説明

ガスタービン内の点食を検出するためのシステムおよび方法

ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するための方法および装置が、ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するためにフィレット区間の軸方向長さに沿って移動するように動作可能な検出ヘッドを含む。検出ヘッド内に位置する少なくとも1つのコイル装置が、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場を誘導する。受信機装置が、第1の磁場にさらされたフィレットの領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように適合され、第2の磁場は、第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される。次いで、信号処理装置が、検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させ、その結果、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンシステム内の腐食を検出することに関し、より詳細には、ガスタービン圧縮機ブレード内の点食を原位置で検出するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2放出の少ない燃料として、天然ガスが大きく世界中に拡大している。ガス田と消費者市場の間の距離や地形によりパイプライン輸送ができないとき、液化によりガスを、たとえばその自由体積の1/600に縮小することができる。液化天然ガス(LNG)プラントで、低温熱交換器内で精製天然ガスを液化し、それにより精製液化天然ガスをタンクに貯蔵してから、LNGプラントと消費者地域の間で輸送するために設計されたタンカに船積みすることができる。消費者地域では、LNG製品がLNG受入ターミナル内で船下ろしされ、パイプライン圧力にまで汲み上げられ、購入者の天然ガスパイプライングリッド内に供給するために再度ガス化される。
【0003】
したがって、これらの増大する需要に応えて、LNGプラントのサイズは、過去数十年にわたってかなり大きくなった。これはLNG生産コストを下げるのに貢献し、同時に、LNG市場の競争を増大している。たとえば、1980年代には、年間、蒸気で(per steam)2〜3百万トンの生産が一般に行われていた。現行のユニットは、年間4〜5百万トンを生産し、エンジニアリング会社は、現在(すなわち、2009年)、年間7〜8百万トン程度のユニット能力を有するプラントを計画中である。
【0004】
LNGプラントでは、たとえばガスタービンを使用し、天然ガスを液化する責任を担う低温熱交換器内で使用される冷凍圧縮機を駆動することが、一般に行われている。したがって、産出量は、確実なプラント運転、特にガスタービンの信頼性に密接に関連する可能性がある。ガスタービンシステムの確実な運転は、多数の様々な故障原因によって損なわれるおそれがある。以下の各段落で述べるように、1つのそのような原因は、ガスタービンのターボ圧縮機のインレットガイドベーン(IGV)およびロータブレード上の腐食の悪影響である。
【0005】
LNGプラントは、一般に、海洋沿岸環境に位置し、これらの環境では、塩化物および硫化物など腐食性成分が大気中に広がっている。塩化物は海に近いことにより生じ、一方、硫化物は、LNGプラントのガスフレアによって生成される。ガスタービンの空気ろ過システムは、適正な設計および保守を共に必要とする。というのは、特に空気ろ過システムが、ガスタービンシステムの燃焼区間内に入る空気を浄化することによってプラント全体の運転の成功および信頼性に対する鍵をもたらすからである。確実かつ効果的な空気ろ過を維持しようとする試みにもかかわらず、ガスタービンの軸方向圧縮機ブレード(たとえば、IGVおよびR1ロータブレード)などガスタービンシステムの様々な段内に、塩化物および硫化物など腐食性成分が存在することは避けられない。これらの成分(すなわち、塩化物および硫化物)は、たとえば、点食を引き起こすことによってガスタービンのIGVおよび第1段(R1)ロータブレードの材料構造を腐食させるおそれがあり、点食は、検出されない場合、最終的にブレード内で割れの始まりおよび伝播に通じる。そのような割れの結果、ガスタービンのIGVおよびR1ロータブレードの1つまたは複数が破損し、したがって最終的なガスタービンの故障停止を引き起こす。
【0006】
これらの故障停止は、非常にコストがかかる。通常、LNGプラントの生産機械/機器には冗長性なし(zero−redundancy)が関連付けられている。所与のガスタービントレイン内において、1つのガスタービンの故障停止は、トレイン全体の故障停止、または少なくともLNG生産速度の著しい低下を引き起こす可能性がある。その結果、LNGの出荷もまた延期される可能性があり、特定のプラントサイズや生産計画に応じて2〜7百万ドル/日の範囲で推定される得る追加のコストおよび/または利益逸失を生じる。そのため、点食によって生じるものなど、あらゆる壊損を回避すべきである。というのは、7〜10日間という故障停止が、システムを動作状態に復元するための予想される期間だからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,452,384号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、検出されなかった故障状態の結果としてのガスタービン故障停止状況を回避するために、ガスタービンシステム(たとえば、ケーシング)を分解する必要なしにLNGガスタービンシステム内において原位置で腐食を検出することが有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の様々な実施形態が、タービンブレード内の点食を検出するための方法および装置を提供する。少なくとも1つの実施形態によれば、ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するための腐食検出装置(たとえば、ECプローブ装置)であって、ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するためにフィレット区間の軸方向長さに沿って移動するように動作可能な検出ヘッドを備える。検出ヘッド内に位置する少なくとも1つのコイル装置が、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場を誘導する。受信機装置が、第1の磁場にさらされたフィレットの領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように適合され、第2の磁場は、第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される。次いで、信号処理装置が、検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させ、その結果、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される。
【0010】
一態様によれば、少なくとも1つのコイル装置が、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場をそれぞれが誘導するように動作可能な、検出ヘッド内に位置する複数のコイル装置を備え、検出信号が、第2の磁場に対応する複数の信号を含む。信号処理装置は、複数の検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させるように動作可能であり、処理後の複数の検出信号のそれぞれが、複数のコイル装置の、それぞれの1つのコイル装置に関連付けられた信号チャネルに対応し、それにより点食の多チャネル検出を可能にする。
【0011】
他の態様によれば、少なくとも1つのコイル装置は、(a)第1の磁場を生成するように動作可能な第1のコイルと、(b)第2の磁場を受け取るように動作可能な少なくとも1つの他のコイルとを含む別個のコイルを備える。
【0012】
一態様によれば、受信機装置は、(a)第2の磁場からそれぞれ第1の受信信号および第2の受信信号を生成するように動作可能な第1のコイル装置および第2のコイル装置と、(b)それぞれ第1のコイル装置および第2のコイル装置に結合され、それぞれ第1の受信信号および第2の受信信号をろ波するように動作可能である第1のバンドパスフィルタ装置および第2のバンドパスフィルタ装置と、(c)第1のバンドパスフィルタ装置および第2のバンドパスフィルタ装置に結合され、ろ波された第1の受信信号およびろ波された第2の受信信号を差動増幅し検出信号を生成するように動作可能である差動増幅器装置とを含むことができる。
【0013】
他の態様によれば、検出ヘッドは、フィレットの曲率半径に対応する半径を含む実質的に円筒形の形状、またはフィレットに対応する曲率半径未満である半径を含む実質的に円筒形の形状を含むことができる。
【0014】
他の態様によれば、検出装置は、検出ヘッドに結合されたハンドル区間をさらに含み、ハンドル区間は可撓性部分を含み、可撓性部分は、第1段R1ロータブレードの前面に位置する複数のインレットガイドベーン間で可撓性部分および検出ヘッドを操作することに基づいて、検出ヘッドと複数のR1ロータブレードの1つのR1ロータブレードのフィレット区間との間の接触を可能にすることによって、検出ヘッドを測定位置に移動するように動作可能である。
【0015】
他の態様によれば、検出装置は、ハンドル区間に結合されたビデオカメラをさらに含み、ビデオカメラは、検出ヘッドに近接して位置し、オペレータが検出ヘッドを測定位置に移動するのを助けるように動作可能である。
【0016】
他の態様によれば、検出装置は、少なくとも1つのコイル装置に印加される駆動信号を生成するように動作可能なドライバ装置をさらに含み、ドライバ装置は、駆動信号の少なくとも1つの特性(たとえば、振幅、周波数など)を操作して、指定された閾値を超える検出信号に関連付けられた信号対雑音比を生成する。
【0017】
他の態様によれば、信号処理装置はデジタル信号処理(DSP)装置を含み、DSPは、(a)検出信号振幅をデジタル化するように動作可能なアナログ−デジタル変換器と、(b)検出信号に対応する振幅、および検出された腐食孔に対応する他の記憶された検出信号振幅に基づいて、検出信号に対応する振幅を他の記憶された検出信号振幅と共に記憶するように動作可能な第1の記憶領域と、(c)ガスタービンブレードのサンプルフィレット表面上に作成された、複数の予め生成された点食領域に関連付けられた参照データを記憶するように動作可能な第2の記憶領域と、(d)フィレット区間内の点食の存在を判定するために、検出信号に対応する振幅を、記憶された参照データと比較するように動作可能なプロセッサセクションとを備える。
【0018】
他の態様によれば、第1の記憶領域は、フィレット区間内の点食の存在の判定間の時間間隔を計算するために、検出信号に対応する振幅と他の記憶された検出信号振幅とに追加されるタイムスタンプ情報を含む。また、第1の記憶領域は、記憶された検出信号振幅と他の記憶された検出信号振幅に追加される駆動信号情報を含むことができる。
【0019】
他の実施形態によれば、ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するためのプローブ装置が、(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するためにフィレット区間に沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、(b)検出ヘッド内に位置し、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場を誘導するように動作可能な少なくとも1つのトランスデューサ装置と、(c)第1の磁場にさらされたフィレットのその領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能な受信機装置であって、第2の磁場が、第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される、受信機装置と、(d)検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを含み、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される。
【0020】
他の実施形態によれば、ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するためのプローブ装置が、(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するためにフィレット区間に沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、(b)検出ヘッド内に位置し、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場を誘導し、かつ第1の磁場にさらされたフィレットの領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能なトランシーバ装置であって、第2の磁場が、第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される、トランシーバ装置と、(d)検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを含み、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される。
【0021】
一態様によれば、トランシーバ装置は、(a)第1の磁場を生成するように動作可能な送信機と、(b)第2の磁場を受け取り、検出信号振幅を生成するように動作可能な受信機とを含むことができる。送信機は、第1のコイル装置と、第1のコイル装置に電気駆動信号を印加するように動作可能なコイルドライバとを含むことができる。受信機は、第2のコイル装置と、第3のコイル装置と、第2のコイル装置および第3のコイル装置に結合され、第2のコイル装置および第3のコイル装置から受け取られたそれぞれ第2の信号および第3の信号を差動増幅するように動作可能であり、検出信号を生成する差動増幅とを含むことができる。
【0022】
少なくとも1つの他の実施形態によれば、ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出する方法が提供される。この方法は、ガスタービンブレードのフィレット区間の軸方向長さに沿って、フィレット区間の表面幾何形状と一致するように検出することによって点食を検出すること、および腐食の検出中に、フィレットの領域内で第1の磁場を誘導することを含む。誘導された第1の磁場にさらされたフィレットの領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号が検出され、第2の磁場は、誘導された第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される。次いで、検出信号は、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させることによって処理される。したがって、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される。
【0023】
少なくとも1つの態様によれば、表面幾何形状と一致するように検出することは、フィレット区間に関連する曲率半径と実質的に同じまたはそれ未満である半径を含む円筒形の形状を有するプローブヘッドを使用することを含む。
【0024】
少なくとも1つの他の実施形態によれば、点食検出ユニットが複数のプローブ装置を備え、各プローブ装置は、(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するためにフィレット区間の軸方向長さに沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、(b)検出ヘッド内に位置し、検出ヘッドと接触するフィレットの領域内で第1の磁場を誘導するように動作可能な少なくとも1つのコイル装置と、(c)第1の磁場にさらされたフィレットのその領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能な受信機装置であって、第2の磁場が、第1の磁場によってその領域内に誘導された電流によって生成される、受信機装置と、(d)検出信号を処理して、検出信号の対応する振幅をその領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを含み、ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定され、複数のプローブ装置の各信号処理装置によって検出信号が処理された結果が、対応するチャネル上で出力される。
【0025】
前述の簡単な説明、および以下の詳細な説明は、例示的なもの、本発明の説明に役立つものであるが、本発明を限定するもの、または本発明によって実現することができる利点を制限するものではないことが、当業者には理解されよう。さらに、前述の発明の概要は、本発明のいくつかの実施形態を表すものであり、本発明の範囲内のすべての主題および実施形態を表すものでも包含するものでもないことを理解されたい。したがって、本明細書において参照され、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示しており、詳細の説明と共に、本発明の原理を説明するように働く。
【0026】
構造および動作に共に関する本発明の態様、特徴、および利点は、様々な図全体にわたって同様の符号が同じ、または同様の部分を指定する添付の図面と共に述べる以下の説明に照らして本発明を検討したとき、理解され、より容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の一実施形態による渦電流(EC)プローブ装置のブロック図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、検査対象の表面に対するECプローブヘッドの位置の図である。
【図2A】本発明の一実施形態による、検査対象のガスタービンシステムロータブレードに対するECプローブ装置の機械的構造および相対配置の図である。
【図2B】本発明の一実施形態による、検査対象のガスタービンシステムロータブレードに対するECプローブ装置の機械的構造および相対配置の図である。
【図2C】本発明の一実施形態による、検査対象のガスタービンシステムロータブレードに対するECプローブ装置の機械的構造および相対配置の図である。
【図3】本発明の一実施形態によるECプローブ装置と協働で使用される撮像装置の図である。
【図4】本発明の一実施形態による、記憶される参照データを生成する際に使用される較正ブロック402の写真である。
【図5】本発明の一実施形態によるECプローブ装置の動作流れ図である。
【図6】本発明の一実施形態によるECプローブ装置によって実施される信号処理の動作流れ図である。
【図7】本発明の一実施形態によるECプローブ装置の動作パラメータを決定することに関連する実験性能データである。
【図8】本発明の一実施形態による多チャネルECプローブ装置を組み込むユニットの例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、ガスタービンロータブレード内に見出される腐食の特徴(たとえば、点食)を検出および解析するために渦電流(EC)を使用する本発明の様々な実施形態および態様について述べる。したがって、ガスタービンロータブレードの第1段内の点食を検出するために、新規のEC検出プローブおよび応用方法が提供される。ガスタービンロータブレードの第1段(すなわち、R1ロータブレード)は、一般に、より点食を起こしやすい。さらに、このプローブ装置を使用すると、第1段ロータブレード(すなわち、R1)に、ガスタービンの吸気プレナム内の開口を介してユーザが直接アクセス可能となる。
【0029】
腐食により生成された孔(腐食孔)は、実質的に円形であることもそうでないこともあり、概して材料の表面内にくぼみを含む。これらのくぼみは非常に小さい(すなわち、典型的には1ミリメートル未満の深さおよび直径を有する)が、割れなど、より深刻な欠陥に通じる。ガスタービンのロータブレードの第1段(すなわち、R1)の場合、点食の検出により、後続の割れの始まりおよび伝播が回避され、そのような割れができると、ガスタービンの動作中にロータブレードが破損し、したがって壊損に通じる可能性がある。割れは、鋭い不連続部をもたらし、それにより割れは、EC検出機器を使用する、信号位相変化を介した従来の検出に適したものとなるが、腐食孔は、そのような鋭い不連続部を呈さない。したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、腐食孔の存在に起因する信号振幅変化を検出するために、高感度受信機設計を使用することができる。
【0030】
図1Aは、本発明の一実施形態によるECプローブ装置100を概略的に示す。デバイス100は、一次コイルドライバ102、コイルシステム104、バンドパス(BP)フィルタ106a、106b、差動増幅器108、アナログ−デジタル(A/D)変換器110、信号処理装置112、参照データ記憶媒体114、データログ記憶媒体116、および検出インジケータ118(たとえば、視覚的表示、音響ブザー)を備える。ECプローブ装置100の動作については、図5および図6に示されている流れ図に関連してさらに述べる。
【0031】
一次コイルドライバ102は、検査対象の材料(すなわち、ガスタービンR1ロータブレードのフィレット部分)の表面120内で渦電流を誘導するために、コイルシステム104に交番駆動信号(たとえば、正弦波信号、パルス信号、ランプ信号など)を送る電気信号源を含む。コイルシステム104は、拡大底面図122に示されているように、3つのコイル装置を含むことができる。122で示されているように、コイルC1は、表面120内に誘導される一次磁場(B1)を生成するように動作可能な一次コイル装置であり、これにより、表面122内で渦電流が生成される。コイル装置C2、C3は、表面122からの生成された一次磁場(B1)と生成された渦電流磁場(B2)との相互作用で構成される正味の磁場を受け取るために使用される測定コイルである。前述のように、腐食孔の存在に起因する信号振幅変化を検出するために、高感度受信機設計を使用することができる。1つのそのような設計の考慮すべき点が、これらの測定コイル(すなわち、C2、C3)に当てはまる。これらのコイルは、点食によって引き起こされるくぼみの幾何形状と比較可能な幾何形状(たとえば、直径)を有するコイル直径を呈するべきである。たとえば、1.6mmのコイル直径を使用し、0.25mm、0.50mm、0.75mmの直径、およびそれぞれ0.25mm、0.50mm、0.75mmの深さを有する腐食孔を検出することができる。
【0032】
各測定コイル装置C2、C3は、それぞれBPフィルタ106a、106bの入力に結合される。BPフィルタ106a、106bは、望ましくないアーチファクトの中でもとりわけ、たとえば装置がハンドヘルド装置として使用されるときECプローブ装置100を測定領域に対して物理的に操作する結果として発生し得る高周波ノイズおよび低周波信号変動などの信号を低減する、またはなくするように働く。さらに、BPフィルタ106a、106bはまた、それぞれコイル装置C2、C3によって受け取られる信号の信号対雑音(S/N)比を向上させる。122で示されているコイル装置C1、C2、C3の構成は、可能なコイル構成の多数の様々な種類の一例である。たとえば、別の構成は、(中央に位置する)駆動コイルC1の両側にある位置決め測定コイル装置C2、C3を含むことができる。別の例によれば、コイルC1など単一のコイルを使用し、一次磁場(B1)を生成し、一次磁場(B1)によって誘導される渦電流の結果として生成される正味の磁場(B2)を受け取ることができる。
【0033】
BPフィルタ106a、106bからの出力が、差動増幅器108の差動入力に結合される。欠陥が表面122上に存在しないとき、差動増幅器108の差動入力にてBPフィルタ106a、106bから受け取られるろ波済みの入力は、実質的に同じである。したがって、差動増幅器108は、ゼロに近い、低い信号振幅の出力電圧を生成する。あるいは、欠陥が表面122上に存在する場合、差動増幅器108の差動入力にてBPフィルタ106a、106bから受け取られるろ波済みの入力は、同じでない。したがって、差動増幅器108は、増大された出力電圧を生成する。測定コイル装置の1つ(すなわち、C2またはC3)が、(腐食による)孔のある領域の上を移動すると、このコイル(たとえば、C2)のリアクタンス成分が他方のコイル(たとえば、C3)に比べて変化する。これは、差動増幅器108に印加される信号電流の差動変化、したがって出力電圧の増大を引き起こす。
【0034】
生成される出力信号の振幅は、それだけには限らないが孔の幾何形状(たとえば、0.3×0.45ミリメートル)、孔によって引き起こされる渦電流誘導磁場の変化に対する測定コイルの感度、および一次コイルドライバ102に関連する電気駆動パラメータ(たとえば、一次コイルを駆動する信号の波形、振幅、および周波数)の最適化など、いくつかの要因に依存する可能性がある。生成された出力信号は、信号処理装置112で処理される前に、A/D変換器110によってアナログ形式からデジタル形式に変換することができる。あるいは、アナログ−デジタル変換は、A/D変換器110など別個の装置を必要とすることなしに信号処理装置112内で行われてもよい。
【0035】
信号処理装置112は、差動増幅器108から出力される、デジタル化された振幅信号に対して様々な処理を加える。たとえば、信号処理装置112は、検出された振幅が腐食孔の検出によって引き起こされた振幅信号を構成するかどうか判定するために、閾値検出を実施することができる。また、信号処理装置112は、受け取られた振幅信号を、参照データ記憶媒体114内に入力されている既存の参照データ(たとえば、様々なデジタル化された振幅値)と相関させるために、参照データ記憶媒体114からの参照データにアクセスする。参照データ記憶媒体114内で見出される各参照データエントリは、任意選択で、特定の幾何形状および/または寸法を有する腐食孔に関連する情報を提供してもよい。あるいは、アクセスされる参照データは、幾何形状および/または寸法情報を提供することなしに、受け取られた振幅(すなわち、デジタル化)信号と、参照データ記憶媒体114内に入力されている様々な振幅(すなわち、デジタル化)値との振幅相関の度合いに基づいて、腐食孔の有無を確認してもよい。さらに腐食孔の検出の助けとするために、デジタルフィルタリングおよび等化など、追加のデジタル信号処理(DSP)をも、受け取られた振幅信号に対して実施することができる。
【0036】
検出インジケータ118は、ひとたび腐食孔が検出されたと判定されると、プローブ装置100のユーザの注意を喚起する。検出インジケータ118は、発光装置(たとえば、LED)など視覚的インジケータおよび/またはブザーなど音響インジケータを含むことができる。
【0037】
信号ログ記憶媒体116は、検出された各腐食孔に関連するデータ情報を記憶する。信号処理装置112が腐食孔の検出を確認した後で、信号処理装置112は、検出された振幅値をタイムスタンプ情報と共に信号ログ記憶媒体116内に記憶する。タイムスタンプ情報は、検出された各腐食孔に関連する日付(たとえば、年/月/日)および時間(たとえば、24時間時計)を含むことができ、これらは、使い方の中でもとりわけ、ガスタービンロータブレード内の点食の様々な検出事象間の様々な時間間隔を計算するための手段を提供する。また、信号ログ記憶媒体116は、検出された振幅値のそれぞれに対応する駆動信号情報とタイムスタンプ情報とを記憶することができる。記憶される駆動信号情報は、腐食孔の検出に基づいて一次コイルC1に印加された信号の振幅特性、形状、および周波数を含むことができる。
【0038】
図1Aは、別個の参照データ記憶媒体114および信号ログ記憶媒体116を示すが、両記憶媒体(すなわち、114および116)は、信号処理装置112内で一体化されてもよい。
【0039】
図1Bは、本発明の一実施形態による、検査対象の表面120に対するECプローブ検出ヘッド126の位置を示す。図では、一次コイル装置C1は、測定コイルC2、C3(図1Bには図示せず)と共に、プローブ検出ヘッド126内に位置する。動作時には、プローブ検出ヘッド126は、検査対象の表面120(たとえば、R1ロータブレード)に接触可能にあてがわれる。コイルC1と表面120の間の距離はリフトオフと呼ばれ、コイルの相互インダクタンスに影響を及ぼす。図1Bに示されている例では、リフトオフは、0.2〜0.4ミリメートル(mm)の範囲内とすることができる。コイル端128と表面120の間の距離は、約0.2mmとすることができる。さらに、プローブ検出ヘッド126の外部表面130は、約0.2mmの厚さを有する追加の保護層(図示せず)(たとえば、0.2mmのPTFE接着テープ)を備えることができる。
【0040】
図2A〜2Cは、本発明の一実施形態による、検査対象のガスタービンシステムロータブレードに対するECプローブ装置202の機械的構造および相対配置を示す。図2Aに示されているように、ECプローブ装置202は、プローブ検出ヘッド204と、プローブステム206と、プローブガイド208または延長ハンドルとを備える。図2Aでは、例示の過程の助けとするために、ロータブレード210a、210b、210cに対するプローブ装置202のサイズが誇張されている。たとえば、各ロータブレードのフィレット区間214の長さに対するプローブヘッド204の長さは、約1/6である。プローブガイド208の長さは、30センチメートル(cm)の領域内とすることができ、一方、プローブステムは、約5cmの長さを有することができる。
【0041】
プローブガイド208の軸は、プローブステム206の軸に対して実質的に垂直とすることができ、それにより、プローブガイド208は、プローブヘッド204とロータブレード210aのフィレット区間214との間に物理的な接触が確立されるようにプローブ装置202を操作して測定位置に入れるのを容易にする。これはまた、図2Bに示されている領域205の拡大図を用いて例示されている。
【0042】
図2Bに示されているように、ロータブレード210aのフィレット領域214は、プラットフォーム224とエアフォイル226の間に位置する領域である。ロータブレードのフィレット領域は、述べられている本発明の実施形態に従って点食を検出する際に特に重要なものである。点食検出中には、プローブヘッド204が、フィレット214の長さに沿って、フィレット縁部218aとフィレット縁部218bの間で、Z方向で接触可能に摺動するように操作される。この摺動運動中には、プローブステム206の軸と水平面との間の角度が、比較的一定に保たれる。プローブヘッド204は、フィレット214の長さに沿って、複数回、接触可能に摺動するように操作される。プローブステム206は、毎回、プローブステム206の軸と水平面との間で新しい角度を形成するために、XY平面内で回転される。角度を変更することによって、一次コイル装置C1は、フィレット214の異なる領域内で一次磁場(B1)を誘導する。フィレット214の長さに沿って、異なる角度で、プローブヘッド204を接触可能に摺動することにより、フィレット領域全体をカバーする腐食検出測定が容易になる。
【0043】
プローブステム206におけるこの角度変更が、図2Cに示されているロータブレード210aの断面図に示されている。図2Cに示されている例によれば、腐食検出中には、プローブステム206の軸と水平面230との間で3つの角度を形成するように、プローブステムがXY平面内で回転される。より具体的には、最初に、プローブヘッド204は、フィレット214の長さに沿って、232によって規定されているように15度の角度で、接触可能に摺動するように操作される。次に、プローブヘッド204は、2回目に、フィレット214の長さに沿って、234によって規定されているように45度の角度で、接触可能に摺動するように操作される。最後に、3回目かつ最後に、プローブヘッド204は、フィレット214の長さに沿って、236によって規定されているように75度の角度で、接触可能に摺動するように操作される。
【0044】
検出測定中に使用される摺動および角度の数は、変えることができる。しかし、ひとたび腐食孔が検出されると、プローブヘッド204は、その特定の腐食によって影響を受けた領域に接触するように操作される。腐食によって影響を受けた領域内に入った後で、フィレット214のその特定の区間内に他の腐食孔もまた存在するかどうか判定するために、プローブステム206の軸と水平面230との間の角度を変えることができる。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態によるECプローブ装置304と協働で使用される撮像装置302を示す。撮像装置302(たとえば、ビデオカメラ)は、検査対象のロータブレード312のフィレット部分310の向上された視界を装置304のユーザに提供するために、プローブ装置304のプローブ検出ヘッド306に近接して位置することができる。取り込まれた画像は、ハンドヘルド型または可搬型のビデオモニタ314上でユーザに対して表示させることができる。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態による、参照データ記憶媒体114内に記憶される参照データを生成する際に使用される較正ブロック402の写真を示す。較正ブロックは、放電加工(EDM)を使用してサンプルフィレット表面310上に形成される複数の予め生成された点食領域404、406、408を含む。図の例は、EDMを使用してサンプルフィレット表面310上に正確に形成された異なる直径および深さをそれぞれが有するいくつかの予め生成された点食領域404、406、408を示す。予め生成された腐食孔404は、0.25mmの直径、および0.25mmの深さを含む。予め生成された腐食孔406は、0.50mmの直径、および0.50mmの深さを含む。また、予め生成された腐食孔408は、0.75mmの直径、および0.75mmの深さを含む。414で規定されているように、予め生成された腐食孔406の拡大図が提供されている。
【0047】
装置100(図1)などECプローブ装置が、予め生成された点食領域404、406、408上で腐食孔測定を行うと、各測定により、予め生成された点食領域404、406、408のそれぞれに対応する特定の信号振幅が生成されることになる。したがって、各振幅は、既知の幾何形状を有する特定の腐食孔と相関される。これらの信号振幅、およびそれらの対応する幾何形状は、記憶されている参照データの少なくともいくつかを形成することができる。このようにして、フィールドテスト中に生成される信号振幅を、点食の存在を判定するために参照データと相関させることができる。任意選択で、任意の検出された腐食孔の近似的な幾何形状をも提供することができる。
【0048】
図5は、本発明の一実施形態によるECプローブ装置100(図1)に関する動作流れ図500を示す。流れ図500については、図1および図2を用いて述べる。ステップ502では、ガスタービンの圧縮機口(すなわち、ベルマウス)の前面で吸気プレナム内の開口を使用して、インレットガイドベーン(IGV)、およびIGVのすぐ後ろに位置するR1ロータブレードに、ユーザがアクセスする。
【0049】
ステップ504では、検査対象のR1ロータブレードのフィレット区間と実質的に同じまたはそれ未満である曲率半径を有するプローブ検出ヘッドが選択される。たとえば、プローブ検出ヘッド204(図2B)の半径R(図2B)は、フィレット区間214(図2B)の曲率半径よりわずかに小さくなるように設計されている。
【0050】
ステップ506では、プローブヘッド204がフィレット214の第1のフィレット縁部218a(図2B)にあてがわれる。次いで、ステップ508では、プローブステム206(図2B)と水平面230(図2C)との間の角度が、たとえば232(図2C)によって規定されているように約15度の比較的一定の値で設定される。
【0051】
ステップ510では、プローブヘッド204内の駆動コイルC1(図1A)が、フィレット214の第1の縁部218a(図2B)に対応する領域に一次磁場を印加する。プローブヘッド204内の測定コイルC2、C3(図1A)を使用して、フィレット214の第1の縁部218a(図2B)領域の導電性表面内に誘導される電流に基づいて、第2の磁場が検出される(ステップ512)。コイルC2、C3によって受け取られた第2の磁場に基づいて、振幅信号を、差動増幅器108(図1A)および信号処理装置112(図1A)によって、検出された腐食孔に基づいて生成および処理することができる。
【0052】
ステップ516では、プローブヘッド204がフィレット214の第2の縁部218b(図2B)領域に達したかどうか判定される。プローブヘッド204が第2の縁部218b(図2B)領域に達した場合(ステップ516)(はい)、プローブステム206(図2B)軸と水平面230(図2C)との間のプローブ角度の再配置が完了したかどうか判定される(ステップ520)。たとえば、プローブヘッド204が15度、45度、75度の3つの角度を使用して操作される場合、15度、45度、75度の3つの角度すべてについて測定が実施されると再配置が完了となる。再配置が完了した場合(ステップ520)(はい)、別のR1ロータブレードについて動作流れ図500のプロセスが繰り返される(ステップ524)。
【0053】
再配置が完了していない場合(ステップ520)(いいえ)、プローブステム206(図2B)軸と水平面230(図2C)との間のプローブ角度が、次の所望の角度に変更される(ステップ522)。たとえば、プローブヘッド204が15度、45度、75度の3つの角度を使用して操作され、現在の角度が15度である場合には、45度の角度を形成するようにプローブが次の角度設定へ操作される。次いで、ステップ522の後で、プロセスステップ506、508、510、512、514、516が繰り返される。
【0054】
ステップ516で「いいえ」であり、プローブヘッド204が第2の縁部218b(図2B)領域に達していない場合、プローブヘッド204は、フィレット214のZ軸(図2B)方向に沿って摺動することにより、フィレット214の別の区間にあてがわれる(ステップ518)。ステップ518の後で、プロセスステップ510、512、514、516が繰り返される。
【0055】
図6は、本発明の一実施形態による、腐食孔を検出する際にECプローブ装置100(図1A)によって実施される信号処理についての動作流れ図600を示す。ステップ602では、正味の磁場が測定コイルC2(図1A)によって検出される。同様に、ステップ604では、正味の磁場が測定コイルC3(図1A)によっても検出される。正味の磁場は、コイルC1(図1A)によって生成される一次磁場と、フィレット214(図1B)の導電性表面内で誘導される渦電流によって生成される磁場との相互作用の関数である。
【0056】
ステップ606では、測定コイルC2と測定コイルC3の間で異なる正味の磁場が経験されたとき、差動増幅器108(図1A)が信号振幅を生成する。たとえば、測定コイルC2、C3が腐食孔のないフィレット214の表面から正味の磁場を受け取っている場合、両測定コイル内で誘導される電流の大きさは、実質的に同じになる。したがって、差動増幅器108は、振幅の増大を示す信号を生成しない。しかし、腐食孔があるフィレット214の領域から測定コイルC2が正味の磁場を受け取った場合、その腐食孔がその領域内の渦電流の流れを乱すことになり、その結果、コイルC2によって検出される正味の磁場が、コイルC3によって検出される正味の磁場に対して変化する。これらの条件下では、差動増幅器108は、振幅の増大を示す信号を生成することになる。
【0057】
ステップ608では、差動増幅器108によって生成される信号が所定の閾値を超えるかどうか判定される。この閾値検出は、信号処理装置112内で実施される。差動増幅器108によって生成された信号が所定の閾値を超えない場合(いいえ)、プロセスステップ602、604、606が繰り返される。差動増幅器108によって生成された信号が所定の閾値を超える場合(ステップ608)(はい)、追加の信号処理(たとえば、デジタルフィルタリング、等化など)を信号処理装置112内で実施することができる(ステップ610)。
【0058】
ステップ612では、信号処理装置112が、記憶された参照データを使用するために参照データ記憶媒体114にアクセスする。前述のように、記憶された参照データは、様々な予め生成された腐食孔に対応する、予め測定された振幅値を含むことができる。アクセスした参照データを使用して、信号処理装置112は、差動増幅器108によって生成された検出振幅信号を、アクセスした参照データの予め測定された振幅値の1つと相関させる(ステップ614)。
【0059】
相関された、予め測定された振幅値に基づいて、検出された腐食孔に関連するデータ情報(たとえば、腐食孔の幾何形状)に、信号処理装置112を使用して参照データ記憶媒体114からアクセスすることもできる(ステップ616)。次いで、検出された腐食孔に関連するデータ情報(たとえば、タイムスタンプデータ、孔の幾何形状データなど)を、信号処理装置112によってデータログ記憶媒体116内に記録することができる(ステップ618)。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態によるECプローブ装置100(図1A)などECプローブ装置の動作パラメータを決定することに関連する実験性能データを示す。グラフ702は、100〜600kHzの周波数範囲にわたって動作されるECプローブによって実施された測定の繰返し精度を示す。この周波数範囲は、評価対象のECプローブの一次コイルを駆動するために使用される周波数に当てはまる。図では、300〜400kHzの範囲内の周波数が、比較的同じ測定繰返し精度(たとえば、検出された振幅値)をもたらすことが望ましい。
【0061】
グラフ704は、100〜600kHzの周波数範囲にわたる検出信号振幅に関連する標準偏差の測度を示す。図では、やはり300〜400kHzの範囲内の周波数が、ECプローブによって検出された振幅値について比較的一定の標準偏差をもたらす。
【0062】
グラフ706は、100〜600kHzの周波数範囲にわたる検出信号振幅に関連する信号対雑音(S/N)比の測度を示す。図では、ECプローブによって検出された振幅値に関連して、やはり300〜400kHzの範囲内の周波数が最も高いS/N比を示す。したがって、そのような実験評価を使用して、動作周波数の好適な範囲(たとえば、300〜400kHz)を、特定のECプローブ装置に対して決定することができる。
【0063】
フィレット区間の広い表面積にわたって測定を行うために、いくつかのECプローブ装置を単一のユニットに組み込むことが可能である。そのような構成では、多チャネルECプローブ装置を提供することができ、各チャネルが測定データにアクセスする。たとえば、3チャネル装置を使用することができる。そのような例が図8に示されている。一実施形態によれば、多チャネルECプローブ装置800が3つの離散的なプローブ装置802を含むことができ、離散的なプローブ装置802は、それぞれのプローブ検出ヘッドが、互いに結合され、長手方向に細長いプローブヘッド804を形成するように構成されている。各離散的なプローブ装置802は、単一のチャネルを構成し、たとえばECプローブ装置100(図1A)と同じ設計を備えることができる。他の実施形態によれば、多チャネルECプローブ装置810が、複数のコイルシステム814a〜814nを組み込む単一のプローブヘッド812を備えることができ、各コイルシステムは、たとえばコイルシステム104(図1A)と同じ構成を含むことができる。多チャネルECプローブ装置810のステム820は、各コイルシステム814a〜814nから受信信号を順次読み取る信号マルチプレクサ(図示せず)を収容することができる。受信信号の処理は、個々の処理装置(たとえば、装置112、図1A)、または複数の処理装置(たとえば、複数の装置112、図1A)を組み込む並列処理手法を使用して実施することができる。多チャネルにアクセスしそれらを処理する際に、多数の様々な処理アーキテクチャを使用することができることを理解されたい。
【0064】
本発明について、その特定の実施形態に関連して例示し述べたが、これらの実施形態は、本発明の原理を例示するものにすぎず、それだけに限る、または他の形で実施形態を限定するものではない。したがって、本発明の例示的な実施形態についての上記の説明、ならびにその様々な例示的な修正形態および特徴によって、多数の具体性(specificities)がもたらされるが、これらの実施可能な詳細は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでなく、また、本発明は、この範囲から逸脱することなしに、またその付随する利点を損なうことなしに、多数の修正、適応、変形、省略、追加、および均等な実装が可能であることを、当業者なら容易に理解するであろう。たとえば、プロセスそれら自体に必要な、またはそれら固有の程度を除いて、図を含めて本開示に記載されている方法またはプロセスのステップまたは段階に対して特定の順序は暗示されていない。多くの場合、プロセスステップの順序は変わる可能性があり、述べられている方法の目的、作用、または趣旨を変えることなしに、様々な例示的なステップを組み合わせ、変更し、または省略することができる。さらに、用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定する用語ではないことに留意されたい。用語および表現を、示されている、または述べられている特徴の均等物、またはその一部分を除外するために使用する意図はない。さらに、本発明は、本明細書に記載されている、もしくは他の形で本開示に鑑みて理解される、および/またはそのいくつかの実施形態で実現することができる利点の1つまたは複数を必ずしももたらすことなしに実施することができる。したがって、本発明は、開示されている実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲に従って定義すべきであることが意図されている。
【符号の説明】
【0065】
B1 一次磁場
B2 渦電流磁場
C1 コイル
C2 コイル装置
C3 コイル装置
100 ECプローブ装置
102 一次コイルドライバ
104 コイルシステム
106a バンドパス(BP)フィルタ
106b バンドパス(BP)フィルタ
108 差動増幅器
110 アナログ−デジタル(A/D)変換器
112 信号処理装置
114 参照データ記憶媒体
116 データログ記憶媒体
118 検出インジケータ
120 表面
122 表面
126 ECプローブ検出ヘッド
128 コイル端
130 外部表面
202 ECプローブ装置
204 プローブ検出ヘッド
206 プローブステム
208 プローブガイド
210a ロータブレード
210b ロータブレード
210c ロータブレード
214 フィレット区間
218a フィレット縁部
218b フィレット縁部
224 プラットフォーム
226 エアフォイル
230 水平面
302 撮像装置
304 プローブ装置
306 プローブ検出ヘッド
314 ビデオモニタ
402 較正ブロック
310 サンプルフィレット表面
404 予め生成された点食領域
406 予め生成された点食領域
408 予め生成された点食領域
800 多チャネルECプローブ装置
802 離散的なプローブ装置
804 プローブヘッド
810 多チャネルECプローブ装置
812 プローブヘッド
814a〜814n コイルシステム
820 ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するためのプローブ装置であって、
(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するために前記フィレット区間の軸方向長さに沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、
(b)前記検出ヘッド内に位置し、前記検出ヘッドと接触する前記フィレットの領域内で第1の磁場を誘導するように動作可能な少なくとも1つのコイル装置と、
(c)前記第1の磁場にさらされた前記フィレットの前記領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能な受信機装置であって、前記第2の磁場が、前記第1の磁場によって前記領域内に誘導された電流によって生成される、受信機装置と、
(d)前記検出信号を処理して、前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを備え、
前記ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される、プローブ装置。
【請求項2】
前記受信機が、
(a)前記第2の磁場からそれぞれ第1の受信信号および第2の受信信号を生成するように動作可能な第1のコイル装置および第2のコイル装置と、
(b)それぞれ前記第1のコイル装置および前記第2のコイル装置に結合され、それぞれ前記第1の受信信号および前記第2の受信信号をろ波するように動作可能である第1のバンドパスフィルタ装置および第2のバンドパスフィルタ装置と、
(c)前記第1のバンドパスフィルタ装置および前記第2のバンドパスフィルタ装置に結合され、前記ろ波された第1の受信信号および前記ろ波された第2の受信信号を差動増幅し前記検出信号を生成するように動作可能である差動増幅器装置と
を備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記検出ヘッドが、前記フィレットの曲率半径に対応する半径を含む実質的に円筒形の形状を含む、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記検出ヘッドが、前記フィレットに対応する曲率半径未満である、または実質的に等しい半径を含む実質的に円筒形の形状を含む、請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記ガスタービンブレードが、複数のインレットガイドベーンの後ろに位置する複数の第1段R1ロータブレードの1つのR1ロータブレードを含む、請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記検出ヘッドに結合されたハンドル区間をさらに備え、前記ハンドル区間が可撓性部分を含み、前記可撓性部分は、前記複数のインレットガイドベーン間で前記可撓性部分および検出ヘッドを操作することに基づいて、前記検出ヘッドと複数の第1段R1ロータブレードの1つのR1ロータブレードの前記フィレット区間との間の接触を可能にすることによって、前記検出ヘッドを測定位置に移動するように動作可能である、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記ハンドル区間に結合されたビデオカメラをさらに含み、前記ビデオカメラが、前記検出ヘッドに近接して位置し、オペレータが前記検出ヘッドを前記測定位置に移動するのを助けるように動作可能である、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記誘導された電流が渦電流を含む、請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコイル装置に印加される駆動信号を生成するように動作可能なドライバ装置をさらに備え、前記ドライバ装置が、前記駆動信号の少なくとも1つの特性を操作して、指定された閾値を超える前記検出信号に関連付けられた信号対雑音比を生成する、請求項1乃至8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの特性が駆動信号振幅を含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの特性が駆動信号周波数を含む、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの特性が、駆動信号振幅と駆動信号周波数の組合せを含む、請求項9記載の装置。
【請求項13】
前記信号処理装置がデジタル信号処理(DSP)装置を備え、前記DSPが、
(a)検出信号振幅をデジタル化するように動作可能なアナログ−デジタル変換器と
(b)前記検出信号に対応する振幅、および検出された腐食孔に対応する他の記憶された検出信号振幅に基づいて、前記検出信号に対応する振幅を前記他の記憶された検出信号振幅と共に記憶するように動作可能な第1の記憶領域と、
(c)ガスタービンブレードのサンプルフィレット表面上に作成された、複数の予め生成された点食領域に関連付けられた参照データを記憶するように動作可能な第2の記憶領域と、
(d)前記フィレット区間内の点食の存在を判定するために、前記検出信号に対応する振幅を、前記記憶された参照データと比較するように動作可能なプロセッサセクションと
を備える、請求項1乃至12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記第1の記憶領域が、前記フィレット区間内の点食の判定間の時間間隔を計算するために、検出信号に対応する前記振幅と前記他の記憶された検出信号振幅とに追加されるタイムスタンプ情報を含む、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記第1の記憶領域が、前記フィレット区間内の点食の判定を評価するために、前記記憶された検出信号振幅と前記他の記憶された検出信号振幅に追加される駆動信号情報を含む、請求項13記載の装置。
【請求項16】
ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するためのプローブ装置であって、
(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するために前記フィレット区間に沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、
(b)前記検出ヘッド内に位置し、前記検出ヘッドと接触する前記フィレットの領域内で第1の磁場を誘導するように動作可能な少なくとも1つのトランスデューサ装置と、
(c)前記第1の磁場にさらされた前記フィレットの前記領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能な受信機装置であって、前記第2の磁場が、前記第1の磁場によって前記領域内に誘導された電流によって生成される、受信機装置と、
(d)前記検出信号を処理して、前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを備え、
前記ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される、プローブ装置。
【請求項17】
ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出するためのプローブ装置であって、
(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するために前記フィレット区間に沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、
(b)前記検出ヘッド内に位置し、前記検出ヘッドと接触する前記フィレットの領域内で第1の磁場を誘導し、かつ前記第1の磁場にさらされた前記フィレットの領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能なトランシーバ装置であって、前記第2の磁場が、前記第1の磁場によって前記領域内に誘導された電流によって生成される、トランシーバ装置と、
(c)前記検出信号を処理して、前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを備え、
前記ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される、プローブ装置。
【請求項18】
前記トランシーバ装置が、
(a)第1の磁場を生成するように動作可能な送信機と、
(b)第2の磁場を受け取り、前記検出信号振幅を生成するように動作可能な受信機と
を備える、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記送信機が、
(a)第1のコイル装置と、
(b)前記第1のコイル装置に電気駆動信号を印加するように動作可能なコイルドライバとを備える、請求項17または18記載の装置。
【請求項20】
前記受信機が、
(a)第2のコイル装置と、
(b)第3のコイル装置と、
(c)前記第2のコイル装置および前記第3のコイル装置に結合され、前記第2のコイル装置および前記第3のコイル装置から受け取られたそれぞれ第2の信号および第3の信号を差動増幅するように動作可能な差動増幅であって、前記検出信号を生成する差動増幅と
を備える、請求項17乃至19のいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記第2のコイルおよび前記第3のコイルがそれぞれ、
(a)約1.6〜2.0ミリメートルのコイル直径と、
(b)円筒形のコイル支持体と、
(c)約50〜900kHzのコイル周波数範囲と、
(d)約5:1のコイル信号対雑音比と
を備える、請求項20記載の装置。
【請求項22】
ガスタービンシステムの1つまたは複数のブレード内の腐食を検出する方法であって、
(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の軸方向長さに沿って、表面幾何形状と一致するように検出することによって点食を検出すること、
(b)前記腐食の検出中に、前記フィレットの領域内で第1の磁場を誘導すること
(c)前記誘導された第1の磁場にさらされた前記フィレットの前記領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出し、前記第2の磁場が、前記誘導された第1の磁場によって前記領域内に誘導された電流によって生成されること、および
(d)前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させることによって前記検出信号を処理することを含み、
前記ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定される、方法。
【請求項23】
(e)点食の検出を容易にするために、撮像装置を使用して前記ガスタービンブレードを撮像すること、および
(f)前記撮像されたガスタービンブレードをユーザに対して表示すること
をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記表面幾何形状と一致するように検出することが、前記フィレット区間に関連する曲率半径と実質的に同じまたはそれ未満である半径を含む円筒形の形状を有するプローブヘッドを使用することを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのコイル装置が、前記検出ヘッドと接触する前記フィレットの領域内で前記第1の磁場をそれぞれが誘導するように動作可能な、前記検出ヘッド内に位置する複数のコイル装置を備え、
前記検出信号が、前記第2の磁場に対応する複数の信号を含み、
前記信号処理装置が、前記複数の検出信号を処理して、前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させるように動作可能であり、
前記処理後の複数の検出信号のそれぞれが、前記複数のコイル装置の、それぞれの1つのコイル装置に関連付けられた信号チャネルに対応し、それにより点食の多チャネル検出を可能にする、請求項1記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つのコイル装置が別個のコイルを備え、前記別個のコイルが、
(a)前記第1の磁場を生成するように動作可能な第1のコイルと、
(b)第2の磁場を受け取るように動作可能な少なくとも1つの他のコイルと
を含む、請求項1乃至15のいずれか1項記載の装置。
【請求項27】
複数のプローブ装置を備える点食検出ユニットであって、前記各プローブ装置が、
(a)ガスタービンブレードのフィレット区間の表面幾何形状と一致する形状を有し、点食を検出するために前記フィレット区間の軸方向長さに沿って移動するように動作可能な検出ヘッドと、
(b)前記検出ヘッド内に位置し、前記検出ヘッドと接触する前記フィレットの領域内で第1の磁場を誘導するように動作可能な少なくとも1つのコイル装置と、
(c)前記第1の磁場にさらされた前記フィレットの前記領域から受け取られた第2の磁場に対応する信号を検出するように動作可能な受信機装置であって、前記第2の磁場が、前記第1の磁場によって前記領域内に誘導された電流によって生成される、受信機装置と、
(d)前記検出信号を処理して、前記検出信号の対応する振幅を前記領域内の点食の存在と相関させるように動作可能な信号処理装置とを含み、
前記ガスタービンシステムのケーシングを分解することなしに点食の存在が判定され、
前記複数のプローブ装置の各信号処理装置によって検出信号が処理された結果が、対応するチャネル上で出力される、点食検出ユニット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−529024(P2012−529024A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513636(P2012−513636)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057852
【国際公開番号】WO2010/139795
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(505347503)ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ (112)
【Fターム(参考)】