説明

ガスバリアフィルム

【課題】優れたガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のガスバリアフィルムは、酸化珪素を主成分とするガスバリア膜が基板の少なくとも一方の面に形成されたものである。ガスバリア膜は、赤外吸収スペクトルのうち、800〜820cm−1のピーク強度をP1とし、860〜880cm−1のピーク強度をP2とし、ピーク強度P1とピーク強度P2との比をP2/P1とするとき、比P2/P1が、0≦P2/P1≦1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装,液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に利用されるガスバリアフィルムに関し、特に、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置、半導体装置、薄膜太陽電池等の各種の装置における防湿性を要求される部位や部品、または食品、衣料品もしくは電子部品等の包装に用いられる包装材料にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のプラスチックフィルム(基板フィルム)に、ガスバリア性を発現する膜(以下、ガスバリア膜ともいう)を成膜してなる、ガスバリアフィルムが利用されている。
このようなガスバリアフィルムに成膜されるガスバリア膜としては、窒化シリコン、酸化珪素、酸化アルミニウム等の各種の無機物(無機化合物)からなる膜が知られている。これらのガスバリア膜のうち、酸化珪素膜においては、赤外吸収スペクトルのうち、特定の波数と、ガスバリア性能との関連について着目したものがある(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材の少なくとも片面に、酸化硅素を主たる成分とする薄膜が形成されたガスバリアフィルムが開示されている。このガスバリアフィルムは、薄膜の赤外吸収スペクトルのうち、1040cm−1〜1080cm−1の間に存在するピーク強度p1と940cm−1〜850cm−1の間に存在するピーク強度p2の比p2/p1が、0≦p2/p1≦0.2を満足するものである。
なお、1040cm−1〜1080cm−1に存在する最大強度ピークはSi−O−Siの非対称伸縮運動による吸収であり、940cm−1〜850cm−1に存在する最大強度ピークは、Si−O−H結合による吸収ピークである。
【0004】
特許文献1では、比p2/p1が0.2よりも大きい領域のときには、薄膜中にSi−O−Hによる構造欠陥が大きく、十分なガスバリア性、防湿性が得られないとしており、940〜850cm−1で観察されるSi−O−H結合をバリア性能劣化の原因としている。また、特許文献1には、水蒸気透過率が0.2g/(m・day)のガスバリアフィルムが開示されている。
【0005】
特許文献2には、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられたバリア層とを少なくとも有する透明バリアフィルムが開示されている。この透明バリアフィルムは、バリア層が4員環構造をもつシロキサンを原料ガスとして化学気相蒸着法により形成された珪素原子と酸素原子による4員環構造を有する酸化珪素を主体とする薄膜である。バリア層は、赤外分光法により測定した分光スペクトルにおいて、1240cm−1付近の珪素原子と酸素原子からなる伸縮振動吸収(Si−O−Si伸縮モード)のピーク面積S1と、カーブフィッテング法によりピークをガウス分布とローレンツ分布の和で表現し、ピーク位置、高さ、半値幅、ガウス分布とローレンツ分布の比をパラメータとして解析して得られる890cm−1付近の珪素原子と酸素原子による4員環構造の吸収のピーク面積S2との間に、比(S2/S1)が0.01以上となる関係が存在する。
【0006】
特許文献2では、上述の比(S2/S1)が0.01未満であると、バリア層に存在する珪素原子と酸素原子による4員環構造が不十分となり、高いバリア性を得ることができないとしている。890cm−1を中心に観察されるSiOの4員環構造を有することにより、高いバリア性が得られるとしている。また、特許文献2には、水蒸気透過率が1.5g/(m・day)の透明バリアフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−224825号公報
【特許文献2】特許第3820041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1では、Si−O−Siの非対称伸縮運動による吸収である1040cm−1〜1080cm−1をバリア性の評価に用いている。特許文献2では、珪素原子と酸素原子からなる伸縮振動吸収(Si−O−Si伸縮モード)である1240cm−1付近をバリア性の評価に用いている。
このように、特許文献1、2は、いずれも赤外吸収スペクトルのうち、Si−O−Siの伸縮に関する吸収帯で規格化して、それぞれの結合量を規定している。
【0009】
しかしながら、特許文献1、2で規定するSi−O−Siに関する吸収帯は、SiOx膜の組成(なお、xは酸化度を示す。)によって、ピーク位置がずれるという問題がある。このため、特許文献1、2では水蒸気透過率が0.2g/(m・day)程度であるが、更に水蒸気透過率が小さいガスバリアを有する膜を規定するには、特許文献1、2で用いられているSi−O−Si関する吸収帯では不十分であるのが現状である。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、赤外吸収スペクトルのうち、ケイ酸塩の吸収スペクトルに着目し、この吸収スペクトルを規定することにより、優れたガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、酸化珪素を主成分とするガスバリア膜が、基板の少なくとも一方の面に形成されたガスバリアフィルムであって、前記ガスバリア膜は、赤外吸収スペクトルのうち、800〜820cm−1のピーク強度をP1とし、860〜880cm−1のピーク強度をP2とし、前記ピーク強度P1と前記ピーク強度P2との比をP2/P1とするとき、前記比P2/P1は、0≦P2/P1≦1であることを特徴とするガスバリアフィルムを提供するものである。
【0012】
本発明においては、前記基板と前記ガスバリア膜との間に有機膜が形成されていることが好ましい。
また、前記酸化珪素は、酸化度が1〜2であることが好ましい。前記基板は、例えば、PETまたはPENにより構成される。
前記ガスバリアフィルムは、例えば、真空蒸着法により形成されたものである。この場合、前記真空蒸着法には、成膜材料に、例えば、SiOまたはSiOが用いられる。
さらに、前記ガスバリア膜は、厚さが10〜150nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤外吸収スペクトルについて、800〜820cm−1のピーク強度をP1とし、860〜880cm−1のピーク強度をP2とし、ピーク強度P1とピーク強度P2との比をP2/P1とするとき、比P2/P1が0〜1のガスバリア膜を設けることにより、例えば、水蒸気透過率が0.1g/(m・day)以下のガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
なお、本発明のガスバリアフィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイのバリアフィルム、食品包装用フィルム、ならびに太陽電池のバックシート等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの一例を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの他の例を示す模式的断面図である。
【図2】縦軸に規格化吸光度、横軸に波数をとり、酸化珪素を主成分とするガスバリア膜のフーリエ変換赤外吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造に利用される成膜装置を示す模式的断面図である。
【図4】縦軸に規格化吸光度、横軸に波数をとり、実施例1、2、比較例1、2のガスバリア膜のフーリエ変換赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のガスバリアフィルムを詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの一例を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの他の例を示す模式的断面図である。
【0016】
図1(a)に示すガスバリアフィルム100は、基板Zと、この基板Zの表面Zfに形成されたガスバリア膜102とを有する。このガスバリア膜102は、酸素、水蒸気などの気体の透過を抑制するガスバリア機能を有するものであり、酸化珪素を主成分とするものである。
ガスバリアフィルム100において、基板Zとしては、特に限定されるものではなく、公知のガスバリア膜が形成される各種のフィルムが利用可能である。
具体的には、基板Zとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなるシート状のプラスチックフィルム(樹脂フィルム)を用いることができる。
なお、基板Zの形態は、フィルム状であれば、そのサイズは、特に限定されるものではなく、例えば、長さが1mの程度のシート状のものから、数十m、数百mにも及ぶ長尺のものであってもよい。
【0017】
基板Zの厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜300μmである。特に、基板Zとしてガラス転移温度が130℃以下の樹脂フィルムを用いる場合、機械的強度および透明性の観点から厚さが10〜150μmの基板Zを用いることが好ましい。
また、ガスバリアフィルムを太陽電池のバックシートに用いる場合、耐電圧性の観点から、基板Zの厚さは300μm程度あることが好ましい。
基板Zの厚さが10μm未満では、基板Zの種類によっては、ガスバリアフィルムの機械的強度が不十分になってしまう場合が有る。
一方、基板Zの厚さが150μmを超えると、ガスバリアフィルムの透明性としては、基板Zの透明性が支配的になってしまい、ガスバリア膜の透明性が高くても、十分な透明性を有するガスバリアフィルムが得られない場合がある。さらに、可撓性等の点でも不利である。加えて、有機ELディスプレイおよび液晶ディスプレイなどでは、透明性、更には、より薄く、また、より軽いことが求められているため、基板Zの厚さを必要以上に厚くするのは好ましくなく、この点からも、上記基板の厚さ範囲は、ガスバリアフィルムの十分な強度を確保した上で、薄膜化および軽量化を図る意味で好ましい。以上の点を考慮すると、基板Zの厚さは、25〜100μmとすることが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、例えば、基板Zとしても用いることができるプラスチックフィルム等を基材として、その上に、保護層、接着層、光反射層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層等の、各種の機能を得るための層(膜)が成膜されている物を基板としてもよい。後述するように、基板Zの表面Zfに有機層104が形成されたもの(図1(b)参照)を基板としてもよい。また、基材の上に複数層の膜が成膜されたものを基板としてもよい。
【0019】
ガスバリア膜102は、上述のように、酸化珪素を主成分とするものであり、SiOx膜により構成される。ここで、xは酸化度を示すものであり、xが1では、SiO膜となり、xが2では、SiO膜となる。SiOx膜においては、xが1.0〜1.4であると、ガスバリア性が高いものとなるため、xは1.0〜1.4が好ましい。
【0020】
ガスバリア膜102は、その厚さについては、特に限定されるものではなく、要求されるガスバリア性等に応じて、適宜、決定すればよいが、10〜150nmとするのが好ましい。
ガスバリア膜102の厚さを10nm以上とすることにより、十分なガスバリア性を安定して確保することができる。また、ガスバリア性は、基本的に、ガスバリア膜102が厚い方が好ましいが、150nmを超えるガスバリア膜102を成膜しても、これ以上のガスバリア性を得るのは、困難であり、逆に、150nm以下とすることにより、ガスバリア膜102の割れ等を好適に防止することができ、好ましい結果を得る。
また、上記利点を、より好適に得られる等の点で、ガスバリア膜102の厚さは、より好ましくは、20〜80nmである。
【0021】
本発明において、ガスバリア膜102は、以下に示すように赤外吸収スペクトル基づいて、その赤外吸収特性が規定されている。図2にガスバリア膜102の赤外吸収スペクトルAの一例を示す。
ガスバリア膜102においては、図2に示すように赤外吸収スペクトルAのうち、800〜820cm−1の領域αにおけるピーク強度をP1とし、860〜880cm−1の領域αにおけるピーク強度をP2とし、ピーク強度P1とピーク強度P2との比をP2/P1とするとき、比P2/P1は0≦P2/P1≦1である。この比P2/P1は、0.45〜0.90であることが好ましく、より好ましくは0.60〜0.88である。
以下、ガスバリア膜102について、800〜820cm−1の領域αのピーク強度P1を用いる理由、860〜880cm−1の領域αにおけるピーク強度P2を用いる理由、および比P2/P1を0≦P2/P1≦1とする理由について説明する。
【0022】
ガスバリア膜102について、860〜880cm−1の波長域のピーク強度P2を用いて規定している。
ここで、ケイ酸塩の第1のピークの波長域は1040〜1080cm−1であり、ケイ酸塩の第2のピークの波長域は750〜950cm−1である。このことは、例えば、「フィルムの分析評価技術」、株式会社情報機構、2003、p22に記載されている。前述のケイ酸塩の第1のピークの波長域(1040〜1080cm−1)はSiOのピークと重なっていると考えられる。
上述のように、ガスバリア膜102を規定する860〜880cm−1は、ケイ酸塩に由来するものであり、ケイ酸塩の第2のピークを含んでいる。
【0023】
本願発明者が鋭意検討した結果、860〜880cm−1におけるピーク強度P2が小さい方が酸化珪素を主成分とするSiOx膜の組成に依らず、例えば、水蒸気透過率が0.1(m・day)以下の高いガスバリア性能が得られ、ガスバリア性能が高くなることを見出した。このため、860〜880cm−1の波長域におけるピーク強度P2をガスバリア性能の指標として用いた。なお、上述のことから、860〜880cm−1のピーク強度P2は小さいことが好ましい。
【0024】
さらに、本願発明者が鋭意検討した結果、ガスバリア性能の指標となる860〜880cm−1のピーク強度P2と800〜820cm−1のピーク強度P1との間に相関関係があることを知見した。すなわち、860〜880cm−1のピーク強度P2を、800〜820cm−1のピーク強度P1に対するものとした場合、水蒸気透過率等のガスバリア性能を適切に評価することができることを知見した。このため、ガスバリア膜102について、800〜820cm−1のピーク強度P1を基準として、860〜880cm−1のピーク強度P2を規定している。しかも、860〜880cm−1のピーク強度P2は、上述のように小さい方がよいことから、800〜820cm−1のピーク強度P1以下とした。これにより、比P2/P1については、0≦P2/P1≦1と規定した。
【0025】
本実施形態においては、ガスバリア膜102について、赤外吸収スペクトルに基づいて規定される比P2/P1を0〜1としてガスバリア膜102にケイ酸塩が含まれないか、ケイ酸塩が含まれていたとしても量が少ないものとしている。このように、ガスバリア膜102において、赤外吸収特性を規定し、860〜880cm−1の吸収があるケイ酸塩の量を少なくすることにより、酸化珪素を主成分とするSiOx膜の組成に依らず、例えば、xの値が上述の好ましい範囲ではなくても、水蒸気透過率等について、例えば、水蒸気透過率が0.1(m・day)以下の高いガスバリア性能が得られる。
【0026】
ガスバリア膜102の赤外吸収スペクトルAは、例えば、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて測定されたものである。このFT−IRによる測定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、透過法、反射法、全反射法(ATR法)を用いることができる。
ガスバリア膜102の上述のピーク強度P1およびピーク強度P2は、基板100にガスバリア膜102が形成された状態で測定されるか、またはガスバリア膜102がシリコン基板等の所定の基板に形成された状態で測定される。シリコン基板等にガスバリア膜102を形成した場合、シリコン基板等に形成するときのガスバリア膜102の成膜条件で、基板Zの表面Zfにガスバリア膜102を形成すれば、比P2/P1を有するガスバリア膜102を得ることができる。
【0027】
なお、本発明においては、図1(a)に示すガスバリアフィルム100の構成に限定されるものではなく、図1(b)に示すガスバリアフィルム100aのように、基板Zとガスバリア膜102との間に有機膜104が形成されていてもよい。このガスバリアフィルム100aのように、基板Zの表面Zfに有機膜104が形成され、有機膜104の表面104aにガスバリア膜102が形成された構成とすることにより、基板Zの表面Zfに存在する凹凸を埋没させて、ガスバリア膜102の成膜面を平坦にすることができる。これにより、ガスバリア膜102が有する優れたガスバリア性能を十分に発現することができる。しかも、上述のように、ガスバリア膜102は比P2/P1を0〜1としており、SiOx膜の組成に依らず、水蒸気透過率等について優れたガスバリア性能が得られる。このことから、ガスバリアフィルム100aは、より良好なガスバリア性能を備える。
上述のガスバリアフィルム100、100aは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイのバリアフィルム、食品包装用フィルム、ならびに太陽電池のバックシート等に利用することができる。
【0028】
本発明において、ガスバリアフィルム100aの有機膜104の形成材料(主成分)は、特に限定されるものではなく、公知の有機物(有機化合物)が、各種、利用可能であり、特に、各種の樹脂(有機高分子化合物)が好適に例示される。
一例として、TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル、メタクリル酸―マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が例示される。
【0029】
また、有機膜104の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の有機物の膜の成膜方法が、全て利用可能である。
一例として、有機物や有機物モノマー、さらには重合開始剤等を溶媒に溶解(分散)して調製した塗料を、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート、等の公知の塗布手段で基板Zに塗布して、乾燥し、必要に応じて、加熱、紫外線照射、電子線照射等によって硬化する、塗布法が例示される。また、有機物あるいは前記塗布法と同様の塗料を蒸発させて、その蒸気を基板Zに付着させて、冷却/凝縮して液体状の膜を形成し、この膜を紫外線や電子線によって硬化することで成膜を行なう、フラッシュ蒸着法も好適に利用可能である。また、シート状に成形した有機膜104を転写する転写法も利用可能である。
【0030】
本発明において、有機膜104の厚さには、特に限定されるものではなく、基板Zの表面性状や厚さ、要求されるガスバリア性等に応じて、適宜、設定すればよいが、0.3〜5μmが好ましい。
有機膜104の厚さを、上記範囲とすることにより、基板Zの表面に存在する凹凸をより確実に包埋してガスバリア膜102の成膜面を好適に平坦にできる、ガスバリア膜102との密着性を向上できる等の点で好ましい。
なお、本発明において、有機膜104は、1つの有機物の膜で形成されるものに限定されるものではなく、複数の有機物の膜によって、有機膜104を形成してもよい。例えば、塗布法で成膜した有機物の膜の上に、フラッシュ蒸着で成膜した有機物の膜を設け、この2層の有機物の膜によって、有機膜104を形成してもよい。
【0031】
本発明において、図1(a)に示すガスバリアフィルム100のガスバリア膜102、および図1(b)に示すガスバリアフィルム100aのガスバリア膜102は、例えば、図3に示す成膜装置を用いて形成することができる。以下、ガスバリア膜102の成膜装置および成膜方法について説明する。
上述のように、ガスバリア膜102は、酸化珪素を主成分とするSiOx膜であり、かつ比P2/P1が0〜1である。このようなガスバリア膜102は、例えば、圧力が1×10−3Pa以下、水分圧が2×10−8Pa以下の雰囲気で、後述するように成膜材料MにSiOまたはSiOを用いた真空蒸着法により形成することができる。なお、ガスバリア膜102の形成の際には、予め、比P2/P1が0〜1となる条件を求めておけばよいため、成膜条件は、上述の圧力、水分圧の条件に限定されるものではない。
【0032】
図3に示す成膜装置10は、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)タイプの成膜装置であり、供給室12から成膜室14を経て巻取り室16に至る所定の経路で、供給室12から巻取り室16まで長尺な基板Zを通して搬送しつつ、例えば、長尺の基板Zの表面Zf(図1(a)参照)に連続してガスバリア膜102を形成し、ガスバリアフィルム100(図1(a)参照)を製造するものである。
【0033】
成膜装置10は、基本的に、基板Zを供給する供給室12と、基板Zにガスバリア膜102(図1(a)参照)を形成する成膜室(チャンバ)14と、ガスバリア膜102(図1(a)参照)が形成された基板Z、すなわち、ガスバリアフィルム100を巻き取る巻取り室16と、真空排気部32と、制御部36とを有する。この制御部36により、成膜装置10における各要素の動作が制御される。
また、成膜装置10においては、供給室12と成膜室14とを区画する壁15aには、基板Zが通過するスリット状の開口15cが形成されており、成膜室14と巻取り室16とを区画する壁15bには、ガスバリア膜102が形成された基板Z(ガスバリアフィルム100)が通過するスリット状の開口15cが形成されている。
【0034】
成膜装置10においては、供給室12、成膜室14および巻取り室16には、真空排気部32が配管34を介して接続されている。この真空排気部32により、供給室12、成膜室14および巻取り室16の内部が所定の真空度(圧力)にされる。配管34には、供給室12、成膜室14、巻取り室16の近傍の部分にバルブ(図示せず)を設け、真空排気部32による各室の排気量を調整可能としてもよい。
【0035】
真空排気部32は、供給室12、成膜室14および巻取り室16を排気して、所定の真空度(所定の圧力)に保つものであり、ドライポンプおよびターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有するものである。また、供給室12、成膜室14および巻取り室16には、それぞれ内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。また、成膜室14には、内部の水分圧(HO分圧)を測定するために、例えば、真空分圧計(図示せず)が設けられている。
なお、真空排気部32による供給室12および巻取り室16の到達真空度には、特に限定されるものではなく、成膜室14については、後述するようにガスバリア膜102の成膜条件等に応じた十分な真空度を保てればよい。この真空排気部32は、制御部36により制御される。また、各圧力センサおよび真空分圧計も制御部36に接続されており、各圧力センサおよび真空分圧計で得られた圧力、水分圧(HO分圧)は、制御部36で記憶される。
【0036】
供給室12は、基板Zを供給する部位であり、回転軸20、およびガイドローラ21が設けられている。
回転軸20は、基板Zを連続的に送り出すものである。基板Zが反時計回りに巻回されてなる基板ロール20aが回転軸20に装填される。
回転軸20は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって回転軸20が基板Zを巻き戻す方向rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、基板Zが基板ロール20aから連続的に送り出される。
【0037】
ガイドローラ21は、基板Zを所定の搬送経路で成膜室14に案内するものである。このガイドローラ21は、公知のガイドローラにより構成される。
本実施形態の成膜装置10においては、ガイドローラ21は、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ21は、基板Zの搬送時における張力を調整するテンションローラとして作用するローラであってもよい。
【0038】
巻取り室16は、後述するように、成膜室14で、表面Zfにガスバリア膜102が形成された基板Zを巻き取る部位であり、巻取り軸30、および2つのガイドローラ31a、31bが設けられている。
【0039】
巻取り軸30は、ガスバリアフィルム100であるガスバリア膜102が形成された基板Zをロール状に、例えば、時計回りに巻き取るものである。
この巻取り軸30は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取り軸30が回転されて、ガスバリア膜102が形成された基板Zが巻き取られる。
巻取り軸30においては、モータによってガスバリア膜102が形成された基板Zを巻き取る方向rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、ガスバリア膜102が形成された基板Zを連続的に、例えば、時計回りに巻き取り、ガスバリアフィルム100の基板ロール30aを得る。
【0040】
ガイドローラ31a、31bは、成膜室14から搬送された基板Zを、所定の搬送経路で巻取り軸30に案内するものである。このガイドローラ31a、31bは、公知のガイドローラにより構成される。なお、供給室12のガイドローラ21と同様に、ガイドローラ31a、31bも、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ31a、31bは、テンションローラとして作用するローラであってもよい。
成膜装置10においては、基板ロール20aからの基板Zの送り出しと、巻取り室16の巻取り軸36における基板Zの巻き取りとを同期して行なって基板Zを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、成膜室14において、基板Zにガスバリア膜102を形成する。
【0041】
成膜室14は、真空チャンバとして機能するものであり、例えば、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金など、各種の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成されている。この成膜室14は、基板Zを搬送しつつ連続的に、基板Zの表面Zfに、例えば、真空蒸着法によってガスバリア膜102を形成する部位である。
なお、成膜室14には、真空度調整用のアルゴンガスの導入などを行うための、ガス導入手段が設けられてもよい。ガス導入手段は、ボンベ等との接続手段またはガス流量の調整手段等を有するか、またはこれらに接続されるものである。ガス導入手段は、真空蒸着装置で用いられる公知のものが用いられる。
【0042】
成膜室14内には、6つのガイドローラ24a、24b、25、27、28a、28bと、ドラム26と、成膜部40と、蒸着部50とが設けられている。
搬送方向Dの上流側から下流側に向かってガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25、ドラム26、ガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bの順で設けられている。すなわち、ドラム26に対して、ガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25が上流側に設けられ、ガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bが下流側に設けられている。
【0043】
ガイドローラ24a、24bとガイドローラ28a、28bとが、所定の間隔を設けて対向して、平行に配置されている。ガイドローラ24a、24bおよびガイドローラ28a、28bは基板Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されている。
また、ガイドローラ25とガイドローラ27とが、ガイドローラ24とガイドローラ28との間隔よりも狭い間隔で対向して、平行に配置されている。ガイドローラ25およびガイドローラ27は基板Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されている。
【0044】
ガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25は、供給室12に設けられたガイドローラ21から搬送された基板Zをドラム26に搬送するものである。このガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25は、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向(以下、軸方向という)に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25は、軸方向の長さが、基板Zの長手方向と直交する幅方向における長さ(以下、基板Zの幅という)よりも長い。
なお、回転軸20、ガイドローラ21、ガイドローラ24a、24bおよびガイドローラ25により、本発明の第1の搬送手段が構成される。
【0045】
ガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bは、ドラム26に巻き掛けられた基板Zを巻取り室16に設けられたガイドローラ31aに搬送するものである。このガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bは、例えば、軸方向に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bは、軸方向の長さが基板Zの幅よりも長い。
なお、ガイドローラ27、ガイドローラ28、ガイドローラ31a、31b、巻取り軸30により、本発明の第2の搬送手段が構成される。
また、6つのガイドローラ24a、24b、25、27、28a、28bは、上記構成以外は、供給室12に設けられたガイドローラ21と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
ドラム26は、ガイドローラ24b、25と、ガイドローラ27、28aとの間の空間Hの下方に設けられている。ドラム26は、その長手方向を、4つのガイドローラ24b、25、27、28aの長手方向に対して平行にして配置されている。このドラム26は、軸方向(長手方向)における長さが基板Zの幅よりも長い。
ドラム26は、例えば、円筒状を呈し、その両端面に、それぞれ円筒状の支持部29が設けられている。この支持部29が成膜室14の壁面(図示せず)に設けられた、例えば、ベアリング(図示せず)により回転可能に支持される。これにより、回転軸Cを中心として、ドラム26は回転方向ωに回転する。
ドラム26の表面26a(周面)に基板Zが巻き掛けられて、ドラム26が回転方向ωに回転することにより、基板Zを所定の成膜位置に保持しつつ、搬送方向Dに基板Zを搬送するものである。
【0047】
なお、ドラム26については、基板Zの厚さが薄い場合、成膜時の熱で基板Zが切断されることを防ぐために冷却することが好ましい。しかしながら、ドラム26の温度は、ガスバリア膜102の膜質に影響があるため、基板Zの厚さ、形成するガスバリア膜102の膜質等に応じて、ドラム26の温度は適宜決定されるものである。
【0048】
図3に示すように、成膜部40は、ドラム26の下方に対向して設けられており、基板Zがドラム26に巻き掛けられた状態で、ドラム26が回転して、基板Zが搬送方向Dに搬送されつつ、基板Zの表面Zfに、ガスバリア膜102を形成するものである。
【0049】
成膜部40は、例えば、真空蒸着法によりガスバリア膜102を形成するものである。この成膜部40は、加熱容器42と、ヒータ44と、温度センサ45と、第1の温度調節部46と、一対の仕切板48と、シャッタ49とを有する。
仕切板48は、加熱容器42を成膜室14内において区画するものであり、一対の仕切板48が加熱容器42を挟むようにして配置されている。
【0050】
加熱容器42は、上面が開放する中空の容器であり、例えば、矩形状の筐体を有するものである。この加熱容器42は、ドラム26の軸方向(長手方向)に沿って複数設けられている。
各加熱容器42は、内部にガスバリア膜102を形成するための成膜材料Mが、例えば、ペレットの形態で充填される。本実施形態において、成膜材料Mは、酸化珪素を主成分とするものであり、例えば、SiO、SiOである。
【0051】
各加熱容器42は、一般的な真空蒸着用のルツボと同様に、成膜材料Mと反応せず、かつ十分な耐熱性を有し、かつ熱伝導性の良好な材料で形成されており、例えば、各種の金属もしくは合金または各種のセラミックスで形成される。なお、加熱容器42は、成膜材料Mの組成、融点などに応じて適宜材質が選択されるものである。
【0052】
また、加熱容器42の形状に、特に限定されるものではなく、各種の形状の容器が利用可能である。
加熱容器42は、円筒状、四角筒状などの角筒状のように、筒の上下方向と直交する方向の断面の変動が無い形状であることが好ましい。加熱容器42を、このような筒状とすることにより、充填する成膜材料が蒸発して液面(蒸発面)が下降しても、蒸発面の面積が変化しないので、成膜材料の蒸発量すなわち成膜レートの安定化、および成膜材料蒸気の指向性の安定化等の点で好ましい。
【0053】
ヒータ44は、加熱容器42を所定の温度に加熱し、加熱容器42の内部の成膜材料Mを溶融させるものである。加熱容器42の壁面の周囲を囲むようにしてヒータ44が設けられている。ヒータ44は、第1の温度調節部46に接続されている。
【0054】
なお、ヒータ44は、その構成は、特に限定されるものではない。電熱線、導体などの抵抗体ヒータ、シースヒータなど各種のものが利用可能であり、成膜材料Mの融点などに応じて適宜選択されるものである。
【0055】
第1の温度調節部46は、加熱容器42を加熱する温度、すなわち、成膜材料Mを蒸発させるに十分な温度である設定温度に応じて、各ヒータ44に印加する電圧、電流または電力などを調節するためのものである。この第1の温度調節部46は制御部36に接続されている。
【0056】
温度センサ45は、例えば、各加熱容器42の上部に設けられており、熱電対により構成される。また、各温度センサ45は、図示はしないが制御部36に接続されている。制御部36により、設定温度と、温度センサ45による測定温度とに応じて、例えば、フィードバック制御により加熱容器42内の温度が設定温度となるように、第1の温度調節部46から各ヒータ44に供給される電圧、電流または電力が制御される。
【0057】
成膜部40には、加熱容器42の開口部からの成膜材料Mの蒸気を遮るシャッタ49が設けられている。このシャッタ49は、加熱容器42の開口部からの成膜材料Mの蒸気を遮る板状部材で構成されており、加熱容器42の開口部の全域を覆う大きさを有する。また、シャッタ49には、図示はしないが、回転支持軸が接続されており、この回転支持軸にモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより、回転支持軸を介してシャッタ49が回転し、加熱容器42の開口部の上方を開放し、成膜材料Mの蒸気を基板Zの表面Zfに到達させる。
なお、モータも制御部36に接続されており、制御部36により、その回転、すなわち、シャッタ49による加熱容器42の開口部からの成膜材料Mの蒸気の遮断が制御される。
【0058】
蒸着部50は、水分を吸着する機能を有する金属mを、真空蒸着法により、基板Z以外のものに蒸着するものである。本実施形態において、蒸着部50は、例えば、マスク59に、水分を吸着する機能を有する金属mを蒸着する。この水分を吸着する機能を有する金属mは、例えば、Al、Tiである。
この蒸着部50は、加熱容器52と、ヒータ54と、温度センサ55と、第2の温度調節部56と、一対の仕切板58と、マスク59とを有し、基本的に成膜部40と同様の構成である。しかし、蒸着部50においては、加熱容器52は、少なくとも1つあればよいものである点が成膜部40とは異なる。
仕切板58は、加熱容器52を成膜室14内において区画するものであり、一対の仕切板58が加熱容器52を挟むようにして配置されている。
【0059】
蒸着部50の加熱容器52、ヒータ54および温度センサ55は、成膜部40の加熱容器42、ヒータ44と、温度センサ45と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。蒸着部50においては、加熱容器52には、水分を吸着する機能を有する金属mとして、例えば、AlまたはTiが、ペレットの形態で充填される。また、ヒータ54は、第2の温度調節部56に接続されている。このヒータ54も、成膜部40のヒータ44と同様に、金属mの融点などに応じて適宜選択されるものである。
【0060】
第2の温度調節部56は、加熱容器52を加熱する温度、すなわち、金属mを蒸発させるに十分な温度である設定温度に応じて、ヒータ54に印加する電圧、電流または電力などを調節するためのものである。この第2の温度調節部56も制御部36に接続されており、温度センサ55も、図示はしないが制御部36に接続されている。
制御部36により、設定温度と、温度センサ55による測定温度とに応じて、例えば、フィードバック制御により加熱容器52内の温度が設定温度となるように、第2の温度調整部56から、ヒータ54に供給される電圧、電流または電力が制御される。
【0061】
蒸着部50には、加熱容器52の開口部の上方にマスク59が設けられている。このマスク59にAlまたはTiが蒸着される。このAlまたはTiの蒸気に成膜室14内の水分が吸着されて成膜室14内の水分圧を、例えば、6×10−4Pa以下にすることができる。成膜室14内の水分圧は、例えば、ガスバリア膜102の形成前では6×10−4Pa以下であることが好ましい。この水分圧(6×10−4Pa)は、成膜室14内の全圧の60%以下に相当するものである。
また、成膜室14内の水分圧は、例えば、ガスバリア膜102の形成中では3×10−3Pa以下であることが好ましい。この水分圧(3×10−3Pa)は、成膜室14内の全圧の30%以下に相当するものである。
上述の水分を吸着するためのAlまたはTiは、基板Z以外のマスク59に蒸着されるため、成膜室14内にAlまたはTiの蒸気が飛散することがなく、基板Zに異物として付着することもない。
なお、蒸着部50による蒸着は、マスク59に限定されるものではなく、基板Zの表面Zf以外の場所で、ガスバリア膜102の形成に悪影響を与えることがなければ、その蒸着位置は特に限定されるものではない。
【0062】
成膜装置10においては、蒸着部50は、成膜室14内のドラム26の上流側の領域αに設けたが、これに限定されるものではなく、同じ成膜室14内であれば、ドラム26の下流側の領域βに設けてもよい。成膜前に蒸着を行う場合には、基板Zが搬送される上流側の領域αに設けることが好ましく、成膜開始後以降成膜中に蒸着を行う場合には、成膜後の基板Zが搬送される下流側の領域βに設けることが好ましい。
更には、膜室14内のドラム26の上流側の領域αおよび下流側の領域βの両方に配置してもよい。この場合、両方同時に蒸着してもよく、成膜前は上流側の領域αのものを蒸着し、成膜開始後以降成膜中は、下流側の領域βのものを蒸着する等、蒸着するものを切り替えてもよい。
また、蒸着部50の加熱容器52の数も、特に限定されるものではなく、成膜室14の容積、基板の厚さおよび種類、有機膜の厚さおよび種類、ガスバリア膜102の成膜条件に応じて、適宜選択されるものである。
【0063】
また、成膜部40の加熱容器42の加熱をヒータによる加熱方式としたが、SiO、SiO等の成膜材料Mを蒸発させて、ガスバリア膜102を成膜することができれば、加熱方式は、特に限定されるものではない。加熱方式としては、成膜材料Mに電流を印加して発熱させる抵抗加熱方式、電磁誘導加熱方式、電子線ビーム加熱方式、レーザ加熱方式等を用いることができる。
また、蒸発部50においても、水分を吸着する機能を有する金属m、例えば、Al、Tiを蒸発させることができれば、その加熱方式は、成膜部40と同様にヒータによる加熱方式に限定されるものはなく、成膜部40と同様の上述した種々の加熱方式を用いることができる。
【0064】
次に、成膜装置10によるガスバリア膜102の成膜方法について説明する。
成膜装置10においては、例えば、基板Zが反時計回り巻回された基板ロール20からガイドローラ21を経て、成膜室14に搬送される。成膜室14においては、ガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25、ドラム26、ガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bを経て、巻取り室16に搬送される。巻取り室16においては、ガイドローラ31a、31bを経て、巻取り軸30に基板Zが巻き取られる。このように、基板Zを、この搬送経路に通した後、供給室12、成膜室14および巻取り室16の内部を真空排気部32により、所定の真空度にする。
【0065】
その後、制御部36により温度センサ55で加熱容器52の温度をモニタリングしながら、第2の温度調節部56からヒータ54に印加する電圧、電流等を調整しつつ加熱容器52を所定の温度に加熱し、蒸着部50において、AlまたはTiを溶融させて蒸発させ、マスク59にAlまたはTiを蒸着させる。このとき、AlまたはTiの蒸気が、成膜室14内の水分を吸着しながらマスク59に蒸着される。これにより、成膜室14内の水分圧を、例えば、6×10−4Pa以下にすることができる。
成膜室14内は、例えば、ガスバリア膜102の形成前では、成膜室14内の水分圧は6×10−4Pa以下であることが好ましい。このとき、成膜室14内の圧力は1×10−3Pa以下であることが好ましい。
成膜室14内の圧力、水分圧が上述の圧力になった後、制御部36により第2の温度調節部56によるヒータ54の加熱を停止させて、蒸着部50によるAlまたはTiの蒸着を停止させる。
【0066】
次に、制御部36により温度センサ45で加熱容器42の温度をモニタリングしながら、第1の温度調節部46からヒータ44に印加する電圧、電流等を調整しながら加熱容器42を所定の温度に加熱し、成膜部40において、SiO、SiO等の成膜材料Mを溶融させて蒸発させる。
【0067】
次に、制御部36によりシャッタ49を回転させて加熱容器42の開口部を開放し、成膜材料Mの蒸気を基板Zの表面Zfに到達させる。このような状態で、ドラム26で基板Zを成膜材料Mの蒸気が到達する位置に保持しつつ、基板Zが所定の搬送速度で巻き取られて、基板Zの表面Zfに成膜材料Mを蒸着させる。これにより、ガスバリア膜102として、比P2/P1が0〜1のガスバリア膜102が形成される。
【0068】
成膜部40による蒸着に、成膜材料MとしてSiOを用いた場合、比P2/P1が0〜1のガスバリア膜102を得ることができ、しかも、SiOの蒸着を水分圧が小さい雰囲気ですることができるため、SiOの酸化が抑制され、ガスバリア膜102として形成されるSiOx膜は、酸化度が、例えば、xが1.0〜1.4と小さいものとなる。これにより、ガスバリア性能が優れたガスバリア膜102が得られる。この結果、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム100を得ることができる。
成膜部40による蒸着に、成膜材料MとしてSiOを用いた場合でも、SiOを用いた場合と同様に、比P2/P1が0〜1のガスバリア性能が優れたガスバリア膜102が得られ、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム100を得ることができる。
【0069】
そして、順次、回転軸20をモータにより時計回りに回転させて、基板Zを連続的に送り出し、ドラム26で基板ZをSiOの蒸気が到達する位置に保持しつつ、ドラム26を所定の速度で回転させて、成膜部40により基板Zの表面Zfに連続的にガスバリア膜102を所定の膜厚となるように形成する。そして、表面Zfに所定の膜が形成された基板Z、すなわち、ガスバリアフィルム100がガイドローラ28a、28bおよびガイドローラ31a、31bを経て巻取り軸30に巻き取られ、最終的に、ガスバリアフィルム100の巻取りロール30aが得られる。
【0070】
なお、蒸着部50による蒸着は、ガスバリア膜102の成膜前に限定されるものではない。例えば、ガスバリア膜102の成膜開始後以降に蒸着部50による蒸着を行ってもよく、更には、ガスバリア膜102の成膜前からガスバリア膜102の成膜開始した後も蒸着部50による蒸着を行ってもよい。
ガスバリア膜102の成膜開始後以降に蒸着部50で蒸着を行う場合、すなわち、ガスバリア膜102の形成中に蒸着部50で蒸着を行う場合、成膜室14内の水分圧を3×10−3Pa以下とし、成膜室14内の圧力を1×10−2Pa以下にすることが好ましい。このとき、上述の圧力、水分圧の範囲に入るように制御部36により第2の温度調節部56によるヒータ54の加熱を適宜行い、蒸着部50によるAlまたはTiの蒸着を適宜行わせる。このような状態で、上述のようにガスバリア膜102を形成する。
なお、ガスバリア膜102の形成中に蒸着部50で蒸着を行う場合、ガスバリア膜102の成膜前の成膜室14内の圧力および水分圧は、特に限定されるものではない。
【0071】
さらには、ガスバリア膜102の成膜前からガスバリア膜102の成膜中も蒸着部50で蒸着を行い、ガスバリア膜102の形成前では成膜室14内の水分圧を6×10−4Pa以下、圧力を1×10−3Pa以下とし、ガスバリア膜102の形成中では成膜室14内の水分圧を3×10−3Pa以下、圧力を1×10−2Pa以下として、上述のようにガスバリア膜102を成膜してもよい。
【0072】
ガスバリア膜102の成膜開始後以降成膜中での蒸着部50による蒸着、ガスバリア膜102の成膜前からガスバリア膜102の成膜開始した後の蒸着部50による蒸着の場合においても、上述のように、ガスバリア膜102は、比P2/P1が0〜1であり、かつ形成されるSiOx膜は、酸化度がx=1.0〜1.4と小さいものとなり、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム100を得ることができる。
なお、ガスバリア膜102を、SiOを用いて形成する場合でも、比P2/P1が0〜1のSiO膜をガスバリア膜102として得ることができる。
【0073】
成膜部40による成膜開始後以降成膜中に蒸着部50で蒸着した場合、成膜室14内に搬送される基板Zから水分が放出されても、AlまたはTiの蒸気に、その水分が吸着されるため、成膜中でも水分圧を所定の値以下とすることができる。このため、成膜材料MにSiOを用いた場合、SiOが基板Zの表面Zfに蒸着された後に生じる酸化を抑制することができる。特に、ガスバリア膜102の成膜前からガスバリア膜102の成膜開始後も蒸着部50による蒸着を行った場合、水分圧が小さい雰囲気でSiOx膜を形成できるとともに、成膜室14内の水分圧が低い雰囲気を成膜中であっても維持できるため、SiOの蒸着後の酸化も抑制され、SiOx膜の酸化度を更に小さくすることができる。これにより、更に高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム100を得ることができる。
また、基板Zの表面Zfにガスバリア膜102を形成する前に蒸着することにより、成膜室14内の水分量を減らすことができるため、成膜室14内を所定の真空度にするまでの真空排気時間を短時間にすることができ、ガスバリア膜102の成膜コストを低減することができる。
【0074】
また、成膜装置10では、成膜部40は、真空蒸着法によるものとしたが、これに限定されるものではなく、比P2/P1が0〜1のSiO、SiO等のSiOx膜をガスバリア膜102として形成することができれば、CVD法を用いるものであってもよい。この場合においても、予め、比P2/P1が0〜1のSiOx膜の形成条件を求めておく。
このCVD法としては、例えば、CCP(Capacitively Coupled Plasma 容量結合プラズマ)−CVD、ICP(Inductively Coupled Plasma 誘導結合プラズマ)−CVD、マイクロ波CVD、ECR(Electron Cyclotron Resonance)−CVD、大気圧バリア放電CVDなどの各種のプラズマCVD法を用いることができる。
プラズマCVD法を用いてガスバリア膜102を形成することにより、より高いガスバリア性が得られ、さらに、膜内部の構造に起因する割れを好適に防止し、可撓性を向上することができ、しかも、高い生産性で製造できる。
【0075】
なお、図1(b)に示すガスバリアフィルム100aを作製する場合、上述のように、塗布法、またはフラッシュ蒸着法を用いて、表面Zfに有機膜104が形成された基板Zを作製し、この基板Zを巻き回して、基板ロールを得る。
次に、有機膜104が形成された基板Zの基板ロールを、図3に示す成膜装置10の回転軸20にセットする。
そして、基板106を基板ロール6からガイドローラ21を経て、成膜室14に搬送し、成膜室14のガイドローラ24a、24b、ガイドローラ25、ドラム26、ガイドローラ27、ガイドローラ28a、28bを経て、基板106を巻取り室16に搬送する。巻取り室16においては、ガイドローラ31a、31bを経て、巻取り軸30に基板106を巻き取らせる。このように、基板106を、この搬送経路に通した後、上述のようにガスバリア膜102を有機膜104の表面104aに形成し、図1(b)に示すガスバリアフィルム100aを得る。なお、ガスバリア膜102の形成方法は、有機膜104の表面104aに形成する点以外は、先に説明した基板Zの表面Zfにガスバリア膜102を形成する方法と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0076】
有機膜104の表面104aにガスバリア膜102を形成する場合においても、ガスバリア膜102の形成前に蒸着部50により、AlまたはTiをマスク59に蒸着し、成膜条件に応じた真空度および水分圧とした後、蒸着部50による蒸着を停止し、成膜部40によるSiOx膜の形成を開始する。
有機膜104が形成された基板Zを用いる場合でも、基板Zの表面Zfにガスバリア膜102を形成するのと同様に、比P2/P1が0〜1であり、かつ酸化度が小さくガスバリア膜102を形成することができる。このため、水蒸気透過度、酸素透過度等が小さい、すなわち、ガスバリア性能が優れたガスバリアフィルム100aを得ることができる。
なお、有機膜104の表面104aにガスバリア膜102をSiOを用いて形成する場合でも、比P2/P1が0〜1のSiO膜をガスバリア膜102として得ることができ、高いガスバリア性能を有するガスバリアフィルム100aを得ることができる。
【0077】
本発明は、基本的に以上のようなものである。以上、本発明のガスバリアフィルムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の具体的実施例を挙げて、本発明について、より詳細に説明する。
本実施例においては、以下に示す実施例1、2、および比較例1、2のガスバリアフィルムを作製し、各実施例1、2、および比較例1、2のガスバリアフィルムについて、ガスバリア性能を評価した。
なお、各実施例1、2、および比較例1、2のガスバリアフィルムのガスバリア性能の指標には水蒸気透過率を用いた。
【0079】
(実施例1)
実施例1においては、まず、EB加熱方式の真空蒸着装置を用いて、ガスバリア膜について、0≦P2/P1≦1となる成膜条件でシリコンウエハ上にSiO膜を形成した。このSiO膜を、日本分光株式会社(JASCO)製 FTIR−6100を用いて赤外吸収スペクトルを測定した。その結果を図4に示す。実施例1では、比P2/P1は、0.82であった。
実施例1では、成膜条件については、圧力を4×10−4Paとした。同時に残留水分圧を下げるため、マイスナーコイルを使用し、窒素のガス分圧に対して水のガス分圧(水分圧)を一桁高い、3×10−4Paとした。
次に、上述のP2/P1の値が得られる成膜条件で、厚さが100μmのPENフィルムに厚さが70nmのSiO膜を形成し、ガスバリアフィルムを得た。
次に、実施例1のガスバリアフィルムについて、水蒸気透過率を、温度40℃、相対湿度90%の測定条件で、MOCON社製水蒸気透過率測定装置 AQUATRAN(登録商標)を用いて測定した。その結果、0.01g/(m・day)であった。
なお、PENフィルムには、帝人デュポンフィルム社製 テオネックス(登録商標)Q65FAを用いた。
【0080】
(実施例2)
実施例2においては、まず、EB加熱方式の真空蒸着装置を用いて、ガスバリア膜について、0≦P2/P1≦1となる成膜条件でシリコンウエハ上にSiO膜を形成した。このSiO膜の赤外吸収スペクトルを実施例1と同じ装置を用いて同様に測定した。その結果を図4に示す。実施例2では、比P2/P1は、0.72であった。
実施例2では、成膜条件については、圧力を4×10−4Paとした。同時に残留水分圧を下げるため、マイスナーコイルを使用し、窒素のガス分圧に対して水のガス分圧(水分圧)を一桁高い、3×10−4Paとした。
次に、上述のP2/P1の値が得られる成膜条件で、厚さが100μmのPENフィルムに厚さが70nmのSiO膜を形成し、ガスバリアフィルムを得た。なお、PENフィルムには、実施例1と同じものを用いた。
次に、実施例2のガスバリアフィルムについて、水蒸気透過率を実施例1と同じ装置を用いて同様に測定した。その結果、0.02g/(m・day)であった。
【0081】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1に比して、成膜条件について、圧力を1×10−2Paとし、水のガス分圧(水分圧)を8×10−3Paとした以外は、実施例1と同様に、シリコンウエハ上にSiO膜を形成した。このSiO膜の赤外吸収スペクトルを実施例1と同じ装置を用いて同様に測定した。比較例1の赤外吸収スペクトルを図4に示す。比較例1では、比P2/P1は、1.21であった。
更に、実施例1と同じPENフィルムを用いてガスバリアフィルムを作製し、この比較例1のガスバリアフィルムについて、水蒸気透過率を実施例1と同じ装置を用いて同様に測定した。その結果、0.5g/(m・day)であった。
【0082】
(比較例2)
比較例2においては、実施例2に比して、成膜条件について、圧力を1×10−2Paとし、水のガス分圧(水分圧)を8×10−3Paとした以外は、実施例2と同様に、シリコンウエハ上にSiO膜を形成した。このSiO膜の赤外吸収スペクトルを実施例1と同じ装置を用いて同様に測定した。比較例2の赤外吸収スペクトルを図4に示す。比較例2では、比P2/P1は、1.42であった。
更に、実施例2と同じPENフィルムを用いてガスバリアフィルムを作製し、この比較例2のガスバリアフィルムについて、水蒸気透過率を実施例2と同じ装置を用いて同様に測定した。その結果、1.5g/(m・day)であった。
【0083】
上述のように、ガスバリア膜が比P2/P1について、0≦P2/P1≦1を満たす実施例1、2では、ガスバリア膜の組成がSiOとSiOと異なっていても、比較例1、2に比して、水蒸気透過率が1桁小さく優れたガスバリア性能を得ることができた。
【符号の説明】
【0084】
10 成膜装置
12 供給室
14 成膜室
16 巻取り室
20 基板ロール
21、24a、24b、25、27、28a、28b、31a、31b ガイドローラ
26 ドラム
30 巻取りロール
32 真空排気部
36 制御部
40 成膜部
42、52 加熱容器
44、54 ヒータ
46 第1の温度調節部
50 蒸着部
56 第2の温度調節部
59 マスク
100、100a ガスバリアフィルム
D 搬送方向
ω 回転方向
Z 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化珪素を主成分とするガスバリア膜が、基板の少なくとも一方の面に形成されたガスバリアフィルムであって、
前記ガスバリア膜は、赤外吸収スペクトルのうち、800〜820cm−1のピーク強度をP1とし、860〜880cm−1のピーク強度をP2とし、前記ピーク強度P1と前記ピーク強度P2との比をP2/P1とするとき、前記比P2/P1は、0≦P2/P1≦1であることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記基板と前記ガスバリア膜との間に有機膜が形成されている請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記酸化珪素は、酸化度が1〜2である請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記基板は、PETまたはPENにより構成されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルムは、真空蒸着法により形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記真空蒸着法には、成膜材料にSiOまたはSiOが用いられる請求項5に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記ガスバリア膜は、厚さが10〜150nmである請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194667(P2011−194667A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62850(P2010−62850)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】