説明

カード用コネクタ

【課題】構成品の成形が容易であり、組み立てが容易なカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カードが挿入される第1ハウジング1と、カードに係止して進退する第1スライダ5と、第1スライダ5に軸部が回転可能に保持される第1回転カム部材7と、第1回転カム部材7を付勢する圧縮コイルばね8と、を備える。第1スライダ5は、第1回転カム部材7の端部に設けた第1山形歯と噛み合う第2山形歯を有する。第1回転カム部材7は、幅の広い第1突条と幅の狭い第2突条を軸部の外周に交互に設ける。カードを挿入すると、第1回転カム部材7が所定角度回動して、第1突条が通過溝14の始端に対向するので、第1スライダ5がロックされる。カードを再度押すと、第1回転カム部材7が所定角度回動して、第2突条が通過溝14の始端に対向するので、カードを排出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関する。特に、カードの排出を容易にするイジェクト機構付きのカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる、プッシュ・プッシュ型と呼ばれるイジェクト機構付きカード用コネクタは、カードをコネクタに挿入(プッシュ)するとロックされる。又、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される。プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタは、カードを押圧操作することにより、内部に備わるイジェクト機構がカードの排出を容易にしている。
【0003】
上述したプッシュ・プッシュ型のイジェクト機構としては、ハート状のカム溝を形成するスライダ、及びハート状のカム溝に案内される案内棒を備えるイジェクト機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述したイジェクト機構を備えるコネクタは、カードの押圧操作により案内棒の一端がハート状のカム溝を移動し、カードの係止位置と排出位置を規定している。しかし、特許文献1によるコネクタは、幅広のスライダをハウジングの内部に備えるので、コネクタの外形を大きくするという不具合があった。
【0005】
上述した不具合を解消するため、カードの係止及び排出機構を小型にすることにより、小型のカード用コネクタが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−071667号公報
【特許文献2】特開2000−195587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図20は、特許文献2によるカード用コネクタに備わるハウジングの部分拡大斜視図である。本願の図20は、特許文献2の図10に相当している。図21は、特許文献2によるカード用コネクタに備わるトレイの平面図である。本願の図21は、特許文献2の図4に相当している。
【0007】
図22は、特許文献2によるカード用コネクタに備わる回転カム部材の図であり、図22(A)は、回転カム部材の右側面図、図22(B)は、回転カム部材の正面図、図22(C)は、回転カム部材の左側面図である。本願の図22は、特許文献2の図13に相当している。
【0008】
図20から図22を参照すると、特許文献2によるカード用コネクタは、板状のハウジング91とトレイ92を備えている。ハウジング91は、複数のコンタクト(図示せず)を凹部910に配置している。トレイ92は、凹部910に対して摺動可能とされ、カード(図示せず)を受容可能となっている。
【0009】
図20から図22において、トレイ92は、前位置でカードを受容して後方へと移動されるとき、後位置に維持されるようにハウジング91に係合されている。そして、トレイ92が再度後側に押圧されると、係合が解除されて再度前位置へと復帰するよう構成されている。
【0010】
図21を参照すると、トレイ92は、本体の一側から突出する突部920、及び突部920から後方へと延びる柱部921を有している。柱部921の後端には、ラチェット状の複数の歯923を放射状に形成している。
【0011】
一方、図20を参照すると、ハウジング91は、トレイ92の摺動方向x(図21参照)に延びて、連通しそれぞれ前後に位置する第1キャビティ911及び第2キャビティ912を有している。
【0012】
又、図20及び図22を参照すると、特許文献2によるカード用コネクタは、第2キャビティ912の内部で摺動及び回動が可能な回転カム部材93を備えている。回転カム部材93は、圧縮コイルばね(図示せず)で力を付勢されて前方に移動できる。又、第1キャビティ911内では、回転カム部材93は、回転が制約されて、進退運動のみが許容される。
【0013】
図21及び図22を参照すると、回転カム部材93は、柱部921の歯923と噛み合うラチェット状の複数の歯931を一方の端部に有している。又、回転カム部材93の本体930の外周には、等間隔に本体930の長手方向に延びる突条932を三つ突設している。
【0014】
図20及び図22を参照すると、三つの突条260の外面は、円弧状に形成されており、第2キャビティ912の内部を回転できる。一方、第1キャビティ911は、断面が略円形であり、3方向に等間隔で放射状に溝を形成している。これらの溝は、第1キャビティ911の長手方向に沿って延び、その内の一つは底面が面開口した溝911cとなり、他の2つは底面が閉塞した溝911a・911bとなっている。突条932は、これらの溝911a・911b・911cに案内されて、移動できる。
【0015】
特許文献2によるカード用コネクタは、上記のとおり構成しているので、カードの押圧によりトレイ92を後方に移動すると、柱部921に押圧されて、回転カム部材93が移動する。
【0016】
そして、回転カム部材93が第1キャビティ911から第2キャビティ912へと移動すると、回転カム部材93が一方の方向に回転して、突条932の端面が第1キャビティ911と第2キャビティ912の境界の壁914に係止されて、トレイ92が逆行困難な停止位置となる。
【0017】
トレイ92が再度後方に押されると、回転カム部材93が一方の方向に回転して、突条932が溝911a・911b・911cに係合してトレイ92を押し出し、カードを排出できる。
【0018】
しかし、図20を参照すると、特許文献2によるカード用コネクタは、ハウジング91を成形するに当たり、X方向に対向する一対の金型とY方向に対向する一対の金型を少なくとも必要としている。したがって、ハウジング91の製造原価を低減できない要因の一つのとなっている。
【0019】
又、図20から図22を参照すると、特許文献2によるカード用コネクタは、組立が容易でない構成となっている。
【0020】
構成品をいたずらに増やすことなく、構成品の形状を工夫することにより、構成品の成形が容易な、カードの係止及び排出機構を備えるコネクタ、又は組み立てが容易な、カードの係止及び排出機構を備えるコネクタが実現できれば、カード用コネクタの製造原価の低減に寄与できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0021】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、構成品の成形が容易であり、かつ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、カードの先端縁に係止して進退可能なスライダに回転カム部材を内装する仕組みにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たなカード用コネクタを発明するに至った。
【0023】
(1) カードが挿入される凹部を設ける平板状の第1ハウジングと、この第1ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けるカバーと、前記第1ハウジングの凹部の片翼に配置して、前記カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される帯板状の第1スライダと、この第1スライダに保持されて軸方向に僅かに移動すると共に回転可能な第1回転カム部材と、この第1回転カム部材を前記カードが排出する方向に力を付勢する付勢手段と、を備え、前記第1ハウジングは、前記第1スライダの長手方向に沿って対向配置する第1突起及び第2突起を案内する第1直線溝及び第2直線溝を有し、前記第1スライダは、当該第1スライダの長手方向と略直交する方向に突出して前記カードの端縁が当接可能な鉤片を有し、前記第1回転カム部材は、円柱状の軸部の外周に放射状に突出する複数の突条であって、幅の広い第1突条と幅の狭い第2突条を交互に設ける複数の突条と、前記軸部の一方の端部に設けて軸方向に突出する複数のラチェット状の第1山形歯と、前記軸部の他方の端部に設けて前記付勢手段の他方の端部が当接する端面と、を有し、前記第1ハウジングは、前記軸部の外周を受ける第1劣弧溝と、前記第1突起を案内する前記第1直線溝に連通して前記第2突条の一つのみが通過可能な通過溝と、この通過溝の始端の両翼に形成された一対の第1傾斜面であって、前記第1回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差する一対の第1傾斜面と、を設け、前記第1スライダは、外周方向に開口して前記軸部の外周を保持する第1軸受部と、前記第1山形歯と噛み合って当該第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる複数のラチェット状の第2山形歯と、を設け、前記第1突条及び前記第2突条は、一対の前記第1傾斜面に当接して当該第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる第2傾斜面を前記第1山形歯が突出する方向に設け、前記第1ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されるカード用コネクタ。
【0024】
(1)の発明によるカード用コネクタは、平板状の第1ハウジング、カバー、及び帯板状の第1スライダを備えている。第1ハウジングは、カードが挿入される凹部を設けている。カバーは、第1ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けている。第1スライダは、第1ハウジングの凹部の片翼に配置している。又、第1スライダは、カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される。
【0025】
又、(1)の発明によるカード用コネクタは、第1回転カム部材と付勢手段を備えている。第1回転カム部材は、第1スライダに保持されており、軸方向に僅かに移動すると共に回転可能となっている。付勢手段は、第1回転カム部材をカードが排出する方向に力を付勢している。
【0026】
第1ハウジングは、第1直線溝及び第2直線溝を有している。第1直線溝及び第2直線溝は、第1スライダの長手方向に沿って対向配置する第1突起及び第2突起を案内する。第1スライダは、鉤片を有している。鉤片は、第1スライダの長手方向と略直交する方向に突出しており、カードの端縁が当接可能となっている。
【0027】
第1回転カム部材は、複数の突条、複数のラチェット状の第1山形歯、及び端面を有している。複数の突条は、円柱状の軸部の外周に放射状に突出している。そして、複数の突条は、幅の広い第1突条と幅の狭い第2突条を交互に設けている。第1山形歯は、軸部の一方の端部に設けており、軸方向に突出している。端面は、軸部の他方の端部に設けており、付勢手段の他方の端部が当接する。
【0028】
更に、第1ハウジングは、第1劣弧溝、通過溝、及び一対の第1傾斜面を設けている。第1劣弧溝は、軸部の外周を受けている。通過溝は、第1突起を案内する第1直線溝に連通しており、第2突条の一つのみが通過可能となっている。一対の第1傾斜面は、通過溝の始端の両翼に形成されており、第1回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差している。
【0029】
又、第1スライダは、第1軸受部と複数のラチェット状の第2山形歯を設けている。第1軸受部は、外周方向に開口しており、軸部の外周を保持している。第2山形歯は、第1山形歯と噛み合って、第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる。
【0030】
第1突条及び第2突条は、第1山形歯が突出する方向にそれぞれ第2傾斜面を設けている。第2傾斜面は、一対の第1傾斜面に当接して第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる。そして、第1ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されている。
【0031】
ここで、第1ハウジング及び後述する第2ハウジングは、絶縁性を有することが好ましい。そして、絶縁性のハウジングとは、非導電性の材料からなるハウジングのことであってよく、合成樹脂を成形して、所望の形状の絶縁性のハウジングを得ることができる。
【0032】
例えば、第1及び第2ハウジングは、基端部から先端部に向かって略平行に延びる一対のアームと、これら一対のアームの基端部同士を連結する連結部と、を有してよく、一対のアームには、互いに対向しかつ先端部から基端部に至る溝を設けてよく、これらの溝にカードの両翼が案内されて、カードを第1ハウジング又は第21ハウジングに収容できる。
【0033】
第1及び第2ハウジングの基端部に圧入又はモールディング(一体成型)により、複数のコンタクトを固定してよく、コンタクトの一端がカードの端子(電気端子)に接触してよく、コンタクトの他端がプリント基板にはんだ接合されることが好ましい。コンタクトの他端は、プリント基板に無はんだ接続されてもよい。
【0034】
コンタクトは、ピンコンタクトであってよく、ソケットコンタクトであってよく、カンチレバーコンタクトなどのばね性を有する板コンタクトであってもよい。カードに設けられた端子の種別に対応して、適宜なコンタクトが選択される。
【0035】
カバーは、例えば、金属薄板からなり、展開された金属薄板を成形加工することにより、所望の形状のカバーを得ることができる。カバーは、導電性の金属薄板からなることが好ましく、カバーの平坦面が第1及び第2ハウジングを覆うことによりシールド効果が得られる。又、カバーの平坦面が第1ハウジング又は第2ハウジングを覆うことにより、第1スライダ又は第2スライダの浮き上がりを防止できる。
【0036】
カバーは、その両翼が略直角に折り曲げ加工されて、一対の両翼片を形成してよく、これらの両翼片に開口を形成し、第1ハウジング又は第2ハウジングの両側面に突出する突起に係止できる。又、カバーは、その両翼片にプリント基板にはんだ接合される複数のリード端子を設けてよく、このカード用コネクタをプリント基板に表面実装できる。
【0037】
第1軸受部は、軸部の直径より僅かに大きく外周方向に開口することが好ましく、軸部を外周方向から挿入して、軸部を保持できる。第1劣弧溝は、軸部の直径より小さく開口しており、第1軸受部に当接することなく、軸部の外周を部分的に支持できる。
【0038】
第1スライダと第1回転カム部材は、間欠運動装置を構成している。第1軸受部と複数の第2山形歯は、軸中心を共有して対向配置しており、第2山形歯に対して第1山形歯が進退することにより、第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転できる。又、第1スライダと第1回転カム部材は、第1回転カム部材が進退しながら回転する、立体カム装置を構成しているということもできる。
【0039】
カードをカード用コネクタに挿入していない状態では、第1スライダは、付勢手段(実体として、圧縮コイルばね)に付勢されて、第1ハウジングの先端部側に移動して停止している(待機している)。
【0040】
この待機状態では、付勢手段に付勢されて、第1山形歯は、第2山形歯に向かう力を付与されている。又、この待機状態では、第1山形歯が第2山形歯と僅かに噛み合って、第1回転カム部材は、一方の方向に回転する力を付与されているが、通過溝に第1突条が規制されて、第1回転カム部材の回転が停止されている。
【0041】
カードをカード用コネクタに挿入すると、カードの端縁が鉤片に当接して、第1スライダ及び第1回転カム部材を基端部側に移動できる。この移動過程では、第1山形歯が第2山形歯と僅かに噛み合って、第1回転カム部材は、一方の方向に回転する力を付与されているが、通過溝に第2突条が規制されて、第1回転カム部材の回転が停止されている。
【0042】
カードを凹部の基端部側に押し切ると、第1スライダが停止して、第1回転カム部材の軸方向に移動する運動が第1山形歯と第2山形歯が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第1回転カム部材が間欠的に一方の方向に回動する。
【0043】
カードを凹部の基端部側に押し切った状態から、カードを解放すると、第1回転カム部材が付勢手段に付勢されて、初期の状態に移動する。そして、第2傾斜面が第1傾斜面に当接して、第1回転カム部材が間欠的に更に回動する。
【0044】
この状態では、幅の広い第1突条が通過溝の始端に対向しているので、第1回転カム部材の移動は困難である。つまり、第1ハウジングに対して第1スライダがロックされる。
【0045】
このロック状態から、カードを略凹部の基端部側に押し切ると、第1山形歯と第2山形歯が噛み合って、第1回転カム部材が間欠的に一方の方向に回動する。そして、カードを解放すると、第2傾斜面が第1傾斜面に当接して、第1回転カム部材が間欠的に更に回動する。
【0046】
この状態では、幅の狭い第2突条が通過溝の始端に対向しているので、第1回転カム部材が移動できる。つまり、カードが鉤片に引きずられて、カード用コネクタからカードを排出できる。
【0047】
このように、(1)の発明によるカード用コネクタは、カードをコネクタに挿入(プッシュ)するとロックされ、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される、プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタを実現している。
【0048】
(1)の発明によるカード用コネクタは、特許文献2によるハウジングのように、板厚方向から成形される第1キャビティを第1ハウジングが設けておらず、第1ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形される。したがって、第1ハウジングの製造原価の低減に寄与できる。
【0049】
又、(1)の発明によるカード用コネクタは、第1ハウジング、第1回転カム部材、及び第1スライダを積み重ねるように組み立てることができ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供できる。
【0050】
(2) カードが挿入される凹部を設ける平板状の第2ハウジングと、この第2ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けるカバーと、前記第2ハウジングの凹部の片翼に配置して、前記カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される帯板状の第2スライダと、この第2スライダに保持されて軸方向に僅かに移動すると共に回転可能な第2回転カム部材と、この第2回転カム部材を前記カードが排出する方向に力を付勢する付勢手段と、を備え、前記第2ハウジングは、前記第2スライダの長手方向に沿って配置する第3突起を案内する第3直線溝を有し、前記第2スライダは、当該第2スライダの長手方向と略直交する方向に突出して前記カードの端縁が当接可能な鉤片を有し、前記第2回転カム部材は、円柱状の軸部の外周に相反する向きに突出する一対の第3突条と、前記軸部の一方の端部に設けて軸方向に突出する複数のラチェット状の第1山形歯と、前記軸部の他方の端部に設けて前記付勢手段の他方の端部が当接する端面と、を有し、前記第2ハウジングは、前記軸部の外周を受ける第2劣弧溝と、この第2劣弧溝と軸中心を共有して前記一対の第3突条を除外する前記軸部の外周のみが通過可能な円弧溝と、この円弧溝の始端の両翼に形成された一対の第3傾斜面であって、前記第2回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差する一対の第3傾斜面と、を設け、前記第2スライダは、外周方向に開口して前記軸部の外周を保持する第2軸受部と、前記第1山形歯と噛み合って当該第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる複数のラチェット状の第2山形歯と、を設け、前記第3突条は、一対の前記第3傾斜面に当接して当該第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる第4傾斜面を前記第1山形歯が突出する方向に設け、前記第2ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されるカード用コネクタ。
【0051】
(2)の発明によるカード用コネクタは、平板状の第2ハウジング、カバー、及び帯板状の第2スライダを備えている。第2ハウジングは、カードが挿入される凹部を設けている。カバーは、第2ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けている。第2スライダは、第2ハウジングの凹部の片翼に配置している。又、第2スライダは、カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される。
【0052】
又、(2)の発明によるカード用コネクタは、第2回転カム部材と付勢手段を備えている。第2回転カム部材は、第2スライダに保持されており、軸方向に僅かに移動すると共に回転可能となっている。付勢手段は、第2回転カム部材をカードが排出する方向に力を付勢している。
【0053】
第2ハウジングは、第3直線溝を有している。第3直線溝は、第2スライダの長手方向に沿って配置する第3突起を案内する。第2スライダは、鉤片を有している。鉤片は、第2スライダの長手方向と略直交する方向に突出しており、カードの端縁が当接可能となっている。
【0054】
第2回転カム部材は、一対の第3突条、複数のラチェット状の第1山形歯、及び端面を有している。一対の第3突条は、円柱状の軸部の外周に相反する向きに突出している。第1山形歯は、軸部の一方の端部に設けており、軸方向に突出している。端面は、軸部の他方の端部に設けており、付勢手段の他方の端部が当接する。
【0055】
更に、第2ハウジングは、第2劣弧溝、円弧溝、及び一対の第3傾斜面を設けている。第2劣弧溝は、軸部の外周を受けている。円弧溝は、第2劣弧溝と軸中心を共有しており、一対の第3突条を除外する軸部の外周のみが通過可能となっている。一対の第3傾斜面は、円弧溝の始端の両翼に形成されており、第2回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差している。
【0056】
又、第2スライダは、第2軸受部と複数のラチェット状の第2山形歯を設けている。第2軸受部は、外周方向に開口しており、軸部の外周を保持している。第2山形歯は、第1山形歯と噛み合って、第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる。
【0057】
一対の第3突条は、第1山形歯が突出する方向にそれぞれ第4傾斜面を設けている。第4傾斜面は、第3傾斜面に当接して第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる。そして、第2ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されている。
【0058】
第2軸受部は、軸部の直径より僅かに大きく外周方向に開口することが好ましく、軸部を外周方向から挿入して、軸部を保持できる。第2劣弧溝は、軸部の直径より小さく開口しており、第2軸受部に当接することなく、軸部の外周を部分的に支持できる。
【0059】
第2スライダと第2回転カム部材は、間欠運動装置を構成している。第2軸受部と複数の第2山形歯は、軸中心を共有して対向配置しており、第2山形歯に対して第1山形歯が進退することにより、第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転できる。又、第2スライダと第2回転カム部材は、第1回転カム部材が進退しながら回転する、立体カム装置を構成しているということもできる。
【0060】
カードをカード用コネクタに挿入していない状態では、第2スライダは、付勢手段(実体として、圧縮コイルばね)に付勢されて、第2ハウジングの先端部側に移動して停止している(待機している)。
【0061】
この待機状態では、付勢手段に付勢されて、第1山形歯は、第2山形歯に向かう力を付与されている。又、この待機状態では、第1山形歯が第2山形歯と僅かに噛み合って、第2回転カム部材は、一方の方向に回転する力を付与されているが、円弧溝の両翼に一対の第3突条が規制されて、第2回転カム部材の回転が停止されている。
【0062】
カードをカード用コネクタに挿入すると、カードの端縁が鉤片に当接して、第2スライダ及び第2回転カム部材を基端部側に移動できる。この移動過程では、第1山形歯が第2山形歯と僅かに噛み合って、第2回転カム部材は、一方の方向に回転する力を付与されているが、円弧溝の両翼に一対の第3突条が規制されて、第2回転カム部材の回転が停止されている。
【0063】
カードを凹部の基端部側に押し切ると、第2スライダが停止して、第3突条が円弧溝から解放される。そして、第2回転カム部材が付勢手段に付勢されて、第1回転カム部材の軸方向に移動する運動が第1山形歯と第2山形歯が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第2回転カム部材が間欠的に一方の方向に回動する。
【0064】
カードを凹部の基端部側に押し切った状態から、カードを解放すると、第2回転カム部材が付勢手段に付勢されて、初期の状態に移動する。そして、第4傾斜面が第2傾斜面に当接して、第2回転カム部材が間欠的に更に回動する。
【0065】
この状態では、一対の第3突条のいずれか一方の第3突条が円弧溝の始端に対向しているので、第2回転カム部材の移動は困難である。つまり、第2ハウジングに対して第2スライダがロックされる。
【0066】
このロック状態から、カードを略凹部の基端部側に押し切ると、第1山形歯と第2山形歯が噛み合って、第2回転カム部材が間欠的に一方の方向に回動する。そして、カードを解放すると、第4傾斜面が第3傾斜面に当接して、第2回転カム部材が間欠的に更に回動する。
【0067】
この状態では、一対の第3突条を除外する軸部の外周が円弧溝の始端に対向しているので、第2回転カム部材が移動できる。つまり、カードが鉤片に引きずられて、カード用コネクタからカードを排出できる。
【0068】
このように、(2)の発明によるカード用コネクタは、カードをコネクタに挿入(プッシュ)するとロックされ、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される、プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタを実現している。
【0069】
(2)の発明によるカード用コネクタは、特許文献2によるハウジングのように、板厚方向から成形される第1キャビティを第2ハウジングが設けておらず、第2ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形される。したがって、第2ハウジングの製造原価の低減に寄与できる。
【0070】
又、(2)の発明によるカード用コネクタは、第2ハウジング、第2回転カム部材、及び第2スライダを積み重ねるように組み立てることができ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供できる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によるカード用コネクタは、カードをコネクタに挿入(プッシュ)するとロックされ、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される、プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタを実現している。
【0072】
又、発明によるカード用コネクタは、特許文献2によるハウジングのように、板厚方向から成形される第1キャビティをハウジングが設けておらず、ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形される。したがって、ハウジングの製造原価の低減に寄与できる。
【0073】
更に、本発明によるカード用コネクタは、ハウジング、回転カム部材、及びスライダを積み重ねるように組み立てることができ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0075】
図1は、本発明によるカード用コネクタ(以下、コネクタと略称する)の第1実施形態を示す斜視図であり、カードが装着された状態図である。図2は、前記第1実施形態によるコネクタの斜視分解組立図であり、カバーが分離された状態図である。
【0076】
図3は、前記第1実施形態によるコネクタの斜視分解組立図であり、カバーが取りはずされた状態図である。図4は、前記第1実施形態によるコネクタの斜視分解組立図であり、前記第1実施形態によるコネクタを下面側から観ている。図5は、前記第1実施形態によるコネクタの斜視分解組立図であり、第1スライダ、第1回転カム部材、及び圧縮コイルばねで構成している。
【0077】
図6は、前記第1実施形態によるコネクタを下面から観た斜視図であり、第1回転カム部材が第1ハウジングにロックした状態図である。図7は、前記第1実施形態によるコネクタを下面から観た斜視図であり、図6の状態変化図である。図8は、前記第1実施形態によるコネクタを下面から観た斜視図であり、図7の状態変化図である。図9は、前記第1実施形態によるコネクタを下面から観た斜視図であり、カードを挿入していない待機状態図である。
【0078】
図10は、前記第1実施形態によるコネクタにカードを挿入してロックされた状態図であり、図10(A)は図6の横断面図、図10(B)は図10(A)の平面図である。図11は、図10の状態変化図であり、図11(A)は図7の横断面図、図11(B)は図11(A)の平面図である。図12は、図11の状態変化図であり、図12(A)は図9の横断面図、図12(B)は図12(A)の平面図である。
【0079】
図13は、前記第1実施形態によるコネクタにカードを挿入して押しきった状態図であり、図13(A)は図12(A)の状態変化図、図13(B)は図13(A)の平面図である。
【0080】
図14は、本発明によるコネクタの第2実施形態を示す斜視分解組立図であり、カバーが取りはずされた状態図である。図15は、前記第2実施形態によるコネクタの斜視分解組立図であり、第2スライダ、第2回転カム部材、及び圧縮コイルばねで構成している。
【0081】
図16は、前記第2実施形態によるコネクタにカードを挿入してロックされた状態図であり、図16(A)は図10(A)に対応する横断面図、図16(B)は図16(A)の平面図である。図17は、図16の状態変化図であり、図17(A)は図11(A)に対応する横断面図、図17(B)は図17(A)の平面図である。図18は、図17の状態変化図であり、図18(A)は図12(A)に対応する横断面図、図18(B)は図18(A)の平面図である。
【0082】
図19は、前記第2実施形態によるコネクタにカードを挿入して押しきった状態図であり、図19(A)は図18(A)の状態変化図、図19(B)は図19(A)の平面図である。
【0083】
最初に、本発明の第1実施形態によるコネクタの構成を説明する。図1から図5を参照すると、第1実施形態によるコネクタ100は、平板状の第1ハウジング1、カバー3、及び帯板状の第1スライダ5を備えている。第1ハウジング1は、カード1cが挿入される凹部10を設けている。カバー3は、第1ハウジング1の凹部10を覆う平坦面30を設けている。第1スライダ5は、第1ハウジング1の凹部10の片翼に配置している。又、第1スライダ5は、カード1cの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される。
【0084】
又、図1から図5を参照すると、コネクタ100は、第1回転カム部材7と圧縮コイルばね(付勢手段)8を備えている。第1回転カム部材7は、第1スライダ5に保持されており、軸方向に僅かに移動すると共に回転可能となっている。圧縮コイルばね8は、第1回転カム部材7をカード1cが排出する方向に力を付勢している。
【0085】
図1から図5を参照すると、第1ハウジング1は、第1直線溝11及び第2直線溝12を有している。第1直線溝11及び第2直線溝12は、第1スライダ5の長手方向に沿って対向配置する第1突起51及び第2突起52を案内する。
【0086】
図1から図5を参照すると、第1スライダ5は、鉤片53を有している。鉤片53は、第1スライダ5の長手方向と略直交する方向に突出しており、カード1cの端縁が当接可能となっている。
【0087】
図3又は図5を参照すると、第1回転カム部材7は、複数の突条70、複数のラチェット状の第1山形歯73、及び端面74を有している。複数の突条70は、円柱状の軸部70aの外周に放射状に突出している。そして、複数の突条70は、幅の広い第1突条71と幅の狭い第2突条72を交互に設けている。第1山形歯63は、軸部70aの一方の端部に設けており、軸方向に突出している。端面74は、軸部70aの他方の端部に設けており、圧縮コイルばね8の他方の端部が当接する。
【0088】
更に、図2から図5を参照すると、第1ハウジング1は、第1劣弧溝13、通過溝14、及び一対の第1傾斜面15・15を設けている。第1劣弧溝13は、軸部70aの外周を受けている。通過溝14は、第1突起51を案内する第1直線溝11に連通しており、第2突条72の一つのみが通過可能となっている。一対の第1傾斜面15・15は、通過溝14の始端の両翼に形成されており、第1回転カム部材7の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差している。
【0089】
又、図5を参照すると、第1スライダ5は、第1軸受部54と複数のラチェット状の第2山形歯55を設けている。第1軸受部54は、外周方向に開口しており、軸部70aの外周を保持している。第2山形歯55は、第1山形歯73と噛み合って、第1回転カム部材7を間欠的に一方の方向に回転させる。
【0090】
図4又は図5を参照すると、第1突条71及び第2突条72は、第1山形歯73が突出する方向にそれぞれ第2傾斜面712・722を設けている(図6又は図9参照)。第2傾斜面712・722は、一対の第1傾斜面15・15に当接して、第1回転カム部材7を間欠的に一方の方向に回転させる。
【0091】
図2又は図3を参照すると、第1及び第2ハウジングは、基端部から先端部に向かって略平行に延びる一対のアーム16・16と、一対のアーム16・16の基端部同士を連結する連結部17と、を有している。
【0092】
又、図2又は図3を参照すると、一対のアーム16・16には、互いに対向しかつ先端部から基端部に至る一対の溝16a・16aを設けている。一対の溝16a・16aにカード1cの両翼が案内されて、カード1cを第1ハウジング1に収容できる(図1参照)。
【0093】
図2又は図3を参照すると、第1ハウジング1の基端部に複数のコンタクト9を固定している。これらのコンタクト9の一端がカードの端子(図示せず)に接触してよく、コンタクト9の他端がプリント基板1pにはんだ接合される(図1参照)。
【0094】
図1又は図2を参照すると、カバー3は、金属薄板からなり、展開された金属薄板が成形加工されている。カバー3は、導電性の金属薄板からなり、カバー3の平坦面30が第1ハウジング1を覆うことによりシールド効果が得られる。又、カバー3の平坦面30が第1ハウジング1を覆うことにより、第1スライダ5の浮き上がりを防止できる。
【0095】
図1又は図2を参照すると、カバー3は、その両翼が略直角に折り曲げ加工されて、一対の両翼片31・31を形成している。そして、一対の両翼片31・31に複数の開口31aを形成しており、第1ハウジング1の両側面に突出する突起17aに係止できる。又、カバー3は、その両翼片31・31にプリント基板1pにはんだ接合される複数のリード端子を設けており、コネクタ100をプリント基板1pに表面実装できる。
【0096】
次に、本発明の第1実施形態によるコネクタ100の作用及び動作を説明する。
【0097】
図3又は図5を参照すると、第1軸受部54は、軸部70aの直径より僅かに大きく外周方向に開口している。軸部70aを外周方向から第1軸受部54に挿入して、軸部70aを保持できる。第1劣弧溝13は、軸部70aの直径より小さく開口しており、第1スライダ5に当接することなく、軸部70aの外周を部分的に支持できる。
【0098】
図2から図5において、第1スライダ5と第1回転カム部材7は、間欠運動装置を構成している。第1軸受部54と複数の第2山形歯55は、軸中心を共有して対向配置しており、第2山形歯55に対して第1山形歯73が進退することにより、第1回転カム部材7を間欠的に一方の方向に回転できる。又、第1スライダ5と第1回転カム部材7は、第1回転カム部材7が進退しながら回転する、立体カム装置を構成している。
【0099】
図6及び図10を参照すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1山形歯73は、第2山形歯55に向かう力を付与されている。図6に示された状態では、第1山形歯73が第2山形歯55と僅かに噛み合っているが、第1回転カム部材7の回転が停止されている。
【0100】
図10を参照すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1回転カム部材7は、第1ハウジング1の先端部側に移動する力を付与されているが、幅の広い第1突条71が通過溝14の始端に対向しているので、第1回転カム部材7の移動は困難である。つまり、第1ハウジング1に対して第1スライダ5がロックされている。
【0101】
なお、図10から図14に示された丸形のマークMは、第1回転カム部材7の回転方向及び回転順序を説明の便宜上、表したものであって、丸形のマークMは実体として設けていない。
【0102】
図7及び図11を参照すると、次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切ると、第1スライダ5が停止して、第1回転カム部材7の軸方向に移動する運動が第1山形歯73と第2山形歯55が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第1回転カム部材7が間欠的に一方の方向に回動する。
【0103】
図8を参照すると、次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切った状態からカード1cを解放すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1回転カム部材7が凹部10の先端部側に移動する。そして、第2突条72の第2傾斜面722が通過溝14の第1傾斜面15に当接して、第1回転カム部材7が間欠的に更に回動する。なお、図8は、第1回転カム部材7が間欠的に更に回動する直前の状態図である。
【0104】
図9及び図12を参照すると、第1回転カム部材7が1インデックス分だけ回動すると、幅の狭い第2突条72が通過溝14の始端に対向しているので、第1回転カム部材7が移動できる。つまり、カード1cが鉤片53に引きずられて、カード用コネクタ100からカード1cを排出できる。
【0105】
又、図9は、カードをカード用コネクタに挿入していない状態図であって、第1スライダ5は、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1ハウジング1の先端部側に移動して待機している。
【0106】
図9に示された待機状態では、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1山形歯73は、第2山形歯55に向かう力を付与されている。又、この待機状態では、第1山形歯73が第2山形歯55と僅かに噛み合って、第1回転カム部材7は、一方の方向に回転する力を付与されているが、通過溝14に第2突条72が規制されて、第1回転カム部材7の回転が停止されている。
【0107】
図13を参照すると、カード1cを凹部10の基端部側に押し切ると、第1スライダ5が停止して、第1回転カム部材7の軸方向に移動する運動が第1山形歯73と第2山形歯55が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第1回転カム部材7が間欠的に一方の方向に回動する。
【0108】
次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切った状態から、カード1cを解放すると、第1突条71の第2傾斜面712が第1傾斜面15に当接して、第1回転カム部材7が間欠的に更に回動して、図6及び図10に示されたロック状態になる。
【0109】
このように、本発明の第1実施形態によるコネクタ100は、カードをコネクタにプッシュするとロックされ、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される、プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタを実現している。
【0110】
又、本発明の第1実施形態によるコネクタ100は、特許文献2によるハウジングのように、板厚方向から成形される第1キャビティ911(図20参照)を第1ハウジング1が設けておらず、第1ハウジング1は、その両面に対向する一対の金型で主として成形される。したがって、第1ハウジング1の製造原価の低減に寄与できる。
【0111】
更に、本発明の第1実施形態によるコネクタ100は、第1ハウジング1、第1回転カム部材7、及び第1スライダ5を積み重ねるように組み立てることができ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供できる。
【0112】
次に、本発明の第2実施形態によるコネクタの構成を説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態で使用した符号と同じ符号の構成品は、その作用を同一とするので、説明を割愛する場合がある。
【0113】
図14又は図15を参照すると、第2実施形態によるコネクタ200は、平板状の第2ハウジング2、カバー3(図1又は図2参照)、及び帯板状の第2スライダ4を備えている。第2ハウジング2は、カード1cが挿入される凹部10を設けている。第2スライダ4は、第2ハウジング2の凹部10の片翼に配置している。又、第2スライダ4は、カード1cの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される。
【0114】
図14又は図15を参照すると、コネクタ200は、第2回転カム部材6と圧縮コイルばね(付勢手段)8を備えている。第2回転カム部材6は、第2スライダ4に保持されており、軸方向に僅かに移動すると共に回転可能となっている。圧縮コイルばね8は、第2回転カム部材6をカード1cが排出する方向に力を付勢している(図1参照)。
【0115】
図14又は図15を参照すると、第2ハウジング2は、第3直線溝22を有している。第3直線溝22は、第2スライダ4の長手方向に沿って配置する第3突起42を案内する。
【0116】
又、図14又は図15を参照すると、第2スライダ4は、鉤片43を有している。鉤片43は、第2スライダ4の長手方向と略直交する方向に突出しており、カード1cの端縁が当接可能となっている。
【0117】
図14又は図15を参照すると、第2回転カム部材6は、一対の第3突条61・61、複数のラチェット状の第1山形歯63、及び端面64を有している。一対の第3突条61・61は、円柱状の軸部60aの外周に相反する向きに突出している。第1山形歯63は、軸部60aの一方の端部に設けており、軸方向に突出している。端面64は、軸部60aの他方の端部に設けており、圧縮コイルばね8の他方の端部が当接する。
【0118】
更に、図14又は図15を参照すると、第2ハウジング2は、第2劣弧溝23、円弧溝24、及び一対の第3傾斜面25・25(図示せず)を設けている。第2劣弧溝23は、軸部60aの外周を受けている。円弧溝24は、第2劣弧溝23と軸中心を共有しており、一対の第3突条61・61を除外する軸部60aの外周のみが通過可能となっている。一対の第3傾斜面25・25は、円弧溝24の始端の両翼に形成されており、第2回転カム部材6の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差している。
【0119】
又、図15を参照すると、第2スライダ4は、第2軸受部44と複数のラチェット状の第2山形歯45を設けている。第2軸受部44は、外周方向に開口しており、軸部60aの外周を保持している。第2山形歯45は、第1山形歯63と噛み合って、第2回転カム部材6を間欠的に一方の方向に回転させる。
【0120】
図15を参照すると、第3突条61は、第1山形歯63が突出する方向にそれぞれ第4傾斜面611を設けている。第4傾斜面611は、一対の第3傾斜面25(図示せず)に当接して第2回転カム部材6を間欠的に一方の方向に回転させる。そして、第2ハウジング2は、その両面に対向する一対の金型で主として成形されている。
【0121】
次に、本発明の第2実施形態によるコネクタ200の作用及び動作を説明する。
【0122】
図14又は図15を参照すると、第2軸受部44は、軸部60aの直径より僅かに大きく外周方向に開口している。軸部60aを外周方向から第2軸受部44に挿入して、軸部60aを保持できる。第2劣弧溝23は、軸部60aの直径より小さく開口しており、第2スライダ4に当接することなく、軸部60aの外周を部分的に支持できる。
【0123】
図15を参照すると、第2スライダ4と第2回転カム部材6は、間欠運動装置を構成している。第2軸受部44と複数の第2山形歯45は、軸中心を共有して対向配置しており、第2山形歯45に対して第1山形歯63が進退することにより、第2回転カム部材6を間欠的に一方の方向に回転できる。又、第2スライダ4と第2回転カム部材6は、第2回転カム部材6が進退しながら回転する、立体カム装置を構成している。
【0124】
次に、図6から図9を援用しながら、本発明の第2実施形態によるコネクタ200の動作を説明する。
【0125】
図6及び図16を参照すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第1山形歯63は、第2山形歯45に向かう力を付与されている。図6に示された状態では、第1山形歯73が第2山形歯45と僅かに噛み合っているが、第2回転カム部材6の回転が停止されている。
【0126】
図16を参照すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第2回転カム部材6は、第2ハウジング2の先端部側に移動する力を付与されているが、第3突条61が円弧溝24の始端に対向しているので、第2回転カム部材6の移動は困難である。つまり、第2ハウジング2に対して第2スライダ4がロックされている。
【0127】
図7及び図17を参照すると、次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切ると、第2スライダ4が停止して、第2回転カム部材6の軸方向に移動する運動が第1山形歯63と第2山形歯45が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第2回転カム部材6が間欠的に一方の方向に回動する。
【0128】
次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切った状態からカード1cを解放すると、圧縮コイルばね8に付勢されて、第2回転カム部材6が凹部10の先端部側に移動する。そして、第3突条61の第4傾斜面611が円弧溝24の第3傾斜面25に当接して、第2回転カム部材6が間欠的に更に回動する。
【0129】
図18を参照すると、第2回転カム部材6が1インデックス分だけ回動すると、一対の第3突条61・61を除外する軸部60aの外周が円弧溝24の始端に対向しているので、第2回転カム部材6が移動できる。つまり、カード1cが鉤片43に引きずられて、コネクタ200からカード1cを排出できる。
【0130】
図19を参照すると、カード1cを凹部10の基端部側に押し切ると、第2スライダ4が停止して、第2回転カム部材6の軸方向に移動する運動が第1山形歯63と第2山形歯45が噛み合う回転運動に変換される。つまり、第2回転カム部材6が間欠的に一方の方向に回動する。
【0131】
次に、カード1cを凹部10の基端部側に押し切った状態から、カード1cを解放すると、第3突条61の第4傾斜面611が第3傾斜面25に当接して、第2回転カム部材6が間欠的に更に回動して、図16に示されたロック状態になる。
【0132】
このように、本発明の第2実施形態によるコネクタ200は、カードをコネクタにプッシュするとロックされ、カードを押すと、ロックが解除されてカードがコネクタから排出される、プッシュ・プッシュ型のカード用コネクタを実現している。
【0133】
又、本発明の第2実施形態によるコネクタ200は、特許文献2によるハウジングのように、板厚方向から成形される第1キャビティ911(図20参照)を第2ハウジング2が設けておらず、第2ハウジング2は、その両面に対向する一対の金型で主として成形される。したがって、第2ハウジング2の製造原価の低減に寄与できる。
【0134】
更に、本発明の第2実施形態によるコネクタ200は、第2ハウジング2、第2回転カム部材6、及び第2スライダ4を積み重ねるように組み立てることができ、組み立てが容易なカード用コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明によるカード用コネクタの第1実施形態を示す斜視図であり、カードが装着された状態図である。
【図2】前記第1実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図であり、カバーが分離された状態図である。
【図3】前記第1実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図であり、カバーが取りはずされた状態図である。
【図4】前記第1実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図であり、前記第1実施形態によるカード用コネクタを下面側から観ている。
【図5】前記第1実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図であり、第1スライダ、第1回転カム部材、及び圧縮コイルばねで構成している。
【図6】前記第1実施形態によるカード用コネクタを下面から観た斜視図であり、第1回転カム部材が第1ハウジングにロックした状態図である。
【図7】前記第1実施形態によるカード用コネクタを下面から観た斜視図であり、図6の状態変化図である。
【図8】前記第1実施形態によるカード用コネクタを下面から観た斜視図であり、図7の状態変化図である。
【図9】前記第1実施形態によるカード用コネクタを下面から観た斜視図であり、カードを挿入していない待機状態図である。
【図10】図10(A)は図6の横断面図、図10(B)は図10(A)の平面図である。
【図11】図11(A)は図7の横断面図、図11(B)は図11(A)の平面図である。
【図12】図12(A)は図9の横断面図、図12(B)は図12(A)の平面図である。
【図13】、図13(A)は図12(A)の状態変化図、図13(B)は図13(A)の平面図である。
【図14】本発明によるカード用コネクタの第2実施形態を示す斜視分解組立図であり、カバーが取りはずされた状態図である。
【図15】前記第2実施形態によるカード用コネクタの斜視分解組立図であり、第2スライダ、第2回転カム部材、及び圧縮コイルばねで構成している。
【図16】図16(A)は図10(A)に対応する横断面図、図16(B)は図16(A)の平面図である。
【図17】図17(A)は図11(A)に対応する横断面図、図17(B)は図17(A)の平面図である。
【図18】図18(A)は図12(A)に対応する横断面図、図18(B)は図18(A)の平面図である。
【図19】図19(A)は図18(A)の状態変化図、図19(B)は図19(A)の平面図である。
【図20】従来技術によるカード用コネクタに備わるハウジングの部分拡大斜視図である。
【図21】従来技術によるカード用コネクタに備わるトレイの平面図である。
【図22】従来技術によるカード用コネクタに備わる回転カム部材の図である。
【符号の説明】
【0136】
1 第1ハウジング
1c カード
3 カバー
5 第1スライダ
7 第1回転カム部材
8 圧縮コイルばね(付勢手段)
10 凹部
11 第1直線溝
12 第2直線溝
13 第1劣弧溝
14 通過溝
15・15 一対の第1傾斜面
30 平坦面
51 第1突起
52 第2突起
53 鉤片
54 第1軸受部
55 第2山形歯
70 突条
70a 軸部
71 第1突条
72 第2突条
73 第1山形歯
74 端面
100 コネクタ(カード用コネクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入される凹部を設ける平板状の第1ハウジングと、
この第1ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けるカバーと、
前記第1ハウジングの凹部の片翼に配置して、前記カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される帯板状の第1スライダと、
この第1スライダに保持されて軸方向に僅かに移動すると共に回転可能な第1回転カム部材と、
この第1回転カム部材を前記カードが排出する方向に力を付勢する付勢手段と、を備え、
前記第1ハウジングは、前記第1スライダの長手方向に沿って対向配置する第1突起及び第2突起を案内する第1直線溝及び第2直線溝を有し、
前記第1スライダは、当該第1スライダの長手方向と略直交する方向に突出して前記カードの端縁が当接可能な鉤片を有し、
前記第1回転カム部材は、
円柱状の軸部の外周に放射状に突出する複数の突条であって、幅の広い第1突条と幅の狭い第2突条を交互に設ける複数の突条と、
前記軸部の一方の端部に設けて軸方向に突出する複数のラチェット状の第1山形歯と、
前記軸部の他方の端部に設けて前記付勢手段の他方の端部が当接する端面と、を有し、
前記第1ハウジングは、
前記軸部の外周を受ける第1劣弧溝と、
前記第1突起を案内する前記第1直線溝に連通して前記第2突条の一つのみが通過可能な通過溝と、
この通過溝の始端の両翼に形成された一対の第1傾斜面であって、前記第1回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差する一対の第1傾斜面と、を設け、
前記第1スライダは、
外周方向に開口して前記軸部の外周を保持する第1軸受部と、
前記第1山形歯と噛み合って当該第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる複数のラチェット状の第2山形歯と、を設け、
前記第1突条及び前記第2突条は、一対の前記第1傾斜面に当接して当該第1回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる第2傾斜面を前記第1山形歯が突出する方向に設け、
前記第1ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されるカード用コネクタ。
【請求項2】
カードが挿入される凹部を設ける平板状の第2ハウジングと、
この第2ハウジングの凹部を覆う平坦面を設けるカバーと、
前記第2ハウジングの凹部の片翼に配置して、前記カードの挿入方向と略平行に進退運動のみが許容される帯板状の第2スライダと、
この第2スライダに保持されて軸方向に僅かに移動すると共に回転可能な第2回転カム部材と、
この第2回転カム部材を前記カードが排出する方向に力を付勢する付勢手段と、を備え、
前記第2ハウジングは、前記第2スライダの長手方向に沿って配置する第3突起を案内する第3直線溝を有し、
前記第2スライダは、当該第2スライダの長手方向と略直交する方向に突出して前記カードの端縁が当接可能な鉤片を有し、
前記第2回転カム部材は、
円柱状の軸部の外周に相反する向きに突出する一対の第3突条と、
前記軸部の一方の端部に設けて軸方向に突出する複数のラチェット状の第1山形歯と、
前記軸部の他方の端部に設けて前記付勢手段の他方の端部が当接する端面と、を有し、
前記第2ハウジングは、
前記軸部の外周を受ける第2劣弧溝と、
この第2劣弧溝と軸中心を共有して前記一対の第3突条を除外する前記軸部の外周のみが通過可能な円弧溝と、
この円弧溝の始端の両翼に形成された一対の第3傾斜面であって、前記第2回転カム部材の進退方向と所定の角度で同じ方向に交差する一対の第3傾斜面と、を設け、
前記第2スライダは、
外周方向に開口して前記軸部の外周を保持する第2軸受部と、
前記第1山形歯と噛み合って当該第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる複数のラチェット状の第2山形歯と、を設け、
前記第3突条は、一対の前記第3傾斜面に当接して当該第2回転カム部材を間欠的に一方の方向に回転させる第4傾斜面を前記第1山形歯が突出する方向に設け、
前記第2ハウジングは、その両面に対向する一対の金型で主として成形されるカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−123543(P2010−123543A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298724(P2008−298724)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】