説明

ガス供給システム及びガス供給方法

【課題】メンテナンス作業を頻繁に行う必要がなく、燃料電池自動車への水分の混入を防止できるガス供給システムを提供する。
【解決手段】ガス供給システム1は、水素カードル2と、燃料電池自動車へ水素ガスを放出するノズル3と、水素カードル2からノズル3に水素ガスを送るガス流路4と、ガス流路4に設けられ、水素ガスを通過させつつ当該水素ガスから水分を分離し貯留する水分分離容器14と、水分分離容器14に貯留された水分を外部に排出する水分排出流路20と、水分排出流路20から水分分離容器14内の水分が排出される際に低下する水分分離容器14内の圧力が、水分排出流路20が通じる外部の圧力より低くならないように、水分分離容器14内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給対象にガスを供給するガス供給システム及びガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体へのガス供給システムとして、例えば燃料電池車両に燃料ガスとしての水素ガスを供給する水素ステーションがある。この水素ステーションでは、水素ガスを予め貯蔵しておき、その水素ガスが、水素ガスの充填に来た燃料電池車両のガスタンクに供給される。
【0003】
燃料電池車両に水素ガスを供給するにあたり、燃料電池自動車のガスタンクに水分が混入するのを防止する必要がある。これに対応する水素ステーションとして、水素ガス供給ラインに、水分などを吸着する吸着材を有する不純物ガス除去器が設けられているもの(特許文献1参照)や、ガスタンクの外部或いは内部に、水分などの不純物を除去する吸着材を用いたフィルタ部が設けられているもの(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−16975号公報
【特許文献2】特開2001−322801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の水素ステーションでは、水分混入防止手段として、吸着材を使用しているため、大量の水分を吸着するのは困難である。このため、例えば水素ステーションにおいて多数の燃料電池車両に連続的に水素ガスの充填を行う際には、吸着材を交換するメンテナンス作業を頻繁に行う必要がある。また、メンテナンス作業を行う度に、水素ガスの充填を停止させる必要がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、メンテナンス作業を頻繁に行う必要がなく、燃料電池車両などのガス供給対象への水分の混入を防止できる水素ステーションなどのガス供給システムと、そのガス供給システムを用いたガス供給方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、ガス供給対象に対しガスを供給するガス供給システムであって、ガス供給源と、前記ガス供給源から送られたガスをガス供給対象へ放出するガス放出部と、前記ガス供給源から前記ガス放出部にガスを送るガス流路と、前記ガス流路に設けられ、前記ガスを通過させつつ当該ガスから水分を分離し貯留する水分分離容器と、前記水分分離容器に貯留された水分を外部に排出する水分排出流路と、前記水分排出流路から前記水分分離容器内の水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記水分排出流路が通じる外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有する。
【0008】
本発明によれば、ガスに含まれる水分を水分分離容器で分離して貯留し、水分排出流路から外部に排出できるので、従来のような吸着材を交換するメンテナンス作業を頻繁に行う必要がない。よって、ガスの供給を連続的に行うことができる。また、水分分離容器内の水分を排出しても、水分分離容器内の圧力が外部の圧力より低くならないので、水分の排出を安定かつ確実に行うことができる。
【0009】
前記圧力調整手段は、前記水分分離容器内の圧力を検出する圧力センサと、前記水分分離容器から流出するガスを止めるガス停止部と、前記水分分離容器にガスを供給し前記水分分離容器内の圧力を上昇させるガス供給装置と、前記圧力センサによる圧力の検出結果に基づいて前記ガス停止部と前記ガス供給装置を制御して前記水分分離容器内の圧力を調整する制御装置と、を有していてもよい。
【0010】
前記ガス流路には、ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮されたガスの前記水分分離容器への供給を制御する開閉弁が設けられ、前記ガス供給装置は、前記圧縮機と前記開閉弁を有していてもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記ガス放出部から前記ガス供給対象に所定量のガスを放出した際に前記水分分離容器に貯留される水分の量を算出し、当該水分量から、当該水分が前記水分分離容器から総て排出された際に低下する前記水分分離容器内の圧力が前記外部の圧力よりも低くならないために必要な水分排出前の前記水分分離容器内の圧力を算出し、当該圧力以上になるように前記水分分離容器内の圧力を調整するようにしてもよい。なお、ここでいう「水分の量」は、前記ガス放出部から前記ガス供給対象への一回のガスの放出により貯留される水分の量であってもよいし、複数回のガスの放出により貯留される水分の量であってもよい。
【0012】
前記ガス流路の前記水分分離容器よりも前記ガス供給源側には、前記ガス供給源から供給されたガスを冷却する冷却部が設けられていてもよい。かかる場合、冷却部により、ガス供給対象に適正な温度のガスを供給できる。また、冷却部においてガスに水分が混入しても、その水分を適切に回収し排出できる。
【0013】
前記ガス供給源には、水素ガスが貯蔵されており、前記ガス供給対象が、水素ガスを燃料ガスとして当該燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両であってもよい。
【0014】
以上のガス供給システムは、前記水分分離容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置をさらに有していてもよい。かかる場合、水分分離容器から水分が排出される前に、水分分離容器内に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気に置換できるので、水分の排出の際にガスが、高圧の状態で外部に排出されることを防止できる。
【0015】
以上のガス供給システムは、前記水分分離容器を加熱する加熱装置をさらに有していてもよい。かかる場合、水分分離容器から水分が排出される前に、水分分離容器を加熱できるので、水分分離容器内の水分が凍結することを防止できる。よって、低温環境下においても水分分離容器内の水分を適切に排出できる。
【0016】
前記加熱装置は、前記ガス供給源から排出されたガスの熱を熱源としてもよい。かかる場合、ガスの熱を利用できるので、システム全体のエネルギ効率を向上できる。
【0017】
別の観点よる本発明は、上記ガス供給システムを用いたガス供給方法であって、前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスを供給する工程と、前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、を有する。
【0018】
また、別の観点による本発明は、上記不活性ガス供給装置を有するガス供給システムを用いたガス供給方法であって、前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスが供給される工程と、前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、前記水分分離容器内の圧力が調整される際又はその前に、前記水分分離容器内に不活性ガスを供給し当該水分分離容器内を前記不活性ガス雰囲気に置換する工程と、を有する。
【0019】
別の観点による本発明は、上記加熱装置を有するガス供給システムを用いたガス供給方法であって、前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスを供給する工程と、前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、前記水分が外部に排出される前に、前記水分分離容器を加熱する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メンテナンス作業を頻繁に行う必要がなく、ガス供給対象への水分の混入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ガス供給システムの構成を示す図である。
【図2】水分分離容器の構成を示す断面図である。
【図3】ガス供給方法の主な工程を示すフロー図である。
【図4】(a)は、水分排出前の水分分離容器のガス容積、圧力を示す説明図であり、(b)は、水分排出後の水分分離容器のガス容積、圧力を示す説明図である。
【図5】不活性ガス供給装置を有するガス供給システムの構成を示す図である。
【図6】不活性ガスの供給が行われるガス供給方法の主な工程を示すフロー図である。
【図7】加熱装置を有するガス供給システムの構成を示す図である。
【図8】水分分離容器の加熱装置が行われるガス供給方法の主な工程を示すフロー図である。
【図9】水素ガスを熱源として用いる加熱装置を有するガス供給システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本実施の形態に係るガス供給システムについて説明する。このガス供給システムは、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両に対して燃料ガスである水素ガスを供給する水素ステーションに適用されるものである。
【0023】
例えばガス供給システム1は、図1に示すように高圧の水素ガスを貯蔵するガス供給源としての水素カードル2と、ガス供給対象としての燃料電池車両に搭載されている水素ガスタンクに向けて水素ガスを放出するガス放出部としてのノズル3と、これらを結ぶガス流路4と、弁などの各種装置の動作を制御してガス供給システム1におけるガス供給プロセスを実行する制御装置5等を有している。ノズル3は、燃料電池車両のガス充填口に挿入されるいわゆるディスペンサに設けられている。
【0024】
ガス流路4には、水素カードル2側からノズル3に向けて順に、水素カードル2からの水素ガスを圧縮して送出する圧縮機10と、圧縮機10で圧縮された水素ガスを一旦貯留する蓄圧器11と、蓄圧器11から流出した水素ガスを冷却する冷却部としてのプレクーラー12と、電子制御可能でガス流路4を開閉する電磁弁などの遮断弁(開閉弁)13と、通過する水素ガスから水分を分離して貯留する水分分離容器14と、電子制御可能でガス流路4を開閉する電磁弁などの遮断弁(開閉弁)15などが設けられている。
【0025】
水分分離容器14には、当該容器14に貯留された水分を外部に排出する水分排出流路20が接続されている。水分排出流路20には、当該流路20を電子制御で開閉可能な電磁弁などの遮断弁(開閉弁)21が設けられている。
【0026】
水分分離容器14は、いわゆる気液分離器であり、例えば図2に示すように、内側に空間部30が形成された有底円筒状の本体31と、本体31に対しその上部開口部を閉塞するように嵌合する蓋部32と、本体31と蓋部32との隙間をシールするOリング33を有している。
【0027】
水分分離容器14の上部の蓋部32には、空間部30に連通するガス導入路40及びガス導出路41が形成されている。ガス導入路40は、水分分離容器14の上流側(遮断弁13側)のガス流路4に接続され、ガス導出路41は、水分分離容器14の下流側(遮断弁15側)のガス流路4に接続されている。これにより、ガス流路4の水素ガスがガス導入路40を通じて空間部30に導入され、水素ガス中の水分が水素ガスから分離され空間部30に貯留し、水分が除去された水素ガスがガス導出路41を通じてガス流路4に導出される。
【0028】
水分分離容器14の本体31の底部には、空間部30に連通する水分導出路42が形成されている。水分導出路42は、水分排出流路20に接続されている。
【0029】
水分分離容器14には、図1に示すように空間部30の圧力を検出する圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50による圧力の検出結果は、例えば制御装置5に出力される。
【0030】
制御装置5には、例えば内部にCPUや、ROM、RAMなどのメモリを備えたコンピュータが用いられる。制御装置5は、例えばメモリに記録されたプログラムを実行することにより、圧縮機10、畜圧器11、プレクーラー12及び遮断弁13、15、21などの動作を制御して、ガス供給システム1を用いたガス供給プロセスを実施できる。例えば制御装置5は、圧力センサ50による圧力の検出結果に基づいて、圧縮機10を作動させ、遮断弁15を閉鎖し遮断弁13を開放し水分分離容器14に水素ガスを供給して、水分分離容器14内の圧力を調整できる。より具体的には、制御装置5は、例えばノズル3から燃料電池車両に所定量の水素ガスを放出した際に水分分離容器14に貯留される水分の量を算出し、当該水分量から、当該水分が水分分離容器14から総て排出された際に低下する水分分離容器14内の圧力が外部の圧力(例えば大気圧)よりも低くならないために必要な水分排出前の水分分離容器14内の圧力を算出し、当該圧力以上になるように水分分離容器14内の圧力を調整できる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、圧縮機10及び遮断弁13により本発明におけるガス供給装置が構成されている。また、当該ガス供給装置と、圧力センサ50と、ガス停止部としての遮断弁15と、制御装置50により本発明における圧力調整手段が構成されている。これらの本発明におけるガス供給装置及び圧力調整手段は、これに限られず他の構成を有するものであってもよい。
【0032】
次に、以上のように構成されたガス供給システム1を用いて行われるガス供給方法について説明する。図3は、かかるガス供給方法の主な工程を示すフローである。
【0033】
例えば燃料電池車両が、ガス供給システム1が設置された水素ステーションを訪れ、燃料電池車両への水素ガスの充填が行われる際には、ガス供給システム1のノズル3が、ガスタンクに通じる燃料電池車両のガス充填口に挿入される。次に、遮断弁15が開放され、水素ガスが燃料電池車両に放出されて、水素が充填される(図3の工程S1)。この水素ガスは、水素カードル2から流出した後に圧縮機10で圧縮され、畜圧器11に貯留されていたものであり、遮断弁15の開放と共に、プレクーラー12を通過して冷却され、開放状態の遮断弁13を通過し、水分分離容器14を通過し、遮断弁15を通過して、ノズル3から放出される。
【0034】
水素ガスが水分分離容器14を通過する際には、水素ガスに含まれている水分が、内部空間30で重力により落下し水素ガスから分離して内部空間30に貯留される。
【0035】
水素ガスの充填が終了すると、当該水素ガスの充填により水分分離容器14に貯留された水分の量が算出される(図3の工程S2)。この水分量は、水素ガスの充填量、水素カードル2の水素ガスに含まれる水分率(水素ガス純度)、圧縮機10の圧縮圧力、プレクーラー12の冷却能力(出力部の水素ガスの温度)等により算出される。なお、センサ等を用いて実際に貯留された水分の量を求めてもよい。
【0036】
その後、密閉状態の水分分離容器14から総ての水分が外部に排出されたとき低下する水分分離容器14内の圧力P2が外部の圧力(大気圧)P0よりも低くならないように、排水前の水分分離容器14内の圧力が調整される。これは、仮にP2>P0が維持されないと、水分分離容器14の内部圧力が陰圧になり、水分排出流路20から水分が排出されなくなるためである。
【0037】
この圧力調整は、先ず、水分分離容器14に貯留される水分の量に基づいて排水可能圧力P1、つまり水分が総て排出されても圧力P2>圧力P0が維持されるような排水前の圧力(排水可能圧力)P1が算出される(図3の工程S3)。具体的には、排水可能圧力P1の算出は、例えば下記の式(1)(ボイルシャルルの法則)と、条件式(2)により求められる。図4(a)に示すように式中のV1aは、排水前のガス容積、V1bは、排水前の水分容積、図4(b)に示すようにP2は、排水後の圧力、V2は、排水後のガス容積である。
P2・V2=P1・(V2−V1b)・・・・式(1)
P2>P0 ・・・・式(2)
【0038】
次に、水分分離容器14に水素ガスが供給される(図3の工程S4)。このとき、遮断弁15、21が閉鎖された状態で、遮断弁13が開放され、圧縮機10で圧縮された水素ガスがガス流路4を通じて水分分離容器14に供給される。圧力センサ50により、随時水分分離容器14内の圧力がモニタリングされ、水分分離容器14内の圧力が排水可能圧力P1に到達していない場合には、水素ガスの供給が継続され、到達したときに遮断弁13が閉鎖され、水素ガスの供給が停止される(図3の工程S5)。
【0039】
水分分離容器14内の圧力が調整された後、遮断弁21が開放され、水分分離容器14内の水分が水分排出流路20を通じて総て外部に排出される(図3の工程S6)。以上の一連のプロセスは、燃料電池車両に水素ガスが充填される度に行われる。
【0040】
以上の実施の形態によれば、水素ガスに含まれる水分を水分分離容器14で分離して貯留し、水分排出流路20から外部に排出できるので、従来のような吸着材を交換するメンテナンス作業を頻繁に行う必要がない。よって、水素ガスの供給を連続的に行うことができる。また、水分を排出しても、水分分離容器14内の圧力が、外部の圧力P0より低くならないので、水分の排出を安定かつ確実に行うことができる。
【0041】
また、以上の実施の形態によれば、圧力センサ50と、遮断弁15、圧縮機10、遮断弁13及び制御装置5を用いて、水分分離容器14内の圧力を適正かつ正確に調整できる。
【0042】
また、制御装置5が、水分分離容器14に貯留される水分の量と、排水可能圧力P1を算出し、当該排水可能圧力P1以上になるように水分分離容器14内の圧力を調整するので、圧力調整を簡単かつ正確に行うことができる。
【0043】
ガス流路4にプレクーラー12が設けられているので、燃料電池車両に適正な温度の水素ガスを供給できる。また、プレクーラー12によって水素ガスに水分が混入されても、水分分離容器14により水分を回収し確実に排水できる。
【0044】
本実施の形態のガス供給システム1は、水素ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両を対象とした水素ステーションに適用されている。水素ステーションでは、連続的に水素ガスの充填が行われる場合があるため、頻繁なメンテナンス作業が必要ない本発明を水素ステーションに適用するメリットは大きい。
【0045】
以上の実施の形態で記載したガス供給システム1は、水分分離容器14内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置をさらに有していてもよい。かかる場合、例えば図5に示すようにガス供給システム60は、不活性ガス供給装置として、例えば高圧の不活性ガスが貯留された不活性ガスタンク70と、不活性ガスタンク70と水分分離容器14とを連通させるガス流路71と、電子制御可能でガス流路71の開閉を行う電磁弁などの開閉弁72を有している。また、水分分離容器14には、外部に連通するガス排出流路73が接続され、ガス排出流路73には、電子制御可能でガス排出流路73の開閉を行う電磁弁などの開閉弁74が設けられている。制御装置5は、開閉弁72、74の動作を制御できる。なお、その他の部分は、上記実施の形態のガス供給システム1と同様であるので同じ符号を用いて説明を省略する。
【0046】
かかる場合のガス供給プロセスでは、例えば図6に示すように燃料電池車両のガスタンクに水素ガスが充填され、水分分離容器14の水分量と、排水可能圧力P1が算出された後、遮断弁13、15、21が閉鎖され、開閉弁72、74が開放されて、不活性ガスタンク70からガス流路71を通じて水分分離容器14内に不活性ガスが供給される。水分分離容器14内の雰囲気は、例えばガス排出流路73を通じて外部に排出される。これにより、水分分離容器14内が不活性ガスに置換される(図6の工程T1)。所定時間経過後、開閉弁74が閉鎖され、その状態で、水分分離容器14内に不活性ガスが供給され続けることにより、水分分離容器14内の圧力が上昇される(図6の工程S4)。水分分離容器14内の圧力が、排水可能圧力P1に到達すると、開閉弁72が閉鎖され、不活性ガスの供給が停止される(図6の工程S5)。その後、遮断弁21が開放され、水分分離容器14内の水分が水分排出流路20を通じて外部に排出される。
【0047】
かかる例によれば、水分分離容器14から水分が排出される前に、水分分離容器14内に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気に置換できるので、高圧状態で水素ガスが外部に排出されることがなく、安全性が向上する。
【0048】
上記実施の形態において、ガス供給システム1が、水分分離容器14を加熱する加熱装置をさらに有していてもよい。かかる場合、例えば図7に示すようにガス供給システム80は、加熱装置として、水分分離容器14を加熱するヒータ90と、水分分離容器14内の温度を検出する温度センサ91を有している。温度センサ91による温度の検出結果は、制御装置5に出力される。制御装置5は、例えば温度センサ91による温度の検出結果に基づいて、ヒータ90を制御し、水分分離容器14を、水分が凍結しない例えば0℃以上に調整できる。
【0049】
かかる場合のガス供給プロセスでは、例えば図8に示すように燃料電池車両のガスタンクに水素ガスが充填され、例えば水分分離容器14の水分量と、排水可能圧力P1が算出された後、温度センサ91により水分分離容器14内の温度が検出される(図8の工程U1)。当該温度が設定温度である0℃以下の場合には、ヒータ90を作動させ、水分分離容器14が加熱される(図8の工程U2)。水分分離容器14内の温度が設定温度である0℃を超えている場合には、ヒータ90を作動させることなく、水分分離容器14内に水素ガスが供給される。水分分離容器14内の温度が0℃以上になった後、遮断弁15が閉鎖され、遮断弁13が開放され、水素ガスが水分分離容器14内に供給され、水分分離容器14内の圧力が上昇される。その後、水分分離容器14内の圧力が、排水可能圧力P1に到達すると、遮断弁13が閉鎖され、水素ガスの供給が停止される。その後、遮断弁21が開放され、水分分離容器14内の水分が水分排出流路20を通じて外部に排出される。
【0050】
かかる場合、外気の温度やプレクーラー12による冷却の影響により水分分離容器14内の水分が凍結することを防止できるので、低温環境下においても水分分離容器14内の水分を適切に排出できる。
【0051】
また、この実施の形態における加熱装置は、水素カードル2から流出した水素ガスの熱を熱源としてもよい。かかる場合、例えば図9に示すようにガス供給システム100は、圧縮機10と畜圧器11との間のガス流路4から分岐し、水分分離容器14の壁内を通って、圧縮機10と畜圧器11との間のガス流路4に戻る循環流路101を有するようにしてもよい。循環流路101には、電子制御可能な電磁弁などの開閉弁102が設けられる。制御装置5は、開閉弁102の動作を制御できる。
【0052】
そして、温度センサ91により水分分離容器14内の温度が検出され、当該温度が設定温度である0℃以下の場合には、開閉弁102が開放され、高圧の水素カードル2内から流出して高温となった水素ガスが、循環流路101を通じて水分分離容器14の壁内に供給され、水分分離容器14を加熱して、ガス流路4に戻される。かかる場合、高温の水素ガスの熱を用いて水分分離容器14を加熱できるので、ガス供給システム100のエネルギ効率を向上できる。また、別途ヒータ等を設ける必要がないので、コストも低減できる。なお、本実施の形態のガス供給システム100に上述の不活性ガス供給装置が設けられていてもよい。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
例えば以上の実施の形態のガス供給システムは、水素ガスを供給するものであったが、他のガスを供給するものであってもよい。また、ガス供給対象が燃料電池車両であったが、他の各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ガス供給システム
2 水素カードル
3 ノズル
4 ガス流路
5 制御装置
13 遮断弁
14 水分分離容器
15 遮断弁
20 水分排出流路
21 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給対象に対しガスを供給するガス供給システムであって、
ガス供給源と、
前記ガス供給源から送られたガスをガス供給対象へ放出するガス放出部と、
前記ガス供給源から前記ガス放出部にガスを送るガス流路と、
前記ガス流路に設けられ、前記ガスを通過させつつ当該ガスから水分を分離し貯留する水分分離容器と、
前記水分分離容器に貯留された水分を外部に排出する水分排出流路と、
前記水分排出流路から前記水分分離容器内の水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記水分排出流路が通じる外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有する、ガス供給システム。
【請求項2】
前記圧力調整手段は、前記水分分離容器内の圧力を検出する圧力センサと、前記水分分離容器から流出するガスを止めるガス停止部と、前記水分分離容器にガスを供給し前記水分分離容器内の圧力を上昇させるガス供給装置と、前記圧力センサによる圧力の検出結果に基づいて前記ガス停止部と前記ガス供給装置を制御して前記水分分離容器内の圧力を調整する制御装置と、を有する、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記ガス流路には、ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮されたガスの前記水分分離容器への供給を制御する開閉弁が設けられ、
前記ガス供給装置は、前記圧縮機と前記開閉弁を有する、請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ガス放出部から前記ガス供給対象に所定量のガスを放出した際に前記水分分離容器に貯留される水分の量を算出し、当該水分量から、当該水分が前記水分分離容器から総て排出された際に低下する前記水分分離容器内の圧力が前記外部の圧力よりも低くならないために必要な水分排出前の前記水分分離容器内の圧力を算出し、当該圧力以上になるように前記水分分離容器内の圧力を調整する、請求項2又は3に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記ガス流路の前記水分分離容器よりも前記ガス供給源側には、前記ガス供給源から供給されたガスを冷却する冷却部が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記ガス供給源には、水素ガスが貯蔵されており、
前記ガス供給対象が、水素ガスを燃料ガスとして当該燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池が搭載された燃料電池車両である、請求項1〜5のいずれかに記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記水分分離容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載のガス供給システム。
【請求項8】
前記水分分離容器を加熱する加熱装置をさらに有する、請求項1〜7のいずれかに記載のガス供給システム。
【請求項9】
前記加熱装置は、前記ガス供給源から排出されたガスの熱を熱源とする、請求項8に記載のガス供給システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のガス供給システムを用いたガス供給方法であって、
前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスを供給する工程と、
前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、
前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、
前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、を有する、ガス供給方法。
【請求項11】
請求項7に記載のガス供給システムを用いたガス供給方法であって、
前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスが供給される工程と、
前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、
前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、
前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、
前記水分分離容器内の圧力が調整される際又はその前に、前記水分分離容器内に不活性ガスを供給し当該水分分離容器内を前記不活性ガス雰囲気に置換する工程と、を有する、ガス供給方法。
【請求項12】
請求項8又は9に記載のガス供給システムを用いたガス供給方法であって、
前記ガス供給源から前記水分分離容器を経由して前記ガス放出部にガスが送られ、前記ガス放出部からガス供給対象にガスを供給する工程と、
前記ガス供給対象へのガスの供給の際に前記水分分離容器においてガスから分離し貯留された水分の量を算出する工程と、
前記水分排出流路から外部に前記水分分離容器内の前記水分が排出される際に低下する前記水分分離容器内の圧力が、前記外部の圧力より低くならないように、前記水分分離容器内の圧力を調整する工程と、
前記水分分離容器内の圧力が調整された状態で、前記水分を前記水分分離容器から外部に排出する工程と、
前記水分が外部に排出される前に、前記水分分離容器を加熱する工程と、を有する、ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149541(P2011−149541A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13269(P2010−13269)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】