説明

ガス化方法、精錬方法及びガス化装置

【課題】高価な多孔質アルミナを用いずにタール非含有ガスを生成することができ、しかも製鋼用の造滓材及び加炭材として利用可能な脱硫触媒を併産することができるガス化方法を提供する。
【解決手段】有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解するガス化方法において、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収工程と、熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成するタール除去工程と、生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の前記脱硫触媒を回収する回収工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫触媒を用いてタール含有ガスからタールを除去し、タール非含有ガスを生成するガス化方法、該ガス化方法で使用した脱硫触媒を用いて精錬を行う精錬方法、及び前記ガス化方法を実施するためのガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷の小さいエネルギー源として、バイオマス(Biomass)が注目されている。バイオマスとは、化石資源を除いた生物資源、例えば木材、紙、農業残渣、屎尿、食品廃棄物等の有機物である。バイオマスから得られるエネルギーは、いわゆる再生可能エネルギーの一つであり、バイオマスマスエネルギーと呼ばれている。再生可能エネルギーとは、地球規模で見て、生物による二酸化炭素の吸収量と、その生物に由来するバイオマスを燃焼させた場合に発生する二酸化炭素の排出量とが同量で相殺するため、エネルギーを利用しても現在の大気中二酸化炭素濃度が増加しないものをいう。
【0003】
バイオマスのエネルギーは例えばガス化発電装置を用いて利用されている(例えば、特許文献1)。ガス化発電装置は、ガス化装置及び発電機を備える。ガス化装置は、バイオマスを400℃以上の高温で熱分解することにより可燃性のガスを発生させ、発電機は熱分解で発生したガスを燃料として発電を行う。
ところが、バイオマスのガス化においては、木炭と、一酸化炭素、メタン、エタン等の可燃性ガスと共にタールも発生する。発生したタールは、熱分解時においては気化しているが、発電機に送出されて温度が低下した場合、該発電機を構成する配管に凝着し、該発電機の不調乃至故障を招来する。
【0004】
本願発明者は、タール含有ガスからタールを除去する手法として、タール含有ガスを多孔質無機物、例えば酸化アルミニウムに接触させることにより、タールを固体の炭状物質として多孔質無機物に担持する方法を提案した。
【0005】
炭状物質が担持された多孔質無機物(以下、担持体という)は、電力に比べて、貯蔵及び輸送性に優れている。このため、木質資源が豊富な林業地域でバイオマスから木炭、担持体を生産し、木炭、担持体の余剰分をエネルギー需要のある需要地域へ輸送することが可能になった。需要地域では、木炭又は担持体を水蒸気に接触させることによってタールフリーの水素ガスとしてエネルギーを取り出すことができる。また、担持体の供給先である需要地域から酸化アルミニウムを回収して再利用することができる。
このように構成されたシステムにおいては、バイオマス資源が豊富ではあるがエネルギー需要に乏しい林業地域と、バイオマス資源は乏しいがエネルギー需要のある地域とを結びつけ、バイオマスエネルギーを有効活用することができる。
【0006】
しかしながら、一般に多孔質の酸化アルミニウムは高価であるため、従来システムにおいては、水素ガスを発生させた後の多孔質無機質を需要地域から回収することが必要不可欠であり、酸化アルミニウムの回収を必要としないシステムが望まれていた。
多孔質無機物の回収ルートを確保でき、担持体の供給量と、酸化アルミニウムの回収量とのバランスがとれていれば良いが、酸化アルミニウムの回収量が大きく減少した場合、問題になる。ガス化発電装置の操業を続けるためには、担持体から水素を取り出して酸化アルミニウムを再生するか、高価な多孔質アルミナを新たに製造することが必要になる。
なお、特許文献1は、かかる課題を解決する手段を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3980382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
斯かる事情の下、本願発明者による鋭意検討の結果、石油精製で使用された廃棄物としての脱硫触媒を用いて、タール含有ガスに含まれるタールを除去することができ、しかもタール除去後の脱硫触媒を製鋼用造滓材及び加炭材として利用できることが明らかになった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脱硫触媒を用いてタール除去を行うことによって、高価な多孔質アルミナを用いずにタール非含有ガスを生成することができ、しかも製鋼用の造滓材及び加炭材として利用可能な脱硫触媒を併産することができるガス化方法、精錬方法及びガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガス化方法は、有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解するガス化方法において、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収工程と、熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成するタール除去工程と、生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の前記脱硫触媒を回収する回収工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るガス化方法は、前記脱硫触媒は、石油精製で使用された脱硫触媒の残渣を乾燥し、粉砕ないし造粒してなることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る精錬方法は、上述のガス化方法で回収された前記脱硫触媒を製鋼炉に添加して溶鋼を精錬することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るガス化装置は、有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解するガス化装置において、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収手段と、熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成するタール除去手段と、生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の前記脱硫触媒を回収する回収手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、まず有機物を加熱し、該有機物をタール含有ガスと、炭状固体とに熱分解する。熱分解によって発生した炭状固体は回収される。
次いで、熱分解によって発生したタール含有ガスを、脱硫触媒に接触させる。脱硫触媒としては、例えば、石油精製における脱硫触媒として使用された廃棄物を利用することができる。脱硫触媒は、タール含有ガスに含まれるタールを水素、一酸化炭素等のタール非含有ガスに分解し、また炭状物質として担持する機能を有している。このため、タール含有ガスと、脱硫触媒とを接触させることによって、タール非含有ガスを生成することができる。そして、生成したタール非含有ガスと、タール含有ガスに接触した後の脱硫触媒とが回収される。
なお、タール非含有ガスは、有用なエネルギー源であり、例えばガス化発電装置等で利用することができる。一方、タール含有ガスに接触した後の脱硫触媒は、製鋼用の造滓材及び加炭材として利用することができる。
【0014】
本発明によれば、石油精製で使用された脱硫触媒の残渣を乾燥し、粉砕してなる脱硫触媒を用いて、タールを除去する。脱硫触媒を乾燥及び粉砕することによって、脱硫触媒の総表面積が増大する。また、脱硫触媒は多孔質物質となり、タール分解機能が増大すると予想される。
【0015】
本発明によれば、脱硫触媒は、製鋼用原料となるニッケルなどの各種金属酸化物と酸化アルミナ及び脱硫触媒の表面に担持した炭状物質とを含む。これらは、製鋼における製鋼用原料及び造滓材及び加炭材としての機能を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、高価な多孔質アルミナを用いずにタール非含有ガスを生成することができ、しかも製鋼用の造滓材及び加炭材として利用可能な脱硫触媒を併産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るガス化方法及び精錬方法を概念的に示す説明図である。
【図2】石油脱硫触媒残渣の組成の一例を示す図表である。
【図3】マッフル炉を用いた石油脱硫触媒残渣の乾燥試験結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るガス化装置の構成例を示す模式的断面図である。
【図5】脱硫触媒粒子製造装置の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る精錬方法を実施する製鋼炉の構成例を示す模式図である。
【図7】変形例に係るガス化装置の構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
<ガス化方法・精錬方法>
図1は、本発明の実施の形態に係るガス化方法及び精錬方法を概念的に示す説明図である。本発明に係るガス化方法は、バイオマス(有機物)をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解し、廃棄物である石油脱硫触媒残渣(脱硫触媒)を乾燥及び粉砕することによって得られた脱硫触媒粒子(脱硫触媒)を用いて、前記タール含有ガスに含まれるタールを除去すると共に、製鋼用の造滓材及び加炭材として利用可能な炭素担持脱硫触媒粒子を併産するものである。炭素担持脱硫触媒粒子は、炭状物質を担持した脱硫触媒粒子である。
以下、タール除去に必要な脱硫触媒粒子の製造方法を先に説明し、次いで、タール非含有ガスの製造方法、精錬方法を順に説明する。
【0019】
本実施の形態に係るガス化方法では、まず、石油精製で使用された廃棄物としての石油脱硫触媒残渣を用意する。石油脱硫触媒残渣は、水分を含んだ青白色粘土状物質である。
図2は、石油脱硫触媒残渣の組成の一例を示す図表である。図表の上欄は、石油脱硫触媒残渣のウェットベースにおける組成を示しており、下欄は、ドライベースにおける組成を示している。図表に示すように、石油脱硫触媒残渣は、酸化アルミニウムAl2 3 を主成分とし、酸化ニッケルNiO、酸化コバルトCoO、酸化バナジウムV2 5 、酸化鉄Fe2 3 、酸化ナトリウムNa2 O、二酸化ケイ素SiO2 、水分を含有する。なお、上述の組成は、石油脱硫触媒残渣の一例であり、上述の組成と異なる石油脱硫触媒残渣を用いても良い。
【0020】
次いで、図1に示すように、該石油脱硫触媒残渣を乾燥及び粉砕し、脱硫触媒粒子を生成する。脱硫触媒粒子は、タール含有ガスに含まれるタールを分解し、また炭状物質として担持することによって、タールを除去するものである。石油脱硫触媒残渣は、水分を含む粘土状物質の塊であり、該石油脱硫触媒残渣に対して後述のタール含有ガスを接触させても、タールを効果的に除去することができないため、石油脱硫触媒残渣を固形粒状の脱硫触媒粒子に加工する必要がある。具体的には、ロータリーキルンを用いて、石油脱硫触媒残渣の乾燥及び粉砕を行えば良い。石油脱硫触媒残渣の乾燥及び粉砕処理は、空気中で行えばよい。粉砕後の脱硫触媒粒子の直径は、約5mm〜1mmである。なお、約5mm〜1mmの範囲は一例であり、脱硫触媒粒子の直径を特に限定するものでは無い。
【0021】
図3は、マッフル炉を用いた石油脱硫触媒残渣の乾燥試験結果を示すグラフである。グラフの横軸は、マッフル炉を用いて石油脱硫触媒残渣を乾燥させる乾燥温度、縦軸は、乾燥後の石油脱硫触媒残渣の重量を示している。石油脱硫触媒残渣の乾燥時間は、いずれも60分である。図3のグラフから分かるように、200℃以上で加熱すれば、石油脱硫触媒残渣に含まれる水分を除去することができる。
【0022】
次いで、脱硫触媒粒子を用いたタール非含有ガスの製造方法を説明する。図1に示すように、本発明に係るガス化方法では、木質のバイオマスを400〜600℃、例えば550℃で加熱することにより、バイオマスを、木炭(炭状固体)と、タール含有ガスとに熱分解し、熱分解によって生成した木炭を回収する。
【0023】
タール含有ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、及び低級炭化水素ガス等を含んだ可燃性の非凝縮性ガスと、タールガスとからなる。タールガスは、常温まで冷却すると液体又は固体になる凝縮性化合物、即ちタールが気化したものである。ここでの凝縮性とは、常温・常圧で液体又は固体になる性質という程度の意味である。タール含有ガスは、熱分解直後の冷却されていない状態では、非凝縮性ガスにタールの蒸気が含まれた状態となっている。
【0024】
次に、熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒粒子に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成する。タール含有ガスに含まれるタールと、脱硫触媒粒子とが接触した場合、タールは水素、一酸化炭素、二酸化炭素等に分解され、また炭状物質が脱硫触媒粒子の表面に担持する。そして、生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の炭素担持脱硫触媒粒子を夫々回収する。回収されたタール非含有ガスは、例えばガス化発電装置の発電エネルギーとして利用される。
【0025】
次いで、精錬方法について説明する。まず、溶解炉である電気炉に、金属原料を含む主原料と、造滓材及び加炭材としての炭素担持脱硫触媒粒子とを電気炉に装入する。なお、言うまでもなく、造滓材及び加炭材としての炭素担持脱硫触媒粒子が不足している場合、他の造滓材及び加炭材を添加しても良い。そして、電気炉のアーク放電によって主原料及び炭素担持脱硫触媒粒子を溶解する。該溶解によって、例えばステンレス鋼粗溶鋼と、該粗溶鋼上に浮遊するスラグとが形成される。以下、一例としてステンレス鋼の精錬について説明する。炭素担持脱硫触媒粒子に含まれる酸化ニッケルNiO、酸化鉄Fe2 3等は、還元剤として機能する炭状物質によって還元される。還元されたニッケルNi、鉄Fe等は、ステンレス鋼の主要成分であり、溶鋼中に吸収される。一方、溶鋼に含まれる硫黄Sは、スラグ中に吸収される。以下、溶鋼及びスラグの分離、所定の炉外精錬処理、鋳造処理等を経て、ステンレス鋼が得られる。これらの処理は、公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
以下、本発明に係るガス化方法を実施するための装置について説明する。まず、本発明に係るガス化装置について説明し、次いで、脱硫触媒粒子製造装置3及び精錬装置について説明する。
【0027】
<ガス化装置>
図4は、本発明に係るガス化装置の構成例を示す模式的断面図である。本発明に係るガス化装置は、バイオマスを炭状固体及びタール含有ガスに熱分解する熱分解装置1と、タール含有ガスからタールを除去すると共に、炭素担持脱硫触媒粒子を併産するタール除去装置2とを備える。
【0028】
熱分解装置1は、地表上に集積したバイオマスを上方から覆うことによって、バイオマスを収容し、炭化するための筐体11と、筐体11内の定位置にバイオマスを保持するための籠部材12とを備える。籠部材12は、上方が開口した箱型状であり、複数の鉄筋材を相互に溶接して形成されている。なお、地表上には、筐体11と、地表との間をシールするシール部材14が設置されている。
【0029】
筐体11は、底部が開口した中空箱状の金属製であり、筐体11の外壁下端部には、火入れ口13が設けられている。また、該外壁に対向する他の外壁下端部には、排煙管15が設けられている。更に、筐体11の天井表面には、該筐体11をクレーン又はフォークリフトで吊り上げるためのフックが設けられている(不図示)。
【0030】
火入れ口13は、筐体11の外壁下端部に形成された中空略直方体形状をなし、筐体11内部に連通している。火入れ口13の側面には、空気取り入れ用の開口が形成されている。また、火入れ口13の上面には、火入れ用の開口が形成されており、該開口は蓋にて開閉されるように構成されている。
なお、上述の火入れ口13の構成は一例であり、筐体11内部に火入れ、及び空気の取り込みが可能な構成であれば、他の構成でも良い。また、火入れ用の開口と、空気取り込み用の開口とを別体で構成しても良い。
【0031】
排煙管15は、筐体11内におけるバイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガスを筐体11の外部へ排出するための配管であり、タール除去装置2に接続されている。
【0032】
タール除去装置2は、縦長円筒状の反応容器21を備え、反応容器21は、該反応容器21を加熱する図示しない燃焼加熱炉の内部に配置されている。反応容器21の上部に形成された脱硫触媒粒子投入口21bには、例えば、脱硫触媒粒子を反応容器21に供給するホッパ22がロータリーバルブ23を介して設けられている。反応容器21は、下端側部にガス流入口21aを有し、上端側部にガス流出口21dが設けられている。ガス流入口21aには、熱分解装置1の筐体11に連通する排煙管15が接続されており、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガスが反応容器21へ流入し、脱硫触媒粒子の集積物中を通流するように構成されている。タール含有ガスと、脱硫触媒粒子とが接触した場合、タール含有ガスに含まれるタールは、分解され、また炭状物質が脱硫触媒粒子の表面に担持する。この結果、タール非含有ガス及び炭素担持脱硫触媒粒子が併産される。
また、反応容器21は、下端部に、炭素担持脱硫触媒粒子を排出する炭素担持脱硫触媒粒子排出口21cを有する。炭素担持脱硫触媒粒子排出口21cには、ロータリーバルブ24を介して炭素担持脱硫触媒粒子を回収する炭素担持脱硫触媒粒子回収器25が設けられている。
【0033】
このように構成されたガス化装置の使用方法及び動作を説明する。まず、炭化を行うための所定位置に籠部材12を配置し、籠部材12の内部にバイオマスを収納する。そして、バイオマスを収容した籠部材12を覆うようにして筐体11を被せる。次いで、火入れ口13を介して火入れを行い、筐体11の内部温度を上げ、所定の条件によってバイオマスを熱分解させる。バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガスは、排煙管15を通じてタール除去装置2の反応容器21へ排出される。
【0034】
そして、ホッパ22に脱硫触媒粒子を供給し、ロータリーバルブ23,24を駆動する。ロータリーバルブ23,24の駆動によって、反応容器21に脱硫触媒粒子が供給され、脱硫触媒粒子は、反応容器21中を、タール含有ガスに接触しながら上方から下方へ移動する。タール含有ガスとの接触によって生成された炭素担持脱硫触媒粒子は、ロータリーバルブ24の駆動によって下方へ排出され、炭素担持脱硫触媒粒子回収器25に回収される。また、脱硫触媒粒子との接触によってタールが除去されたタール非含有ガスは、ガス流出口21dから配管26を通じて、外部へ送出される。
【0035】
<脱硫触媒粒子製造装置>
図5は、脱硫触媒粒子製造装置3の構成例を示す模式図である。脱硫触媒粒子製造装置3は、例えばロータリーキルンであり、中空の回転円筒体31aを備える。回転円筒体31aはその中心軸が水平面に対して傾斜するような姿勢で、図示しない支持装置によって、回転自在に支持されている。回転円筒体31aの傾斜方向上流側の端部には、回転円筒体31aの内部に石油脱硫触媒残渣が投入される投入口31bが形成され、投入口31bには石油脱硫触媒残渣供給用のホッパ31eが設けられている。回転円筒体31aの傾斜方向下流側の端部には、石油脱硫触媒残渣の乾燥及び粉砕によって生成された脱硫触媒粒子が排出される排出口31cが設けられている。また、回転円筒体31aの内周面には、石油脱硫触媒残渣を攪拌及び粉砕するための図示しない攪拌板が突設されている。
【0036】
回転円筒体31aの径方向外側には、回転円筒体31aの外形よりも内径が大きく、且つ中心軸方向の長さが回転円筒体31aよりも短い円筒状加熱風流路31dが回転円筒体31aと同軸的に配設されている。円筒状加熱風流路31dは、内部が中空であり、円筒状加熱風流路31dの傾斜方向下流側の端面には、所定間隔を隔てて複数の燃焼ガス供給部31fが周設されている。また、円筒状加熱風流路31dの傾斜方向上流側には排気筒31gが設けられている。
【0037】
また、回転円筒体31aは、図示しない駆動機構によって、中心軸を中心として所定速度で回転するように構成されている。例えば、駆動機構は、回転円筒体31aの外周面に形成された平歯車と、該平歯車に噛合する小歯車と、該小歯車を回転させるモータとから構成されている。なお、モータの回転速度は、投入口31bから投入された石油脱硫触媒残渣が熱分解されて排出口31cから排出されるまでの時間が約10分になるように設定すれば良い。
【0038】
このように構成された脱硫触媒粒子製造装置3の使用方法及び動作を説明する。まず、ホッパ31eに石油脱硫触媒残渣を投入し、回転円筒体31aを加熱及び回転させる。石油脱硫触媒残渣は、回転円筒体31aの回転によって、回転円筒体31a内部を傾斜方向上流側から傾斜方向下流側へ移動すると共に、攪拌板によって粉砕され、乾燥する。そして、乾燥及び粉砕された脱硫触媒粒子は、回転円筒体31aの排出口31cから外部へ排出される。
【0039】
<精錬装置>
図6は、本発明に係る精錬方法を実施する精錬装置の構成例を示す模式図である。精錬装置は電気炉4及び電気炉4から出鋼された溶鋼及びスラグを取り出すための取鍋5を備える。電気炉4は、例えば三相交流アーク炉であり、上方が開口した有底略円筒形をなし、出鋼口41aを有する炉本体41と、炉本体41の開口部を開閉可能に閉塞する略円盤形状の炉蓋42とを備える。炉蓋42には、略垂直に貫通した3つの貫通孔が形成されており、各貫通孔には黒鉛電極43が昇降可能に貫通している。3本の黒鉛電極43には三相交流が印加される。炉本体41、炉蓋42、黒鉛電極43及び取鍋5の構成、及び精錬装置の使用方法の詳細は公知技術(例えば、特開2005−337560号公報)であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態に係るガス化方法、ガス化装置及び精錬方法にあっては、石油精製における脱硫剤として使用された廃棄物をタール除去剤として利用することができ、高価な多孔質アルミナを用意することなく、タール非含有ガスを生成することができる。
【0041】
また、ステンレス鋼製造用の電気炉4で使用されているアルミ灰等の替わりに本発明となる炭素担持脱硫触媒粒子を利用することにより、もともと廃棄物であった石油脱硫触媒残渣の酸化アルミニウムAl23 、酸化ニッケルNiOなどを資源として再利用できるとともに、タールガス中の炭素までも還元剤として活用することができる。
【0042】
(変形例)
変形例に係るガス化装置は、熱分解装置101の構成のみが異なるため、以下では主に上記相異点について説明する。
【0043】
図7は、変形例に係るガス化装置の構成例を示す模式的断面図である。熱分解装置101は、熱分解反応器111を備える。熱分解反応器111は、中空円筒状をなし、該熱分解反応器111を400〜600℃に加熱する外部熱風加熱槽方式の燃焼加熱炉112の内部に略水平の姿勢で設置されている。熱分解反応器111の一端部に設けられたバイオマス供給口には管内にバイオマスを供給するホッパ114が結合されており、熱分解反応器111の内部には、ホッパ114及びバイオマス供給口から供給されたバイオマスを他端部側へ搬送する搬送スクリュー113が設けられている。熱分解反応器111は、他端部に木炭排出口及び排気口を有する。排気口には、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガス及び水蒸気を反応容器21へ導く配管115が接続され、木炭排出口には、残渣である木炭を回収する木炭回収器116が設けられている。配管115の他端は、タール除去装置2の反応容器21に連通している。
【0044】
変形例に係るガス化装置の作用及び効果は、実施の形態と同様である。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 熱分解装置
2 タール除去装置
3 脱硫触媒粒子製造装置
4 電気炉
5 取鍋
11 筐体
12 籠部材
13 火入れ口
14 シール部材
15 排煙管
25 炭素担持脱硫触媒粒子回収器
41 炉本体
41a 出鋼口
42 炉蓋
43 黒鉛電極
116 木炭回収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解するガス化方法において、
熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収工程と、
熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成するタール除去工程と、
生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の前記脱硫触媒を回収する回収工程と
を有することを特徴とするガス化方法。
【請求項2】
前記脱硫触媒は、
石油精製で使用された脱硫触媒の残渣を乾燥し、粉砕ないし造粒してなる
ことを特徴とする請求項1に記載のガス化方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガス化方法で回収された前記脱硫触媒を製鋼炉に添加して溶鋼を精錬することを特徴とする精錬方法。
【請求項4】
有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス及び炭状固体に熱分解するガス化装置において、
熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収手段と、
熱分解によって発生したタール含有ガスを脱硫触媒に接触させることによって、該タール含有ガスに含まれるタールを除去したタール非含有ガスを生成するタール除去手段と、
生成されたタール非含有ガス、及びタール含有ガスに接触した後の前記脱硫触媒を回収する回収手段と
を備えることを特徴とするガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−21061(P2011−21061A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164982(P2009−164982)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(506074015)バイオコーク技研株式会社 (23)
【出願人】(593212770)大同エコメット株式会社 (5)
【Fターム(参考)】