説明

クッカー

【課題】食品素材を所望の程度にゆっくりと調理することができる連続式クッカーを提供する。
【解決手段】本発明は、連続的に供給される食品素材を蒸気によって調理するためのクッカーに関する。本発明によるクッカー(1)は、食品素材(F)を搬送するための搬送コンベヤ(6a,6b)を収容するチャンバー(4)と、搬送コンベヤ(6a,6b)の下方に蒸気を供給するための下蒸気供給装置(32)と、搬送コンベヤの上方に蒸気を供給するための上蒸気供給装置(30)を有する。搬送コンベヤ(6a,6b)は、蒸気を上下方向に通す多数の孔(16h)を有する。下蒸気供給装置(32)から供給された蒸気は、チャンバー(4)内を徐々に上昇し、上蒸気供給装置(30)から供給された蒸気は、チャンバー(4)内を徐々に下降し、これらの蒸気が搬送コンベヤ(6a,6b)上の食品素材(F)を上下方向に静止した状態で包み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品素材を調理するクッカーに関し、更に詳細には、連続的に供給される食品素材を蒸気によって調理するクッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気を上下方向に通すための多数の孔を有する搬送コンベヤの上に、食品素材を重ね、それを搬送させながら調理するクッカーが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたクッカーでは、高温蒸気を、重なっている食品素材の上方から下方に向かって勢いよく強制的に通過させることにより、食品素材を効率的に調理することができる。
【0003】
また、搬送コンベヤ上の食品素材に、過熱蒸気を上下両方向から吹きつけるクッカーも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,289,759号明細書(図6参照)
【特許文献2】特開2002−199986号公報(図1及び図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたクッカーでは、高温の蒸気を食品素材の上方から食品素材の間に強制的に通過させるので、食品素材を急速に調理することができるけれども、食品素材をゆっくりと調理することはできない。
【0006】
また、特許文献2は、過熱蒸気を反射板にあててから食品素材に差し向けて、過熱蒸気を緩やかに作用させるクッカーを開示しているけれども、過熱蒸気の流れにより、食品素材の調理にむらが生じたり、食品素材を所望の程度に調理したりすることができないことがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、食品素材を所望の程度にゆっくりと調理することができる連続式クッカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によるクッカーは、連続的に供給される食品素材を蒸気によって調理するためのクッカーであって、食品素材を搬送するための搬送コンベヤを収容するチャンバーと、搬送コンベヤの下方に蒸気を供給するための下蒸気供給装置と、搬送コンベヤの上方に蒸気を供給するための上蒸気供給装置と、を有し、搬送コンベヤは、蒸気を上下方向に通す多数の孔を有し、下蒸気供給装置から供給された蒸気は、チャンバー内を徐々に上昇し、上蒸気供給装置から供給された蒸気は、チャンバー内を徐々に下降し、これらの蒸気が前記搬送コンベヤ上の食品素材を上下方向に実質的に静止した状態で包み込むことを特徴としている。
【0009】
このように構成されたクッカーでは、搬送コンベヤを収容するチャンバー内において、搬送コンベヤの上方に供給された蒸気が徐々に下降し、搬送コンベヤの下方に供給された蒸気が徐々に上昇すると、搬送コンベヤ上の食品素材は、上下方向にほぼ静止した蒸気によって包まれた状態になる。それにより、食品素材への熱の供給速度が、従来のクッカーよりも遅くなる。その結果、食品素材を所望の程度にゆっくりと調理することができる。
【0010】
本発明によるクッカーの実施形態において、好ましくは、下蒸気供給装置は、チャンバーの底壁に向かって開口する下向きの噴出口を有し、下向きの噴出口から噴出させた蒸気は、底壁に当った後、チャンバー内を徐々に上昇する。
【0011】
このクッカーでは、下向きの噴出口から噴出させた蒸気に含まれる高温の水滴が、底壁に当ったときに底壁に付着するので、高温の水滴を食品素材に当てることを防止することができる。それにより、食品素材の調理むらを軽減させることができる。
【0012】
また、本発明によるクッカーの実施形態において、上蒸気供給装置は、チャンバーの天井壁に向かって開口する上向きの噴出口を有し、上向きの噴出口から噴出させた蒸気は、天井壁に当った後、チャンバー内を徐々に下降するようにしてもよいし、上蒸気供給装置は、チャンバーの底部から頂部に通じる通路と、ファンと、を有し、ファンは、チャンバーの底部の蒸気を通路を通して頂部に搬送し、それにより、蒸気をチャンバー内で徐々に下降させるようにしてもよい。
【0013】
上向きの噴出口を有するクッカーでは、上向きの噴出口から噴出させた蒸気に含まれる高温の水滴が、天井壁に当ったときに天井壁に付着するので、高温の水滴を食品素材に当てることを防止することができる。それにより、食品素材の調理むらを軽減させることができる。
【0014】
また、チャンバーの底部から頂部に通じる通路を有するクッカーでは、下蒸気供給装置によって供給された蒸気の一部分をファンによってチャンバーの頂部に搬送するので、食品素材への熱の供給速度をさらに遅くすることができる。その結果、食品素材を所望の程度に一層ゆっくりと調理することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によるクッカーによれば、食品素材を所望の程度にゆっくりと調理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明によるクッカーの実施形態を説明する。図1は、本発明によるクッカーの概略的な正面断面図である。図2は、図1の線II−IIにおける断面図である。また、図3は、外カバーを持ち上げた状態の図2と同様の図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態であるクッカー1は、連続的に供給される食品素材Fを上流側A1から下流側A2に向かって搬送方向Aに搬送しながら蒸気によって調理するための連続式のクッカーである。クッカー1は、搬送方向Aに延びるベースフレーム2と、ベースフレーム2の上に配置された調理用のチャンバー4と、チャンバー4内に収容された、食品素材Fを搬送するための搬送コンベヤ6a、6bとを有している。
【0018】
ベースフレーム2の構造は、チャンバー4を支持することができれば任意であり、本実施形態では、角柱部材を溶接することによって形成されている。
【0019】
図2に示すように、チャンバー4は、板状の底壁8と、底壁8の上に固定された搬送コンベヤ6a、6bを覆うように配置された外カバー10とを有している。後で説明するように、食品素材を調理するためにチャンバー4内に蒸気が供給されるので、蒸気がチャンバー4から漏れることを防止するためのゴムシール12が底壁8と外カバー10の間に設けられている。また、底壁8は、チャンバー4内で生じた水を受けるためのドレンパンとして機能する。底壁8は、かかる水を排出するドレン開口14(図3参照)に向かって下方に傾斜している。
【0020】
図1に示すように、搬送コンベヤ6a、6bは、上流側に配置された上流側コンベヤ6aと、上流側コンベヤ6aによって搬送されてきた食品素材を受取って搬送するための下流側コンベヤ6bとを有している。下流側コンベヤ6bは、上流側コンベヤ6aよりも下方に位置し、下流側コンベヤ6bの上流端部は、上流側コンベヤ6aの下流端部の下に差し込まれている。
【0021】
図1及び図2に示すように、各搬送コンベヤ6a、6bは、搬送方向Aに延び且つ幅方向Bの両側に設けられたサイドフレーム16aと、上流端ローラ16bと、下流端ローラ16cと、上流端ローラ16bと下流端ローラ16cとの間に掛けまわされた無端コンベヤベルト16dと、コンベヤベルト16dを矢印16eの方向に駆動するための駆動部16fと、サイドフレーム16aを底壁8から支持する支持部材16gとを有している。コンベヤベルトは、蒸気を上下方向に通過させるための孔16hを有しており、好ましくは、メッシュベルトである。駆動部16fは、例えば、電気モータ及び減速機の組合せである。
【0022】
また、クッカー1は、食品素材を外カバー10内の上流側コンベヤ6aに供給するための供給装置18を、外カバー10の上流端部の外側に有している。供給装置18は、幅方向Bに延びる円筒形のハウジング18aと、ハウジング18aの内周にシール式に接触しながら回転する羽根18bとを有している。羽根の数は、任意であるが、本実施形態では、6枚の羽根18bが用いられている。ハウジング18aは、ホッパー18cから食品素材を受入れるための上開口18d及び食品素材Fを上流側コンベヤ6aに排出するための下開口18eを有している。
【0023】
また、クッカー1は、下流側コンベヤ6bによって搬送されてきた食品素材Fを外カバー10の外側に排出するための排出装置20を、外カバー10の下流端部の内側に有している。排出装置20は、下流側コンベヤ6bの下流端ローラ16cから落下する調理済み食品素材Fを案内するためのシュータボックス20aを有する。シュータボックス20aの下方には、落下した食品素材Fを下流側の工程に搬送するための搬送コンベヤ20bが配置されている。
【0024】
図2に示すように、チャンバー4は、外カバー10の内側に内カバー22を有している。内カバー22は、各搬送コンベヤ6a、6bを覆うようにその両側のサイドフレーム16aの上に押付けられるように外カバー10に固定されている。それにより、内カバー22と搬送コンベヤ6a、6bの内側に、内チャンバー24が構成され、外カバー10及び底壁8と内カバー22及び搬送コンベヤ6a、6bとの間に環状の外チャンバー26が構成される。
【0025】
また、内カバー22は、その天井壁22aに蒸気を通過させるファン28を有している。ファン28は、外カバー10の天井壁10aの上に配置された駆動部28aから天井壁22a、10aを貫いて延びる駆動軸28bを有し、駆動軸28bの先端は、内チャンバー24に固定された支持板28cによって回転可能に支持されている。また、駆動軸28bには、図示しない羽根が取付けられている。かくして、内チャンバー24と外チャンバー26とは、内チャンバー24の頂部において、ファン28を介して連通している。ファン28内の流路は、外チャンバー26から流入する蒸気を内チャンバー24の頂部において横方向に差し向けるように構成されている。また、コンベヤベルト16dが蒸気を通過させる孔16hを有しているので、内チャンバー24と外チャンバー26とは、内チャンバー24の底部において、搬送コンベヤ6a、6bを介して連通している。
【0026】
図1に示すように、内カバー22は、上流側コンベヤ6a上の内チャンバー24を第1の上流側領域24aと第1の下流側領域24bに仕切る仕切り壁22bと、上流側コンベヤ6a上の内チャンバー24と下流側コンベヤ6b上の内チャンバー24とを仕切る仕切り壁22cと、下流側コンベヤ6b上の内チャンバー24を第2の上流側領域24cと第2の下流側領域24dに仕切る仕切り壁22dとを有している。これらの仕切り壁22b、22c、22dには、食品素材Fが通過可能であるが蒸気の移動を規制するカーテン状又は暖簾状の仕切り部材22eを有していることが好ましい。仕切り部材22eは、例えば、シリコンゴムで作られている。
【0027】
図2に示すように、クッカー1は、搬送コンベヤ6a、6bの上方に蒸気を供給するための上蒸気供給装置30と、搬送コンベヤ6a、6bの下方に蒸気を供給するための下蒸気供給装置32とを有している。
【0028】
詳細には、図1に示すように、クッカー1は、チャンバー4内に蒸気を供給するための蒸気噴出装置34を有している。蒸気噴出装置34は、蒸気供給源(図示せず)から延びる主管路36と、主管路36から外チャンバー26の上部に延びる上供給管路38と、主管路36から搬送コンベヤ6a、6bの下方に延びる下供給管路40とを有している。
【0029】
図2に示すように、上供給管路38は、幅方向Bの一方の側において、主管路36から底壁8を貫いて上方に延びて2つの支管38a、38bに分岐し、一方の支管38aは、そのまま外チャンバー26内を上方に延びて上向きの噴出口38cで終端し、他方の支管38bは、搬送コンベヤ6a、6bのコンベヤベルト16dの間を通り抜けて、幅方向Bの他方の側において上方に向きを変え、外チャンバー26内を上方に延びて、外カバー10の天井壁10aに向かって開口する上向きの噴出口38cで終端する。この上供給管路38は、上蒸気供給装置30の一形態を構成する。
【0030】
また、図1に示すように、下供給管路40は、幅方向Bの一方の側において、主管路36から底壁8を貫いて上方に延びて2つの支管40a、40bに分岐し、一方の支管40aは、上流側A1に延びてから搬送コンベヤ6a、6bの下方を幅方向Bに延び、他方の支管40bは、下流側A2に延びてから搬送コンベヤ6a、6bの下方を幅方向Bに延びている。下供給管路40の支管40a、40bは、搬送コンベヤ6a、6bの幅方向B全体に延びていることが好ましく、底壁8に向かって開口する複数の下向きの噴出口40c(図2参照)を幅方向B全体にわたって有している。この下供給管路40は、下蒸気供給装置32の一形態を構成する。
【0031】
また、上述した外チャンバー26は、チャンバー4の底部から頂部に通じる通路26aを有し、ファン28は、チャンバー4の底部4aの蒸気を通路26aを通して頂部4bに誘導する機能を有している。従って、この通路とファン28は、上蒸気供給装置30の一形態を構成する。
【0032】
図1に示すように、上述したファン28、上供給管路38、及び下供給管路40の数及び配置は任意であるが、本実施形態では、内チャンバー24の上流側領域及び下流側領域24a〜24dの各々に1つずつ設けられている。主管路36と上供給管路38及び下供給管路40の間には、蒸気の供給量を調整するための流量調整用の電磁弁42が設けられることが好ましく、電磁弁42は、コントローラ46に接続されることが好ましい。
【0033】
また、図2に示すように、クッカー1は、チャンバー4内の温度を測るための温度計44a、44b、44cを有している。温度計の数及び配置は任意である。本実施形態では、内チャンバー4の第1の上流側領域24aの上部に配置された第1の温度計44aと、第1の上流側領域24aの下方のコンベヤベルト16dの間に配置された第2の温度計44bと、第1の上流側領域24aの斜め下方の外チャンバー内に配置された第3の温度計44cを有している。第1〜第3の温度計は、電気的な信号をコントローラ46に送信可能であることが好ましい。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、クッカー1は、外カバー10及び内カバー22を上下に昇降させるための昇降装置48を有している。昇降装置48は、例えば、伸縮型油圧シリンダであり、この場合、その一端がベースフレー2に取付けられ、その他端が外カバー10に取付けられる。それにより、外カバー10及び内カバー22は、搬送コンベヤ6a、6b及び底壁8と共にチャンバー4を構成する下位置50aと、内チャンバー4を開放する上位置50bとの間を昇降可能である。
【0035】
次に、本発明によるクッカーの動作を説明する。
【0036】
外カバー10及び内カバー22を昇降装置48によって下位置50aに下降させる。それにより、内カバー22と搬送コンベヤ6a、6bによって包囲された内チャンバー24が形成され、外カバー10と底壁8とによって包囲された外チャンバー26が内チャンバー24の周りに形成される。
【0037】
食品素材Fを供給装置18のホッパ-18cに供給する。食品素材Fは、野菜や果物であることが好ましく、例えば、かぼちゃ、たまねぎ、サイコロ状又はスティック状の馬鈴薯である。ホッパー18cに供給された食品素材Fは、上開口18dを通ってハウジング18a内に入り、羽根18bの回転によって下開口18eを通って上流側コンベヤ6aに向かって下方に排出される。
【0038】
上流側コンベヤ6aの上に載せられた食品素材Fは、調理されながら下流側A2に搬送され、下流側コンベヤ6b上に移されて更に搬送された後、排出装置20を介して搬送コンベヤ20bに排出される。食品素材Fは、重ならないことが好ましいが、4〜5段重なってもよい。本明細書において「調理する」とは、食品素材Fに所望の熱を加えることをいい、最終製品まで加熱することも、半製品まで加熱することも含む。
【0039】
また、上蒸気供給装置30及び下蒸気供給装置32から蒸気を供給する。
【0040】
詳細には、蒸気供給源(図示せず)から主管路36に蒸気を供給する。蒸気の温度は、例えば、90〜150℃であり、約100℃であることが好ましい。主管路36に供給された蒸気は、引続いて、電磁弁42を介して上供給管路38及び下供給管路40に供給される。
【0041】
下蒸気供給装置32の一形態である下供給管路40に供給された蒸気は、支管40a、40bに分かれて流れ、下向きの噴出口40cから下向きに噴出される。下向きの噴出口40cは、幅方向B全体にわたって配置されているので、下向きに噴出された蒸気は、底壁8に当った後、搬送コンベヤ6a、6bの幅方向B全体にわたって、チャンバー4内の搬送コンベヤ6a、6b内をゆっくりと上昇する。
【0042】
蒸気を底壁8に当てることにより、蒸気内に含まれる水滴が蒸気から分離して底壁8に付着する。分離した水滴は、底壁8に沿って下方に流れ、最終的には、ドレン開口14から外部に排出される。また、蒸気をチャンバー4内の搬送コンベヤ6a、6b内でゆっくりと上昇させるために、下供給管路40の下向きの噴出口40cからの噴出量は、電磁弁42をコントローラ36で操作することによって、間欠的に行われることが好ましい。
【0043】
また、上蒸気供給装置30の一形態である上供給管路38に供給された蒸気は、支管38a、38bに分かれて流れ、上向きの噴出口38cから上向きに噴出される。上向きの噴出口38cは、外チャンバー26内に且つ幅方向Bの両側に配置されているので、上向きに噴出された蒸気は、外カバー10の天井壁10aの幅方向Bの両側の部分に当った後、ファン28によって、天井壁10aの幅方向Bの中央部分に移動し、ファン28を通って下方に送り出される。送り出された蒸気は、内チャンバー24の頂部において横方向に差し向けられた後、内チャンバー24内をゆっくりと下降する。上向きの噴射口38cから噴出した蒸気だけで、蒸気が搬送コンベヤ6a、6bの上方に供給できれば、ファン28を省略しても良い。
【0044】
蒸気を天井壁10aに当てることにより、蒸気内に含まれる水滴が蒸気から分離して天井壁10aに付着する。分離した水滴は、外カバー10の内面に沿って下方に流れ、最終的には、ドレン開口14から外部に排出される。また、蒸気を内チャンバー24内でゆっくりと下降させるために、上供給管路38の上向きの噴出口38cからの噴出量は、電磁弁42をコントローラ46で操作することによって、間欠的に行われることが好ましい。
【0045】
また、上向きの噴出口38cから蒸気が噴出されていないとき、上蒸気供給装置30の一形態であるファン28及びその流路により、蒸気が搬送コンベヤ6a、6bの上方に供給される。詳細には、下供給管路40から供給されてチャンバー4の底部4aに位置する蒸気が、ファン28によって外チャンバー26の上下方向に延びる通路26aを通って、チャンバー4の頂部4bに誘導され、引続いて、ファン28を通って下方に送り出される。送り出された蒸気は、内チャンバー24内をゆっくりと下降する。
【0046】
水平方向の温度分布を均一にするために、ファン28の羽根をゆっくりと回転させることが好ましい。蒸気がゆっくりと下降することを妨げる場合には、ファン28を間欠的に作動させることが好ましい。
【0047】
内チャンバー24内をゆっくりと下降する蒸気と搬送コンベヤ6a、6b内をゆっくりと上昇する蒸気とは、搬送コンベヤ6a、6b上に載せられた食品素材Fの周りで出会い、移動速度が相殺され、食品素材Fの周りに実質的に静止した状態になる。実質的に「静止した状態」とは、搬送コンベヤ6a、6bに引きずられて水平方向に移動するが、上下方向には移動しない状態をいう。蒸気は、飽和蒸気であることが好ましい。
【0048】
蒸気の移動がゆっくりなので、食品素材Fに移送される熱の速度が、従来技術のクッカーよりも遅くなる。それにより、食品素材Fをゆっくりと調理することができ、所望の程度の調理で終了させるように制御することが容易になる。また、供給された蒸気内の水滴が除去されているので、食品素材Fの調理むらを防止することができる。
【0049】
また、温度計44a〜44c、コントローラ46及び電磁弁42を用いて、チャンバー4内の温度が、一定の目標温度になるように制御することが好ましい。制御は、例えば、PID制御である。目標温度は、好ましくは、100℃〜150℃の範囲内の温度である。変形例として、外気又は冷却空気を供給装置18又はその他の開口(図示せず)から導入して、大気圧下で目標温度を60℃〜100℃にしてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0051】
上記実施形態では、主管路36から延びる上供給管路38を使用したが、ファン28によってチャンバー4の底部4aから頂部4bに誘導される蒸気の量が食品素材Fを調理するのに十分であれば、上供給管路38を省略してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第1の上流側領域24aに温度計44a〜44cを設けたが、その他の上流側領域又は下流側領域24b〜24dに温度計を設けてもよい。その場合、各上流側領域又は下流側領域24a〜24dの目標温度を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による蒸し機の概略的な正面断面図である。
【図2】図1の線II−IIにおける断面図である。
【図3】外カバーを持ち上げた状態の図2と同様の図である。
【符号の説明】
【0054】
F 食品素材
1 クッカー
4 チャンバー
4a チャンバーの底部
4b チャンバーの頂部
6a、6b 搬送コンベヤ
8 底壁
10 外カバー
10a 天井壁
16h 孔
22 内カバー
24 内チャンバー
26 外チャンバー
26a 通路
28 ファン
32 下蒸気供給装置
30 上蒸気供給装置
40c 下向きの噴出口
38c 上向きの噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に供給される食品素材を蒸気によって調理するためのクッカーであって、
食品素材を搬送するための搬送コンベヤを収容するチャンバーと、
前記搬送コンベヤの下方に蒸気を供給するための下蒸気供給装置と、
前記搬送コンベヤの上方に蒸気を供給するための上蒸気供給装置と、を有し、
前記搬送コンベヤは、蒸気を上下方向に通す多数の孔を有し、
前記下蒸気供給装置から供給された蒸気は、前記チャンバー内を徐々に上昇し、前記上蒸気供給装置から供給された蒸気は、前記チャンバー内を徐々に下降し、これらの蒸気が前記搬送コンベヤ上の食品素材を上下方向に実質的に静止した状態で包み込むことを特徴とするクッカー。
【請求項2】
前記下蒸気供給装置は、前記チャンバーの底壁に向かって開口する下向きの噴出口を有し、前記下向きの噴出口から噴出させた蒸気は、前記底壁に当った後、前記チャンバー内を徐々に上昇することを特徴とする請求項1に記載のクッカー。
【請求項3】
前記上蒸気供給装置は、前記チャンバーの天井壁に向かって開口する上向きの噴出口を有し、前記上向きの噴出口から噴出させた蒸気は、前記天井壁に当った後、前記チャンバー内を徐々に下降することを特徴とする請求項1又は2に記載のクッカー。
【請求項4】
前記上蒸気供給装置は、前記チャンバーの底部から頂部に通じる通路と、ファンと、を有し、
前記ファンは、前記チャンバーの底部の蒸気を前記通路を通して前記頂部に搬送し、それにより、蒸気を前記チャンバー内で徐々に下降させることを特徴とする請求項1又は2に記載のクッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−100866(P2009−100866A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273900(P2007−273900)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(591115578)カルビー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】