説明

ガス発泡射出成形機

【課題】ガス発泡射出成形機に用いるスクリュの全長を短くすること。
【解決手段】加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有し、該スクリュは、原料樹脂を混練・可塑化して溶融樹脂とする第1ステージと、該第1ステージから送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する第2ステージとを有し、該第2ステージに対してガスを注入するガス注入装置が設けられて、ガスが混合された溶融樹脂を金型内に射出・充填することにより、発泡成形品を得るようにしたガス発泡射出成形機において、第1ステージにおけるネジのピッチPとスクリュの直径Dとの比であるP/Dを0.7〜0.8に設定し、第2ステージにおけるネジのピッチPとスクリュの直径Dとの比であるP/Dを1.0〜1.2に設定した、構成をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュが、原料樹脂を混練・可塑化して溶融樹脂とする第1ステージと、該第1ステージから送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する第2ステージとを、有するガス発泡射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュが、原料樹脂を混練・可塑化して溶融樹脂とする第1ステージと、該第1ステージから送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する第2ステージとを有し、該第2ステージに対してガスを注入するガス注入装置が設けられて、ガスが混合された溶融樹脂を金型内に射出・充填することにより、発泡成形品を得るようにしたガス発泡射出成形機は公知であり、このようなガス発泡射出成形機用のスクリュは、例えば、特開2005−1388号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図3は、従来のガス発泡射出成形機における射出系メカニズムの要部の構成例を示す要部断正面図である。図3において、101はヘッドストック(加熱シリンダ保持ブロック)、102は、ヘッドストック101にその後部側を固定・保持された加熱シリンダ、103は、加熱シリンダ102内に回転並びに前後進可能であるように配設されたスクリュであり、該スクリュ103は、図示せぬ計量用サーボモータの駆動力によって回転駆動され、図示せぬ射出用サーボモータの駆動力によって直動駆動されるようになっている。
【0004】
上記のスクリュ103には、第1ステージ104と、第2ステージ105と、スクリュヘッド106とが備えられており、第1ステージ104と第2ステージ105との間には、溶融樹脂が第2ステージ105から第1ステージ104へと逆流することを防止するための、圧力作動式のチェック弁(逆流防止弁)107が設けられている。
【0005】
スクリュ103の上記第1ステージ104は、スクリュ103の回転によって、図示せぬホッパーからヘッドストック101の樹脂供給穴101aおよび加熱シリンダ102の樹脂供給穴102aを通じて、第1ステージ104の後部に供給された原料樹脂(樹脂ペレット)を、バンドヒータにより加熱された加熱シリンダ102からの熱伝達と、スクリュ103の回転による樹脂の剪断作用などの摩擦熱とより、混練・可塑化しつつ前方に移送することで溶融し、1ショット分の溶融樹脂を計量して上記第2ステージ105側に送り込む機能を担っている。つまり、第1ステージ104には、第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュと同様に、その後方から前方に向かってフィードゾーン(供給領域)、コンプレッションゾーン(圧縮領域)、メータリングゾーン(計量領域)が形成されており、第1ステージ104の長さとスクリュヘッドの長さを足し合わせた長さは、第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長と概略同一の長さとなっている。なお、第1ステージ104におけるネジのピッチPとスクリュ103の直径Dとの比であるP/Dは、略1.0となっている(これは、第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュのP/Dと、概略同等である)。
【0006】
他方、スクリュ103の上記第2ステージ105は、第1ステージ104から送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する機能を担っており、ガス注入装置108から第2ステージ105の後部側に対して所定秒時の期間だけ注入される所定圧力のSCF(超臨界流)ガスを、スクリュ103の回転によって溶融樹脂に均一に混ぜ合わせつつ、SCFガスが混合(混入)された溶融樹脂を前方に移送するようになっている。この第2ステージ105の長さは、第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長の1/4〜1/3程度の長さとなっている。
【0007】
したがって、図3に示したスクリュ103の全長は、第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長よりも、第2ステージ105の長さ分だけ長いものとなっている。
【0008】
なお、図3に示した例では、第2ステージ105は、密なピッチの2条ネジで構成され、かつ、ネジ山は一部分割されたものとなっていて、このような構成をとることで、溶融樹脂に直交流を促進させて、比較的に高圧のガスを溶融樹脂中に均一に分散させるようにしている。
【0009】
また、計量工程が完了した後は、第2ステージ105から第1ステージ104への溶融樹脂の逆流を防止するようにチェック弁107を働かせるために、第2ステージ105側の加熱シリンダ102内の圧力P2を、第1ステージ104側の加熱シリンダ102内の圧力P1に対して、P2>P1となるようにしており、このため、ガス注入装置108から第2ステージ105側の加熱シリンダ102内に注入するガスの圧力は、第2ステージ105側の加熱シリンダ102内の圧力P2が第1ステージ104の加熱シリンダ102内の圧力P1に打ち勝つように、所定圧力以上に設定されている。
【0010】
加熱シリンダ102の先端側には、図示せぬ開閉弁を内蔵したノズル(チェックノズル)109が設けられており、射出工程時には、ノズル109内の開閉弁部材(閉止ニードルなど)を、弁駆動源110と弁駆動機構111とにより開放状態において、この状態でスクリュ103が前進駆動されることで、ガスが混合された溶融樹脂が図示せぬ金型内に射出・充填され、これにより、大気圧にある金型内でガスが急速に膨張して、樹脂中に多数の気泡のある発泡成形品が成形されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−1388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図3に示し上記したようなガス発泡射出成形機は、特殊なスクリュデザインのスクリュ103とガス注入装置108を必要とするものの、型開閉系メカニズムは一般の射出成形機と同等の構成とすることができ、比較的に簡易な構成で、かつ、簡単な成形プロセスで効率よく発泡成形品を生産することができる。
【0012】
しかしながら、先に述べたように、スクリュ103の全長が第2ステージ105をもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長よりも、第2ステージ105の長さ分だけ長くなって、マシンの全長を増大させている。また、第1ステージ104と第2ステージ105との間に圧力作動式のチェック弁107が設けられており、その分だけ部品点数が増す上、経時使用によるチェック弁107の多数回の摺動によってチェック弁107に摩耗が生じ、この摩耗が進行するとチェック弁107の交換を余儀なくされる。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ガス発泡射出成形機に用いるスクリュの全長を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記した目的を達成するため、加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有し、該スクリュは、原料樹脂を混練・可塑化して溶融樹脂とする第1ステージと、該第1ステージから送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する第2ステージとを有し、該第2ステージに対してガスを注入するガス注入装置が設けられて、ガスが混合された溶融樹脂を金型内に射出・充填することにより、発泡成形品を得るようにしたガス発泡射出成形機において、第1ステージにおけるネジのピッチPとスクリュの直径Dとの比であるP/Dを0.7〜0.8に設定し、第2ステージにおけるネジのピッチPとスクリュの直径Dとの比であるP/Dを1.0〜1.2に設定した、構成をとる。
また、第2ステージ側の加熱シリンダ内の圧力を、第1ステージ側の加熱シリンダ内の圧力よりも低くする。
また、第2ステージの溶融樹脂に注入されるガスは、第1ステージ側の加熱シリンダ内の圧力よりも低い圧力の二酸化炭素とされる。
また、第1ステージの後部に原料樹脂を供給する原料樹脂供給装置は、供給する原料樹脂の量を調整可能な機能をもつ。
また、第1ステージと第2ステージとの境界には、チェック弁がない構造とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、第1ステージにおけるネジのピッチPとスクリュの直径Dとの比であるP/Dを0.7〜0.8とし、従来の第1ステージにおけるP/D≒1.0に較べると、第1ステージにおけるネジのピッチPを狭く設定しているので、これにより、従来の第1ステージよりも大きな圧縮力を樹脂に付与することができ、従来の第1ステージよりも短い長さで原料樹脂を混練・可塑化して溶融させることができる。したがって、スクリュの全長を、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長と、略同程度のものとすることができ、つまり、スクリュの全長Lとスクリュの直径Dとの比であるL/Dを略20とすることができ(換言するなら、スクリュのL/Dを、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュと同程度のものとすることができ)、ガス発泡射出成形機の全長を従来よりも短くすることができる。さらに、スクリュの全長が汎用スクリュの全長と略同程度になることで、スクリュの長さについての特異性がなくなり、加熱シリンダや加熱シリンダカバーなどの部材に、汎用の部材を用いることが可能となり、コスト低減に貢献することができる。また、第2ステージにおけるP/Dを1.0〜1.2として、第2ステージのP/Dを第1ステージのP/Dよりも大きくしているので(第2ステージのネジのピッチPを、第1ステージのそれよりも広くしているので)、第2ステージでは、樹脂に付与される圧縮力が第1ステージに較べると大幅に小さくなり、たとえ、第2ステージにおいて溶融樹脂にガスを注入しても、第2ステージ側の加熱シリンダ内の圧力を、第1ステージ側の加熱シリンダ内の圧力よりも低くすることができる。したがって、第1ステージと第2ステージとの境界にチェック弁がない構造としても、溶融樹脂が第2ステージ側から第1ステージ側へと逆流する虞はなく、チェック弁を排することで、その分だけコストを削減することができ、かつ、摩耗によるチェック弁の交換も要しない。さらに、第2ステージにおいて溶融樹脂に注入するガス(発泡剤)を二酸化炭素としており、二酸化炭素は窒素に較べると溶融樹脂への溶解度が格段に高いので(モル単位で4〜9倍程度溶解度が高いので)、溶融樹脂に注入する二酸化炭素の圧力を低くできることに大きく貢献でき、また、二酸化炭素の溶融樹脂への溶解度が高いことにより、溶融樹脂中への二酸化炭素の均一な分散・混入(混合)が短時間で確実に達成され、以って、良好な品質の発泡成形品の成形に大きく貢献できる。さらにまた、第1ステージの後部に原料樹脂を供給する原料樹脂供給装置は、供給する原料樹脂の量を調整可能な機能をもっているので、原料樹脂(樹脂ペレット)の供給量を自在に調整することができ、この原料樹脂の供給量の調整により、第1ステージ側の加熱シリンダ内の圧力が調整可能となるので、第1ステージ側の加熱シリンダ内の圧力を第2ステージ側の加熱シリンダ内の圧力よりも高くすることが、より容易に達成可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1〜図2は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)によるガス発泡射出成形機に係り、図1は、本実施形態のガス発泡射出成形機における射出系メカニズムの要部の構成を示す要部断正面図である。
【0017】
図1において、1はヘッドストック(加熱シリンダ保持ブロック)、2は、ヘッドストック1にその後部側を固定・保持された加熱シリンダ、3は、加熱シリンダ2の外周に巻装されたバンドヒータ、4は、加熱シリンダ2の先端側に設けられた開閉弁付きのノズル(シャットオフノズル)、5は、加熱シリンダ2内に回転並びに前後進可能であるように配設されたスクリュであり、該スクリュ5は、図示せぬ計量用サーボモータの駆動力によって回転駆動され、図示せぬ射出用サーボモータの駆動力によって直動駆動されるようになっている。
【0018】
6は、ヘッドストック1の上に配置された、原料樹脂(樹脂ペレット)の供給量が調整可能な原料樹脂供給装置(ペレットフィーダ)であり、この原料樹脂供給装置6の下部から、ヘッドストック1の樹脂供給穴1aおよび加熱シリンダ2の樹脂供給穴2aを通じて、原料樹脂が加熱シリンダ2の後端側の内部(スクリュ5の後記する第1ステージ5aの後部)に供給されるようになっている。なお、原料樹脂供給装置6の詳細については、図2を用いて後述する。
【0019】
上記のスクリュ5には、第1ステージ5aと、第2ステージ5bと、スクリュヘッド5cとが備えられており、加熱シリンダ2における第2ステージ5bに対応する部位には、加熱シリンダ2内に二酸化炭素を注入する(第2ステージ5bの溶融樹脂に対して二酸化炭素を注入する)ガス注入装置7が設けられている。
【0020】
スクリュ5の第1ステージ5aは、スクリュ5の回転によって、原料樹脂供給装置6から樹脂供給穴1a、樹脂供給穴2aを通じて、第1ステージ5aの後部に供給された原料樹脂を、バンドヒータ3により加熱された加熱シリンダ2からの熱伝達と、スクリュ5の回転による樹脂の剪断作用などの摩擦熱とより、混練・可塑化しつつ前方に移送することで溶融し、1ショット分の溶融樹脂を計量して第2ステージ5b側に送り込む機能を担っている。つまり、第1ステージ5aは、第2ステージ5bをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュと同様に、その後方から前方に向かってフィードゾーン(供給領域)、コンプレッションゾーン(圧縮領域)、メータリングゾーン(計量流域)が形成されている。
【0021】
本実施形態では、第1ステージ5aにおけるネジのピッチPとスクリュ5の直径Dとの比であるP/Dを、0.7〜0.8に設定してあり、このP/D=0.7〜0.8は、従来のガス発泡射出成形機におけるスクリュの第1ステージのP/D≒1.0に較べると小さな値となっている。このように本実施形態では、第1ステージ5aのP/Dを0.7〜0.8として、第1ステージ5aにおけるネジのピッチPを従来よりも狭く設定しており、これにより、従来の第1ステージよりも大きな圧縮力を樹脂に付与することができて、従来の第1ステージよりも短い長さで、原料樹脂を混練・可塑化して溶融させることができるように構成してある。そして、このことにより、第1ステージ5aの全長を従来の第1ステージの全長よりも相当に短くすることを可能としており、第2ステージ5bの全長が従来の第2ステージの全長と同等であって、本実施形態のスクリュ5の全長は、従来のガス発泡射出成形機のスクリュの全長よりも、大幅に短いものとなっている。すなわち、本実施形態のガス発泡射出成形機のスクリュ5の全長は、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長と、略同程度の長さとなっていて、スクリュ5の全長Lとスクリュ5の直径Dとの比であるL/Dは略20となっている(このL/D≒20は、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュのL/Dと同程度の値である)。
【0022】
また、スクリュ5の第2ステージ5bは、第1ステージ5aから送り込まれた溶融樹脂中に発泡剤としてのガス(ここでは二酸化炭素である)を均一に分散・混入(混合)させて、二酸化炭素が混入された溶融樹脂を前方に移送する機能を担っている。つまり、第2ステージ5bは、ガス注入装置7から第2ステージ5bの後部側に対して所定秒時の期間だけ注入される低圧(大気圧よりも高圧である)の二酸化炭素を、スクリュ5の回転により、溶融樹脂中に分散させて均一に混ぜ合わせつつ、この二酸化炭素が混入された溶融樹脂を前方に移送するようになっている。ただし、本実施形態では、発泡剤としてのガスに二酸化炭素を用いており、二酸化炭素は窒素に較べて溶融樹脂への溶解度が格段に大きいので、第2ステージ5b(スクリュ5)をさほどに回転させなくても、二酸化炭素は溶融樹脂中に簡単・容易に均一分散・混入されるようになっていて、本実施形態では、二酸化炭素が混入された溶融樹脂を前方に移送するのが、第2ステージ5bの主たる機能となっている。
【0023】
本実施形態では、第2ステージ5bにおけるネジのピッチPとスクリュ5の直径Dとの比であるP/Dを、1.0〜1.2に設定してあり、この第2ステージ5bのP/D=1.0〜1.2は、第1ステージ5aのP/D=0.7〜0.8よりも大きな値となっている。本実施形態では、このように、第2ステージ5bのP/Dを第1ステージ5aのP/Dよりも大きくしているので(第2ステージ5bのネジのピッチPを、第1ステージ5aのネジのピッチPよりも広くしているので)、第2ステージ5bでは、樹脂に付与される圧縮力を第1ステージ5aに較べると大幅に小さくすることができるようになっている。そして、本実施形態では、第2ステージ5bにおいて溶融樹脂に低圧の二酸化炭素を注入しても、第2ステージ5b側の加熱シリンダ2内の圧力(樹脂圧とガス圧とによる圧力)は、第1ステージ5a側の加熱シリンダ2内の圧力(樹脂圧)よりも低くなるようにしてあり、このことにより、本実施形態では、第1ステージ5aと第2ステージ5bとの境界にチェック弁がない構造を採っている。
【0024】
ここで、本実施形態では、例えば用いる原料樹脂がポリプロピレン(PP)である場合には、第1ステージ5a側の加熱シリンダ2内の樹脂圧は3.0〜8.0MPaに、第2ステージ5b側の加熱シリンダ2内の樹脂圧は1.0〜5.0MPaに、第2ステージ5b側の加熱シリンダ2内に注入される二酸化炭素の圧力は0.8〜1.5MPaに、それぞれ設定されるようになっている。
【0025】
なお、図1に示した開閉弁付きのノズル(シャットオフノズル)4は、複数のノズル構成パーツが一体化されたノズル外筐構造体8と、ノズル外筐構造体8内で前後進可能であると共にノズル外筐構造体8の最先端のノズル開口を閉止/開放可能な閉止ニードル9と、閉止ニードル9を駆動アーム11を介して前後進駆動可能な弁駆動源10とを備えている。閉止ニードル9は、射出工程時以外には閉止状態を維持されるようになっていて、射出工程時のみに開放状態をとるようになっている。
【0026】
図1に示す構成において、計量工程時には、原料樹脂供給装置6から樹脂供給穴1a、樹脂供給穴2aを通じて、スクリュ5の第1ステージ5aの後部に供給された原料樹脂を、スクリュ5の回転によって、第1ステージ5aにおいて混練・可塑化して、溶融樹脂を第1ステージ5a側から第2ステージ5b側へと送り込む。第2ステージ5b側では、ガス注入装置7から適宜のタイミングで適正量だけ注入された二酸化炭素を、溶融樹脂中に均一に分散・混入させつつ、二酸化炭素が混入された溶融樹脂を前方に移送する。そして、スクリュ5のスクリュヘッド5cの前方側に、二酸化炭素が混入された1ショット分の溶融樹脂が貯えられて、スクリュ5が所定ストロークだけ後退した時点で、計量工程が完了させられる。計量工程の完了後、所定秒時をおいた射出工程の開始タイミングの直前に至ると、開閉弁付きのノズル4の閉止ニードル9が閉止位置から開放位置へと移行させられ、この後、スクリュ5が前進駆動されることで、ノズル4から二酸化炭素が混入(混合)された溶融樹脂が金型内に射出・充填され、これにより、大気圧にある金型内で二酸化炭素が急速に膨張して、樹脂中に多数の気泡のある発泡成形品が成形されるようになっている。
【0027】
図2は、原料樹脂供給装置(ペレットフィーダ)6の構成を示す断側面図である。図2において、21は、ヘッドストック1上に固設された下部基体22と下部基体22上に固定された上部基体23とからなる保持ブロック、24は、上部基体23の上部に固設されたホッパー、23aは、上部基体23の内部に長手方向に沿って形成されたスクリュ収納空間、23bは、ホッパー24の下部開口とスクリュ収納空間23aとを連通させるように上部基体23に穿設された樹脂供給穴、23cは、スクリュ収納空間23aと下部基体22の樹脂供給穴22aとを連通させるように上部基体23に穿設された樹脂供給穴、22aは、ヘッドストック1の樹脂供給穴1aと上部基体23の樹脂供給穴23cとを連通させるように下部基体22に穿設された樹脂供給穴、25は、スクリュ収納空間23a内に回転可能であるように配設されたスクリュ、26は、上部基体23に取り付けられ、スクリュ25を回転駆動する減速ギヤ機構付きの供給制御モータである。
【0028】
図2に示す構成において、ホッパー24の下部開口から樹脂供給穴23bを通じてスクリュ収納空間23a内に落下・供給された原料樹脂(樹脂ペレット)は、供給制御モータ26によって回転駆動されるスクリュ25の回転によるネジ送り作用によって、スクリュ収納空間23a内を樹脂供給穴23c方向に移送され、樹脂供給穴23cの上方に達した原料樹脂は、樹脂供給穴23c、樹脂供給穴22a、樹脂供給穴1a、樹脂供給穴2aを通じて、加熱シリンダ2の後部内(スクリュ5の第1ステージ5aの後部)に供給されるようになっている。
【0029】
本実施形態では、ガス発泡射出成形機全体の制御を司る図示せぬコントローラが、供給制御モータ26の回転速度や回転タイミングなどを制御するようになっており、これによって、原料樹脂供給装置6からスクリュ5の第1ステージ5aの後部に供給される原料樹脂の供給量を、自在に調整することができるようになっている。
【0030】
以上のように本実施形態では、スクリュ5が第1ステージ5aと第2ステージ5bとをもつガス発泡射出成形機において、第1ステージ5aにおけるネジのピッチPとスクリュ5の直径Dとの比であるP/Dを0.7〜0.8とし、従来の第1ステージにおけるP/D≒1.0に較べると、第1ステージ5aにおけるネジのピッチPを狭く設定しているので、これにより、従来の第1ステージよりも大きな圧縮力を樹脂に付与することができ、従来の第1ステージよりも短い長さで原料樹脂を混練・可塑化して溶融させることができる。したがって、スクリュ5の全長を、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュの全長と、略同程度のものとすることが可能となり、つまり、スクリュ5の全長Lとスクリュの直径Dとの比であるL/Dを略20とすることが可能となり(換言するなら、スクリュ5のL/Dを、第2ステージをもたない一般的なインラインスクリュ式射出成形機のスクリュと同程度のものとすることが可能となり)、ガス発泡射出成形機の全長を従来よりも短くすることに大きく貢献できる。さらに、スクリュ5の全長が汎用スクリュの全長と略同程度になることで、スクリュ5の長さについての特異性がなくなり、加熱シリンダ2や加熱シリンダカバーなどの部材に、汎用の部材を用いることが可能となり、コスト低減に貢献することができる。また、第2ステージ5bにおけるP/Dを1.0〜1.2として、第2ステージ5bのP/Dを第1ステージ5aのP/Dよりも大きくしているので(第2ステージ5bのネジのピッチPを、第1ステージ5aのそれよりも広くしているので)、第2ステージ5bでは、樹脂に付与される圧縮力が第1ステージ5aに較べると大幅に小さくなり、たとえ、第2ステージ5bにおいて溶融樹脂に二酸化炭素を注入しても、第2ステージ5b側の加熱シリンダ2内の圧力を、第1ステージ5a側の加熱シリンダ2内の圧力よりも低くすることができる。したがって、第1ステージ5aと第2ステージと5bの境界にチェック弁がない構造としても、溶融樹脂が第2ステージ5b側から第1ステージ5a側へと逆流する虞はなく、チェック弁を排することで、その分だけコストを削減することができ、かつ、摩耗によるチェック弁の交換も要しない。さらに、第2ステージ5bにおいて溶融樹脂に注入するガス(発泡剤)を二酸化炭素としており、二酸化炭素は窒素に較べると溶融樹脂への溶解度が格段に高いので(モル単位で4〜9倍程度溶解度が高いので)、溶融樹脂に注入する二酸化炭素の圧力を低くできることに大きく貢献でき、また、二酸化炭素の溶融樹脂への溶解度が高いことにより、溶融樹脂中への二酸化炭素の均一な分散・混入が短時間で確実に達成され、以って、良好な品質の発泡成形品の成形に大きく貢献できる。さらにまた、第1ステージ5aの後部に原料樹脂を供給する原料樹脂供給装置6は、供給する原料樹脂の量を調整可能な機能をもっているので、原料樹脂(樹脂ペレット)の供給量を自在に調整することができ、この原料樹脂の供給量の調整により、第1ステージ5a側の加熱シリンダ2内の圧力が調整可能となるので、第1ステージ5a側の加熱シリンダ2内の圧力を第2ステージ5b側の加熱シリンダ2内の圧力よりも高くすることが、より容易に達成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス発泡射出成形機における、射出系メカニズムの要部の構成を示す要部断正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガス発泡射出成形機における、原料樹脂供給装置の構成を示す断側面図である。
【図3】従来のガス発泡射出成形機における、射出系メカニズムの要部の構成例を示す要部断正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ヘッドストック
1a 樹脂供給穴
2 加熱シリンダ
2a 樹脂供給穴
3 バンドヒータ
4 開閉弁付きのノズル
5 スクリュ
5a 第1ステージ
5b 第2ステージ
5c スクリュヘッド
6 原料樹脂供給装置
7 ガス注入装置
8 ノズル外筐構造体
9 閉止ニードル
10 弁駆動源
11 駆動アーム
21 保持ブロック
22 下部基体
22a 樹脂供給穴
23 上部基体
23a スクリュ収納空間
23b 樹脂供給穴
23c 樹脂供給穴
24 ホッパー
25 スクリュ
26 供給制御モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内に回転並びに前後進可能に配設されたスクリュを有し、該スクリュは、原料樹脂を混練・可塑化して溶融樹脂とする第1ステージと、該第1ステージから送り込まれた溶融樹脂にガスを混合する第2ステージとを有し、該第2ステージの溶融樹脂に対してガスを注入するガス注入装置が設けられて、ガスが混合された溶融樹脂を金型内に射出・充填することにより、発泡成形品を得るようにしたガス発泡射出成形機において、
前記第1ステージにおけるネジのピッチPと前記スクリュの直径Dとの比であるP/Dを0.7〜0.8に設定し、前記第2ステージにおけるネジのピッチPと前記スクリュの直径Dとの比であるP/Dを1.0〜1.2に設定したことを特徴とするガス発泡射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載のガス発泡射出成形機において、
前記第2ステージ側の前記加熱シリンダ内の圧力を、前記第1ステージ側の前記加熱シリンダ内の圧力よりも低くしたことを特徴とするガス発泡射出成形機。
【請求項3】
請求項2に記載のガス発泡射出成形機において、
前記第2ステージの溶融樹脂に注入されるガスは、前記第1ステージ側の前記加熱シリンダ内の圧力よりも低い圧力の二酸化炭素であることを特徴とするガス発泡射出成形機。
【請求項4】
請求項2または3に記載のガス発泡射出成形機において、
前記第1ステージの後部に原料樹脂を供給する原料樹脂供給装置は、供給する原料樹脂の量を調整可能な機能をもつことを特徴とするガス発泡射出成形機。
【請求項5】
請求項2または3に記載のガス発泡射出成形機において、
前記第1ステージと前記第2ステージとの境界には、チェック弁がない構造とされたことを特徴とするガス発泡射出成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−166463(P2009−166463A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10503(P2008−10503)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】