説明

ガスバリア性プラスチック容器の製造装置及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、ガスバリア性プラスチック容器を製造するに際して、真空チャンバ以外でのプラズマの発生を抑制し、さらには原料ガス由来の異物の発生を抑制することである。
【解決手段】本発明は、プラスチック容器の内壁面にガスバリア性を有する薄膜を形成する装置であり、外部電極1の上端を容器8の天頂Yよりも下方に位置させ、外部電極1の上方かつ容器8の外側周囲に誘電体からなる環状部材2を配置し、外部電極1と環状部材2とは真空チャンバ3を構成し、容器自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、真空チャンバの内部空間と排気室の内部空間とを含む成膜ユニットの内部空間のうち容器の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立し、電源27は周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD(chemical vapor deposition)法によってガスバリア性を有する薄膜をプラスチック容器の内壁面に成膜するガスバリア性プラスチック容器の製造装置に関する。また、その容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、臭いが収着しやすく、またガスバリア性が壜や缶と比較して劣るため、ビールや発泡酒等の酸素に鋭敏な飲料には用いることが難しかった。そこで、プラスチック容器における収着性やガスバリア性の問題点を解決すべく、硬質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン(DLC))等をコーティングする方法と装置が開示されている。例えば、対象とする容器の外形とほぼ相似形の内部空間を有する外部電極と、容器の内側に容器の口部から挿入され、原料ガス導入管を兼ねた内部電極を用いて、容器の内壁面に硬質炭素膜をコーティングする装置が開示されている(例えば特許文献1又は2を参照。)。このような装置では、容器内に原料ガスとして脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類炭素等の炭素源ガスを供給した状態で、外部電極に高周波電力を印加する。このとき、原料ガスが両電極間においてプラズマ化し、発生したプラズマ中のイオンは外部電極と内部電極との間で発生する高周波由来の電位差(自己バイアス)に誘引され、容器内壁に衝突し、膜が形成される。
【0003】
【特許文献1】特許第2788412号公報
【特許文献2】特許第3072269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らは、このような成膜装置において、プラズマの発生は、プラスチック容器が収容されている外部電極内のみならず、それと連通する排気室まで生じ、さらに場合によっては、排気室から真空ポンプに至るまでの排気経路まで生ずることをつきとめた。
【0005】
このような外部電極以外で発生したプラズマは、排気室の金属部品、排気経路の配管等の金属部品及び配管継ぎ手等で使用される非金属部品を劣化させる原因となり、装置寿命の短縮を招く。
【0006】
また外部電極以外で発生したプラズマは、排気室及び排気経路の壁面に原料ガス由来の異物、例えば炭素系異物を付着させる原因となる。この炭素系異物は定期的に除去されることが好ましい。
【0007】
さらに外部電極以外で発生したプラズマは、外部電極で発生するプラズマの中心部分を排気室側にシフトさせてしまうので、プラスチック容器の肩部及び口部に厚い薄膜が成膜され、容器主軸方向に対して膜厚の不均一の原因となっていた。このような容器主軸方向に対して膜厚の不均一な容器は、美観上好まれない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ガスバリア性プラスチック容器の製造装置において、排気室又はそれ以降の排気経路でのプラズマの発生を抑制することで原料ガス由来の異物、例えば炭素系異物の発生の防止を図ることである。そして、定期的な異物除去作業を低減することでガスバリア性プラスチック容器の生産性を高めることを目的とする。併せて、装置寿命の短縮の防止を図ることを目的とする。
【0009】
また、本発明の目的は、ガスバリア性プラスチック容器の製造方法において、生産性を高め、かつ、プラスチック容器の口部から首部における内壁面に過度の厚さの薄膜が成膜されることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、外部電極と誘電体からなる環状部材とを組み合わせて形成した真空チャンバを使用することで、定期的な異物除去作業を減らすことが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置は、天頂に口部を有するプラスチック容器の外側周囲に配置された外部電極と、前記プラスチック容器の内部に挿脱自在に配置され、原料ガス供給管となる内部電極と、前記外部電極に接続された電源と、前記プラスチック容器の内部のガスを排気する真空ポンプと、を有し、前記プラスチック容器の内壁面にプラズマCVD法によってガスバリア性を有する薄膜を形成するガスバリア性プラスチック容器の製造装置において、前記外部電極の上端を前記プラスチック容器の天頂よりも下方に位置させ、前記外部電極の上方かつ前記プラスチック容器の外側周囲に誘電体からなる環状部材を配置し、前記外部電極と前記環状部材とは、前記プラスチック容器を収容するための内部空間を有する真空チャンバを構成し、該真空チャンバの内部空間と前記プラスチック容器の口部の上方において連通する排気室を設け、前記プラスチック容器自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、前記真空チャンバの内部空間と前記排気室の内部空間とを含む成膜ユニットの内部空間のうち前記プラスチック容器の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立し、かつ、前記電源は、周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を前記外部電極に供給することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、前記外部電極と前記環状部材との境界が、前記プラスチック容器の中央高さよりも上で、かつ、前記プラスチック容器の口栓装着箇所よりも下の位置にあることが好ましい。プラスチック容器の口部から首部における内壁面に過度の厚さの薄膜が成膜されることを抑制しつつ、薄膜をプラスチック容器の内壁面全体に成膜することができる。或いは、プラスチック容器の口部から首部における内壁面に薄膜を成膜せず、かつ、それ以外の部分のプラスチック容器の内壁面には薄膜を成膜することができる。
【0013】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、前記環状部材の周囲に磁石を設置していることが好ましい。プラスチック容器の表面のうち、環状部材の内壁面と隣接する部分における薄膜の成膜速度を高めるように調整することができ、容器主軸方向に対して薄膜の膜厚の均一性が高い容器を製造することができる。
【0014】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、前記磁石は、N極とS極がプラスチック容器の主軸方向と平行な方向に並ぶように配置されていることが好ましい。環状部材の内壁面における薄膜の成膜速度を高めることができる。
【0015】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、前記真空チャンバの内部空間は前記プラスチック容器よりも容積が大きく、かつ、前記真空チャンバの内壁面と前記プラスチック容器の外壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサーが配置されていることが好ましい。形状が異なる容器に成膜する場合において外部電極の交換を不要とすることができ、容器形状換えに伴う外部電極の交換作業を低減することでガスバリア性プラスチック容器の生産性を高めることができる。このとき、隙間空間における異常放電の発生を抑制することができる。外部電極の種類を準備しなくて良いので、装置のコストを低減できる。
【0016】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、前記プラスチック容器は、胴部に対して口部が縮径した形状を有しており、前記真空チャンバは、前記プラスチック容器の胴径よりもわずかに大きな内径を持つ筒形状の内部空間を有しており、前記プラスチック容器の胴部から口部にかけて縮径した部分の外壁面と前記真空チャンバの筒形状の内壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサーが配置されていることが好ましい。胴径が略同一で、肩部又は首部の形状が異なるプラスチック容器に対して、外部電極を交換しなくても、いずれも効率的にバイアス電圧を印加することができる。
【0017】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造方法は、天頂に口部を有するプラスチック容器の外側周囲に外部電極を配置すると共に該外部電極の上端を前記プラスチック容器の天頂よりも下方に位置させ、前記外部電極の上方かつ前記プラスチック容器の外側周囲に誘電体からなる環状部材を配置し、前記外部電極と前記環状部材とから真空チャンバを形成して、該真空チャンバの内部空間に前記プラスチック容器が収容された状態とする工程と、前記プラスチック容器の内部に原料ガス供給管となる内部電極を配置する工程と、真空ポンプを作動させて前記真空チャンバの内部空間のガスを排気する工程と、前記プラスチック容器の内部に原料ガスを減圧下で吹き出させる工程と、前記プラスチック容器自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、前記真空チャンバの内部空間と排気室の内部空間とを含む成膜ユニットの内部空間のうち前記プラスチック容器の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立する条件下で、前記外部電極に周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給し、前記原料ガスをプラズマ化して、前記プラスチック容器の内壁面にガスバリア性を有する薄膜を成膜する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造方法では、前記真空チャンバの内部空間に前記プラスチック容器が収容された状態とする工程において、前記環状部材の周囲に磁石をさらに設置することが好ましい。プラスチック容器の表面のうち、環状部材の内壁面と隣接する部分における薄膜の成膜速度を高めるように調整することができ、装置容器主軸方向に対して薄膜の膜厚の均一性が高い容器を製造することができる。
【0019】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造方法では、前記ガスバリア性を有する薄膜として、炭素膜、珪素含有炭素膜又はSiO膜を成膜する場合が包含される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ガスバリア性プラスチック容器の製造装置において、排気室又はそれ以降の排気経路でのプラズマの発生を抑制することで原料ガス由来の異物、例えば炭素系異物の発生を防止できる。そして、定期的な異物除去作業を低減することでガスバリア性プラスチック容器の生産性を高めることができる。併せて、装置寿命の短縮を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明は、ガスバリア性プラスチック容器の製造方法において、生産性を高め、かつ、容器主軸方向に対して薄膜の膜厚の均一性が高い容器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。図1〜図6を参照しながら本実施形態を説明する。なお、共通の部位・部品には同一符号を付した。まず、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置について説明する。
【0023】
図1は本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第1形態を示す概略構成図である。図1は縦断面図であり、この製造装置はプラスチック容器8の主軸を中心として、回転対称の形状を有している。図1に示すように、第1形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置100は、天頂に口部を有するプラスチック容器8の外側周囲に配置された外部電極1と、プラスチック容器8の内部に挿脱自在に配置され、原料ガス供給管となる内部電極9と、外部電極1に接続された電源27と、プラスチック容器8の内部のガスを排気する真空ポンプ23と、を有し、プラスチック容器8の内壁面にプラズマCVD法によってガスバリア性を有する薄膜を形成する。そして、外部電極1の上端Xはプラスチック容器8の天頂Yよりも下方に位置している。外部電極1の上方かつプラスチック容器8の外側周囲に誘電体からなる環状部材2が配置されている。外部電極1と環状部材2とは、プラスチック容器8を収容するための内部空間を有する真空チャンバ3を構成している。真空チャンバ3の内部空間30とプラスチック容器8の口部の上方において連通する排気室5が設けられている。そして、プラスチック容器8自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31とを含む成膜ユニット7の内部空間のうちプラスチック容器8の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立している。さらに電源27は、周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を外部電極1に供給する。なお、本明細書において、「上方」及び「下方」の関係は、プラスチック容器8の口部を上向きに向けた場合を基準とする関係である。製造装置の実機において、真空チャンバ3の上下関係を図1と逆としても良い。
【0024】
本発明に係る容器とは、天頂に口部を有し、その口部を蓋若しくは栓若しくはシールして密封する容器であり、または密封せずに開口状態で使用する容器を含む。本発明に係るプラスチック容器とは、例えば、プラスチック製のボトル、カップ又はトレーである。開口部の大きさは内容物に応じて決める。プラスチック容器8は、剛性を適度に有する所定の肉厚を有し、剛性を有さないシート材によって形成された軟包装材は含まない。本発明に係るプラスチック容器の充填物は、例えば、ビール、発泡酒、炭酸飲料、果汁飲料若しくは清涼飲料等の飲料、医薬品、農薬品、又は吸湿を嫌う乾燥食品である。
【0025】
プラスチック容器8を成形する際に使用する樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンテレフタレート系コポリエステル樹脂(ポリエステルのアルコール成分にエチレングリコールの代わりに、シクロヘキサンディメタノールを使用したコポリマーをPETGと呼んでいる、イーストマンケミカル製)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン‐1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂又はアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂である。この中で、PETが特に好ましい。
【0026】
真空チャンバ3は、外部電極1と環状部材2とから構成され、プラスチック容器8を収容するための内部空間30を有する。外部電極1は、金属等の導電材で中空に形成されていて、上部外部電極1bと下部外部電極1aとからなり、上部外部電極1bの下部に下部外部電極1aの上部がO−リング10aを介して着脱自在に取り付けられるよう構成されている。上部外部電極1bから下部外部電極1aを脱着することでプラスチック容器8を装着することができる。真空チャンバ3は、絶縁部材4と真空チャンバ3との間に配置されたO−リング37、外部電極1と環状部材2との間に配置されたO−リング10b、並びに、上部外部電極1bと下部外部電極1aの間に配置されたO−リング10aによって外部から密閉されている。内部空間30には、コーティング対象のプラスチック容器8、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器であるPETボトルが収容される。なお、外部電極1は、図1では上部外部電極1bと下部外部電極1aの2分割の場合を示したが、製作の都合上3個以上に分割して、それぞれの間をO−リングでシールしても良い。
【0027】
ここで、真空チャンバ3の内部空間30はプラスチック容器8よりも容積が大きく、かつ、真空チャンバ3の内壁面とプラスチック容器8の外壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサー36が配置されていることが好ましい。その隙間空間を略埋める形状のスペーサーを配置することがより好ましい。プラスチック容器8は、一般的に、胴部に対して口部が縮径した形状を有しているが、その細部は必ずしも統一されず、容器のデザインによって適宜変更される。したがって、内容物によって容器の肩形状、首形状又は口形状が異なる。ガスバリア性プラスチック容器の製造装置100では、真空チャンバ3に形成されている内部空間30は、プラスチック容器8を形状や容量が異なっても収容できるように、筒状の空間、例えば円筒状若しくは角筒状の空間であることが好ましい。内部空間30が筒形状の空間であれば、容器の肩形状、首形状又は口形状が異なる場合でも、外部電極1の交換をせずに共通に使用することができる。その結果、外部電極1及び環状部材2の交換作業時間と外部電極1及び環状部材2の作製費用が低減できる。図1では、内部空間が円筒形状の場合を示した。誘電体からなるスペーサー36を配置することで、隙間空間における異常放電の発生を抑制することができる。
【0028】
さらに真空チャンバ3は、プラスチック容器8の胴径よりもわずかに大きな内径を持つ筒形状の内部空間30を有していることが好ましい。プラスチック容器8の胴回りには誘電体からなるスペーサー36を配置する必要がなく、自己バイアスがかかりやすい。このとき、誘電体からなるスペーサー36aは、図1に示すようにプラスチック容器8の胴部から口部にかけて縮径した部分の外壁面と真空チャンバ3の筒形状の内壁面とに挟まれた隙間空間に配置されていることが好ましい。胴径が略同一で、肩部又は首部の形状が異なるプラスチック容器に対して、いずれも効率的にバイアス電圧を印加することができる。また、図1に示すように、プラスチック容器8の底部の外壁面と真空チャンバ3の筒形状の内壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサー36bを配置することが好ましい。
【0029】
誘電体からなるスペーサー36は、低周波電力の印加時の異常放電を防止するために、真空チャンバ3の内壁面とプラスチック容器8の外壁面とに挟まれた隙間空間に配置される。好ましくは、その隙間空間を略埋める形状のスペーサーを配置する。誘電体からなるスペーサー36は、ガラスやセラミックス等の無機材料、或いは耐熱性樹脂で形成されていることが好ましい。好ましくは、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン・バーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルエーテルケトンである。誘電体からなるスペーサー36は、低周波電力の印加による発熱を生じさせないために誘電損失が小さいことが望まれる。誘電体からなるスペーサー36は、プラスチック容器8を取り囲むように配置させるために、リング形状に形成することが好ましい。なお、このリング形状をいくつかに縦分割又は横分割にできるようにしても良い。
【0030】
誘電体からなるスペーサー36は、プラスチック容器8の外壁面と略接するような形状を有していることが好ましく、容器形状が異なれば、隙間空間の形状が異なるので、それに対応させるように取り替えることが好ましい。
【0031】
誘電体からなる環状部材2は、外部電極1の上方かつプラスチック容器8の外側周囲、例えばプラスチック容器8の主軸を中心として全周を囲むように配置されている。ここで、誘電体とは、スペーサー36と同様に、ガラスやセラミックス等の無機材料、或いは耐熱性樹脂であることが好ましい。好ましくは、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン・バーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルエーテルケトンである。誘電体からなる環状部材2は、低周波電力の印加による発熱を生じさせないために誘電損失が小さいことが望まれる。環状部材2は、製作の都合上2個以上に分割して、それぞれの間をO−リングでシールしても良い。
【0032】
誘電体からなる環状部材2は、誘電体からなるスペーサー36と一体化しても良い。環状部材2にスペーサーを一体化させた場合を図2に示した。図2は本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第2形態を示す概略構成図である。図2に示した環状部材2の内壁面は、プラスチック容器8の肩部から首部の外壁面と略接触する形状を有する。
【0033】
図1に示すように、外部電極1の上端Xは、プラスチック容器8の天頂Yよりも下方に位置している。ここで、外部電極1と環状部材2との境界は、プラスチック容器8の中央高さよりも上で、かつ、プラスチック容器の口栓装着箇所よりも下の位置にあることが好ましい。ここで「口栓装着箇所よりも下の位置」とは、口部先端から一般に数mmから数十mmの範囲よりも下の位置をいい、例えば、口部と首部との境界よりも下の位置が含まれる。市販の通常のねじこみキャップを使用するタイプのPETボトルでは、ネックサポートリング8aよりも下の位置とみなしてよい。これによって、プラスチック容器8の口部から首部における内壁面に過度の厚さの薄膜が成膜され着色し易いところ、これを抑制しつつ、薄膜をプラスチック容器8の内壁面全体に成膜することができる。或いは、プラスチック容器8の口部から首部における内壁面に薄膜を成膜せず、かつ、それ以外の部分のプラスチック容器の内壁面には薄膜を成膜することができる。プラスチック容器8は、一般的に、胴部に対して口部が縮径した形状を有しているが、その細部は必ずしも統一されず、容器のデザインによって適宜変更される。したがって、内容物によって容器の肩形状、首形状又は口形状が異なる。図1では、外部電極1と環状部材2との境界を、プラスチック容器8の胴部と肩部との境界、すなわち、胴部を基準として縮径しはじめる箇所としている。他形態例として、外部電極1と環状部材2との境界を、胴部を基準として縮径しはじめる箇所と口栓装着箇所の下端、例えばネックサポートリング8aとの間としても良い。或いは、外部電極1と環状部材2との境界を、プラスチック容器8の中央高さの箇所と胴部を基準として縮径しはじめる箇所との間としても良い。ここで、一般的には、胴部を基準として縮径しはじめる箇所はプラスチック容器8の中央高さの箇所よりも上方にある。プラスチック容器8のうち外部電極1の内壁面に面している部分には大きな自己バイアスがかかり、プラスチック容器8のうち環状部材2の内壁面に面している部分には小さな自己バイアスがかかる。したがって、プラスチック容器8のうち環状部材2の内壁面に面している部分の薄膜の水素含有量は、プラスチック容器8のうち外部電極1の内壁面に面している部分の薄膜の水素含有量よりも相対的に高くなる。また、自己バイアスの程度の違いによって、プラスチック容器8のうち環状部材2の内壁面に面している部分の薄膜の膜厚は、プラスチック容器8のうち外部電極1の内壁面に面している部分の薄膜の膜厚よりも相対的に薄くなる。水素含有率の高い薄膜は単位膜厚あたりの光吸収率が水素含有率の低い薄膜と比較して低く、また、膜厚が薄ければ光吸収率が低くなるので、結果として、外部電極1と環状部材2との境界を基準として、環状部材2側の着色が低減される。このため、外部電極1と環状部材2との境界は、プラスチック容器8の形状、ラベル位置などのデザインを考慮して、決定される。
【0034】
図1に示すように、ガスバリア性プラスチック容器の製造装置100では、環状部材2の周囲に磁石40を設置していることが好ましい。プラズマ密度の向上を図ることで、プラスチック容器8の表面のうち、環状部材2の内壁面と隣接する部分における薄膜の成膜速度を高めるように調整することができる。外部電極1側と環状部材2側とにおける膜厚の差を小さくすることで、容器主軸方向に対して薄膜の膜厚の均一性を高める。さらに、磁石40は、N極とS極がプラスチック容器8の主軸方向と平行な方向に並ぶように配置されていることが好ましい。この配置によって、プラスチック容器8の主軸方向と平行な磁力線を発生させる。図3に磁力線の発生の様子を表す模式図を示した。ここで容器の主軸は内部電極9の主軸とほぼ一致している。電場方向と磁場方向が垂直関係となり、環状部材2の内壁面における薄膜の成膜速度を高める場合に有効である。複数の磁石を配置する場合には、プラスチック容器8の主軸を中心とする円周上に配置し、好ましくは等間隔で配置する。磁石40としては、例えば、Ne−Fe−B磁石等の永久磁石又は電磁磁石である。
【0035】
図1に示した製造装置100では、真空チャンバ3の内部空間30とプラスチック容器8の口部の上方にて連通する排気室5が設けられている。そして、真空チャンバ3と排気室5との間に絶縁部材4が配置されている。
【0036】
絶縁部材4には、プラスチック容器8の口部の上方の位置に相当する箇所に開口部32aが形成されている。開口部32aは、外部電極1と排気室5とを空気的に連通させる。絶縁部材4は、直流電流を導通させない絶縁材料で形成されており、スペーサー36又は環状部材2と同等の誘電損失でその値が小さいことが好ましい。したがって、同様の誘電体で形成することが好ましい。さらに、絶縁部材4と環状部材2とは一体化させても良い。なお、低周波電力を外部電極1に供給した場合、外部電極1と排気室5とは容量結合されているため、排気室5には非常に弱い低周波電力が流れることとなる。
【0037】
排気室5は、金属等の導電材で中空に形成されており、内部空間31を有する。排気室5は、絶縁部材4の上に配置されている。このとき、排気室5と絶縁部材4との間はO−リング38によってシールされている。そして、内部空間31と内部空間30とを空気的に連通させるために、開口部32aに対応してほぼ同形状の開口部32bが排気室5の下部に設けられている。排気室5は、配管21、圧力ゲージ20、真空バルブ22等からなる排気経路を介して真空ポンプ23に接続されており、その内部空間31が排気される。
【0038】
排気室5を設けることで、真空チャンバ3の内部空間30の排気の際に内部空間30におけるガス圧変化が和らげられる。また、排気室5は、内部電極9から吹き出す原料ガスがプラスチック容器8の内部を流れ、口部から排気される際に、ガスの流れを整える。
【0039】
絶縁部材4の上に排気室5が配置されることによって蓋6を形成して、真空チャンバ3を密封し、密閉可能な成膜ユニット7が組み上がることとなる。このとき、成膜ユニット7には、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31の2つの部屋があり、それらは開口部32a,32bを通してつながっている。
【0040】
内部電極9は原料ガス供給管を兼ねており、その内部にガス流路が設けられており、この中を原料ガスが通過する。内部電極9の先端にはガス吹き出し口9a、すなわちガス流路の開口部が設けられている。内部電極9の一端は、排気室5の内部空間31の壁で固定され、内部電極9は成膜ユニット7内に配置されている。真空チャンバ3内にプラスチック容器8がセットされたとき、内部電極9は、真空チャンバ3内に配置され且つプラスチック容器8の口部からその内部に配置される。すなわち、排気室5の内壁上部を基端として、内部空間31、開口部32a、32bを通して、真空チャンバ3の内部空間30まで内部電極9が差し込まれる。内部電極9の先端はプラスチック容器8の内部に配置される。内部電極9は、接地されていることが好ましい。
【0041】
原料ガス供給手段16は、プラスチック容器8の内部に原料ガス発生源15から供給される原料ガスを導入する。すなわち、内部電極9の基端には、配管11の一方側が接続されており、この配管11の他方側は真空バルブ12を介してマスフローコントローラー13の一方側に接続されている。マスフローコントローラー13の他方側は配管14を介して原料ガス発生源15に接続されている。この原料ガス発生源15はアセチレンなどの炭化水素ガス系原料ガスを発生させるものである。
【0042】
本発明におけるガスバリア性を有する薄膜とは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を含む炭素膜、Si含有炭素膜又はSiO膜等の酸素透過を抑制する薄膜をいう。原料ガス発生源15から発生させる原料ガスは、上記薄膜の構成元素を含む揮発性ガスが選択される。ガスバリア性を有する薄膜を形成する際の原料ガスは公知公用の揮発性原料ガスが使用される。
【0043】
原料ガスとしては、例えば、DLC膜を成膜する場合、常温で気体又は液体の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類などが使用される。特に炭素数が6以上のベンゼン、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレン、シクロヘキサン等が望ましい。食品等の容器に使用する場合には、衛生上の観点から脂肪族炭化水素類、特にエチレン、プロピレン又はブチレン等のエチレン系炭化水素、又は、アセチレン、アリレン又は1‐ブチン等のアセチレン系炭化水素が好ましい。これらの原料は、単独で用いても良いが、2種以上の混合ガスとして使用するようにしても良い。さらにこれらのガスをアルゴンやヘリウムの様な希ガスで希釈して用いる様にしても良い。また、ケイ素含有DLC膜を成膜する場合には、Si含有炭化水素系ガスを使用する。
【0044】
本発明でいうDLC膜とは、iカーボン膜又は水素化アモルファスカーボン膜(a‐C:H) と呼ばれる膜のことであり、硬質炭素膜も含まれる。またDLC膜はアモルファス状の炭素膜であり、SP結合も有する。このDLC膜を成膜する原料ガスとしては炭化水素系ガス、例えばアセチレンガスを用い、Si含有DLC膜を成膜する原料ガスとしてはSi含有炭化水素系ガスを用いる。このようなDLC膜をプラスチック容器の内壁面に形成することによって、ビール、発泡酒、炭酸飲料や発泡飲料等の容器としてワンウェイ、リターナブルに使用可能な容器を得る。
【0045】
また、ケイ素含有DLC膜を成膜する場合には、Si含有炭化水素系ガスを使用する。珪化炭化水素ガス又は珪化水素ガスとしては、四塩化ケイ素、シラン(SiH)、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これらの材料以外にも、アミノシラン、シラザンなども用いられる。
【0046】
SiO膜(珪素酸化物膜)を成膜する場合には、例えば、シランと酸素の混合ガス、又は、HMDSOと酸素の混合ガスを原料ガスとする。
【0047】
真空ポンプ23は、成膜ユニット7の内部のガスを排気する。すなわち、排気室5に配管21の一端が接続され、配管21の他端は真空バルブ22に接続され、真空バルブ22は配管を介して真空ポンプ23に接続されている。この真空ポンプ23はさらに排気ダクト24に接続されている。なお、配管21には圧力ゲージ20が接続され、排気経路での圧力を検出する。真空ポンプ23を作動させることによって、プラスチック容器8の内部ガス並びに真空チャンバ3の内部空間30のガスが開口部32a,32bを介して排気室5の内部空間31に移動し、内部空間31のガスは配管21を含む排気経路を通して真空ポンプ23に送られる。
【0048】
成膜ユニット7は、リーク用の配管17が接続されていて、配管17は真空バルブ18を介して、リーク源19(大気開放)と連通されている。
【0049】
低周波電力供給手段35は、低周波電力を外部電極1に供給することで、プラスチック容器8の内部の原料ガスをプラズマ化させる。低周波電力供給手段35は、電源27と、電源27に接続された自動整合器26とを備え、電源27は自動整合器26を介して外部電極1に接続される。電源27で発生させた低周波電力を外部電極1に印加し、内部電極9と外部電極1との間に電位差が生ずることによってプラスチック容器8の内部に供給された原料ガスがプラズマ化する。電源27の周波数は、400kHz〜4MHzであり、好ましくは1MHz〜3MHzである。前述の通り、排気室5には容量結合によって低周波電力がかかることとなるが、電源27の周波数が4MHzを超えると、排気室5にかかる低周波電力が大きくなるため排気室5の内部空間31においてもプラズマ発生が生じやすくなり、真空チャンバ3の内部空間30のみにおいてプラズマ発生を生じさせることが困難となる。したがって、内部空間31に炭素系異物などの原料ガスに由来する異物が析出しやすくなり、清掃の必要が生じる。一方、電源27の周波数が400kHz未満であると、着火不良を引き起こしやすい。
【0050】
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置では、図1に示すように、真空チャンバ3の内部空間30とプラスチック容器8の口部の上方において連通する排気室5を設け、かつ、プラスチック容器8自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31とを含む成膜ユニット7の内部空間のうちプラスチック容器8の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立することが好ましい。プラズマの着火不良を生じさせず、かつ、排気室又はそれ以降の排気経路でのプラズマの発生を最も抑制することができる。
【0051】
次に、周波数400kHz以上4MHz以下の低周波電力を外部電極1に供給した際に、排気室5の内部空間31におけるプラズマの発生が抑制される原理について説明する。図4に、第1形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置に対応する2極放電型の回路を示す。図4で示した回路の交流電源は低周波電力を発生させる電源27に対応する。Cは、プラスチック容器8自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量を表している。Cは、プラスチック容器8と内部電極9とにLCRメーターを接続して測定することができる。なお、LCRメーターとは、インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)及びレジスタンス(R)などを測定できる機器である。Cは、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31とを含む成膜ユニット7の内部空間のうちプラスチック容器8の外側空間の合成静電容量を表している。例えば、真空チャンバ3の内壁面とプラスチック容器8の外壁面とに挟まれた隙間空間の静電容量と排気室5の内部空間31の静電容量との合成静電容量である。絶縁部材4が配置される場合には、開口部32aに相当する内部空間の静電容量がCに加わる。また隙間空間内にスペーサー36がほぼ占めるように配置される場合には、スペーサーの静電容量が隙間空間の静電容量となる。Cは、外部電極1の内壁面と排気室5の内壁面とにLCRメーターを接続して測定することができる。Zp1は、プラスチック容器8内で発生するプラズマのインピーダンスを表し、Zp2は、プラスチック容器8の外側、例えば排気室5内で発生するプラズマのインピーダンスを表している。図4の回路において、Zp1とZp2のそれぞれの両側は、シースを表している。回路全体に流れる電流をI、C側に流れる電流をI、C側に流れる電流をIとすれば、I=I+Iの関係が成立している。ここで、CのインピーダンスAは、数1によって示される。CのインピーダンスBは、数2によって示される。ここで、fは低周波の周波数である。
(数1)インピーダンスA=1/(2πfC
(数2)インピーダンスB=1/(2πfC
【0052】
図1のガスバリア性プラスチック容器の製造装置100では、C>Cの関係が成り立つように、設計されていることが好ましい。真空チャンバ3の内部空間30は、プラスチック容器8を完全に又はほぼ収容しうる大きさを有することが好ましいが、それ以上の大きさであれば自由に容量を変更して設計して良い。また、排気室5の内部空間31の容量又は環状部材2の材質や厚さを自由に変更して設計して良い。内部空間31又は内部空間30の容量可変手段を設けて良い。環状部材2の材質の変更手段又は厚さの変更手段或いはその両方を設けて良い。例えば、真空チャンバ3の内部空間30の容量を大きくとるように装置を製作する場合、あらかじめC>Cの関係が成り立つように環状部材2の厚さを大きくする、或いは、環状部材2の材質を比誘電率が小さいもので作製する、或いは、排気室5の内部空間31の容量を大きくとるように装置を製作しておく。そして、電源27から400kHzの低周波電力を出力した場合を考える。図1の製造装置100において、C>Cの関係、好ましくはC>>Cの関係が成り立つように設計することで、数3で示すようにインピーダンスBを、インピーダンスAを基準として相対的に高めることが可能となる。このとき、プラスチック容器8の内部空間30でのプラズマの発生はそのままとして、排気室5の内部空間31でのプラズマの発生のみを抑制することができる。そして図2で示すIを大きくすることができる。
(数3)インピーダンスB(f=400kHz)/インピーダンスA(f=400kHz)=C/C
【0053】
一方、数1と数2によって、数4の結果を得る。数4によれば、差分(インピーダンスB−インピーダンスA)は、fが小さくなると、C−Cが正の場合、すなわちC>Cの関係が成り立つときのみ大きくなることがわかる。C>>Cの関係が成り立てば、前記差分がより大きくなる。
(数4)インピーダンスB−インピーダンスA=1/2πf・{(C−C)/C
【0054】
図1のガスバリア性プラスチック容器の製造装置100を、C>Cの関係、好ましくはC>>Cの関係が成り立つように設計し、且つ、原料ガスのプラズマエネルギー源として周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給することで、インピーダンスBが、インピーダンスAを基準として相対的に高まるため、排気室5、さらにはその後の真空ポンプ23に至る排気経路でのプラズマの発生を抑制することができる。これによって、排気室5や排気経路のプラズマのアタックによる損傷を少なくし、また、原料ガス系の異物、例えば炭素系異物の発生量を低減することができる。
【0055】
ここで、原料ガスのプラズマの着火の安定性を改善するために、内部電極9に尖頭部(不図示)を設けることが好ましい。より好ましくは、内部電極9のガス吹き出し口9aに尖頭部を設けることが好ましい。また、強制着火手段(不図示)を設けても良い。また、2次電子放出を補助するために、内部電極9の表面の一部に2次電子放出材料をコーティングして2次電子放出層を形成しても良い。2次電子放出材料として、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO等の2A族アルカリ土類金属系酸化物、TiO、ZrO等の4A族金属系酸化物、ZnO等の2B族金属系酸化物、Y等の3A族金属系酸化物、Al、Ga等の3B族金属系酸化物、SiO、PbO、PbO等の4B族金属系酸化物、AlN等の3B族系窒化物、GaN、SiN等の3B族系窒化物、バリウム酸窒化物、LiF、MgF、CaF等のフッ化物、SiC等の炭化物、並びに、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、DLC等の炭素系材料を単独又は混合して用いる。これらの化合物としても良い。MgO系では、例えばMgO-Al、MgO-TiO、MgO-ZrO、MgO‐V、MgO-ZnO、MgO‐SiO、MgO‐SiO‐TiO、MgO-RuO、MgO-MnOx、MgO-Crなどがある。BaO系では、例えばBaTiOがある。さらに2次電子放出層の材料にNbO、LaO又はSeO等の希土類酸化物を少量添加して使用しても良い。上記の2次電子放出層は、MOCVD法、スパッタリング法、溶射、ゾルゲル法等の成膜法によって形成する。
【0056】
図5は本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第3形態を示す概略構成図である。図1に示したガスバリア性プラスチック容器の製造装置100では、真空チャンバ3は、プラスチック容器8の全体を収容する内部空間30を有するが、図5に示したガスバリア性プラスチック容器の製造装置300のように、プラスチック容器8の口部を除く全体を収容する内部空間30を有していても良い。ガスバリア性プラスチック容器の製造装置100はプラスチック容器8の口部の内壁にガスバリア性を有する薄膜を均一に成膜できる。ガスバリア性プラスチック容器の製造装置300は、プラスチック容器8の口部の内壁のみあえてガスバリア性を有する薄膜を成膜せず若しくはほとんど成膜せず、プラスチック容器8の口部の内壁面を除く残りの内壁面には均一に成膜することができる。
【0057】
図6は本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第4形態を示す概略構成図である。図5における環状部材2と誘電体からなるスペーサー36とを一体化した環状部材2を使用している。
【0058】
次に、本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造方法を説明する。以下ことわりがない限り、図1のガスバリア性プラスチック容器の製造装置100を用いて、DLC膜を、ガスバリア性を有する薄膜として成膜する場合を説明する。
【0059】
本発明に係るガスバリア性プラスチック容器の製造方法は、天頂に口部を有するプラスチック容器8の外側周囲に外部電極1を配置すると共に外部電極1の上端をプラスチック容器8の天頂Yよりも下方に位置させ、外部電極1の上方かつプラスチック容器8の外側周囲に誘電体からなる環状部材2を配置し、外部電極1と環状部材2とから真空チャンバ3を形成して、真空チャンバ3の内部空間30にプラスチック容器8が収容された状態とする工程と、プラスチック容器8の内部に原料ガス供給管となる内部電極9を配置する工程と、真空ポンプ23を作動させて真空チャンバ3の内部空間30のガスを排気する工程と、プラスチック容器8の内部に原料ガスを減圧下で吹き出させる工程と、プラスチック容器8自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31とを含む成膜ユニット7の内部空間のうちプラスチック容器8の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立する条件下で、外部電極1に周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給し、原料ガスをプラズマ化して、プラスチック容器8の内壁面にガスバリア性を有する薄膜を成膜する工程と、を有する。
【0060】
(プラスチック容器の収容工程、内部電極の配置工程)
成膜ユニット7内は、真空バルブ18を開いて大気開放されており、外部電極1の下部外部電極1aが上部外部電極1bから取り外された状態となっている。例えば図1の製造装置100のように円筒状の内部空間30の真空チャンバ3であるときは、上部外部電極1bの下側から予め誘電体からなるスペーサー36aを入れて固定しておく。次に上部外部電極1bの下側から上部外部電極1b内の空間にプラスチック容器8を差し込み、真空チャンバ3の内部空間30内に設置する。この際、内部電極9はプラスチック容器8内に挿入された状態になる。例えば図1の製造装置100のように円筒状の真空チャンバ3であるときは、下部外部電極1aに誘電体からなるスペーサー36bを固定しておく。次に、下部外部電極1aを上部外部電極1bの下部に装着し、真空チャンバ3はO−リング10a,10b,37によって密閉される。以上の操作によって、真空チャンバ3の内部空間30にプラスチック容器8が収容され、かつ、プラスチック容器8の内部に内部電極9が配置される。このとき、真空チャンバ3の内壁面とプラスチック容器8の外壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサー36が配置されることとなる。
【0061】
ここで、プラスチック容器の収容工程において、環状部材2の周囲に磁石40をさらに設置することが好ましく、N極とS極がプラスチック容器8の主軸方向と平行な方向に並ぶように磁石40が配置されていることがより好ましい。
【0062】
(真空チャンバの内部空間のガスの排気工程)
次に、プラスチック容器8の内部を原料ガスに置換するとともに所定の成膜圧力に調整する。すなわち、図1に示すように、真空バルブ18を閉じた後、真空バルブ22を開き、真空ポンプ23を作動させ、真空チャンバ3の内部のガスを、排気室5を経由して排気する。これによって、プラスチック容器8内を含む成膜ユニット7内が配管21を通して排気され、成膜ユニット7内が真空となる。このときの成膜ユニット7内の圧力は、例えば2.6〜66Paである。
【0063】
(原料ガスを吹き出させる工程)
次に、真空バルブ12を開き、原料ガス発生源15においてアセチレンガス等の炭化水素ガスを発生させ、この炭化水素ガスを配管14内に導入し、マスフローコントローラー13によって流量制御された炭化水素ガスを配管11及びアース電位の内部電極(原料ガス供給管)9を通してガス吹き出し口9aから吹き出させる。これによって、炭化水素ガスがプラスチック容器8内に導入される。そして、成膜ユニット7内とプラスチック容器8内は、制御されたガス流量と排気能力のバランスによって、DLC膜の成膜に適した圧力(例えば6.6〜665Pa程度)に保たれ、安定化させる。
【0064】
(ガスバリア性を有する薄膜の成膜工程)
次に、プラスチック容器8の内部に原料ガスを減圧された所定圧力下で吹き出させているときに、外部電極1に周波数400kHz〜4MHzの低周波電力(例えば、1MHz)を供給する。低周波電力をエネルギー源として、プラスチック容器8内の原料ガスがプラズマ化される。これによって、プラスチック容器8の内壁面にDLC膜が成膜される。すなわち外部電極1に低周波電力が供給されることによって、外部電極1と内部電極9との間で自己バイアスが生ずると共にプラスチック容器8内の原料ガスがプラズマ化されて炭化水素系プラズマが発生し、DLC膜がプラスチック容器8の内壁面に成膜される。このとき、自動整合器26は、出力供給している電極全体からの反射波が最小になるように、インダクタンスL、キャパシタンスCによってインピーダンスを合わせている。真空チャンバ3の内壁面とプラスチック容器8の外壁面とに挟まれた隙間空間は、誘電体からなるスペーサー36が配置されているため、異常放電が生じない。
【0065】
図1のガスバリア性プラスチック容器の製造装置100において、C>Cの関係、好ましくはC>>Cの関係が成立させた状態で、周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給することで、図4及び数1〜数4で説明したように、排気室5、さらにはその後の真空ポンプ23に至る排気経路でのプラズマの発生を抑制することができる。これによって、排気室5や排気経路のプラズマのアタックによる損傷を少なくし、また、原料ガス系の異物の発生量を低減することができる。ここで、排気室5の内部空間31でのプラズマの発生が抑制されるに伴って、その分、真空チャンバ3の内部空間30でのプラズマの発生にエネルギーの消費がまわされるとともに、プラズマの発生する中心箇所がプラスチック容器8の肩部から口部に至る部分であったところ、プラスチック容器8の中心である胴部に移る。したがって、容器の主軸方向に沿った膜厚分布が均一化される。
【0066】
膜厚分布が均一化されることによって、プラスチック容器8の口部から首部における内壁面でのDLC膜の膜厚が従来と比較して薄くなるため、口部から首部における内壁面にDLC膜に由来する着色が低減され、意匠性の向上がもたらされる。
【0067】
誘電体からなるスペーサー36の形状を変更することで、形状の異なる他のプラスチック容器への成膜が、外部電極1又は環状部材2を変更することなく、可能となる。
【0068】
次に、電源27の低周波電力の出力を停止し、プラズマを消滅させてDLC膜の成膜を終了させる。ほぼ同時に真空バルブ12を閉じて原料ガスの供給を停止する。
【0069】
次に、成膜ユニット7内及びプラスチック容器8内に残存した炭化水素ガスを除くために真空ポンプ23によって排気する。その後、真空バルブ22を閉じ、排気を終了させる。このときの成膜ユニット7内の圧力は6.6〜665Paである。この後、真空バルブ18を開く。これによって、成膜ユニット7が大気開放される。
【0070】
いずれも成膜時間は数秒程度と短いものとなる。DLC膜の膜厚は0.003〜5μmとなるように形成する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。実施例で使用したプラスチック容器は、容量500ml、容器の高さ207mm、容器胴部径68mm、口部開口部内径21.74mm、口部開口部外径24.94mm、口部の高さ21.0mm、容器胴部肉厚0.3mm、樹脂量30g/本の丸型PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルである。なお、容器底面から150mm上を境に口部に向かって縮径されている。したがって、容器底面から160mm上を肩部とした。また、口部の下の部分、すなわち、容器底面から177mm上を首部とした。
【0072】
評価は次の通りで行なった。
(成膜均一性)
成膜均一性は次のように求めた。容器底面から20mm上(底部)、同80mm上(胴部)、同160mm上(肩部)について、それぞれ周方向に3箇所を選んで膜厚を測定する。膜厚は、Tenchol社alpha−step500の触針式段差計で測定した。それらを平均して、底部、胴部及び肩部の各平均膜厚を求める。底部、胴部及び肩部の各平均膜厚の中から最も平均膜厚が厚い結果(平均膜厚A)と、最も平均膜厚が薄い結果(平均膜厚B)を選びだし、数5によって成膜均一性(%)を求める。成膜均一性(%)が低いほど、均一性が高い。
(数5)成膜均一性(%)=(平均膜厚A−平均膜厚B)/(平均膜厚A+平均膜厚B)×100
成膜の均一性15%以下:(○)容器高さ方向に均一に成膜されていて良好である。
成膜の均一性15%超30%以下:(△)容器高さ方向に均一に成膜されていて品質上問題ない。
成膜の均一性30%超:(×)容器高さ方向にムラがあることが目視にてわかる。
【0073】
(成膜速度)
容器の平均膜厚Aを成膜時間で割ることで、単位時間(秒)当たりの成膜厚さを求めた。
成膜速度10nm/秒以上:(○)製造効率が高く、良好である。
成膜速度10nm/秒未満:(×)製造効率が低下し、問題あり。
【0074】
(排気室の発光量)
排気室の内部空間におけるプラズマ発生の有無及びその程度を調べるため、当該内部空間に光ファイバーの一端(入光部)を設置し、その光ファイバーの他端を放電センサー(フォトーダイオード、株式会社山武製光電センサー、HPX−MA−063)に接続し、光ファイバーに入射する光をモニタリングした。光ファイバーの入光部の位置は、例えば図1の成膜装置において、「D」で示す箇所とした。放電センサーの出力値(V)の大小で、排気室内でのプラズマの発生の有無及びその程度を評価した。出力値が大きいほど排気室内でのプラズマの発生量が多いことを示している。
発光量0.3V以下:(○)排気室内でのプラズマの発生がほぼ無で長時間連続運転上良好である。
発光量0.3V超0.5V以下:(△)排気室内でのプラズマの発生がやや発生するが長時間連続運転上問題ない。
発光量0.5V超:(×)排気室内でのプラズマの発生が発生し、長時間連続運転上問題あり。
【0075】
(排気室内での異物の発生量)
開口部32bの壁面(例えば図1ではEと表記した箇所)にシリコンチップAを取り付け、排気室5の排気口付近(例えば図1ではFと表記した箇所)の壁面にシリコンチップBを取り付け、同一条件で20回、容器に成膜した後、取り出して電子天秤(新光電子製、高精度電子天秤AF-R220)で重量を測定した。成膜前後の重量差から付着異物量とした。
付着異物量0.2mg以下:(○)異物の付着がほとんどなく、長時間連続運転上良好である。
付着異物量0.2mg超0.4mg以下:(△)異物の付着がややあるが長時間連続運転上問題なし。
付着異物量0.4mg超:(×)異物の付着があり、長時間連続運転上問題あり。
【0076】
(試験1)
図6に示したガスバリア性プラスチック容器の製造装置400を用いて、PETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。図6に示すように、使用する環状部材2は、ポリエーテルエーテルケトン製で、容器の肩部から口部までを囲む高さを有する。外部電極1と環状部材2との境界は、PETボトル8の胴部と肩部との境界、つまりPETボトル8の胴部が縮径し始める箇所とした。また環状部材2の内壁面とPETボトル8の外壁面がほぼ接するように環状部材8を形成し、スペーサーを一体化したことと同等とした。成膜条件は、原料ガスはアセチレンを使用し、原料ガス流量を120sccm、排気室5の内部空間31の容積を1.2リットル、絶縁部材4(ポリエーテルエーテルケトン製)の厚さを10mm、電源27(0.4MHz)の出力を600W、成膜時間を2秒間とした。内部空間30の円筒型形状の内径はPETボトル8の胴部の外壁面と内部空間30の内壁面とが略接する大きさとしている。図4に示すように、PETボトル8自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、真空チャンバ3の内部空間30と排気室5の内部空間31とを含む成膜ユニット7の内部空間のうちPETボトル8の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立していた。異物の発生量の評価は、この条件で20回成膜後に行なった。排気室5の発光量は観測されず、発光していなかった。異物の発生量(A)は0.1mg以下、(B)は0.1mg以下であり、排気室5の内部空間31でのプラズマの発生はほとんどないことがわかった。成膜均一性は17.2%、成膜速度(底部)は17nm/秒であった。成膜条件と結果を表1に示す。
【0077】
(試験2)
低周波の周波数を1.0MHzとした以外は試験1と同様にPETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。結果を表1に示した。
【0078】
(試験3)
低周波の周波数を3.0MHzとした以外は試験1と同様にPETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。結果を表1に示した。
【0079】
(試験4)
試験2において、環状部材2の外側に磁石40を配置した。このとき、磁石40を、図3で示したようにN極とS極がPETボトルの主軸方向と平行な方向に並ぶように配置した。それ以外は試験2と同様にPETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。結果を表1に示した。
【0080】
(試験5)
低周波の周波数を0.1MHzとした以外は試験1と同様にPETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。結果を表1に示した。
【0081】
(試験6)
環状部材2の材質をポリエーテルエーテルケトンからステンレスに変更した。また、電源として、周波数13.56MHzの高周波電源を使用した。それ以外は試験1と同様にPETボトルの内壁面にDLC膜を成膜した。結果を表1に示した。
【0082】
(試験7)
図6に示したガスバリア性プラスチック容器の製造装置400の代わりに、C<Cの関係が成立している装置を用いて、それ以外は試験2と同じ条件で成膜を行なった。成膜条件と結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
試験1〜試験4で得られたガスバリア性を有する薄膜をコーティングしたPETボトルは、排気室でのプラズマの発生が抑制されていた。したがって、異物除去のための清掃作業時間を低減できるので、結果として成膜装置の生産効率を高く維持できることがわかった。また、容器の高さ方向について、成膜の均一性が良好であった。また、試験4では磁石を配置したことで、成膜の均一性がより向上した。
【0085】
また、試験5では、周波数が0.1MHzと低いため、排気室でのプラズマの発生が抑制されていたが、成膜速度が遅く、実用性を欠いていた。
【0086】
一方、試験6では、導電性を有するステンレス製の環状部材を使用し、かつ、高周波電源を用いたので、排気室5でのプラズマの発生が顕著であった。よって異物除去のための清掃作業時間を要し、成膜装置の生産効率を落とす原因となる。また、容器の高さ方向について、成膜の均一性の品質上の問題はないが、試験1〜4と比較すると(数5)の値がやや大きかった。
【0087】
試験7では、C<Cの関係が成立しているため、排気室の内壁面に炭素系異物が付着し、連続運転するにつれてダストの発生が見られた。ダストの発生によって定期的な清掃作業が必要となる。また、排気室においてプラズマが生じたため、成膜速度が小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第1形態を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第2形態を示す概略構成図である。
【図3】磁力線の発生の様子を表す模式図を示した。
【図4】第1形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置に対応する2極放電型の回路図を示す。
【図5】本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第3形態を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係るガスバリア性プラスチック容器の製造装置の第4形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0089】
1a 下部外部電極
1b 上部外部電極
2 誘電体からなる環状部材
3 真空チャンバ
4 絶縁部材
5 排気室
6 蓋
7 成膜ユニット
8 プラスチック容器(PETボトル)
8a ネックサポートリング
9 内部電極(原料ガス供給管)
9a ガス吹き出し口
10a,10b,37,38 O−リング
11,14,17,21 配管
12,18,22,真空バルブ
13 マスフローコントローラー
15 原料ガス発生源
16 原料ガス供給手段
19 リーク源
20 圧力ゲージ
23 真空ポンプ
24 排気ダクト
26 自動整合器(マッチングボックス,M.BOX)
27 電源
30 外部電極(真空チャンバ)の内部空間
31 排気室の内部空間
32,32a,32b 開口部
35 低周波電力供給手段
36,36a,36b スペーサー
40 磁石
100 第1形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置
200 第2形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置
300 第3形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置
400 第4形態のガスバリア性プラスチック容器の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天頂に口部を有するプラスチック容器の外側周囲に配置された外部電極と、前記プラスチック容器の内部に挿脱自在に配置され、原料ガス供給管となる内部電極と、前記外部電極に接続された電源と、前記プラスチック容器の内部のガスを排気する真空ポンプと、を有し、前記プラスチック容器の内壁面にプラズマCVD法によってガスバリア性を有する薄膜を形成するガスバリア性プラスチック容器の製造装置において、
前記外部電極の上端を前記プラスチック容器の天頂よりも下方に位置させ、
前記外部電極の上方かつ前記プラスチック容器の外側周囲に誘電体からなる環状部材を配置し、
前記外部電極と前記環状部材とは、前記プラスチック容器を収容するための内部空間を有する真空チャンバを構成し、
該真空チャンバの内部空間と前記プラスチック容器の口部の上方において連通する排気室を設け、
前記プラスチック容器自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、前記真空チャンバの内部空間と前記排気室の内部空間とを含む成膜ユニットの内部空間のうち前記プラスチック容器の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立し、かつ、
前記電源は、周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を前記外部電極に供給することを特徴とするガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項2】
前記外部電極と前記環状部材との境界が、前記プラスチック容器の中央高さよりも上で、かつ、前記プラスチック容器の口栓装着箇所よりも下の位置にあることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項3】
前記環状部材の周囲に磁石を設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項4】
前記磁石は、N極とS極がプラスチック容器の主軸方向と平行な方向に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項5】
前記真空チャンバの内部空間は前記プラスチック容器よりも容積が大きく、かつ、前記真空チャンバの内壁面と前記プラスチック容器の外壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサーが配置されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項6】
前記プラスチック容器は、胴部に対して口部が縮径した形状を有し、
前記真空チャンバは、前記プラスチック容器の胴径よりもわずかに大きな内径を持つ筒形状の内部空間を有し、
前記プラスチック容器の胴部から口部にかけて縮径した部分の外壁面と前記真空チャンバの筒形状の内壁面とに挟まれた隙間空間に誘電体からなるスペーサーが配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造装置。
【請求項7】
天頂に口部を有するプラスチック容器の外側周囲に外部電極を配置すると共に該外部電極の上端を前記プラスチック容器の天頂よりも下方に位置させ、前記外部電極の上方かつ前記プラスチック容器の外側周囲に誘電体からなる環状部材を配置し、前記外部電極と前記環状部材とから真空チャンバを形成して、該真空チャンバの内部空間に前記プラスチック容器が収容された状態とする工程と、
前記プラスチック容器の内部に原料ガス供給管となる内部電極を配置する工程と、
真空ポンプを作動させて前記真空チャンバの内部空間のガスを排気する工程と、
前記プラスチック容器の内部に原料ガスを減圧下で吹き出させる工程と、
前記プラスチック容器自体の静電容量とその内部空間の静電容量との合成静電容量をCとし、前記真空チャンバの内部空間と排気室の内部空間とを含む成膜ユニットの内部空間のうち前記プラスチック容器の外側空間の合成静電容量をCとしたとき、C>Cの関係が成立する条件下で、前記外部電極に周波数400kHz〜4MHzの低周波電力を供給し、前記原料ガスをプラズマ化して、前記プラスチック容器の内壁面にガスバリア性を有する薄膜を成膜する工程と、
を有することを特徴とするガスバリア性プラスチック容器の製造方法。
【請求項8】
前記真空チャンバの内部空間に前記プラスチック容器が収容された状態とする工程において、前記環状部材の周囲に磁石をさらに設置することを特徴とする請求項7に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造方法。
【請求項9】
前記ガスバリア性を有する薄膜として、炭素膜、珪素含有炭素膜又はSiO膜を成膜することを特徴とする請求項7又は8に記載のガスバリア性プラスチック容器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88472(P2008−88472A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268321(P2006−268321)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(592079804)三菱商事プラスチック株式会社 (9)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】