説明

クレーンシステム

【課題】複数のクレーンを効率的に運転するクレーンシステムを提供する。
【解決手段】システムコントローラ5は、受電部4と複数のクレーンの電力を受信する送受信部と、受電部電力が最大電力を超えないように荷役コマンドに対応したクレーン最大電力を生成するクレーン最大電力生成部を備え、クレーンは操作信号と荷役コマンドと最大電力に基づいて巻上部・走行部・横行部・起伏部の速度プロファイルを生成しこれより位置指令を生成して各部のインバータに位置指令を送信しインバータから状態情報を受信するクレーンコントローラと、商用電源から第1直流電源を生成するコンバータと、第1直流電源から前記位置指令に基づいて交流電源を生成し巻上部・走行部・横行部・起伏部のモータを駆動する複数のインバータと、第1直流電源と第2直流電源の間にあり双方向に電力を変換するチョッパと、第2直流電源に接続した蓄電部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源と蓄電部を使用し省エネを実現するクレーンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の省エネを目的としたクレーンシステムは、特許文献1、2に開示されている。
図8、9は特許文献1に開示されたクレーン装置の電力供給系のブロック図である。図8、9において、101はエンジンで、回転数を発電電力との関係で制御できる。102は発電装置で、発電機単体か又はそれと変換装置とからなる。バッテリ103の充電および各電動モータ等の急変負荷および長時間稼働に対応するために、低圧大電流を発生する発電機単体か、又は、高電圧発電機と電流変換器とからなる装置として構成される。バッテリ103は、発電装置102から各電動モータ等への給電が不足したとき、又は発電装置102のバックアップのために設けられる。
【0003】
104は電力コントローラで、発電装置102で発生させた電力をバッテリ103に充電し、また、負荷となる伸縮用電動シリンダー用電動機(アタッチメント用電動機)107A、起伏用電動シリンダー用電動機107B、旋回用電動発電機106、走行用電動機105、ウインチ用電動発電機108に発電装置102およびバッテリ103の電力を適切に給電制御し、場合により、負荷となる伸縮用電動シリンダー用電動機107A、起伏用電動シリンダー用電動機107B、走行用電動機105に発電装置102、旋回用電動発電機106、ウインチ用電動発電機108およびバッテリ103の電力を適切に給電制御し、また、急激に負荷が大きくなった電動機等に対し、発電装置102の発電電力を増加又は減少するように給電制御する。
【0004】
負荷の緊急性を判断して発電装置102の電力をバッテリ103へ給電せず、特定の負荷のみに給電するように制御することもある。電力コントローラ104での各電動機等の制御態様はトルクを重視したもの、回転精度を重視したもの等がある。
走行用電動機105は、クレーンに負荷がかかった状態でも走行可能となるように、トルクが比較的大きく、始動特性が良好な電動機で制御回路も備えて走行特性は良好である。
旋回用電動発電機106は、旋回動作中は電動機として動作し、旋回終了動作時は電磁ブレーキ作用を奏する発電機として動作して回生発電し、発生した電力は電力コントローラ104を介してバッテリ103に充電する。電動発電機を用いることにより、ブレーキ動作により回生発電でき、微妙な制御ができる。
【0005】
伸縮用電動シリンダー用電動機107Aは、ブームを伸縮するための駆動源、起伏用電動シリンダー用電動機107Bは、ブームの起伏を行なうための駆動源であって、それぞれ従来の油圧系でのピストン・シリンダーのような伸縮・起伏動作機構を駆動するための駆動源である。伸縮・起伏動作機構としては、ボールネジとボールナットからなり、ボールネジの一方には駆動軸を有し、この駆動軸の先端は本体にベアリング支持すると共に歯車機構を介して電動機を連結し、ボールナットには摺動筒が一体に結合され、摺動筒を直線方向に駆動する機構として構成する。
【0006】
図10は特許文献2に開示されたクレーン制御システムの構成図、図11は制御方法を示すフローチャートである。クレーン制御システム201 は、クレーン本体に実装可能であり、商用電源208 からの電力とクレーンのモータ207 からの回生電力を蓄電する蓄電手段202 と、蓄電手段202の蓄電量と商用電源208の電力供給量を監視して蓄電手段202への充放電のスイッチングを制御する制御手段203と、商用電源208からの供給電力とモータ207からの回生電力を蓄電手段に蓄電可能に変換する変換手段204と、変換手段204 によって変換された電力をモータ207に供給し、モータ207からの回生電力を変換手段に供給する電力供給手段205と、蓄電手段202と変換手段204の間に設けられ、蓄電手段202の自然放電による電圧の印加を防止する安全手段206と、を備える。
【0007】
蓄電手段202は、リチウム電池などの従来周知のバッテリや電気2重層コンデンサ、制御手段203 は、蓄電手段202 と商用電源208からの電力を検出する検出手段231と、数個の蓄電量のしきい値が記憶される記憶手段232と、蓄電手段の蓄電量の測定値としきい値とを比較する比較手段233からなる電気回路で構成され、蓄電手段202の蓄電量と商用電源208の電力供給量を監視して蓄電手段202への充放電のスイッチングを行う。
蓄電手段202の蓄電量が上限を超えた場合には、制御手段203から蓄電手段202に対して充電を停止させ、過充電を防止する。
【0008】
また、蓄電手段202 の蓄電量が下限を超えた場合、或いは蓄電手段202に何らかの異常が発生した場合には、クレーンの運転最大速度を自動制御し、商用電源208の電力が一定量を超えないように制御する。商用電源208に何らかの異常が発生した場合は、速やかにクレーンを停止させる。変換手段204は、D C − D C コンバータからなり、商用電源208からの供給電力とモータ207からの供給電力を蓄電手段2 に蓄電可能に変換するように構成される。電力供給手段205 は、コンバータ・インバータからなり、変換手段204によって変換された電力を前記モータ207に供給し、モータ207からの回生電流を変換手段204 に供給するように構成される。
安全手段206 は、コンタクタからなり、蓄電手段202と変換手段204の間に設けて、クレーンの不使用時に蓄電手段202の長時間の自然放電による電圧の印加を防止することができるように、電気的に回路の切り離しが可能なように構成する。
【0009】
図11は特許文献2に開示されたクレーン制御システムのフロー図である。制御手段203の記憶手段232に、蓄電手段202の蓄電量のしきい値を設定する。第1しきい値、第2しきい値、充電しきい値とする3つの値を設定する。第1しきい値は、クレーンのモータ207を蓄電手段202単体によって駆動させる蓄電量の最低値を示すしきい値であり、第2しきい値は、クレーンのモータ207を蓄電手段202と商用電源208を併用して駆動させる蓄電量の最低値を示すしきい値であり、充電しきい値は、商用電源208 から蓄電手段202に充電を行うか否かを判定するしきい値である。
各しきい値の最適値は、クレーンの動作パターンの割合や消費電力の傾向を考慮しながら変更する。
【0010】
始めに、手順300において、クレーンが待機中であるかどうかを判定し、YESの場合には手順310に進み、NOの場合には手順400に進む。手順310において、蓄電量が充電しきい値以下であるかどうかを判定し、YESの場合には、制御手段203によって充放電を切り替え、商用電源208から蓄電手段202に規定量になるまで蓄電を行う。蓄電中は、充電しきい値の判定は無視して蓄電を行う。NOの場合には手順300に戻る。手順400において、蓄電手段202の蓄電量が第1しきい値以上であるかどうかを判定し、YESの場合には蓄電手段202からの電力のみでモータ207を駆動する。N Oの場合には、次の手順500に進む。手順500において、蓄電量が第2しきい値以上であるかどうかを判定し、YESの場合には蓄電手段202からの電力と商用電源208の電力の併用によってモータ207を駆動する。NOの場合には、商用電源8 からの電力のみによってモータ207を限定的に駆動する。
【特許文献1】特開2001−206673号公報
【特許文献2】特開2007−166775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のクレーンシステムはいずれもクレーン1台に限定しており、複数のクレーンに言及するものはなかった。
本発明は、複数のクレーンを効率的に運転するクレーンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1記載の発明は、プログラムおよびクレーンからの操作信号に基づいて荷役コマンドを生成し複数台の前記クレーンに送信し前記クレーンから状態情報を受信するシステムコントローラと、前記荷役コマンドを受信し前記荷役コマンドと前記操作信号に基づいて荷を移動させ状態情報を前記システムコントローラに送信する複数の前記クレーンと、前記システムコントローラの前記プログラムを生成し前記クレーンの状態情報をモニタするHMIと、商用電源を受電し前記クレーンに前記商用電源を供給する受電部と、を備えるクレーンシステムにおいて、前記システムコントローラは、前記受電部と前記複数のクレーンの電力を受信する送受信部と、受電部電力が予め設定した最大電力を超えないように前記荷役コマンドに対応したクレーン最大電力を生成するクレーン最大電力生成部と、を備え、前記送受信部から前記最大電力を前記クレーンに送信し、前記クレーンは、前記操作信号と前記荷役コマンドと前記最大電力に基づいて巻上部・走行部・横行部・起伏部の速度プロファイルを生成し前記速度プロファイルから位置指令を生成して各部のインバータに前記位置指令を送信し前記インバータから状態情報を受信するクレーンコントローラと、前記クレーンを手動で操作するための操作信号を生成する操作パネルと、前記商用電源から第1直流電源を生成するコンバータと、前記第1直流電源から前記位置指令に基づいて交流電源を生成し前記巻上部・走行部・横行部・起伏部のモータを駆動する複数のインバータと、前記第1直流電源と第2直流電源の間にあり双方向に電力を変換するチョッパと、前記第2直流電源に接続した蓄電部と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記インバータは、前記位置指令とモータ位置から速度指令を生成する位置制御部と、前記速度指令とモータ速度からトルク指令を生成する速度制御部と、前記トルク指令に基づいてインバータの電流を制御するトルク制御部と、前記モータ位置を擬似微分して前記モータ速度を生成するモータ速度生成部と、を備えることを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のクレーンシステムにおいて、前記巻上部のインバータは、停止時または定速時の前記トルク指令から荷重を算出するとともに前記モータ位置から巻上量を算出し、前記荷重と前記巻上量を前記クレーンコントローラに送信することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記受電部および前記クレーンは使用した電力を計算しシステムコントローラに送信する送受信部を備えることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記蓄電部は前記クレーンの荷の最大巻上量の位置エネルギーを蓄えることができる容量をもつことを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、前記蓄電部の残蓄電量を監視し、前記残蓄電量があらかじめ設定した充電禁止レベルに到達したときは充電動作を禁止し、あらかじめ設定した放電禁止レベルに到達したときは放電を禁止するよう前記チョッパを動作させることを特徴とするものである。
請求項7記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、残蓄電量と前記荷重から巻上部の巻下げ可能量を演算し、状態情報量の一つとして前記システムコントローラに送信することを特徴とするものである。
請求項8記載の発明は、請求項6記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、前記電力量が最大電力量に到達し、前記蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達していないときは前記蓄電部が放電するように前記チョッパを動作させることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項6記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、前記電力量が最大電力量に到達し、前記蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達しているときは、クレーン速度を半減させ、速度半減の状態情報をシステムコントローラに送信することを特徴とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、巻上時は放電禁止レベルに到達するまで蓄電部を放電させ、放電禁止レベルに到達したら放電を禁止し、巻下時は充電禁止レベルに到達するまで蓄電部を充電し、充電禁止レベルに到達したら充電を禁止するように前記チョッパを動作させることを特徴とするものである。
請求項11記載の発明は、請求項1記載のクレーンシステムにおいて、前記クレーンコントローラは、前記位置指令とモータ位置から速度指令を生成する位置制御部を備えて、各部のインバータに前記速度指令を送信し、前記インバータから状態情報を受信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると複数のクレーンを効率的に運転するクレーンシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、構成について説明する。
図1は、本発明のクレーンシステムの構成を示すブロック図である。図1において、1〜3は、第1クレーン、第2クレーン、第nクレーンである。ここでnは任意の整数である。4は受電部、5はシステムコントローラ、6はHMI(ヒューマンマシンインタフェース)、7は商用電源である。
図2はクレーンの構成を示すブロック図である。図2において10はクレーンコントローラ、11は操作パネル、12はコンバータである。また、13は巻上用インバータ、14は巻上モータ、15は巻上機、16は走行用インバータ、17は走行用モータ、18は走行機である。また、19は横行用インバータ、20は横行モータ、21は横行機、22は起伏用インバータ、23は起伏モータ、24は起伏機である。また25は充放電部、26は蓄電部である。図1のCNVはコンバータ、CNTはコントローラ、OPPは操作パネル、ChPはチョッパ、BTRが蓄電部、INVはインバータ、Mはモータ、矢印はクレーンの巻上部、走行部、横行部、起伏部を示す。
図3はシステムコントローラ5の構成を示すブロック図である。図3において、31、34は送受信部、32はプログラム解析部、33はコマンド生成部、35は最大電力生成部、36は状態情報解析部、37はアラーム生成部である。
【0019】
図4は受電部4の構成を示すブロック図である。図4において、41は送受信部、42は電圧検出部、43は電流検出部、44は電力演算部である。
図5はコンバータ12の構成を示すブロック図である。図5において、51はダイオードブリッジ、52は電圧検出部、53は電流検出部、54は電力演算部、55は送受信部である。
図6はクレーンコントローラの構成を示すブロック図である。図6において、61、64は送受信部、62は速度プロファイル生成部、63は位置指令・速度指令生成部、65は電力演算部、66は巻下可能量演算部、67は蓄電量演算部、68は充放電制御部、69は荷重演算部、70は巻上量演算部である。
図7はインバータの構成を示すブロック図である。図7において、81は送受信部、82は位置制御部、83は速度制御部、84はトルク制御部、85はモータ速度生成部である。
【0020】
次に動作について説明する。
オペレータはHMIを通して各クレーンの状態情報を取得し、HMIが備えている干渉防止や高効率運転を考慮したスケジューリング機能を使用し、最適な荷役スケジュールを決定する。
システムコントローラはHMIから荷役スケジュールやパラメータ、各クレーンの操作信号を読込み、コマンド生成プログラムを実行し、複数のクレーンの各部(巻上、走行、横行、起伏)の速度プロファイルを生成する。同時に、設定されたパラメータや状態情報から取得した荷重と速度プロファイルに基づいて各クレーンごとの最大電力を決定し、各クレーンに送信する。さらに速度プロファイルから位置決めコマンドを生成し、各クレーンに送信するとともに各クレーンから状態情報を受信する。ここで状態情報は、各クレーンの姿勢、巻上部の巻上量、荷重、現在の消費電力、各部の位置、速度、トルク指令、蓄電量、異常情報などである。また、各クレーンの操作信号の優先順位が高いときは、荷役スケジュールを変更する。
【0021】
受電部4は商用電源7から3相交流電圧を受電し、各クレーン1〜4に配電する。さらに受電部4は電圧検出部42と電流検出部43により演算周期ごとに3相交流電圧・電流を検出し、電力演算部36で同相の電圧と電流を乗算して3相分を加算して電力を演算する。
P=Vr×Ir+Vs×Is+Vt×It (1)
ここでVr,Vs、VtはそれぞれR相、S相、T相の相電圧、Ir、Is、ItはそれぞれR相、S相、T相の相電流である。演算した受電電力は、システムコントローラの状態情報要求コマンドにレスポンスとして送信する。
【0022】
コンバータ12は、配電された3相交流電圧を直流に変換し各部のインバータに電力を供給するとともに直流電圧および直流電流を検出して送信用バッファメモリに記憶し、クレーンコントローラの状態情報要求コマンドのレスポンスとしてクレーンコントローラへ送信する。ここで直流電流と直流電圧を乗算して消費電力をもとめ、電力を状態情報として伝送することもできる。
【0023】
クレーンコントローラは、荷役コマンドの移動コマンドと最大電力に基づいて巻上部、走行部、横行部、起伏部の速度プロファイルを作成し、速度プロファイルから制御時間ごとの位置指令を生成して各部のインバータに位置指令を送信する。また各インバータから位置、速度、トルク指令、異常情報などの状態情報を受信する。また、クレーンコントローラは、蓄電部の残蓄電量を監視し、残蓄電量があらかじめ設定した充電禁止レベルに到達したときはチョッパの充電動作を禁止し、あらかじめ設定した放電禁止レベルに到達したときはチョッパの放電を禁止する。
【0024】
さらに、クレーンコントローラは、残蓄電量と荷重から巻上部の巻下げ可能量を演算し、状態情報量の一つとしてシステムコントローラに送信する。クレーンコントローラは、電力量が最大電力量に到達し、蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達していないときは蓄電部が放電するようにチョッパを動作させる。さらに、クレーンコントローラは、電力量が最大電力量に到達し、蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達しているときは、クレーン速度を半減させ、速度半減の状態情報をシステムコントローラに送信する。
【0025】
さらにクレーンコントローラは、巻上部の巻上量を監視し、巻上時には、蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達していなければ蓄電部を放電させるようにチョッパを動作させ、放電禁止レベルに到達していれば放電を禁止するようにチョッパを動作させ、巻下時には、蓄電部の残蓄電量が充電禁止レベルに到達していなければ蓄電部に充電するようにチョッパを動作させ、充電禁止レベルの到達レベルに到達していれば充電を禁止するようにチョッパを動作させる。
【0026】
さらにクレーンコントローラは、蓄電部の残蓄電量を読込む。蓄電部がバッテリの場合には、電圧を読み込み、あらかじめ、格納してある温度をパラメータにした電圧・残蓄電量のテーブルを参照して、残蓄電量を算出する。
【0027】
各部インバータは、位置制御部で位置指令とモータ位置から速度指令を生成し、速度制御部で速度指令とモータ速度からトルク指令を生成する。また、トルク制御部は、トルク指令を電流指令に変換し、電流指令とモータ電流からPWM信号を生成して電力変換部を駆動し、モータに電流を流す。モータ速度生成部は、モータ位置を擬似微分してモータ速度を生成する。巻上用インバータは、モータ位置から巻上量を算出し、巻上量とトルク指令から荷重を算出し、状態情報として巻上量と荷重をクレーンコントローラに送信する。状態情報として位置、速度、トルク指令をクレーンコントローラに送信し、巻上量と荷重はクレーンコントローラで算出してもよい。システム設計上の選択で決定される。
【0028】
チョッパは、クレーンコントローラからの動作指令を受けて蓄電部の充電または放電を行う。放電しているときの商用電源との電力配分は、通常は商用電源の最大電力量を超えた分を蓄電部の放電で補い、巻上時および巻下時は、巻上電力を放電し、巻下電力を充電する。また、充電部の適正充電量は巻上量によって決定し、巻上量が0のときはほぼ充電禁止レベルまで充電しておき、巻上量が最大のときは、残充電量が荷のポテンシャルエネルギーをすべて吸収できるレベルにしておく。
【0029】
蓄電部は、最大巻上荷重および巻上量によって決定されるポテンシャルエネルギーすべて吸収できる容量に選定される。たとえば質量M(kg)、巻上量H(m)、重力加速度g(m/s)、蓄電部電圧E(V)であれば、少なくともM×H×g/E/3600(AH)の容量が必要である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のクレーンシステムは、電源効率がよいので、クレーンだけではなく複数の昇降機を扱うすべてのシステムへの適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のクレーンシステムの構成を示すブロック図
【図2】本発明のクレーンの構成を示すブロック図
【図3】本発明のシステムコントローラ5の構成を示すブロック図
【図4】本発明の受電部の構成を示すブロック図
【図5】本発明のコンバータの構成を示すブロック図
【図6】本発明のクレーンコントローラの構成を示すブロック図
【図7】本発明のインバータの構成を示すブロック図
【図8】従来のクレーン装置の電力供給系のブロック図
【図9】従来のクレーン装置の電力供給系のブロック図
【図10】従来のクレーン制御システムの構成図
【図11】従来のクレーンの制御方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0032】
1、2、3 第1クレーン、第2クレーン、第nクレーン
4 受電部
5 システムコントローラ
6 HMI
7 商用電源
10 クレーンコントローラ
11 操作パネル
12 コンバータ
13 巻上用インバータ
14 巻上モータ
15 巻上機
16 走行用インバータ
17 走行用モータ
18 走行機
19 横行用インバータ
20 横行モータ
21 横行機
22 起伏用インバータ
23 起伏モータ
24 起伏機
25 充放電部
26 蓄電部
31、34 送受信部
32 プログラム解析部
33 コマンド生成部
35 最大電力生成部
36 状態情報解析部
37 アラーム生成部
41 送受信部
42 電圧検出部
43 電流検出部
44 電力演算部
51 ダイオードフブリッジ
52 電圧検出部
53 電流検出部
54 電力演算部
55 送受信部
61、64 送受信部
62 速度プロファイル生成部
63 位置指令・速度指令生成部
65 電力演算部
66 巻下可能量演算部
67 蓄電量演算部
68 充放電制御部
69 荷重演算部
70 巻上量演算部
81 送受信部
82 位置制御部
83 速度制御部
84 トルク制御部
85 モータ速度生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムおよびクレーンからの操作信号に基づいて荷役コマンドを生成し複数台の前記クレーンに送信し前記クレーンから状態情報を受信するシステムコントローラと、前記荷役コマンドを受信し前記荷役コマンドと前記操作信号に基づいて荷を移動させ状態情報を前記システムコントローラに送信する複数の前記クレーンと、前記システムコントローラの前記プログラムを生成し前記クレーンの状態情報をモニタするHMIと、商用電源を受電し前記クレーンに前記商用電源を供給する受電部と、を備えるクレーンシステムにおいて、
前記システムコントローラは、前記受電部と前記複数のクレーンの電力を受信する送受信部と、受電部電力が予め設定した最大電力を超えないように前記荷役コマンドに対応したクレーン最大電力を生成するクレーン最大電力生成部と、を備え、前記送受信部から前記最大電力を前記クレーンに送信し、
前記クレーンは、前記操作信号と前記荷役コマンドと前記最大電力に基づいて巻上部・走行部・横行部・起伏部の速度プロファイルを生成し前記速度プロファイルから位置指令を生成して各部のインバータに前記位置指令を送信し前記インバータから状態情報を受信するクレーンコントローラと、前記クレーンを手動で操作するための操作信号を生成する操作パネルと、前記商用電源から第1直流電源を生成するコンバータと、前記第1直流電源から前記位置指令に基づいて交流電源を生成し前記巻上部・走行部・横行部・起伏部のモータを駆動する複数のインバータと、前記第1直流電源と第2直流電源の間にあり双方向に電力を変換するチョッパと、前記第2直流電源に接続した蓄電部と、を備えることを特徴とするクレーンシステム。
【請求項2】
前記インバータは、前記位置指令とモータ位置から速度指令を生成する位置制御部と、前記速度指令とモータ速度からトルク指令を生成する速度制御部と、前記トルク指令に基づいてインバータの電流を制御するトルク制御部と、前記モータ位置を擬似微分して前記モータ速度を生成するモータ速度生成部と、を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項3】
前記巻上部のインバータは、停止時または定速時の前記トルク指令から荷重を算出するとともに前記モータ位置から巻上量を算出し、前記荷重と前記巻上量を前記クレーンコントローラに送信することを特徴とする請求項1または2記載のクレーンシステム。
【請求項4】
前記受電部および前記クレーンは使用した電力を計算しシステムコントローラに送信する送受信部を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項5】
前記蓄電部は前記クレーンの荷の最大巻上量の位置エネルギーを蓄えることができる容量をもつことを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項6】
前記クレーンコントローラは、前記蓄電部の残蓄電量を監視し、前記残蓄電量があらかじめ設定した充電禁止レベルに到達したときは充電動作を禁止し、あらかじめ設定した放電禁止レベルに到達したときは放電を禁止するよう前記チョッパを動作させることを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項7】
前記クレーンコントローラは、残蓄電量と前記荷重から巻上部の巻下げ可能量を演算し、状態情報量の一つとして前記システムコントローラに送信することを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項8】
前記クレーンコントローラは、前記電力量が最大電力量に到達し、前記蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達していないときは前記蓄電部が放電するように前記チョッパを動作させることを特徴とする請求項6記載のクレーンシステム。
【請求項9】
前記クレーンコントローラは、前記電力量が最大電力量に到達し、前記蓄電部の残蓄電量が放電禁止レベルに到達しているときは、クレーン速度を半減させ、速度半減の状態情報をシステムコントローラに送信することを特徴とする請求項6記載のクレーンシステム。
【請求項10】
前記クレーンコントローラは、巻上時は放電禁止レベルに到達するまで蓄電部を放電させ、放電禁止レベルに到達したら放電を禁止し、巻下時は充電禁止レベルに到達するまで蓄電部を充電し、充電禁止レベルに到達したら充電を禁止するように前記チョッパを動作させることを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。
【請求項11】
前記クレーンコントローラは、前記位置指令とモータ位置から速度指令を生成する位置制御部を備えて、各部のインバータに前記速度指令を送信し、前記インバータから状態情報を受信することを特徴とする請求項1記載のクレーンシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−263069(P2009−263069A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113817(P2008−113817)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】