説明

ガスセンサのヒータ制御装置

【課題】工場出荷前におけるガスセンサの検査工程において、該検査工程の時間短縮を図る。
【解決手段】O2センサ20は、エンジンの排気管に設けられ、固体電解質層21を有してなるセンサ素子23がヒータ25により加熱されることで活性状態になるものである。ECU10は、このO2センサ20について工場出荷前か工場出荷後かを判定し、その判定結果に基づいて、工場出荷前と工場出荷後とで異なるヒータ通電制御を実行する。具体的には、工場出荷後のようにセンサ素子23の被水対策が必要な場合には、ヒータ通電の開始当初に電力制限を行うのに対し、工場出荷前のようにセンサ素子23の被水対策が必ずしも必要でない場合には、ヒータ通電の開始当初から制限なくヒータ25に電力を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のガス通路に設けられるガスセンサのヒータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のガス通路(例えば排気管など)には、O2センサなどのガスセンサが設けられている。ガスセンサは、例えば数100℃まで昇温されることで活性状態となり、この活性状態でガス濃度を高い精度で検出可能になる。このため、ガスセンサにおいては、一般に電気式ヒータが付設されており、ヒータの発熱によりセンサ素子を活性状態とするとともに、その活性状態を保持する。
【0003】
その一方、センサ素子の活性化にあたり、内燃機関の始動時において低温環境下では、ガス通路内で生じる水が原因で、加熱開始当初に素子割れが発生するおそれがある。そこで、素子割れを防止するために、ガスセンサのヒータ通電制御では、被水対策として、センサ素子の活性化が完了するまでの間にセンサ素子が急激に加熱されないよう、内燃機関の始動時にヒータ投入電力の制限が行われている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−10630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスセンサの工場出荷前には、センサ出力特性等の検査が行われることがある。この検査工程では、一般に温度管理された状態下で行われるため、センサ素子の被水は起こりにくい。このように被水対策が不要な状況下においてヒータ投入電力の制限を行うとすると、センサ活性終了までに無駄に時間がかかってしまい、検査工程が長引いてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、工場出荷前におけるガスセンサの検査工程において、該検査工程の時間短縮を図ることができるガスセンサのヒータ制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
本発明のガスセンサのヒータ制御装置は、内燃機関のガス通路に設けられ、固体電解質体を有してなるセンサ素子をヒータにより加熱して活性状態とするガスセンサのヒータ制御装置である。また、請求項1に記載の発明では特に、前記ガスセンサについて工場出荷前か工場出荷後かを判定し、該判定の結果に基づいて、工場出荷前と工場出荷後とで異なるヒータ通電制御を実行する。
【0008】
要するに、工場出荷後に市場に出回ったガスセンサは、その使用環境が都度異なる。例えば低温環境下では、内燃機関のガス通路内(例えば排気管内)に水が生じ、その水がガスセンサに付着することがある。ガスセンサが被水した場合にセンサ素子を急速に加熱すると、その水が原因で、内燃機関の始動時等の加熱開始当初において素子割れが発生するおそれがある。これを防止するために、ガスセンサのヒータ制御では、被水対策として、内燃機関の始動時等にヒータ投入電力の制限が行われる。一方、工場出荷前には、一般に温度管理された一定の環境下で、センサ出力特性等の検査工程が行われる。この場合、被水対策が不要であるのにもかかわらず被水対策を行うとすると、不要な行為のために時間を要してしまうことになる。請求項1に記載の発明では、工場出荷前には、工場出荷後とは異なるヒータ通電を行うことで、センサ活性完了までの時間の短縮を実現することができる。
【0009】
なお、ここでいう「工場出荷」は、単体部品としてのガスセンサが製品として部品製造工場から出荷されることである以外に、ガスセンサが搭載された車両等が製品として車両製造工場から出荷されることである。
【0010】
請求項2に記載の発明では、工場出荷前であれば、前記センサ素子の早期活性化を優先する第1通電制御を実行し、工場出荷後であれば、前記センサ素子の保護を優先する第2通電制御を実行する。この場合、工場出荷前にはセンサ素子の早期活性が行われるため、センサ活性完了までの時間を短縮するのに好適である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記第1通電制御は、ヒータ通電の開始当初から制限なく前記ヒータに電力を投入するものであり、前記第2通電制御は、ヒータ通電の開始当初に電力制限を行うものである。こうすることで、工場出荷前の検査工程等における時間短縮を容易に実現することができる。また、工場出荷前では、ヒータ通電の開始当初から制限なく電力投入することで、センサ活性状態で行われるセンサ出力特性の検査等を、過剰に時間をかけることなくいち早く実施できる点で好適である。
【0012】
請求項4に記載の発明では、工場出荷後には生じ得ない特定信号を入力することで工場出荷前であるものと判定することを特徴とする。こうすれば、ガスセンサについて工場出荷前か工場出荷後かを容易に区別することができる。また、特定信号を、通常制御で用いられる各種信号を組み合わせたものとした場合には、ガスセンサのヒータ制御装置に新たに特別な入力端子を設ける必要がなく好適である。特に、内燃機関のガス通路にガスセンサが配設されている(すなわち完成品としての車両に搭載されている)場合に、特定信号として通常制御で用いられる各種信号を組み合わせて利用することにより、工場出荷前と工場出荷後との区別を容易に行うことができ、実用上好ましい。
【0013】
上記のように特定信号により工場出荷前か否かを判定する構成では、請求項5に記載したように、前記特定信号を、該特定信号を出力する外部装置から入力するものとしてもよい。本構成によれば、制御装置に対し、特定信号としての擬似的な信号を簡易にかつ迅速に入力させることができる。特に、ガスセンサが未だ内燃機関に取り付けられていない単品の状態で検査等を行う場合、特定信号を生成する手段として外部装置を好適に用いることができる。ここで、外部装置とは、例えばパーソナルコンピュータ等を挙げることができる。
【0014】
請求項6に記載したように、前記ガスセンサは、シート状の固体電解質層にヒータ層を積層配置した積層型ガスセンサであることが望ましい。積層型ガスセンサの場合、内燃機関の始動時におけるセンサ活性時間が短く実用的である一方、急速な温度上昇により素子割れが発生しやすい。そこで、積層型ガスセンサに本発明を適用することで、上記効果を好適に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、エンジンのガス通路(例えば排気管)にO2センサが設けられたシステムにおいて、そのO2センサに内蔵されるヒータの通電制御を実行するヒータ制御装置を具体化している。図1は、本実施形態におけるO2センサのヒータ制御装置の全体概略構成図である。ヒータ制御装置は、作動デューティによるヒータ投入電力の可変制御によりヒータの通電制御を実行する。
【0016】
まずO2センサについて説明する。O2センサ20は、ジルコニア(ZrO2)等の固体電解質層21や絶縁層22を積層してなる積層型のセンサ素子23を有するλセンサである。センサ素子23には一対の電極24(詳しくは、固体電解質層を挟んで両側に設けた一対の電極)が設けられており、この電極間において大気中と排ガス中との酸素濃度の差により起電力を発生する。また、絶縁層22にはヒータ25が埋設されている。ヒータ25は、バッテリ電源からの通電により発熱する線状の発熱体からなり、その発熱により素子全体を加熱する。これにより、センサ素子23の活性化を図るとともに、センサ素子23を所定の活性状態に保持する。
【0017】
O2センサ20におけるヒータ25の通電制御は、電子制御ユニット10(以下、ECU10という)により実行される。ECU10は、周知のCPU、ROM、RAM、EEPROM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度に入力される各種信号に応じた各種制御を実施する。具体的には、ECU10は、エンジン運転中にセンサ素子23のインピーダンスを逐次算出し、その素子インピーダンス(すなわちセンサ素子23の活性状態)に基づいてヒータ25の通電制御を実施する。このとき、素子インピーダンスは、例えば掃引法を用いて算出される。具体的には、センサ素子23の電極24に電圧を印加するとともに、その印加電圧を一時的に正側又は負側に変化させ、その時の電流変化量を計測する。そして、電圧変化量と電流変化量とから素子インピーダンスを算出する。
【0018】
また、ECU10は、エンジンの通常制御に用いる各種信号を入力する。具体的には、ECU10は、エンジンに取り付けられたクランク角センサ31からのエンジン回転速度NEや、スロットル開度センサ32からのスロットル開度、シフトポジションセンサ33からのシフトポジション、O2センサ20からのリーン又はリッチ信号などといった、各種センサから各種の検出信号を入力する。また、ECU10は、スタータスイッチ34からのスタータ信号、イグニッションスイッチ35からのオン信号、クラッチスイッチ36からのオン信号などの各種動作信号等を入力する。
【0019】
次に、ヒータ通電制御における基本制御について図2を用いて説明する。図2は、ヒータ通電の基本制御を示すタイムチャートであり、同図において(a)はイグニッションスイッチ35からのオン/オフ信号を示し、(b)はヒータ25の通電パターンを示し、(c)はヒータ通電の開始当初におけるセンサ素子23の温度推移を示す。図2(b)において、時刻t11でイグニッションスイッチ35からのオン信号がECU10に入力されてバッテリ電源からヒータ25への通電が開始されると、図2(c)に示すように、ヒータ25が昇温される。このとき、センサ素子23が被水していると、センサ素子23での急激な温度上昇に起因して素子割れが発生する。そこで、素子割れを防止するための被水対策として、時刻t11から規定時間T1(例えば10秒)の間は、ヒータ通電に際し電力制限を行う。これにより、センサ素子23は比較的緩やかに昇温される。ここで、電力制限としては、本実施形態では、ヒータ25の作動デューディ比を小さくする(例えば作動デューティ比100%(いわゆる全通電制御)を基準としてそれよりも小さい値にする)ことにより行う。
【0020】
そして、規定時間T1が経過した後の時刻t12で、ヒータ通電での電力制限を解除し、ヒータ25に対して制限なく電力投入する(例えば、全通電とする)ことで、素子温を活性化温度TMP(例えば700℃程度)まで昇温させ、センサ素子を活性状態とする。このように、基本制御では、センサ素子23の被水対策として、通電開始当初は電力制限を行うことで、センサ素子23の早期活性化よりもセンサ素子23の保護を優先する。なお、センサ素子23の活性化が一旦完了した後は、ヒータ25が適宜通電されてその活性状態が保持される。このとき、活性状態を保持するには、作動デューティ比100%(最大電力)でヒータ通電を継続して行ってもよいし、素子インピーダンスの目標値と実測値との偏差に基づいてヒータ通電量のフィードバック制御を行ってもよい。
【0021】
ところで、車両の部品としてのO2センサ20が製品として工場から出荷される前や、O2センサ20が搭載された車両等が製品として工場から出荷される前に、O2センサ20の出力特性等の検査が行われる場合がある。この場合、一般には工場内の温度管理された状態下で検査が行われるため、センサ素子23の被水を考慮する必要がない。このような場合にまで、被水対策としてヒータ通電の開始当初に電力制限を行うとすると、センサ素子23の活性化完了までの時間が長引いてしまい、検査に過剰な時間を要してしまう。
【0022】
そこで、本実施形態では、O2センサ20について工場出荷前か工場出荷後かを判定し、その結果に基づいて工場出荷前と工場出荷後とで異なるヒータ通電制御を実行する。これにより、工場出荷前に行うO2センサ20の検査工程において、その検査工程の時間短縮を図る。具体的には、工場出荷後のようにセンサ素子23の被水対策が必要な場合には、ヒータ通電の開始当初に電力制限を行うのに対し、工場出荷前のようにセンサ素子23の被水対策が必ずしも必要でない場合には、ヒータ通電の開始当初から制限なくヒータ25に電力を投入する。
【0023】
図3は、O2センサ20の工場出荷前におけるヒータ通電制御を示すタイムチャートである。図3のうち(a)はイグニッションスイッチ35からのオン/オフ信号を示し、(b)はヒータ25の通電パターンを示し、(c)はヒータ通電の開始当初におけるセンサ素子23の温度推移を示す。なお、図3(c)中、実線は工場出荷前のヒータ通電制御であり、二点鎖線は基本制御である。図3(b)に示すように、工場出荷前のヒータ通電制御(以下、出荷前制御ともいう)においては、バッテリ電源からヒータ25への通電開始タイミングである時刻t21から、ヒータ25に対して制限なく電力投入される。ここでは、ヒータ25に対し全通電制御を実施する。これにより、図3(c)に示すように、ヒータ通電の開始当初での素子温は、出荷前制御では基本制御に比べて急激に上昇する。また、出荷前制御では、被水対策に要する図2の時間T1が短縮される分、センサ素子23が速やかに活性状態とされる。
【0024】
続いて、本実施形態のヒータ通電の処理手順を、図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU10に電源が投入された状態で、同ECU10により所定の時間周期(例えば10msec周期)で繰り返し実行される。具体的には、本実施形態におけるO2センサ20及びECU10は、製造工場での検査時点で車両(例えば自動二輪車)に搭載されている。そして、図4のヒータ通電処理は、車両製造工場での最終検査工程における電源投入状態、及び車両完成後に伴う工場出荷後における車両運転時の電源投入状態にて実行される。
【0025】
この一連の処理では、まずステップS101で、O2センサ20について工場出荷前か否かを判定する。ここでいう工場出荷前とは、O2センサ20及びECU10が搭載された車両が製品として車両製造工場から出荷される前のことをいう。ステップS101では、工場出荷前か否かの判断は、特定条件が成立しているか否かにより行う。特定条件とは、工場出荷後の車両において車両運転中に成立する可能性が極めて低いものと考えられる運転条件であり、通常のエンジン運転制御においてECU10に入力される各種信号を組み合わせたものとして設定されている。このため、特定条件が成立した場合には、この特定条件に関連する特定信号がECU10に入力される。つまり、通常のエンジン運転制御においてECU10に入力される信号の組み合わせとしてあり得ない信号情報を特定信号とし、その特定信号をECU10が入力することで、ECU10は、そのO2センサが工場出荷前のものであると判断する。特定条件としては、具体的には、例えば、
・所定のシフトポジション(例えば5速や6速)にある場合に、スタータスイッチ34のオンオフの切り替えが所定時間内(例えば数秒内)に所定回数(例えば5回や6回)以上あったこと
・所定のシフトポジション(例えば5速や6速)にある場合に所定のスロットル操作が行われたこと
・所定のシフトポジション(例えば5速や6速)及び所定のエンジン回転速度(例えば数百rpm)にある場合に、クラッチスイッチ36のオンオフの切り替えが所定時間内(例えば数秒内)に所定回数(例えば5回や6回)以上あったこと
などのいずれかの条件とすることができる。
【0026】
ステップS101で特定条件が成立しない場合には、O2センサ20について工場出荷後であると判断し、ステップS102へ進み、イグニッションスイッチ35のオン時から規定時間T1が経過したか否かを判定する。イグニッションオンから規定時間T1が経過していない場合には、ステップS103へ進み、センサ素子23の被水対策として、全通電を基準にした電力制限を行いながら通電制御を実施する。そして、イグニッションオンから規定時間T1が経過すると、ステップS102で肯定判定がなされ、ステップS104へ進み、ヒータ25の全通電制御を実施する。このように、特定条件が不成立の場合には、ヒータ25への通電開始当初に電力制限を行うことで、センサ素子23の保護を図る。
【0027】
これに対し、ステップS101で特定条件が成立した場合には、O2センサ20について工場出荷前であると判断し、ステップS102及びS103の処理を実行することなくステップS104へ移行する。このように、工場出荷前にイグニッションオンされた場合(例えば、センサ出力特性等の最終検査工程時)には、ヒータ25に対し、通電開始当初から全通電の状態とすることで、センサ素子23の早期活性化を図る。なお、工場出荷前の最終検査工程で特定条件を成立させるには、O2センサ20の検査者が車両を操作することで実現できる。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0029】
O2センサ20のヒータ通電制御においては、センサ素子23の被水対策としてヒータ通電の開始当初に電力制限が行われており、従来は工場出荷前においても同様の電力制限が行われていた。しかしながら、工場出荷前のように、温度管理された環境下であるために被水のおそれがない場合にまで被水対策を行うものとすると、不要な行為のために時間を要してしまうことになる。これに対し、本実施形態では、O2センサ20について工場出荷前であれば、ヒータ通電の開始当初から制限なくヒータ25に電力を投入するため、センサ素子23の活性化が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0030】
O2センサ20における工場出荷前のヒータ通電制御では、ヒータ通電の開始当初から制限なくヒータ25に電力を投入するため、センサ素子23の活性化を速やかに行うことができる。これにより、工場出荷前の最終検査工程おける時間短縮を好適に図ることができる。
【0031】
O2センサ20について工場出荷前か工場出荷後かの判定は、例えばシフトポジション信号やスロットル開度センサ32からの検出信号、スタータ信号、クラッチスイッチ36のオン/オフ信号などといった、エンジンの通常制御でECU10に入力され得る各種信号を複数組み合わせることでその組み合わせとしてあり得ない信号(特定信号)を用いる構成としたため、両者の区別を容易に行うことができる。また、特定信号はエンジンの通常制御でECU10に入力される各種信号を組み合わせたものであることから、ECU10に新たに特別な入力端子を設ける必要がない。さらに、エンジンの排気管にO2センサを搭載した後であっても、通常制御で用いられる各種信号であればECU10がその信号を認識できるため、工場出荷前と工場出荷後との区別を容易に行うことができ、実用上好ましい。
【0032】
積層型O2センサの場合、エンジンの始動後におけるセンサ活性時間が短く実用的である一方、急速な昇温により素子割れが発生しやすい。本実施形態では、積層型O2センサに適用したことから、上記の各種の効果を好適に得ることができる。
【0033】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0034】
上記実施形態では、製造工場での検査工程でO2センサ20及びECU10が車両に搭載されていることを想定し、その状態でヒータ制御が実施されることを説明したが、車両に搭載される前の単体部品としてのO2センサ20について本発明のヒータ制御を実施してもよい。こうすれば、O2センサ20が製品として工場出荷される前に行われるセンサ出力特性等の検査工程においても、時間の短縮を図ることができる。
【0035】
上記実施形態では、工場出荷前の検査工程で特定条件を成立させるには、O2センサ20の検査者が車両を操作することにより行うものとしたが、これに限定しない。例えば、図5に示すように、特定条件を成立させるための特定信号を、パーソナルコンピュータ等の外部装置40からECU100に入力させてもよい。ECU100においては、外部装置40用の接続端子が設けられている。パーソナルコンピュータ等からなる外部装置40であれば、特定信号すなわちエンジンの通常制御でECU100に入力され得る複数信号を組み合わせたものを、実際に車両を操作することなく容易に作り出すことが可能である。したがって、上記構成とすることで、特定条件を成立させるための車両の操作を実際に行うことなく、該操作をしているのと同様の信号を擬似的な信号として外部装置40からECU100に入力させることができる。これにより、ECU100への特定信号の入力を、煩雑な操作を必要とすることなく簡易にかつ迅速に行うことができる。特に、O2センサ20が未だエンジンに取り付けられていない単品の状態で検査工程を実施する場合、特定信号を生成する手段として外部装置40を好適に用いることができる。
【0036】
上記実施形態では、特定信号として通常のエンジン運転制御においてECU10に入力される種々の信号を組み合わせたものを用いて工場出荷前か否かを判断したが、このような特定信号の代わりに、工場出荷前の検査工程で入力される信号として予め規定された専用信号により工場出荷前か否かを判断してもよい。専用信号であれば、工場出荷後に入力される可能性が特定信号よりも低いため、工場出荷前と工場出荷後とをより確実に区別することができる。
【0037】
上記実施形態では、ガスセンサとしてO2センサ20を適用したが、一対の電極に電圧が印加された状態で排ガス中の酸素濃度に応じた電流を流す広域検出タイプのA/Fセンサ(A/F:空燃比)に適用してもよい。また、O2センサ以外のガスセンサ(例えばCOセンサやNOxセンサなど)に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】O2センサのヒータ制御装置の全体概略構成図。
【図2】ヒータ通電の基本制御を示すタイムチャート。
【図3】O2センサの工場出荷前におけるヒータ通電制御を示すタイムチャート。
【図4】ヒータ通電処理のフローチャート。
【図5】別の実施形態におけるO2センサのヒータ制御装置の全体概略構成図。
【符号の説明】
【0039】
10、100…ヒータ制御装置としてのECU、20…O2センサ、23…センサ素子、25…ヒータ、40…外部装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のガス通路に設けられ、固体電解質体を有してなるセンサ素子をヒータにより加熱して活性状態とするガスセンサのヒータ制御装置であって、
前記ガスセンサについて工場出荷前か工場出荷後かを判定する判定手段と、
該判定の結果に基づいて、工場出荷前と工場出荷後とで異なるヒータ通電制御を実行する制御手段と、
を備えることを特徴とするガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、工場出荷前であれば、前記センサ素子の早期活性化を優先する第1通電制御を実行し、工場出荷後であれば、前記センサ素子の保護を優先する第2通電制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項3】
前記第1通電制御は、ヒータ通電の開始当初から制限なく前記ヒータに電力を投入するものであり、
前記第2通電制御は、ヒータ通電の開始当初に電力制限を行うものであることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、工場出荷後には生じ得ない特定信号を入力することで工場出荷前であるものと判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記特定信号を、該特定信号を出力する外部装置から入力することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項6】
前記ガスセンサは、シート状の固体電解質層にヒータ層を積層配置した積層型ガスセンサであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガスセンサのヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150853(P2009−150853A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331253(P2007−331253)
【出願日】平成19年12月24日(2007.12.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】