説明

キャリア周波数除去機能付きAD変換回路

【課題】コンパクトな構成でキャリア周波数成分を十分に除去する。
【解決手段】第1信号(S1)とフィードバック信号(S2)を比較する電圧比較器(11)およびフィードバック信号(S2)を出力する電圧フィードバック回路(12)を含むADコンバータ(1)と、フィードバック信号(S2)を入力とする1入力N出力のデマルチプレクサ(2)と、デマルチプレクサ(2)のN個の出力信号を積分するN個の積分器(3)と、N個の積分器(3)の出力信号をそれぞれ入力とするN入力1出力のマルチプレクサ(4)と、アナログ信号Aiとマルチプレクサ(4)の出力信号の差分を出力する減算器(5)と、減算器(5)の出力信号を増幅し第1信号(S1)とする増幅器(6)と、マルチプレクサ(2)の入力切替およびデマルチプレクサ(4)の出力切替をキャリア波に同期して循環的に行わせる切替制御回路(7)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア周波数除去機能付きAD変換回路に関し、更に詳しくは、コンパクトで低価格な構成でキャリア周波数成分を十分に除去できるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続波ドプラモード時の超音波受信信号をサンプリングしてベースバンド帯域信号とし、そのベースバンド帯域信号から高域通過フィルタによってキャリア周波数成分を除去し、そのキャリア周波数成分を除去した信号をADコンバータでデジタル値に変換する超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−57525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の超音波診断装置では、キャリア周波数成分を除去してからADコンバータでデジタル値に変換するため、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが例えば12ビットのADコンバータで得られるようになり、コンパクトで低価格な構成になる。
しかし、高域通過フィルタによってキャリア周波数成分を除去する方法では、キャリア周波数成分を十分に除去できない問題点がある。
そこで、本発明の目的は、コンパクトで低価格な構成でキャリア周波数成分を十分に除去できるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、第1信号とフィードバック信号を比較する電圧比較器および前記フィードバック信号を出力する電圧フィードバック回路を含むADコンバータと、前記フィードバック信号を入力とする1入力N出力のデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサのN個の出力信号を積分するN個の積分器と、前記N個の積分器の出力信号をそれぞれ入力とするN入力1出力のマルチプレクサと、信号波がキャリア波に重畳されたアナログ信号と前記マルチプレクサの出力信号の差分を出力する減算器と、前記減算器の出力信号を増幅し前記第1信号とする増幅器と、前記マルチプレクサの入力切替および前記デマルチプレクサの出力切替を前記キャリア波に同期して循環的に行わせる切替制御回路とを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第1の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、入力されたアナログ信号からキャリア波を再生し、それをアナログ信号から除去してADコンバータでデジタル値に変換するため、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが例えば12ビット程度または14ビット程度のADコンバータで得られるようになり、コンパクトで低価格な構成になる。そして、歪んだ波形のキャリア波でも十分に除去することが出来るようになる。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータがΔΣ型ADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第2の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ΔΣ型ADコンバータ内のフィードバック信号を利用することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の時定数がキャリア周期より大きいことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第3の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、キャリア波の各位相の値を各積分器で再生することが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の数Nが、前記ADコンバータのサンプリング周波数を前記キャリア周波数で除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第4の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ADコンバータの動作にデマルチプレクサの動作およびマルチプレクサの動作を同期させることが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、前記第1から前記第4のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路の切替周期が、前記積分器の数Nでキャリア周期を除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第5の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、キャリア波の各位相の値を各積分器で再生することが出来る。
【0009】
第6の観点では、本発明は、前記第1から前記第5のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路は、循環的に切り替える前記積分器を選択可能であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第6の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、異なるキャリア周波数に合わせて、使用する積分器を選択することが出来る。
【0010】
第7の観点では、本発明は、前記第1から前記第6のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータが12ビットまたは14ビットのADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第7の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが得ることが出来る。
【0011】
第8の観点では、本発明は、前記第1から前記第7のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記アナログ信号を前記第1信号とするか前記減算器の出力信号を前記第1信号とするかを切り替えるモード切替スイッチを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第8の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、パルスドプラモードと連続波ドプラモードの両方でADコンバータを共用することが出来る。
【0012】
第9の観点では、本発明は、信号波がキャリア波に重畳されたアナログ信号と比較信号を比較する電圧比較器およびフィードバック信号を出力する電圧フィードバック回路を含むADコンバータと、前記電圧フィードバック回路への入力信号を入力とする1入力N出力のデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサのN個の出力信号を積分するN個の積分器と、前記N個の積分器の出力信号をそれぞれ入力とするN入力1出力のマルチプレクサと、前記フィードバック信号と前記マルチプレクサの出力信号の差分を前記比較信号として出力する減算器と、前記マルチプレクサの入力切替および前記デマルチプレクサの出力切替を前記キャリア波に同期して循環的に行わせる切替制御回路とを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第9の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、入力されたアナログ信号からキャリア波を再生し、それをアナログ信号から除去してADコンバータでデジタル値に変換するため、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが例えば12ビット程度または14ビット程度のADコンバータで得られるようになり、コンパクトで低価格な構成になる。そして、歪んだ波形のキャリア波でも十分に除去することが出来るようになる。
【0013】
第10の観点では、本発明は、前記第9の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータがΔΣ型ADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第10の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ΔΣ型ADコンバータ内のフィードバック信号を利用することが出来る。
【0014】
第11の観点では、本発明は、前記第9または前記第10の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記電圧フィードバック回路に減衰器を含むことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第11の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、パルスドプラモード時と連続波ドプラモード時のフィードバック信号のレベル調整や減算器で減算する2信号のレベル合わせを行うことが出来る。
【0015】
第12の観点では、本発明は、前記第9から前記第11のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の時定数がキャリア周期より大きいことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第12の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、キャリア波の各位相の値を各積分器で再生することが出来る。
【0016】
第13の観点では、本発明は、前記第9から前記第12のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の数Nが、前記ADコンバータのサンプリング周波数を前記キャリア周波数で除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第13の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ADコンバータの動作にデマルチプレクサの動作およびマルチプレクサの動作を同期させることが出来る。
【0017】
第14の観点では、本発明は、前記第9から前記第13のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路の切替周期が、前記積分器の数Nでキャリア周期を除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第14の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、キャリア波の各位相の値を各積分器で再生することが出来る。
【0018】
第15の観点では、本発明は、前記第9から前記第14のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路は、循環的に切り替える前記積分器を選択可能であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第15の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、異なるキャリア周波数に合わせて、使用する積分器を選択することが出来る。
【0019】
第16の観点では、本発明は、前記第9から前記第15のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータが12ビットまたは14ビットのADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第16の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが得ることが出来る。
【0020】
第17の観点では、本発明は、前記第9から前記第16のいずれかの観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記減算器に前記積分器の出力信号を入力するか「0」を入力するかを切り替えるモード切替手段を具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を提供する。
上記第17の観点によるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路では、パルスドプラモードと連続波ドプラモードの両方でADコンバータを共用することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路によれば、コンパクトで低価格な構成でキャリア周波数成分を十分に除去することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1に係るキャリア周波数除去機能付きAD変換回路100を示すブロック図である。
このキャリア周波数除去機能付きAD変換回路100は、第1信号S1とフィードバック信号S2を比較する電圧比較器11およびフィードバック信号S2を出力する電圧フィードバック回路12を含むADコンバータ1と、フィードバック信号S2を入力とする1入力M出力のデマルチプレクサ2と、デマルチプレクサ2のM個の出力信号を積分するM個の低速応答積分器3と、M個の低速応答積分器3の出力信号をそれぞれ入力とするM入力1出力のマルチプレクサ4と、信号波Wtがキャリア波Wcに重畳されたアナログ信号Aiとマルチプレクサ4の出力信号の差分を出力する減算器5と、減算器5の出力信号を増幅する増幅器6と、デマルチプレクサ2の出力切替およびマルチプレクサ4の入力切替をキャリア波Wcに同期して循環的に行わせる切替制御回路7と、アナログ信号Aiを第1信号S1とするか減算器5の出力信号を第1信号S1とするかを切り替えるモード切替スイッチ8とを具備している。
【0024】
ADコンバータ1は、12ビットまたは14ビットのΔΣ型ADコンバータである。ブロック図中のF(S)、G(S)はフィルタである。
電圧フィードバック回路12は、高速応答積分器である。
【0025】
低速応答積分器3の時定数は、キャリア周期Tcよりも大きな値とし、例えばキャリア周期Tcの10倍とする。
【0026】
デマルチプレクサ2の出力数、低速応答積分器3の数およびマルチプレクサ4の入力数Mは、例えば20個である。一方、切替制御回路7が循環的に切り替える低速応答積分器3を選択可能である。つまり、20個の低速応答積分器3を備えているが、実際に使用する低速応答積分器3の数Nは、ADコンバータ1のサンプリング周波数fsをキャリア周波数fcで割った値とする。
例えばfs=40MHz,fc=2MHzならば、N=20であるから、20個の低速応答積分器3を全て使用する。一方、fs=40MHz,fc=4MHzならば、N=10であるから、20個の低速応答積分器3のうちの半分だけを使用する。
【0027】
増幅器6は、アナログ信号Aiからマルチプレクサ4の出力信号を減算器5で減算することにより信号レベルが低下するため、その信号レベルの低下を補うものである。例えば増幅器6の増幅度は、ADコンバータ1が12ビットなら16倍程度とし、ADコンバータ1が14ビットなら4倍程度とする。
【0028】
図2に示すように、切替制御回路7は、低速応答積分器3の数Nでキャリア周期Tcを除算した値の周期τで切替を行う。これにより、各低速応答積分器3には、それらに対応する各位相のデマルチプレクサ2の出力信号の値の積分値が保持されるが、低速応答積分器3の時定数により実質的には各位相のキャリア波Wcの値の積分値が保持される。
そして、切替制御回路7は切替をキャリア波Wcに同期して循環的に行うため、結局、減算器5はアナログ信号Aiからキャリア波Wcを減算することになり、その出力信号は信号波Wtになる。
【0029】
なお、キャリア周波数除去機能付きAD変換回路100を超音波診断装置の受信系に組み込んだ場合、超音波受信信号に含まれるキャリア波Wcの波形は、被検体の体内での反射のため、送信時の波形から歪んだ波形になっている。また、送信波として矩形波を用いることが多く、2次,3次の高調波を含んでいる。このため、従来技術のようなノッチフィルタによってキャリア周波数成分を除去する方法では、キャリア周波数成分を十分に除去できない。
これに対して、本発明では、歪んだ波形のキャリア波Wcでも十分に除去することが出来る。
【0030】
また、キャリア周波数除去機能付きAD変換回路100を超音波診断装置の受信系に組み込んだ場合、モード切替スイッチ8は、パルスドプラモードではアナログ信号Aiを第1信号S1とし、連続波ドプラモードでは減算器5の出力信号を第1信号S1とするように切り替える。
このため、ADコンバータ1のダイナミックレンジは、パルスドプラモード時のアナログ信号Aiの振幅に合わせてある。
ところで、減算器5の出力信号は信号波Wtになるが、信号波Wtはパルスドプラモード時のアナログ信号Aiの振幅に比べて振幅が小さい信号であるため、減算器5の出力信号をそのままADコンバータ1に入力すると、ADコンバータ1のダイナミックレンジを生かすことが出来ない。このため、減算器5の出力信号を増幅器6で増幅した信号を第1信号S1としている。
【0031】
実施例1に係るキャリア周波数除去機能付きAD変換回路100によれば、キャリア周波数成分を除去してからADコンバータ1でデジタル値に変換するため、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが例えば12ビットまたは14ビットのADコンバータで得られるようになり、コンパクトで低価格な構成になる。そして、歪んだ波形のキャリア波Wcでも十分に除去することが出来るようになる。
【実施例2】
【0032】
実施例2は、実施例1では2重のループが存在しているのに対して、1重のループで構成したものである。
【0033】
図3は、実施例2に係るキャリア周波数除去機能付きAD変換回路200を示すブロック図である。
このキャリア周波数除去機能付きAD変換回路200は、信号波Wtがキャリア波Wcに重畳されたアナログ信号Aiと比較信号Rfを比較する電圧比較器11およびフィードバック信号Vfを出力する電圧フィードバック回路12を含むADコンバータ1’と、電圧フィードバック回路12への入力信号を入力とする1入力M出力のデマルチプレクサ2と、デマルチプレクサ2の「M−1」個の出力信号を積分する「M−1」個の低速応答積分器3と、M個の低速応答積分器3の出力信号をそれぞれ入力とするM入力1出力のマルチプレクサ4と、フィードバック信号Vfとマルチプレクサ4の出力信号の差分を比較信号Rfとして出力する減算器9と、デマルチプレクサ2の出力切替およびマルチプレクサ4の入力切替をキャリア波Wcに同期して循環的に行わせると共に減算器9に積分器3の出力信号を入力するか「0」を入力するかを切り替える切替制御回路7とを具備している。
【0034】
ADコンバータ1’は、12ビットまたは14ビットのΔΣ型ADコンバータである。ブロック図中のF(S)、G(S)はフィルタである。
電圧フィードバック回路12は、減衰器12aおよび高速応答積分器12bである。
減衰器12aは、減算器5で減算する2信号のレベルを調整するものであり、実施例1における増幅器6の機能を持っている。
【0035】
低速応答積分器3の時定数は、キャリア周期Tcよりも大きな値とし、例えばキャリア周期Tcの10倍とする。
【0036】
デマルチプレクサ2の出力数Mおよびマルチプレクサ4の入力数Mは、例えば21個である。低速応答積分器3の数「M−1」は、例えば20個である。
デマルチプレクサ2の出力の1つは未使用であり、残りの出力が低速応答積分器3に接続されている。マルチプレクサ4の入力の1つには「0」が入力されており、残りの入力に低速応答積分器3が接続されている。「0」が入力されているマルチプレクサ4の入力は、実施例1におけるモード切替スイッチ8の機能を持っている。
一方、切替制御回路7が循環的に切り替える低速応答積分器3を選択可能である。つまり、20個の低速応答積分器3を備えているが、実際に使用する低速応答積分器3の数Nは、ADコンバータ1のサンプリング周波数fsをキャリア周波数fcで割った値とする。
例えばfs=40MHz,fc=2MHzならば、N=20であるから、20個の低速応答積分器3を全て使用する。一方、fs=40MHz,fc=4MHzならば、N=10であるから、20個の低速応答積分器3のうちの半分だけを使用する。
【0037】
キャリア周波数除去機能付きAD変換回路100を超音波診断装置の受信系に組み込んだ場合のパルスドプラモード時は、切替制御回路7は、マルチプレクサ4から「0」を出力するように切り替える。このため、ADコンバータ1のダイナミックレンジは、パルスドプラモード時のアナログ信号Aiの振幅に合わせてある。また、減衰器12aでは減衰なしに通過させる。
【0038】
一方、連続波ドプラモード時は、切替制御回路7は、電圧フィードバック回路12への入力信号を低速応答積分器3に循環的にデマルチプレクサ2から出力するように且つ低速応答積分器3の出力信号を循環的にマルチプレクサ4から出力するように切り替える。切替周期τは、低速応答積分器3の数Nでキャリア周期Tcを除算した値とする。
【0039】
実施例2に係るキャリア周波数除去機能付きAD変換回路200によれば、キャリア周波数成分を除去してからADコンバータ1でデジタル値に変換するため、ドプラ偏移成分に対して必要なダイナミックレンジが例えば12ビットまたは14ビットのADコンバータで得られるようになり、コンパクトで低価格な構成になる。そして、歪んだ波形のキャリア波Wcでも十分に除去することが出来るようになる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路は、連続波ドプラモードを持つ超音波診断装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1にかかるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を示す回路図である。
【図2】実施例1にかかるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路の積分器の切替処理を示す説明図である。
【図3】実施例2にかかるキャリア周波数除去機能付きAD変換回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0042】
1,1’ ADコンバータ
2 デマルチプレクサ
3 低速応答積分器
4 マルチプレクサ
5,9 減算器
6 増幅器
7 切替制御回路
8 モード切替スイッチ
11 電圧比較器
12 電圧フィードバック回路
12a 減衰器
12b 高速応答積分器
100,200 キャリア周波数除去機能付きAD変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号とフィードバック信号を比較する電圧比較器および前記フィードバック信号を出力する電圧フィードバック回路を含むADコンバータと、前記フィードバック信号を入力とする1入力N出力のデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサのN個の出力信号を積分するN個の積分器と、前記N個の積分器の出力信号をそれぞれ入力とするN入力1出力のマルチプレクサと、信号波がキャリア波に重畳されたアナログ信号と前記マルチプレクサの出力信号の差分を出力する減算器と、前記減算器の出力信号を増幅し前記第1信号とする増幅器と、前記マルチプレクサの入力切替および前記デマルチプレクサの出力切替を前記キャリア波に同期して循環的に行わせる切替制御回路とを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータがΔΣ型ADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の時定数がキャリア周期より大きいことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の数Nが、前記ADコンバータのサンプリング周波数を前記キャリア周波数で除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路の切替周期が、前記積分器の数Nでキャリア周期を除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路は、循環的に切り替える前記積分器を選択可能であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータが12ビットまたは14ビットのADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記アナログ信号を前記第1信号とするか前記減算器の出力信号を前記第1信号とするかを切り替えるモード切替スイッチを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項9】
信号波がキャリア波に重畳されたアナログ信号と比較信号を比較する電圧比較器およびフィードバック信号を出力する電圧フィードバック回路を含むADコンバータと、前記電圧フィードバック回路への入力信号を入力とする1入力N出力のデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサのN個の出力信号を積分するN個の積分器と、前記N個の積分器の出力信号をそれぞれ入力とするN入力1出力のマルチプレクサと、前記フィードバック信号と前記マルチプレクサの出力信号の差分を前記比較信号として出力する減算器と、前記マルチプレクサの入力切替および前記デマルチプレクサの出力切替を前記キャリア波に同期して循環的に行わせる切替制御回路とを具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項10】
請求項9に記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータがΔΣ型ADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記電圧フィードバック回路に減衰器を含むことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の時定数がキャリア周期より大きいことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記積分器の数Nが、前記ADコンバータのサンプリング周波数を前記キャリア周波数で除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路の切替周期が、前記積分器の数Nでキャリア周期を除算した値であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項15】
請求項9から請求項14のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記切替制御回路は、循環的に切り替える前記積分器を選択可能であることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項16】
請求項9から請求項15のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記ADコンバータが12ビットまたは14ビットのADコンバータであることを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。
【請求項17】
請求項9から請求項16のいずれかに記載のキャリア周波数除去機能付きAD変換回路において、前記減算器に前記積分器の出力信号を入力するか「0」を入力するかを切り替えるモード切替手段を具備したことを特徴とするキャリア周波数除去機能付きAD変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−67467(P2007−67467A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247043(P2005−247043)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】