説明

クロック信号生成装置

【課題】本発明は、温度特性、電源電圧特性、個体バラツキを吸収し、最適なノンオーバーラップ時間を有する2相クロック信号を確実に生成できる信頼性の高いクロック信号生成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路において使用される2相クロック信号の遅延時間を可変する可変遅延器と、2相クロック信号におけるHレベル区間のノンオーバーラップ時間を検出し、ノンオーバーラップ時間に応じた検出信号を出力するノンオーバーラップ検出器と、ノンオーバーラップ検出器からの検出信号に基づいて可変遅延器を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器をはじめとする離散時間型アナログ回路等で使用されるクロック信号生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信方式のブロードバンド化によるデータの高速化に伴い、デルタシグマ型A/D変換器に代表される離散時間(Discrete Time、以下、DTと略称)型アナログ回路の高速化が要求されている。この高速化要求により、クロック信号の動作タイミングが厳しくなってきている。図11の(a)に、DT型デルタシグマ型A/D変換器などで用いられる代表的な回路構成要素であるスイッチトキャパシタ(Switched Capacitor、以下、SCと略称)型積分器の例を示す。このSC型積分器は、Φ1のクロックタイミングを持つ制御信号によりON/OFFするスイッチ(以下、SWと略称)41aと、Φ2のクロックタイミングを持つ制御信号によりON/OFFするSW41bと、コンデンサ42a,42bと、オペアンプ40で構成される。
【0003】
図11の(b)にΦ1とΦ2のクロックタイミングを示す。Φ1のクロックタイミングがHレベルの区間でSW41aがON状態となり、積分器入力端43aから入力された信号がコンデンサ42aに信号電荷を蓄積する。このとき、SW41bはOFF状態である。次に、Φ1のクロックタイミングがLレベルになったとき、SW41aがOFF状態となり、コンデンサ42aへの信号電荷の蓄積動作が完了する。
【0004】
次に、Φ2のクロックタイミングがHレベル区間でSW41bがON状態となり、コンデンサ42aに蓄積された信号電荷がコンデンサ42bへ転送される。これにより、積分器出力端43bから入力信号を積分した信号が出力される。ここで、Φ1のクロックタイミングがLレベルになる前に、Φ2のクロックタイミングがHレベルになってしまうと、積分器入力端43aからの入力信号が、入力信号の電荷を保持する目的のコンデンサ42aだけでなく、同時にコンデンサ42bにも電荷を蓄積させてしまう。このように、Φ1のクロックタイミングのHレベルとΦ2のクロックタイミングのHレベルが重なると(オーバーラップすると)、当該SC型積分器は正しく積分器として動作しなくなる。そこで、図11の(b)に示されているように、Φ1、Φ2のクロックタイミングが同時にHレベルになることがないように、Φ1、Φ2のクロックタイミングが同時にLレベルとなるノンオーバーラップ時間を有するノンオーバーラップクロック信号が必要となる。
【0005】
一般的に、上記のノンオーバーラップ時間は遅延素子などを用いてタイミングを生成するため、電源電圧変動や温度変動の影響を受けて大きくばらつき、場合によってはノンオーバーラップ区間がなくなってしまったり、ノンオーバーラップ区間が長くなり過ぎてΦ1、Φ2のクロックタイミングのHレベル区間が短くなってしまうことがある。ノンオーバーラップ区間がなくなってしまった場合には、前述のとおりSC型積分器が誤動作を引き起こすという問題がある。また、Φ1、Φ2のクロックタイミングのHレベル区間が短くなった場合は、Φ1のクロックタイミングのHレベル区間で入力信号のコンデンサ42aへの蓄積動作を、Φ2のクロックタイミングのHレベル区間で積分動作を行うため、Hレベル区間が短くなることによって、オペアンプ40をはじめとする回路を高速動作させる必要が生じる。このため、従来のSC型積分器は回路の消費電力増加と面積増大につながるという問題を有している。したがって、SC型デルタシグマA/D変換器をはじめとしたDT型アナログ回路では、最適なノンオーバーラップクロック信号、すなわち、確実にノンオーバーラップ時間が確保され、かつ、クロックタイミングのHレベル区間が可能な限り長いクロック信号の生成が重要になってくる。
【0006】
図12は、特許文献1に示されている従来のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器の構成を示すブロック図である。
次に、図12のブロック図を参照して従来のノンオーバーラップクロック信号発生器について簡単に説明する。
【0007】
図12に示す2相クロック信号生成装置101は、CPUで構成された制御回路部103、動作環境を検出するための温度センサ106と電圧センサ107、2相クロック信号のノンオーバーラップ時間を調整するための調整用データが記憶されている記憶回路部105、および2相クロック信号を生成する2相クロック信号生成部104から構成される。
【0008】
制御回路部103は、温度センサ106および電圧センサ107が出力したセンサ信号に応じて、2相クロック信号のノンオーバーラップ時間を調整するための調整用データが記憶されている記憶回路部105から適切なデータを読み出して、2相クロック信号生成部104に設定用データを出力する。2相クロック信号生成部104は、制御回路部103より与えられた設定用データによってA相クロック信号とB相クロック信号間のオーバーラップ時間を可変設定できるように構成されている。このように構成された2相クロック信号生成装置101においては、ノンオーバーラップ時間の調整を行う。
【0009】
図13の(a)は図12に示した2相クロック信号生成装置101における2相クロック信号生成部104の構成を一部ブロックで示す回路図である。図13の(a)に示すように、2相クロック信号生成部104においては、マシンクロック信号出力部102より出力されたマシンクロック信号MCKが、インバータゲート108により信号IMCKに変換されて第1のORゲート109における一方の入力端子に入力される。また、マシンクロック信号MCKは第2のORゲート110における一方の入力端子に直接入力される。
【0010】
第1のORゲート109の出力信号(OR1)は、インバータゲート111を介してB相クロック信号として出力される。また、B相クロック信号は、第2のディレイ制御部(遅延回路部)112bにより遅延されたB相クロック信号(B−d)に変換されて第2のORゲート110の他方の入力端子に入力される。一方、第2のORゲート110の出力信号(OR2)は、インバータゲート113を介してA相クロック信号として出力される。また、A相クロック信号は、第1のディレイ制御部(遅延回路部)112aにより遅延されたA相クロック信号(A−d)に変換されて第1のORゲート109の他方の入力端子に入力される。
【0011】
図13の(b)は第1のディレイ制御部112aの構成を一部ブロックで示す回路図である。なお、第1のディレイ制御部112aと第2のディレイ制御部112bは同じ構成を有しているので、以下においては第1のディレイ制御部112aの構成について説明する。
【0012】
第1のディレイ制御部112aは、直列接続された2個のインバータゲート114a,114bからなる遅延バッファ114が複数段直列に接続されている。第1のディレイ制御部112aにおいては、1組の遅延バッファ114における伝搬遅延時間が調整用の遅延時間の1単位となっている。そして、初段の遅延バッファ114の入力端子と第1のディレイ制御部112aの出力端子との間、および各遅延バッファ114の出力端子と第1のディレイ制御部112aの出力端子との間には、スイッチ115がそれぞれ設けられており、各スイッチ115のON/OFF動作はデコーダ116の出力信号によって制御される。デコーダ116は、制御回路部103より出力された設定用データをデコードして、スイッチ115の何れか1つをONさせる制御信号を出力する。このように、2相クロック信号生成部104は、制御回路部103から出力された設定用データに基づいて第1および第2のディレイ制御部112a,112bの遅延値を制御し、A相クロック信号とB相クロック信号のノンオーバーラップ時間を調整する。
【特許文献1】特開2002−108492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上説明したように、従来のノンオーバーラップクロック信号発生器では、温度変動や電源電圧変動による遅延変動分をあらかじめメモリに蓄積させ、そのデータに基づいてディレイ制御部の遅延値を制御することにより、ノンオーバーラップ時間を調整していた。このため、従来のノンオーバーラップクロック信号発生器は、製造バラツキなどによる個体差の最適化が不可能であり、特に高速なクロック信号を必要とする回路では、ノンオーバーラップ時間に十分なマージンをとって設計する必要があるため、ノンオーバーラップ時間が最大、すなわち、ノンオーバーラップクロック信号のHレベル区間が最小にバラついたことを想定した設計が必要となる。この結果、従来のノンオーバーラップクロック信号発生器においては、回路の消費電力増加につながってしまい、さらには、温度センサ、電源電圧センサ、CPUなどを用いた大掛かりなシステムの構築が必要となるため回路規模が増大してしまうという課題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記の点に鑑み、温度特性、電源電圧特性、個体バラツキを吸収し、最適なノンオーバーラップ時間を有する2相クロック信号を確実に生成できる信頼性の高いクロック信号生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明に係る第1の観点のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路において使用される2相クロック信号の遅延時間を可変する可変遅延器と、
前記2相クロック信号におけるHレベル区間のノンオーバーラップ時間を検出し、前記ノンオーバーラップ時間に応じた検出信号を出力するノンオーバーラップ検出器と、
前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号に基づいて前記可変遅延器を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備える。このように構成された第1の観点に係るクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップ時間を検出して、その検出結果に応じて可変遅延器を制御することにより、ノンオーバーラップ時間を所望の値に調整できるため、最適なノンオーバーラップ時間の2相クロック信号を生成できる。
【0016】
上記のように、本発明に係る第1の観点のクロック信号生成装置においては、当該クロック信号生成装置から出力された2相クロック信号を検出し、当該2相クロック信号におけるノンオーバーラップ時間の検出結果に応じてノンオーバーラップ時間を決定づける可変遅延器の遅延時間を制御している。このため、第1の観点のクロック信号生成装置は、温度変動や、電源電圧変動だけでなく、製造バラツキによる個体差のバラツキがあっても、クロック信号生成装置の出力のHレベル区間がオーバーラップしてタイミング破綻を起こすことを確実に防止している。また、第1の観点のクロック信号生成装置は、温度変動、電源電圧変動、および/または製造バラツキによる個体差のバラツキがある条件下においても、前記バラツキによってノンオーバーラップ時間が長くなることを防ぎ、ノンオーバーラップクロック信号のHレベル区間を最大限長く設定することが可能になる。また、第1の観点のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップ回路を使用するDT型アナログ回路などの動作速度を緩和でき、低消費電力化、小面積化を実現することが可能となる。さらに、第1の観点のクロック信号生成装置は、CPU、温度センサ、および/または電圧センサなどを設けた大規模なシステムを構築する必要がないため、小型化が可能な構成となる。
【0017】
本発明に係る第2の観点のクロック信号生成装置は、前記第1の観点における前記ノンオーバーラップ検出器が、入力された2相クロック信号を比較する論理回路と、前記論理回路の出力を積分する積分回路と、を備える構成としてもよい。
【0018】
本発明に係る第3の観点のクロック信号生成装置は、前記第1または第2の観点における前記制御信号生成部が、所定のノンオーバーラップ時間に応じた基準信号を生成する基準電圧生成部と、前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号と前記基準信号とを比較し、制御信号を出力する比較器と、を備える構成としてもよい。
【0019】
本発明に係る第4の観点のクロック信号生成装置は、前記第1乃至第3の観点における前記可変遅延器が、2相クロック信号におけるHレベル区間のノンオーバーラップ時間を決定する論理素子部を有し、
前記論理素子部の電源電圧もしくはバックゲート電圧を制御信号により制御することにより、前記論理素子部の遅延量が調整されて前記ノンオーバーラップ時間が決定されるよう構成されている。このように構成された第4の観点のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップ時間を決定づける論理素子部における遅延量を調整することが可能となる。
【0020】
前述の背景技術において図13を用いて説明したように、従来のクロック信号生成装置においては可変遅延器の遅延量を可変遅延器内のインバータなどの単位遅延器の段数を変えることにより調整を行っていたため、単位遅延器の遅延量以下の調整は不可能であった。第4の観点のクロック信号生成装置においては、可変遅延器内の論理素子部の電源電圧やバックゲート電圧を制御信号により制御することにより、単位遅延器の遅延量以下の微小な調整が可能となる。このため、第4の観点のクロック信号生成装置は、微小な遅延量の調整が必要となる高速動作が求められるDT型アナログ回路などにおいて、ノンオーバーラップクロック信号のHレベル区間を最大限長く設定することが可能になり、低消費電力化、小面積化を図ることができる。
【0021】
本発明に係る第5の観点のクロック信号生成装置は、前記第1乃至第4の観点における前記ノンオーバーラップ検出器が、検出したノンオーバーラップ時間に応じた検出信号を保持する検出電圧保持回路を有し、前記制御信号生成部が前記検出電圧保持回路に保持された検出信号に基づいて制御信号を生成するよう構成されている。このように構成された第5の観点のクロック信号生成装置は、常にノンオーバーラップ検出器を動作させておく必要のない構成となり、低消費電力化が実現できる。
【0022】
本発明に係る第6の観点のクロック信号生成装置は、前記第1乃至第5の観点における前記制御信号生成部は、生成した制御信号を保持する制御電圧保持回路を有し、前記可変遅延器が前記制御電圧保持回路に保持された制御信号に応じて2相クロック信号の遅延時間を可変するよう構成されている。このように構成された第6の観点のクロック信号生成装置は、常にノンオーバーラップ検出器および制御信号生成部を動作させておく必要のない構成となり、低消費電力化が実現できる。
【0023】
本発明に係る第7の観点のクロック信号生成装置は、前記第1乃至第5の観点における前記制御信号生成部は、前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号に基づいたノンオーバーラップ時間を予め設定した所定値とデジタル的に比較し、当該比較結果に基づいて所望の制御信号値を生成する制御論理回路と、前記制御論理回路において生成された前記所望の制御信号値をデジタル値として記憶する記憶装置と、前記所望の制御信号値をアナログ値に変換するD/A変換器と、を備える。このように構成された第7の観点のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップ検出器から出力された検出信号からノンオーバーラップ時間が最適であるか否かをデジタル的に判定し、最適な制御信号値をデジタル値として記憶装置に保持でき、長時間の保持を実現することが可能となる。
【0024】
本発明に係る第8の観点のクロック信号生成装置は、前記第1乃至第7の観点における前記ノンオーバーラップ検出器が、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路内、若しくは前記負荷回路の入力端子に直接接続されている。このように構成された第8の観点のクロック信号生成装置は、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路までの配線などにおける寄生抵抗、寄生容量による影響を考慮した、最適なノンオーバーラップ時間に制御することが可能となる。このため、第8の観点のクロック信号生成装置は、配線による遅延、並びにクロック信号の立ち上がりおよび立ち下がりの鈍りによって、2相クロック信号のHレベル区間がオーバーラップすることを確実に防止し、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路の誤動作を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、温度特性、電源電圧特性、個体バラツキを吸収し、最適なノンオーバーラップ時間を有する2相クロック信号を確実に生成できる信頼性の高いクロック信号生成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る第1の実施の形態のクロック信号生成装置について図1から図4を参照して説明する。図1は、本発明に係る第1の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器の構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器は、可変遅延器1a,1bと、ノンオーバーラップ検出器2と、制御信号生成部3と、NAND論理素子4a,4bと、インバータ論理素子5a,5b,5c,5d,5e,5fと、クロック信号入力端子6aと、Φ1の位相を有するノンオーバーラップクロック信号Xの出力端子6bと、Φ2の位相を有するノンオーバーラップクロック信号Yの出力端子6cと、を備えている。
【0028】
図2は第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における信号波形を示しており、(a)はクロック信号入力端子6aに入力されたクロック信号A、(b)は出力端子6bから出力されたΦ1の位相を有するノンオーバーラップクロック信号X、(c)は出力端子6cから出力されたΦ2の位相を有するノンオーバーラップクロック信号Y、(d)はノンオーバーラップ検出器2において生成された信号B、(e)はノンオーバーラップ検出器2から制御信号生成部3へ入力される検出信号Cである。
【0029】
第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器は、図2の(b)と(c)に示したノンオーバーラップクロック信号Xとノンオーバーラップクロック信号Yを出力するように、可変遅延器1a,1bの遅延量Tdによりノンオーバーラップ時間を調整できるように構成されている。出力端子6bから出力されたΦ1の位相のノンオーバーラップクロック信号Xおよび出力端子6cから出力されたΦ2の位相のノンオーバーラップクロック信号Yは、負荷回路31であるノンオーバーラップクロック信号X,Yを使用する回路、例えばA/D変換器に入力される。また、生成されたノンオーバーラップクロック信号X,Yは、ノンオーバーラップ検出器2に入力される。
【0030】
ノンオーバーラップ検出器2は出力端子6b,6cより出力されたノンオーバーラップクロック信号X,Yのノンオーバーラップ量であるノンオーバーラップ時間を検出するように構成されている。図3はノンオーバーラップ検出器2の構成の一例を示す回路図である。本発明におけるノンオーバーラップ検出器2の構成は、図3に示した構成に限定されるものではないが、第1の実施の形態においては、図3に一例として示した構成を用いて説明する。
【0031】
図3のノンオーバーラップ検出器2は、NAND論理素子7と積分器8で構成される。積分器8の構成の一例として、図3においては、抵抗器9とコンデンサ10で構成したものを示している。ノンオーバーラップ検出器2においては、ノンオーバーラップクロック信号発生器の出力端子6b,6cから出力されたノンオーバーラップクロック信号X,Yが入力されて、NAND論理素子7が、2つのノンオーバーラップクロック信号XとYがともにLレベルの区間、すなわちノンオーバーラップである区間を検出して信号B(図2の(d)参照)を積分器8に出力する。積分器8は入力された信号Bを積分することにより、信号Bの波形を時間的に平均化した信号C(図2の(e)参照)の波形を、ノンオーバーラップ検出器2の検出信号Cとして出力する。したがって、検出信号Cは、信号Bの波形のHレベル区間が長ければ、すなわち、ノンオーバーラップ時間が長ければ、電源電圧により近い高い電圧となり、信号Bの波形のHレベル区間が短ければ、すなわち、ノンオーバーラップ時間が短ければ、GND電圧(零V)により近い低い電圧となる。ノンオーバーラップ時間が零の時、すなわち、Φ1の位相のノンオーバーラップクロック信号XおよびΦ2の位相のノンオーバーラップクロック信号YにおけるHレベル区間がオーバーラップしているとき、ノンオーバーラップ検出器2はGNDレベルの電圧(零V)を制御信号生成部3に出力する。
【0032】
制御信号生成部3は、ノンオーバーラップ検出器2の検出信号Cに基づき、可変遅延器1a,1bを制御する制御信号を出力するように構成されている。図4は制御信号生成部3の構成の一例を示すブロック図である。本発明における制御信号生成部3の構成は、図4に示した構成に限定されるものではないが、第1の実施の形態においては、図4に一例として示した構成を用いて説明する。
【0033】
図4の制御信号生成部3は、オペアンプ11と基準電圧生成部12とを備えている。制御信号生成部3は、ノンオーバーラップ検出器2からの検出信号Cと基準電圧Vrefとを比較し、検出信号Cと基準電圧Vrefとの大小関係によって、可変遅延器1aまたは1bに出力する制御信号D(図1においてはD1またはD2)の電圧を上下させている。すなわち、予め設定した基準電圧Vrefが、当該ノンオーバーラップクロック信号発生器において目標となるノンオーバーラップ時間の設定値に相当する。制御信号生成部3においては、ノンオーバーラップ検出器2において検出した実際のノンオーバーラップ時間が設定値よりも長いか短いかにより、出力する制御信号Dを変化させている。このように、ノンオーバーラップ検出器2と制御信号生成部3とにより可変遅延器1aまたは1bの遅延量を調整するという閉ループが形成されている。これにより、温度変動、電源電圧変動、個体差バラツキなどがあっても、それらに影響されることなく、常に最適なノンオーバーラップ時間を保つことが可能となる。
【0034】
なお、第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器においては、基準電圧Vrefが固定値である必要はなく、自由に設定できるように構成してもよい。また、第1の実施の形態では、説明をわかりやすくするために、ノンオーバーラップ検出器2と制御信号生成部3を別の機能ブロックとして説明したが、1つの機能ブロックに統合した構成としてもよい。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器について説明する。第2の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成は、前述の図1に示した第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の構成と同じである。したがって、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1の実施の形態の説明を適用する。
【0036】
第2の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器では、制御信号生成部3からの制御信号を受けて遅延量を調整することができる可変遅延器について説明する。図5の(a)は、第2の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における可変遅延器1の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態における可変遅延器1は、第1の実施の形態における可変遅延器1a,1bのそれぞれに対応するものである。
【0037】
可変遅延器1は、1個若しくはそれ以上を従属接続した論理素子14と、可変遅延器入力端子13aと、可変遅延器出力端子13bと、制御信号入力端子15とを有する。第2の実施の形態においては、論理素子14としてインバータを使用した例で説明するが、本発明においては論理素子14をインバータに限定するものではない。図5の(b)は論理素子14の構成を示す回路図である。論理素子14はPMOS19aと、NMOS19bと、クロック信号入力端子16aと、クロック信号出力端子16bと、論理素子14の電源端子17aと、論理素子14のGND端子17bと、PMOS19aのバックゲート端子18aと、NMOS19bのバックゲート端子18bとで構成される。論理素子14は通常、電源端子17aを電源電圧に、GND端子17bをGND電圧に、PMOSバックゲート端子18aを電源電圧、NMOSバックゲート端子18bをGND電圧に固定して使用する。
【0038】
上記のように構成された論理素子14は、電源端子17aとGND端子17bとの間の電圧差が大きくなるとクロック信号入力端子16aからクロック信号出力端子16bへ信号が伝達するときの遅延量が減少し、逆に、電源端子17aとGND端子17bとの間の電圧差が小さくなると遅延量が増加する。この現象を利用して、制御信号入力端子15に入力される制御信号生成部3からの制御信号Dを、論理素子14の電源電圧端子17aまたはGND端子17bまたはその両方に接続することにより、論理素子14の遅延量が調整可能となる。結果として、制御信号Dにより可変遅延器1の遅延量を可変することが可能な構成となる。ここで、論理素子14の電源端子17aは、電圧を高くすると論理素子14の遅延量が減少するのに対して、論理素子14のGND端子17bは、電圧を高くすると論理素子14の遅延量が増加するので、どちらを制御するかによって制御信号生成部3の極性を変える必要があることに注意しなければならない。また、論理素子14の電源端子17aおよびGND端子17bを同時に制御する場合においては、極性の異なる制御信号Dが必要となる。このため、図1では図示していないが、制御信号生成部3で複数の制御信号Dを生成し、複数の制御信号Dを可変遅延器1に供給すればよい。
【0039】
また、論理素子14は、PMOSバックゲート端子18aの電圧が高くなるとPMOS19aの閾値電圧の絶対値が高くなり遅延量が増加し、NMOSバックゲート端子18bの電圧が低くなるとNMOS19bの閾値電圧の絶対値が高くなり遅延量が増加する。この現象を利用して、制御信号入力端子15に入力される制御信号生成部3からの制御信号Dを、論理素子14のPMOSバックゲート端子18aまたはNMOSバックゲート端子18bまたはその両方に接続することにより、論理素子14の遅延量を調整することが可能となる。結果として、制御信号Dにより可変遅延器1の遅延量を可変することが可能となる。ここで、論理素子14のPMOSバックゲート端子18aは、電圧を高くすると論理素子14の遅延量が増加するのに対して、論理素子14のNMOSバックゲート端子18bは、電圧を高くすると論理素子14の遅延量が減少するので、どちらを制御するかによって制御信号生成部3の極性を変える必要があることに注意しなければならない。また、論理素子14のPMOSバックゲート端子18aおよびNMOSバックゲート端子18bを同時に制御する場合においては、極性の異なる制御信号Dが必要となる。このため、図1では図示していないが、制御信号生成部3で複数の制御信号Dを生成し、複数の制御信号Dを可変遅延器1に供給すればよい。
【0040】
前述の図13の(b)に示した従来のノンオーバーラップクロック信号発生器のように、インバータ段数を切り替えて遅延量を調整する従来の構成ではインバータ1個の遅延量(数百ps程度)以下の調整は困難であったが、第2の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器においては、可変遅延器1の電源電圧やバックゲート電圧を制御することにより、100ps程度若しくはそれ以下の遅延量の調整が可能となる。なお、図5の(a)においては、制御信号Dが可変遅延器1内の全ての論理素子14に入力されているように図示されているが、すべての論理素子14に必ずしも入力する必要はなく、目標の遅延量に応じて、制御する論理素子数を決めればよい。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る第3の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器について説明する。第3の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成は、前述の図1に示した第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器と同じであるが、ノンオーバーラップ検出器の内部構成が異なっている。したがって、第3の実施の形態においては、ノンオーバーラップ検出器2Aについて詳述し、その他の構成は第1の実施の形態における説明を適用する。
【0042】
なお、第3の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器において、第1の実施の形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1の実施の形態の説明を適用する。また、第3の実施の形態において、ノンオーバーラップクロック信号発生器の動作は、前述の第1の実施の形態および第2の実施の形態と基本的に同じであるので、ここではその動作説明を省略する。
【0043】
図6の(a)は、第3の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器におけるノンオーバーラップ検出器2Aの構成を一部ブロックで示す回路図である。図6の(a)に示すノンオーバーラップ検出器2Aは、前述の図3を用いて説明したノンオーバーラップ検出器2の構成に加えて、検出電圧保持回路20を備えたものである。
【0044】
図6の(b)は、検出電圧保持回路20の構成の一例を示す回路図である。図6の(b)に示す検出電圧保持回路20はスイッチ21とコンデンサ22から構成される。図6の(b)に示す検出電圧保持回路20は一例であり、入力された電圧を一時的に保持できる機能を有するものであれば他の構成でもよい。
【0045】
図6の(a)に示すノンオーバーラップ検出器2Aは、ノンオーバーラップクロック信号発生器から出力されたノンオーバーラップクロック信号X,Yのノンオーバーラップ時間を調整するときにのみ、検出電圧保持回路20のスイッチ21をON状態として、ノンオーバーラップ検出器2Aを動作状態とし、ノンオーバーラップ量の調整を行う。ノンオーバーラップ量の調整が完了した時点で、スイッチ21をOFF状態とし、積分器8から出力されていた信号B’をコンデンサ22に保持する。その後、ノンオーバーラップ検出器2Aが停止状態であっても、積分器8から出力されていた信号B’の電圧は、検出電圧保持回路20において保持され続ける。これにより、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路であるA/D変換器などの回路を動作させる前(例えば、電源投入時)などに、ノンオーバーラップ量を調整し、そのときの検出電圧を保持しておくことにより、ノンオーバーラップ検出器2Aを常に動作させる必要がなくなり、低消費電力化を実現することができる。
【0046】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る第4の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器について説明する。第4の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成は、前述の図1に示した第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器と同じであるが、制御信号生成部の内部構成が異なっている。したがって、第4の実施の形態においては、制御信号生成部3Aについて詳述し、その他の構成は第1の実施の形態における説明を適用する。
【0047】
なお、第4の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器において、第1の実施の形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1の実施の形態の説明を適用する。また、第4の実施の形態において、ノンオーバーラップクロック信号発生器の動作は、第1の実施の形態および第2の実施の形態と基本的に同じであるので、ここではその動作説明を省略する。
【0048】
図7の(a)は、第4の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における制御信号生成部3Aの構成を一部ブロックで示す回路図である。図7の(a)に示す制御信号生成部3Aは、前述の図3を用いて説明した制御信号生成部の構成に加えて、制御電圧保持回路23を備えたものである。
【0049】
図7の(b)は、制御電圧保持回路23の構成の一例を示す回路図である。図7の(b)の電圧保持回路23は、スイッチ24と、コンデンサ25と、オペアンプ26から構成される。図7の(b)の制御電圧保持回路23は一例であり、入力された電圧を一時的に保持できる機能を有するものであれば他の構成でもよい。
【0050】
図7の(a)に示す制御信号生成部3Aは、ノンオーバーラップクロック信号発生器から出力されたノンオーバーラップクロック信号X,Yのノンオーバーラップ量であるノンオーバーラップ時間を調整するときにのみ、ノンオーバーラップ検出器2および制御信号生成部3Aを動作状態にして、スイッチ24をON状態とし、ノンオーバーラップ時間の調整を行う。ノンオーバーラップ時間の調整が完了した時点で、スイッチ24をOFF状態とし、オペアンプ11から出力されていた信号D’の電圧をコンデンサ25に保持する。その後ノンオーバーラップ検出器2および制御信号生成部3Aが停止状態となっても、オペアンプ11から出力されていた信号D’の電圧は、制御電圧保持回路23において保持され続ける。これにより、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路であるA/D変換器などの回路を動作させる前(例えば、電源投入時)などに、ノンオーバーラップ量を調整し、そのときの制御信号を保持しておくことにより、ノンオーバーラップ検出回路2を常に動作させる必要がなくなり、低消費電力化を実現することができる。
【0051】
(第5の実施の形態)
次に、本発明に係る第5の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器について説明する。第5の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成は、前述の図1に示した第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器と同じであるが、制御信号生成部の内部構成が異なっている。したがって、第5の実施の形態においては、制御信号生成部3Bについて詳述し、その他の構成は第1の実施の形態における説明を適用する。
【0052】
なお、第5の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器において、第1の実施の形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付して、その説明は第1の実施の形態の説明を適用する。また、第5の実施の形態において、ノンオーバーラップクロック信号発生器の動作は、第1の実施の形態および第2の実施の形態と基本的に同じであるので、ここではその動作説明を省略する。
【0053】
図8は、第5の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における制御信号生成部3Bの構成を一部ブロックで示す回路図である。図8に示す制御信号生成部3Bは、前述の図3を用いて説明した制御信号生成部の構成に加えて、制御論理回路28、記憶装置29およびD/A変換器30を備えたものである。
【0054】
図8に示すように、第5の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における制御信号生成部3Bは、調整すべきノンオーバーラップ時間を決定するための基準電圧Vrefを生成する基準電圧生成部12と、比較器27と、ノンオーバーラップ時間が最適値であるか否かを判定し、最適でなければ制御信号を変更して最適値を探索する制御論理回路28と、制御論理回路28が探索した制御信号値を記憶しておく記憶装置29と、制御論理回路28が設定した制御信号値をデジタル/アナログ変換して、可変遅延器1(図1における1aまたは1b)を制御する制御信号D(図1におけるD1またはD2)を生成するD/A変換器30と、を有して構成される。
【0055】
可変遅延器1が制御信号Dの電圧を高くすると遅延値が減少する構成であったとすれば、図8に示す制御電圧生成部3Bは、次のように動作する。
比較器27は、ノンオーバーラップ検出器2からの検出信号Cと、設定したい所望のノンオーバーラップ時間を示す基準電圧Vrefとを比較し、その比較結果Eを制御論理回路28に出力する。例えば、ノンオーバーラップクロック信号発生器の出力における実際のノンオーバーラップ時間が所望のノンオーバーラップ時間より長かった場合、検出信号Cは基準電圧Vrefより高い値を示すので、比較器27はHレベルの信号を比較信号Eとして出力する。制御論理回路28は、Hレベルの比較信号Eが入力されると、ノンオーバーラップ時間を短くするために、制御信号Dの電圧が高くなるように、制御信号値Fを1増加させる。これにより、D/A変換器30の出力である制御信号Dが高くなり、可変遅延器1の遅延量が減少し、ノンオーバーラップ時間が短くなる。ここで再び、比較器27は検出信号Cと基準電圧Vrefとを比較し、検出信号Cが基準電圧Vrefよりも高かった場合には、すなわち、まだ比較信号EがHレベルの信号であれば、前述と同様に制御論理回路28は制御信号値Fを1増加させノンオーバーラップ時間を短くさせる動作を行う。
【0056】
上記の動作を繰り返すことにより、ある時点を超えるとノンオーバーラップ時間が、所望のノンオーバーラップ時間より短くなる。その時点を超えたとき、比較器27が出力する比較信号Eは、これまでHレベルだったものが、初めてLレベルとなる。制御論理回路28は、比較信号Eの信号が反転したことを検出し、ノンオーバーラップ量の調整が終了したと認識して、その時の制御信号値Fを記憶装置29に格納させる。
【0057】
以上の動作を行うことにより、ノンオーバーラップ量の調整は終了し、以降は、記憶装置29に格納された制御信号値Fを使用して、制御論理回路28がD/A変換器30を介して可変遅延器1の制御を行い、ノンオーバーラップ検出器2と基準電圧生成部12と比較器27を動作させる必要がなくなる。アナログ電圧を保持する場合にはコンデンサに蓄積された電荷が抜けない時間範囲という制限があるが、以上のように、制御信号Dをデジタル的に記憶装置29に格納しておくことにより、長期間保持しておくことが可能となる。
【0058】
したがって、第5の実施の形態のクロック信号生成装置において、電源電圧変動や温度変動などの使用環境が大きく変化しない場合には、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路であるA/D変換器などの回路を動作させる前(例えば、電源投入時)などに、ノンオーバーラップ量を調整し、そのときの制御信号を保持しておくことにより、ノンオーバーラップ検出回路2を常に動作させる必要がなくなり、低消費電力化を実現することができる。
なお、電源電圧変動や温度変動などの使用環境が変化する場合には、定期的に、例えば数ミリsecオーダで上記のノンオーバーラップ量の調整を行うことも可能である。また、電源電圧変動や温度変動などの環境の変化を検知したときに、ノンオーバーラップ量の調整を行うよう構成することも可能である。
【0059】
(第6の実施の形態)
次に、本発明に係る第6の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器について説明する。図9は第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成を示すブロック図である。第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の動作は、前述の第1の実施の形態および第2の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器と基本的に同じであるので、詳細は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図9に示したノンオーバーラップクロック信号発生器は、図1に示した第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器と同様の構成を有しているが、ノンオーバーラップ検出器2がノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路31の内部または近接して配置されている。第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器においては、ノンオーバーラップクロック信号発生器に設けられた出力端子6b,6cから、ノンオーバーラップ検出器2への配線を直接引き出すのではなく、ノンオーバーラップクロック信号発生器の出力端子6b,6cからノンオーバーラップクロック信号X,Yを使用する負荷回路31までの配線において、ノンオーバーラップ検出器2が、負荷回路31の直近のノンオーバーラップクロックラインからクロック信号X’,Y’から引き出されている。
【0061】
図10は第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における信号波形を示しており、(a)はクロック信号入力端子6aに入力されたクロック信号A、(b)は出力端子6bから出力されたΦ1の位相を有するノンオーバーラップクロック信号X、(c)は出力端子6cから出力されたΦ2の位相を有するノンオーバーラップクロック信号Y、(d)はΦ1の位相を持つクロック信号Xが出力される出力端子6bに接続されたノンオーバーラップクロックラインの負荷回路端でのクロック信号X’、(e)はΦ2の位相を持つクロック信号Yが出力される出力端子6cに接続された第2のノンオーバーラップクロックラインの負荷回路端でのクロック信号Y’である。
【0062】
ノンオーバーラップクロック信号発生器の出力端子6b,6cから負荷回路31までの間の配線には、配線そのものの抵抗成分や、容量成分などの寄生素子が存在する。このため、図10に示すように、ノンオーバーラップクロック信号発生器の出力端子6a,6bにおいてはノンオーバーラップ量が最適であっても、ノンオーバーラップクロックラインのクロック信号X’,Y’では、配線の寄生素子による遅延やなまりにより、ノンオーバーラップ量が所望値とずれる場合がある。この結果、ノンオーバーラップ区間が無くなり、2相クロック信号X’,Y’のHレベル区間が重なってしまい、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路31の誤動作を招く恐れがある。そこで、上記の構成のようにノンオーバーラップ検出器2でノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路31の直近のノンオーバーラップクロックラインのクロック信号X’,Y’のノンオーバーラップ量を検出することにより、配線などによる寄生成分が存在しても、その影響まで考慮した上でノンオーバーラップ量を調整することが可能となる。その結果、第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器においては、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路31における誤動作を防止することが可能となる。
【0063】
以上の実施の形態において説明したように、本発明では、デルタシグマ型A/D変換器に代表されるDT型アナログ回路などを動作させるために必要なノンオーバーラップクロック信号を、温度変動、電源電圧変動、および個体バラツキ、さらには配線などにつく寄生抵抗、寄生容量などによるノンオーバーラップ時間のバラツキを抑制することにより、確実なノンオーバーラップ区間の確保によるDT型アナログ回路などの誤動作防止の効果を有する。また、本発明においては、ノンオーバーラップ時間の最適化によりHレベル区間が長いノンオーバーラップクロック信号を得ることができるためDT型アナログ回路の動作速度要求が緩和され、DT型アナログ回路の低消費電力化、小面積化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、A/D変換器をはじめとする離散時間型アナログ回路等で使用されるクロック信号生成装置に関するものであり、温度特性、電源電圧特性、および個体バラツキを吸収して、最適なノンオーバーラップ量のクロック信号を確実に発生することできる汎用性の高い装置となる
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のクロック信号生成装置であるノンオーバーラップクロック信号発生器の構成を示すブロック図
【図2】第1の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における信号波形図
【図3】第1の実施の形態におけるノンオーバーラップ検出器2の構成の一例を示す回路図
【図4】第1の実施の形態における制御信号生成部3の構成の一例を示すブロック図
【図5】(a)は本発明に係る第2の実施の形態における可変遅延器1の構成を示すブロック図、(b)は第2の実施の形態における可変遅延器1の論理素子14の構成を示す回路図
【図6】(a)は、本発明に係る第3の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器におけるノンオーバーラップ検出器2Aの構成を一部ブロックで示す回路図、(b)は、ノンオーバーラップ検出器2Aにおける検出電圧保持回路20の構成の一例を示す回路図
【図7】(a)は、本発明に係る第4の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における制御信号生成部3Aの構成を一部ブロックで示す回路図、(b)は、制御信号生成部3Aにおける制御電圧保持回路23の構成の一例を示す回路図
【図8】本発明に係る第5の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器における制御信号生成部3Bの構成を一部ブロックで示す回路図
【図9】本発明に係る第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器の基本構成を示すブロック図
【図10】第6の実施の形態のノンオーバーラップクロック信号発生器におけるノンオーバーラップクロック信号を示す波形図
【図11】一般的なスイッチトキャパシタ型積分器の回路構成を示すブロック図
【図12】従来の2相クロック信号生成装置101の構成を示すブロック図
【図13】(a)は図12に示した2相クロック信号生成装置101における2相クロック信号生成部104の構成を一部ブロックで示す回路図、(b)は2相クロック信号生成部104における第1のディレイ制御部112aの構成を一部ブロックで示す回路図
【符号の説明】
【0066】
1,1a,1b 可変遅延器
2,2A, ノンオーバーラップ検出器
3,3A,3B 制御信号生成部
4a,4b 論理素子
5a,5b,5c,5d,5e,5f 論理素子
6a クロック信号入力端子
6b ノンオーバーラップクロック信号出力端子
6c ノンオーバーラップクロック信号出力端子
7 NAND論理素子
8 積分器
9 抵抗器
10 コンデンサ
11 オペアンプ
12 基準電圧生成部
13a 可変遅延器入力端子
13b 可変遅延器出力端子
14 論理素子
15 制御信号入力端子
16a クロック信号入力端子
16b クロック信号出力端子
17a 電源端子
17b GND端子
18a PMOSバックゲート端子
18b NMOSバックゲート端子
19a PMOS
19b NMOS
20 検出電圧保持回路
21 スイッチ
22 コンデンサ
23 制御電圧保持回路
24 スイッチ
25 コンデンサ
26 オペアンプ
27 比較器
28 制御論理回路
29 記憶装置
30 D/A変換器
31 負荷回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路において使用される2相クロック信号の遅延時間を可変する可変遅延器と、
前記2相クロック信号におけるHレベル区間のノンオーバーラップ時間を検出し、前記ノンオーバーラップ時間に応じた検出信号を出力するノンオーバーラップ検出器と、
前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号に基づいて前記可変遅延器を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、
を備えるクロック信号生成装置。
【請求項2】
前記ノンオーバーラップ検出器が、入力された2相クロック信号を比較する論理回路と、前記論理回路の出力を積分する積分回路と、を備える請求項1に記載のクロック信号生成装置。
【請求項3】
前記制御信号生成部が、所定のノンオーバーラップ時間に応じた基準信号を生成する基準電圧生成部と、前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号と前記基準信号とを比較し、制御信号を出力する比較器と、を備える請求項1または2に記載のクロック信号生成装置。
【請求項4】
前記可変遅延器が、2相クロック信号におけるHレベル区間のノンオーバーラップ時間を決定する論理素子部を有し、
前記論理素子部の電源電圧もしくはバックゲート電圧を制御信号により制御することにより、前記論理素子部の遅延量が調整されて前記ノンオーバーラップ時間が決定されるよう構成された請求項1乃至3のいずれか一項に記載のクロック信号生成装置。
【請求項5】
前記ノンオーバーラップ検出器が、検出したノンオーバーラップ時間に応じた検出信号を保持する検出電圧保持回路を有し、前記制御信号生成部が前記検出電圧保持回路に保持された検出信号に基づいて制御信号を生成するよう構成された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクロック信号生成装置。
【請求項6】
前記制御信号生成部は、生成した制御信号を保持する制御電圧保持回路を有し、前記可変遅延器が前記制御電圧保持回路に保持された制御信号に応じて2相クロック信号の遅延時間を可変するよう構成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクロック信号生成装置。
【請求項7】
前記制御信号生成部は、前記ノンオーバーラップ検出器からの検出信号に基づいたノンオーバーラップ時間を予め設定した所定値とデジタル的に比較し、当該比較結果に基づいて所望の制御信号値を生成する制御論理回路と、前記制御論理回路において生成された前記所望の制御信号値をデジタル値として記憶する記憶装置と、前記所望の制御信号値をアナログ値に変換するD/A変換器と、を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクロック信号生成装置。
【請求項8】
前記ノンオーバーラップ検出器が、ノンオーバーラップクロック信号を使用する負荷回路内、若しくは前記負荷回路の入力端子に直接接続された請求項1乃至7のいずれか一項に記載のクロック信号生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−296523(P2009−296523A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150592(P2008−150592)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】