キッチン設備制御システム
【課題】キッチン設備において、ユーザに起因して生じ得る不測の事態に確実に対処できるキッチン設備制御システムを得る。
【解決手段】作業台21等の各キッチン設備は、無線通信部m1と、無線通信部m1を通じての受信情報に基づいて不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施する各制御部34,38,65とを有する。また、携帯機K1〜K3は、無線通信部m3とメモリm4とを備えており、メモリm4には、それぞれの所有者(住人U1,U2、ペットP1)ごとに異なる個別の識別情報が記憶されている。各キッチン設備は、所定の使用エリア内に携帯機K1〜K3が進入して当該携帯機K1〜K3から受信した識別情報に基づいて事前回避措置を実施する。
【解決手段】作業台21等の各キッチン設備は、無線通信部m1と、無線通信部m1を通じての受信情報に基づいて不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施する各制御部34,38,65とを有する。また、携帯機K1〜K3は、無線通信部m3とメモリm4とを備えており、メモリm4には、それぞれの所有者(住人U1,U2、ペットP1)ごとに異なる個別の識別情報が記憶されている。各キッチン設備は、所定の使用エリア内に携帯機K1〜K3が進入して当該携帯機K1〜K3から受信した識別情報に基づいて事前回避措置を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅におけるキッチン設備制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの身体的特徴をセンサ等の計測手段により計測するとともに、同センサ等の計測結果に基づいて住宅内の各種機器を制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1の「個人認証装置及び通行制御装置」では、玄関ドア等からなる通行ゲートに身長計測手段として距離センサを設け、その距離センサにより計測された被認証者(通行者)の身長に応じて、ビデオカメラ等からなる端末部の高さを上下方向に移動させる。
【0003】
かかる技術は、住宅内の機器に対する子供のいたずらを防止する技術にも適用されている。例えば、特許文献2の「台所用監視装置」では、コンロの近傍に人体検出センサを設け、その人体検出センサにより検知された領域が低位置領域のみである場合、その人物が子供であると判断してコンロへの着火を禁止する。
【特許文献1】特開2003−308303号公報
【特許文献2】特開2002−130694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、距離センサを用いて被認証者の身長を計測する構成であるため、身長計測時の状態(被認証者の姿勢など)に応じて計測結果にばらつきが生じ、それに起因して端末部の高さが適正に調整できないことがあると考えられる。距離センサを用いる場合に限らず、センサ等の計測手段を用いて、被認証者に対して都度計測を行う構成では、やはり計測時の被認証者の状態に応じて計測ばらつき等が生じ、それに起因して住宅内の各種機器の制御性低下が生じることが懸念される。
【0005】
そして、特許文献1の技術と同様、センサ等の計測手段により検知領域が高位置領域か低位置領域かを計測している上記特許文献2でも、制御性の低下という懸念が解消できていない。このため、コンロの着火規制を適正に制御できず、子供のいたずら等といった不測の事態への対処は不十分となる。
【0006】
本発明は、キッチン設備においてユーザに起因して生じ得る不測の事態に確実に対処できるキッチン設備制御システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0008】
本発明のキッチン設備制御システムにおいて、複数のユーザに共用されるキッチン設備には、ユーザごとに用意される各携帯型通信装置との無線通信を可能とする通信手段と、前記各携帯型通信装置との無線通信情報に基づいて、当該キッチン設備における不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施するキッチン制御手段とが設けられている。そして、前記各携帯型通信装置に、それを所持するユーザを個別に認識する識別情報を記憶しておき、前記キッチン制御手段は、所定の使用エリア内に前記携帯型通信装置が進入したことにより当該携帯型通信装置から受信した識別情報に基づいて、前記事前回避措置を実施する。
【0009】
上記構成によれば、キッチン制御手段により、携帯型通信装置から無線通信によって受信したユーザ個別の識別情報に基づいて事前回避措置が実施される。このため、計測ばらつきに起因して制御性低下が生じることが解消される。これにより、キッチン設備において、ユーザに起因して生じ得る不測の事態にも確実に対処できる。
【0010】
なお、携帯型通信装置は、ユーザが常備しやすい小型携帯装置であるのが好ましく、例えば、ユーザの人体に直接装着できる人体装着型装置やカード型装置としての具体化が考えられる。日常使用する携帯電話を、「携帯型通信装置」として使用したり、スマートキーを「携帯型通信装置」として使用したりすることも可能である。
【0011】
前記キッチン制御手段は、前記識別情報が、事前回避措置の実施を必要とするユーザ(特定ユーザ)であることを示す特定識別情報であると判断した場合に、前記事前回避措置が実施するとよい。これにより、特定識別情報を受信した場合に限って事前回避措置が実施されるため、事前回避措置の不要なユーザの場合に事前回避措置が実施されることを防げる。この場合、特定ユーザとは、幼児や認知症患者、ペット等といった行動が予測できない人・動物が考えられる。
【0012】
なお、例えば、特定ユーザがキッチン入室後、キッチン設備に近づくことなく極短時間で退室した場合、事前回避措置を実施する必要はない。そこで、前記キッチン制御手段は、特定識別情報を受信したまま所定の待ち時間が経過した時点で事前回避措置を実施するとよい。これにより、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0013】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報と、事前回避措置の実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報とを、同一のキッチン設備で同時に受信した場合、又は非特定識別情報を受信後に特定識別情報をさらに受信した場合には、前記事前回避措置が実施されないようにするとよい。他ユーザが存在する場合は、そのユーザによって特定ユーザを監視することが可能であるため、事前回避措置を自動で実施することが不要となる。このため、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0014】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、事前回避措置の実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を解除するとよい。これにより、他ユーザがキッチン設備を利用する際に、手動で事前回避措置を解除するといった面倒な操作が不要となる。
【0015】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、その特定識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、前記事前回避措置を解除するとよい。これにより、特定ユーザが極短時間だけキッチンを離れたような場合に事前回避措置の実施が繰り返されるといった余分な動作がなくなり、電力等のエネルギーが無駄に消費されることを回避できる。
【0016】
検知対象までの距離を検出する距離検出手段を備え、前記キッチン制御手段は、前記識別情報を受信するとともに、前記距離検出手段により検出された検知対象であるユーザまでの距離が設定値以内である場合に、前記事前回避措置を実施するとよい。この構成では、キッチン設備から設定距離以内に近づき、不測の事態が発生する可能性が高まった時点で初めて事前回避措置が実施されることとなる。これにより、例えば、ユーザがキッチン設備から離れた位置に滞在しただけでキッチンから退出したような場合に事前回避措置は実施されず、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0017】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、 前記各携帯型通信装置に、ユーザごとに登録されるユーザ特有情報を前記識別情報と併せて記憶しておき、前記キッチン制御手段は、前記識別情報に付随して受信したユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置を実施するとよい。この場合、ユーザ特有情報としてはユーザの身体等に関する情報(例えば、年齢、身長、認知症の進行度等)を登録しておくとよい。これにより、特定ユーザのユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置が実施されるため、ユーザに合わせて最適な事前回避措置を実施できる。例えば、特定ユーザが幼児やペットであれば、背の届かない位置にある収納可動体のロックは不要とできる。
【0018】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、前記キッチン制御手段は、ユーザの進入状況に応じて前記複数の事前回避措置のうちいずれかの措置を選択的に実施するとよい。複数の事前回避措置が含まれている場合、同措置の内容によっては、ユーザがキッチンの所定エリアに進入した当初から実施する必要性が高いものから、キッチン設備に接近して初めて実施の必要性が高まるものもある。例えば、キッチンの入口側に引出し等が設けられている場合はその引出し等のロックを進入当初に実施する必要性が高い。また、キッチンの奥に加熱調理機器が設けられている場合であれば、その加熱調理機器に対する事前回避措置の必要性は同機器に接近した時点で高まる。このため、必要性の高い事前回避措置から順に実施する等、複数の事前回避措置を効率よく実施できる。
【0019】
地震情報又は地震予知情報を取得する地震情報取得手段を備え、前記キッチン制御手段は、前記地震情報取得手段により地震情報又は地震予知情報を受信した場合に、前記識別情報の受信とは無関係に前記事前回避措置を実施するとよい。これにより、地震発生によりキッチン設備において不測の事態が発生することを防止できる。
【0020】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器が非運転中の場合にその操作をロックする措置、及び同加熱調理機器が運転中の場合に運転を強制停止させる措置のうち少なくともいずれか一方の措置であるとよい。
【0021】
また、前記事前回避措置が加熱調理機器の運転中にその運転を強制停止させる措置である場合、キッチン制御手段は、加熱調理機器の運転中に前記識別情報の受信が途切れると、所定の待ち時間が経過した時点で、当該加熱調理機器の運転を強制停止させるとよい。これにより、加熱調理機器の運転中に携帯型通信装置の非所持者や地震等によって不測の事態が発生することを防げる。なお、運転停止されるまでの所定の待ち時間は、識別情報の受信が途切れるまでの間における単位時間当たりの消費熱量によって変更されるようにしてもよい。
【0022】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた引出し、開き戸及び引き戸等の収納可動体をロックする措置であるとよい。
【0023】
また、前記キッチン設備は床面に載置される下部収納部と、開放空間を隔てて前記下部収納部の上方に設けられた上部収納部とを備えた周辺収納キャビネットであり、前記事前回避措置は前記開放空間をシャッタで閉鎖する措置であるとよい。
【0024】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた警報装置により進入者及び周囲の同居人に警告を発する措置であるとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明のキッチン設備制御システムを具体化した一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。まず、二階建て住宅10における一階部分の間取り例を図1に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、住宅10は、主な屋内スペースとして玄関11、廊下12、和室13、リビング14、ダイニング15、キッチン16、洗面室17、トイレ18及び浴室19を備えている。なお、リビング14、ダイニング15及びキッチン16は、連続した一体空間(LDK空間)として形成されている。
【0027】
キッチン16には対面型の作業台21が設置されており、この作業台21によりダイニング15とキッチン16とが区画されている。対面型の作業台21には、リビング15に向かって立ちながら調理作業できるように、シンク31等の各種調理設備が設けられている。作業台21の向かい側である壁側には、周辺収納キャビネット22が壁に沿って設置されている。周辺収納キャビネット22は前記作業台21と平行に設置され、その作業台21との間にキッチン通路23が形成されている。
【0028】
なお、キッチン16における作業台21や周辺収納キャビネット22の配置構成は上記構成に限定されるものではなく、例えば、作業台21をアイランド型として設置したり、壁面に沿ったウォール型として設置したりしてもよい。
【0029】
キッチン16に設置された前記作業台21及び前記周辺収納キャビネット22には通信機能が付与され、携帯型通信装置との無線通信に基づいて事前回避措置が自動的に実施されるようになっている。事前回避措置とは、幼児や認知症患者、ペット等といった行動が予測できない人・動物(以下、幼児等という。)によって引き起こされる不測の事態を事前に回避するための措置である。その事前回避措置に関する具体的構成を、図2乃至図4に基づいて説明する。
【0030】
図2は、作業台21を示す正面図(キッチン通路23側から見た図)である。図2に示すように、作業台21には、前記シンク31の他、ガスコンロや電磁調理器等の加熱調理機器32が設けられている。加熱調理機器32には、同加熱調理機器32の運転規制を行う運転規制部33が設けられている。この運転規制部33により、加熱調理機器32が非運転中の場合は操作スイッチ32aの操作がロックされ、運転中の場合はその運転が強制的に停止される。運転規制部33にはキッチン制御手段としての機器制御部34が接続され、その機器制御部34により運転規制部33による運転規制とその解除とが手動又は自動で行われるようになっている。つまり、運転規制部33の操作スイッチ又はリモコン(遠隔操作装置)が手動で操作されると、手動で運転規制とその解除とが行われる。それに加え、加熱調理機器32では、機器制御部34よって自動的に運転規制とその解除とが行われる。この運転規制(操作スイッチ32aのロックや運転停止)が事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等による加熱調理機器32の誤動作を回避できる。
【0031】
作業台21には、キャビネット部35も設けられている。キャビネット部35には収納可動体である複数の引出し36が設けられ、それら各引出し36に食材や食器、調理器具等といった被収納物が収納可能となっている。調理器具としては、包丁や調理バサミ等の刃物類、鍋、フライパンその他各種の器具がこれに含まれる。各引出し36にはそれら各引出し36をロックする収納ロック部37が設けられている。なお、収納ロック部37により各引出し36が選択的にロックされるようにしてもよい。収納ロック部37にはキッチン制御手段としてのロック制御部38が接続され、収納ロック部37による各引出し36のロックと解除とが手動又は自動で行われるようになっている。つまり、作業台21のキャビネット部35では、収納ロック部37の操作スイッチ又はリモコンが手動で操作されると、手動で各引出し36のロックとその解除とが行われる。それに加え、キャビネット部35では、ロック制御部38により自動的に各引出し36のロックとその解除とが行われる。この各引出し36のロックが事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等が被収納物を散らかしてしまうといった事態を回避できる。なお、キャビネット部35には引出し36のみが設けられた構成となっているが、開き戸や引き戸等を適宜組み合わせてもよく、その場合には開き戸や引き戸も収納ロック部37によりロックされるように構成される。
【0032】
図3は、前記周辺収納キャビネット22の一例を示す正面図である。図3に示すように、この周辺収納キャビネット22は、フロアキャビネット41と同フロアキャビネット41の上方に配置されたウォールキャビネット42とを備えている。フロアキャビネット41とウォールキャビネット42とは、正面から見て左右の両端に設けられた側板43によって一体化されている。そして、フロアキャビネット41とウォールキャビネット42との間には開放空間としての載置スペース44が形成されている。
【0033】
なお、周辺収納キャビネット22としては、この図3に図示されたトールタイプのものの他、フロアキャビネット41又はウォールキャビネット42だけのタイプであってもよい。また、トールタイプであっても、載置スペース44がなく全域にわたって棚が設けられたものであってもよい。
【0034】
フロアキャビネット42は床面上に設置されるキャビネット部51と、そのキャビネット部51の上に設けられたカウンタ部52とを備えている。キャビネット部51には複数の引出し53や下部開き戸54が設けられ、これら収納可動体に被収納物が収納可能となっている。カウンタ部52の上方には前記載置スペース44が形成されており、同載置スペース44の範囲内で、電子レンジや炊飯器等の調理機器55、花瓶等の装飾品56、その他食器等の住人が所望する各種物品がカウンタ部51上に載置可能となっている。ウォールキャビネット42には上部開き戸57が設けられ、この収納可動体にも被収納物が収納可能となっている。そして、各引出し53及び上下の各開き戸54,57には、前記作業台21と同様、収納ロック部37が設けられ、収納ロック部37により各引出し53及び各開き戸54,57がロックされる。このため、周辺収納キャビネット22でも、引出し53等のロックという事前回避措置が実施されるようになっている。
【0035】
なお、キャビネット部51では引出し53等の他に引き戸を組み合わせる等、その収納構成は上記の例示に限定されるものではないし、それはウォールキャビネット41でも同じである。また、この周辺収納キャビネット22でも、各引出し53及び各開き戸54,57が選択的にロックされるようにしてもよい。
【0036】
また、周辺収納キャビネット22には、前記載置スペース44にシャッタ61が設けられている。図4も併せて参照しつつ、以下このシャッタ61について説明する。なお、図4は周辺収納キャビネット22の側面図であり、シャッタ61の動作をわかりやすくするために一方の側板43は省略されている。そして、図4の(a)はシャッタ61が開いた状態、図4の(b)はシャッタ61が閉じた状態を示している。
【0037】
シャッタ61は、複数の長尺状のスラット62を有して構成され、その進退方向への移動に際し湾曲変形可能となっている。シャッタ61は、側板43に設けられたサイドレール63に沿って移動可能となっている。サイドレール63は載置スペース44の最上部から正面側にかけて設けられている。図4(a)に示すように、シャッタ61が開いている初期状態では、載置スペース44が開放されている。このため、カウンタ部52に載置された調理機器55が操作可能であり、また、装飾品56に手を触れることが可能となっている。一方、図4(b)に示すように、サイドレール63にそってシャッタ61が移動してシャッタ61が閉じると、シャッタ61によって載置スペース44の正面側が閉鎖される。これにより、調理機器55を操作できなくなり、装飾品56に手を触れることもできなくなる。
【0038】
前記シャッタ61はモータ等からなるシャッタ駆動部64によって進退移動可能とされている。そして、シャッタ駆動部64にはキッチン制御手段としてのシャッタ制御部65が接続され、シャッタ61の運転が手動又は自動で行われるようになっている。つまり、操作スイッチやリモコンが手動で操作されると、シャッタの運転が手動操作される。それに加え、シャッタ制御部65により、シャッタ61は自動運転される。このシャッタ61を閉じることが事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等がカウンタ部51に載置された調理機器55を誤動作させることや、装飾品56に手を触れてそれを床に落下させ、破損に至ることを回避できる。
【0039】
なお、シャッタ61には緊急停止装置が設けられている。そして、緊急停止装置により、シャッタ61が閉じ動作する際に何かを挟み込んだ場合には、そのシャッタ61の移動が緊急停止されるようになっている。
【0040】
図5は、本制御システムの概要を示すブロック図である。なお図5では、キッチン設備としての作業台21及び周辺収納キャビネット22を制御対象とする事例について説明する。
【0041】
図5において、作業台21及び周辺収納キャビネット22の各キッチン設備は、外部装置との間で無線通信を可能とする通信手段としての無線通信部m1と、無線通信部m1を通じての受信情報に基づいて事前回避措置を実施する前記各制御部(機器制御部34、ロック制御部38、シャッタ制御部65)とをそれぞれ有している。
【0042】
本実施形態では、住宅の住人として二人の住人U1,U2と、一匹のペットP1を想定しており、各住人U1,U2及びペットP1によって携帯型通信装置としての携帯機K1〜K3がそれぞれ所持される。携帯機K1〜K3はいずれも小型携帯装置よりなり、携帯しても邪魔になりにくくかつ常備しやすいものとなっている。例えば、携帯機本体にリストバンドを取り付けた構成のブレスレット式携帯機や、同携帯機本体にネックチェーンを取り付けた構成のペンダント式携帯機、同携帯機本体にバネフックやバッジピンを取り付けた構成のバッジ式携帯機などとして具体化することが考えられる。また、スマートキーシステムで使用される電子キーを携帯機K1〜K3として用いたり、日常的に使用される携帯電話を携帯機K1〜K3として用いたり、通信機能を有するICカードを携帯機K1〜K3として用いたりすることも可能である。住人やペットごとに、形式・形態の異なる携帯機を使用することも可能である。
【0043】
携帯機K1〜K3は無線通信部m3を備えており、例えば、一つ部屋程度のエリアを通信範囲(送受信範囲)として、作業台21及び周辺収納キャビネット22の各無線通信部m1との間で無線通信が可能となっている。また、携帯機K1〜K3にはメモリm4が設けられており、そのメモリm4には、それぞれの所有者(住人U1,U2)やペットP1ごとに異なる個別の識別情報と各所有者の身体等に関するユーザ特有情報とが記憶されている。
【0044】
識別情報は、少なくとも本制御システムで認証されるユーザであってかつ認証対象とされる複数のユーザ(例えば、同居する家族やペット)が個別に認識可能となる情報となっている。そして、識別情報は、事前回避措置の実施を必要とするユーザ(特定ユーザ)であることを示す特定識別情報と、その実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報とに区別されている。特定ユーザとするか他ユーザとするかは住人が適宜設定できるが、例えば、幼児等が特定ユーザとして設定される。また、ユーザ特有情報においてユーザの身体等に関する情報としては、例えば、年齢、身長、認知症の進行度等の情報が含まれる。
【0045】
なお、メモリm4は、内蔵メモリである以外に、メモリカード等、出し入れ可能な記憶媒体であってもよい。メモリm4をメモリカードにて構成する場合、識別情報の登録や更新をパソコン等で簡易に行うことが可能となる。
【0046】
上記構成のキッチン設備制御システムでは、キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)が定期的にリクエスト信号を送信するのに対し、携帯機K1〜K3は、リクエスト信号の受信エリアに進入した際において、リクエスト信号に応答して識別情報を送信する。そして、キッチン設備側では、携帯機K1〜K3から送信される識別情報を受信する。そして、受信した識別情報が特定識別情報であると判断した場合に、事前回避措置が実施される。
【0047】
次に、各キッチン設備21,22において事前回避措置を実施する制御の流れを、図6のフローチャートに基づいて説明する。この制御処理は、各キッチン設備21,22の各制御部(機器制御部34、ロック制御部38、シャッタ制御部65)によって所定の時間周期で実行される。
【0048】
図7において、ステップS11ではリクエスト信号の送信処理を実施し、続くステップS12では、リクエスト信号に応答して識別情報を受信したか否かを判定する。応答が無い場合、すなわち識別情報を受信していない場合、そのまま本処理を終了する。
【0049】
また、応答が有る場合、すなわち識別情報を受信している場合、ステップS13に進み、受信した識別情報に基づいてユーザ認証を実施する。そして、認証OKであれば、ステップS14を肯定して後続のステップS15に進み、認証NGであれば、ステップS14を否定してそのまま本処理を終了する。なお、複数の携帯機から識別情報を受信している場合には、各携帯機からの受信情報のうち少なくともいずれかが認証OKであればステップS15に進む。
【0050】
ステップS15では、受信した識別情報に基づいて事前回避措置が実施される。この事前回避措置は、受信した識別情報が特定識別情報であると判断された場合に実施される。そして、事前回避措置が実施されると、その実施が解除されるまでの間、操作スイッチやリモコンによる手動操作は無効化される。特定識別情報だけでなく非特定識別情報も同時に受信した場合や、非特定識別情報を受信した後に特定識別情報をさらに受信した場合、事前回避措置は実施されない。また、特定識別情報を受信した後に非特定識別情報をさらに受信した場合、事前回避措置は解除される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等のロックが解除されるとともに、シャッタ61が開けられる。
【0051】
なお、キッチン設備21,22の事前回避措置が実施された後、識別情報が受信されない状態になると(ステップS12が否定されると)、この場合も、所定の待ち時間経過後に事前回避措置が解除されるようになっている。この所定の待ち時間については、特定ユーザのユーザ特有情報に基づいて適宜設定時間が変えられるようにしてもよい。
【0052】
次に、キッチン16に住人が入室した場合における各キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)の具体的な制御動作について図7及び図8のタイムチャートを参照して説明する。なおここでは、上述した図5のシステム構成を前提とする。また、説明の便宜上、他ユーザである大人の「住人U1」と、特定ユーザである幼児の「住人U2」とを想定する。
【0053】
図7は、住人U2がキッチン16に入室した場合の制御操作を示している。図7において、タイミングt1で住人U2がキッチン16に入室すると、住人U2の識別情報がキッチン設備側側で受信される。そして、住人U2は特定ユーザであるから、その識別情報が特定識別情報であると判断されて、所定の待ち時間Ta(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt2にて、事前回避措置が実施される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等がロックされ、シャッタ61は閉じられる。また、このとき加熱調理機器32が運転中であれば、強制的に運転が停止される。
【0054】
なお、住人U2が極短時間だけキッチン16に入室した場合(入室時間が待ち時間Ta以内の場合)、事前回避措置は実施されない。これにより、住人U2がキッチン16に入室後に極短時間で退室した場合、事前回避措置は実施されず、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。ただし、待ち時間Taを設定せず、住人U2の識別情報を受信すると直ちに事前回避措置が実施されるようにしてもよい。
【0055】
その後、住人U2がキッチン16から退出すると、タイミングt3で住人U2の識別情報の受信も途切れる。その受信停止を受け、所定の待ち時間Tb(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt4にて、事前回避措置は解除される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等のロックは解除され、シャッタ61は再び開けられる。
【0056】
図8は、住人U1と住人U2とが同時にキッチン16に在室する場合の制御動作を示している。図8において、タイミングt11で住人U1と住人U2とが同時にキッチン16に入室すると、各住人U1,U2の識別情報がキッチン設備側で受信される。この場合、他ユーザである住人U1が同時に認識されているため、所定の待ち時間Taが経過しても事前回避措置は実施されない。
【0057】
いったん両住人U1,U2がキッチン16から退出し、タイミングt12で両住人U1,U2の識別情報の受信が途切れた後、タイミングt13で住人U2が再びキッチン16に入室すると、住人U2の識別情報がキッチン設備側で受信される。そして、前述したように所定の待ち時間Taが経過したタイミングt14にて、事前回避措置が実施される。その後、タイミングt15で住人U1が再びキッチン16に入室すると、住人U1の識別情報がキッチン設備側で受信される。そして、その情報受信を受けて、所定の待ち時間Tc(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt16にて事前回避措置は解除される。
【0058】
上記の制御動作において、事前回避措置を解除する際、その解除前に、これから事前回避措置の解除を行う旨を報知するようにしてもよい。例えば、キッチン16の壁面に設けられたディスプレイに『住人U1の入室により事前回避措置を解除します』等のメッセージを表示する。また、解除の可否を問うべく、ディスプレイに『事前回避措置の解除がOKなら携帯機の××ボタンを押して下さい』等のメッセージを表示する。これらのメッセージを音声にて報知することも可能である。
【0059】
なお、他ユーザである住人U1の識別情報が同時に受信されている場合、事前回避措置は実施されないが、手動操作がなされれば事前回避措置が実施される。この場合、運転規制部33、収納ロック部37及びシャッタ駆動部64のすべてを同時作動させてもよいし、選択的に作動させてもよい。これにより、例えば、住人U1が目を離した隙に、住人U2によって不測の事態が引き起こされることを事前に回避できる。また、住人U1がキッチン16を掃除する際にシャッタ61を手動で閉じれば、カウンタ部52に載置された調理機器55や装飾品56に埃がかかることを防げる。さらに、油を使った調理の際にもシャッタ61を手動で閉じれば、油汚れの付着も防げる。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0061】
作業台21等のキッチン設備において、携帯機K1〜K3との通信により住人U1,U2、ペットP1ごとの識別情報が受信され、それが特定識別情報であると判断されると、事前回避措置が実施される。つまり、作業台21では、加熱調理機器32の操作スイッチ32a及びキャビネット部35の引出し36が自動でロックされたり、運転が強制停止されたりする。また、周辺収納キャビネット22では、引出し53等が自動でロックされたり、シャッタ61が自動的に閉じて載置スペース44が閉鎖されたりする。これにより、幼児等によって引き起こされる不測の事態を事前に回避できるようになる。例えば、操作スイッチ32aのロックや運転停止により、加熱調理機器32の誤動作を回避できるし、引出し36,53等をロックすれば被収納物が散らかされる等の事態を回避できる。また、シャッタ61を閉じれば、カウンタ部51に載置された各種物品が床に落下して破損することも回避できる。
【0062】
そして特に、設定情報は住人やペットごとに設定されるため、各住人の身体的特徴をセンサ等により計測していた従来技術とは異なり、センサ等の計測ばらつきに起因して制御性低下が生じることが解消される。以上により、作業台21や周辺収納キャビネット22等のキッチン設備において、ユーザに起因して生じ得る不測の事態に確実に対処できる。
【0063】
他ユーザである住人U1と、特定ユーザである住人U2とが同時にキッチン16に入室し、各キッチン設備21,22で同時に両者の識別情報を受信した場合、前記事前回避措置は実施されないようになっている。住人U1が存在する場合は、その住人U1によって住人U2を監視することが可能であるため、事前回避措置を自動で実施することは不要となる。このため、不要な事前回避措置の実施が行われないようにすることができる。
【0064】
また、時間を前後して「住人U2の識別情報(非特定識別情報)の受信」→「住人U1の識別情報(特定識別情報)の受信」が行われた場合、前記事前回避措置が解除される。これにより、住人U1がキッチン設備21,22を利用する際に、手動で事前回避措置を解除するといった面倒な操作が不要となる。
【0065】
住人U2の識別情報を受信して事前回避措置が実施された状態下で、その識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間Tbが経過した時点で、事前回避措置は解除される。これにより、極短時間だけキッチン16を離れたような場合に事前回避措置の実施が繰り返されるといった余分な動作がなくなり、電力等のエネルギーが無駄に消費されることを回避できる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0067】
・事前回避措置としては、操作スイッチ32a及び引出し36,53等をロックしたり、シャッタ61を閉じたりすることだけでなく、他の措置を採用してもよい。例えば、各キッチン設備21,22に設けられた警報装置により、音声や光等を利用して進入者及び周囲の同居人に警告を発することもその一つとして考えられる。
【0068】
このような警報装置はキッチン設備の構成と無関係に設置することが可能である。つまり、前記作業台21及び前記周辺収納キャビネット22のいずれにも警報装置が設けることが可能である。この場合、加熱調理機器32の操作スイッチ32aや引出し36,53等をロックしたり、シャッタ61を閉じたりする前に、まず警告を発するという事前回避措置を実施することが可能となる。
【0069】
・識別情報を受信後、所定の待ち時間Taが経過すると事前回避措置が実施されるのではなく、識別情報の受信に加え、各キッチン設備21,22から設定された距離よりも近づいた場合に、事前回避措置が実施されるようにしてもよい。これにより、例えば、キッチン設備21,22から離れた位置に滞在しただけでキッチン16から退出したような場合に、事前回避措置は実施されなくなる。このため、所定の待ち時間Ta経過を待つ場合よりも、不要な事前回避措置の実施回避を確実に行える。この場合、上記各キッチン設備21,22にはそれぞれ距離検出手段としての距離センサが設けられ、各キッチン設備21,22では距離センサからの検出信号の受信に基づいて個々に事前回避措置が実施される。
【0070】
ただ、上記作業台21のようにキッチン通路25の入口から離れた位置に加熱調理機器32は設けられている場合、加熱調理機器32の近傍と、キッチン通路25の入口側とにそれぞれ距離センサが設けられるとよい。この場合、入口側の距離センサが人やペットを検知すると各引出し36がロックされ、加熱調理機器32近傍の距離センサが人やペットを検知すると加熱調理機器32の運転規制がなされるというように、事前回避措置を順次実施することが可能となる。これにより、不必要な事前回避措置の実施が避けられる。
【0071】
このように距離センサが設けられた構成では、ユーザ特有情報を利用して、距離センサにより検知される範囲が特定ユーザごとに設定されるようにしてもよい。例えば、幼児であれば体が小さいため検知範囲を狭くするといったことが可能となる。これによっても、不必要な事前回避措置の実施が避けられる。
【0072】
また、複数の事前回避措置が実施されるキッチン設備にあっては、距離センサによって検出される距離に応じて異なる内容の事前回避措置が実施されるようにしてもよい。例えば、前記周辺収納キャビネット22は、前述したように引出し53等のロックと、シャッタ61を閉じるという二つの事前回避措置が実施されるようになっている。シャッタ61が完全に閉じるまでにある程度の時間を要するという点を考慮し、第1距離(例えば1m)以内への進入が検出されるとシャッタ61が閉じられ、第2距離(例えば0.5m)以内への進入が検出されると引出し53等がロックされるという制御動作が可能となる。
【0073】
・受信した識別情報が特定識別情報である場合に、すべての事前回避措置が実施されるのではなく、ユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置が実施されるようにしてもよい。例えば、ユーザが幼児やペットであれば比較的高い位置にあるウォールキャビネット42の上部開き戸54を開くことは困難なため、その上部開き戸54のロックを不要とすることが可能となる。このように、ユーザ特有情報に基づいて事前回避措置の実施内容を適宜選択できるようにすることで、不要な事前回避措置の実施が行われない。
【0074】
・受信した識別情報が特定識別情報である場合に、通信機能を付与された各キッチン設備21,22の事前回避措置がすべて同時に実施されるのではなく、進入状況に応じて適宜実施されるようにしてもよい。その場合の具体例を、図9及び図10を参照しつつ説明する。なお図9は、図1におけるキッチン16の間取り例を拡大して示した図であり、図10は別実施形態の制御システムの概要を示すブロック図である。
【0075】
図9に示すように、この別実施形態では、キッチン16が入口エリア71、中間エリア72及び奥エリア73というように3つに区画されている。各エリア71〜73の入口には通過センサ74,75,76がそれぞれ設けられている。
【0076】
また、図10に示すように、キッチン16に設置された各キッチン設備21,22は、事前回避措置の統括制御を行う中央制御部77に接続されている。前記各通過センサ74〜76もこの中央制御部77に接続されている。中央制御部77はメモリ77aを備えており、そのメモリ77aにはエリアごとに実施される事前回避措置の内容が記憶されている。そして、この中央制御部77により、各エリア71〜73への人の入室状況が監視されるとともに、各キッチン設備21,22における事前回避措置の実施状況が監視される。なお、エリアごとに実施される事前回避措置の内容は、特定ユーザごとに異なる内容が設定されるようにしてもよい。
【0077】
そして、キッチン16に住人が入室すると、各キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)では、中央制御部77により事前回避措置の実施が次のように制御される。
【0078】
すなわち、住人がキッチン16に入り、携帯機との無線通信によって識別情報を受信し、かつそれが特定識別情報であると判断されると、各キッチン設備21,22では事前回避措置が実施され得る状態となる。そして、その時受信した識別情報と各事前回避措置のスタンバイ情報とが中央制御部77に送信される。また、住人がキッチン16に入室すると、入口エリア71の入口に設けられた通過センサ74(入口通過センサ74)からの検出信号も中央制御部77に送信される。主制御手段である中央制御部77は、このスタンバイ情報と入口通過センサ74からの検出信号の受信とに基づいて、入口エリア71に対応する事前回避措置の実施を許可する。例えば、入口エリア71に存在する間であれば、未だキッチン通路25に至っていない状況であるため、音声や光等を利用した警報を発することが行われる。次いで、中間エリア72の入口に設けられた通過センサ75(中間通過センサ75)からの検出信号を受信すると、中央制御部77は中間エリア72に対応する事前回避措置の実施を許可する。例えば、中間エリア72はキッチン通路25内のエリアであり、幼児等によって不測の事態が発生する可能性は高まる。このため、引出し36,53等のロックやシャッタ61を閉じることが行われる。さらにその後、奥エリア73の入口に設けられた通過センサ76(奥通過センサ76)からの検出信号を受信すると、中央制御部77は奥エリア73に対応する事前回避措置の実施を許可する。たとえば、奥エリア73に至ると加熱調理機器32が誤操作される可能性が高まるため、操作スイッチ32aのロックや運転の強制停止が行われる。
【0079】
このように、キッチン16を複数のエリアに区画し、エリアごとに実施される事前回避措置の内容を適宜設定すれば、進入状況に応じた事前回避措置が実施されるようになる。これにより、複数の事前回避措置を効率よく実施できる。
【0080】
また、キッチン16を複数のエリアに区画するのではなく、複数の人感センサを設けて各人感センサに対応する事前回避措置を設定する構成によっても、事前回避措置を進入状況に応じて実施することが可能となる。すなわち、図11に示すように、この別実施形態ではキッチン通路25の床面に二つの人感センサ81,82が設けられている。なお、両センサ81,82の検出範囲の外縁W1,W2を図11に例示した。そして、キッチン通路25への入口側に設けられた人感センサ81の検出信号を受信すると、対応する事前回避措置(例えば、引出し36,53等のロックやシャッタ61の閉鎖)が実施される。次いで、キッチン通路25の奥側、つまり加熱調理機器32が設けている側に設けられた人感センサ82の検出信号を受信すると、対応する事前回避措置(例えば、加熱調理機器32の操作スイッチ32aのロックや運転の強制停止)を実施される。
【0081】
・地震情報又は地震予知情報を受信した場合には、携帯機との無線通信によって識別情報を受信しているか否かにかかわらず、事前回避措置をすべて又は選択的に実施するようにしてもよい。これにより、地震によって不測の事態が発生することを回避できる。前記地震情報又は前記地震予知情報は、キッチン設備に揺れ検出センサや、インターネット等の外部情報源に接続された情報取得部を設けて取得することが考えられる。なお、これら揺れ検出センサや情報取得部によって地震情報取得手段が構成される。
【0082】
・周辺収納キャビネット22において、シャッタ61の動作速度が数段階に変更可能となるように構成されてもよい。これにより、特定ユーザごとに動作速度の設定を変更したり、キッチン設備に近づく速度に応じて動作速度を変更したりすることができる。例えば、認知症患者のように大人の特定ユーザであれば、キッチン設備に至るまでの時間が短いと考えられるため、幼児である場合よりも動作速度を速めるといったことができるようになる。
【0083】
・非特定識別情報を受信して事前回避措置が実施されない場合において、加熱調理機器32の運転中に当該非特定識別情報の受信が途切れたら、所定の待ち時間が経過した後、加熱調理機器32の運転を強制停止させるようにしてもよい。前記所定の待ち時間は固定された時間でもよいし、識別情報の受信が途切れるまでの間における単位時間当たりの消費熱量によって変更されるようにしてもよい。後者の場合、例えば、単位時間当たりの消費熱量が設定値よりも大きい場合、比較的短時間で多量の熱量を消費する炒め料理である可能性が高いため、設定時間は5分程度とする。また、単位時間当たりの消費熱量が設定値よりも小さい場合、煮込み料理等の調理に長時間を要する料理である可能性が高いため、設定時間は30分程度とする。これにより、煮込み料理中でも安心してキッチン16から退出することができる。
【0084】
・機器制御部34、ロック制御部38及びシャッタ制御部65というように、事前回避措置ごとにキッチン制御手段となる制御部が設けられるのではなく、キッチン制御部という一つの制御部ですべての事前回避措置の実施が制御されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】住宅の一階部分の間取り例を示す図。
【図2】作業台の正面図。
【図3】周辺収納キャビネットを示す正面図。
【図4】周辺収納キャビネットの側面図であり、(a)はシャッタが開いた状態、(b)はシャッタが閉じた状態を示している。
【図5】キッチン設備制御システムの概要を示すブロック図。
【図6】事前回避措置の実施制御の流れを示すフローチャート。
【図7】具体的な制御動作について示すタイムチャート。
【図8】具体的な制御動作について示すタイムチャート。
【図9】別の実施形態を示すべく、キッチンの間取り例を拡大して示した図。
【図10】別実施形態の制御システムの概要を示すブロック図。
【図11】別の実施形態を示すべく、キッチンの間取り例を拡大して示した図。
【符号の説明】
【0086】
21…キッチン設備としての作業台、22…キッチン設備としての周辺収納キャビネット、32…加熱調理機器、33…運転規制部、34…キッチン制御手段としての機器制御部、36…収納可動体としての引出し、38…キッチン制御手段としてのロック制御部、41…下部収納部としてのフロアキャビネット、42…上部収納部としてのウォールキャビネット、44…開放空間としての載置スペース、53…収納可動体としての引出し、54…収納可動体としての下部開き戸、57…収納可動体としての上部開き戸、61…シャッタ、65…キッチン制御手段としてのシャッタ制御部、m1…通信手段としての無線通信部、K1〜K3…携帯機、U1,U2…住人、P1…ペット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅におけるキッチン設備制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの身体的特徴をセンサ等の計測手段により計測するとともに、同センサ等の計測結果に基づいて住宅内の各種機器を制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1の「個人認証装置及び通行制御装置」では、玄関ドア等からなる通行ゲートに身長計測手段として距離センサを設け、その距離センサにより計測された被認証者(通行者)の身長に応じて、ビデオカメラ等からなる端末部の高さを上下方向に移動させる。
【0003】
かかる技術は、住宅内の機器に対する子供のいたずらを防止する技術にも適用されている。例えば、特許文献2の「台所用監視装置」では、コンロの近傍に人体検出センサを設け、その人体検出センサにより検知された領域が低位置領域のみである場合、その人物が子供であると判断してコンロへの着火を禁止する。
【特許文献1】特開2003−308303号公報
【特許文献2】特開2002−130694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、距離センサを用いて被認証者の身長を計測する構成であるため、身長計測時の状態(被認証者の姿勢など)に応じて計測結果にばらつきが生じ、それに起因して端末部の高さが適正に調整できないことがあると考えられる。距離センサを用いる場合に限らず、センサ等の計測手段を用いて、被認証者に対して都度計測を行う構成では、やはり計測時の被認証者の状態に応じて計測ばらつき等が生じ、それに起因して住宅内の各種機器の制御性低下が生じることが懸念される。
【0005】
そして、特許文献1の技術と同様、センサ等の計測手段により検知領域が高位置領域か低位置領域かを計測している上記特許文献2でも、制御性の低下という懸念が解消できていない。このため、コンロの着火規制を適正に制御できず、子供のいたずら等といった不測の事態への対処は不十分となる。
【0006】
本発明は、キッチン設備においてユーザに起因して生じ得る不測の事態に確実に対処できるキッチン設備制御システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0008】
本発明のキッチン設備制御システムにおいて、複数のユーザに共用されるキッチン設備には、ユーザごとに用意される各携帯型通信装置との無線通信を可能とする通信手段と、前記各携帯型通信装置との無線通信情報に基づいて、当該キッチン設備における不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施するキッチン制御手段とが設けられている。そして、前記各携帯型通信装置に、それを所持するユーザを個別に認識する識別情報を記憶しておき、前記キッチン制御手段は、所定の使用エリア内に前記携帯型通信装置が進入したことにより当該携帯型通信装置から受信した識別情報に基づいて、前記事前回避措置を実施する。
【0009】
上記構成によれば、キッチン制御手段により、携帯型通信装置から無線通信によって受信したユーザ個別の識別情報に基づいて事前回避措置が実施される。このため、計測ばらつきに起因して制御性低下が生じることが解消される。これにより、キッチン設備において、ユーザに起因して生じ得る不測の事態にも確実に対処できる。
【0010】
なお、携帯型通信装置は、ユーザが常備しやすい小型携帯装置であるのが好ましく、例えば、ユーザの人体に直接装着できる人体装着型装置やカード型装置としての具体化が考えられる。日常使用する携帯電話を、「携帯型通信装置」として使用したり、スマートキーを「携帯型通信装置」として使用したりすることも可能である。
【0011】
前記キッチン制御手段は、前記識別情報が、事前回避措置の実施を必要とするユーザ(特定ユーザ)であることを示す特定識別情報であると判断した場合に、前記事前回避措置が実施するとよい。これにより、特定識別情報を受信した場合に限って事前回避措置が実施されるため、事前回避措置の不要なユーザの場合に事前回避措置が実施されることを防げる。この場合、特定ユーザとは、幼児や認知症患者、ペット等といった行動が予測できない人・動物が考えられる。
【0012】
なお、例えば、特定ユーザがキッチン入室後、キッチン設備に近づくことなく極短時間で退室した場合、事前回避措置を実施する必要はない。そこで、前記キッチン制御手段は、特定識別情報を受信したまま所定の待ち時間が経過した時点で事前回避措置を実施するとよい。これにより、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0013】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報と、事前回避措置の実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報とを、同一のキッチン設備で同時に受信した場合、又は非特定識別情報を受信後に特定識別情報をさらに受信した場合には、前記事前回避措置が実施されないようにするとよい。他ユーザが存在する場合は、そのユーザによって特定ユーザを監視することが可能であるため、事前回避措置を自動で実施することが不要となる。このため、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0014】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、事前回避措置の実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を解除するとよい。これにより、他ユーザがキッチン設備を利用する際に、手動で事前回避措置を解除するといった面倒な操作が不要となる。
【0015】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、その特定識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、前記事前回避措置を解除するとよい。これにより、特定ユーザが極短時間だけキッチンを離れたような場合に事前回避措置の実施が繰り返されるといった余分な動作がなくなり、電力等のエネルギーが無駄に消費されることを回避できる。
【0016】
検知対象までの距離を検出する距離検出手段を備え、前記キッチン制御手段は、前記識別情報を受信するとともに、前記距離検出手段により検出された検知対象であるユーザまでの距離が設定値以内である場合に、前記事前回避措置を実施するとよい。この構成では、キッチン設備から設定距離以内に近づき、不測の事態が発生する可能性が高まった時点で初めて事前回避措置が実施されることとなる。これにより、例えば、ユーザがキッチン設備から離れた位置に滞在しただけでキッチンから退出したような場合に事前回避措置は実施されず、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。
【0017】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、 前記各携帯型通信装置に、ユーザごとに登録されるユーザ特有情報を前記識別情報と併せて記憶しておき、前記キッチン制御手段は、前記識別情報に付随して受信したユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置を実施するとよい。この場合、ユーザ特有情報としてはユーザの身体等に関する情報(例えば、年齢、身長、認知症の進行度等)を登録しておくとよい。これにより、特定ユーザのユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置が実施されるため、ユーザに合わせて最適な事前回避措置を実施できる。例えば、特定ユーザが幼児やペットであれば、背の届かない位置にある収納可動体のロックは不要とできる。
【0018】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、前記キッチン制御手段は、ユーザの進入状況に応じて前記複数の事前回避措置のうちいずれかの措置を選択的に実施するとよい。複数の事前回避措置が含まれている場合、同措置の内容によっては、ユーザがキッチンの所定エリアに進入した当初から実施する必要性が高いものから、キッチン設備に接近して初めて実施の必要性が高まるものもある。例えば、キッチンの入口側に引出し等が設けられている場合はその引出し等のロックを進入当初に実施する必要性が高い。また、キッチンの奥に加熱調理機器が設けられている場合であれば、その加熱調理機器に対する事前回避措置の必要性は同機器に接近した時点で高まる。このため、必要性の高い事前回避措置から順に実施する等、複数の事前回避措置を効率よく実施できる。
【0019】
地震情報又は地震予知情報を取得する地震情報取得手段を備え、前記キッチン制御手段は、前記地震情報取得手段により地震情報又は地震予知情報を受信した場合に、前記識別情報の受信とは無関係に前記事前回避措置を実施するとよい。これにより、地震発生によりキッチン設備において不測の事態が発生することを防止できる。
【0020】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器が非運転中の場合にその操作をロックする措置、及び同加熱調理機器が運転中の場合に運転を強制停止させる措置のうち少なくともいずれか一方の措置であるとよい。
【0021】
また、前記事前回避措置が加熱調理機器の運転中にその運転を強制停止させる措置である場合、キッチン制御手段は、加熱調理機器の運転中に前記識別情報の受信が途切れると、所定の待ち時間が経過した時点で、当該加熱調理機器の運転を強制停止させるとよい。これにより、加熱調理機器の運転中に携帯型通信装置の非所持者や地震等によって不測の事態が発生することを防げる。なお、運転停止されるまでの所定の待ち時間は、識別情報の受信が途切れるまでの間における単位時間当たりの消費熱量によって変更されるようにしてもよい。
【0022】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた引出し、開き戸及び引き戸等の収納可動体をロックする措置であるとよい。
【0023】
また、前記キッチン設備は床面に載置される下部収納部と、開放空間を隔てて前記下部収納部の上方に設けられた上部収納部とを備えた周辺収納キャビネットであり、前記事前回避措置は前記開放空間をシャッタで閉鎖する措置であるとよい。
【0024】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた警報装置により進入者及び周囲の同居人に警告を発する措置であるとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明のキッチン設備制御システムを具体化した一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。まず、二階建て住宅10における一階部分の間取り例を図1に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、住宅10は、主な屋内スペースとして玄関11、廊下12、和室13、リビング14、ダイニング15、キッチン16、洗面室17、トイレ18及び浴室19を備えている。なお、リビング14、ダイニング15及びキッチン16は、連続した一体空間(LDK空間)として形成されている。
【0027】
キッチン16には対面型の作業台21が設置されており、この作業台21によりダイニング15とキッチン16とが区画されている。対面型の作業台21には、リビング15に向かって立ちながら調理作業できるように、シンク31等の各種調理設備が設けられている。作業台21の向かい側である壁側には、周辺収納キャビネット22が壁に沿って設置されている。周辺収納キャビネット22は前記作業台21と平行に設置され、その作業台21との間にキッチン通路23が形成されている。
【0028】
なお、キッチン16における作業台21や周辺収納キャビネット22の配置構成は上記構成に限定されるものではなく、例えば、作業台21をアイランド型として設置したり、壁面に沿ったウォール型として設置したりしてもよい。
【0029】
キッチン16に設置された前記作業台21及び前記周辺収納キャビネット22には通信機能が付与され、携帯型通信装置との無線通信に基づいて事前回避措置が自動的に実施されるようになっている。事前回避措置とは、幼児や認知症患者、ペット等といった行動が予測できない人・動物(以下、幼児等という。)によって引き起こされる不測の事態を事前に回避するための措置である。その事前回避措置に関する具体的構成を、図2乃至図4に基づいて説明する。
【0030】
図2は、作業台21を示す正面図(キッチン通路23側から見た図)である。図2に示すように、作業台21には、前記シンク31の他、ガスコンロや電磁調理器等の加熱調理機器32が設けられている。加熱調理機器32には、同加熱調理機器32の運転規制を行う運転規制部33が設けられている。この運転規制部33により、加熱調理機器32が非運転中の場合は操作スイッチ32aの操作がロックされ、運転中の場合はその運転が強制的に停止される。運転規制部33にはキッチン制御手段としての機器制御部34が接続され、その機器制御部34により運転規制部33による運転規制とその解除とが手動又は自動で行われるようになっている。つまり、運転規制部33の操作スイッチ又はリモコン(遠隔操作装置)が手動で操作されると、手動で運転規制とその解除とが行われる。それに加え、加熱調理機器32では、機器制御部34よって自動的に運転規制とその解除とが行われる。この運転規制(操作スイッチ32aのロックや運転停止)が事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等による加熱調理機器32の誤動作を回避できる。
【0031】
作業台21には、キャビネット部35も設けられている。キャビネット部35には収納可動体である複数の引出し36が設けられ、それら各引出し36に食材や食器、調理器具等といった被収納物が収納可能となっている。調理器具としては、包丁や調理バサミ等の刃物類、鍋、フライパンその他各種の器具がこれに含まれる。各引出し36にはそれら各引出し36をロックする収納ロック部37が設けられている。なお、収納ロック部37により各引出し36が選択的にロックされるようにしてもよい。収納ロック部37にはキッチン制御手段としてのロック制御部38が接続され、収納ロック部37による各引出し36のロックと解除とが手動又は自動で行われるようになっている。つまり、作業台21のキャビネット部35では、収納ロック部37の操作スイッチ又はリモコンが手動で操作されると、手動で各引出し36のロックとその解除とが行われる。それに加え、キャビネット部35では、ロック制御部38により自動的に各引出し36のロックとその解除とが行われる。この各引出し36のロックが事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等が被収納物を散らかしてしまうといった事態を回避できる。なお、キャビネット部35には引出し36のみが設けられた構成となっているが、開き戸や引き戸等を適宜組み合わせてもよく、その場合には開き戸や引き戸も収納ロック部37によりロックされるように構成される。
【0032】
図3は、前記周辺収納キャビネット22の一例を示す正面図である。図3に示すように、この周辺収納キャビネット22は、フロアキャビネット41と同フロアキャビネット41の上方に配置されたウォールキャビネット42とを備えている。フロアキャビネット41とウォールキャビネット42とは、正面から見て左右の両端に設けられた側板43によって一体化されている。そして、フロアキャビネット41とウォールキャビネット42との間には開放空間としての載置スペース44が形成されている。
【0033】
なお、周辺収納キャビネット22としては、この図3に図示されたトールタイプのものの他、フロアキャビネット41又はウォールキャビネット42だけのタイプであってもよい。また、トールタイプであっても、載置スペース44がなく全域にわたって棚が設けられたものであってもよい。
【0034】
フロアキャビネット42は床面上に設置されるキャビネット部51と、そのキャビネット部51の上に設けられたカウンタ部52とを備えている。キャビネット部51には複数の引出し53や下部開き戸54が設けられ、これら収納可動体に被収納物が収納可能となっている。カウンタ部52の上方には前記載置スペース44が形成されており、同載置スペース44の範囲内で、電子レンジや炊飯器等の調理機器55、花瓶等の装飾品56、その他食器等の住人が所望する各種物品がカウンタ部51上に載置可能となっている。ウォールキャビネット42には上部開き戸57が設けられ、この収納可動体にも被収納物が収納可能となっている。そして、各引出し53及び上下の各開き戸54,57には、前記作業台21と同様、収納ロック部37が設けられ、収納ロック部37により各引出し53及び各開き戸54,57がロックされる。このため、周辺収納キャビネット22でも、引出し53等のロックという事前回避措置が実施されるようになっている。
【0035】
なお、キャビネット部51では引出し53等の他に引き戸を組み合わせる等、その収納構成は上記の例示に限定されるものではないし、それはウォールキャビネット41でも同じである。また、この周辺収納キャビネット22でも、各引出し53及び各開き戸54,57が選択的にロックされるようにしてもよい。
【0036】
また、周辺収納キャビネット22には、前記載置スペース44にシャッタ61が設けられている。図4も併せて参照しつつ、以下このシャッタ61について説明する。なお、図4は周辺収納キャビネット22の側面図であり、シャッタ61の動作をわかりやすくするために一方の側板43は省略されている。そして、図4の(a)はシャッタ61が開いた状態、図4の(b)はシャッタ61が閉じた状態を示している。
【0037】
シャッタ61は、複数の長尺状のスラット62を有して構成され、その進退方向への移動に際し湾曲変形可能となっている。シャッタ61は、側板43に設けられたサイドレール63に沿って移動可能となっている。サイドレール63は載置スペース44の最上部から正面側にかけて設けられている。図4(a)に示すように、シャッタ61が開いている初期状態では、載置スペース44が開放されている。このため、カウンタ部52に載置された調理機器55が操作可能であり、また、装飾品56に手を触れることが可能となっている。一方、図4(b)に示すように、サイドレール63にそってシャッタ61が移動してシャッタ61が閉じると、シャッタ61によって載置スペース44の正面側が閉鎖される。これにより、調理機器55を操作できなくなり、装飾品56に手を触れることもできなくなる。
【0038】
前記シャッタ61はモータ等からなるシャッタ駆動部64によって進退移動可能とされている。そして、シャッタ駆動部64にはキッチン制御手段としてのシャッタ制御部65が接続され、シャッタ61の運転が手動又は自動で行われるようになっている。つまり、操作スイッチやリモコンが手動で操作されると、シャッタの運転が手動操作される。それに加え、シャッタ制御部65により、シャッタ61は自動運転される。このシャッタ61を閉じることが事前回避措置の一つであり、かかる措置により幼児等がカウンタ部51に載置された調理機器55を誤動作させることや、装飾品56に手を触れてそれを床に落下させ、破損に至ることを回避できる。
【0039】
なお、シャッタ61には緊急停止装置が設けられている。そして、緊急停止装置により、シャッタ61が閉じ動作する際に何かを挟み込んだ場合には、そのシャッタ61の移動が緊急停止されるようになっている。
【0040】
図5は、本制御システムの概要を示すブロック図である。なお図5では、キッチン設備としての作業台21及び周辺収納キャビネット22を制御対象とする事例について説明する。
【0041】
図5において、作業台21及び周辺収納キャビネット22の各キッチン設備は、外部装置との間で無線通信を可能とする通信手段としての無線通信部m1と、無線通信部m1を通じての受信情報に基づいて事前回避措置を実施する前記各制御部(機器制御部34、ロック制御部38、シャッタ制御部65)とをそれぞれ有している。
【0042】
本実施形態では、住宅の住人として二人の住人U1,U2と、一匹のペットP1を想定しており、各住人U1,U2及びペットP1によって携帯型通信装置としての携帯機K1〜K3がそれぞれ所持される。携帯機K1〜K3はいずれも小型携帯装置よりなり、携帯しても邪魔になりにくくかつ常備しやすいものとなっている。例えば、携帯機本体にリストバンドを取り付けた構成のブレスレット式携帯機や、同携帯機本体にネックチェーンを取り付けた構成のペンダント式携帯機、同携帯機本体にバネフックやバッジピンを取り付けた構成のバッジ式携帯機などとして具体化することが考えられる。また、スマートキーシステムで使用される電子キーを携帯機K1〜K3として用いたり、日常的に使用される携帯電話を携帯機K1〜K3として用いたり、通信機能を有するICカードを携帯機K1〜K3として用いたりすることも可能である。住人やペットごとに、形式・形態の異なる携帯機を使用することも可能である。
【0043】
携帯機K1〜K3は無線通信部m3を備えており、例えば、一つ部屋程度のエリアを通信範囲(送受信範囲)として、作業台21及び周辺収納キャビネット22の各無線通信部m1との間で無線通信が可能となっている。また、携帯機K1〜K3にはメモリm4が設けられており、そのメモリm4には、それぞれの所有者(住人U1,U2)やペットP1ごとに異なる個別の識別情報と各所有者の身体等に関するユーザ特有情報とが記憶されている。
【0044】
識別情報は、少なくとも本制御システムで認証されるユーザであってかつ認証対象とされる複数のユーザ(例えば、同居する家族やペット)が個別に認識可能となる情報となっている。そして、識別情報は、事前回避措置の実施を必要とするユーザ(特定ユーザ)であることを示す特定識別情報と、その実施を必要としないユーザ(他ユーザ)であることを示す非特定識別情報とに区別されている。特定ユーザとするか他ユーザとするかは住人が適宜設定できるが、例えば、幼児等が特定ユーザとして設定される。また、ユーザ特有情報においてユーザの身体等に関する情報としては、例えば、年齢、身長、認知症の進行度等の情報が含まれる。
【0045】
なお、メモリm4は、内蔵メモリである以外に、メモリカード等、出し入れ可能な記憶媒体であってもよい。メモリm4をメモリカードにて構成する場合、識別情報の登録や更新をパソコン等で簡易に行うことが可能となる。
【0046】
上記構成のキッチン設備制御システムでは、キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)が定期的にリクエスト信号を送信するのに対し、携帯機K1〜K3は、リクエスト信号の受信エリアに進入した際において、リクエスト信号に応答して識別情報を送信する。そして、キッチン設備側では、携帯機K1〜K3から送信される識別情報を受信する。そして、受信した識別情報が特定識別情報であると判断した場合に、事前回避措置が実施される。
【0047】
次に、各キッチン設備21,22において事前回避措置を実施する制御の流れを、図6のフローチャートに基づいて説明する。この制御処理は、各キッチン設備21,22の各制御部(機器制御部34、ロック制御部38、シャッタ制御部65)によって所定の時間周期で実行される。
【0048】
図7において、ステップS11ではリクエスト信号の送信処理を実施し、続くステップS12では、リクエスト信号に応答して識別情報を受信したか否かを判定する。応答が無い場合、すなわち識別情報を受信していない場合、そのまま本処理を終了する。
【0049】
また、応答が有る場合、すなわち識別情報を受信している場合、ステップS13に進み、受信した識別情報に基づいてユーザ認証を実施する。そして、認証OKであれば、ステップS14を肯定して後続のステップS15に進み、認証NGであれば、ステップS14を否定してそのまま本処理を終了する。なお、複数の携帯機から識別情報を受信している場合には、各携帯機からの受信情報のうち少なくともいずれかが認証OKであればステップS15に進む。
【0050】
ステップS15では、受信した識別情報に基づいて事前回避措置が実施される。この事前回避措置は、受信した識別情報が特定識別情報であると判断された場合に実施される。そして、事前回避措置が実施されると、その実施が解除されるまでの間、操作スイッチやリモコンによる手動操作は無効化される。特定識別情報だけでなく非特定識別情報も同時に受信した場合や、非特定識別情報を受信した後に特定識別情報をさらに受信した場合、事前回避措置は実施されない。また、特定識別情報を受信した後に非特定識別情報をさらに受信した場合、事前回避措置は解除される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等のロックが解除されるとともに、シャッタ61が開けられる。
【0051】
なお、キッチン設備21,22の事前回避措置が実施された後、識別情報が受信されない状態になると(ステップS12が否定されると)、この場合も、所定の待ち時間経過後に事前回避措置が解除されるようになっている。この所定の待ち時間については、特定ユーザのユーザ特有情報に基づいて適宜設定時間が変えられるようにしてもよい。
【0052】
次に、キッチン16に住人が入室した場合における各キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)の具体的な制御動作について図7及び図8のタイムチャートを参照して説明する。なおここでは、上述した図5のシステム構成を前提とする。また、説明の便宜上、他ユーザである大人の「住人U1」と、特定ユーザである幼児の「住人U2」とを想定する。
【0053】
図7は、住人U2がキッチン16に入室した場合の制御操作を示している。図7において、タイミングt1で住人U2がキッチン16に入室すると、住人U2の識別情報がキッチン設備側側で受信される。そして、住人U2は特定ユーザであるから、その識別情報が特定識別情報であると判断されて、所定の待ち時間Ta(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt2にて、事前回避措置が実施される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等がロックされ、シャッタ61は閉じられる。また、このとき加熱調理機器32が運転中であれば、強制的に運転が停止される。
【0054】
なお、住人U2が極短時間だけキッチン16に入室した場合(入室時間が待ち時間Ta以内の場合)、事前回避措置は実施されない。これにより、住人U2がキッチン16に入室後に極短時間で退室した場合、事前回避措置は実施されず、不要な事前回避措置の実施が行われなくなる。ただし、待ち時間Taを設定せず、住人U2の識別情報を受信すると直ちに事前回避措置が実施されるようにしてもよい。
【0055】
その後、住人U2がキッチン16から退出すると、タイミングt3で住人U2の識別情報の受信も途切れる。その受信停止を受け、所定の待ち時間Tb(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt4にて、事前回避措置は解除される。つまり、操作スイッチ32aや引出し36,53等のロックは解除され、シャッタ61は再び開けられる。
【0056】
図8は、住人U1と住人U2とが同時にキッチン16に在室する場合の制御動作を示している。図8において、タイミングt11で住人U1と住人U2とが同時にキッチン16に入室すると、各住人U1,U2の識別情報がキッチン設備側で受信される。この場合、他ユーザである住人U1が同時に認識されているため、所定の待ち時間Taが経過しても事前回避措置は実施されない。
【0057】
いったん両住人U1,U2がキッチン16から退出し、タイミングt12で両住人U1,U2の識別情報の受信が途切れた後、タイミングt13で住人U2が再びキッチン16に入室すると、住人U2の識別情報がキッチン設備側で受信される。そして、前述したように所定の待ち時間Taが経過したタイミングt14にて、事前回避措置が実施される。その後、タイミングt15で住人U1が再びキッチン16に入室すると、住人U1の識別情報がキッチン設備側で受信される。そして、その情報受信を受けて、所定の待ち時間Tc(例えば数5秒程度)が経過したタイミングt16にて事前回避措置は解除される。
【0058】
上記の制御動作において、事前回避措置を解除する際、その解除前に、これから事前回避措置の解除を行う旨を報知するようにしてもよい。例えば、キッチン16の壁面に設けられたディスプレイに『住人U1の入室により事前回避措置を解除します』等のメッセージを表示する。また、解除の可否を問うべく、ディスプレイに『事前回避措置の解除がOKなら携帯機の××ボタンを押して下さい』等のメッセージを表示する。これらのメッセージを音声にて報知することも可能である。
【0059】
なお、他ユーザである住人U1の識別情報が同時に受信されている場合、事前回避措置は実施されないが、手動操作がなされれば事前回避措置が実施される。この場合、運転規制部33、収納ロック部37及びシャッタ駆動部64のすべてを同時作動させてもよいし、選択的に作動させてもよい。これにより、例えば、住人U1が目を離した隙に、住人U2によって不測の事態が引き起こされることを事前に回避できる。また、住人U1がキッチン16を掃除する際にシャッタ61を手動で閉じれば、カウンタ部52に載置された調理機器55や装飾品56に埃がかかることを防げる。さらに、油を使った調理の際にもシャッタ61を手動で閉じれば、油汚れの付着も防げる。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0061】
作業台21等のキッチン設備において、携帯機K1〜K3との通信により住人U1,U2、ペットP1ごとの識別情報が受信され、それが特定識別情報であると判断されると、事前回避措置が実施される。つまり、作業台21では、加熱調理機器32の操作スイッチ32a及びキャビネット部35の引出し36が自動でロックされたり、運転が強制停止されたりする。また、周辺収納キャビネット22では、引出し53等が自動でロックされたり、シャッタ61が自動的に閉じて載置スペース44が閉鎖されたりする。これにより、幼児等によって引き起こされる不測の事態を事前に回避できるようになる。例えば、操作スイッチ32aのロックや運転停止により、加熱調理機器32の誤動作を回避できるし、引出し36,53等をロックすれば被収納物が散らかされる等の事態を回避できる。また、シャッタ61を閉じれば、カウンタ部51に載置された各種物品が床に落下して破損することも回避できる。
【0062】
そして特に、設定情報は住人やペットごとに設定されるため、各住人の身体的特徴をセンサ等により計測していた従来技術とは異なり、センサ等の計測ばらつきに起因して制御性低下が生じることが解消される。以上により、作業台21や周辺収納キャビネット22等のキッチン設備において、ユーザに起因して生じ得る不測の事態に確実に対処できる。
【0063】
他ユーザである住人U1と、特定ユーザである住人U2とが同時にキッチン16に入室し、各キッチン設備21,22で同時に両者の識別情報を受信した場合、前記事前回避措置は実施されないようになっている。住人U1が存在する場合は、その住人U1によって住人U2を監視することが可能であるため、事前回避措置を自動で実施することは不要となる。このため、不要な事前回避措置の実施が行われないようにすることができる。
【0064】
また、時間を前後して「住人U2の識別情報(非特定識別情報)の受信」→「住人U1の識別情報(特定識別情報)の受信」が行われた場合、前記事前回避措置が解除される。これにより、住人U1がキッチン設備21,22を利用する際に、手動で事前回避措置を解除するといった面倒な操作が不要となる。
【0065】
住人U2の識別情報を受信して事前回避措置が実施された状態下で、その識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間Tbが経過した時点で、事前回避措置は解除される。これにより、極短時間だけキッチン16を離れたような場合に事前回避措置の実施が繰り返されるといった余分な動作がなくなり、電力等のエネルギーが無駄に消費されることを回避できる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0067】
・事前回避措置としては、操作スイッチ32a及び引出し36,53等をロックしたり、シャッタ61を閉じたりすることだけでなく、他の措置を採用してもよい。例えば、各キッチン設備21,22に設けられた警報装置により、音声や光等を利用して進入者及び周囲の同居人に警告を発することもその一つとして考えられる。
【0068】
このような警報装置はキッチン設備の構成と無関係に設置することが可能である。つまり、前記作業台21及び前記周辺収納キャビネット22のいずれにも警報装置が設けることが可能である。この場合、加熱調理機器32の操作スイッチ32aや引出し36,53等をロックしたり、シャッタ61を閉じたりする前に、まず警告を発するという事前回避措置を実施することが可能となる。
【0069】
・識別情報を受信後、所定の待ち時間Taが経過すると事前回避措置が実施されるのではなく、識別情報の受信に加え、各キッチン設備21,22から設定された距離よりも近づいた場合に、事前回避措置が実施されるようにしてもよい。これにより、例えば、キッチン設備21,22から離れた位置に滞在しただけでキッチン16から退出したような場合に、事前回避措置は実施されなくなる。このため、所定の待ち時間Ta経過を待つ場合よりも、不要な事前回避措置の実施回避を確実に行える。この場合、上記各キッチン設備21,22にはそれぞれ距離検出手段としての距離センサが設けられ、各キッチン設備21,22では距離センサからの検出信号の受信に基づいて個々に事前回避措置が実施される。
【0070】
ただ、上記作業台21のようにキッチン通路25の入口から離れた位置に加熱調理機器32は設けられている場合、加熱調理機器32の近傍と、キッチン通路25の入口側とにそれぞれ距離センサが設けられるとよい。この場合、入口側の距離センサが人やペットを検知すると各引出し36がロックされ、加熱調理機器32近傍の距離センサが人やペットを検知すると加熱調理機器32の運転規制がなされるというように、事前回避措置を順次実施することが可能となる。これにより、不必要な事前回避措置の実施が避けられる。
【0071】
このように距離センサが設けられた構成では、ユーザ特有情報を利用して、距離センサにより検知される範囲が特定ユーザごとに設定されるようにしてもよい。例えば、幼児であれば体が小さいため検知範囲を狭くするといったことが可能となる。これによっても、不必要な事前回避措置の実施が避けられる。
【0072】
また、複数の事前回避措置が実施されるキッチン設備にあっては、距離センサによって検出される距離に応じて異なる内容の事前回避措置が実施されるようにしてもよい。例えば、前記周辺収納キャビネット22は、前述したように引出し53等のロックと、シャッタ61を閉じるという二つの事前回避措置が実施されるようになっている。シャッタ61が完全に閉じるまでにある程度の時間を要するという点を考慮し、第1距離(例えば1m)以内への進入が検出されるとシャッタ61が閉じられ、第2距離(例えば0.5m)以内への進入が検出されると引出し53等がロックされるという制御動作が可能となる。
【0073】
・受信した識別情報が特定識別情報である場合に、すべての事前回避措置が実施されるのではなく、ユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置が実施されるようにしてもよい。例えば、ユーザが幼児やペットであれば比較的高い位置にあるウォールキャビネット42の上部開き戸54を開くことは困難なため、その上部開き戸54のロックを不要とすることが可能となる。このように、ユーザ特有情報に基づいて事前回避措置の実施内容を適宜選択できるようにすることで、不要な事前回避措置の実施が行われない。
【0074】
・受信した識別情報が特定識別情報である場合に、通信機能を付与された各キッチン設備21,22の事前回避措置がすべて同時に実施されるのではなく、進入状況に応じて適宜実施されるようにしてもよい。その場合の具体例を、図9及び図10を参照しつつ説明する。なお図9は、図1におけるキッチン16の間取り例を拡大して示した図であり、図10は別実施形態の制御システムの概要を示すブロック図である。
【0075】
図9に示すように、この別実施形態では、キッチン16が入口エリア71、中間エリア72及び奥エリア73というように3つに区画されている。各エリア71〜73の入口には通過センサ74,75,76がそれぞれ設けられている。
【0076】
また、図10に示すように、キッチン16に設置された各キッチン設備21,22は、事前回避措置の統括制御を行う中央制御部77に接続されている。前記各通過センサ74〜76もこの中央制御部77に接続されている。中央制御部77はメモリ77aを備えており、そのメモリ77aにはエリアごとに実施される事前回避措置の内容が記憶されている。そして、この中央制御部77により、各エリア71〜73への人の入室状況が監視されるとともに、各キッチン設備21,22における事前回避措置の実施状況が監視される。なお、エリアごとに実施される事前回避措置の内容は、特定ユーザごとに異なる内容が設定されるようにしてもよい。
【0077】
そして、キッチン16に住人が入室すると、各キッチン設備(作業台21及び周辺収納キャビネット22)では、中央制御部77により事前回避措置の実施が次のように制御される。
【0078】
すなわち、住人がキッチン16に入り、携帯機との無線通信によって識別情報を受信し、かつそれが特定識別情報であると判断されると、各キッチン設備21,22では事前回避措置が実施され得る状態となる。そして、その時受信した識別情報と各事前回避措置のスタンバイ情報とが中央制御部77に送信される。また、住人がキッチン16に入室すると、入口エリア71の入口に設けられた通過センサ74(入口通過センサ74)からの検出信号も中央制御部77に送信される。主制御手段である中央制御部77は、このスタンバイ情報と入口通過センサ74からの検出信号の受信とに基づいて、入口エリア71に対応する事前回避措置の実施を許可する。例えば、入口エリア71に存在する間であれば、未だキッチン通路25に至っていない状況であるため、音声や光等を利用した警報を発することが行われる。次いで、中間エリア72の入口に設けられた通過センサ75(中間通過センサ75)からの検出信号を受信すると、中央制御部77は中間エリア72に対応する事前回避措置の実施を許可する。例えば、中間エリア72はキッチン通路25内のエリアであり、幼児等によって不測の事態が発生する可能性は高まる。このため、引出し36,53等のロックやシャッタ61を閉じることが行われる。さらにその後、奥エリア73の入口に設けられた通過センサ76(奥通過センサ76)からの検出信号を受信すると、中央制御部77は奥エリア73に対応する事前回避措置の実施を許可する。たとえば、奥エリア73に至ると加熱調理機器32が誤操作される可能性が高まるため、操作スイッチ32aのロックや運転の強制停止が行われる。
【0079】
このように、キッチン16を複数のエリアに区画し、エリアごとに実施される事前回避措置の内容を適宜設定すれば、進入状況に応じた事前回避措置が実施されるようになる。これにより、複数の事前回避措置を効率よく実施できる。
【0080】
また、キッチン16を複数のエリアに区画するのではなく、複数の人感センサを設けて各人感センサに対応する事前回避措置を設定する構成によっても、事前回避措置を進入状況に応じて実施することが可能となる。すなわち、図11に示すように、この別実施形態ではキッチン通路25の床面に二つの人感センサ81,82が設けられている。なお、両センサ81,82の検出範囲の外縁W1,W2を図11に例示した。そして、キッチン通路25への入口側に設けられた人感センサ81の検出信号を受信すると、対応する事前回避措置(例えば、引出し36,53等のロックやシャッタ61の閉鎖)が実施される。次いで、キッチン通路25の奥側、つまり加熱調理機器32が設けている側に設けられた人感センサ82の検出信号を受信すると、対応する事前回避措置(例えば、加熱調理機器32の操作スイッチ32aのロックや運転の強制停止)を実施される。
【0081】
・地震情報又は地震予知情報を受信した場合には、携帯機との無線通信によって識別情報を受信しているか否かにかかわらず、事前回避措置をすべて又は選択的に実施するようにしてもよい。これにより、地震によって不測の事態が発生することを回避できる。前記地震情報又は前記地震予知情報は、キッチン設備に揺れ検出センサや、インターネット等の外部情報源に接続された情報取得部を設けて取得することが考えられる。なお、これら揺れ検出センサや情報取得部によって地震情報取得手段が構成される。
【0082】
・周辺収納キャビネット22において、シャッタ61の動作速度が数段階に変更可能となるように構成されてもよい。これにより、特定ユーザごとに動作速度の設定を変更したり、キッチン設備に近づく速度に応じて動作速度を変更したりすることができる。例えば、認知症患者のように大人の特定ユーザであれば、キッチン設備に至るまでの時間が短いと考えられるため、幼児である場合よりも動作速度を速めるといったことができるようになる。
【0083】
・非特定識別情報を受信して事前回避措置が実施されない場合において、加熱調理機器32の運転中に当該非特定識別情報の受信が途切れたら、所定の待ち時間が経過した後、加熱調理機器32の運転を強制停止させるようにしてもよい。前記所定の待ち時間は固定された時間でもよいし、識別情報の受信が途切れるまでの間における単位時間当たりの消費熱量によって変更されるようにしてもよい。後者の場合、例えば、単位時間当たりの消費熱量が設定値よりも大きい場合、比較的短時間で多量の熱量を消費する炒め料理である可能性が高いため、設定時間は5分程度とする。また、単位時間当たりの消費熱量が設定値よりも小さい場合、煮込み料理等の調理に長時間を要する料理である可能性が高いため、設定時間は30分程度とする。これにより、煮込み料理中でも安心してキッチン16から退出することができる。
【0084】
・機器制御部34、ロック制御部38及びシャッタ制御部65というように、事前回避措置ごとにキッチン制御手段となる制御部が設けられるのではなく、キッチン制御部という一つの制御部ですべての事前回避措置の実施が制御されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】住宅の一階部分の間取り例を示す図。
【図2】作業台の正面図。
【図3】周辺収納キャビネットを示す正面図。
【図4】周辺収納キャビネットの側面図であり、(a)はシャッタが開いた状態、(b)はシャッタが閉じた状態を示している。
【図5】キッチン設備制御システムの概要を示すブロック図。
【図6】事前回避措置の実施制御の流れを示すフローチャート。
【図7】具体的な制御動作について示すタイムチャート。
【図8】具体的な制御動作について示すタイムチャート。
【図9】別の実施形態を示すべく、キッチンの間取り例を拡大して示した図。
【図10】別実施形態の制御システムの概要を示すブロック図。
【図11】別の実施形態を示すべく、キッチンの間取り例を拡大して示した図。
【符号の説明】
【0086】
21…キッチン設備としての作業台、22…キッチン設備としての周辺収納キャビネット、32…加熱調理機器、33…運転規制部、34…キッチン制御手段としての機器制御部、36…収納可動体としての引出し、38…キッチン制御手段としてのロック制御部、41…下部収納部としてのフロアキャビネット、42…上部収納部としてのウォールキャビネット、44…開放空間としての載置スペース、53…収納可動体としての引出し、54…収納可動体としての下部開き戸、57…収納可動体としての上部開き戸、61…シャッタ、65…キッチン制御手段としてのシャッタ制御部、m1…通信手段としての無線通信部、K1〜K3…携帯機、U1,U2…住人、P1…ペット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザに共用されるキッチン設備に、ユーザごとに用意される各携帯型通信装置との無線通信を可能とする通信手段と、前記各携帯型通信装置との無線通信情報に基づいて、当該キッチン設備における不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施するキッチン制御手段とを設け、
前記各携帯型通信装置に、それを所持するユーザを個別に認識する識別情報を記憶しておき、
前記キッチン制御手段は、所定の使用エリア内に前記携帯型通信装置が進入したことにより当該携帯型通信装置から受信した識別情報に基づいて、前記事前回避措置を実施するキッチン設備制御システム。
【請求項2】
前記キッチン制御手段は、前記識別情報が、事前回避措置の実施を必要とするユーザであることを示す特定識別情報であると判断した場合に、前記事前回避措置を実施する請求項1に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項3】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報と、事前回避措置の実施を必要としないユーザであることを示す非特定識別情報とを、同一のキッチン設備で同時に受信した場合、又は非特定識別情報を受信後に特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を実施しない請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項4】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、事前回避措置の実施を必要としないユーザであることを示す非特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を解除する請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項5】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、その特定識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、前記事前回避措置を解除する請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項6】
検知対象までの距離を検出する距離検出手段を備え、
前記キッチン制御手段は、前記識別情報を受信するとともに、前記距離検出手段により検出された検知対象であるユーザまでの距離が設定値以内である場合に、前記事前回避措置を実施する請求項1乃至5のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項7】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、
前記各携帯型通信装置に、ユーザごとに登録されるユーザ特有情報を前記識別情報と併せて記憶しておき、
前記キッチン制御手段は、前記識別情報に付随して受信したユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置を実施する請求項1乃至6のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項8】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、
前記キッチン制御手段は、ユーザの進入状況に応じて前記複数の事前回避措置のうちいずれかの措置を選択的に実施する請求項1乃至7のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項9】
地震情報又は地震予知情報を取得する地震情報取得手段を備え、
前記キッチン制御手段は、前記地震情報取得手段により地震情報又は地震予知情報を受信した場合に、前記識別情報の受信とは無関係に事前回避措置を実施する請求項1乃至8のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項10】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器の操作をロックする措置及び同加熱調理機器の運転を強制停止させる措置のうち少なくともいずれか一方の措置である請求項1乃至9のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項11】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器の運転を強制停止させる措置であって、
前記キッチン制御手段は、前記加熱調理機器の運転中に前記識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、当該加熱調理機器の運転を強制停止させる請求項1乃至9のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項12】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた収納可動体をロックする措置である請求項1乃至11のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項13】
前記キッチン設備は床面に載置される下部収納部と、開放空間を隔てて前記下部収納部の上方に設けられた上部収納部とを備えた周辺収納キャビネットであり、前記事前回避措置は前記開放空間をシャッタで閉鎖する措置である請求項1乃至12のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項14】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた警報装置により進入者及び周囲の同居人に警告を発する措置である請求項1乃至13のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項1】
複数のユーザに共用されるキッチン設備に、ユーザごとに用意される各携帯型通信装置との無線通信を可能とする通信手段と、前記各携帯型通信装置との無線通信情報に基づいて、当該キッチン設備における不測の事態の発生を事前に回避するための事前回避措置を実施するキッチン制御手段とを設け、
前記各携帯型通信装置に、それを所持するユーザを個別に認識する識別情報を記憶しておき、
前記キッチン制御手段は、所定の使用エリア内に前記携帯型通信装置が進入したことにより当該携帯型通信装置から受信した識別情報に基づいて、前記事前回避措置を実施するキッチン設備制御システム。
【請求項2】
前記キッチン制御手段は、前記識別情報が、事前回避措置の実施を必要とするユーザであることを示す特定識別情報であると判断した場合に、前記事前回避措置を実施する請求項1に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項3】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報と、事前回避措置の実施を必要としないユーザであることを示す非特定識別情報とを、同一のキッチン設備で同時に受信した場合、又は非特定識別情報を受信後に特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を実施しない請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項4】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、事前回避措置の実施を必要としないユーザであることを示す非特定識別情報をさらに受信した場合に、前記事前回避措置を解除する請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項5】
前記キッチン制御手段は、前記特定識別情報を受信して前記事前回避措置が実施されている状態下で、その特定識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、前記事前回避措置を解除する請求項2に記載のキッチン設備制御システム。
【請求項6】
検知対象までの距離を検出する距離検出手段を備え、
前記キッチン制御手段は、前記識別情報を受信するとともに、前記距離検出手段により検出された検知対象であるユーザまでの距離が設定値以内である場合に、前記事前回避措置を実施する請求項1乃至5のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項7】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、
前記各携帯型通信装置に、ユーザごとに登録されるユーザ特有情報を前記識別情報と併せて記憶しておき、
前記キッチン制御手段は、前記識別情報に付随して受信したユーザ特有情報に基づいて選択的に事前回避措置を実施する請求項1乃至6のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項8】
前記事前回避措置には複数の措置が含まれ、
前記キッチン制御手段は、ユーザの進入状況に応じて前記複数の事前回避措置のうちいずれかの措置を選択的に実施する請求項1乃至7のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項9】
地震情報又は地震予知情報を取得する地震情報取得手段を備え、
前記キッチン制御手段は、前記地震情報取得手段により地震情報又は地震予知情報を受信した場合に、前記識別情報の受信とは無関係に事前回避措置を実施する請求項1乃至8のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項10】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器の操作をロックする措置及び同加熱調理機器の運転を強制停止させる措置のうち少なくともいずれか一方の措置である請求項1乃至9のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項11】
前記キッチン設備は作業台であり、前記事前回避措置はその作業台に設けられた加熱調理機器の運転を強制停止させる措置であって、
前記キッチン制御手段は、前記加熱調理機器の運転中に前記識別情報の受信が途切れた場合、所定の待ち時間が経過した時点で、当該加熱調理機器の運転を強制停止させる請求項1乃至9のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項12】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた収納可動体をロックする措置である請求項1乃至11のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項13】
前記キッチン設備は床面に載置される下部収納部と、開放空間を隔てて前記下部収納部の上方に設けられた上部収納部とを備えた周辺収納キャビネットであり、前記事前回避措置は前記開放空間をシャッタで閉鎖する措置である請求項1乃至12のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【請求項14】
前記事前回避措置は、キッチン設備に設けられた警報装置により進入者及び周囲の同居人に警告を発する措置である請求項1乃至13のいずれかに記載のキッチン設備制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−261549(P2008−261549A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104482(P2007−104482)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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