説明

クランクシャフトの製造方法

【課題】クランクシャフトの複数の偏心部に熱処理を施し耐摩耗性を向上させた場合、フロント軸に対するリア軸の振れのないクランクシャフトの製造方法を提供する。
【解決手段】第1、第2偏心部に高周波の焼き入れ処理を施す(工程S11)。そして、フロント軸を研磨加工してから(工程S12)、第1偏心部を研磨加工し(工程S13)、続いて、第2偏心部を研磨加工し(工程S14)、最後に、リア軸を研磨加工する(工程S15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、空調機や冷凍機等に用いられる圧縮機等用のクランクシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クランクシャフトの製造方法としては、クランクシャフトのフロント軸およびリア軸に対して、焼き入れ処理を行い、硬度を高めて、耐摩耗性を向上していたものがある(特開2008−38787号公報:特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−38787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のクランクシャフトの製造方法では、クランクシャフトのフロント軸とリア軸との間に配置された2つの偏心部に対しては、焼き入れ処理を行っておらず、この偏心部の耐摩耗性は向上していなかった。
【0005】
そこで、上記クランクシャフトの偏心部に焼き入れ処理を行って、この偏心部の耐摩耗性を向上させる場合、一般的に、図5に示すように、2つの偏心部に焼き入れ処理を行ってから(工程S101)、フロント軸およびリア軸を研磨加工により仕上げ処理を行い(工程S102)、その後、一方の偏心部を研磨加工により仕上げ処理を行ってから(工程S103)、他方の偏心部を研磨加工により仕上げ処理を行う(工程S104)。
【0006】
ここで、図6に示すように、クランクシャフト100は、軸方向に沿って順に配置された、フロント軸101と、第1偏心部103と、連結軸部105と、第2偏心部104と、リア軸102とを有し、このクランクシャフト100に、焼き入れ処理を行うと、第1、第2偏心部103,104のそれぞれにおいて、偏心側と反偏心側とで熱の逃げ易さが異なることにより、焼き入れ深さにアンバランスが発生する。
【0007】
具体的に述べると、上記第1偏心部103に焼き入れ処理を行う場合、第1偏心部103の偏心側の角部(図中、A1部分)において、この角部の近傍には軸部101,105が存在しないため、焼き入れの熱が軸部101,105へ逃げない。このため、偏心側の角部では、焼き入れにより発生する(ハッチングにて示す)硬化層103aは、角部においても深くなる。一方、上記第1偏心部103の反偏心側の角部(図中、A2部分)において、この角部の近傍には軸部101,105が存在するため、焼き入れの熱が軸部101,105へ逃げる。このため、反偏心側の角部では、焼き入れにより発生する硬化層103aは、浅くなる。
【0008】
同様に、上記第2偏心部104に焼き入れ処理を行う場合、第2偏心部104の偏心側の角部(図中、B1部分)において、この角部の近傍には軸部102,105が存在しないため、焼き入れの熱が軸部102,105へ逃げない。このため、偏心側の角部では、焼き入れにより発生する(ハッチングにて示す)硬化層104aは、角部においても深くなる。一方、上記第2偏心部104の反偏心側の角部(図中、B2部分)において、この角部の近傍には軸部102,105が存在するため、焼き入れの熱が軸部102,105へ逃げる。このため、反偏心側の角部では、焼き入れにより発生する硬化層104aは、浅くなる。
【0009】
そして、図5に示す手順で、上記第1、第2偏心部103,104に仕上げ加工を施すと、第1、第2偏心部103,104に焼き入れによる残留応力がアンバランスに発生し、第1、第2偏心部103,104で曲がりが起こって、クランクシャフト100の軸心100aに示すように、フロント軸101に対してリア軸102が振れるという問題が発生する。このリア軸102が振れると、軸受の線接触となり、信頼性が低下する。本願発明者は、このリア軸102の振れの現象を、新たに見出した。
【0010】
そこで、この発明の課題は、クランクシャフトの複数の偏心部に熱処理を施し耐摩耗性を向上させた場合、フロント軸に対するリア軸の振れのないクランクシャフトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明のクランクシャフトの製造方法は、
互いに同心に配置されたフロント軸およびリア軸と、上記フロント軸と上記リア軸との間に配置された複数の偏心部とを有するクランクシャフトの製造方法であって、
上記複数の偏心部に表面改質処理を施す工程と、
少なくとも上記フロント軸を研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸を研磨加工する工程と
を順に行うことを特徴としている。
【0012】
この発明のクランクシャフトの製造方法によれば、上記複数の偏心部に表面改質処理を施した後、少なくとも上記フロント軸を研磨加工する工程と、上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、上記リア軸を研磨加工する工程とを順に行うので、表面改質処理により上記偏心部の耐摩耗性を向上させた場合、表面改質処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルして、上記フロント軸に対する上記リア軸の振れのないクランクシャフトを製造できる。
【0013】
また、一実施形態のクランクシャフトの製造方法では、
上記複数の偏心部に表面改質処理を施す工程と、
上記フロント軸のみを研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸を研磨加工する工程と
を順に行う。
【0014】
この実施形態のクランクシャフトの製造方法によれば、上記複数の偏心部に表面改質処理を施した後、上記フロント軸のみを研磨加工する工程と、上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、上記リア軸を研磨加工する工程とを順に行うので、加工基準としやすいフロント軸から順に仕上げ加工を施すことにより、表面改質処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルできる。
【0015】
したがって、表面改質処理により上記偏心部の耐摩耗性を向上させた場合、上記フロント軸に対する上記リア軸の振れのないクランクシャフトを製造できる。
【0016】
また、一実施形態のクランクシャフトの製造方法では、上記表面改質処理は、高周波焼き入れ処理、窒化処理、浸炭焼き入れ処理または浸炭窒化焼き入れ処理の何れか一つの処理である。
【0017】
また、一実施形態のクランクシャフトの製造方法では、上記クランクシャフトの材質は、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、炭素鋼または合金鋼の何れか一つである。
【0018】
また、一実施形態のクランクシャフトの製造方法では、
上記複数の偏心部に表面改質処理を施す工程と、
上記フロント軸と上記リア軸とを同時に研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸を再度研磨加工する工程と
を順に行う。
【0019】
この実施形態のクランクシャフトの製造方法によれば、上記複数の偏心部に表面改質処理を施した後、上記フロント軸と上記リア軸とを同時に研磨加工する工程と、上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、上記リア軸を再度研磨加工する工程とを順に行うので、リア軸を再度研磨加工することにより、表面改質処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルできる。また、最初の仕上げ加工であるフロント軸とリア軸との同時加工時に、リア軸の取代を例えば20〜60μm程度だけ残しておくことにより、リア軸の最終仕上げの加工時間を短縮できる。
【0020】
したがって、表面改質処理により上記偏心部の耐摩耗性を向上させた場合、上記フロント軸に対する上記リア軸の振れのないクランクシャフトを製造できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明のクランクシャフトの製造方法によれば、上記複数の偏心部に表面改質処理を施した後、少なくとも上記フロント軸を研磨加工する工程と、上記複数の偏心部を、上記フロント軸側から上記リア軸側に順に、研磨加工する工程と、上記リア軸を研磨加工する工程とを順に行うので、表面改質処理により上記偏心部の耐摩耗性を向上させた場合、上記フロント軸に対する上記リア軸の振れのないクランクシャフトを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の圧縮機の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のクランクシャフトの製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図3】クランクシャフトの拡大図である。
【図4】本発明のクランクシャフトの製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
【図5】従来のクランクシャフトの製造方法を示すフローチャートである。
【図6】クランクシャフトの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の圧縮機の第1実施形態である断面図を示している。この圧縮機は、密閉容器1と、密閉容器1内に配置されるモータ3と、密閉容器1内に配置されると共にモータ3に近い順に配置される第1圧縮要素2Aおよび第2圧縮要素2Bと、モータ3と第1圧縮要素2Aおよび第2圧縮要素2Bとを連結するクランクシャフト12とを有する。
【0025】
上記圧縮機は、高圧ドーム型のロータリ圧縮機であって、圧縮要素2A,2Bを下に、モータ3を上に、配置している。圧縮要素2A,2Bからガス状の高圧流体を吐出し、この高圧流体は、密閉容器1の内部を満たし、モータ3を冷却した後、吐出管13から密閉容器1の外部に吐出される。
【0026】
上記圧縮機は、図示しない凝縮器、膨張機構および蒸発器と共に、冷媒回路を構成する。圧縮機により圧縮された冷媒等の流体は、凝縮器、膨張機構および蒸発器を順に流れ、圧縮機に戻る。
【0027】
上記モータ3は、ロータ6と、このロータ6の径方向外側にエアギャップを介して配置されたステータ5とを有する。ロータ6には、クランクシャフト12が取り付けられている。
【0028】
上記ロータ6は、例えば積層された電磁鋼板からなるロータコアと、このロータコアに埋設された磁石とを有する。上記ステータ5は、例えば鉄からなるステータコアと、このステータコアに巻かれたコイルとを有する。
【0029】
上記モータ3は、コイルに電流を流してステータ5に発生する電磁力によって、ロータ6をクランクシャフト12と共に回転させ、このクランクシャフト12を介して、圧縮要素2A,2Bを駆動する。
【0030】
上記クランクシャフト12は、例えば、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、炭素鋼または合金鋼の何れか一つの材質から構成される。クランクシャフト12は、互いに同心に配置されたフロント軸140およびリア軸240と、上記フロント軸140と上記リア軸240との間に直列に配置された第1偏心部126および第2偏心部226とを有する。
【0031】
上記フロント軸140と、上記第1偏心部126と、上記第2偏心部226と、上記リア軸240とは、モータ3側から順に、配置されている。第1偏心部126は、第1圧縮要素2A内に配置される。第2偏心部226は、第2圧縮要素2B内に配置される。第1偏心部126と第2偏心部226とは、連結軸340により、連結される。
【0032】
上記第1圧縮要素2Aは、上記第2圧縮要素2Bよりも、上側に配置されている。第1圧縮要素2Aは、第1シリンダ121と、この第1シリンダ121内に配置されている第1ローラ127とを有する。
【0033】
上記第1シリンダ121は、上側の端板部材50と中間の端板部材70とに挟まれて、第1シリンダ室122を形成している。第1シリンダ121には、図示しないアキュームレータに接続された第1配管111が接続されている。
【0034】
上記第1ローラ127は、第1シリンダ室122に配置されたクランクシャフト12の第1偏心部126に、嵌合している。第1ローラ127は、第1シリンダ室122に、公転可能に配置され、第1シリンダ121内を偏心回動して圧縮作用を行う。第1シリンダ室122で圧縮された流体は、マフラを介して、第1シリンダ室122の外側に排出される。
【0035】
上記第2圧縮要素2Bは、第2シリンダ221と、この第2シリンダ221内に配置されている第2ローラ227とを有する。
【0036】
上記第2シリンダ221は、中間の端板部材70と下側の端板部材60とに挟まれて、第2シリンダ室222を形成している。第2シリンダ221には、図示しないアキュームレータに接続された第2配管211が接続されている。
【0037】
上記第2ローラ227は、第2シリンダ室222に配置されたクランクシャフト12の第2偏心部226に、嵌合している。第2ローラ227は、第2シリンダ室222に、公転可能に配置され、第2シリンダ221内を偏心回動して圧縮作用を行う。第2シリンダ室222で圧縮された流体は、マフラを介して、第2シリンダ室222の外側に排出される。
【0038】
次に、上記クランクシャフト12の製造方法について説明する。
【0039】
図2に示すように、まず、上記第1、第2偏心部126,226に高周波の焼き入れ処理を施す(工程S11)。そして、上記フロント軸140のみを研磨加工してから(工程S12)、第1偏心部126を研磨加工し(工程S13)、続いて、第2偏心部226を研磨加工し(工程S14)、最後に、上記リア軸240を研磨加工する(工程S15)。
【0040】
ここで、図3に示すように、上記クランクシャフト12に、焼き入れ処理を行うと、第1、第2偏心部126,226のそれぞれにおいて、偏心側と反偏心側とで熱の逃げ易さが異なることにより、焼き入れ深さにアンバランスが発生する。
【0041】
具体的に述べると、上記第1偏心部126に焼き入れ処理を行う場合、第1偏心部126の偏心側の角部(図中、A1部分)において、この角部の近傍には軸140,340が存在しないため、焼き入れの熱が軸140,340へ逃げない。このため、偏心側の角部では、焼き入れにより発生する(ハッチングにて示す)硬化層126aは、角部においても深くなる。一方、上記第1偏心部126の反偏心側の角部(図中、A2部分)において、この角部の近傍には軸140,340が存在するため、焼き入れの熱が軸140,340へ逃げる。このため、反偏心側の角部では、焼き入れにより発生する硬化層126aは、浅くなる。
【0042】
同様に、上記第2偏心部226に焼き入れ処理を行う場合、第2偏心部226の偏心側の角部(図中、B1部分)において、この角部の近傍には軸240,340が存在しないため、焼き入れの熱が軸240,340へ逃げない。このため、偏心側の角部では、焼き入れにより発生する(ハッチングにて示す)硬化層226aは、角部においても深くなる。一方、上記第2偏心部226の反偏心側の角部(図中、B2部分)において、この角部の近傍には軸240,340が存在するため、焼き入れの熱が軸240,340へ逃げる。このため、反偏心側の角部では、焼き入れにより発生する硬化層226aは、浅くなる。
【0043】
そして、上記クランクシャフト12の製造方法では、第1、第2偏心部126,226に焼き入れ処理を施した後に、フロント軸140、第1偏心部126、第2偏心部226、リア軸240を順に研磨加工するので、加工基準としやすいフロント軸140から順に仕上げ加工を施すことになる。このため、焼き入れ処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルできる。
【0044】
したがって、焼き入れ処理により偏心部126,226の耐摩耗性を向上させた場合、フロント軸140に対するリア軸240の振れのないクランクシャフト12を製造できる。つまり、クランクシャフト12の軸心12aを曲がりのないものとできる。
【0045】
なお、上記偏心部126,226を、高周波焼き入れ処理以外に、例えば、窒化処理や浸炭焼き入れ処理や浸炭窒化焼き入れ処理等の表面改質処理を施すことにより、偏心部126,226の耐摩耗性を向上させた場合にも、偏心部126,226の偏心側と反偏心側とで表面改質の深さにアンバランスが発生するが、上記クランクシャフト12の製造方法によって、クランクシャフト12の軸心12aを曲がりのないものとできる。また、焼き入れ処理では、焼き入れを行った後、焼き戻しを行うのが通常であるが、焼き戻しを行わず焼き入れのみ行う場合にも、上記クランクシャフト12の製造方法は同様の効果を得られることは言うまでもない。
【0046】
また、クランクシャフトが3つ以上の偏心部を有する場合、図2の工程S13および工程S14において、複数の偏心部を、フロント軸側からリア軸側に順に、研磨加工することで、クランクシャフトの軸心を曲がりのないものとできる。
【0047】
(第2の実施形態)
図4は、この発明のクランクシャフトの製造方法の第2の実施形態を示している。このクランクシャフトの製造方法を説明すると、図4に示すように、まず、第1、第2偏心部126,226に高周波の焼き入れ処理を施す(工程S21)。
【0048】
そして、フロント軸140とリア軸240とを同時に研磨加工してから(工程S22)、第1偏心部126を研磨加工し(工程S23)、続いて、第2偏心部226を研磨加工し(工程S24)、最後に、リア軸240を再度研磨加工する(工程S25)。なお、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0049】
上記クランクシャフトの製造方法によれば、リア軸240を再度研磨加工することにより、焼き入れ処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルできる。また、最初の仕上げ加工であるフロント軸140とリア軸240との同時加工時に、リア軸240の取代を例えば20〜60μm程度だけ残しておくことにより、リア軸240の最終仕上げの加工時間を短縮できる。
【0050】
したがって、焼き入れ処理により偏心部126,226の耐摩耗性を向上させた場合、フロント軸140に対するリア軸240の振れのないクランクシャフト12を製造できる。また、クランクシャフト12の研磨加工において、フロント軸140とリア軸240とのセンタ穴の精度が不要となる。
【0051】
なお、クランクシャフトが3つ以上の偏心部を有する場合、図4の工程S23および工程S24において、複数の偏心部を、フロント軸側からリア軸側に順に、研磨加工することで、クランクシャフトの軸心を曲がりのないものとできる。
【0052】
また、上記第1実施形態と同様に、偏心部を、高周波焼き入れ処理以外に、例えば、窒化処理や浸炭焼き入れ処理や浸炭窒化焼き入れ処理等の表面改質処理を施した場合でも、上記クランクシャフトの製造方法によって、クランクシャフトの軸心を曲がりのないものとできる。
【0053】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記第1、上記第2の実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0054】
また、この発明のクランクシャフトの製造方法では、複数の偏心部に表面改質処理を施した後に、リア軸を、表面改質処理による残留応力開放によって発生する歪みをキャンセルするように、研磨加工するようにすればよく、表面改質処理により偏心部の耐摩耗性を向上させた場合、フロント軸に対するリア軸の振れのないクランクシャフトを製造できる。
【符号の説明】
【0055】
1 密閉容器
2A 第1圧縮要素
2B 第2圧縮要素
3 モータ
5 ステータ
6 ロータ
12 クランクシャフト
12a 軸心
121 第1シリンダ
126 第1偏心部
127 第1ローラ
140 フロント軸
221 第2シリンダ
226 第2偏心部
227 第2ローラ
240 リア軸
340 連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心に配置されたフロント軸(140)およびリア軸(240)と、上記フロント軸(140)と上記リア軸(240)との間に配置された複数の偏心部(126,226)とを有するクランクシャフト(12)の製造方法であって、
上記複数の偏心部(126,226)に表面改質処理を施す工程と、
少なくとも上記フロント軸(140)を研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部(126,226)を、上記フロント軸(140)側から上記リア軸(240)側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸(240)を研磨加工する工程と
を順に行うことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法において、
上記複数の偏心部(126,226)に表面改質処理を施す工程と、
上記フロント軸(140)のみを研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部(126,226)を、上記フロント軸(140)側から上記リア軸(240)側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸(240)を研磨加工する工程と
を順に行うことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクランクシャフトの製造方法において、
上記表面改質処理は、高周波焼き入れ処理、窒化処理、浸炭焼き入れ処理または浸炭窒化焼き入れ処理の何れか一つの処理であることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載のクランクシャフトの製造方法において、
上記クランクシャフト(12)の材質は、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、炭素鋼または合金鋼の何れか一つであることを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のクランクシャフトの製造方法において、
上記複数の偏心部(126,226)に表面改質処理を施す工程と、
上記フロント軸(140)と上記リア軸(240)とを同時に研磨加工する工程と、
上記複数の偏心部(126,226)を、上記フロント軸(140)側から上記リア軸(240)側に順に、研磨加工する工程と、
上記リア軸(240)を再度研磨加工する工程と
を順に行うことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215259(P2012−215259A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81580(P2011−81580)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】