説明

ガラス容器コーティング用スプレーノズル及びガラス容器コーティング用スプレー装置

【課題】 ガラス容器の口部にコーティングを行う際に、コーティング液が容器内部に付着しにくく、また、口部以外の不要部分にもコーティング液が付着しにくいスプレーノズル及びスプレー装置を開発する。
【解決手段】 先端のノズルチップの側面に、水平方向に形成された横長スリット状の吐出口を形成する。ミストがほぼ水平方向に噴射されるので、コーティング液が容器内面に付着しにくく、縦方向のミスト広がり角度が小さいので、口部以外の無用なコーティング液の付着を防止でき、横方向のミスト広がり角度が大きいので、口部外周及び天面にまんべんなくコーティングを行うことができる。吐出口に対向して吸引部を設けると、ガラス容器の口部に付着しなかった余剰のミストが吸引され、更にコーティング液が容器内面に付着しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス容器にコーティング液などをスプレーするガラス容器コーティング用スプレーノズル、及び、コンベアなどの移動手段の上に乗って送られてくるガラス容器にコーティング液などの液体をスプレーするガラス容器コーティング用スプレー装置に関し、特に、ガラス容器の口部にコーティング液などの液体を付着させるのに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス容器のコーティングに用いるスプレーノズル及びスプレー装置は、例えば下記特許文献1に開示されている。このノズルは、図7に示すように、吐出口12を有するノズルチップ11の先端をドーム状に形成し、吐出口12を該ドーム状先端の外側から中心方向に向かうスリット状とし、かつ、中心よりも外側に形成したものである。
【特許文献1】特開2000−246151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガラス容器の外面に樹脂などのコーティングを行うと強度劣化を防止できることは広く知られている。ガラス容器の口部は、複雑な形状を有する上に外部からの衝撃も加わりやすいため、「口欠け」と呼ばれる欠点が生じやすく、口部の強度劣化を防ぐために、口部にも樹脂などのコーティングを行いたいという強い要請がある。
【0004】
また、ガラスびんの口部に、いわゆるヒートシールによりシール材を接着して封をする場合がある。しかし、ガラスが風化するとシール材の接着力が低下するという問題がある。これを防ぐため、ガラス容器の口部に風化を防止する物質をコーティングしたいという要請もある。
【0005】
このように、ガラス容器の口部にコーティングをしたいという要請が強いのであるが、現実には口部のコーティングはあまり行われていない。それは、容器口部にコーティングを行うと、コーティング液が容器内面にも付着し、不測の事態を生じるおそれがあるからである。図8は前記特許文献1のノズル13でガラスびんGの口部にコーティングを行う場合を示している。ミストmは下向きに噴射されるので、ガラスびんの内面にコーティング液が付着しやすい。また、縦方向のミスト広がり角度が大きいので、口部以外の不要な部分にコーティング液が付着してしまう。
【0006】
本発明は、ガラス容器の口部にコーティングを行う際に、コーティング液が容器内部に付着しにくく、また、口部以外の不要部分にもコーティング液が付着しにくいスプレーノズル及びスプレー装置を開発するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成1〕
本発明は、ノズル本体に形成した気体流入口と液体流入口からそれぞれ気体と液体とが供給され、ノズル本体内の混合室で気体と液体とを混合し、先端のノズルチップの吐出口から気体と液体が混合したミストを噴霧する二流体ノズルであって、先端のノズルチップの側面に、水平方向に形成された横長スリット状の吐出口を有することを特徴とするガラス容器コーティング用スプレーノズルである。
【0008】
〔構成2〕
また本発明は、移動手段の上に乗って複数列の整列状態で流れてくるガラス容器に液体をスプレーする装置であって、該移動手段の上方に幅方向に架設された支持手段と、該支持手段に沿って走行する走行手段と、該走行手段に固定したノズルとを有し、該走行手段が該支持手段に沿って走行することで該ノズルがガラス容器の幅方向の列の間を移動し、該ノズル先端部の吐出口からガラス容器に対して液体をスプレーするガラス容器コーティング用スプレー装置において、該ノズルを前記構成1のノズルとすると共に、前記走行手段に余剰ミストを吸引するミスト吸引部を設け、該吸引部の吸引口を前記ノズルの吐出口に所定の間隔を隔てて対向して設けたことを特徴とするガラス容器コーティング用スプレー装置である。
【0009】
〔構成3〕
また本発明は、前記構成2のスプレー装置において、四辺形状に配置された4個の前記ノズルを備え、かつ、各ノズルの吐出口が、ミストが放射状に噴霧されるように前記四辺形の外側に向けられていることを特徴とするガラス容器コーティング用スプレー装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のノズルの吐出口は、上記の構成であるから、ミストがほぼ水平方向に噴射され、コーティング液が容器内面に付着しにくい。また、縦方向のミスト広がり角度が小さいので、口部以外の無用なコーティング液の付着を防止でき、横方向のミスト広がり角度が大きいので、口部外周及び天面にまんべんなくコーティングを行うことができる。
【0011】
本発明のスプレー装置は、吸引部を設けたので、ガラス容器の口部に付着しなかった余剰のミストは吸引部の吸引口から吸引され、空中を舞っているミストが容器内に落下して容器内にコーティング液が付着するのを防ぐことができる。
【0012】
四辺形状に配置した4個のノズルを設けることにより、整列状態のすべてのガラスびんの口部にムラなくコーティングを行うことができる。また、ミストは四辺形の頂角部分から外側に放射状に噴出されるので、各ノズルからのミストどうしが干渉することがなく、ミストどうしが干渉して生じる乱気流によってコーティング液が容器内面に付着するのを防ぐことができる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は実施例のノズル1の縦断面図、図2はノズル1の先端のノズルチップ7の正面図、図3は実施例のスプレー装置20の正面図、図4はスプレ装置20の平面図、図5はスプレ装置20においてガラス容器G口部にスプレーしている状態の側面説明図、図6はノズル1と吸引口34の位置関係を示す平面説明図である。
【0014】
ノズル1は、図1に示すように、液体流入口2、気体流入口3、パイロットエア流入口4、混合室5、管状部6、ノズルチップ7、吐出口8、ピストン9、コイルばね10を有する。液体流入口2はスプレー液が、気体流入口3はスプレー液と混合するためのスプレーエアが、パイロットエア流入口4はスプレーのオンオフをするためのパイロットエアが流入する部分で、それぞれ供給ホース(図示せず)が接続される。図1はオン状態を示しており、この状態において、スプレー液は矢印Aのように混合室5、管状部6を経てノズルチップ7に至り、スプレーエアは矢印Bのようにピストン9の内部から混合室5、管状部6を経てノズルチップ7に至る。すなわち、スプレー液とスプレーエアは混合室5で混合されて管状部6からノズルチップ7に至り、先端部の吐出口8から噴出し、スプレー液が噴霧される。パイロットエアは噴霧のオンオフをするためのもので、オンの状態ではパイロットエアが供給されずにピストン9がスプレーエアの圧力により上昇し、管状部6の入口が開いている。パイロットエアが供給されるとその圧力でピストン9が下降し管状部6の入口が閉鎖されてスプレー液が遮断される。なお、コイルばね10はスプレーエアの圧力に対してバランスをとるため設けられている。
【0015】
図1、2に示されるように、ノズルチップ7の先端部の側面に吐出口8が開口している。吐出口8は横長のスリット状で、水平に形成されている。この吐出口からは、ミストがほぼ水平方向に噴射されるので、コーティング液が容器内面に付着しにくい。縦方向のミスト広がり角度が小さいので、口部以外の無用なコーティング液の付着を防止でき、横方向のミスト広がり角度が大きいので、口部外周及び天面にまんべんなくコーティングを行うことができる。
【0016】
図3、4に示すガラス容器コーティング用スプレー装置20は、ガラス容器の製造工程における徐冷炉の終端でガラス容器口部にコーティング液を噴霧するものである。ガラス容器Gは、図4に示すように、移動手段である徐冷炉コンベア32上を整列状態で矢印Y方向に流れてくる。スプレー装置20は徐冷炉コンベア32のフレームから立設された支柱21、支柱21の上部に幅方向に架け渡された梁材22、梁材22に回動支点24で支持された支持手段であるレール23を有する。レール23の上には走行手段である台車25が設けられ、この台車はモータ28によって作動するベルト30に接続されてレール23の上を往復走行する。台車25からは吊下ポスト31が垂設され、その下端部から水平方向に張り出した腕26に4個のノズル1が下方に向かって固定されている。各ノズル1は図1に示したものと同じ構成である。4個のノズル1は、平面形状が四辺形となるように設置されている。ノズルの吐出口はミストが放射状に噴霧されるようにノズルの四辺形の外側に向けられている。また、腕26には、余剰のミストを吸引する4個の吸引部33が固定されている。各吸引部33の吸引口は、ノズルの吐出口に所定の間隔(間にガラスびんが入る間隔)を隔てて対向して設けられている。吸引部33はホース35によりバキューム装置(図示せず)に接続されている。
【0017】
レール23はシリンダ27の出入りにより回動支点24を支点として幅方向に対して若干傾斜することができる。図4に示すのは、台車25がX方向(同図の左方向)に走行している場合で、ガラス容器GがY方向に移動しているため、4個のノズル1は常にガラス容器の幅方向の列の間を移動することとなる。台車25が逆にX’方向に走行する場合には、シリンダ27が引っ込み、レール23は幅方向に対して逆の向きに傾く。このように、ガラス容器へのスプレー液の噴霧は、台車25に取り付けられたノズル1により、ガラス容器Gの流れ方向に対してほぼ直角方向(幅方向)に移動しながら行われる。台車25の往復作動は、徐冷炉コンベアの両端に取り付けられているセンサ29によってタイミングをとり、ガラス容器の配列を確認して間欠的に作動するようになっている。ノズルの噴霧のオンオフ制御は、台車の走行又は停止に同調させている。このようなスプレー装置の基本的な構造は従来の装置と変わりない。
【0018】
次に、図6に基づいてノズルと吸引口の位置関係を説明する。同図において、ガラスびんは矢印Y方向に流れ、ノズル1及び吸引部33は矢印X、X’方向に移動する。ノズル1は、1個のガラスびんを囲む大きさの四辺形aの頂角部分に位置するように設置されている。吐出口はミストmの中心線cが四辺形aの外側を向くように設置されている。これにより、ミストは四辺形aの頂角部分から放射状に噴出されるので、各ノズルからのミストどうしが干渉して乱気流が生じることがない。乱気流が生じると、コーティング液が容器内面に付着する可能性がある。図6においては、吸引部33は2個設けられている。吸引部は必ずしもノズルと同数である必要はなく、このように吸引部を大型化し、数を減らしても良い。吸引口34は、ノズルの吐出口から適宜間隔(間にガラスびんが入る間隔)を隔て、吐出口に対向して設けられている。したがって、図5に示すように、ガラス容器の口部に付着しなかった余剰のミストは吸引口34から吸引されるので、空中を舞っているミストが容器内に落下して容器内にコーティング液が付着するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のノズル1の縦断面図である。
【図2】ノズル1の先端のノズルチップ7の正面図である。
【図3】実施例のスプレー装置20の正面図である。
【図4】スプレ装置20の平面図である。
【図5】スプレ装置20においてガラス容器G口部にスプレーしている状態の側面説明図である。
【図6】ノズル1と吸引口34の位置関係を示す平面説明図である。
【図7】従来のノズルのノズルチップ11の正面図である。
【図8】従来のノズル13でガラス容器口部にコーティングを行う場合の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ノズル
2 液体流入口
3 気体流入口
4 パイロットエア流入口
5 混合室
6 管状部
7 ノズルチップ
8 吐出口
9 ピストン
10 コイルばね
11 ノズルチップ
12 吐出口
13 ノズル
20 スプレー装置
21 支柱
22 梁材
23 レール
24 回動支点
25 台車
26 腕
27 シリンダ
28 モータ
29 センサ
30 ベルト
31 吊下ポスト
32 徐冷炉コンベア
33 吸引部
34 吸引口
35 ホース
G ガラスびん
m ミスト
a 四辺形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に形成した気体流入口と液体流入口からそれぞれ気体と液体とが供給され、ノズル本体内の混合室で気体と液体とを混合し、先端のノズルチップの吐出口から気体と液体が混合したミストを噴霧する二流体ノズルであって、先端のノズルチップの側面に、水平方向に形成された横長スリット状の吐出口を有することを特徴とするガラス容器コーティング用スプレーノズル。
【請求項2】
移動手段の上に乗って複数列の整列状態で流れてくるガラス容器に液体をスプレーする装置であって、該移動手段の上方に幅方向に架設された支持手段と、該支持手段に沿って走行する走行手段と、該走行手段に固定したノズルとを有し、該走行手段が該支持手段に沿って走行することで該ノズルがガラス容器の幅方向の列の間を移動し、該ノズル先端部の吐出口からガラス容器に対して液体をスプレーするガラス容器コーティング用スプレー装置において、該ノズルを請求項1のノズルとすると共に、前記走行手段に余剰ミストを吸引するミスト吸引部を設け、該吸引部の吸引口を前記ノズルの吐出口に所定の間隔を隔てて対向して設けたことを特徴とするガラス容器コーティング用スプレー装置。
【請求項3】
請求項2のスプレー装置において、四辺形状に配置された4個の前記ノズルを備え、かつ、各ノズルの吐出口が、ミストが放射状に噴霧されるように前記四辺形の外側に向けられていることを特徴とするガラス容器コーティング用スプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−21390(P2007−21390A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207930(P2005−207930)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【Fターム(参考)】