説明

ガラス基板の分割方法

【課題】ガラス基板の集積回路形成面に特別な接触可能部位を設けることなく、ガラス基板の分割方法を得る。
【解決手段】表面に集積回路2が形成されているガラス基板1を分割する方法において、ガラス基板の集積回路が形成された表面を上にしてガラス基板を加工台3上に載置保持する工程と、ガラス基板の切断位置の裏面側端縁に配置されたスクライブカッター4によりガラス基板の裏面に切断案内傷6を形成するスクライブを行うとともに、ガラス基板の切断位置の表面側外端縁に配置されたバックアップ部材5によりスクライブする際にガラス基板の撓みを防止する工程と、ガラス基板の端部にクランプ機構7をクランプして回転することにより、ガラス基板を分割するブレイクを行う工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に集積回路を形成したガラス基板、特に集積型薄膜太陽電池の製造におけるガラス基板の分割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、表面に集積回路を形成したガラス基板の分割方法としては、ガラス基板の片面に切断案内傷を形成し、その切断案内傷を成長させるように基板に負荷を与えてガラス基板を分割する方法が用いられている。以下、切断案内傷をスクライブ線と呼び、切断案内傷を成長させる行為をスクライブと呼び、切断案内傷を成長させるように基板に負荷を与えてガラス基板を分割する行為をブレイクと呼ぶ。
【0003】
図2は第1の従来例におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図であり、(a)において、1はガラス基板であり、10はガラス基板1を保持する加工台、4はガラス基板1をスクライブするスクライブカッターであり、ガラス基板1の上方に配置する。スクライブカッター4をガラス基板1上に当て、シリンダ、バネ等により加圧しながらガラス基板1の表面を図面と垂直な方向に走行することで、スクライブ線を形成する。(b)において、6はスクライブカッター4により形成されたスクライブ線(切断案内傷)である。(c)において、ガラス基板1はブレイク動作を行うために表裏反転させている。11はスキージであり、スクライブ線6の反対側でスクライブ線6の位置に合せて配置する。スキージ11がシリンダ、あるいはバネ等により加圧されてガラス基板1に負荷を与えることで、V字型のスクライブ線6が開く力が働き、スクライブ線が反対面まで成長して分割に至り、(d)に示すような所望のガラス基板1を得る。
【0004】
図3は第2の従来例におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図であり、(a)、(b)において、1はガラス基板であり、12はガラス基板1を保持する加工台、4はガラス基板1をスクライブするスクライブカッターであり、ガラス基板1の上方に配置する。スクライブカッター4をガラス基板1上に当て、シリンダ、バネ等により加圧しながらガラス基板1の表面を図面と垂直な方向に走行することで、ガラス基板1上にスクライブ線6を形成する工程までは図2の従来例と同一であるが、(c)において、ガラス基板1を表裏反転させずに、スキージ11がスクライブ線6と同じ面側でスクライブ線6よりも外側に配置される点が図2の従来例と異なる。スキージ11は図面の下方に下降してガラス基板1に負荷を与えてスクライブ線6を成長させ、ガラス基板1を分割する。
上記の2つの従来例はガラス基板を分割する際に用いられる一般的な方法であるが、液晶表示装置用の液晶パネルや太陽電池など、ガラス基板上に集積回路を形成した状態で分割する場合には問題が生じる。図2を例とすると、ガラス基板1の表面全体に集積回路があると、スクライブする際に表面の集積回路を破壊、あるいは機能を損なう原因となる。また、集積回路を構成する材料の硬度が高い場合、スクライブカッター4に対する負荷が大きくなり、スクライブカッター4の寿命が短くなる問題がある。さらには集積回路をスクライブしたときに発生したゴミがスクライブカッター4に付着し、別のガラス基板に再付着する問題もある。逆に集積回路が形成されていないガラス基板1の裏面をスクライブすると、ブレイクする際にスキージ11が集積回路側を押えることになるため、集積回路の破壊、機能低下の原因となる。
【0005】
この様な問題を解決し、集積回路を表面に形成したガラス基板を分割する方法として、例えば、図4に示すものがある。(a)において、1はガラス基板であり、片面には周縁部の接触可能部位を除き、集積回路2が形成されている。13はガラス基板1を保持する基板固定用定盤であり、中央部は定盤が集積回路2に触れないように凹部14が形成されている。ガラス基板1は集積回路2を下向きにして基板固定用定盤13上に置かれ、ガラス基板1は真空吸着するための真空吸着および解除用穴15により基板固定用定盤13の周縁部で吸着固定される。4はスクライブカッターであり、集積回路2の反対側をスクライブする。16は基板固定用定盤13の凹部14の中央に設けられた排水口である。(b)において、6はスクライブカッター4によるスクライブ線である。(c)において、11はスクライブ線6の外側に配置されたスキージであり、ガラス基板1に負荷を与えブレイクする(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−326856号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のガラス基板を分割する方法では、以上のように構成されているため、ガラス基板の周縁部に集積回路を形成しない接触可能部位を予め設けておく必要があった。しかし、この接触可能部位を予め設けておくためには、集積回路製作時のマスク処理や、集積回路除去のためのエッチング等の余分な手間が必要となっていた。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ガラス基板の集積回路形成面に特別な接触可能部位を設けることなく、ガラス基板の分割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るガラス基板の分割方法は、表面に集積回路が形成されているガラス基板を分割する方法において、ガラス基板の集積回路が形成された表面を上にしてガラス基板を加工台上に載置保持する工程と、ガラス基板の切断位置の裏面側端縁に配置されたスクライブカッターによりガラス基板の裏面に切断案内傷を形成するスクライブを行うとともに、ガラス基板の切断位置の表面側外端縁に配置されたバックアップ部材によりスクライブする際にガラス基板の撓みを防止する工程と、ガラス基板の端部にクランプ機構をクランプして回転することにより、ガラス基板を分割するブレイクを行う工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ガラス基板の集積回路が形成されていない面(裏面)をスクライブし、ガラス基板の端材部をクランプして回転することでガラス基板を分割できる構成であるため、スクライブやスキージによる集積回路の破壊や機能低下を防止することが出来る。また、スクライブカッターは集積回路に作用しないため、スクライブカッターの寿命低下や集積回路へのゴミ付着の問題を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図である。(a)において、1は例えば集積型薄膜太陽電池の製造に用いられるガラス基板であり、片面全体に集積回路2が形成されている。従来のガラス基板では、片面に周縁部の接触可能部位を除き、集積回路を形成しているため、集積回路製作時のマスク処理や、集積回路除去のためのエッチング等の余分な手間が必要であったが、この発明のガラス基板1によれば、片面全体に集積回路2を形成しているので、余分な手間が不要となる。ガラス基板1は集積回路2の形成された面(以下、この面を表面とする)を上にして加工台3上に置き、ガラス基板1の周縁部が加工台3の端部からはみ出るように載置する。そして、ガラス基板1の切断位置の裏面側両端にスクライブカッター4を配置し、ガラス基板1の切断位置の表面側の最外側両端にはスクライブする際にガラスが撓むことを防止するバックアップ部材5を配置する。(b)はスクライブ後の図面であり、6はスクライブカッター4によりガラス基板1の裏面側両端に形成されたスクライブ線(切断案内傷)である。(c)において、7はガラス基板1の周縁部の端材となる両端部分の表裏両面をクランプするクランパーからなるクランプ機構であり、回転中心軸8を中心として矢印の方向に回転動作する。(d)において、9はブレイクにより発生するガラス基板1の切り離された端材で、クランパー7にクランプされて取り除かれる。
【0012】
次に動作について説明する。図1の(a)において、ガラス基板1は、図示しない搬送機構により集積回路2が形成された表面を上にして加工台3に搬送され、図示しない位置決め機構により位置決めされる。位置決め後、バックアップ部材5が下降しガラス基板1が上方に撓まないように保持する。この際、バックアップ部材5は集積回路2面上を押えることになるが、分割後に端材9として取り除かれる部分であるので、製品となる太陽電池の機能には何ら問題を与えない。スクライブカッター4はガラス基板1に当たるまで上昇し、シリンダやバネなどにより適正な加圧力をガラス基板1に付与する。ガラスカッター4は図面と垂直な方向に動作する駆動部とガイド部からなる機構を有しており、適正な加圧力をガラス基板1に付与しながらガラス基板1の端から端まで走行し、スクライブ線6を形成する。この発明では、ガラス基板1の集積回路2が形成されていない裏面を下方からスクライブカッター4がスクライブするため、スクライブ時に発生するマイクロカレットは集積回路2に付着することが無く、ガラス基板1の洗浄、あるいはエアブロー等によるマイクロカレットの除去工程は不要である。(c)において、スクライブ後、スクライブカッター4およびバックアップ部材5がそれぞれ退避し、クランパー7がガラス基板1の両端部をそれぞれクランプできる位置まで前進する。クランパー7の把持部は開閉できる機構となっており、クランパー7の前進完了後にガラス基板1の両端部の表裏両面をクランプする。上記のバックアップ部材5と同様にクランパー7は集積回路2面上に作用するが、分割位置の外側の端材9として取り除かれる部位をクランプするため、製品である太陽電池の機能に何ら影響を与えない。(d)において、クランパー7が回転中心軸8を中心として矢印方向に回転することによりスクライブ線6のV型溝が成長し、ガラス基板1の表面に到達することでガラス基板1が分割される。分割後のガラス基板1のソゲやカジリを抑制するためには、回転中心軸8を適正な位置に設定することが必要であり、集積回路2表面上に引いた分割予定線を上方に平行にオフセットした位置が適正である。
【0013】
上記の動作により、集積回路2の形成されたガラス基板1が分割できるため、従来例のようにガラス基材1を表裏反転させる必要がなく、また、全面に集積回路2を形成した表面を上にして処理できるため、従来のように集積回路製作時のマスク処理や、集積回路除去のためのエッチング等の余分な手間が不要となり、装置のコストを低減することが可能である。
【0014】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、ガラス基板1を加工する場所として、加工台3を使用しているが、特に台状のものである必要は無く、例えば、コンベアのような搬送機構上であっても良い。
【0015】
実施の形態3.
また、上記実施の形態1では、加工台3で、スクライブ線(切断案内傷)6を成長させるスクライブと、切断案内傷を成長させるように基板に負荷を与えてガラス基板1を分割するブレイクとを行っているが、タクトタイムを短縮するために、上記スクライブとブレイクを別の場所に分けて行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図である。
【図2】第1の従来例におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図である。
【図3】第2の従来例におけるガラス基板の分割方法を説明する説明図である。
【図4】従来の集積回路を表面に形成したガラス基板の分割する方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ガラス基板
2 集積回路
3、10、12 加工台
4 スクライブカッター
5 バックアップ部材
6 スクライブ線(切断案内傷)
7 クランパー(クランプ機構)
8 回転中心軸
9 端材
11 スキージ
13 基板固定用定盤
14 凹部
15 真空吸着および解除用穴
16 排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に集積回路が形成されているガラス基板を分割する方法において、
前記ガラス基板の集積回路が形成された表面を上にして前記ガラス基板を加工台上に載置保持する工程と、
前記ガラス基板の切断位置の裏面側端縁に配置されたスクライブカッターにより前記ガラス基板の裏面に切断案内傷を形成するスクライブを行うとともに、前記ガラス基板の切断位置の表面側外端縁に配置されたバックアップ部材により前記スクライブする際に前記ガラス基板の撓みを防止する工程と、
前記ガラス基板の端部にクランプ機構をクランプして回転することにより、前記ガラス基板を分割するブレイクを行う工程と、
を備えたことを特徴とするガラス基板の分割方法。
【請求項2】
ガラス基板は、表面全体に集積回路が形成され、前記ガラス基板の表面側端縁には特別な接触可能部位が設けられていないことを特徴とする請求項1記載のガラス基板の分割方法。
【請求項3】
ガラス基板の裏面側端縁が加工台からはみ出るように前記加工台上に載置し、前記ガラス基板の切断位置の裏面側端縁に配置されたスクライブカッターにより、前記ガラス基板の前記加工台からはみ出た部分をスクライブすること特徴とする請求項1記載のガラス基板の分割方法。
【請求項4】
スクライブする際にガラス基板の撓みを防止するバックアップ部材は、ブレイク工程により前記ガラス基材から切り離され、取り除かれる端材部分の表面に作用することを特徴とする請求項1記載のガラス基板の分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308368(P2008−308368A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158425(P2007−158425)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】