説明

カード状ワークの供給装置

【課題】厚み変動が避けられず且つ互いに密着しやすいアルコール蒸散剤を供給するのに適した、高速処理可能なカード状ワーク供給装置を提供する。
【解決手段】ローター11の周面に設けられた吸着ユニット20は、ローターの周面にヒンジ止めされた取付板22と、取付板をローターの周面から離す方向に付勢するコイルばね25と、取付板の先端付近に設けられた吸着パッド21とを備える。ローターが一回転する間に、吸着パッド21によりワークガイド13の最下方に収容されているカード状ワーク(鮮度保持剤)Wを吸着してその上方のワークから分離して移送し、その後に吸着パッドに対する真空吸引作用を解除してワークを分離する。ワーク収容手段のローター回転方向前方に隣接して設けられたワーク押さえ15が、吸着パッドに吸着された最下方ワークをその後のローター回転につれて上方のワークから引き離す作用を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード状のワークを効率よく供給するためのカード供給装置に関し、特に、調理パンや菓子パンなどの食品包装工程において食品の鮮度を保つために食品と共に包装体に封入されるカード状の鮮度保持剤、とりわけアルコール含浸された製剤(アルコール蒸散剤)を確実に一枚ずつ供給する用途に好適に使用することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の用途に使用される鮮度保持剤として、厚紙などの比較的厚手の基材にアルコール(エタノール)を主成分とする鮮度保持液を含浸させ、その表裏を薄手の紙などで被覆したものを、包装する食品の大きさなどに応じて所定の大きさにカットしてカード状にしたものが広く使用されている。このような鮮度保持剤は一般にアルコール蒸散剤(またはアルコール揮散剤)などと呼ばれている。アルコール蒸散剤をパンなどの食品と共に包装すると、アルコール蒸散剤の側面から鮮度保持液が徐々に蒸発して、食品包装内の空間を埋めていくので、アルコールの殺菌力で、包装内に混入した微生物の増殖を抑制する。
【0003】
このようなアルコール蒸散剤はパンなどの食品の包装工程において一枚ずつ供給する必要があり、そのための供給装置として下記特許文献1記載のようないわゆるプッシャ方式のものが一般に用いられている。この装置は、収納体の最下方に収納されたワーク(鮮度保持剤)をその形状や厚さに応じて設定したプッシャで押し出し、シューターを通じて斜め下方に排出するように構成されている。
【特許文献1】実用新案登録第3103826号公報
【0004】
また、下記特許文献2に記載される装置では、鮮度保持剤を吸着した吸着パッドをエアシリンダで所定のタイミングで下降させて、鮮度保持剤をシート状包装材料に圧着した後、エアシリンダを上昇させて次の鮮度保持剤を吸着して待機する。
【特許文献1】特開2000−142644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術は、装置構成が簡単でコストを低廉に抑えることができる利点があるものの、ワークを一枚ずつ供給するためにプッシャを待機位置から押し出し、その後に待機位置に復帰させるという往復動作が要求される。したがって、この従来技術では、高速且つ効率的にワーク供給を行うことが機構的に困難であり、高速(たとえば毎分80〜100個またはそれ以上)の包装作業に対応することができない。
【0006】
また、この従来技術は、特にアルコール蒸散剤を供給する目的で使用するには不適である。すなわち、アルコール蒸散剤は前記のような構成を有することから、非常に密着接合しやすく、ときには人手では引き剥がすことが困難な状態になるが、さらに、これが多数枚積み重ねられた状態になると下方に収容されたものほど密着接合の度合いが高くなる。また、アルコール蒸散剤の製品はアルコール含浸基材を主体とすることから多少の厚み変動が避けられず、多数枚積み重ねた状態では下方にいくほど荷重を大きく受けるので厚みが減少する傾向にある。これらの要因により、従来技術のようなプッシャ方式の装置では確実に安定して供給することができない。
【0007】
特許文献2に記載の従来技術においても、吸着パッドの動作させるためにエアシリンダを上下動させなければならず、特許文献1と同様に、高速且つ効率的にワーク供給を行うことが機構的に困難であり、高速(たとえば毎分80〜100個またはそれ以上)の包装作業に対応することができない。
【0008】
また、この従来技術は、鮮度保持剤がヒートシール部を介して帯状に連結された連続帯状体をロールから巻き出して供給し、その過程でヒートシール部を切断して得られた個々の鮮度保持剤をシート状包装材料の上に供給・圧着するものであって、あらかじめカード状にされた鮮度保持剤などのワークを積み重ねた状態でワーク収容手段に収容しておいて、そこから一枚ずつ供給する形式の供給手段ではない。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、高速(たとえば毎分80〜100個またはそれ以上)の包装作業に同期した高速の処理を可能にし、加えて、厚み変動が避けられず且つ互いに密着しやすい性質を持つアルコール蒸散剤であっても確実に一枚ずつ供給することを可能にする新規な構成を備えた、カード状ワーク供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、本発明は、供給しようとするカード状のワークを積み重ねた状態で収容するワーク収容手段と、ローター駆動手段により所定方向に回転駆動されるローターと、このローターの周面に設けられる一以上の吸着ユニットとを有し、吸着ユニットは、ローターの周面にヒンジ止めされた取付板と、取付板をローターの周面から離す方向に付勢する付勢手段と、取付板の先端付近に設けられた吸着パッドとを備えており、さらに、吸着ユニットの取付板に係合可能な押圧手段と、吸着パッドの内部空間を真空吸引して吸着パッドに吸引力を与える真空発生手段と、この真空発生手段の作用を解除して吸着パッドの吸引力を消失させる真空解除手段とを有して構成され、ローターの一回転の間の第一の位置で押圧手段が取付板に係合して付勢手段に抗して取付板をローターの周面に近接させる方向に押圧し、その後の第二の位置で押圧手段が取付板から離脱することにより取付板が付勢手段により弾発して吸着パッドがワーク収容手段の最下方に収容されているワークに衝突して真空発生手段により与えられる吸引力で該ワークを吸着し、その後の第三の位置で真空解除手段により吸引力を消失させることにより該ワークが吸着パッドから分離されて所定の搬送装置に供給されることを特徴とする、カード状ワークの供給装置である(請求項1)。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ローターの周面にn(n≧1)個の吸着ユニットが設けられ、ローターの一回転の間にn回のワーク吸着およびワーク分離が行われてn個のワークが供給される(請求項2)。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、ワーク収容手段のローター回転方向前方に隣接してワーク押さえが設けられ、第二の位置で吸着パッドに吸着された最下方ワークをその後のローター回転につれて上方のワークから引き離す作用を果たす(請求項3)。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ローターが第二の位置に到達したことを検出するローター位置検出センサが設けられ、このローター位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを所定位置で停止させる(請求項4)。
【0014】
この実施形態において、ローター停止位置を第二の位置よりローター回転方向において若干前方に位置させることができる(請求項5)。
【0015】
また、搬送装置における送りアタッチメントが所定位置に到達したことを検出するアタッチメント位置検出センサを設け、このアタッチメント位置検出センサからの検出信号に基づいて前記所定の停止位置からローターを再び回転始動するように構成することができる(請求項6)。
【0016】
また、ローター位置検出センサを、ローターの回転軸に固着されてローターと共に回転するスリット板のスリット位置を検出する光センサで構成することができる(請求項7)。
【0017】
また、ローター位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを前記停止位置で停止させ、その後のアタッチメント位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを再び回転駆動させるようにローターを間欠駆動するように構成しても良い(請求項8)。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態によれば、真空発生手段がローター内部に設けられた真空発生器からなり、この真空発生器の一次側の供給ポートが圧縮空気源からの圧縮空気供給手段が接続されると共に、二次側の真空ポートには各吸着ユニットの吸着パッドの内部空間に通じる吸引チューブが接続され、供給ポートに供給された一次側の圧縮空気および真空ポートから入り込む二次側の空気を排気ポートから排気することにより、吸着パッドの内部空間を真空吸引する(請求項9)。
【0019】
この実施形態において、真空発生器の排気ポートにメカニカルバルブを接続し、このメカニカルバルブが常時は開かれていることにより排気ポートからの排気をメカニカルバルブを介して大気に開放して真空発生器による真空吸引作用を供給パッドの内部空間に与えることができる(請求項10)。
【0020】
この場合に、メカニカルバルブを開閉制御するアクチュエータを進退可能に設けると共に、このアクチュエータを常時は突出位置に向けて付勢する付勢手段を設け、アクチュエータが付勢手段により突出位置に維持されている間はメカニカルバルブが開いた状態にあり、アクチュエータが付勢手段の付勢力に抗して後退位置に移動したときにメカニカルバルブが閉じた状態になるように構成することができる(請求項11)。
【0021】
さらに、メカニカルバルブのアクチュエータをローターの端面から突出して設け、ローターが前記第三の位置に到達したときに真空解除手段が突出位置にあるアクチュエータに当接してメカニカルバルブを閉じた状態にするようにしても良い(請求項12)。
【0022】
さらに、真空解除手段を、ローター回転軸に略平行に延長してその先端がアクチュエータの突出位置に干渉するよう位置付けることができる(請求項13)。
【0023】
さらに、圧縮空気源からの圧縮空気供給手段は、ローターの内部に圧縮空気を供給する単一の供給路と、この単一の供給路をローター周面に設けられる吸着ユニットの個数と同数に分岐配管する多回路分岐配管とを含むものとして構成することができる(請求項14)。
【0024】
さらに、ローターの回転軸を中空のパイプ軸とし、このパイプ軸が前記単一の供給路を兼ねるものとしても良い(請求項15)。
【発明の効果】
【0025】
本発明のワーク供給装置は、ローターの周面に任意数の吸着ユニットを設け、ローターが所定方向に一回転する間に、各吸着ユニットの吸着パッドを真空吸引することでワーク収容手段の最下方に収容されているワークを吸着し、その後に吸着パッドに対する真空を破壊することによってワークを吸着パッドから分離して搬送装置に供給する構成(回転方式)を採用しており、従来技術のように部材を往復移動させる必要が無いので、高速・効率的な供給処理が可能である。
【0026】
また、最下方のワークが吸着パッドにより吸着されると、その上方に積み重ねられているワークとの間にわずかな隙間が形成され、しかも、吸着後もローターが回転し続けることによって、吸着パッドに吸着された最下方のワークに対して横方向にずれを生じさせる作用が発揮される。さらに、ワーク収容手段のローター回転方向前方に隣接して設けられたワーク押さえは、吸着パッドに吸着された最下方ワークをその後のローター回転につれて上方のワークから引き離す作用を果たす。これらの複合的作用により、厚み変動が避けられず且つ互いに密着しやすい性質を持つアルコール蒸散剤をワークとする場合であっても確実に一枚ずつ供給することができる。
【0027】
本発明のワーク供給装置によれば、ワークの吸着と分離の操作を機械的に行っており、電気信号による制御を必要としないので、装置構成の簡略化およびコストダウンを図ることができ、ワークの変更にも容易に対応可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1および図2は本発明の好適な一実施形態によるアルコール蒸散剤供給装置の概略構成を示す。この装置10は、アルコール蒸散剤であるワークWを、吸着ユニット20の吸着パッド21により吸着してローター11の回転につれて所定位置に搬送し、該位置にて分離ドッグ12の作用により吸着パッド21から分離して、包装機(図示せず)に至る搬送装置30の製品ガイド31間の固定プレート32上に落とし込む。固定プレート32上に落とし込まれたワークWは、X方向に駆動される製品送りアタッチメント33によって順次に包装機に向けて送り込まれるが、このワークW上にパンなどの食品が一つずつ自動的または手作業にて置かれ、これらが一緒にアタッチメント33で包装機に投入されて、該包装機で所定の包装が行われる。これにより、包装体内にパンなどの食品と共にアルコール蒸散剤が封入されて鮮度保持された製品が製造される。
【0029】
ワークWは、その大きさに応じた内寸を有するワークガイド13に多数枚を積み重ねた状態で収容される。ワークガイド13は、ローター11の矢視回転方向前方に向けて開口する断面略コ字形を有すると共に、その下端には内方に突出する一対の係止縁14を有する。また、ワークガイド13の開口部のローター11回転方向前方に隣接して、ワーク押さえ15が配置されている。さらに、ワークガイド13の側方に隣接して、先端に押圧コロ17を備えた取付ロッド16が配置されている。ワークガイド13は、この装置10で供給しようとするワークWの大きさに応じて数種類を用意しておき、そのうちの一を選択して設置すると良い。あるいは、ワークWの大きさに応じてワークガイド13の内寸を変更可能に構成して各種ワークに対応させても良い。
【0030】
この実施形態では4つの吸着ユニット20がローター11の周面に等間隔(90度間隔)で設けられている。各吸着ユニット20は同一構成であり、ローター11の周面にその回転軸に平行なヒンジ軸23を有するようにヒンジ止めされた取付板22の先端に前記吸着パッド21が取り付けられている。取付板22はローター11と略同一の曲率半径を持つ円弧状に形成され、ローター11の周面に近接する近接位置と、ローター11の周面から離れた突出位置とを取り得るが、取付板22とローター11の間に設けられたコイルばね25の作用によりローター11の周面から離れて突出位置を取るように常時付勢されている。図1および図2には、取付板22が突出位置にあって、その先端の吸着パッド21がワークガイド13の最下方に収容されている一枚のワークWの下面に吸着している状態が示されている。
【0031】
取付板22は略方形状であるが、その一側には後述する押圧コロ12が乗り上げるコロ係接面24を有する。ローター11の回転につれて押圧コロ17がコロ係接面24に乗り上げることにより、コイルばね25の付勢力に抗して取付板22が突出位置から近接位置に移動していき、押圧コロ17がコロ係接面24を通過した瞬間にコイルばね25により取付板22が突出位置に弾発復帰して、吸着パッド21がワークガイド13最下方のワークWを吸着する。
【0032】
ローター11は図示しないクラッチ・ブレーキ付モータ(以下「C/Bモータ」)により間欠駆動される。より詳しくは、C/Bモータの回転が伝動チェーン41を介してホイール42およびパイプ軸43に伝えられ、このパイプ軸43の先端に固着されているローター11を矢視の所定方向に回転させる。パイプ軸43は転がり軸受44により回転を許容されつつ支持されており、この軸受44に前述の分離ドッグ12がローター11方向に突出するように固定されている。
【0033】
パイプ軸43はローター11の回転軸であると共に、チューブ継手45および空気配管チューブ46を介して圧縮空気源(図示せず)に接続されて真空発生機構40を構成している。すなわち、図3に示すように、ローター11の内部において、パイプ軸43は、多回路分岐配管47によって吸着ユニット20の個数に応じた数(図示実施形態では4つ)に分岐され、各分岐管48が真空発生器(エジェクタ)50に接続されている。
【0034】
真空発生器50は、公知であるが、図4に示すように、圧縮空気の供給ポート51と、ノズル52と、真空ポート53と、ディフューザ54と、排気ポート55とを有しており、供給ポート51から送り込まれた圧縮空気をノズル52で高速噴流とし、その粘性で周囲の空気を引きつけることで真空ポート53から二次側空気を導入し、一次側の圧縮空気と共にディフューザ54を介して排気ポート55から排出するように構成されている。
【0035】
この実施形態では、分岐管48を供給ポート51に接続して圧縮空気を送り込み、真空ポート53には吸着パッド21の内部空間26に通じる吸引チューブ49が接続され、排気ポート55にはメカニカルバルブ57に通じる排気チューブ56が接続される。メカニカルバルブ57は、常時はばね(図示せず)付勢により突出しているアクチュエータ58を備え、この状態ではバルブが開かれていて、真空発生器50の排気ポート55から排気チューブ56を介して送られてくる高速排気流をそのまま排気チューブ59から外気に放出するので、真空ポート53からの吸引によって吸着パッド21の内部空間26が脱気されて真空状態を維持するが、分離ドッグ12がアクチュエータ58を押し込むとバルブが閉じられて排気ポート55および排気チューブ56,59を介した排気が遮断されるため、真空ポート53からの吸引が無くなり、吸着パッド内部空間26の真空状態が解除される。
【0036】
図3には、一つの吸気ユニット20に対する真空発生機構が示されているが、各吸気ユニット20に対応する分岐管48には同様の構成の真空発生機構が設けられている。したがって、ローター11内には各吸気ユニット20に対応する専用のメカニカルバルブ57が収容されており、それら4つのアクチュエータ58がローター11の端面から、ローター11の回転につれて分離ドッグ12に接触して押圧される位置まで突出している。
【0037】
ホイール42に隣接してスリット板60が設けられ、ホイール42と共に回転する。このスリット板60は、吸着ユニット20の個数に応じた数(図示実施形態では4つ)のスリット61を有する。符号62はスリット61と共働してローター11の停止位置を検出するためのセンサであり、このセンサ62からの検出信号を受けてC/Bモータを停止させ、したがってローター11を停止させる。符号63は製品送りアタッチメント33の通過を検出するセンサであり、このセンサ63からの検出信号を受けてC/Bモータモータを回転させ、したがってローター11を開始させる。センサ62,63からの検出信号はコンピュータや電気制御部などの制御手段(図示せず)に入力され、これを受けた該制御手段がC/Bモータの停止/始動を制御する。
【0038】
以上に述べた構成のアルコール蒸散剤供給装置10の動作について説明する。
【0039】
図6はこの装置10のローター11が所定方向(図において時計方向)に一回転する間の各部の位置および動作を概略的に示す説明図であり、(a)は押圧コロ17が一つの吸着ユニット20の取付板22のコロ係接面24に乗り上げる直前の位置を示す。このときローター11は所定速度で回転中であり、この回転につれて、(a)の直後に(b)位置となって、同吸着ユニット20の取付板22のコロ係接面24に押圧コロ17が乗り上げるので、この押圧コロ17による外圧が矢印方向に働いて、コイルばね25の付勢力に抗して取付板22をローター11の周面に近接させる方向に押し付ける。その後さらにローター11が同方向に回転するにつれて、押圧コロ17はコロ係接面24上を(b)位置から(c)位置へと移動していく。この間、取付板22はローター11の周面に近接した位置に押圧されているので、吸着パッド21がワークガイド13の下方に潜り込むことを可能にしている。そして、さらにローター11が同方向に回転して、押圧コロ17がコロ係接面24を完全に通過したときに、(d)位置となって、コイルばね25により取付板22が突出位置に弾発復帰する。
【0040】
この間の取付板22と押圧コロ17の相対的位置関係を図7に示す。取付板22がローター11の回転につれて矢印方向に移動すると、押圧コロ17の位置がa位置からd位置へと移動する。この図における押圧コロ17の位置(a〜d)は図6(a)〜(d)に対応している。
【0041】
図6(d)位置において取付板22がばね付勢により突出すると、ワークガイド13の略直下に移動していた吸着パッド21がワークガイド13の最下方に収容されているワークWの下面に衝突して該ワークWを吸着する。この状態が図1および図2に示されている。前述のように、メカニカルバルブ57のアクチュエータ58は常時ばね付勢により突出して、バルブは開かれており、したがって吸着パッド21の内部空間26は常に吸着真空発生器50の真空ポート53に向けて吸気されている状態にある。この状態において図6(d)位置で吸着パッド21が最下方のワークWの下面に衝突して内部空間26を密封閉塞すると、この閉塞空間26に真空が形成され、該ワークWをしっかりと吸着する。
【0042】
このとき、吸着パッド21の内部空間26が常に吸気されていることから、図2に示されるように、吸着パッド21に吸引された最下方のワークWは弓反り状態となって、その上に隣接するワークWとの間の密着が解除されて隙間27が形成される。最下方のワークWは、ワークガイド13の下端から内方に突出する一対の係止縁14,14に係止されているので、この隙間27は係止縁14の延長方向、すなわちローター11の回転方向を長手方向とする断面略三日月状の隙間である。さらに、吸着パッド21に吸引された最下方のワークWはローター11の回転につれて円弧面上を移動しようとするが、その上に隣接するワークWは平面上で静止した状態を維持しようとするため、該上方ワークWとの間にずれが生じる。また、これらのワークガイド13の開口部のローター11回転方向前方に隣接して配置されているワーク押さえ15が、最下方のワークWを横方向に移動させたときにその上のワークWも一緒に移動してしまうことを防止する。これらにより、最下方のワークW一枚のみを確実にワークガイド13から離脱させる。
【0043】
ローター11が図6(d)位置に到達したとほぼ同時に、スリット板60のスリット61がセンサ62に対向する位置となって(図1参照)同位置がセンサ62で検知され、前記制御手段によりC/Bモータを停止させ、ローター11を停止させる。
【0044】
図6(d)の吸着位置は、吸着パッド21がワークガイド13の略直下に到達した位置とすることが好ましいが、ローター11の停止位置は必ずしもこの直下位置と同位置でなくても良く、むしろ吸着パッド21がこの直下位置を若干通り過ぎた前方位置でローター11を停止させるように制御することが好ましい。このような停止位置制御は電子的制御などの厳密な手法を用いて行ってももちろん良いが、吸着パッド21がワークガイド13の略直下に到達したときのスリット61の位置をセンサ62で検知してその検知信号でC/Bモータを停止させるように制御しても、クラッチおよびブレーキの動作タイムラグやローター11の回転慣性などによって実際には直下位置を若干通り過ぎた位置でローター11が停止することになるので、このような実際的な手法によって実現しても良い。
【0045】
これを図8を参照して説明すると、吸着パッド21がワークガイド13の略直下に到達したとき(言い換えれば、ローター11の直径がワークガイド13の中心線Xに略一致したとき)に押圧コロ17が取付板22のコロ係接面24から外れて最下方のワークWを吸着する。これが図6(d)の吸着位置であり、このときの最下方ワークWが図8に実線Waで示されている。この位置からローター11が矢印方向に微小角度回転した時点で停止し、このときの最下方ワークに伴って吸着パッド21が一点鎖線Wbで示されている。図8において、説明の便宜上、吸着位置の最下方ワークWaから停止位置の最下方ワークWbへの移動は若干誇張的に示されている。
【0046】
このように、吸着位置で吸着パッドに吸着された最下方ワークWは、その吸着状態を維持したままローター11の回転につれて停止位置まで若干移動するので、その上のワークWに対して横方向にずれる力が与えられる。したがって、前述の隙間27およびワーク押さえ15による作用とも相俟って、より確実に最下方のワークW一枚のみをワークガイド13から離脱させることができる。ワーク押さえ15は最下方ワークが吸着位置Waから停止位置Wbに移動する間に該最下方ワークを上方から押さえつけるように働くので、停止位置における最下方ワークWbは、図8に示すように変形し、その上のワークWからの分離をより確実にする。
【0047】
以上のようにして吸着位置またはその直後の位置でローター11の回転を停止させ(図6(d))、このときにはワークガイド13内の最下方ワークがその上のワークから分離されて一枚だけワークガイド13から離脱した状態が得られている(図8の最下方ワークWa)。この状態で、センサ63からの検出信号を待つ。センサ63が製品送りアタッチメント33の通過を検出すると、図示されないコンピュータがその検出信号を受けてC/Bモータを始動させてローター11を再び所定方向に回転させる。そして、ワークWを吸着した吸着パッド21がローター11の回転につれて下死点近くまで移動してきたときに、この吸着ユニット20に対応するメカニカルバルブ57のアクチュエータ58が分離ドッグ12に当接して押圧されるので、既述のように真空発生器50の真空ポート53からの吸引作用が無くなり、吸着パッド21の内部空間26の真空状態が解除される。これにより、図6(e)位置にて、吸着パッド21に吸着されていたワークWが吸着パッド21から分離され、製品ガイド31,31間で所定方向に駆動されている製品送りアタッチメント33,33間に落とし込まれ、後方から来るアタッチメント33に押されて同方向に搬送される。
【0048】
センサ63によるアタッチメント33の位置検出は、センサ63の設置場所、アタッチメント33の移動速度、アタッチメント33間の間隔、ローター11の回転速度、ローター11の寸法(直径)、ローター11上の吸引ユニット20の設置数などを勘案して、分離ドッグ12により分離されたワークWが確実にアタッチメント33,33間に落とし込まれるようにする。
【0049】
以上のようにして、ローター11が一回転する間に、吸着パッド21によるワーク吸着と分離ドッグ12によるワーク分離を行う。この実施形態では、これが4つの吸着ユニット20の各々で行われるので、ローター11の一回転の間に4枚のワークWを搬送装置30に供給することができる。
【0050】
この実施形態によるアルコール蒸散剤供給装置を用いて、大和紙工株式会社が製造販売する食品鮮度保持剤「フレッシュドット」(登録商標)を調理パン包装のための搬送装置30に供給したところ、毎分80個の高速搬送にも対応して、一個ずつ確実に吸着と分離を繰り返して供給できる能力を備えていることが判明した。
【0051】
なお、この装置に上記の能力を与えるためには、吸着パッド21をワークガイド13最下方のワークWに密着させた後に瞬時に吸着パッド21の内部空間26を真空にする必要があり、これを実現するために、吸着パッド21をローター11にヒンジ止めした取付板22に取り付け、且つ、この取付板22をバネ付勢することによって、吸着パッド21を叩きつけるようにして最下方ワークWに密着させている。本発明者は、ローター11の外周面に直接吸着パッドを取り付けた装置構成についても実験を行ったが、この場合には、図9(a)に示すように吸着パッド21の縁がワークWの下面に擦れてめくれ上がり、このままさらに回転しても図9(b)に示すように内部に隙間28ができてしまって密着力が不十分となり、上方のワークから分離して繰り出すことができない事態が頻発した。特に、毎分80個あるいはそれ以上の高速搬送に対応したワーク供給を行うことは不可能であった。
【0052】
以上に本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲によって規定される発明の範囲内において様々に変形した形態で実施することができる。
【0053】
たとえば、図示実施形態では、装置構成の簡略化、メンテナンスの容易化、コストダウンなどを考慮して極力メカニカルな制御手法を採用しているが、本発明の作用効果を実現することができるものであれば、他の制御手法を採用しても良い。
【0054】
また、図示実施形態では、ローター11の回転方向を搬送装置30における製品送りアタッチメント33の送り方向と略同一にしているが、ローター11の回転方向を製品送り方向と逆方向にしてワーク供給を行っても良い。
【0055】
また、図示実施形態では、吸着位置またはその直後でローター11を停止させた後にセンサ63からの検出信号を受けてローター11を駆動する間欠駆動を行っているが、ローター11の回転駆動源としてステッピングモータを用いるなどにより、ローター11の回転周速度と搬送装置30におけるアタッチメント33の移動速度を厳密に同期制御させることができれば、ローター11を所定速度で連続回転させる装置構成を採用しても良い。この場合であっても、図8を参照して説明したずらし効果は同様に発揮されるので、ワークガイド13の最下方ワークをその上のワークから分離して一枚だけを確実に吸着・移送させることができる。
【0056】
また、本発明は、多少の厚み変動が避けられず且つ互いに密着接合しやすいアルコール蒸散剤を確実に一枚ずつ供給するための装置としてきわめて有用であり、図示実施形態も同装置に関するものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されず、所定寸法のカード状物を一枚ずつ供給するための装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の好適な一実施形態によるアルコール蒸散剤供給装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】この装置の要部拡大斜視図である。
【図3】この装置における真空発生機構を概略的に示す図である。
【図4】該真空発生機構に用いられる真空発生器の原理図である。
【図5】真空パッドおよび関連要素を示す図である。
【図6】ローターが一回転する間の各部の位置および動作を概略的に示す説明図である。
【図7】ローター回転に伴う真空パッド取付板と押圧コロとの相対的位置関係の変化状態を示す説明図である。
【図8】吸着パッドが最下方ワークを吸着し、その上のワークから分離して移送する作用を示す説明図である。
【図9】吸着パッドをローター外周面に直接取り付けた場合の不具合状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 アルコール蒸散剤供給装置(ワーク供給装置)
11 ローター
12 分離ドッグ(真空解除手段)
13 ワークガイド(ワーク収容手段)
15 ワーク押さえ
17 押圧コロ(押圧手段)
20 吸着ユニット
21 吸着パッド
22 取付板
23 ヒンジ軸
24 コロ係接面
25 コイルばね(付勢手段)
26 吸着パッドの内部空間
27 隙間
28 隙間
30 搬送装置
31 製品ガイド
33 製品送りアタッチメント
40 真空発生機構
43 パイプ軸
47 多回路分岐配管
48 分岐管
49 吸引チューブ
50 真空発生器(真空発生手段)
51 供給ポート
53 真空ポート
55 排気ポート
57 メカニカルバルブ
58 アクチュエータ
60 スリット板
61 スリット
62 ローター位置検出センサ
63 アタッチメント位置検出センサ
W アルコール蒸散剤(カード状ワーク)
Wa 吸着位置のワーク
Wb 停止位置のワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給しようとするカード状のワークを積み重ねた状態で収容するワーク収容手段と、ローター駆動手段により所定方向に回転駆動されるローターと、このローターの周面に設けられる一以上の吸着ユニットとを有し、吸着ユニットは、ローターの周面にヒンジ止めされた取付板と、取付板をローターの周面から離す方向に付勢する付勢手段と、取付板の先端付近に設けられた吸着パッドとを備えており、さらに、吸着ユニットの取付板に係合可能な押圧手段と、吸着パッドの内部空間を真空吸引して吸着パッドに吸引力を与える真空発生手段と、この真空発生手段の作用を解除して吸着パッドの吸引力を消失させる真空解除手段とを有して構成され、ローターの一回転の間の第一の位置で押圧手段が取付板に係合して付勢手段に抗して取付板をローターの周面に近接させる方向に押圧し、その後の第二の位置で押圧手段が取付板から離脱することにより取付板が付勢手段により弾発して吸着パッドがワーク収容手段の最下方に収容されているワークに衝突して真空発生手段により与えられる吸引力で該ワークを吸着し、その後の第三の位置で真空解除手段により吸引力を消失させることにより該ワークが吸着パッドから分離されて所定の搬送装置に供給されることを特徴とする、カード状ワークの供給装置。
【請求項2】
ローターの周面にn(n≧1)個の吸着ユニットが設けられ、ローターの一回転の間にn回のワーク吸着およびワーク分離が行われてn個のワークが供給されることを特徴とする、請求項1記載の供給装置。
【請求項3】
ワーク収容手段のローター回転方向前方に隣接してワーク押さえが設けられ、第二の位置で吸着パッドに吸着された最下方ワークをその後のローター回転につれて上方のワークから引き離す作用を果たすことを特徴とする、請求項1または2記載の供給装置。
【請求項4】
ローターが第二の位置に到達したことを検出するローター位置検出センサが設けられ、このローター位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを所定位置で停止させることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の供給装置。
【請求項5】
前記ローター停止位置が第二の位置よりローター回転方向において若干前方に位置することを特徴とする、請求項4記載の供給装置。
【請求項6】
搬送装置における送りアタッチメントが所定位置に到達したことを検出するアタッチメント位置検出センサが設けられ、このアタッチメント位置検出センサからの検出信号に基づいて前記所定の停止位置からローターを再び回転始動することを特徴とする、請求項4または5記載の供給装置。
【請求項7】
ローター位置検出センサが、ローターの回転軸に固着されてローターと共に回転するスリット板のスリット位置を検出する光センサであることを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか記載の供給装置。
【請求項8】
ローター駆動手段が、ローター位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを前記停止位置で停止させ、その後のアタッチメント位置検出センサからの検出信号に基づいてローターを再び回転駆動させるようにローターを間欠駆動することを特徴とする、請求項4ないし7のいずれか記載の供給装置。
【請求項9】
真空発生手段がローター内部に設けられた真空発生器からなり、この真空発生器の一次側の供給ポートが圧縮空気源からの圧縮空気供給手段が接続されると共に、二次側の真空ポートには各吸着ユニットの吸着パッドの内部空間に通じる吸引チューブが接続され、供給ポートに供給された一次側の圧縮空気および真空ポートから入り込む二次側の空気を排気ポートから排気することにより、吸着パッドの内部空間を真空吸引することを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか記載の供給装置。
【請求項10】
真空発生器の排気ポートにメカニカルバルブが接続され、このメカニカルバルブが常時は開かれていることにより排気ポートからの排気をメカニカルバルブを介して大気に開放して真空発生器による真空吸引作用を供給パッドの内部空間に与えることを特徴とする、請求項9記載の供給装置。
【請求項11】
メカニカルバルブを開閉制御するアクチュエータが進退可能に設けられると共に、このアクチュエータを常時は突出位置に向けて付勢する付勢手段が設けられ、アクチュエータが付勢手段により突出位置に維持されている間はメカニカルバルブが開いた状態にあり、アクチュエータが付勢手段の付勢力に抗して後退位置に移動したときにメカニカルバルブが閉じた状態になることを特徴とする、請求項10記載の供給装置。
【請求項12】
メカニカルバルブのアクチュエータがローターの端面から突出して設けられており、ローターが前記第三の位置に到達したときに真空解除手段が突出位置にあるアクチュエータに当接してメカニカルバルブを閉じた状態にすることを特徴とする、請求項11記載の供給装置。
【請求項13】
真空解除手段が、ローター回転軸に略平行に延長してその先端がアクチュエータの突出位置に干渉するよう位置付けられていることを特徴とする、請求項12記載の供給装置。
【請求項14】
圧縮空気源からの圧縮空気供給手段が、ローターの内部に圧縮空気を供給する単一の供給路と、この単一の供給路をローター周面に設けられる吸着ユニットの個数と同数に分岐配管する多回路分岐配管とを含むことを特徴とする、請求項9ないし13のいずれか記載の供給装置。
【請求項15】
ローターの回転軸が中空のパイプ軸であり、このパイプ軸が前記単一の供給路を兼ねることを特徴とする、請求項14記載の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−94513(P2008−94513A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275034(P2006−275034)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【出願人】(501256878)大和紙工株式会社 (1)
【出願人】(503008480)
【Fターム(参考)】