気接続することで、メモリカードに対してデータの書き込みおよびデータの呼び出しが可能となっている。
【0003】
このカードコネクタは、実装基盤上に表面実装されるが、このとき、実装基盤上に各コンタクトが確実に半田付け接合されるためには、実装基盤上面から半田付け接合される各コンタクトの下面までの上下方向の距離(以下、コプラナリティと呼ぶ)が許容範囲内である必要がある(例えば、特許文献1を参照)。そこで、実装基盤上に表面実装される前段階で、ある平面上にカードコネクタを載置し、コプラナリティを測定していた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−343475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の測定方法では、ハウジングの成形時における反り、または、シールド部材(例えば、実施形態におけるカバー部材10)をハウジングに取り付けるときの平行度等の要因によって、コプラナリティを測定および調整するための基準が定まりにくいという問題が生じていた。
【0006】
以上のような課題に鑑みて、本発明ではコプラナリティの測定および調整のための、基準を設けたカードコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るカードコネクタは、前端側に開口するメモリカード挿入口に連通して、前後に延びる受容空間を有してなる絶縁材料製のハウジングと、
前記受容空間に挿入された前記メモリカードの平面状のカード側端子と当接するように、一端が前記受容空間に突出する複数のコンタクトと、前記ハウジングの開口上面を覆う金属材料製のシールド部材とを有して構成される。前記カードコネクタは、その製造過程においてコプラナリティの測定基準として用いることが可能な3箇所の突起を、下面に有して構成されている。
【発明の効果】
【0008】
カードコネクタの下面に、コプラナリティの測定基準として用いることが可能な3箇所の突起を設けることで、ハウジングの成形時における反り、または、シールド部材をハウジングに取り付けるときの平行度等に影響されることなく、3箇所の突起によってコプラナリティ測定基準が定まることになる。よって、カードコネクタの製造過程の、例えば組み立て工程、検査工程および調整工程の各工程において、それぞれ同じコプラナリティ測定基準を用いることができるので、コプラナリティの測定および調整を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るカードコネクタの好ましい実施の形態について図1から図15を参照して説明する。ここで、特許請求の範囲および明細書中において説明の便宣上、図1の矢印が示す方向を前後、左右及び上下方向と定義して説明する。まず、カードコネクタ1は図1に示すように、上方からカードコネクタ1の上面を覆うように形成されたカバー部材10と、カードコネクタ1の右端部に設置されるハートカム機構110と、カードコネクタ1の左端部に設置されるライトプロテクト第1コンタクト90(以下、WP第1コンタクト90と呼ぶ)およびライトプロテクト第2コンタクト100(以下、WP第2コンタクト100と呼ぶ)と、前方および上方に開口したハウジング50と、ハウジング50に取り付けられる複数のコンタクト130とを主体に構成されている。カードコネクタ1は、例えば実装基盤170に載置された状態で半田付け接合され、ハウジング50の前方開口部から後方に向かって略矩形状のメモリカード150を挿入して使用する構成となっている。以下に、上記のカードコネクタ1の各構成部材について説明する。
【0010】
ハウジング50は、図1および図9に示すように、絶縁性樹脂を材料として平面視においてU字形に形成され、前方および上方に向けて開口し、左右側端部および後側端部には上下方向に延びる右支持枠51、左支持枠61および後支持枠70が形成されている。さらに、右支持枠51、左支持枠61および後支持枠70のそれぞれ下方端部は、カードコネクタ1の下面部を形成し平面視において略矩形状の底部80と繋がっており、右支持枠51、左支持枠61、後支持枠70および底部80によって囲まれた領域には、メモリカード150を受容保持するためのカード受容空間60が設けられている。
【0011】
右支持枠51には、図1、図6および図9に示すように、前後方向に延びる棒状に形成されており、その右側面には5つの係止突起52が設けられ、これらが後述するカバー部材10のカバー右側面20に設けられた5つの係止孔21と係合可能に構成されている。また、右支持枠51の前方端部には右支持枠溝54が、L字形状で上下方向に貫通して形成されており、後述するカバー右側面20に設けられたカバー切片22を受容可能に構成され、さらに、右支持枠51の前方端部には圧入孔53が設けられており、後述するカバー右側面20に設けられた圧入爪23が圧入可能に構成されている。
【0012】
左支持枠61は、図1および図13に示すように、前後方向に延びる棒状に形成されており、後述するWP第1コンタクト90およびWP第2コンタクト100が、それぞれ挿入されて保持可能に構成される、前後方向に延びる第1コンタクト溝62および第2コンタクト溝63を有しており、これら2つのコンタクト溝は、左支持枠61の前後方向の中央近傍に設けられた接点部空間64で繋がっている。接点部空間64には、その中央近傍において下方に延びて、後述するWP第1コンタクト90の舌部94が入り込むように形成された当接孔66と、半円形状で上方向に延びる突起部67が形成されている。図12に示すように、第1コンタクト溝62の下面には2つの第1圧入孔65aが形成され、第2コンタクト溝63の下面には2つの第2圧入孔65bが形成されており、これらは後述するWP第1コンタクト90の第1圧入部96およびWP第2コンタクト100の第2圧入部104をそれぞれ圧入可能に構成されている。
【0013】
また、左支持枠61の左側面には、3つの係止突起69と2つの接点部係止突起69aが設けられており、これらが後述するカバー部材10のカバー左側面30に設けられた、3つの係止孔31および2つの接点部係止孔31aと係合可能となっており、左支持枠61の前方端部には左支持枠溝68がL字形状で上下方向に貫通して形成されており、後述するカバー左側面30に設けられたカバー切片33を受容可能に構成されている。さらに、左支持枠61の前方端部には圧入孔65が設けられており、後述するカバー左側面30に設けられた圧入爪32が挿入可能に構成されている。
【0014】
後支持枠70は、図1および図9に示すように、左右方向に延びる棒状に形成されており、その後側面には4つの係止突起73が設けられており、これらが後述するカバー部材10のカバー後側面40に設けられた4つの係止孔42と係合可能に構成されている。また、後支持枠70の後側面には2つの後支持枠溝71が、U字形状で上下方向に貫通して形成されており、後述するカバー後側面40に設けられた2つのカバー切片41を受容可能に構成され、さらに、後支持枠70の左右端部近傍には2つの圧入孔72が設けられており、後述するカバー後側面40に設けられた2つの圧入爪43が圧入可能に構成されている。
【0015】
底部80は、図1および図9に示すように、平面視において略矩形状に形成されており、その底部80の上面には、前方側における前側端部81から後方に延びて形成されて、後述するコンタクト130の圧入脚部132が圧入されて保持可能に構成された、10個のコンタクト圧入溝82が設けられている。また、それぞれのコンタクト圧入溝82の後端部に連通して、上下方向に貫通したコンタクト逃がし穴83が形成されており、底部80の上面からの高さが、メモリカード150の下面からカード側接点(図示せず)までの高さと略同一高さに形成されて、一部がコンタクト逃がし穴83と連通するとともに後側支持枠70に繋がるカード接点支持部84から構成される。さらに、図3および図6に示すように、底部80の下面の後端部近傍において、底部80の下面から下方向に突出して円形状に形成された、基準用突起85が左右方向の中心付近に設けられている。
【0016】
カバー部材10は、図1に示すように例えば板状の金属材料を用いて、曲げ加工および打ち抜き加工をすることで形成される。カバー部材10は、ハウジング50の上方向に開口したカード受容空間60の上面を覆うように設けられた上面部11と、この上面部11の左右および後側面部から下方に折曲されて延び、ハウジング50の左右および後側面を覆うように形成された、カバー右側面20、カバー左側面30およびカバー後側面40から構成される。
【0017】
上面部11は、図2に示すように平面視において矩形状に形成されており、上面部11の中央部近傍に略矩形状に開けられた第1確認窓12と、右側端部に前後方向に延びて開けられた第2確認窓13と、右側端部の前方近傍に設けられた当接片14と、左側端部の中央付近に前後方向に延びて開けられた第3確認窓15、および左右端部近傍に前後に延びて形成された4つのブレーキ16から構成され、ブレーキ16の先端部は下方に突出しており、メモリカード150の上面と接触可能に構成されている。
【0018】
カバー右側面20は、図1および図6に示すように、左右方向に貫通して形成される5つの係止孔21と、前方端部付近に設けられたカバー切片22と、前方端部に設けられた圧入爪23とから構成されている。カバー切片22は、その下方先端部において、右方向に折曲した切片先端部22aを有している。また図4に示すように、切片先端部22aの下面は、カバー右側面20の他の部分と比較して、最も下端部に位置するように形成されている。
【0019】
カバー左側面30は、図1および図2に示すように、左右方向に貫通して形成される3つの係止孔31と、同じく左右方向に貫通して形成される2つの接点部係止孔31aと、前方端部付近に設けられた圧入爪32と、前方端部に設けられたカバー切片33とから構成されている。カバー切片33は、その下方先端部において、左方向に折曲した切片先端部33aを有している。また図5に示すように、切片先端部33aの下面は、カバー左側面30の他の部分と比較して、最も下端部に位置するように形成されている。
【0020】
カバー後側面40は、図1に示すように、前後方向に貫通して形成される4つの係止孔42と、左右方向の端部近傍に設けられた2つの圧入爪43と、2つの圧入爪43に並んで配置された2つのカバー切片41とから構成されている。カバー切片41は、図6に示すようにその下方先端部において、後方向に折曲した切片先端部41aを有している。
【0021】
WP第1コンタクト90は、図14に示すように、例えば板状の金属を曲げ加工および打ち抜き加工することで形成され、前方側の第1基部91と、半円形状の押圧部92と、後端部の第1接触部93と、第1接触部93の下方に延びた舌部94と、第1基部91と押圧部92を繋ぐ第1前方脚部97および押圧部92と第1接触部93を繋ぐ第1後方脚部98とを主体に構成される。
【0022】
第1基部91は、前後方向に延びた板形状を基本形状としており、第1基部91の前端下部には、第1基部91と繋がって下方に延びた第1切片95が形成され、その第1切片95の先端は左方向に折曲して第1切片先端部95aが形成され、また第1切片95の後方側には、同じく第1基部91と繋がって下方に延びた2つの第1圧入部96が形成されている。第1脚部97は、第1基部91の後方側と繋がって後方に延び、押圧部92の前側端部と繋がって形成されており、第1前方脚部97の中央付近には第1前方折曲部97aが設けられており、第1前方脚部97は第1前方折曲部97aで斜め右方向に折曲して構成されている。
【0023】
押圧部92は、第1前方脚部97の後端部と繋がって半円形状に折曲されて形成されており、その半径は左側支持枠61の突起部67の有する半径と略同一となっている。第1後方脚部98は、押圧部92の後方端部と第1接触部93の間に位置しており、第1接触部93の前方端部と繋がる第1後方折曲部98aで斜め右方向に折曲して構成されている。
【0024】
第1接触部93は、第2折曲部98aの後方端部と繋がって後方に延びて板状に形成されており、また第1接触部93の下方と繋がって、下方に延びた板状の舌部94が形成されている。舌部94は左側支持枠61の当接孔66に入り込んだ状態で、当接孔66の左右両側面と当接可能に構成されている。
【0025】
WP第2コンタクト100は、図15に示すように、例えば板状の金属を曲げ加工および打ち抜き加工することで形成され、後方側の第2基部101および前方側の第2脚部102とを主体に構成されている。第2基部101は、前後方向に延びた板形状を基本形状としており、第2基部101の後端下部には、第2基部101と繋がって下方に延びた第2切片103が形成され、その第2切片103の先端は左方向に折曲して第2切片先端部103aが形成され、また第2切片103の前方側には、同じく第2基部101と繋がって下方に延びた2つの第2圧入部104が形成されている。また第2脚部102は、第2基部101の前方側と繋がって前方に延びて形成されており、第2脚部102の前方端部付近における右側面に、円形凸形状の第2接触部105が設けられている。この第2接触部105は、WP第1コンタクト90の第1接触部93と当接可能に構成されている。
【0026】
ハートカム機構110は、図1および図7に示すように、ハウジング50の右支持枠51近傍に設置されており、前後方向に平行移動可能なスライダ111と、スライダ111の前方付近に取り付けられたカムピン120と、弾性変位可能なバネ121およびスライダ111の後部を基端として前後に延びるプリロック端子125とを有して構成される。スライダ111は、ハウジング50と同様に絶縁性樹脂を材料として形成されており、その上面にカムピン120およびプリロック端子125が載置可能に構成されている。
【0027】
カムピン120は、金属材料を用いてU字状に折曲して形成され、また、プリロック端子125は、例えば板状の金属を曲げ加工および打ち抜き加工することで形成され、前方端部のロック凸部126がメモリカード150のカード凹部151と係合可能に構成されている。バネ121は、カムピン120およびプリロック端子125が載置されたスライダ111を、前方向に押し出し可能な弾性力および長さを有したもので構成されている。
【0028】
コンタクト130は、図1に示すように、例えば板状の金属を曲げ加工することで形成され、略半円形状に折曲してなる接点部131と、コンタクト130の中央付近に設けられた圧入脚部132および前方端部に形成された前端部133とを主体に構成されている。接点部131は上方に折曲して形成されており、メモリカード150下面に設けられたカード側接点と当接可能に構成され、圧入脚部132は棒状に前後方向に延びて形成されている。また、前端部133は圧入脚部132よりも下方に位置して前方に延びており、実装基盤上に半田付け可能に構成されている。
【0029】
以上、ここまでカードコネクタ1の各構成部材について説明したが、以下にカードコネクタ1の組立工程を工程順に説明する。まず、ハウジング50の底部80におけるコンタクト圧入溝82に、コンタクト130の圧入脚部132をそれぞれ圧入し、コンタクト130をコンタクト圧入溝82に圧入保持する。そうすることで、コンタクト130の接点部131が、メモリカード150下面に設けられたカード側接点と当接することで電気接続可能となる。次に、スライダ111を右側支持枠51近傍の底部80に上方から設置する。このとき、スライダ111の後端部と後支持枠70の間にバネ121を挿入して、スライダ111がバネ121により前方に押圧可能な構成とする。次に、底部80上に設置されたスライダ111の上部所定位置に、カムピン120およびプリロック端子125を上方から載置する。
【0030】
次に、WP第1コンタクト90を左側支持枠61の所定位置に上方から取り付ける。図1および図12に示すように、WP第1コンタクト90の第1基部91が、第1コンタクト溝62に上方向から挿入され、さらに第1コンタクト溝62の下面に設けられた2つの第1圧入孔65aに、2つの第1圧入部96が圧入されて固定保持される。このとき、押圧部92は左支持枠61に設けられた突起部67の右側に配置され、また、舌部94の先端部は当接孔66に入り込んでおり、この舌部94の当接孔66に入り込んでいる部分の右側面は、当接孔66の右側面と当接した状態に保たれており(図10を参照)、さらに、第1切片先端部95aは、実装基盤170上に半田付け可能に構成されている。
【0031】
次に、WP第2コンタクト100を左側支持枠61の所定位置に上方から取り付ける。図1および図12に示すように、WP第2コンタクト100の第2基部101が、第2コンタクト溝63に上方から挿入され、さらに第2コンタクト溝63の下面に設けられた2つの第2圧入孔65bに、2つの第2圧入部104が圧入されて固定保持される。このとき、第2脚部102は第1接触部93の左側に位置し、第2接触部105と第1接触部93とは、左右方向に所定間隔を有して離れた状態に保たれており(図10を参照)、さらに、第2切片先端部103aは、実装基盤170上に半田付け可能に構成されている。
【0032】
次に、図1に示すように、カバー部材10を上方からハウジング50の上面開口部を覆うように取り付ける。このとき、カバー部材10に設けられた係止孔21、係止孔31、接点部係止孔31aおよび係止孔42が、それぞれハウジング50に設けられた係止突起52、係止突起69、接点部係止突起69aおよび係止突起73と係合するとともに、カバー部材10に設けられた圧力爪23、圧力爪32および圧力爪43が、それぞれハウジング50に設けられた圧入孔53、圧入孔65および圧入孔72に圧入されることで、カバー部材10をハウジング50に対して確実に固定保持可能となる。
【0033】
このことにより、カバー部材10とハウジング50に挟まれて構成された、WP第1コンタクト90、およびWP第2コンタクト100も、上下方向に固定保持可能となる。また、カバー部材10に設けられたカバー切片22、カバー切片33およびカバー切片41は、それぞれハウジング50に設けられた右支持枠溝54、左支持枠溝68および後支持枠溝71に受容されて、さらに切片先端部22a、切片先端部33aおよび切片先端部41aは、実装基盤170上に半田付け可能となる。このようにして、カードコネクタ1は組立てられる。
【0034】
以上の組立工程を経て、カードコネクタ1は組立てられることになるが、このようにして完成したカードコネクタ1を、実装基盤170上に実装して使用するためには、カバー部材10に設けられた切片先端部22a、切片先端部33aおよび切片先端部41a、WP第1コンタクト90の第1切片先端部95a、WP第2コンタクト100の第2切片先端部103aおよび10本のコンタクト130の各前端部133のそれぞれが、半田付け接合可能に設計された実装基盤170上に載置して、リフロー槽で加熱することにより、上記の半田付け接合可能部分の半田が溶融して半田付け接合され、実装基盤170上にカードコネクタ1実装されることになる。
【0035】
カバー部材10の切片先端部22a、切片先端部33aおよび切片先端部41aが、実装基盤170上に半田付け接合されることで、カードコネクタ1全体を実装基盤170に固定保持することが可能となるとともに、WP第1コンタクト90の第1切片先端部95a、WP第2コンタクト100の第2切片先端部103aおよびコンタクト130の前端部133が、それぞれ実装基盤170上に半田付け接合されることで、これらが実装基盤170を介して他の電気機器等と電気接続可能となる。
【0036】
この実装基盤170上にカードコネクタ1を表面実装する際、半田付け接合される各切片先端部、およびコンタクト130の前端部133のそれぞれが、半田付けによって確実に電気接合されるためには、カードコネクタ1が実装基盤170上の所定位置に載置された状態において、実装基盤170上面から半田付け接合される各切片先端部の下面部、およびコンタクト130の前端部133の下面部までのコプラナリティが許容範囲内である必要がある。しかし、ハウジング50の成形時における捩れおよび反り、または、カバー部材10をハウジング50に取り付けるときの平行度等の要因によっては、コプラナリティが許容範囲を超える場合がある。
【0037】
そこで、カードコネクタ1を実装基盤170上に実装する前段階で、何らかの方法でこのコプラナリティを測定して、コプラナリティが許容範囲内を超えていれば、生産設備等を調整することでコプラナリティを許容範囲内に収める必要がある。そのときの測定基準として、基準用突起85の下方先端部分、切片先端部22aの下面部分および切片先端部33aの下面部分の3点を結んで構成される平面(以下、平面Fと呼ぶ)を用いる。このとき、前記3点はカードコネクタ1の最も下方に突出して位置し、かつ、図1に示す前後左右に延びて理論上構成された平面と平面Fとは、設計上平行になるようにカードコネクタ1、および組み立て治具等の生産設備が設計されている。なお基準点として、上記のハウジング50下面の基準用突起85およびカバー部材10の2点を用いることで、ハウジング50の捩れおよび反り、カバー部材10の取付平行度等を含めたコプラナリティの測定が可能となり、また、カードコネクタ1のそれぞれ端部に配置された3点を基準点として用いることで、より正確にコプラナリティが測定可能となる。
【0038】
具体的なコプラナリティの測定は、まず組み立てが完了したカードコネクタ1を、ある平面上に前記3つの基準点が接するように載置する。このとき載置する平面は、カードコネクタ1の下面の突出部(図示せず)を受容可能な凹部(図示せず)を有するものでも良く、また、前記3つの基準点はカードコネクタ1の最も下方に突出して位置しているため、前記3点によって平面Fが構成可能となる。その状態において、平面FからWP第1コンタクト90の第1切片先端部95aの下面、WP第2コンタクト100の第2切片先端部103aの下面およびコンタクト130の前端部133の下面までの各コプラナリティを測定し、それぞれが許容範囲内に収まっているか否か判断する。もし、許容範囲内に収まっていない場合には、平面Fを基準として各コンタクトのコプラナリティが、許容範囲内に収まるように組み立て治具等の生産設備を調整可能である。
【0039】
このようにして、実装基盤170上に表面実装されたカードコネクタ1に、メモリカード150が挿抜された場合の、各構成部材の特徴的な働きについて以下に説明する。まず、カバー部材10の上面部11には、下方に突出したブレーキ16を設けており、これによりカードコネクタ1に挿入されたメモリカード150の上面に、ブレーキ16の先端部が接して接触抵抗を与えることが可能となり、よって、メモリカード150をカードコネクタ1から抜く際に、ハートカム機構110によって一気に前方に押し出されて、メモリカード150がカードコネクタ1から抜けて落下することを防止できる。
【0040】
また、カバー部材10の上面部11に関して、上面部11に設けられた第1確認窓12の特徴は、コンタクト130の前端部133に、リフロー槽で加熱する際に半田付けのための熱を効率よく伝えること、半田付け完了後に半田付け状態を確認可能とすること、および半田付けが不十分な場合に手作業にて修正可能とすることである。一方、第2確認窓13の特徴は、上面部11の下方に設置された、ハートカム機構110のプリロック端子125の動きを上方より確認可能とすること、ブレーキ16の強さを調整可能とすることである。
【0041】
当接片14は、その後方側先端部が上面部11の下方に設置された、ハートカム機構110のカムピン120に上方向より当接することで、カムピン120を下方に押圧するように構成されている。さらに、第3確認窓15の特徴は、上面部11の下方に設置されたWP第1コンタクト90の第1接触部93とWP第2コンタクト100の第2接触部105の動きを上方より確認可能とすること、およびブレーキ16の強さを調整可能とすることである。
【0042】
WP第1コンタクト90の押圧部92に関して、メモリカード150側部の書き込み禁止切替用の可動片154が、図1に示すように、メモリカード150側部のカード溝153内の後方側に可動片154が位置した、書き込み可能状態のメモリカード150が挿入され、メモリカード150が挿入完了位置にある場合、WP第1コンタクト90の押圧部92は前後方向において、メモリカード150の可動片154と同じ位置にあり(図8を参照)、さらに可動片154の略左右方向の長さ分だけ、押圧部92は可動片154によって左方向に押圧される。そして、左方向に押圧されて移動した第1接触部93は第2接触部105と接触し、第2接触部105と接触した状態のまま、WP第1コンタクト90の舌部94の左側面が、左支持枠61の当接孔66の左側面に当接する位置まで左方向に移動し、WP第1コンタクト90とWP第2コンタクト100とが電気接続可能となる(図11を参照)。
【0043】
このとき、舌部94の左側面が当接孔66の左側面に当接することにより、これ以上第1接触部93が左方向に移動することが規制されるため、第1接触部93が左側支持枠61の外部に飛び出すことを防止できるとともに、第2脚部102の前方端部が左側支持枠61の外部に飛び出すことを防止可能となる。さらに突起部67は押圧部92と略同一半径を有していることで、左方向に押圧された押圧部92の移動を規制可能となり、舌部94と同様に第1接触部93が、左側支持枠61の外部に飛び出すことを防止できるとともに、第2脚部102の前方端部が左側支持枠61の外部に飛び出すことを防止可能となる。
【0044】
一方、メモリカード150の可動片154が、図1においてカード溝153内の前方側に可動片154が位置した、書き込み禁止状態のメモリカード150が挿入され、メモリカード150が挿入完了位置にある場合、WP第1コンタクト90の押圧部92は前後方向において、メモリカード150の可動片154と接触しない位置にあるため、押圧部92は押圧されず、舌部94の右側面がハウジング50の当接孔66の右側面に当接されたままの状態で、第1接触部93と第2接触部105とが左右に所定の間隔を有し、WP第1コンタクト90とWP第2コンタクト100とが、電気接続されていない状態となる(図10を参照)。なお、メモリカード150がカード受容空間60に挿入されていない状態においても、舌部94の右側面は当接孔66の右側面に当接しており、WP第1コンタクト90とWP第2コンタクト100とが、電気接続されていない状態を保っている。このとき、舌部94の右側面が当接孔66の右側面に当接することにより、これ以上第1接触部93が右方向に移動することが規制されるので、第1接触部93がカード受容空間60に飛び出すことを防止可能となる。
【0045】
ハートカム機構110は、メモリカード150がカード受容空間60内に挿入されると、まずプリロック端子125のロック凸部126が、メモリカード150の右側部に形成されたカード凹部151と係合する(図7を参照)。そして、このようにカード凹部125に係合した状態で、スライダ111がメモリカード150の傾斜部152に押圧されてカードコネクタ1の後端部へスライド移動するとともにバネ121を圧縮し、カード側端子とコンタクト130の接点部131とが当接する接触位置までスライド移動すると、ハートカム機構110により係止保持される。これにより、メモリカード150がカード受容空間60にて係止保持される(図8を参照)。
【0046】
また、図8に示す位置に係止保持されたメモリカード150が、さらに後方向に押圧操作されることによって、スライダ111が後方向に押圧されると、ハートカム機構110によるスライダ111の係止状態が解除され、この状態でメモリカード150の押圧を止めると、スライダ111はバネ121の反発力により、メモリカード150を前方に押し出して挿抜可能位置に移動させ、メモリカード150が抜き取り可能となる。
【0047】
コンタクト130は、メモリカード150がカード受容空間60内に挿入されると、後方端部の接点部131とメモリカード150下面に設けられたカード側接点とが当接して電気接続可能となり、コンタクト130の前端部133を実装基盤170上に半田付けすることで、実装基盤170を介してメモリカード150と他の電気機器等とを電気接続可能となる。
【0048】
ここで、本発明に係るカードコネクタ1の効果についてまとめてみると、第1に、基準用突起85の下方先端部分、切片先端部22aの下面部分および切片先端部33aの下面部分の3点を、カードコネクタ1の下方に突出させて測定基準とすることで、各コンタクトのコプラナリティが容易かつ確実に測定でき、またこの3点を基準として、組み立て治具等の生産設備を調整可能である。第2に、WP第1コンタクト90とWP第2コンタクト100とが、前後方向に延びた一直線上に配置できることによって、カードコネクタ1の左右方向の幅を縮小することが可能となる。
【0049】
第3に、舌部94を当接孔66の左右側面に当接させることで、第1接触部93が左右方向へ一定範囲以上移動することを規制するストッパーの役割を果たし、よって、第1接触部93がカードコネクタ1の外部に飛び出すこと、および第1接触部93がカード受容空間60に入り込むことを防止可能となる。第4に、WP第1コンタクト90に、第1前方折曲部97aおよび第1後方折曲部98aを設けることで、第1前方脚部97および第1後方脚部98が、右方向からの押圧による外力に対して塑性変形しにくくなり、第1接触部93と第2接触部105とを確実に接触あるいは非接触の状態とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】カードコネクタの各構成部品を示した斜視図である。
【図2】(a)はカードコネクタを上面から見た平面図で、(b)は(a)の左側面図で、(c)は(a)の前側面図である。
【図3】図2中のA部の部分拡大図である。
【図4】図2中のB部の部分拡大図である。
【図5】図2中のC部の部分拡大図である。
【図6】(a)はカードコネクタを下面から見た平面図で、(b)は(a)の左側面図である。
【図7】メモリカードが挿入された状態(プリロック状態)を示した平面図である。
【図8】メモリカードが挿入された状態(正規ロック状態)を示した平面図である。
【図9】(a)はハウジングに各コンタクトが挿入された状態を示した平面図で、(b)は(a)の後側面図で、(c)は(a)の前側面図である。
【図10】図9中のD部(押圧されていない状態)の部分拡大図である。
【図11】図9中のD部(押圧されている状態)の部分拡大図である。
【図12】図9中に示すXII−XIIの部分断面図である。
【図13】左支持枠を示した斜視図である。
【図14】WP第1コンタクトを示した斜視図である。
【図15】WP第2コンタクトを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 カードコネクタ
10 カバー部材(シールド部材)
22a 切片先端部(突起)
33a 切片先端部(突起)
50 ハウジング
60 カード受容空間(受容空間)
85 基準用突起(突起)
130 コンタクト
150 メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側に開口するメモリカード挿入口に連通して、前後に延びる受容空間を有してなる絶縁材料製のハウジングと、
前記受容空間に挿入された前記メモリカードの平面状のカード側端子と当接するように、一端が前記受容空間に突出する複数のコンタクトと、
前記ハウジングの開口上面を覆う金属材料製のシールド部材とを有して構成され、
製造過程で基準となる3箇所の突起を下面に有して構成されたカードコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−204924(P2008−204924A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42949(P2007−42949)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】