説明

キトサンおよびシクロデキストリンを含んでなるナノ粒子

本発明は、生物学的に活性な分子を放出するために設計されたナノ粒子を含んでなる系に関し、該ナノ粒子は、a)少なくとも40重量%のキトサンまたはその誘導体と、b)60重量%未満のシクロデキストリンまたはその誘導体とを含んでなり、かつ両成分a)およびb)はそれらの間において共有結合せずに混合される。この系は、生物学的に活性な分子の効率的会合と、それに続く適切な生物環境下においてのそれらの放出とを行える。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本発明は、生物学的に活性な分子の放出用に設計されたナノ粒子の系に関する。特に、それは、生物学的に活性な分子が配置された、ポリマーキトサンおよびシクロデキストリンの混合物から構成されるナノ粒子系と、それを得るための方法に関する。
【0002】
背景技術
ポリマーナノ粒子は、安定性を向上させ、体の特定領域への薬物の輸送および制御的放出を促し、上皮バリアの限定された透過性に伴う問題を克服しうる可能性があることから、特に注目されている。生分解性ポリマー中において、キトサンは粘膜接着剤(C.-M.Lehr,J.A.Bouwstra,E.H.Schacht and H.E.Junginger,Int.J.Pharm.,1992,78,43-48)および吸収プロモーター(P.Artursson,T.Lindmark,S.S.Davis and L.Illum,Pharm.Res.,1994,11,1358-1361)としてのその性質のため、近年非常に注目されている。更に、動物栄養補給向けの添加剤としてFDAにより既に承認された(J.D.McCurdy,Advances in Chitin and Chitosan,Elsevier Applied Science,London,1992,pp.757-764)、許容しうる毒物学的特性をもつ物質として、キトサンは科学的研究により支持されている(S.B.Rao and C.P.Sharma,J.Biomed.Mater.Res.,1997,34,21-28)。キトサン〔α(1‐4)2‐アミノ‐2‐デオキシ‐β‐D‐グルカン〕は、キチンの脱アセチル化から得られる天然多糖である。しかしながら、実際には、栄養サプリメントとしてまたは医療向けに用いられるキトサンは、アセチル化および脱アセチル化モノマーのランダムポリマーである。
【0003】
キトサンのナノ粒子は、多数の治療用分子の経粘膜投与向け担体として広く研究されてきた(A.M.De Campos,Y.Diebold,E.L.Carvalho,A.Sanchez and M.J.Alonso,Pharm.Res.,2004,21,803-810、R.Fernandez-Urrusuno,P.Calvo,C.Remunan-Lopez,J.L.Vila-Jato and M.J.Alonso,Pharm.Res.,1999,16,1576-1581、A.Prokov,E.Kozlov,G.W.Newman and M.J.Newman,Biotechnology and Bioengineering,2002,78,459-466、A.Vila,A.Sanchez,K.Janes,I.Behrens,T.Kissel,J.L.Vila-Jato and M.J.Alonso,Eur.J.Pharm.Biopharm.,2004,57,123-131)。これら粒子系の注目すべき特徴は、低透過性分子の吸収性を改善しうる性質である(R.Fernandez-Urrusuno,P.Calvo,C.Remunan-Lopez,J.L.Vila-Jato and M.J.Alonso,Pharm.Res.,1999,16,1576-1581、A.Vila,A.Sanchez,K.Janes,I.Behrens,T.Kissel,J.L.Vila-Jato and M.J.Alonso,Eur.J.Pharm.Biopharm.,2004,57,123-131)。キトサンのナノ粒子は、親水性薬物と効率的に会合しうることが証明されたが、通常これらの系は疎水性薬物、特に低い水溶性のものとの会合に限定を有する。現在、極低溶解性薬物を含有したキトサンにおけるナノ粒子の使用に関しては、一つの参考文献が見出されるのみであるが(A.M.De Campos,A.Sanchez and M.J.Alonso,Int.J.Pharm.,2001,224,159-168)、この研究には有機溶媒の使用を要する製造方法が必要であった。
【0004】
他方、シクロデキストリンは低溶解性分子用の複合化剤および活性成分の投与用担体として知られている。中でも、化学的に修飾されたシクロデキストリンは、その大きな化学的多様性により、現在薬学技術上最も広く用いられている。例えば、メチル、ヒドロキシプロピル、またはカルボキシメチル基によるヒドロキシルの置換は、前記分子に高い水溶性と優れた毒性特性とをもたらす。他のシクロデキストリンは、複合体に限定された溶解性(徐放系の処方において用いられる)または温度依存的溶解性を付与しうる。
【0005】
最近、薬学上の賦形剤としてシクロデキストリンの他の潜在的な効用が証明された。つまり、シクロデキストリンにおいて複合化させると、ある不安定な薬物の分解動態またはインスリンのような不活性なペプチドの凝集物を形成する傾向を減少させうることが証明された。更に、特定のシクロデキストリンは、それらが細胞膜においてその脂質の複合化の結果としてやや崩壊性を生じるという事実により、薬物の吸収を促進しうる能力を有していることが示された。
【0006】
溶液、ゲル中のポリマーとして、または固体マクロマトリックスとして、シクロデキストリンおよびキトサンの同時使用を開示している様々な文献が存在する(米国特許第2002150616号、米国特許第5476654号、米国特許第5330764号、米国特許第6677346号、米国特許第6497901号、米国特許第5849327号)。米国特許出願第2002150616号は、低溶解性薬物、シクロデキストリン、および親水性ポリマーからなる混合物を提案している。欧州特許第0730869号は、ポリマーおよびシクロデキストリンの混合物からなる薬物放出系も開示している。
【0007】
米国特許第5843347号、米国特許第5840341号、および米国特許第5639473号においては、マクロ粒子またはミクロ粒子として溶液中のポリマー組成物を開示している。押出のような粒子の形成(米国特許第5843347号)または油中水型エマルジョンの形成(米国特許第5639473号)について記載された方法においては、数マイクロメートルより小さな粒子を生産することができない。
【0008】
WO9961062号は、シクロデキストリンによるポリマーミクロ粒子の製造に関し、そこではシクロデキストリンがポリマーマトリックスとの潜在的な、好ましくない相互作用から薬物を防御する機能を有している。米国特許第6630169号においては、経粘膜経路によるワクチン担体としてのミクロ構造の形成を開示している。
【0009】
米国特許第5639473号は、二イオウ基によって架橋することによる、親水性ポリマー(例えば、キトサン)またはオリゴ糖(例えば、シクロデキストリン)の修飾に関する。前記発明の記載によると、提案された方法においては、0.1〜20マイクロメートルの粒子系となる。
【0010】
WO03027169号においては、共有結合シクロデキストリンとの親水性ポリマー誘導体の形成と、薬剤系(ミクロおよびナノ粒子を含む)の形成に際するそれらの効用について開示されている。
【0011】
米国特許第619757号においては、マトリックスを構成する多糖またはオリゴ糖をエマルジョン中において架橋させて、これら分子間においてエーテル型結合を生じさせる製造方法について開示されている。
【0012】
米国特許第5700459号および米国特許第6649192号においては、薬学用途向けにキトサンのナノ粒子の形成のための方法について開示されている。双方の特許において、ナノ粒子は、ポリカチオン(例えばキトサン)とポリアニオン(例えばトリポリリン酸)との相互作用により形成されている。米国特許第5700459号においては、キトサンのような他の可能なポリカチオン用の代替物質として、特定のシクロデキストリン(アミノシクロデキストリン)の使用可能性が述べられている。
【0013】
WO9704747号は、リポソームおよび/または粘膜接着アジュバントにより、後に被覆される、ナノメートルヒドロゲルマトリックスにおいての薬物または薬物‐シクロデキストリン複合体の封入について提案している。提案された方法においては有機相から水相へのポリマーの沈降を要し、該ポリマーが沈降した水相へ薬物含有シクロデキストリンが加えられ、その点で一緒ではない。該方法において、この要素は特定の薬物の効率的封入を妨げることがある。
【0014】
ミクロ粒子の形成用に設計されたミクロ封入技術が、ナノ粒子の形成用に設計されたナノ技術と一般的に異なることは、強調する価値がある。WO9804244号において、キトサンのナノ粒子の形成について開示されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、キトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子から構成される系が、生物学的に活性な分子の効率的会合と、それに続く適切な生物環境下においてのそれらの放出とを行えることを見出した。これらのナノ粒子は、シクロデキストリンを有さないキトサンのナノ粒子と比較して、疎水性薬物を封入または会合しうる、改善された能力を示す。更に、シクロデキストリンは、例えば会合された生物学的活性分子の良い防御性および、特に低透過性分子の場合に吸収を促進しうる高い能力などのナノ粒子系への新しい特徴を付与する。つまり、インビボ研究において、鼻粘膜と相互作用し、更に鼻上皮を通過することによって、上皮バリア経由により低透過性を輸送しうる本発明の系の能力を証明した。
【0016】
本発明の系に存在するナノ粒子により示される追加の特徴は、細胞培地中、更に重要なことには人工腸液中におけるそれらの高い安定性であり、ナノ粒子の物理化学的性質が少なくとも4時間変わらないことが示された。この性質により、これらの系を異なる投与経路においての使用、特に経口投与に適したものとさせ、適切な生物環境下において薬物放出を可能にする。更に、異なる薬物においての放出研究から、ナノ粒子が制御され、段階的に活性成分を放出しうることを証明した。
【0017】
他方、DNAプラスミドのような核酸ベース高分子を取込んで放出しうる可能性があるため、インビトロ研究により、極めて効率的に細胞培養物をトランスフェクトして、本発明の系を遺伝子治療において潜在的に使用に適したものとさせうる、ナノ粒子の能力を観察することができた。
【0018】
つまり、本発明の一つの目的は、生物学的活性分子を放出するために設計されたナノ粒子を含んでなる系に関し、該ナノ粒子は、a)少なくとも40重量%のキトサンまたはその誘導体と、b)60重量%未満のシクロデキストリンまたはその誘導体とを含んでなり、かつ両成分a)およびb)は共有結合せずに混合される。
【0019】
場合により、ナノ粒子は、キトサンをナノメートル構造の形態にゲル化させうるイオン架橋剤を更に含む。
【0020】
本発明の第二の態様は、生物学的に活性な分子を更に含んでなる、前記のナノ粒子系に関する。
【0021】
他の態様において、本発明は前記のナノ粒子系と、病気を予防、軽減、または治癒しうる生物学的に活性な分子とを含んでなる、医薬組成物に関する。更に、活性な生物学的分子“そのもの”とはみなせないが、ナノ構造内に捕捉させると投与系の効力に寄与しうる、ペプチド、タンパク質、または多糖であってもよい。
【0022】
本発明の他の態様は、前記のナノ粒子系および抗原を含んでなるワクチンである。好ましい態様において、本組成物またはワクチンは経粘膜投与用に設計される。
【0023】
他の態様において、本発明は前記のナノ粒子系を含む化粧用組成物に関する。
【0024】
本発明の他の態様は:
a.キトサンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b.シクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液、場合により架橋剤を含む溶液の調製、および
c.キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に得られる、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合
または、場合により:
a.キトサンまたはその誘導体およびシクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b.架橋剤の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
c.キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に得られる、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合
を含んでなる、前記生物学的活性分子の放出用に設計された系を得るための方法である。
【0025】
生物学的に活性な分子は、工程a)またはb)の溶液へ直接配合してよい、しかしながら、本方法の変法において、活性分子は工程a)またはb)への添加前に水性媒体または水と、極性溶媒との混合物へ溶解させてもよい。
【0026】
本発明の最終的な態様は、遺伝子治療薬の製造における、前記の系の使用に関する。
【発明の具体的説明】
【0027】
本発明の系は水性媒体に分散されたナノ粒子を含んでなり、該ナノ粒子はキトサンおよびシクロデキストリンを含んでなる構造を有し、そこに生物学的に活性な分子が配合される。該構造は両成分間の静電気相互作用により結合されているが、それらの間にいかなる共有結合も存在しない。
【0028】
場合により、ナノ粒子は、イオン移動による(ionotropic)ゲル化によるキトサンの架橋を行わせることにより、ナノ粒子の自発的形成に有利となる、イオン架橋剤を更に含んでもよい。
【0029】
“ナノ粒子”という用語は、キトサンおよびシクロデキストリン間の静電気相互作用により形成される構造であり、加えて架橋剤として作用する系へポリアニオン塩が加えられた場合に該構造が架橋されうる、と理解される。異なるナノ粒子成分間において得られる静電気相互作用と、場合により架橋剤の添加によるキトサンの架橋は、特徴的で独立した観察できる物理的存在を生じ、その平均サイズは1μm未満、即ち1〜999nmの平均サイズである。
【0030】
“平均サイズ”とは、水性媒体中において共に動く、キトサンおよびシクロデキストリンにより構成されたナノ粒子の集合体の平均径である、と理解される。これら系の平均サイズは、例えば下記実施例において記載されている当業者に周知の標準操作により測定される。
【0031】
本発明において記載のナノ粒子は、それらが1μm未満の平均粒度を示す、好ましくはそれらが1〜999nm、好ましくは10〜800nmの平均サイズを有することで特徴づけられる。粒子の平均サイズは、シクロデキストリンに対するキトサンの割合、キトサンの脱アセチル化の程度、および粒子形成条件(キトサンの濃度、シクロデキストリンの濃度、もし存在すれば架橋剤の濃度、およびそれらの比率)により主に影響される。
【0032】
他方、ナノ粒子は電荷(Ζ電位により測定される、希釈媒体としてCLKを用いる)を示し、その大きさは上記の変動要素に応じて0mV〜+60mVに変化する。ナノ粒子の正電荷は、生物学的表面、特に負に荷電した粘膜表面とのそれらの相互作用に有利となる上で、重要である。しかしながら、中性電荷の方がその非経口投与により適する。
【0033】
前記の生物学的に活性な分子の放出用に設計されたナノ粒子を含んでなる系は、混合物中において40重量%より多いキトサン含有率を有し、好ましくはその系は少なくとも40%〜95.5重量%を有する。他方、混合物中のシクロデキストリン含有率は60重量%未満であり、好ましくは0.5%〜60重量%未満である。
【0034】
キトサン
キトサンは、キチン(ポリ‐N‐アセチル‐D‐グルコサミン)から誘導される天然ポリマーであり、N‐アセチル基の相当部分を加水分解により除去する。脱アセチル化の程度は好ましくは30〜95%、更に好ましくは50〜95%の範囲内であり、後者はアミノ基の5%〜50%がアセチル化されていることを示す。したがって、それはアミノ多糖構造とカチオン性とを示す。それは下記式(I)のモノマー単位の繰返しを含んでなる:
【化1】

上記においてnは整数であり、加えてm単位においてアミノ基がアセチル化される。n+mの合計が重合の程度、即ちキトサン鎖中モノマー単位の数を表わす。
【0035】
本発明のナノカプセルを生産するために用いられるキトサンは、1〜2000kDa、好ましくは5〜500kDa、更に好ましくは5〜200kDaの分子量を有する。用いられる市販キトサンの例はUPG113、UP CL213、およびUP CL113であり、これらはNovaMatrix,Drammen,Norwayから得られる。
【0036】
ナノ粒子を生産するために用いられるキトサンを含むモノマー単位の数は、5〜5000モノマー、好ましくは60〜600モノマーである。
【0037】
キトサンの代わりに、キトサンの溶解性を増すまたはその接着性を増すために、一以上のヒドロキシル基および/または一以上のアミノ基が修飾されているキトサンという条件において、その誘導体も用いてよい。これらの誘導体としては、特に、Roberts,Chitin Chemistry,Macmillan,1992,166において記載のアセチル化、アルキル化またはスルホン化キトサン、チオール化誘導体がある。好ましくは、誘導体が用いられる場合、それはO‐アルキルエーテル、O‐アシルエステル、トリメチルキトサン、ポリエチレングリコールにより修飾されたキトサンなどから選択される。他の可能な誘導体は、塩類、例えばクエン酸塩、硝酸塩、乳酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩などである。いずれにしても、当業者であれば、最終処方の安定性および商業性に影響を与えることなく、キトサンにより行える修飾を見分けることができる。
【0038】
シクロデキストリン
シクロデキストリンは、α、β、またはγと各々称される、α(1‐4)グリコシド結合によって結ばれた6、7、または8単位のD‐グルコピラノシルからなる構造である。これらオリゴ糖の最も安定な三次元立体配置は、一級および二級ヒドロキシル基が溶媒の方向へ向いた環状体である。この立体配置において、環状体内で形成された空洞は高い疎水性を示し、これはファンデルワールス力と水素橋とが一緒になり、シクロデキストリンと薬物との包接複合体の形成に関与する。
【0039】
シクロデキストリン誘導体とは、グルコースの2、3、および6位におけるヒドロキシル基の一部または全部の水素が他の官能基、例えばジヒドロキシアルキル基、糖残基、ヒドロキシアルキル基、スルホネート基、スルホアルキル基、アルキル基、アルカノイル基、アセチル基、またはベンゾイル基により置換されたシクロデキストリンまたはその混合物である、と理解される。
【0040】
本発明において用いられるシクロデキストリンまたはその誘導体は市販されているか、または公知の方法により合成される。シクロデキストリンおよびその誘導体の例としては、天然シクロデキストリン(アルファ、ベータ、またはガンマ)、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、スルホブチルシクロデキストリン、アミノシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、リン酸シクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、アセチルシクロデキストリン、エチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、カルボキシエチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、6‐O‐α‐マルトシルシクロデキストリン、ブチルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、N,N‐ジエチルアミノエチルシクロデキストリン、tert‐ブチルシリルシクロデキストリン、シリル〔(6‐O‐tert‐ブチルジメチル)‐2,3‐ジ‐O‐アセチル〕シクロデキストリン、サクシニル‐(2‐ヒドロキシプロピル)シクロデキストリン、サクシニルシクロデキストリン、スルホプロピルシクロデキストリン、ポリシクロデキストリンがある。本発明の具体的態様において、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル‐α‐シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン、スルホブチルエチル‐β‐シクロデキストリン、またはそれらの混合物である。それらのいずれも本発明の系において用いられる。
【0041】
平均置換度(DS)は、シクロデキストリンの単位当たりで置換されたヒドロキシルの平均数に関し、モル置換度(MS)はアンヒドログルコースの単位当たりにおけるヒドロキシル基の数に関する。本発明において、用いられるシクロデキストリンは4.2〜7の平均置換度を示すが、その範囲外のDSのシクロデキストリンも適用しうる。
【0042】
本発明のナノ粒子系は、キトサンと、場合によりシクロデキストリンとを含んでなるポリカチオン相と、シクロデキストリン、架橋剤、または双方の組合せにより形成されるポリアニオン相との混合後に、ナノ粒子の自発的沈降により形成されていた、という点において特徴づけられる。両相が水性であり、そのため本発明の系の製造において有機溶媒の使用を回避または最少化しうる、ということは重要である。
【0043】
架橋剤は、キトサンの架橋を行わせることにより、ナノ粒子の自発的形成に有利となる、アニオン塩である。本発明において、架橋剤はポリリン酸塩であり、トリポリリン酸ナトリウム(TPP)の使用が好ましい。
【0044】
シクロデキストリンがアニオン性である場合、それは自分自身でアニオン相を形成でき、その場合はTPPの存在が不要であり、ナノ粒子が負荷電シクロデキストリンと正荷電キトサンとの静電気相互作用により形成されるためである。しかしながら、TPPの添加は、アニオン性シクロデキストリンと一緒になると、ある場合に架橋密度を変えて、ナノ粒子の安定性に有利となることがある。他方、負電荷を帯びていない(いかなる電荷も帯びていないまたは正電荷を帯びた)シクロデキストリンの場合には、キトサンを架橋してナノ粒子の形成を行うために、ポリアニオン相へTPPを配合することが必要である。
【0045】
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子は、生物活性分子と会合しうる高い能力をもつ系である。この会合能は、配合させる分子の種類と、特定の処方パラメーターとに依存する。本発明において、この種類のナノ粒子は、特に疎水性活性分子および低透過性活性分子(疎水性または親水性であってもよい)と会合させることを目的とするものである。したがって、本発明の第二の態様は、生物学的に活性な分子を更に含んでなる、前記のナノ粒子系である。
【0046】
“生物学的に活性な分子”という用語は、病気の治療、治癒、予防、または診断に用いられる、あるいはヒトおよび動物の身体的および精神的満足状態を改善するために用いられる、あらゆる物質に関する。これらの生物学的に活性な分子としては、低分子量薬物から、多糖、タンパク質、ペプチド、および脂質タイプの分子、核酸ベース分子、およびそれらの組合せにまで及ぶ。
【0047】
具体的態様において、生物学的に活性な分子は、FDAの規定によると、クラスII(非透過水溶性)、クラスIII(透過疎水性)および、好ましくはクラスIV(非透過疎水性)に属する薬物である。
【0048】
本発明の系で用いられる生物学的に活性な分子としては、特に次のクラスII分子(ダナゾール、ケトコナゾール、メフェナム酸、ニソルジピン、ニフェジピン、ニカルジピン、フェロジピン、アトバクオン、グリセオフルビン、トログリタゾン、グリベンクラミド、カルバマゼピン)、クラスIII分子(アシクロビル、ネオマイシンB、カプトプリル、エナラプリレート、アレンドロネート、アテノロール、シメチジン、ラニチジン)、クラスIV分子(クロロチアジド、フロセミド、トブラマイシン、セフロキシム、イトラコナゾール、シクロスポリン)がある。
【0049】
好ましい態様において、生物学的に活性な分子はトリクロサンである。他の好ましい態様において、生物学的に活性な分子はフロセミドである。
【0050】
他の具体的態様において、生物学的に活性な分子はペプチド、多糖、またはタンパク質類、または核酸ベース(オリゴヌクレオチド、DNA、siRNA)の高分子である。
【0051】
好ましい態様において、生物学的に活性な分子はインスリンである。他の好ましい態様において、生物学的に活性な分子はヘパリンである。他の好ましい態様において、生物学的に活性な分子はDNAである。
【0052】
本発明の他の態様は、前記のナノ粒子系と抗原とを含んでなるワクチンである。該ナノ粒子から構成される系による抗原の投与は、免疫応答の獲得を可能にする。該ワクチンはタンパク質、多糖を含んでも、またはそれはDNAワクチンでもよい。厳密に言えば、DNAワクチンは、免疫応答を生じる抗原の発現をコードするDNA分子である。
【0053】
生物学的に活性な分子の会合は、活性分子とポリマーとの非共有相互作用、または包接複合体を形成する、シクロデキストリンとの活性分子の会合、およびこの複合体とポリマーマトリックスとの非共有相互作用含む、組合せ工程により生じうる。
【0054】
活性分子‐シクロデキストリン複合化アプローチを用いて、生物学的に活性な分子をキトサンのナノ粒子へ十分に配合するためには、適量の活性分子をシクロデキストリンとの複合化により最初に溶解させ、その後でナノ粒子構造中に十分量の該複合体を封入させることが必要である。
【0055】
本発明の他の目的は、前記のナノ粒子系と、病気を予防、軽減、または治癒しうる生物学的に活性な分子とを含んでなる医薬組成物である。
【0056】
医薬組成物の例としては、経口、口腔、または舌下経路による投与用の液体(ナノ粒子の懸濁液)または固体(顆粒、錠剤、またはカプセルを製造するために用いられる粉末を形成する、凍結乾燥ナノ粒子または微粉細ナノ粒子)組成物、あるいは経皮、眼、鼻、膣、または非経口経路による投与用の液体または半固体形がある。非経口経路の場合、ナノ粒子と、皮膚または粘膜との接触は該粒子に相当の正電荷を付与することにより改善され、そのことがそれらと前記負荷電表面との相互作用に有利となる。非経口経路、更に詳しくは静脈内投与の場合には、これらの系は、それと会合されている薬物または分子のインビボ分布を調節しうる可能性をもたらす。
【0057】
好ましい態様において、医薬組成物は経粘膜経路により投与される。キトサン‐シクロデキストリン混合物の正電荷は、それらと粘膜および負荷電上皮細胞の表面との相互作用により、粘膜表面への薬物の優れた吸収をもたらす。
【0058】
ナノ粒子へ配合される活性成分の割合は、系の全重量に対して40重量%以内である。しかしながら、適切な割合はケース毎において配合される活性成分、それが目的とする適応症および放出効率に依存する。
【0059】
本発明のナノ粒子系は、治療効果を示さないが、化粧用組成物になる化粧上活性な分子も配合しうる。これらの化粧用組成物には、液体組成物(ナノ粒子の懸濁液)または局所投与用の乳濁液がある。ナノ粒子へ配合される化粧上活性な分子の中では、抗にきび剤、抗真菌剤、酸化防止剤、脱臭剤、制汗剤、フケ防止剤、スキンホワイトナー、日焼けローション、UV光吸収剤、酵素、化粧用殺菌剤が特に挙げられる。
【0060】
本発明の他の態様は:
a)キトサンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b)シクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液、場合により架橋剤を含む溶液の調製、および
c)キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に形成される、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合、
または、場合により:
a.キトサンまたはその誘導体およびシクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b.架橋剤の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
c.キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に形成される、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合
を含んでなる、前記のキトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の製造のための方法に関する。
【0061】
特にアセトニトリル、アルコール類、およびアセトンを含めた無毒性溶媒が極性溶媒として用いられてもよい。同様に、用いられる水性媒体は異なる種類の塩を含有してもよい。
【0062】
本方法の変法において、得られるキトサン/シクロデキストリン/架橋剤の質量比は、4/4/1〜4/80/1である。しかしながら、シクロデキストリンまたは架橋剤に対してそれより高い比率によるキトサンの使用も可能であるが、用いられるシクロデキストリンの種類に依存する。つまり、中性シクロデキストリン(例えばHPβCD)の場合、シクロデキストリンの存在はナノ粒子の形成過程に影響を与えないようである。
【0063】
生物学的に活性な分子を含有したキトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に形成されるように、生物学的に活性な分子は工程a)またはb)の溶液へ直接配合してよい。しかしながら、本方法の変法において、該分子は事前の工程で水相または水相と極性溶媒との混合物へ溶解し、粒子を製造する前に工程a)またはb)へ配合してもよい(工程c))。しかしながら、低溶解性薬物の場合は、活性分子がシクロデキストリンと同工程により溶解されると、より高い濃度が得られる。
【0064】
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の製造方法は、該ナノ粒子が凍結乾燥される追加工程も含んでよい。調剤の観点から、凍結乾燥形のナノ粒子を利用しうることは重要であり、これは貯蔵時の安定性を向上させ、取り扱う製品の容量を減らせるからである。キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子は、1〜5重量%の濃度で、グルコース、サッカロース、またはトレハロースのような凍結保護剤の存在下にて凍結乾燥してもよい。事実、本発明のナノ粒子は、凍結乾燥の前後における粒度がさほど影響を受けない、という追加の利点を有する。即ち、ナノ粒子は、その物理的特徴にいかなる変化も受けることなく、凍結乾燥および再懸濁される、という利点を有する。
【0065】
本発明の系は、上皮細胞と相互作用して、細胞においてポリヌクレオチドのトランスフェクションを促進させる上で、高度に効率的な担体であることが証明された。該系に含まれるナノ粒子は、細胞中の遺伝物質、例えば核酸ベース分子、オリゴヌクレオチド、siRNA、またはポリヌクレオチド、好ましくは、該系を遺伝子療法用に適合させうる、対象のタンパク質をコードしたDNAプラスミドを配合してもよい。具体的態様において、DNAプラスミドはpEGFPである。
【0066】
インビトロ研究においては、DNAプラスミドの非常に効率的な放出を観察でき、有意レベルの細胞トランスフェクションを行えた。したがって、本発明の他の態様は、遺伝子治療薬の製造における本発明のナノ粒子系の使用に関する。具体的な態様において、それは治療される患者の細胞において機能的に自ら発現しうる遺伝子を含有したポリヌクレオチドを含んでなる。
【0067】
この点について、本発明の系を用いて治療される病気の一部の例示は、抗VEGFアンチセンス薬による黄斑変性、表皮水疱症、および嚢胞性線維症である。それは短期形質転換工程により創傷の治癒においても用いられる。
【0068】
最後に、それらの高いトランスフェクション能のため、合成または天然ポリヌクレオチドを含有した本発明の系および組成物は、標的細胞、好ましくは新生物または“正常”哺乳動物細胞と、幹細胞または細胞系のトランスフェクションとに用いられる。更に、それは細胞の遺伝子操作に有用な手段である。この点について、本発明は細胞の遺伝子操作における本発明の系の使用にも関する。好ましくは、それはインビトロまたはエクスビボにおいて核酸の放出に用いられる。このような放出は、哺乳動物細胞、細胞系のような真核細胞を含めた標的細胞へ向けられ、こうしてインビトロまたはエクスビボ細胞トランスフェクションまたは形質転換へ至る。したがって、本発明は、本発明の系と細胞洗浄用とに十分な希釈液および/または緩衝液を含んでなる、真核細胞のトランスフェクション用に設計されたキットにも関する。
【0069】
以下、我々は本発明の実例の一部を記載する。しかしながら、それらにより本発明は限定されない。
【実施例】
【0070】
異なる組成および異なるポリマー比率を有する処方物の物理化学的性質が、光子相関分光法(PCS)およびレーザー‐ドップラー風力測定技術を用いて特徴づけられた。ナノ粒子の形態は、透過型電子顕微鏡検査(TEM)および走査型電子顕微鏡検査(SEM)により調べた。製造されたナノ粒子の組成は元素分析技術を用いて調べた。この研究から、ナノ粒子マトリックス中におけるキトサン‐シクロデキストリン混合物の存在を証明した。
【0071】
実施例1
キトサンの種類およびTPPの濃度の関数としてキトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の特徴の評価
ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD)の一定濃度(6.29mM)溶液(3mL)を異なるキトサン(CS)(0.2%w/w)により調製した。これらの溶液を磁気攪拌下において24時間インキュベートし、次いで0.45μmフィルターにより濾過し、4:1のキトサン/トリポリリン酸質量比が常に維持されるように、1.25mg/mLまたは2mg/mLの濃度において異なる容量のトリポリリン酸の添加により架橋させた。ナノ粒子を16000×gで遠心により単離し、水に再懸濁させた。ナノ粒子のサイズは光子相関分光法(PCS)により調べた。用いられたキトサンの分子量および架橋剤として用いられたトリポリリン酸の濃度の関数としてナノ粒子の平均サイズおよび多分散指数に関する結果を表1に示す。
【表1】

【0072】
実施例2
シクロデキストリンの種類および濃度の関数としてキトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の特徴の評価(TPPの濃度=2mg/mL)
キトサン、特に塩酸キトサン(Protasan Cl110)の0.2%(w/w)溶液(3mL)を異なる量のヒドロキシプロピルシクロデキストリン(α‐またはβ‐)(0〜25mM)により調製した。溶液を磁気攪拌下において24時間インキュベートし、次いで0.45μm孔径により濾過し、2mg/mLの濃度において0.75mLのトリポリリン酸の添加により架橋させた。ナノ粒子を16000×gで遠心により単離し、水に再懸濁させた。得られた粒子のサイズおよびその多分散性は光子相関分光法(PCS)により、ゼータ電位はレーザー‐ドップラー風力測定により明らかにし、生産収率は単離されたナノ粒子の試料の乾燥残留物を秤量して求めた。結果を表2に示す。
【0073】
図1(左側像)および図2は、25mMのHPβCDから製造された粒子について、TEMおよびSEMにより分析された形態を各々示しており、球形ナノ粒子の形成を実証する。
【表2】

【0074】
実施例3
シクロデキストリンの種類および濃度の関数として、キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の特徴の評価(TPPの濃度=1.25mg/mL)
キトサン(Protasan Cl110)の0.2%(w/w)溶液(3mL)を異なる量のヒドロキシプロピルシクロデキストリン(α‐またはβ‐)(0〜25mM)により調製した。溶液を磁気攪拌下において24時間インキュベートし、次いで溶液を0.45μm孔径により濾過し、1.25mg/mLの濃度において1.2mLのトリポリリン酸の添加により架橋させた。ナノ粒子を16000×gで遠心により単離し、水に再懸濁させた。得られた粒子のサイズおよびその多分散性は光子相関分光法(PCS)により、ゼータ電位はレーザー‐ドップラー風力測定により明らかにし、生産収率は単離されたナノ粒子の試料の乾燥残留物を秤量して求めた。結果を表3に示す。
【0075】
図1(右側像)は、25mMのHPβCDから製造された粒子について、TEMにより分析された形態を示す。
【表3】

【0076】
実施例2および3において得られた結果は、シクロデキストリンの含有が得られるナノ粒子のサイズに影響を及ぼすが、その値を過度に変えることはないことを示す。Ζ電位に関して、シクロデキストリンの存在下において製造されたナノ粒子は非常に類似した値を呈する。このデータは、シクロデキストリンがナノ粒子の形成過程に干渉せず、それらが必ずしも会合していないことを、我々に推論させる。
他方、シクロデキストリンの濃度が増すと、生産収率は有意に増加する。
【0077】
実施例4
細胞培養物中におけるキトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子の安定性
異成分間の比率が:
CS/SBE‐CD/TPP:(4/3/0.25)
CS/CM‐CD/TPP:(4/4/0.25)
となるように、架橋剤TPPの存在下において磁気攪拌しながら、スルホブチルエーテル‐β‐シクロデキストリン(SBE‐CD)またはカルボキシメチル‐β‐シクロデキストリン(CM‐CD)の水溶液をキトサン(CS)の水溶液と混合することにより、キトサンのナノ粒子を二種類のシクロデキストリンにより調製した。
【0078】
次いで、ナノ粒子を遠心により単離し、次いでそれらをハンクスの塩類溶液(HBSS)中、37℃においてインキュベートした。この緩衝液(無機塩およびグルコースを含有している)は、おそらく細胞培養の実験で最も広く用いられており、細胞を生理学的なpHおよび浸透圧で維持することにより、それらの増殖を促進することなく、それらを生存状態で短期間保存しうるからである。安定性研究は、ナノ粒子のサイズの変化を測定することにより行った。
【0079】
図3において示されているように、キトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子は実験条件下において安定であった。
【0080】
実施例5
人工腸液中におけるキトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子の安定性
キトサンおよびカルボキシメチル‐β‐CDのナノ粒子を、TPPの存在下および非在下において、実施例4において記載されたようにイオン性ゲル化により製造した。これらナノ粒子の安定性は、pH=6.6および37℃において人工腸液中において評価した。この媒体は小腸の条件を再現しているが、鼻粘膜上におけるナノ粒子の安定性も反映しうる。該ナノ粒子は、図4において示されるように、4時間にわたり安定であることが証明され、こうした理由からそれらは異なる投与経路に適した系であるらしい。
【0081】
実施例6
キトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子中インスリンの封入能の評価
キトサンおよびカルボキシメチル‐β‐CDのナノ粒子を、異なる濃度のシクロデキストリンおよびTPPを用いて、一部の場合には、初期水溶液に0.24%濃度のインスリンを配合して、実施例4または5において記載されたように製造した。次いで、ナノ粒子を遠心により単離した。表4は、インスリンにより負荷されたまたは負荷されていない、ナノ粒子の物理化学的特徴を示す。
【表4】

【0082】
観察されるように、負荷ナノ粒子のサイズは430〜635nmであり、そのサイズはインスリンにより負荷されていないナノ粒子の場合より2倍まで大きい。
【0083】
他方、表5はナノ粒子中におけるインスリンの負荷能を示す。インスリンがナノ粒子へ非常に効率的に配合され、85%を超える会合効率を示すことが観察される。
【表5】

【0084】
更に、インスリンにより負荷されたCS/CM‐CD/TPPのナノ粒子の安定性を、実施例5において記載されたように、pH6.8および37℃において人工腸液中において評価した。ナノ粒子のサイズは、初めの2時間以内において、初期サイズと比べて増加しなかった(図5)。
【0085】
実施例7
シクロデキストリンの種類および濃度の関数としてトリクロサンの溶解度、ナノ粒子中におけるその封入効率、および負荷率の評価
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子を実施例2において記載された方法に従い得たが、但し溶液を過飽和させるために十分量の薬物トリクロサンを初期溶液へ加えた。シクロデキストリンポリマー混合物に溶解されなかった薬物は、イオン移動による架橋によるポリマーの架橋前に行われた濾過工程(0.45μm)により捨てた(実施例2参照)。表6は、粒子の形成に用いられた初期溶液でトリクロサンに関して得られる溶解度、ナノ粒子中トリクロサンの封入効率、およびこれらのナノ粒子で得られるトリクロサンの負荷率を示す。トリクロサンは分光光度法により測定した(λ=280nm)。
【0086】
封入効率(EE)は、ナノ粒子の製造工程において加えられた薬物の量に対する、キトサン‐シクロデキストリン系において捕捉された薬物の割合に関する。薬物負荷率は、ナノ粒子の懸濁媒体に溶解されたままで残る非封入薬物の計算から間接的に求められる。この値と理論的薬物含有量との差が、ナノ粒子に負荷された薬物の量であるとみなされる。表においてみられる薬物負荷率は、100mgのナノ粒子に封入された薬物の量に関する割合である。
【表6】

【0087】
実施例8
シクロデキストリンの種類および濃度の関数としてフロセミドの溶解度、ナノ粒子中におけるその封入効率、および負荷率の評価
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子を実施例3において記載された方法に従い製造したが、但し溶液を過飽和させるために十分量の薬物フロセミドを初期溶液へ加えた。シクロデキストリンポリマー混合物に溶解されなかった薬物は、ポリマーを架橋させる前に行われた濾過工程(0.45μm)により捨てた(実施例3参照)。表7は、粒子の形成に用いられた初期溶液でフロセミドに関して得られる溶解度、ナノ粒子中フロセミドの封入効率、およびこれらのナノ粒子で得られるフロセミドの負荷率を示す。フロセミドは分光光度法により測定した(λ=230nm)。封入されたフロセミドの量を求めるために、粒子の上澄中におけるトリクロサンの量(非会合量)をその単離後に調べ、その差を計算した。
【表7】

【0088】
実施例9
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子からの薬物トリクロサンまたはフロセミドの放出
キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子をトリクロサンおよびフロセミドにより製造した。トリクロサンにより処方物を製造するために、実施例7に記載の工程に従い(25mMのHPCDαまたはβにより処方)、フロセミドの処方物の場合は実施例8に記載の方法に従った(25mMのHPCDαまたはβにより処方)。ナノ粒子を単離し、酢酸緩衝液(pH6.0、低イオン強度)に再懸濁した。ナノ粒子をこの媒体中において水平攪拌下(100rpm)、37℃においてインキュベートした。様々な時点(0.5、1.5、および4.5時間)において、試料をインキュベート媒体から採取し、薬物を溶液から単離し(200000×gで30分間の遠心)、実施例7および8に記載の分光光度法により評価した。製造された処方物の薬物放出特性を図6に示す。
【0089】
実施例10
シクロデキストリンの種類および濃度の関数としてトリクロサンの溶解度、ナノ粒子中その封入効率、および負荷率の評価
80%水および20%エタノールの混合液中において、キトサン(Protasan Cl110、0.2%)、HPβCD(0、1.28、および2.56mM)、およびトリクロサンの溶液(3mL)を該溶液を過飽和させる十分量により調製した。これらの溶液を磁気攪拌下において24時間インキュベートし、次いで0.45μmフィルターにより濾過し、1.25mg/mLの濃度において80%水および20%エタノールの混合液に溶解された1.2mLのトリポリリン酸の添加により架橋させた。ナノ粒子を16000×gで遠心により単離し、水に再懸濁させた。得られた粒子のサイズおよびその多分散性を、光子相関分光法(PCS)により明らかにした。封入された薬物の量を酵素キトサナーゼ(Chitosanase-RD,Pias Co.,日本)による再懸濁ナノ粒子の分解により調べ、評価を分光光度法により行った(λ=280nm)。結果を表8に示す。
【表8】

【0090】
実施例11
シクロデキストリンの種類の関数としてプラスミドDNA含有または非含有キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子のサイズおよび多分散性の評価
次の溶液を調製した:(A)メチル‐β‐シクロデキストリン(Me‐β‐CD)(7.4mM)、トリポリリン酸(1.25mg/mL)、および緑色蛍光タンパク質をコードするプラスミド(pGFP)(0.5mg/mL)並びに(B)スルホブチル‐β‐シクロデキストリン(0.18mM)(SB‐β‐CD)および緑色蛍光タンパク質をコードするプラスミド(pGFP)(0.5mg/mL)。両溶液を攪拌下において1時間インキュベートした。0.24mL容量の溶液AまたはBを磁気攪拌下において0.1%(w/w)キトサン1.2mLへ加え、ナノ粒子を形成させた。得られた粒子のサイズおよび多分散性を光子相関分光法(PCS)によって明らかにした。結果を表9に示す。
【表9】

【0091】
DNA含有キトサン‐スルホブチルシクロデキストリンのナノ粒子の処方物を、その単離前にアガロースゲルにより電気泳動に付した。コントロールとして、溶液中のプラスミド、プラスミドを含有しない処方物、およびキトサナーゼ(Chitosanase-RD,Pias Co.,日本)により分解されたプラスミドを含有する処方物を用いた。結果を図7に示す。
【0092】
実施例12
細胞培養物のトランスフェクション効率のインビトロ研究
実施例11に記載のナノ粒子の処方物を製造した。該処方物を遠心(16000×g、30分間)により単離し、低イオン強度pH6.0緩衝液に再懸濁した。1または2μgのDNAを含有したある量の処方物を細胞培養物とインキュベートした。得られた細胞トランスフェクションの結果を図8に示す。蛍光像は、ナノ粒子‐pGFP系によるトランスフェクションの結果として、緑色蛍光タンパク質を発現する細胞コロニーを示す。担体の無いプラスミドは細胞をトランスフェクトしうる能力を示さず、即ち蛍光細胞コロニーが観察されなかった。
【0093】
実施例13
ナノ粒子系の最終組成中におけるシクロデキストリンの種類とキトサン、シクロデキストリン、およびトリポリリン酸間の質量比の効果
キトサン‐HPβCDおよびキトサン‐SBβCDのナノ粒子を実施例3および11の場合のように各々製造した。ナノ粒子を製造するために用いられる初期溶液において、異なる量のシクロデキストリンを用いた。単離後におけるナノ粒子の真の組成(キトサン%、シクロデキストリン%、対イオン%)を元素分析技術により調べた(窒素‐炭素または窒素‐イオウ比を考慮する)。試料の水分を熱重量分析により調べた。
【表10】

【0094】
実施例14
ラットの鼻粘膜を介するキトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子の輸送の研究
薬物の投与用に設計された担体として本発明のナノ粒子系の可能性を評価するために、鼻上皮を通過しうる該ナノ粒子の能力を試験した。この研究は、異なる割合の諸成分を用いて、キトサン/スルホブチルエチル‐β‐シクロデキストリン(CS/SBE‐β‐CD)およびキトサン/カルボキシメチル‐β‐シクロデキストリン(CS/CM‐β‐CD)の二種の特定処方物により行った。キトサンはフルオレセインにより予め標識した(FI‐CS)。標識工程は、Pharm.Res.,2004,21,803-10において記載されているように、カルボジイミドとEDACとの反応により行い、キトサン分子へ蛍光標識を共有結合させた。表11はフルオレセインにより標識された評価ナノ粒子の物理化学的特徴を示す。
【表11】

これらナノ粒子の懸濁物(その安定性は、5%w/wトレハロースの輸送媒体中において予め評価した)を完全覚醒ラットへ鼻内経路により投与した。規定時間が経過した後(特に、投与後10分間)、ラットを頚椎脱臼により安楽死させ、鼻粘膜をパラホルムアルデヒドにより固定し、切り出し、次いで488nmで共焦点顕微鏡(CLSM,Zeiss 501,Jena,Germany)により観察した。観察された像は、これらのナノ粒子が鼻粘膜と有意に相互作用することを示した。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】キトサン‐(ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン)処方物のTEM像。25mMのヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリンおよび2mg/mLのトリポリリン酸(左側像)または1.25mg/mL(右側像)により調製された処方物。
【図2】キトサン‐(ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン)処方物のSEM像。25mMのシクロデキストリンおよび2mg/mLのトリポリリン酸から調製された処方物。
【図3】37℃においてpH6.4のHBSS中におけるキトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子の安定性(平均±S.D.,n=3)。CS:キトサン、SBE‐CD:スルホブチルエーテル‐シクロデキストリン、CM‐CD:カルボキシメチル‐シクロデキストリン、TPP:トリポリリン酸ナトリウム、HBSS:ハンクスの塩類溶液。
【図4】37℃においてpH6.8の人工腸液中におけるキトサンおよびシクロデキストリンのナノ粒子の安定性(平均±S.D.,n=3)。(□)CS/CM‐CD/TPP=4/5.5/0、(●)CS/CM‐CD/TPP=4/4.5/0.25、CS:キトサン、SBE‐CD:スルホブチルエーテル‐β‐シクロデキストリン、CM‐CD:カルボキシメチル‐β‐シクロデキストリン、TPP:トリポリリン酸ナトリウム。
【図5】pH6.8および37℃の人工腸液中におけるキトサンおよびカルボキシメチル‐β‐シクロデキストリンのナノ粒子の安定性(平均±S.D.,n=3)。(□)CS/CM‐CD/TPP=4/3/0.5、(●)CS/CM‐CD/TPP=4/1.5/0.75、CS:キトサン、CM‐CD:カルボキシメチル‐β‐シクロデキストリン、TPP:トリポリリン酸ナトリウム。
【図6】キトサン‐(ヒドロキシプロピル‐シクロデキストリン)処方物からの薬物トリクロサンおよびフロセミドの放出特性。処方物:TRIC HPαCD(トリクロサンとヒドロキシプロピル‐α‐シクロデキストリンとの処方物)、TRIC HPβCD(トリクロサンとヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリンとの処方物)、FUR HPαCD(フロセミドとヒドロキシプロピル‐α‐シクロデキストリンとの処方物)、FUR HPβCD(フロセミドとヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリンとの処方物)(平均±標準偏差、n=3)。
【図7】キトサン‐スルホブチルシクロデキストリンナノ粒子のアガロースゲル。ライン:(1)分子量マーカー、(2)溶液中DNA、(3)無DNAのナノ粒子、(4)DNA含有のナノ粒子、(5)キトサナーゼにより分解されたDNA含有のナノ粒子。インキュベート時間30分間。
【図8】キトサン‐スルホブチルシクロデキストリンのナノ粒子中pGFPプラスミド1μgによりトランスフェクトされた細胞の蛍光像。48時間においてトランスフェクションレベルに到達。
【図9】トレハロース(5%)中におけるフルオレセイン‐シクロデキストリンにより標識されたキトサンのナノ粒子の安定性。(◆)FI‐CS/SBE‐CD4/4、(□)FI‐CS/CM‐CD4/6、FI‐CS、フルオレセイン標識キトサン、SBE‐CD:スルホブチルエーテル‐β‐シクロデキストリン、CM‐CD:カルボキシメチル‐β‐シクロデキストリン、TPP:トリポリリン酸ナトリウム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性分子を放出するためのナノ粒子を含んでなる系であって、
該ナノ粒子が、a)少なくとも40重量%のキトサンまたはその誘導体と、b)60重量%未満のシクロデキストリンまたはその誘導体とを含んでなり、かつ両成分a)およびb)がそれらの間において共有結合せずに混合されていることを特徴とする、系。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、キトサンをナノメートル構造の形態にイオン性架橋しうるアニオン塩を更に含んでなる、請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記キトサンまたはその誘導体の割合が少なくとも40%〜95.5重量%である、請求項1または2に記載の系。
【請求項4】
前記キトサンに対するシクロデキストリンまたはその誘導体の割合が0.5%〜60重量%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の系。
【請求項5】
前記キトサンの重合度、即ちキトサンまたはその誘導体を形成するモノマー単位の数が5〜5000、好ましくは30〜600である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の系。
【請求項6】
前記キトサンまたはその誘導体が1〜2000kDa、好ましくは5〜500kDa、更に好ましくは5〜200kDaの分子量を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の系。
【請求項7】
前記キトサンまたはその誘導体が30%〜95%、好ましくは50%〜95%の脱アセチル化度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の系。
【請求項8】
前記シクロデキストリンが、天然シクロデキストリン(アルファ、ベータ、またはガンマ)、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、スルホブチルシクロデキストリン、アミノシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、リン酸シクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、アセチルシクロデキストリン、エチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、カルボキシエチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、6‐O‐α‐マルトシルシクロデキストリン、ブチルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、N,N‐ジエチルアミノエチルシクロデキストリン、tert‐ブチルシリルシクロデキストリン、シリル〔(6‐O‐tert‐ブチルジメチル)‐2,3‐ジ‐O‐アセチル〕シクロデキストリン、サクシニル‐(2‐ヒドロキシプロピル)シクロデキストリン、サクシニルシクロデキストリン、スルホプロピルシクロデキストリン、ポリシクロデキストリンから選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の系。
【請求項9】
前記シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル‐α‐シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン、スルホブチルエチル‐β‐シクロデキストリン、またはそれらの混合物である、請求項8に記載の系。
【請求項10】
前記シクロデキストリンが4.2〜7の平均置換度を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の系。
【請求項11】
低分子量薬物、多糖、タンパク質、ペプチド、脂質、オリゴヌクレオチド、核酸、およびそれらの組合せにより形成される群から選択される生物学的に活性な分子を更に含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の系。
【請求項12】
前記生物学的に活性な分子が、FDAに採用された生物薬剤学的分類システム(Biopharmaceutical Classification System)の規定によると、クラス2、3、または4の薬物であり、好ましくは、それがクラス4の薬物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の系。
【請求項13】
前記架橋剤がポリリン酸塩、好ましくはトリポリリン酸ナトリウムである、請求項2に記載の系。
【請求項14】
前記ナノ粒子の平均サイズが1〜999nm、好ましくは100〜800nmである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の系。
【請求項15】
前記電荷(Ζ電位)が1mM KClにより測定すると0〜+60mVである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の系。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の系と、病気を予防、軽減、または治癒しうる生物学的に活性な分子とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項17】
経口、口腔、舌下、局所、経皮、眼、鼻、膣、または非経口経路による投与用の、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記生物学的に活性な分子が、多糖、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸ベース分子、およびそれらの組合せから選択される、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記生物学的に活性な分子が、FDAに採用された生物薬剤学的分類システムの規定によると、クラス2、3、または4の薬物である、請求項16〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記生物学的に活性な分子が、トリクロサン、フロセミド、インスリン、ヘパリン、または核酸から構成される分子である、請求項16〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1〜10および13〜15のいずれか一項に記載の系と、化粧上活性な分子とを含んでなる、化粧用組成物。
【請求項22】
前記化粧上活性な分子が、抗にきび剤、抗真菌剤、酸化防止剤、脱臭剤、制汗剤、フケ防止剤、スキンホワイトナー、日焼けローション、UV光吸収剤、酵素、および化粧用殺菌剤から選択される、請求項21に記載の化粧用組成物。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の生物学的に活性な分子の放出用の系と、抗原とを含んでなる、ワクチン。
【請求項24】
前記抗原が、タンパク質、多糖、およびDNA分子から選択される、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
a)キトサンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b)シクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液、場合により架橋剤を含む溶液の調製、および
c)キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に得られる、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合
または、場合により:
a)キトサンまたはその誘導体およびシクロデキストリンまたはその誘導体の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
b)架橋剤の、水性媒体または水と極性溶媒との混合物中溶液の調製、
c)キトサン‐シクロデキストリンのナノ粒子が自発的に得られる、工程a)およびb)の溶液の攪拌による混合
を含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の生物学的に活性な分子の制御的放出用に設計された系を得るための方法。
【請求項26】
前記架橋剤がトリポリリン酸、好ましくはトリポリリン酸ナトリウムである、請求項25に記載のナノ粒子の獲得のための方法。
【請求項27】
前記生物学的に活性な分子が、予め工程a)もしくはb)において、またはa)もしくはb)へ加えられる他の水または有機相において溶解される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記生物学的に活性な分子が、多糖、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸ベース分子、およびそれらの組合せから選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記生物学的に活性な分子が、FDAの生物薬剤学的分類システムによると、クラス2、3、または4の薬物であり、好ましくはそれがクラス4の薬物である、請求項25または28に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的に活性な分子が、トリクロサン、フロセミド、インスリン、ヘパリン、またはDNAプラスミドである、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
遺伝子治療薬の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の系の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−542342(P2008−542342A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514129(P2008−514129)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000322
【国際公開番号】WO2006/128937
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506026140)ウニベルシダーデ デ サンティアゴ デ コンポステラ (6)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DE SANTIAGO DE COMPOSTELA
【住所又は居所原語表記】Edificio CACTUS − CITT − Campus sur, E−15782 Santiago de Compostela (ES).
【Fターム(参考)】