説明

クッションバルブ装置、及びそれを備えるマルチクッションバルブユニット

【課題】耐コンタミ性が高く、且つ形状の自由度が高いクッションバルブ装置を提供する。
【解決手段】クッションバルブ装置11は、バルブブロック12を有しており、バルブブロック12は、第1通路と第2通路と第1排出通路31を有している。第1通路は、操作弁8Lの第1給排通路9aと切換弁の第1パイロット通路7aとの間に介在し、第1絞り24aを有している。第2通路は、操作弁8Lの第2給排通路9bと切換弁の第2パイロット通路7bとの間に介在している。第1排出通路31は、第1通路とタンク10とに繋がっており、ここには、第1チェック弁33が設けられている。第1チェック弁33は、弁座部に着座して第1排出通路31を閉じるポペット弁体と、第2給排通路9bのパイロット油の圧力が所定圧力以上になるとポペット弁体を動かして第1排出通路31を開くピストンとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作具に対する操作に応じた圧力のパイロット油を供給する操作弁と、前記パイロット油の圧力に応じてアクチュエータに流れる作動油の方向を制御する切換弁との間に介在し、アクチュエータの起動時及び停止時の衝撃を低減するクッションバルブ装置、及びそれを備えるマルチクッションバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械では、遠隔操作でアクチュエータを駆動するために油圧回路を有している。この油圧回路には、パイロット操作弁と切換弁とが備わっている。パイロット操作弁は、2つの給排通路を有しており、操作具の操作に応じて何れか一方の給排通路にパイロット油を供給し、他方の給排通路をタンクに繋げるようになっている。これら2つの給排通路は、切換弁の2つのパイロット通路に繋がっており、切換弁は、2つのパイロット通路の圧力差に応じてポンプからアクチュエータに流れる作動油の方向を切換えてアクチュエータの起動及び停止を切換えるようになっている。
【0003】
このように構成される油圧回路では、切換弁の切換速度が早い場合、起動時にアクチュエータに一気に作動油が流れて衝撃が発生する。また停止時には、アクチュエータへの作動油の流れが突然停止し、起動時と同様に衝撃が伴う。通常、この衝撃を緩和すべく、給排通路に絞りを形成し、切換弁の切換速度を抑えている。しかし、給排通路に絞りを形成すると、低温環境下等のようにパイロット油の粘度が高い状況下では、この絞りの影響で操作具の操作に対するアクチュエータの応答性が緩慢になるという弊害が発生する。このような問題を解決すべく、特許文献1では、給排通路にクッション弁が設けられている。
【0004】
特許文献1のクッション弁は、スプール式の弁であり、給排通路において可変絞りを形成している。従って、操作具が大きく操作されるとスプールを動かして流路断面積を大きくし、パイロット油の粘度によるアクチュエータの応答性の影響を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−56157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建設機械は、エンジンやポンプ等の様々な構成を備えており、各々の構成を配置するスペースに制限がある。クッションバルブも同様であり、エンジンやポンプ等の隙間に配置できることが好ましく、隙間に合わせた形状に設計できることが好ましい。
【0007】
特許文献1に記載のクッションバルブは、スプール式の弁であるので、開度が小さいとクッションバルブ前後における油圧の圧力損失が大きい。そこで、圧力損失の低減を図るべく、クッションバルブではスプールのストロークを大きくすることが好ましい。そうすると、スプールの長手方向の寸法が大きくなり、クッションバルブの形状の自由度が低くなる。即ち、特許文献1に記載のクッションバルブでは、前述するような隙間に合わせた形状に設計することができない。また、特許文献1に記載のクッションバルブは、スプール式の弁であるため、スプールとハウジングとの間にコンタミが挟まってスティックすることがあり、耐コンタミ性が低い。
【0008】
そこで本発明は、耐コンタミ性が高く、且つ形状の自由度が高いクッションバルブ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、操作具の操作量に対応する圧力のパイロット油を前記操作具の操作方向に応じて第1給排通路及び第2給排通路の何れか一方に供給して他方をタンクに繋ぐ操作弁と、前記第1給排通路に繋がる第1パイロット通路と前記第2給排通路に繋がる第2パイロット通路との差圧に応じてアクチュエータに流れる作動油の方向を切換える切換弁との間に介在しているクッションバルブ装置であって、第1絞りが形成され、前記第1給排通路と前記第1パイロット通路との間に介在している第1通路と、前記第2給排通路と前記第2パイロット通路との間に介在している第2通路と、前記第1絞りと前記第1パイロット通路の間の前記第1通路から分岐し、前記第1通路と前記タンクとを繋ぐ第1排出通路とを有しているバルブブロックと、前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が所定圧力以上になると前記第1排出通路を開き、前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満になると前記第1排出通路を閉じる第1パイロット操作チェック弁とを備え、前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満の場合は、第1パイロット通路は第1通路と第1給排通路とを経由して前記タンクと繋がるものである。
【0010】
本発明に従えば、操作弁が操作されると、パイロット油が第2給排通路に供給されて第1給排通路がタンクに繋がる。そうすると、第1パイロット通路のパイロット油が第1通路にある第1絞りを通り、第1給排通路を介してタンクへと排出される。また、第1パイロット通路のパイロット油は、それと共に第1排出通路にも導かれる。この第1排出通路は、操作具の操作量が小さくてパイロット油の圧力が所定圧力未満の場合、第1パイロット操作チェック弁によって閉じられてパイロット油が流れないようになっている。それ故、操作具の操作量が小さい場合、第1パイロット通路からタンクへのパイロット油の流れが第1絞りによって制限され、切換弁の切換速度を制限することができる。これにより、アクチュエータの起動・停止時の衝撃を低減することができる。
【0011】
また、操作具の操作量が大きくなり第2給排通路に供給されるパイロット圧が所定圧力以上になると、第1パイロット操作チェック弁によって閉じられていた第1排出通路が開き、第1排出通路を介して第1パイロット通路のパイロット油がタンクに流れる。つまり、操作具の操作量が大きい場合、第1パイロット通路のパイロット油が第1排出通路を通ってタンクに流れ、そのパイロット油のタンクへの流れの制限が解除される。これにより、パイロット油の粘度によるアクチュエータの応答速度の影響を低減させて操作具の操作量に応じた切換速度で切換弁を動かすことができ、アクチュエータの応答速度を高めることができる。
【0012】
このような機能を有する本発明では、第1パイロット操作チェック弁が用いられている。第1パイロット操作チェック弁は、その構成を長尺にすることなくその中を通るパイロット油の圧力損失を低減することができる。それ故、バルブブロックにおける第1パイロット操作チェック弁の配置の自由度は高く、スプール式のクッションバルブ装置よりも、クッションバルブ装置自体の形状の自由度を高くすることができる。また、第1パイロット操作チェック弁は、スプール式の弁に比べて耐コンタミ性が高い。それ故、クッションバルブ装置の耐コンタミ性を向上させることができる。
【0013】
上記発明において、前記第2通路は第2絞りを有し、前記バルブブロックは、前記第2絞りと前記第2パイロット通路の間の前記第2通路から分岐し、前記第2通路と前記タンクとを繋ぐ第2排出通路を有し、前記第1通路には、前記第1絞りの前後を繋ぐ第1並列通路上に第1逆止弁が設けられ、前記第2通路には、前記第2絞りの前後を繋ぐ第2並列通路上に第2逆止弁が設けられ、前記第1逆止弁部は、前記第1給排通路から前記第1パイロット通路へのパイロット油の流れを許容し、その逆方向の流れを遮断し、前記第2逆止弁部は、前記第2給排通路から前記第2パイロット通路へのパイロット油の流れを許容し、その逆方向の流れを遮断し、前記第1給排通路を流れる前記パイロット油が所定圧力以上になると前記第2排出通路を開き、前記第1給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満になると前記第2排出通路を閉じる第2パイロット操作チェック弁とを備え、前記第1給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満の場合は、第2パイロット通路は第2通路と第2給排通路とを経由して前記タンクと繋がるようになっていることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、第1給排通路及び第2給排通路のいずれにパイロット油が供給されても、操作具の操作量に応じて切換弁の切換速度を制限したり、その制限を解除したりすることができる。これにより、アクチュエータの双方向の動きに対して衝撃の緩和及び応答性の向上を実現することができる。
【0015】
上記発明において、前記第1パイロット操作チェック弁は、カートリッジ型の弁であって、前記第1排出通路に着脱可能に挿入されるようになっており、前記第2パイロット操作チェック弁は、カートリッジ型の弁であって、前記第2排出通路に着脱可能に挿入されるようになっていることが好ましい。
【0016】
上記構成に従えば、バルブブロックへの第1パイロット操作チェック弁及び第2パイロット操作チェック弁の着脱が容易であり、交換が容易である。
【0017】
上記発明において、前記第1逆止弁部及び前記第1絞りは、一体のカートリッジ型の弁で構成されて前記第1通路に着脱可能な状態で挿入されるようになっており、前記第2逆止弁部及び前記第2絞りは、一体のカートリッジ型の弁で構成されて前記第2通路に着脱可能な状態で挿入されるようになっていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、バルブブロックへの逆止弁及び絞りの着脱が容易であり、交換が容易である。
【0019】
本発明のマルチクッションバルブユニットは、前記クッションバルブ装置を複数備え、前記複数のクッションバルブ装置のバルブブロックが一体化されているものである。
【0020】
上記構成に従えば、クッションバルブ装置が一体化され、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐コンタミ性が高く、且つ形状の自由度が高いクッションバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一つの実施形態のマルチクッションバルブユニットを備える油圧駆動回路を示す概略図である。
【図2】図1の油圧駆動回路を示す油圧回路図である。
【図3】図2のマルチクッションバルブユニットの構成を示す斜視透視図である。
【図4】図3のマルチクッションバルブユニットが備えるバイパス付き逆止弁の構成を示す断面図である。
【図5】図3のマルチクッションバルブユニットが備えるパイロット操作チェック弁の構成を示す断面図である。
【図6】別の実施形態のマルチクッションバルブユニットの構成を示す斜視透視図である。
【図7】別の実施形態のクッションバルブ装置の構成を示す斜視透視図である。
【図8】別の実施形態のクッションバルブ装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るマルチクッションバルブユニット(以下、単に「クッションバルブユニット」ともいう)1及びそれを備える油圧駆動回路2について説明する。なお、実施形態における上下左右等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、クッションバルブユニット1及び油圧駆動回路2の構造に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明するクッションバルブユニット1及び油圧駆動回路2の構造は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0024】
<油圧駆動回路>
油圧ショベルや油圧クレーン等の建設機械では、バケットやブーム等を備えており、バケットやブーム等を動かすことで様々な作業を行っている。これらバケットやブームは、図1に示すような油圧駆動回路2によって駆動されており、油圧駆動回路2は、2つの油圧ポンプ3L,3Rを備えている。油圧ポンプ3L,3Rは、作動油を吐出するようになっており、各油圧ポンプ3L,3Rには、切換弁4L,4Rを介して油圧シリンダ5L,5Rが夫々接続されている。なお、本実施形態では、説明を簡略化するために、各油圧ポンプ3L,3Rに接続されている油圧シリンダ5L,5Rが1つだけであるが、実際には各油圧ポンプ3L,3Rに複数の油圧シリンダ5L,5Rが並列的に夫々接続されている。
【0025】
アクチュエータである油圧シリンダ5L,5Rは、油圧ポンプ3L,3Rから夫々供給される作動油によって伸縮駆動するようになっており、伸縮駆動することでバケットやブームが動くようになっている。切換弁4L,4Rは、油圧ポンプ3L,3Rから油圧シリンダ5L,5Rに流れる作動油の流れる方向を切換えて油圧シリンダ5L,5Rを伸張、縮退又は停止させるようになっている。以下では、切換弁4L,4Rの構成について簡単に説明する。
【0026】
<切換弁>
切換弁4L,4Rは、スプール6、第1パイロット通路7a及び第2パイロット通路7bを夫々有しており、スプール6は、第1パイロット通路7aの第1パイロット圧pと第2パイロット通路7bの第2パイロット圧pとを両端部で夫々受圧するようになっている。スプール6は、第1パイロット圧pと第2パイロット圧pとの差圧に応じてその位置を移動させ、切換弁4L,4Rは、スプール6の位置に応じて作動油の流れる方向及び流量を切換えるようになっている。これら第1パイロット通路7a及び第2パイロット通路7bには、クッションバルブユニット1を介してパイロット操作弁8L,8Rが接続されている。
【0027】
<パイロット操作弁>
パイロット操作弁8L,8Rは、図2に示すように所定方向一方及び他方に操作可能な操作具8a(例えば、操作レバー)を夫々有している。また、パイロット操作弁8L,8Rは、第1給排通路9aと第2給排通路9bとを夫々有している。第1給排通路9aは、クッションバルブユニット1を介して第1パイロット通路7aに接続され、第2給排通路9bは、クッションバルブユニット1を介して第2パイロット通路7bに接続されている。更に、パイロット操作弁8L,8Rは、図示しないパイロット用ポンプ(図3の符号P)とタンク10(図3の符号T)とに繋がっている。
【0028】
パイロット操作弁8L,8Rは、操作具8aを所定方向一方に操作するとその操作量に応じた油圧のパイロット油を第2給排通路9bに供給し、且つ第1給排通路9aをタンクに接続するようになっている。また、操作具8aが所定方向他方に操作されると、パイロット操作弁8L,8Rは、その操作量に応じた油圧のパイロット油を第1給排通路9aに供給し、第2給排通路9bをタンクに接続するようになっている。そして、第2給排通路9bに供給されたパイロット油は、クッションバルブユニット1を介して第2パイロット通路7bに導かれ、第1給排通路9aに供給されたパイロット油もまたクッションバルブユニット1を介して第1パイロット通路7aに導かれるようになっている。なお、クッションバルブ装置11L,11Rは、必ずしも左右対称にして一体化されている必要はない。
【0029】
<クッションバルブユニット>
本件発明の一実施形態であるクッションバルブユニット1は、図3に示すように2つのクッションバルブ装置11L,11Rを一体化することで構成されている。一方のクッションバルブ装置である第1クッションバルブ装置11Lは、切換弁4L及びパイロット操作弁8Lの間に介在しており、他方のクッションバルブ装置である第2クッションバルブ装置11Rは、切換弁4R及びパイロット操作弁8Rとの間に介在している。2つのクッションバルブ装置11L,11Rは、大略直方体状に形成されているバルブブロック12を共有しており、このバルブブロック12の幅方向の中心面に対して左右対称に構成されている。つまり、2つのクッションバルブ装置11L,11Rは、同一の構成を有している。そこで、以下では、一方のクッションバルブ装置の構成についてだけ説明し、他方のクッションバルブ装置の構成については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0030】
<クッションバルブ装置>
クッションバルブ装置11は、図2及び図3に示すようにバルブブロック12を有している。バルブブロック12の左側面には第1乃至第3ポート12a〜12cが形成され、その前面には第4ポート12dが形成され、更に上面にはタンクポート12eが形成されている。なお、タンクポート12eは、バルブブロック12の上面の中央に位置しており、2つのクッションバルブ装置11に対して1つだけ形成されている。即ち、2つのクッションバルブ装置11が1つのタンクポート12eを共有している。
【0031】
第1ポート12a及び第2ポート12bは、第1給排通路9a及び第2給排通路9bに夫々繋がっており、第3ポート12c及び第4ポート12dは、第1パイロット通路7a及び第2パイロット通路7bに夫々繋がっている。また、バルブブロック12には、第1ポート12aと第3ポート12cとを繋ぐ第1通路13と、第2ポート12bと第4ポート12dとを繋ぐ第2通路14とが形成されている。これら2つの通路13,14は、図3に示すように右側面視で大略Z字状になっており、各通路13,14の下側部分13a,14aに第1ポート12aと第2ポート12bとが夫々接続され、上側部分13b,14bに第3ポート12cと第4ポート12dとが夫々接続されている。
【0032】
また、バルブブロック12の前面には、第1通路13の下側部分13aに繋がる第1挿入口12hと、第2通路14の下側部分14aに繋がる第2挿入口12iとが形成されている。これら第1挿入口12h及び第2挿入口12iには、第1及び第2バイパス付き逆止弁15,16が夫々挿入されており、挿入された第1及び第2バイパス付き逆止弁15,16が下側部分13a,14a内に夫々延在している。
【0033】
[バイパス付き逆止弁]
第1バイパス付き逆止弁(以下、単に「第1逆止弁」ともいう)15は、図4に示すように、基本的にスリーブ17と、弁体18と、基体19とを有している。スリーブ17は、大略円筒状になっており、フランジ部17aを有している。フランジ部17aは、スリーブ17の先端側の外周部に周方向全周にわたって延在し、且つ半径方向外方に突出している。スリーブ17は、このフランジ部17aを第1通路13の下側部分13aを規定する内周面に当接させ、それらの間をシールさせた状態で第1通路13に設けられている。第1通路13を規定する内周面には、スリーブ17側が大径になっている段差12fが形成されており、この段差12fにスリーブ17の先端面が当接している。また、スリーブ17の先端側の内周部には、周方向全周にわたって半径方向内方に突出する弁座部17bが形成されており、この弁座部17bに着座するように弁体18がスリーブ17内に設けられている。
【0034】
弁体18は、大略有底筒状になっており、その先端部が先細りのテーパ状に形成されている。弁体18の先端部は、弁座部17bに着座するようになっており、着座することで弁座部17b内の内孔である弁孔17cを閉じるようになっている。弁体18は、弁座部17bに着座して弁孔17cを閉じる閉位置(図4参照)と、弁座部17bから離れて弁孔17cを開く開位置との間で移動可能になっている。また、スリーブ17の基端側の外周部には、その基端側の開口を塞ぐべく基体19が外装されている。
【0035】
基体19は、大略有底円筒状の部材であり、中間部分に雄ねじ部19aが形成されており、底部に六角形状の頭部19bを有している。このような形状を有する基体19は、第1挿入口12hから頭部19bを突出させた状態で第1通路13に挿入されてバルブブロック12に螺合されている。このように螺合された基体19では、その先端側にある内孔19cにスリーブ17の基端側部分が内挿され、バルブブロック12の段差12fと共にスリーブ17を挟んでいる。
【0036】
また、基体19の先端部とスリーブ17のフランジ部17aとの間には、大略環状の環状空間20が形成されている。この環状空間20は、第1通路13の下側部分13aと上側部分13bとを繋ぐ中間部分13cに繋がっている。また、環状空間20は、スリーブ17の中間部分の外方に位置しており、このスリーブ17の中間部分17dには、主連通路21とパイロット通路22とが形成されている。主連通路21及びパイロット通路22は、スリーブ17を半径方向に貫通しており、スリーブ17内と環状空間20とを繋いでいる。主連通路21は、パイロット通路22よりも先端側に形成されており、弁体18が開位置にある時に弁孔17cと繋がるようになっている。
【0037】
また、パイロット通路22は、その内側の開口が弁体18の外周部の中間部分に対向するように位置しており、弁体18の外周部の中間部分には、周方向全周にわたって延在する環状溝18aが形成されている。この環状溝18aは、弁体18の軸線方向に所定の幅を有しており、弁体18が閉位置と開位置との間で移動してもパイロット通路22が環状溝18aに繋がるようになっている。このように形成される環状溝18aは、複数の連通孔18bによって弁体18内に繋がっている。つまり、弁体18の位置に関わらず、弁体18内と第1通路13の中間部分13cとが環状空間20、パイロット通路22、環状溝18a及び連通孔18bによって常時繋がっており、弁体18内に第1通路13の中間部分13cに導かれるパイロット油が導かれるようになっている。
【0038】
弁体18は、その中に導かれたパイロット油から閉位置に向かう方向(以下、単に「閉位置方向」ともいう)の作用力を受け、また弁孔17cに導かれたパイロット油から開位置に向かう方向(以下、単に「開位置方向」ともいう)の作用力を受けるようになっている。また、基体19と弁体18との間には、ばね部材25が設けられており、ばね部材25から弁体18を閉位置方向に付勢力を受けている。
【0039】
このように構成されているバイパス付逆止弁15では、第1給排通路9aから第1通路13の下側部分13aにパイロット油が導かれると、このパイロット油によって弁体18が押し上げられて開位置方向に移動する。開位置方向に移動することで、弁孔17cと主連通路21との間が開いて第1通路13の下側部分13aと中間部分13cとが繋がる。これにより、第1通路13が開き、第1給排通路9aから第1パイロット通路7aへのパイロット油の流れが許容される。他方、第1給排通路9aを介して下側部分13aがタンク10に繋がると、ばね部材25と弁体18内に導かれているパイロット油とによって弁体18が押下げられて閉位置方向に移動する。閉位置方向に移動することで、弁孔17cが閉じられ、第1通路13の下側部分13aと中間部分13cとの間が閉じられる。これにより、第1通路13が閉じられ、第1パイロット通路7aから第1給排通路9aへのパイロット油の流れが止められる。
【0040】
また、本実施形態においては、第1逆止弁15は、このように第1給排通路9aから第1パイロット通路7aへのパイロット油の流れを許容し、且つその逆方向の流れを止める第1逆止弁部26aを有すると共に、この第1逆止弁部26aを迂回するように第1逆止弁部26aの前後(つまり、第1通路13の下側部分13aと中間部分13cと)を繋ぐバイパス通路27を有している。バイパス通路27は、スリーブ17の先端部に形成されており、弁孔17cと環状空間20とを繋いでいる。バイパス通路27は、弁孔17c及び環状空間20より流路断面積が小さくなっており、第1通路13の第1絞り24aとしての役割を果たしている。即ち、第1逆止弁部26aは、第1絞り24aの前後を繋ぐ第1並列通路上に設けられている。このように構成される第1逆止弁15は、第1通路13が閉じられているときでも、このバイパス通路27によって第1パイロット通路7aから第1給排通路9aへのパイロット油が流れるようになっている。
【0041】
このように機能する第1逆止弁15は、いわゆるカートリッジ型の逆止弁であり、予め組立てられている。即ち、第1逆止弁15は、バルブブロック12に取付けられる前に、弁体18がスリーブ17内に挿入され、スリーブ17の基端部に基体19が外装された状態になっている。第1逆止弁15は、組立てられた状態のまま第1挿入口12hから挿入され、頭部19bを回して基体19をバルブブロック12に螺合することによって装着される。また、第1逆止弁15を交換する際は、基体19を回すことで、バルブブロック12から外すことができる。このように第1逆止弁15は、バルブブロック12の着脱が容易であり、故障時等において交換することが容易である。
【0042】
第2バイパス付き逆止弁(以下、単に「第2逆止弁」ともいう)16は、第1逆止弁15と同様の構成、即ち第2逆止弁部26bとバイパス通路27とを有しており、第2逆止弁部26bは、第2絞り24bの前後を繋ぐ第2並列通路上に設けられている。このように構成される第2逆止弁16もカートリッジ型の逆止弁となっており、弁体18がスリーブ17内に挿入され、スリーブ17の基端部に基体19が外装された状態で第2挿入口12iに挿入されて基体19をバルブブロック12に螺合させて装着される。
【0043】
この第2逆止弁16では、弁孔17cが第2給排通路9bに繋がっており、第2給排通路9bから第2通路14の下側部分14aにパイロット油が導かれると、このパイロット油によって弁体18が押し上げられて開位置方向に移動し、第2通路14が開いて第2給排通路9bから第2パイロット通路7bへのパイロット油の流れが許容される。他方、第2給排通路9bを介して下側部分14aがタンク10に繋がると、ばね部材25と弁体18内に導かれているパイロット油によって弁体18が押下げられて閉位置方向に移動し、第2通路14が閉じられて第2パイロット通路7bから第2給排通路9bへのパイロット油の流れが止められる。そして、第2通路14の第2絞り24bとしての役割を果たすバイパス通路27によって遮断時でも第2パイロット通路7bから第2給排通路9bにパイロット油が流れるようになっている。
【0044】
このように構成されている第1逆止弁15及び第2逆止弁16は、前述するようにバルブブロック12の前面に設けられている。他方、バルブブロック12の後面には、第3挿入口12jと第4挿入口12kとが形成されており、バルブブロック12内部には、第1排出通路31及び第2排出通路32が形成されている。第1排出通路31及び第2排出通路32は、前後方向に延在しており、第1通路13の上側部分13b及び第2通路14の上側部分14bに夫々繋がっている。第3挿入口12jは、この第1排出通路31を介して第1通路13の上側部分13bに繋がり、第4挿入口12kは、第2排出通路32を介して第2通路14の上側部分14bに繋がっている。これら第3挿入口12j及び第4挿入口12kには、第1及び第2パイロット操作チェック弁33,34が夫々挿入されており、挿入されている第1及び第2パイロット操作チェック弁33,34は、第1及び第2排出通路31,32内に延在している。
【0045】
[パイロット操作チェック弁]
第1パイロット操作チェック弁(以下、単に「第1チェック弁」ともいう)33は、図5に示すように、基本的にスリーブ35と、ポペット弁体36と、ケーシング37と、ピストン38とを有している。スリーブ35は、大略円筒状になっており、その中間部分の内周部に周方向全周にわたって延在し、且つ半径方向内方に突き出している内向きフランジ状の保持部35aを有している。スリーブ35の内孔は、この保持部35aによって先端側の弁通路35bとばね受空間35cとに分けられている。そして、保持部35aの内孔には、ポペット弁体36が挿通されている。
【0046】
主弁体であるポペット弁体36は、大略円柱状になっており、その先端部分に先端に進むにつれて広がる逆テーパ状の傘部36aを有している。この傘部36aは、スリーブ35内において保持部35aより先端側に配置されている。また、スリーブ35の内周部には、その傘部36aの基端側の面(つまり、テーパ面)の外縁部分に対向するように弁座部35dが形成されている。この弁座部35dにポペット弁体36の傘部36aが着座する(つまり閉位置に位置する)ことで弁通路35bが閉じられ(図5参照)、傘部36aが弁座部35dから離れる(つまり、開位置に位置する)ことで弁通路35bが開くようになっている。
【0047】
また、ポペット弁体36の基端部には、大略円筒状のばね受部材39が外装されている。ばね受部材39は、周方向全周にわたって延在するフランジ部39aを有しており、フランジ部39aと保持部35aとの間には、ポペット弁体36に外装するようにポペット用ばね部材40が設けられている。ポペット用ばね部材40は、いわゆる圧縮コイルばねであり、ばね受部材39を介してポペット弁体36を閉位置に向かって付勢している。
【0048】
スリーブ35は、先端側の外周部に周方向全周にわたって延在し、且つ半径方向外方に突出するフランジ部35eを有しており、このフランジ部35eを上側部分13bを規定する内周面にシールされた状態で嵌合させて第1排出通路31内に設けられている。弁通路35bは、この第1排出通路31に繋がっている。また、第1排出通路31を規定する内周面には、段差12gが形成されており、第1排出通路31は、この段差12gによって第3挿入口12j側が残余部分より大径になっている。スリーブ35は、この段差12gにフランジ部35eの先端を当接させている。このようにして第1排出通路31内に設けられているスリーブ35の基端部には、ケーシング37が外装されている。
【0049】
ケーシング37は、大略有底筒状になっており、底部側に六角形状の頭部37aを有している。ケーシング37は、第3挿入口12jから頭部37aを突出させた状態で第1排出通路31に挿入され、その先端部がバルブブロック12に螺合されている。また、ケーシング37は、内周面の開口寄りの部分に段差37bを有しており、ケーシング37の内周面は、段差37bより開口側が大径になっている。ケーシング37は、この段差37bをスリーブ35の基端の外縁部分に当接させ、2つの段差12gと一緒にスリーブ35を挟んでいる。
【0050】
また、スリーブ35の中間部分の外方には、フランジ部35eとケーシング37の先端部との間によって挟まれている環状の連通空間41が形成され、そのスリーブ35の中間部分には、複数の連通孔35fが形成されている。連通孔35fは、弁通路35bと連通空間41とを繋いでおり、この連通空間41は、タンク通路42に繋がっている。なお、図5では、説明の便宜上、タンク通路42の位置を実際の位置と異なる位置に示している。タンク通路42は、バルブブロック12に左右方向に延在するように形成されており、タンクポート12eに繋がっている。従って、弁通路35bが開くと、パイロット油が連通孔35f、連通空間41及びタンク通路42を介してタンク10に導かれるようになっている。
【0051】
また、ケーシング37内には、ピストン38が設けられている。駆動体であるピストン38は、大略有底筒状になっており、ケーシング37の内周面との間でシールされた状態でケーシング37内に挿入されている。ピストン38の開口は、スリーブ35側に向けられており、その中にポペット弁体36の基端部が位置している。ピストン38の底部38aは、ポペット弁体36の基端部と対向しており、またその底部38aと保持部35aとの間には、ポペット弁体36に外装されるようにチェック用ばね部材46が介在している。チェック用ばね部材46は、ピストン38をポペット弁体36から離すように付勢している。また、このピストン38は、ケーシング37内を背圧室43とパイロット圧室44とに分けている。
【0052】
背圧室43は、保持部35a側に位置しており、保持部35aに形成されている複数の連通路35gによって弁通路35bと繋がっている。他方、パイロット圧室44は、ケーシング37の底部側に位置している。また、ケーシング37の外周部の中間部分には、周方向全周にわたって延在し、且つ半径方向外方に突出しているフランジ部37cが形成されている。このフランジ部37cの外周部には、周方向全周にわたって延在する環状溝37dが形成されている。また、ケーシング37には、連通路37eが形成されており、環状溝37dは、この連通路37eを介してパイロット圧室44に繋がっている。更に、環状溝37dは、バルブブロック12に形成されているパイロット圧導通路45に繋がっており、パイロット圧導通路45は、第2通路14の下側部分14aに繋がっている。それ故、パイロット圧室44には、第1通路13及びパイロット圧導通路45を介して第2給排通路9bを流れるパイロット油が導かれるようになっている。
【0053】
このように構成されている第1チェック弁33は、第1排出通路31に導かれるパイロット油から閉位置に向かうパイロット圧をポペット弁体36の傘部36aに受圧している。他方、ピストン38は、パイロット圧室44に導かれるパイロット油からチェック用ばね部材46の付勢力に抗するパイロット圧を受圧している。第2給排通路9bの圧力が所定圧力未満である場合、ピストン38に作用するパイロット油による作用力がチェック用ばね部材46の付勢力より小さく、ピストン38がポペット弁体36から離れて位置している。そのため、閉位置の方向のパイロット圧を受圧するポペット弁体36の傘部36aが弁座部35dに着座し、第1排出通路31が閉じられている。
【0054】
第2給排通路9bの圧力が所定圧力以上になると、パイロット油による作用力がチェック用ばね部材46の付勢力より大きくなり、ピストン38がポペット弁体36の方へと移動する。ピストン38は、やがてポペット弁体36に当接し、そのままポペット弁体36を開位置の方へと押す。押されたポペット弁体36は、開位置へと移動し、ポペット弁体36の傘部36aが弁座部35dから離れる。これにより、弁通路35bが開く、つまり第1排出通路31が開く。第1排出通路31が開くことで、第1通路13の上側部分13bを流れるパイロット油が第1排出通路31及びタンク通路42を介してタンクに導かれる。そして、第2給排通路9bの圧力が所定圧力未満になると、チェック用ばね部材46の付勢力等の力によってピストン38が押されて元の位置へと戻され、それに伴ってポペット弁体36が閉位置の方へと移動する。その後、ポペット弁体36が弁座部35dに着座して第1排出通路31が閉じられる。
【0055】
このように機能する第1チェック弁33は、いわゆるカートリッジ型のチェック弁であり、予め組立てられている。つまり、第1チェック弁33は、バルブブロック12に取付けられる前に、ポペット弁体36がスリーブ35の保持部35aに挿通され、中にピストン38が配置されているケーシング37がスリーブ35の基端部に外装されている状態となっている。第1チェック弁33は、組立てられている状態のまま第3挿入口12jから挿入され、頭部37aを回してケーシング37をバルブブロック12に螺合することによって装着される。また、第1チェック弁33を交換する際は、頭部37aを装着時と反対方向に回すことでバルブブロック12から外すことができる。このように第1チェック弁33は、バルブブロック12の着脱が容易であり、故障時等において交換することが容易である。
【0056】
また、第2パイロット操作チェック弁(以下、単に「第2チェック弁」ともいう)34は、第1チェック弁33と同様の構成を有しており、カートリッジ型のチェック弁となっている。即ち、第2チェック弁34もまた、ポペット弁体36がスリーブ35の保持部35aに挿通され、中にピストン38が配置されているケーシング37がスリーブ35の基端部に外装されている状態となっており、その上で第4挿入口12kに挿入されてケーシング37をバルブブロック12に螺合させて装着されている。また、弁通路35bは、第2排出通路32とタンク通路42とに繋がっており、パイロット圧導通路45は、第1通路13bの下側部分13aを介して第1給排通路9aに繋がっている。
【0057】
この第2チェック弁34では、弁通路35bが第2排出通路32と繋がっており、第2排出通路32に導かれるパイロット油によってポペット弁体36が押されている。これにより、ポペット弁体36の傘部36aが弁座部35dに着座し、第2排出通路32が閉じられている。第1給排通路9aの圧力が所定圧力以上になると、ピストン38が押されてポペット弁体36の方へと移動し、やがてポペット弁体36に当接してポペット弁体36を開位置の方へと押す。押されたポペット弁体36は、開位置へと移動し、ポペット弁体36の傘部36aが弁座部35dから離れる。これにより、第2排出通路32が開き、第2通路14の上側部分14bを流れるパイロット油が第2排出通路32及びタンク通路42を介してタンクに導かれる。また、第1給排通路9aの圧力が所定圧力未満になると、チェック用ばね部材46によってピストン38が元の位置へと戻され、それに伴ってポペット弁体36が閉位置の方へと移動する。そして、ポペット弁体36が弁座部35dに着座して第2排出通路32が閉じられる。
【0058】
<クッションバルブ装置の機能>
以下では、前述のクッションバルブ装置11の機能について説明する。操作弁8Lの操作具8aが所定方向一方に操作されると、第2給排通路9bにパイロット油が供給され、このパイロット油が第2ポート12b及び第2通路14の下側部分14aを通って第2逆止弁16に導かれる。第2逆止弁16に導かれたパイロット油は、弁体18を開位置方向に押して第2通路14を開き、第2通路14の中間部分14bへと流れる。パイロット油は、更に第2通路14の下側部分14a及び第4ポート12dを介して第2パイロット通路7bへと導かれる。この際、ポペット弁体36によって第2排出通路32が閉じられているので、パイロット油が第1排出通路31及びタンク通路42を介してタンク10に排出されることはない。第2パイロット通路7bに導かれたパイロット油は、切換弁4Lのスプール6を押して移動させる。
【0059】
他方、第1給排通路9aは、タンク10に繋がり、第1パイロット通路7aのパイロット油は、第1通路13の上側部分13bに導かれる。上側部分13bに導かれたパイロット油は、第1通路13の中間部分13cを通って第1逆止弁15に導かれる。第1逆止弁15では、第1パイロット通路7aから中間部分13cにパイロット油が導かれることで弁体18が閉位置へと移動し、第1通路13が閉じられる。これにより、中間部分13cのパイロット油は、逆止弁部26aを通らずにバイパス通路27を通って下側部分13aへの流れ、更に第1ポート12a及び第1給排通路9aを通ってタンク10に導かれる。
【0060】
また、上側部分13bに導かれたパイロット油は、第1排出通路31を通って第1チェック弁33に導かれる。第1チェック弁33は、前述の通り、第2給排通路9bの油圧pに応じて作動するようになっており、前記油圧pは、操作弁8Lの操作具8aの操作量に応じて変化するようになっている。即ち、第1チェック弁33は、操作弁8Lの操作具8aの操作量に応じて作動するようになっており、操作量が所定量未満である場合、ポペット弁体36が弁座部35dに着座して第1排出通路31を閉じている。そのため、第1排出通路31に導かれたパイロット油は、第1チェック弁33にて止められる。従って、操作具8aの操作量が所定量未満である場合、第1パイロット通路7aのパイロット油は、バイパス通路27を通って第1給排通路9aに導かれ、更にタンク10へと導かれる。前述するように、バイパス通路27は第1絞り24aとしての役割を果たしており、第1通路13を流れるパイロット油の流量は、この第1絞り24aによって制限される。つまり、第1パイロット通路7aからタンク10へと戻るパイロット油の流量を制限することができ、切換弁4Lの切換速度を制限することができる。これにより、油圧シリンダ5Lで生じる衝撃を緩和することができる。
【0061】
他方、操作弁8Lの操作具8aの操作量が所定量以上である場合、パイロット圧室44の内圧が所定圧力以上となり、ピストン38を介してポペット弁体36が押されて弁座部35dから離れ、第1排出通路31が開く。これにより、第1通路13の上側部分13bに導かれていたパイロット油は、バイパス通路27を通ってタンク10に導かれると共に、第1チェック弁33を通ってタンク通路42に導かれ、更にタンクポート12eを介してタンク10に導かれる。これにより、第1パイロット通路7aからタンク10に流れるパイロット油の流量制限を解除される。それ故、パイロット油の粘度による油圧シリンダ5Lの応答速度の影響を低減させて操作具8aの操作量に応じた切換速度で切換弁4Lを動かすことができ、油圧シリンダ5Lの応答速度を高めることができる。
【0062】
また、操作弁8Lの操作具8aが所定方向他方に操作された場合について簡単に説明すると、操作弁8Lの操作具8aが所定方向他方に操作されることで第1給排通路9aにパイロット油が供給される。パイロット油は、第1逆止弁15の弁体18を押して第1通路13を開き、第1通路13を通って第1パイロット通路7aに導かれる。他方、第2給排通路9bは、操作弁8Lの操作具8aが所定方向他方に操作されることでタンク10に繋がり、第2パイロット通路7bのパイロット油は、第2逆止弁16のバイパス通路27を通ってタンク10に流れる。
【0063】
操作具8aの操作量が所定量以下では、第2チェック弁34により第2排出通路32が閉じられているので、第2パイロット通路7bのパイロット油は、バイパス通路27を介してタンク10に導かれる。それ故、タンク10へ戻るパイロット油の流量が第2絞り24bによって制限される。これにより、切換弁4Lの切換速度を制限することができ、油圧シリンダ5Lで生じる衝撃を緩和することができる。
【0064】
他方、操作弁8Lの操作具8aの操作量が所定量以上である場合、第2チェック弁34が作動して第2排出通路32が開き、第2パイロット通路7bのパイロット油がバイパス通路27を通ってタンク10に導かれると共に、第2チェック弁34、タンク通路42及びタンクポート12eを通ってタンク10に流れる。これにより、第2パイロット通路7bからタンク10へと流れるパイロット油の流量制限が解除され、操作具8aの操作量に応じた切換速度で切換弁4Lを動かすことができる。従って、操作具8aを所定方向一方に操作した場合と同様に油圧シリンダ5Lの応答速度を高めることができる。
【0065】
また、説明を省略するが、操作弁8Rの操作具8aを所定方向一方及び他方に操作した場合にも同様に、油圧シリンダ5Rで生じる衝撃を緩和することができると共に油圧シリンダ5Rの応答速度を高めることができる。
【0066】
このように構成されるクッションバルブ装置11では、従来技術のスプール式の切換弁に代えてポペット式の第1及び第2チェック弁33,34が用いられている。第1及び第2チェック弁33,34では、スプール弁と異なり、ポペット弁体36とスリーブ35との間にパイロット油を積極的に流すことがない。それ故、パイロット油に含まれるコンタミがポペット弁体36とスリーブ35との間に挟まってポペット弁体36が動かなくなるということがなく耐コンタミ性が高い。それ故、第1及び第2チェック弁33,34を用いることで、耐コンタミ性が高いクッションバルブ装置11を製造することができる。
【0067】
また、切換弁では、スプールのストロークを長くすることで開度を上げ弁の圧力損失を低下させる構成であるので、圧力損失を低減すべく切換弁が軸線方向に長くなる。これに対して、第1及び第2チェック弁33,34では、弁通路35bの径を大きくすることで弁の圧力損失を低下させることができる。それ故、ポペット弁体36及びピストン38を長尺にすることなく、第1及び第2チェック弁33,34を通るパイロット油の圧力損失を低減することができる。そのため、従来技術の切換弁に比べて第1及び第2チェック弁33,34の軸線方向を短尺に形成することができる。これにより、バルブブロック12における第1及び第2チェック弁33,34の配置の自由度が向上し、またその他の構成(例えば、第1及び第2逆止弁15,16の配置の自由度も向上する。それ故、バルブブロック12の外形形状も自由に設計することが可能になり、形状の自由度が高いクッションバルブ装置11を製造することができる。以下では、上述する利点に基づいて製造された、外形形状が異なる実施形態のクッションバルブユニット1A、及びクッションバルブ装置11B,11Cについて、図6〜8を参照しながら説明する。なお、図6〜図8では、第1逆止弁15、第2逆止弁16、第1チェック弁33及び第2チェック弁34を省略して示している。
【0068】
[別の実施形態について]
別の実施形態のクッションバルブユニット1A、及びクッションバルブ装置11B,11Cは、前述の実施形態のクッションバルブユニット1及びクッションバルブ装置11と構成が夫々類似している。そこで、別の実施形態のクッションバルブユニット1A〜1Cの構成については、前述の実施形態のクッションバルブユニット1の構成と異なる点について説明し、同一の点は説明を省略する。
【0069】
クッションバルブユニット1Aでは、クッションバルブ装置11L,11Rが一体化しており、各々の第1挿入口12h及び第2挿入口12i、つまり4つの挿入口12h,12h,12i,12iがバルブブロック12Aの後面に左右方向に一列に並べて形成されている。また、バルブブロック12Aの前面には、各々の第3挿入口12j及び第4挿入口12k、つまり4つの挿入口12j,12j,12k,12kが左右方向に一列に並べて形成されている。更に、バルブブロック12Aの上面の前側には、各々の第1ポート12a及び第2ポート12b、つまり4つのポート12a,12a,12b,12bが左右方向に一列に並べて形成され、上面の後側には、各々の第3ポート12c及び第4ポート12d、つまり4つのポート12c,12c,12d,12dが左右方向に一列に並べて形成されている。また、バルブブロック12Aの上面の前後左右方向中央にタンクポート12eが形成されている。
【0070】
更に、バルブブロック12Aの内部には、各ポート12a〜12e及び各挿入口12h〜12kを繋ぐように第1通路13A,第2通路14A、第1排出通路31A、第2排出通路32A、及びパイロット圧導通路45等の各種通路が形成されている。このように各ポート12a〜12e及び各挿入口12h〜12kを一列に夫々並べることで、バルブブロック12Aを左右方向に長尺かつ大略直方体状にすることができ、高さが低く左右方向に長尺な大略直方体状のクッションバルブユニット1Aを製造することができる。
【0071】
クッションバルブ装置11Bでは、それ自体が単体で形成されており、そのバルブブロック12Bが大略立方体形状に形成されている。具体的に説明すると、第1及び第2ポート12a,12b並びに第1及び第2挿入口12h,12iがバルブブロック12Bの前面に形成されている。また、第3及び第4ポート12c,12dがバルブブロック12Bの上面に形成され、第3及び第4挿入口12j,12kがバルブブロック12Bの後面に形成されている。更に、バルブブロック12Bの左側面には、タンクポート12eが形成され、バルブブロック12Bの内部には、上述する形態と同様に各ポート12a〜12e及び各挿入口12h〜12kを繋ぐように各種通路が形成されている。このように構成されることで、大略立方体形状のクッションバルブ装置11Bを製造することができる。
【0072】
また、図8に示すように、側面視で大略L字状のバルブブロック12Cを有する、側面視で大略L字状のクッションバルブ装置11Cを製造することもできる。
【0073】
[その他の実施形態]
本実施形態では、クッションバルブユニット1を建設機械に適用する場合について説明しているが、適用する機器等は建設機械に限定されず、造船、プラント設備及び車両等に適用してもよい。また、本実施形態において、逆止弁15,16及びチェック弁33,34は、必ずしも前述の同様に構成されている必要はなく、前述するものと同様の起用を有していればよい。例えば、本実施形態では、逆止弁15,16及びチェック弁33,34がカートリッジ型で構成されているが、バルブブロック12に一体的に構成されてもよい。同様に、各ポート12a〜12e、各挿入口12h〜12k、及び各種通路13,14、31、32、45の配置や形状もまた上述するような位置や形状に限定されず、設計事項やバルブブロックの形状に応じて変更することができる。
【0074】
また、前述する実施形態では、第1通路13及び第2通路14に逆止弁15,16が夫々設けられ、且つ第1排出通路31及び第2排出通路33が繋がっているが、必ずしもこのような構成である必要はない。つまり、例えば、第2通路14にだけ逆止弁16が設けられ、第2排出通路33がバルブブロック12に形成されていなくてもよい。これにより、操作具8aを所定方向一方に操作した場合には、上述するようにその操作量に応じてアクチュエータの衝撃の緩和及び応答性の向上を達成することができ、操作具8aを所定方向他方に操作した場合には、操作量に関係なく操作量に応じたアクチュエータの応答性を得ること可能になる。
【0075】
また、上述する実施形態では、操作具8aは、操作レバーであるが、スイッチやダイヤルであってもよい。また、バイパス通路27は、逆止弁15,16に夫々形成されているが、バルブブロック12に直接形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A クッションバルブユニット
4L,4R 切換弁
5L,5R 油圧シリンダ
7a 第1パイロット通路
7b 第2パイロット通路
8L,8R 操作弁
8a 操作具
9a 第1給排通路
9b 第2給排通路
10 タンク
11,11B,11C クッションバルブ装置
12,12B,12C バルブブロック
13,13A 第1通路
14,14A 第2通路
15 第1逆止弁
16 第2逆止弁
24a 第1絞り
24b 第2絞り
26a 第1逆止弁部
26b 第2逆止弁部
31,31A 第1排出通路
32,32A 第2排出通路
33 第1チェック弁
34 第2チェック弁
36 ポペット弁体
38 ピストン
39 ばね受部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作具の操作量に対応する圧力のパイロット油を前記操作具の操作方向に応じて第1給排通路及び第2給排通路の何れか一方に供給して他方をタンクに繋ぐ操作弁と、前記第1給排通路に繋がる第1パイロット通路と前記第2給排通路に繋がる第2パイロット通路との差圧に応じてアクチュエータに流れる作動油の方向を切換える切換弁との間に介在しているクッションバルブ装置であって、
第1絞りが形成され、前記第1給排通路と前記第1パイロット通路との間に介在している第1通路と、前記第2給排通路と前記第2パイロット通路との間に介在している第2通路と、前記第1絞りと前記第1パイロット通路の間の前記第1通路から分岐し、前記第1通路と前記タンクとを繋ぐ第1排出通路とを有しているバルブブロックと、
前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が所定圧力以上になると前記第1排出通路を開き、前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満になると前記第1排出通路を閉じる第1パイロット操作チェック弁とを備え、
前記第2給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満の場合は、第1パイロット通路は第1通路と第1給排通路とを経由して前記タンクと繋がる、クッションバルブ装置。
【請求項2】
前記第2通路は第2絞りを有し、
前記バルブブロックは、前記第2絞りと前記第2パイロット通路の間の前記第2通路から分岐し、前記第2通路と前記タンクとを繋ぐ第2排出通路を有し、
前記第1通路には、前記第1絞りの前後を繋ぐ第1並列通路上に第1逆止弁部が設けられ、
前記第2通路には、前記第2絞りの前後を繋ぐ第2並列通路上に第2逆止弁部が設けられ、
前記第1逆止弁部は、前記第1給排通路から前記第1パイロット通路へのパイロット油の流れを許容し、その逆方向の流れを遮断し、
前記第2逆止弁部は、前記第2給排通路から前記第2パイロット通路へのパイロット油の流れを許容し、その逆方向の流れを遮断し、
前記第1給排通路を流れる前記パイロット油が所定圧力以上になると前記第2排出通路を開き、前記第1給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満になると前記第2排出通路を閉じる第2パイロット操作チェック弁とを備え、
前記第1給排通路を流れる前記パイロット油の圧力が前記所定圧力未満の場合は、第2パイロット通路は第2通路と第2給排通路とを経由して前記タンクと繋がる、請求項1に記載のクッションバルブ装置。
【請求項3】
前記第1パイロット操作チェック弁は、カートリッジ型の弁であって、前記第1排出通路に着脱可能に挿入されるようになっており、
前記第2パイロット操作チェック弁は、カートリッジ型の弁であって、前記第2排出通路に着脱可能に挿入されるようになっている、請求項2に記載のクッションバルブ装置。
【請求項4】
前記第1逆止弁部及び前記第1絞りは、一体のカートリッジ型の弁で構成されて前記第1通路に着脱可能な状態で挿入されるようになっており、
前記第2逆止弁部及び前記第2絞りは、一体のカートリッジ型の弁で構成されて前記第2通路に着脱可能な状態で挿入されるようになっている、請求項3に記載のクッションバルブ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の前記クッションバルブ装置を複数備え、
前記複数のクッションバルブ装置のバルブブロックが一体化されている、マルチクッションバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104518(P2013−104518A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250409(P2011−250409)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】