説明

クレンジング化粧料

【課題】本発明の課題は、クレンジング効果、使用感、使用後のさっぱり感に優れ、且つ保存安定性も良好なクレンジング化粧料を提供することにある
【解決手段】
(A)トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランと、(B)高分子増粘剤と、(C)HLB9以上の非イオン性界面活性剤とを含有するクレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング化粧料に関する。さらに詳しくは、クレンジング効果、使用感、使用後のさっぱり感に優れ、且つ保存安定性も良好なクレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚上の皮脂汚れやメイクアップ化粧料を除去するためのクレンジング化粧料としては、液状油等を主成分とする油性クレンジング化粧料、油性成分を界面活性剤により乳化してクリーム状や乳液状にした乳化タイプのクレンジング化粧料、さらに水性成分や水溶性高分子を主成分とする水性クレンジング化粧料等が用いられてきた。
【0003】
これらのクレンジング化粧料には、環状シリコーン等の揮発性シリコーン油が多用されてきた(特許文献1〜5参照)。環状シリコーン油は、高いクレンジング効果を発揮し、なおかつすっきりと洗い流せる効果が高いなどの優れた特徴を有するが、クレンジング後のさっぱり感については、必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
また、使用感を向上させるために高分子増粘剤を配合したクレンジング化粧料では、クレンジング後のさっぱり感を上げるためにイソドデカン、イソヘキサデカン等の揮発性炭化水素油の配合が検討されてきたが、これら揮発性炭化水素油の配合量を上げると分離してしまう場合があり、他の油剤と組合わせる必要があるなど、その使用に制限があった(特許文献6参照)。
【0005】
トリス(トリメチルメトキシ)メチルシランは、高い揮発性を有するためメイクアップ化粧料への配合、また減粘剤として乳化化粧料への配合、さらには水溶性抗炎症剤の効果を高めるために皮膚外用剤への配合が検討されている(特許文献7〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−135406号公報
【特許文献2】特開平8−245357号公報
【特許文献3】特開2002−255787号公報
【特許文献4】特開2009−242340号公報
【特許文献5】特許第4274491号公報
【特許文献6】特開2009−242340号公報
【特許文献7】国際公開第01/15658号公報
【特許文献8】特開2010−138113号公報
【特許文献9】特開2010−248127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、クレンジング効果、使用感、使用後のさっぱり感に優れ、且つ保存安定性も良好なクレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、分岐状の揮発性シリコーンであるトリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、高分子増粘剤及びHLB9以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせて配合すると、クレンジング効果が高く、使用時には重さがなく、なめらかで皮膚上での伸びが良く、すすぎ性に優れると共に、使用後におけるさっぱりとした感触にも優れ、さらに保存安定性も良好なクレンジング化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランと、(B)高分子増粘剤と、(C)HLB9以上の非イオン性界面活性剤とを含有するクレンジング化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クレンジング効果、使用感、使用後のさっぱり感に優れ、さらに保存安定性も良好なクレンジング化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明の成分(A)であるトリス(トリメチルシロキシ)メチルシランは、化学式((CH33SiO)3SiCH3で表される分岐状のシリコーン化合物である。トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランは市販されているものを用いることができ、例えば、TMF−1.5(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0013】
本発明における成分(A)の含有量は、クレンジング化粧料の総量を基準として、好ましくは0.5質量%以上(以下、単に%と略す。)、より好ましくは1%以上、更に好ましくは3%以上、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。
【0014】
これらの範囲内であれば、より高いクレンジング効果が発揮され、使用後のさっぱり感がより優れたものとなる。
【0015】
本発明の成分(B)である高分子増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー等の合成高分子や、キサンタンガム、カラギニン、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スターチ等の天然高分子又は半合成高分子が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、使用時のなめらかさ、皮膚上での伸びの良さ、クレンジング化粧料の安定性の面で特に優れる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸とメタクリル酸アルキルの共重合体であり、例えば、PEMULEN TR−1(B.F.Goodrich社製)、PEMULEN TR−2(B.F.Goodrich社製)、Carbopol 1382(B.F.Goodrich社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明における成分(B)の含有量は、クレンジング化粧料の総量を基準として、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、そして、好ましくは10%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは3.0%以下である。
【0018】
これらの範囲内であれば、使用時の感触と製剤の安定性がより優れたものとなる。
【0019】
本発明における成分(C)の非イオン性界面活性剤は、HLB9以上のものである。
【0020】
ここで、HLB(親水性・親油性バランス)は、グリフィン(Griffin)の式(J,Soc,Cosmet,Chem.,1,311(1949);5,249(1953))により計算されるものである。
【0021】
本発明で用いる成分(C)の非イオン性界面活性剤は、そのHLBが9以上の非イオン性界面活性剤であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられ、これらは必要に応じて、単独又は2種以上適宜選択して組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく用いられる。
【0022】
本発明において、2種以上の非イオン性界面活性剤を組合わせる場合は、個々のHLBにそれぞれの割合を乗じたものを合計して得られる混合HLBが9以上であればよい。HLBの上限は特に設けないが、好ましくは20以下である。本発明では、HLBが9以上17以下の非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましく、特に好ましくはHLBが9以上15以下のものを用いる。これらの範囲であれば、高いクレンジング効果と素早いすすぎ性を両立させることができる。
【0023】
本発明における成分(C)の含有量は、クレンジング化粧料の総量を基準として、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、そして、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5.0%以下である。
【0024】
これらの範囲内であれば、クレンジング効果、及び使用後の使用感の面でより優れたクレンジング化粧料が得られる。
【0025】
本発明のクレンジング化粧料には、上記必須成分の他に、通常用いられる他の成分を適宜加えることができる。例えば、水、エデト酸塩等のキレート剤、保湿剤、油性成分、美白剤、血行促進剤、抗炎症剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、感触向上剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、動植物抽出物等を挙げることができ、これらを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0026】
油性成分は、主に感触調整を目的として配合され、例えばエステル油、炭化水素油、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸、エーテル油、高級アルコール等が挙げられるが、特にエステル油やシリコーン油は、本発明の効果であるすすぎ後のさっぱり感に及ぼす影響が小さいので好ましく用いられる。
【0027】
本発明における油性成分の含有量は、クレンジング化粧料の総量を基準として、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1%以上、そして、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0028】
本発明のクレンジング化粧料は常法に従って、所定の成分を適宜混合することによって得られ、混合する順序によらず、全成分を均一に混合・分散することにより製造することができる。
【0029】
また、使用方法としては、拭き取り使用、洗い流し使用のいずれであっても好適である。
【0030】
本発明のクレンジング化粧料は、特に、ファンデーション、マスカラ、アイライナー、サンスクリーン等を除去するために好適に使用することができる。
【0031】
本発明のクレンジング化粧料は、液状、乳液状、ペースト状、ゲル状等の剤型にして使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明に関して、実施例をもって詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0033】
表1に記載の配合組成よりなるクレンジング化粧料を常法により調製し、使用試験及び保存安定性試験を、下記の方法にて実施した。
<使用試験>
【0034】
女性専門パネラー20名の顔面に市販の油性ファンデーションを塗布し、その30分後、実施例又は比較例のクレンジング化粧料約2gを用い、1分間一定の力及び速さで顔面を手でマッサージし、その後水で洗い流した。
【0035】
そして(1)使用感(塗付時の伸び)、(2)クレンジング効果、(3)すすぎ後の感触(さっぱり感)の各項目について評価し、下記基準により5段階評価した。結果を平均値で、表1に併せて示した。
5;非常に良い
4;良い
3;普通
2;やや悪い
1;悪い
<保存安定性試験>
【0036】
試料を50mLの透明ガラス製容器に入れて密封し、45℃の恒温槽に3ヶ月保存し、目視判定により下記の基準で評価した。その結果を表1に併せて示した。
◎;外観の変化が全くなく、油浮きや分離などが観察されない。
○;ごく僅かに油浮きや分離が認められる。
△;油浮きや分離が認められる。
×;明らかに油浮きや分離が認められる。
【0037】
【表1】

【0038】
表1より明らかなように、本発明の成分を用いた実施例1〜13のクレンジング化粧料は、使用感(塗布時の伸び)、クレンジング効果、すすぎ後の感触(さっぱり感)及び保存安定性の全ての項目において優れた性能を示していた。
【0039】
一方、本発明のいずれかの構成を欠く比較例1〜6、比較例8では、使用試験のいずれかの項目又は保存安定性において低い評価を示しており、本発明の目的を達成できなかった。
【0040】
尚、比較例7のクレンジング化粧料は、調製後すぐに分離してしまうため、使用試験は行わなかった。
【0041】
以下、本発明のクレンジング化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。尚、これらの実施例のクレンジング化粧料についても、使用感(塗布時の伸び)、クレンジング効果、すすぎ後の感触(さっぱり感)及び保存安定性において、優れた特性を有するものであった。
【0042】
<実施例14(クレンジングミルク)>
(配合成分) (質量%)
・トリス(トリメチルメトキシ)メチルシラン 3.0
(商品名:TMF−1.5;信越化学工業株式会社製)
・イソノナン酸イソノニル 5.0
・オリーブ油 3.0
・α−オレフィンオリゴマー 6.0
・ジメチコン(100cst(0.0001m2/s)) 3.0
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=12.5) 2.0
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 3.0
(HLB=10.9)
・エタノール 3.0
・ジプロピレングリコール 10.0
・グリセリン 10.0
・アクリル・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2
(商品名:PEMULEN TR−1;B.F.Goodrich社製)
・キサンタンガム 0.04
・エデト酸二ナトリウム 0.03
・ビフィズス菌エキス 0.1
(商品名:カルチャーB.B.;クルトリヒター社製)
・ホエイエキス 0.1
(商品名:ホエイCPA;一丸ファルコス社製)
・ハチミツ 0.1
(商品名:精製蜂蜜;アピ社製)
・レモンエキス 0.1
(商品名:レモンエキストラリキッド;一丸ファルコス社製)
・カロット液汁 0.1
(商品名:ホモ フルーツ キャロット/N;エスペリス社製)
・シイクワシャー果皮エキス 0.1
(商品名:シークワーサーエキスBG;日油社製)
・水酸化カリウム 0.1
・フェノキシエタノール 0.1
・精製水 残 部
【0043】
<実施例15(クレンジングミルク)>
(配合成分) (質量%)
・トリス(トリメチルメトキシ)メチルシラン 20.0
(商品名:TMF−1.5;信越化学工業株式会社製)
・ジメチコン(6cst(0.000006m2/s)) 20.0
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB=12.5) 4.0
・トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.0
(20E.O.、HLB=10.5)
・グリセリン 10.0
・アクリル・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
(商品名:PEMULEN TR−1;B.F.Goodrich社製)
・ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 1.0
(商品名:STRUCTURE XL;アクゾノーベル社製)
・キサンタンガム 0.05
・エデト酸二ナトリウム 0.05
・メチルパラベン 0.25
・水酸化カリウム 0.05
・シルク抽出液 0.1
(商品名:シルクプロテインエキス;一丸ファルコス社製)
・L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム 0.01
・カンゾウ抽出末 0.1
(商品名:カンゾウ抽出液;丸善製薬社製)
・ラミナリアオクロロイカエキス 0.1
(商品名:LAMINAINE−BG;
Biotech Marine社製)
・水溶性コラーゲン 0.1
(商品名:Solu−Mar Native;Arch社製)
・フェノキシエタノール 0.3
・精製水 残 部
【0044】
<実施例16(クレンジングクリーム)>
(配合成分) (質量%)
・トリス(トリメチルメトキシ)メチルシラン 0.5
(商品名:TMF−1.5;信越化学工業株式会社製)
・流動パラフィン 54.4
・トリベヘン酸グリセリル 2.5
・ステアリン酸 1.4
・モノステアリン酸グリセリル(HLB=4.0) 1.4
・パルミチン酸セチル 1.5
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.25
(20E.O.、HLB=14.9)
・モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 3.4
(6E.O.、HLB=9.5)
・ジメチコン(100cst(0.0001m2/s)) 0.5
・イソノナン酸イソノニル 0.5
・N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 1.1
(商品名:アミソフトHS−11P;味の素社製)
・ジプロピレングリコール 3.5
・カルボキシビニルポリマー 0.02
(商品名:シンタレンK;和光純薬社製)
・エデト酸二ナトリウム 0.02
・カンゾウ葉エキス 0.1
(商品名:甘草葉抽出液;丸善製薬社製)
・センキュウエキス 0.1
(商品名:センキュウ抽出液BG;丸善製薬社製)
・タイソウエキス 0.1
(商品名:タイソウ抽出液BG−J;丸善製薬社製)
・チンピエキス 0.1
(商品名:チンピ抽出液BG40;丸善製薬社製)
・トウニンエキス 0.1
(商品名:ファルコレックス トウニン B;
一丸ファルコス社製)
・ヨクイニンエキス 0.1
(商品名:ヨクイニン抽出液BG−S;丸善製薬社製)
・ニコチン酸アミド 0.01
・フェノキシエタノール 0.2
・精製水 残 部
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって使用感(塗布時の伸び)、クレンジング効果、使用後のさっぱり感に優れ、且つ保存安定性が良好なクレンジング化粧料を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランと、(B)高分子増粘剤と、(C)HLB9以上の非イオン性界面活性剤とを含有するクレンジング化粧料。
【請求項2】
成分(B)の高分子増粘剤が、アルキル変性カルボキシビニルポリマーである請求項1に記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
成分(C)のHLB9以上の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のクレンジング化粧料。
【請求項4】
成分(C)のHLBが9〜17の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレンジング化粧料。

【公開番号】特開2012−180305(P2012−180305A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44090(P2011−44090)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】