説明

キャブヒンジブラケット

【課題】衝突時のキャブヒンジブラケットとシャシフレームとの結合強度を向上させてキャブヒンジブラケットの重量とコストの低減を達成し、ステアリングギア等他の部品類との干渉を避け、キャブヒンジブラケットの車幅方向の取付位置を調整可能にする。
【解決手段】ヒンジ回転軸受部11aに一体に固着されて該ヒンジ回転軸受部を支持するブラケット本体13と該ブラケット本体を支持するブラケット支持部20とからなり、ブラケット支持部20が前側取付部21と後側取付部22とを備え、シャシフレーム5の前端部付近で1対のシャシフレーム間に架設されるフロントクロスメンバ7の両端部において、フロントクロスメンバ7の前面7aにブラケット支持部20の前側取付部21を当接してボルト結合すると共に、シャシフレーム5の上面に後側取付部22をボルト結合し、シャシフレーム5の前端部5dをフロントクロスメンバ7との接合部より前方に突出させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバタイプの車両におけるキャブヒンジブラケットに関し、低重量及び低コストで取付強度を向上できると共に、ステアリングギア等他部品との取り付け位置の干渉を回避可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、キャブオーバタイプの車両01は、キャブ02の床下にエンジン(図示略)を収めたもので、エンジン回りの点検・整備をし易くするため、キャブ02がキャブチルト装置を構成するヒンジ機構03の回転軸03bを回転中心として、2点鎖線で示すように、前方に回動(傾動)して開く所謂キャブチルトが一般的である。
【0003】
図6及び図7に従来のキャブヒンジ機構03の構成を示す。図6及び図7において、キャブ02は、キャブメインシル04の前端部をキャブヒンジ機構03により、後側取付部をフック(図示略)によって夫々シャシフレーム05に固定されている。そして、キャブヒンジブラケット03aの回転軸03bを支点として、トーションバー06のばね力により人力でチルトできるようになっている。
【0004】
キャブヒンジ機構03は、キャブヒンジブラケット03aがシャシフレーム05に載置されてロワーキャブヒンジブラケット03cにより固定され、キャブヒンジブラケット03aの上部がアッパキャブヒンジブラケット03dを介してキャブメインシル04に固定されている。
【0005】
キャブヒンジ機構03は、キャブヒンジブラケット03aがシャシフレーム05の前端05aよりも後方に位置して配置され、衝突時に衝突荷重を受けないようにして締結要素を保護し、シャシフレーム05とキャブ02との結合を保持して乗員に大きなダメージを与えないようになっている。
【0006】
特許文献1(特開平11−157469号公報)には、キャブヒンジブラケットの構成の一例が開示されている。この構成は、キャブヒンジブラケット本体をシャシフレームに固定するブラケット支持部がシャシフレームの前面に当接して固定されるものである。そして、前記ブラケット支持部の構造によって、キャブとシャシフレームとを強固に連結固定したものである。
【0007】
また、特許文献2(特許第2959606号公報)に開示されたキャブヒンジブラケットの構成を図7に基づいて説明する。図7において、キャブヒンジ機構010を構成するキャブヒンジブラケット011は、シャシフレーム05の前端05aに取り付けられる。そして、円筒形のブッシュ(緩衝ゴム)012を収納する円筒状のヒンジ回転軸受部011aと、ヒンジ回転軸受部011aから後方に張り出してシャシフレーム05の上面05bに載置固定される上部取付部011bと、ヒンジ回転軸受部011aから下方に張り出してシャシフレーム05の前端05aに固定される下部取付部011cが設けられている。
【0008】
ヒンジの回動中心としての回転軸016がブッシュ012の軸孔のカラー013を回転自在に貫通している。下部取付部011cの略中央にはトーションバー取付部011fが設けられ、トーションバー取付部011fの前部は、ヒンジ回転軸受部011aの前端から僅かな距離dだけ車両前方側に突出されて、突出部011iを形成している。ヒンジ回転軸受部011aには、円筒状のブッシュ(緩衝ゴム)012が加硫成形により設けられ、軸孔にカラー013が設けられている。なお、図7中、左右突出部011i間に、左側トーションバー017及び右側トーションバー018が架設されている。
【0009】
シャシフレーム05の前端05aは、クロスメンバ07の断面コ字状をなす隅部07aに溶着固定されている。キャブヒンジブラケット011は、上部取付部011bの取付面がシャシフレーム05の前端05aに載置され、下部取付部011cの取付面がクロスメンバ07の隅部07aの前面07bに当接され、夫々ボルト014及びナット015により固定されている。
【0010】
【特許文献1】特開平11−157469号公報
【特許文献2】特許第2959606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された構成は、キャブとシャシフレームとを強固に連結固定する構造であるので、衝突時の衝撃力をキャブとシャシフレームの双方で受けるようにして、キャブのみが変形するのを防止できる。しかし、その分シャシフレームに大きな衝撃力が加わるため、シャシフレームの変形が激しくなるおそれがある。また、キャブヒンジブラケット本体をシャシフレームに固定するブラケット支持部がシャシフレームの前面に配置されるため、ブラケット支持部の強度を増大させる必要があり、そのため、キャブヒンジブラケットの重量が大となり、高コストとなる。
【0012】
また、図7に示す特許文献2に開示された構成では、前面衝突によりキャブヒンジブラケット011に衝突荷重Fが加わった場合、突出部011iがヒンジ回転軸受部011aよりも距離dだけ突出しているため、突出部011iが衝突荷重入力部となる。そして、突出部011iに入力した衝突荷重Fは、下部取付部011c及びクロスメンバ07の隅部07aを介してシャシフレーム05に伝達される。
【0013】
この場合、衝突荷重Fによりヒンジ回転軸受部011aに発生する応力荷重は少ないが、クロスメンバ07の隅部07a及びシャシフレーム05に大きな荷重が加わる。これによって、クロスメンバ07の隅部07a及びシャシフレーム05の先端部が後方に崩れ、隅部07aと共に、隅部07aと下部取付部011cとの面接合状態がくずれて、ボルト014には引張力が負荷されやすくなる。そして、ボルト014の結合力を引張力が上回ると、下部取付部011cと隅部07aとの結合が破壊されるおそれがある。
【0014】
また、キャブヒンジブラケット03aが配置される車両前後方向位置には、シャシフレーム05の外側にステアリングギアボックスなど他の部品類が装着される。図8は、図6に図示された従来のキャブヒンジ機構03を正面から視た図である。図8において、キャブヒンジブラケット03aが配置される車両前後方向位置には、シャシフレーム05の外側にステアリングギアボックス021が取り付けられる。ステアリングギアボックス021にはピットマンアーム024が接続され、ピットマンアーム024にタイロッド023が接続されている。従来のキャブヒンジブラケット03aは、ロワーキャブヒンジブラケット03cを介してシャシフレーム05の上面と側面にボルト結合される。
【0015】
しかし、シャシフレーム05の外側にはステアリングギアボックス021が配置されるため、シャシフレーム05の外側面とボルト結合することができない。そのため、シャシフレーム05の内側に板状の内フレーム022をシャシフレーム05に溶着し、該内フレーム022にロワーキャブヒンジブラケット03cをボルト結合していた。これによって、ロワーキャブヒンジブラケット03cの取付部の構成が複雑になり、重量が増大し、高コストとなっていた。
【0016】
また、左右トーションバー06の反力にアンバランスが生じることで、車体に捩じれ力が生じる場合がある。これによって、車体が車体前後方向軸を中心に左右に10〜20mmの微小な傾きが生じる場合がある。この傾きをキャブヒンジブラケット03aの車幅方向位置を変更することにより調整しようとしても、図6(又は図8)に示すロワーキャブヒンジブラケット03cでは、ロワーキャブヒンジブラケット03cがシャシフレーム05の側面に固定されているため、車幅方向位置の調整ができない。
【0017】
そのため、車体の左右方向の傾きに対しては、キャブヒンジブラケット03aのシャシフレーム05への組み付け精度を高精度にする必要がある。しかし、これによって、キャブヒンジブラケット03aの組み付けコストがさらに増大するという問題がある。
【0018】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、キャブヒンジブラケットの重量増大及びコスト増大を招くことなく、衝突時のキャブヒンジブラケットとシャシフレームとの結合強度を向上させることを目的とする。
また、キャブヒンジブラケットとシャシフレームとの取付部の構成を簡素化することにより、キャブヒンジブラケットとステアリングギア等他の部品類との取付け時の干渉をなくすことができるようにすることを目的とする。
また、キャブヒンジブラケットの車幅方向の取付位置を調整可能にすることにより、左右トーションバーの反力のアンバランスに起因した車体の傾きをキャブヒンジブラケットの車体幅方向位置の調整で解決可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる目的を達成するため、本発明のキャブヒンジブラケットは、
シャシフレームに搭載されたキャブを前へ傾動し得るように構成したキャブチルト装置のキャブヒンジブラケットにおいて、
ヒンジ回転軸受部に一体に固着されて該ヒンジ回転軸受部を支持するブラケット本体と該ブラケット本体を支持するブラケット支持部とからなり、
ブラケット支持部が上下方向に配置される前側取付部と該前側取付部より後方で横方向に配置される後側取付部とを備え、
シャシフレームの前端部付近で1対のシャシフレーム間に架設されるフロントクロスメンバの両端部において、フロントクロスメンバの前面に前記前側取付部を当接してボルト結合すると共に、シャシフレームの上面に前記後側取付部を当接してボルト結合し、
シャシフレームの前端部をフロントクロスメンバとの接合部より前方に突出させてなるものである。
【0020】
本発明では、ブラケット支持部の前側取付部をフロントクロスメンバの前面に固定すると共に、ブラケット支持部の後側取付部をシャシフレームの上面に固定し、かつシャシフレームの前端部をフロントクロスメンバとの接合部より前方に突出させた構成としている。かかる構成により、衝突時の衝突荷重を、まずシャシフレーム前端部で受け、ブラケット支持部の前側取付部を取り付けたフロントクロスメンバには大きな荷重が負荷されない。従って、衝突荷重によるフロントクロスメンバの大きな変形を避けることができる。
【0021】
その結果、フロントクロスメンバと前側取付部との面接触状態が保持されて、前側取付部の取付ボルトにはせん断力が作用するようになるため、ボルト締結の強度上有利である。
また、ブラケット支持部の後側取付部を固定したシャシフレームの上面は、後方に位置しているため、シャシフレームの破壊が該後側取付部にまで及ばない。従って、衝突後も該後側取付部の結合部の結合状態がそのまま維持される。
【0022】
また、衝突時にはキャブにも衝突荷重が付加され、キャブが後方に変形することにより,キャブヒンジブラケットには上向きの力が加わる。本発明では、ブラケット支持部の前側取付部を上下方向に配置すると共に、シャシフレーム前端部から後方に位置されたフロントクロスメンバの上下方向を向く前面に当接してボルト結合する構成としているので、前記のように、衝突時に、該前側取付部とフロントクロスメンバの前面とを結合するボルトには、上向きのせん断力が働き、引張力は働かない。従って、該ボルトによる結合強度を大きくすることができるので、ブラケット支持部の重量を軽減し、低コストとすることができる。
【0023】
また、ブラケット支持部をクロスメンバの前面及びシャシフレームの上面に取り付けているので、ステアリングギアボックス等他の部品類との干渉が起こらず、従って、該干渉を避けるための構造変更を必要としない。そのため、ブラケット支持部の取付部の重量増大やコスト増大を招かない。
さらに、ブラケット支持部をクロスメンバの前面及びシャシフレームの上面に取り付けているので、キャブヒンジブラケットの車幅方向取付位置が、従来のようにシャシフレームの側面位置によって規制されないため、キャブヒンジブラケットの車幅方向取付位置の調整が容易になる。
【0024】
本発明において、好ましくは、フロントクロスメンバの横断面を内部が中空で四角状をなす閉断面とすれば、フロントクロスメンバの強度を増大させることができる。衝突荷重に対するキャブヒンジブラケットの取付け強度をさらに増大させることができる。
【0025】
また、本発明において、ブラケット支持部の前側取付部を上下に配置した2個のボルトでフロントクロスメンバの前面に結合すると共に、ブラケット支持部の後側取付部をシャシフレームの上面に1個のボルトで結合するとよい。これによって、衝突荷重の大きな部分を負担するブラケット支持部の前側取付部の取付け強度を増大させることができる。図6に示す従来のブラケット支持部は、シャシフレーム05の上面及び側面で夫々2点ずつボルト結合する4点支持であったが、本発明では、前記構成により、3点支持でよく、ブラケット支持部の構成を簡素化することができる。これによって、キャブヒンジブラケットの重量及びコストを低減できる。
【0026】
また、本発明において、ボルト結合部のボルトとボルト孔の間で車体幅方向に隙間を設けて、ブラケット支持部の取付位置を車体幅方向に調節可能にするとよい。あるいは、さらに、該ボルト孔を車体幅方向に長く形成するとよい。これによって、ボルトとの間の車体幅方向調整代を大きく取ることができるので、キャブヒンジブラケットの車体幅方向位置の調整が容易になる。これによって、左右トーションバーの反力のアンバランスによる車体の車体幅方向軸線を中心とした傾きを解消するのが容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のキャブヒンジブラケットによれば、シャシフレームに搭載されたキャブを前へ傾動し得るように構成したキャブチルト装置のキャブヒンジブラケットにおいて、ヒンジ回転軸受部に一体に固着されて該ヒンジ回転軸受部を支持するブラケット本体と該ブラケット本体を支持するブラケット支持部とからなり、ブラケット支持部が上下方向に配置される前側取付部と該前側取付部より後方で横方向に配置される後側取付部とを備え、シャシフレームの前端部付近で1対のシャシフレーム間に架設されるフロントクロスメンバの両端部において、フロントクロスメンバの前面に前記前側取付部を当接してボルト結合すると共に、シャシフレームの上面に前記後側取付部を当接してボルト結合し、シャシフレームの前端部をフロントクロスメンバとの接合部より前方に突出させてなることにより、衝突時にクロスメンバの大きな変形を防止し、これによって、衝突荷重の大きな部分を負担するブラケット支持部の前側取付部をフロントクロスメンバの前面結合するボルトに引張力を作用させず、せん断力のみを作用させることができるので、該ボルトによる結合力を増大させることができる。
【0028】
また、ブラケット支持部の後側取付部を後方側シャシフレームの上面にボルト結合するようにしているので、該ボルト結合部には衝突時のシャシフレームの破壊が及ばない。これによって、該ボルト結合部の結合状態を維持することができ、衝突時の荷重を前側取付部とフロントクロスメンバの前面で受けることができ、強度上有利である。
【0029】
また、キャブヒンジブラケットの取付部と他の部品類との干渉が起こらないので、キャブヒンジブラケットの取付部の構成が複雑になることはない。さらに、キャブヒンジブラケットの車体幅方向位置の調整が容易になるので、左右トーションバーの反力のアンバランスに起因した車体の車両前後方向軸を中心とした傾きを容易に解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0031】
本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、シャシフレーム前端部のキャブヒンジ機構10を示す斜視図である。図1において、コ字状の断面をなす一対のシャシフレーム5,5が車体前後方向に配設され、車体前方向(矢印a方向)のシャシフレーム端部近傍でフロントクロスメンバ7がシャシフレーム5,5間に架設されている。フロントクロスメンバ7のシャシフレーム5,5側両端部には、キャブヒンジブラケット11,11が取り付けられている。
【0032】
キャブヒンジブラケット11,11の上部にはヒンジ回転軸受部11aが固設されて、キャブヒンジ機構10を構成している。ヒンジ回転軸受部11aでは、ヒンジの回動中心としての回転軸16がブッシュ(緩衝ゴム)12の軸孔を回転自在に貫通している。回転軸16には図示しないキャブの下面のキャブフレームの前端を支持する1対のトーションバーレバー17,17が装着されている。また、フロントクロスメンバ7の後方には、第1クロスメンバ18がフロントクロスメンバ7と平行にシャシフレーム5,5間に架設されている。
【0033】
次に、ヒンジ回転軸受部11aを支持するキャブヒンジブラケット11の構成を図2及び図3に基づいて説明する。図2及び図3は、夫々異なる方向からキャブヒンジブラケット11を視た斜視図である。図中、矢印aは車体の前方方向を示し、矢印bは車体の幅方向であって車体の外側方向を示す。なお、図2及び図3において、回転軸16及び回転軸16とヒンジ回転軸受部11aとの間に介装されるブッシュ(緩衝ゴム)12は省略されている。
【0034】
図2及び図3において、フロントクロスメンバ7の後方に設けられた第1クロスメンバ18は、シャシフレーム5との接合部で矢印a方向に曲げられ、シャシフレーム5の内側面に重なった状態でシャシフレーム5の前端まで延設されている。シャシフレーム5は、キャブヒンジブラケット11の取付部より後方では、ウェブ部5aと上下フランジ部5b及び5cとからなるコ字状断面をなしているが、キャブヒンジブラケット11の固定部より前側では、ウェブ部5aと下側フランジ部5cとからなるL字状断面に形成されている。
【0035】
第1クロスメンバ18も、シャシフレーム5間ではコ字状断面をなすが、該延設部18aでは、L字状断面となっている。そして、延設部18aは、シャシフレーム5の内側に重なった状態で接合されている。
【0036】
フロントクロスメンバ7は、第1クロスメンバ18を介してシャシフレーム5に接合されている。フロントクロスメンバ7は、内部が中空の四角形状断面を有し、その前面7a及び後ろ面7cは上下方向に配置され、フロントクロスメンバ7の上面7b及び図示しない底面は水平方向に配置されている。なお、フロントクロスメンバ7は、シャシフレーム5の前端部よりやや後方に接合され、シャシフレーム5は、フロントクロスメンバ7の前方に突出部5dを形成している。
【0037】
キャブヒンジブラケット11は、ヒンジ回転軸受部11aに固着されたブラケット本体13と、ヒンジ回転軸受部11a及びブラケット本体13に固着され、これらを支持するブラケット支持部20とで構成されている。ブラケット支持部20は、上下方向に延設された板状の前側取付部21と、ブラケット本体20及び前側取付部21に対して水平方向に固着された板状の後側取付部22とを備えている。そして、前側取付部21はフロントクロスメンバ7の前面7aにボルト23及び24で結合され、後側取付部22はシャシフレーム5の上面5bにボルト25で結合されている。
【0038】
なお、図3に示すように、ブラケット本体13には補強板26が溶着され、補強板26は上下方向に配置されると共に、補強板26の一部を形成する曲折された結合部25aが後側取付部22と共にシャシフレーム5の上面5bにボルト25で結合されている。補強板26は、車体前後方向に向けられており、これによって、衝突時の車体前方からの衝突荷重に対するブラケット本体20の強度を向上させることができる。
【0039】
かかる構成の本実施形態において、衝突時、衝突荷重Fは、まずキャブに加わると共に、シャシフレーム5の突出部5dに加わる。フロントクロスメンバ7は、該突出部5dよりも後方に配置されているので、衝突荷重は直接的にはフロントクロスメンバ7に付加されない。従って、衝突荷重によりフロントクロスメンバ7が大きく変形することはない。
【0040】
衝突荷重はシャシフレーム5の上方に配置されたキャブにも付加されるため、キャブに付加された衝突荷重は、キャブに接続された回転軸16を介してヒンジ回転軸受部11aに付加される。そして、ヒンジ回転軸受部11aには斜め上方でかつ後ろ向きの衝突荷重Fがキャブ側から加わる。これによって、キャブヒンジブラケット11の前側取付部21には上方へ向うせん断力が付加される。しかし、フロントクロスメンバ7の潰れや大きな変形はない。
【0041】
その結果、フロントクロスメンバ7と前側取付部21との面接触状態が保持されて、前側取付部21の取付ボルトにはせん断力が作用し、引張力が付加されないため、ボルト締結の強度上有利である。前側取付部21には、引張力は付加されない。従って、ボルト24及び25は、せん断力に対して大きな取付け強度を発揮する。
【0042】
また、後側取付部22は、キャブヒンジブラケット11より後方に配置されたシャシフレーム5の上面5bにボルト25で結合されており、衝突時においてもシャシフレーム5がここまで破壊されないため、ボルト25による結合状態を保持することができる。従って、前側取付部21及び後側取付部22により、衝突時におけるキャブヒンジブラケット11のフロントクロスメンバ7及びシャシフレーム5に対する結合状態を維持させることができる。
【0043】
図4は本実施形態に係るキャブヒンジ機構10の正面図である。図4に示すように、キャブヒンジブラケット11の取付位置は、シャシフレーム5の外側に配置されるステアリングギアボックス021と干渉を生じる位置であるが、本実施形態では、シャシフレーム5の内側に配置されたフロントクロスメンバ7の前面7aと、シャシフレーム5の上面5bにキャブヒンジブラケット11の取付部を有するため、ステアリングギアボックス021との干渉を生じない。従って、ステアリングギアボックス021との干渉を避けるために、ブラケット支持部20の構造を複雑化することがない。
【0044】
さらに、前側取付部21をフロントクロスメンバ7の前面7aに結合し、後側取付部22をシャシフレーム5の上面5bに結合しているので、ボルト結合部のボルトとボルト孔との隙間代により、キャブヒンジブラケット11の車体幅方向位置を調整することができる。従って、左右トーションバーの反力のアンバランスにより生じる車体の傾きをキャブヒンジブラケット11の車体幅方向位置を調整することにより、容易に解消することができる。
【0045】
本実施形態において、好ましくは、前側取付部21又はフロントクロスメンバ7の上面5bに穿設されるボルト孔、及び後側取付部22又はシャシフレーム5の上面5bに穿設されるボルト孔の車体幅方向長さを長くすることによって、キャブヒンジブラケット11の車体幅方向位置の調整代を大きく取るようにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、キャブオーバタイプの車両におけるキャブヒンジブラケットの車体に対する結合強度を向上させることにより、キャブヒンジブラケットの重量及びコストを低減し、構成の簡素化を達成できると共に、ステアリングギアボックス等他の部品類との干渉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブヒンジ機構の斜視図である。
【図2】前記実施形態に係るキャブヒンジブラケットの斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るキャブヒンジブラケットを別な方向から視た斜視図である。
【図4】前記実施形態に係るキャブヒンジ機構の正面図である。
【図5】キャブオーバタイプの車両の側面視説明図である。
【図6】従来のキャブヒンジ機構の側面図である。
【図7】従来の別な構成のキャブヒンジ機構の側面図である。
【図8】従来のキャブヒンジ機構の正面図である。
【符号の説明】
【0048】
02 キャブ
021 ステアリングギアボックス
5 シャシフレーム
5a シャシフレーム突出部
5b シャシフレーム上面
7 フロントクロスメンバ
7a フロントクロスメンバ前面
10 キャブヒンジ機構
11 キャブヒンジブラケット
11a ヒンジ回転軸受部
13 ブラケット本体
20 ブラケット支持部
21 前側取付部
22 後側取付部
23,24,25 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシフレームに搭載されたキャブを前へ傾動し得るように構成したキャブチルト装置のキャブヒンジブラケットにおいて、
ヒンジ回転軸受部に一体に固着されて該ヒンジ回転軸受部を支持するブラケット本体と該ブラケット本体を支持するブラケット支持部とからなり、
ブラケット支持部が上下方向に配置される前側取付部と該前側取付部より後方で横方向に配置される後側取付部とを備え、
シャシフレームの前端部付近で1対のシャシフレーム間に架設されるフロントクロスメンバの両端部において、フロントクロスメンバの前面に前記前側取付部を当接してボルト結合すると共に、シャシフレームの上面に前記後側取付部を当接してボルト結合し、
シャシフレームの前端部をフロントクロスメンバとの接合部より前方に突出させてなることを特徴とするキャブヒンジブラケット。
【請求項2】
フロントクロスメンバの横断面を内部が中空で四角形状をなす閉断面としたことを特徴とする請求項1に記載のキャブヒンジブラケット。
【請求項3】
キャブヒンジブラケットと車体前後方向同一位置であってシャシフレームの車幅方向外側に、シャシフレームの外側面に隣接してステアリングギアボックスを配置したことを特徴とする請求項1に記載のキャブヒンジブラケット。
【請求項4】
ブラケット支持部の前記前側取付部を上下に配置した2個のボルトでフロントクロスメンバの前面に結合すると共に、ブラケット支持部の前記後側取付部をフロントクロスメンバの上面に1個のボルトで結合してなることを特徴とする請求項1に記載のキャブヒンジブラケット。
【請求項5】
前記ボルト結合部のボルトとボルト孔の間で車体幅方向に隙間を設けて、ブラケット支持部の取付位置を車体幅方向に調節可能にしたことを特徴とする請求項1に記載のキャブヒンジブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−154781(P2009−154781A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337031(P2007−337031)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】