説明

クロック生成回路

【課題】 CPUの負荷を軽減するとともに、回路規模またはシステムの規模の増大の抑制が可能なクロック生成回路を提供する。
【解決手段】 制御信号に基づいてクロック信号の周波数を制御して出力する発振回路と、所定期間、発振回路が出力するクロック信号のパルス数をカウントしてカウント値を生成するカウンタと、カウント値と、予め設定された周波数に基づいた設定値と、を減算して差分データを生成する減算回路と、差分データに基づいて、制御信号値を補正する制御信号生成補正回路と、制御値信号をアナログ信号に変換して制御信号を生成し、発振回路に出力するデジタル−アナログ変換回路と、を備えることで、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、予め設定された周波数に応じたクロックを生成するクロック生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に従来のデジタル方式のクロック生成回路100のブロック図を示す。クロック生成回路100は、発振回路122と、カウンタ104と、中央演算処理回路(CPU)130と、デジタル−アナログ変換回路(DAC)116と、を含んで構成される。
【0003】
発振回路122は、DAC116から出力された制御信号に応じて所定の周波数のクロックを生成する。発振回路122は、例えば電圧制御発振器(VCO)で構成することができ、DAC116が出力する電圧信号に応じた周波数のクロックを生成する。
【0004】
カウンタ104は、発振回路122が出力するクロックのパルス数をカウントする。カウンタ104は、図示しない制御回路の制御に応じて、例えば1秒間に入力されるパルス数をカウントし、そのカウント値をCPU130に出力する。
【0005】
CPU130は、周波数の設定値を格納するレジスタ132を備えて構成され、カウンタ104から出力されたカウント値とレジスタ132に格納された設定値とに基づいて、発振回路122を制御するデジタルの制御信号を出力する。CPU130は、例えば、カウンタ104から出力されたカウント値とレジスタ132に格納された設定値との差分を演算し、その差分に応じた制御信号を生成する。また、CPU130は、所定の制御プログラムに応じて、クロック生成回路100に接続される周辺回路(図示なし)の動作を制御する。
【0006】
DAC116は、CPU130から出力されたデジタルの制御信号をアナログ信号に変換して、発振回路122に出力する。
【0007】
このように、クロック生成回路100は、カウンタ104によってクロックのパルス数をカウントし、そのカウント値に基づいてCPU130が制御信号を生成するデジタル方式のクロック生成回路である。
【0008】
図4に従来のアナログ方式のクロック生成回路200のブロック図を示す。クロック生成回路200は発振回路222と、分周回路208と、位相比較回路202と、チャージポンプ回路(CP)204と、ローパスフィルタ(LPF)206と、を含んで構成される。
【0009】
発振回路222は、LPF206から出力された制御信号に応じて所定の周波数のクロックを生成する。発振回路122は、例えば電圧制御発振器(VCO)で構成することができ、LPF206が出力する電圧信号に応じたクロックを生成する。
【0010】
分周回路208は、発振回路222から出力されたクロックを分周して、位相比較回路202に出力する。位相比較回路202は分周回路208から出力されたクロックと、基準クロックとを比較し、比較結果を後述するCP204に出力する。基準クロックは、例えば、水晶発振子(図示なし)から出力されたクロックを用いる。クロック生成回路200は、基準クロックの周波数と分周回路208の分周の設定に応じたクロックを生成する。
【0011】
CP204は、位相比較回路202の比較結果に応じて、ハイレベル(例えば3.3V)またはローレベル(たとえば0V)の電圧信号を選択的に出力する。
【0012】
LPF206は、抵抗素子RとコンデンサCとを含んで構成される。抵抗素子Rの一方の端子はCP204に接続され、他方の端子は発振回路222に接続される。コンデンサCの一方の端子は、発振回路222と抵抗素子Rとの接続点に接続され、他方の端子は接地される。LPF206は、CP204が出力するパルス状の信号を平滑化して、発振回路222に出力する。
【0013】
このように、クロック生成回路200は、位相比較回路202の比較結果に基づいて、CP204及びLPF206によって制御信号を生成するアナログ方式のクロック生成回路である。
【特許文献1】特開平8−316826号公報
【特許文献2】特開2000−188542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図3に示す従来のクロック生成回路100を用いる場合、CPU130を用いて発振回路122が出力するクロックの周波数を制御するため、CPU130の負荷が増大する。CPU130は、クロック生成回路100に接続される周辺回路の動作を制御するため、負荷が増大するとクロック生成回路100が搭載されるシステム全体の動作が遅くなるという問題がある。
【0015】
CPUの負荷を減らす方法として、図4に示す従来のクロック生成回路200を用いることが考えられる。クロック生成回路200はアナログ方式のクロック生成回路であるため、CPUを用いることなくクロックの周波数を制御することができる。しかし、周波数の低い(例えば40kHz)クロックを生成する場合、LPF206に設けられたコンデンサCは容量の大きいものとする、あるいは、抵抗Rの抵抗値を大きいものとしなければならない。そのため、コンデンサCまたは抵抗Rのサイズが大きくなることによって、クロック生成回路200の回路規模またはそれが搭載されるシステムの規模が大きくなるという課題がある。
【0016】
本願発明は、上記従来技術の問題を鑑み、CPUの負荷を軽減するとともに、回路規模またはシステムの規模の増大の抑制が可能なクロック生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明は、制御信号に基づいてクロック信号の周波数を制御して出力する発振回路と、所定期間、発振回路が出力するクロック信号のパルス数をカウントしてカウント値を生成するカウンタと、カウント値と、予め設定された周波数に基づいた設定値と、を減算して差分データを生成する減算回路と、差分データに基づいて、制御信号値を補正する制御信号生成補正回路と、制御値信号をアナログ信号に変換して制御信号を生成し、発振回路に出力するデジタル−アナログ変換回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、クロック生成回路は、CPUの負荷を軽減するとともに、回路規模またはシステム規模の増大の抑制が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態のクロック生成回路の概略のブロック図である。クロック生成回路10は、発振回路42と、スイッチ22と、カウンタ24とタイミング制御回路26と、周波数設定回路28と、減算回路30と、加算回路32と、レジスタ34と、デジタル−アナログ変換回路(DAC)36と、を含んで構成される。
【0020】
発振回路42は、DAC36から出力された制御信号に応じたクロックCLKを生成する。発振回路42は、例えば電圧制御発振器(VCO)で構成することができ、DAC36が出力する電圧信号に応じた周波数のクロックCLKを生成する。
【0021】
スイッチ22は、発振回路42とカウンタ24とに接続され、クロックCLKをカウンタ24に出力するか否かを制御する。スイッチ22は、後述するタイミング制御回路26が出力するタイミング信号Bに基づいてスイッチのオン/オフを制御し、スイッチがオンの期間に入力されたクロックCLKを抽出して、クロックCLK’として出力する。
【0022】
カウンタ24は、スイッチ22と減算回路30とに接続され、スイッチ22から出力されたクロックCLK’のパルス数をカウントして、カウント値を生成する。カウンタ24は、後述するタイミング制御回路26から出力されるリセット信号RSTをトリガとして、クロックCLK’のパルス数のカウントを開始する。つまり、カウンタ24は、スイッチ22のオン/オフのタイミングに同期してカウント動作を開始/停止する。
【0023】
タイミング制御回路26は、スイッチ22のオン/オフ制御を行うとともに、カウンタ24のカウント動作の開始/終了を制御する。タイミング制御回路26は、スイッチ22に対してオン/オフ制御を行うためのタイミング信号Bを出力し、カウンタ24に対してカウント動作を開始するためのリセット信号RSTを出力する。
【0024】
周波数設定回路28は、例えばレジスタを含んで構成され、クロック生成回路10が出力するクロックCLKの周波数の設定値を格納する。周波数設定回路28に格納される設定値は、タイミング制御回路26が出力するタイミング信号Bの時間情報に基づいて、設定される周波数に応じたクロックのパルス数とすることが好適である。例えば、40kHzのクロックCLKを出力し、タイミング制御回路26が1秒間ハイレベルとなるタイミング信号Bを出力する場合、周波数設定回路28には“40000”に応じたデジタル値をレジスタに格納する。
【0025】
減算回路30は、周波数設定回路28に格納された設定値と、カウンタ24から出力されたカウント値との差分を算出する。周波数設定回路28で設定された周波数と比べてクロックCLKの周波数が高い場合、カウント値は設定値より大きくなり、減算回路30は負の値を出力する。また、周波数設定回路28で設定された周波数と比べてクロックCLKの周波数が低い場合、カウント値は設定値より小さくなり、減算回路30は正の値を出力する。
【0026】
加算回路32は、減算回路30から出力された差分と、レジスタ34に既に格納されている制御値とを加算する。レジスタ34は加算回路32で生成された加算値を、発振回路42の発振周波数の制御信号値として一時的に格納する。つまり、加算回路32は、カウンタ24及び減算回路30によって生成されたクロックCLKの誤差を示すデータを、レジスタ34に格納された制御値に加算して、発振回路42を制御する制御値を更新してレジスタ34に格納する。
【0027】
タイミング制御回路26は、加算回路32及びレジスタ34の動作に応じたタイミングでリセット信号RSTを出力することが好適である。つまり、タイミング制御回路26は、発振周波数の制御値を加算回路32によって更新し、その更新された制御値をレジスタ
34に格納した後に、リセット信号RSTを出力する。
【0028】
DAC36は、レジスタ34に格納されたデジタルの制御値をアナログの信号に変換して、発振回路42に出力する。このとき、DAC36は、レジスタ34に格納された制御値を発振回路42に応じたアナログ値に変換する特性を有することが好適である。
【0029】
次に、本発明の第1の実施形態における、クロック生成回路の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態のクロック生成回路の動作タイミングを示すタイミングチャートである。図2に示す例において、タイミング制御回路26が1秒間ハイレベルとなるタイミング信号Bを出力し、周波数設定回路28は設定値として“12”を格納してクロック生成回路10が12HzのクロックCLKを出力するように制御する。
【0030】
タイミング制御回路26は、カウンタ24に対してリセット信号RSTとしてリセットパルスを出力する。このとき、カウンタ24はカウント動作を停止して初期状態に戻る。リセット信号RSTがハイレベルからローレベルに切り替わるとき、カウンタ24はカウント動作を開始する。このときタイミング信号Bはローレベルからハイレベルに切り替わる。スイッチ22はタイミング信号Bがハイレベルの期間にオン状態となり、その期間に入力されたクロックCLKをクロックCLK’として出力する。
【0031】
カウンタ24は、入力されたクロックCLK’のパルス数をカウントする。図2に記載の例において、タイミング信号Bがハイレベルの期間に、クロックCLK’は11周期分のクロックを含む。カウンタ24は、11周期分のクロックのパルス数をカウントし、減算回路30に出力する。例えば、減算回路30は、周波数設定回路28に格納された設定値“12”から、カウント値“11”を減算し、差分“+1”を加算回路32に出力する。
【0032】
加算回路32は、レジスタ34に格納された制御信号に、減算回路30から出力された差分“+21”を加算し、新たな制御信号としてレジスタ34に格納する。つまり、クロックCLKの周波数は設定された周波数に比べて低いため、発振回路42を制御する制御信号の値を大きくして、クロックCLKの周波数を高くするように制御する。
【0033】
クロックCLKの周波数が設定された周波数に比べて高い場合、減算回路30は差分として負の値を出力する。このとき、加算回路32はレジスタ34に格納する制御信号の値を小さくして、クロックCLKの周波数を低くするように制御する。
【0034】
本発明の第1の実施形態を適用することによって、CPUを用いることなく精度の高いクロックの周波数制御を行うことができる。よって、クロック生成回路10が搭載されるシステムにおいてCPUの負荷を軽減することが可能となり、システム全体の動作に影響を与えることを防ぐことができる。
【0035】
また、本発明の第1の実施形態を適用することによって、クロック生成回路10はコンデンサ等の部品を用いる必要がない。したがって、低い周波数のクロックを生成する場合であっても、クロック生成回路10の回路規模またはそれが搭載されるシステム規模の増大を防ぐことができる。
【0036】
本発明の第1の実施形態では、スイッチ22及びカウンタ24を用いて、所定期間(1秒間)に含まれるクロックCLKのパルス数をカウントする構成としたが、本願発明はこれに限られるものではない。例えば、タイミング制御回路26はカウンタ24に対してリセット信号RSTと、カウント動作を停止してカウント値を保持する制御を行う保持信号を出力する構成とすることができる。タイミング制御回路26は、リセット信号RSTを
出力し、所定期間経過した後にカウント終了後に上述の保持信号を出力することにより、スイッチ22を用いることなく本発明を実施することができる。
【0037】
本発明の第1の実施形態に記載したスイッチ22及びカウンタ24の動作は、本発明を実施するための一例であって、これに限られるものではない。例えば、カウンタ24のリセット動作は必ずしもカウント開始の直前に行う必要はなく、カウント動作を行わない機関にリセット動作を行うことができる。また、カウンタ24のリセット動作は、カウント終了から所定のパルス数分の時間が経過した後にリセットするよう構成することもできる。
【0038】
また、本発明は、クロックCLKを図示しない分周回路に入力し、カウンタ24は分周されたクロックCLKのパルス数をカウントする構成としてもよい。これによって、カウンタ24は低速で動作することが可能となり、カウンタ24を高精度のカウンタで構成する必要がなく、クロック生成回路10またはそれが搭載されるシステムのコストを低くすることができる。
【0039】
さらに、本発明において、DAC36は、レジスタ34に格納された制御信号を発振回路42に応じたアナログ値に変換する特性を有する構成としたが、本願発明はこれに限られるものではない。例えば、制御信号を発振回路42に応じた値に変換する機能と、デジタル信号をアナログ信号に変換する機能とを分離してた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態のクロック生成回路の概略のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のクロック生成回路の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】従来のクロック生成回路の概略のブロック図である。
【図4】従来のクロック生成回路の概略のブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
10,12,100,200 クロック生成回路、22 スイッチ、24,104 カウンタ、26 タイミング制御回路、28 周波数設定回路、30 減算回路、32 加算回路、34,132 レジスタ、36,116 DAC、42,122,222 発振回路、130 CPU、202 位相比較回路、204 CP、206 LPF、208
分周回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に基づいてクロック信号の周波数を制御して出力する発振回路と、
所定期間、発振回路が出力するクロック信号のパルス数をカウントしてカウント値を生成するカウンタと、
前記カウント値と、予め設定された周波数に基づいた設定値と、を減算して差分データを生成する減算回路と、
前記差分データに基づいて、前記制御信号値を補正する制御信号生成補正回路と、
前記制御信号値をアナログ信号に変換して制御信号を生成し、前記発振回路に出力するデジタル−アナログ変換回路と、
を備えることを特徴とするクロック生成回路。
【請求項2】
請求項1に記載のクロック生成回路において、
前記カウンタのカウント動作を制御するタイミング制御回路を更に備え、
前記カウンタは、前記タイミング制御回路の制御に応じて前記所定期間内のクロック信号のパルス数をカウントすることを特徴とするクロック生成回路。
【請求項3】
請求項1に記載のクロック生成回路において、
前記減算回路に接続され、前記設定値を格納する周波数設定回路、を更に備え、
前記減算回路は、前記カウント値と前記周波数設定回路に格納された前記設定値とを減算して前記差分データを生成することを特徴とするクロック生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−5288(P2009−5288A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166702(P2007−166702)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】