グラフトの強化された生物学的固定
ステントグラフト(1)は、近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えており、少なくとも近位端(5)は、使用時に使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合するよう意図された領域を備え、領域は、ランディングゾーンへの生物学的固定を強化する機械的処置を備えている。機械的処置は、開口(92)の提供、比較的硬い係合部分(17)の提供、SISゲルまたは分解物(72)の含浸、およびSIS(60)またはその他の生体適合性材料でできたカフまたはカラーの取付であり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はグラフト材料に関し、より特定的には、人間または動物の身体への生物学的固定のための強化された、または改良された可能性を有するグラフト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
この発明は概して、管腔内に留置されたグラフトおよびステントグラフトへのその応用に関して述べられるが、この発明はそう限定されてはおらず、人間または動物の身体に適用されるべきグラフト、および、生物学的固定が望ましい、または必要な機能である場合にも適用され得る。
【0003】
人間または動物の身体管腔への管腔内留置のためのステントグラフトは一般に、生体適合性材料でできた管とステントとから形成され、それを通す管腔を維持する。そのようなグラフトは、腹部大動脈瘤といった管腔の損傷部分に及ぶように用いられる。一般に、ステントグラフトは、ランディングゾーンと呼ばれる領域において動脈瘤の両側で管腔の壁に当たって係合する。ステントグラフトが移動しないことを確実にするために、ランディングゾーンにおける管腔の壁への何らかの固定を有することが望ましい。特に、大動脈の頸部における腹部大動脈瘤ステントグラフトの近位固定は、血管内修復の長期耐久性に関する重大な機能である。このことは、大動脈内の脈動する血液がステントグラフトにかなりの力を与え得るので、重要である。効果的でない固定はステントグラフト移動をもたらすおそれがあり、それは、その後のタイプIエンドリーク、および、リークを修復するために必要な外科医によるその後の介入の現実の可能性につながり得る。固定の問題に対する現在の解決策は大抵、機械的繋止機構に依存している。ステントグラフトと大動脈壁との間の摩擦力は、ステントグラフトの直径と、土台となるステントによって支持される大動脈壁の直径との間の締り嵌めによって作り出される。装置をそれが配置される管腔に対して大きめのサイズにするという慣例は、これらの摩擦保持力を意図的に作り出すことに直接関連している。第2の顕著な固定力は、動脈壁を完全に貫通する小さなフックまたは刺に関連している。いずれの場合も、与えられる固定力は即時のものであり、長期生物学的相互作用を必要としない。第3の固定力である組織封入は、装置によってははるかに長い時間枠にわたって(何ヶ月にも、さらには何年にもわたって)生じる。ある種の腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフト装置の腎臓ステントといった、露出したステンレススチール・ステントストラットは、組織成長によってゆくゆくは完全に封入されるようになり(各ストラットが包囲される)、追加のかつ顕著な固定をもたらす。締り嵌めおよびある程度の封入機構は、装置の目的である動脈瘤を除外するために必要な封鎖を提供する。また、動脈疾患および瘤増殖の複雑な生理学的プロセスを通じて、上述の締り嵌めが失われることによって摩擦力が打消される場合がある、という問題がある。つまり、疾患、正常な老化、またはステントの外向きの力により、大動脈の頸部がさらに広がる場合がある。このため、時間が経つと、これらの正常な機械的力の一部または全部を失うことが起こり得る。加えて、刺によって与えられる固定は、はんだ材料の腐食および大動脈壁の局所断裂により、リスク下にある場合がある。
【0004】
多くの異なる医療機器用途のために、グラフト材料内への細胞の内方成長が探求されている。生体適合性材料は、細胞が付着できるかもしれないもののその内部へと成長することはできない障壁を形成する。血管グラフトの場合、細胞の内方成長は、血栓の形成を回避し、封鎖を作り出し、グラフトを管腔内または管腔間に固定するために重要である。血栓に対する耐性が最も高い公知の材料は、内皮細胞の単層である。グラフト内への細胞の内方成長がなければ、従来のグラフト材料を用いて内皮細胞の単層を実現することは事実
上不可能であった。
【0005】
また、細胞の内方成長がなければ、装置の固定および封鎖は機械的手段に委ねられ、それは時間が経つと機能しなくなるおそれがある。
【0006】
現在、AAAグラフトといった大口径グラフトについては、最小限の有孔度を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはダクロン生地を使用する傾向がある。組織の内方成長は、タイプIVエンドリーク(有孔度が高いグラフト材料による漏れ)がなくなることを確実にするために犠牲になってきた。固定および封鎖は上述のような機械的手段を介して達成され、大口径グラフトでの速い流速により、血栓が著名な懸念として見られることはない。
【0007】
この発明の一目的は、これらの二次的な機械的繋止力に頼らない生物学的固定機構を提供すること、または、少なくとも外科医に代替的な固定機構を提供することである。
【0008】
この明細書全体を通し、大動脈、留置装置または人工器官の一部に関する遠位という用語は、心臓から離れる血流の方向においてさらに遠い方の大動脈、留置装置または人工器官の端のことであり、近位という用語は、心臓に近い方の大動脈、留置装置または人工器官の端の部分を意味する。他の体内管に適用される場合、尾部および頭部といった同様の用語が理解されるはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
したがって一形態では、この発明は、近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、使用時に使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合するよう意図された領域を備え、領域は、ランディングゾーンへの生物学的固定を強化する機械的処置を備えている、ステントグラフトに存在する。
【0010】
機械的処置は、開口の提供、後述するような比較的硬い係合部分の提供、SISゲルまたは分解物の含浸、およびSISカフまたはカラーの取付を含む群から選択可能である。
【0011】
代替的な一形態では、この発明は、近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、そこから半径方向外向きに延びて、使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合する複数の比較的硬い係合部分を備えている、ステントグラフトを含む。
【0012】
好ましくは、複数の比較的硬い係合部分は、使用時に上述のような体内管のランディングゾーンに当たって係合するよう見込まれているステントグラフトの部分に配置されている。
【0013】
この明細書では、比較的硬いという用語は、係合部分が、ステントグラフトが留置される管腔の壁に当たって係合する際に係合部分の係合領域で壁を変形させる材料から作られている、ということを意味するよう意図されている。このため、係合部分の材料は、体内管壁よりも硬いものでなければならない。
【0014】
係合部分は、金属、合成の繊維または糸、もしくはポリマー材料から構成されていてもよい。
【0015】
係合部分は、ループ、コイル、角付き部分、ボタン、スパイクまたはその他の突出部の形をしていてもよい。
【0016】
係合部分は、さらに別の材料、またはグラフトの同じ材料の余分部分を管状本体の材料に縫い付ける、接着する、または挿通することによって、管状本体上に形成されてもよい。
【0017】
好ましくは、係合部分は、管腔内留置のための導入装置内へと圧縮できるよう弾力的である。
【0018】
生物学的固定が強化されるプロセスは十分には理解されていないが、そのプロセスは以下のようなものかもしれないということが示唆される。係合部分は、ステントグラフトが留置され、グラフトに結合されたステントが半径方向外向きの圧力を与えている際に半径方向外向きに突出する部分のマトリックスを提供する。これらの突出部分は、大動脈壁に対して(毛細管圧に打ち勝つよう30mmHgよりも大きい)局所圧力を作り出し、細胞壊死を引起こす。細胞死の後、突出部分は動脈壁に当たり続け、内皮壁再構築をもたらして突出部分を収容する。各突出部分はやがて、組織成長によって完全に封入されるかもしれない。実際、グラフトの外側に導入された突出部分は、組織(外膜)が各突出部分の周囲で成長するための足場として機能し、重要な固定および封鎖機構を作り出す。
【0019】
いくつかの実施例では、管状本体上に係合部分を取付けるプロセスは、細胞がグラフト内へ、およびグラフトを通って成長するよう促してさらなる生物学的固定および封鎖を達成する「微小寸法の」厚さ貫通孔を作り出してもよい。
【0020】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、近位端は、管状本体から半径方向外向きに延びる弾力的なワイヤループの配列を含む、ステントグラフトに存在すると言われている。
【0021】
好ましくは、各ワイヤループはステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤから形成されている。
【0022】
各ワイヤループは半円、コイル、角付き部分などの形をしていてもよい。
ループのうちの少なくとも一部は切られるなどして切断されて、スパイク部分を提供してもよい。体内管壁を意図的に刺激するためにスパイクを使用するのは、より早い細胞反応が期待されるためである。これは、老年の患者にとっては、血栓/石灰化が体内管壁で起こり得るということ、および患者の体内管の細胞がそれほど活動的ではないことを考えると、重大である場合がある。スパイクの数および場所は変更可能である。
【0023】
ワイヤは3〜10ミクロンの直径を有していてもよく、管状本体上に形成されたループは管状本体から50〜200ミクロン延びていてもよい。
【0024】
ワイヤループは、生体適合性材料の織物への縫い付け、接着または挿通によって管状本体上に形成される。
【0025】
生体適合性グラフト材料は、ダクロン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、他の合成生体適合性材料、またはコラーゲンのような自然発生的生体材料であってもよい。細胞外基質(ECM)として公知の特別導出コラーゲン材料、たとえば小腸粘膜下組織(SIS)が特に好ましい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0026】
このように、この発明により、移動を防止するのに機械的な力だけに頼らず、縫い付けられたループまたは他の種類の係合部分によって作り出される足場を介した動脈組織成長と、縫い付けプロセスによって作り出された孔を介した直接組織内方成長とに基づく固定機構が提供される、ということがわかる。
【0027】
さらに別の形態では、この発明は、合成生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部はそれと結合される生物学的活性材料を有する、グラフトに存在すると言われている。
【0028】
この生物学的活性材料は、組織の再成長および再構築を加速されたペースで促進する。このため、この発明は、強化された生物学的固定および封鎖機構を提供することにより、現在の固定手法を補う。実際、合成グラフト材料内への組織成長は、生物学的活性材料の存在によって促進される。ステントグラフトの場合、この生物学的固定強化は、固定および封鎖にとって取付が重大である近位および遠位頸部に局所化可能である。この発明の生物学的固定強化を取入れたグラフトの固定および封鎖は生物学的かつ永続的であり、どうひいき目に見ても問題がある長期のかつ信頼性の劣る機械的固定機構を必要としない。
【0029】
生物学的活性材料を合成グラフト材料と結合するためにさまざまな方法および設計が使用可能である。方法は、生物学的活性材料を、製造プロセスを乗り切ってたとえばステントグラフトの頸部にそのまま送達されるようにグラフト材料に取付、注入、封入するなどして、ようやく組織内方成長および生物学的固定が完成する、ということを含み得る。
【0030】
グラフトはステントグラフトの形をしていてもよく、生物学的活性材料は、体内管壁との係合用のランディングゾーンと呼ばれ得る領域において、ステントグラフトの少なくとも近位領域でグラフト材料と結合され得る。生物学的活性材料はまた、遠位領域ランディングゾーンでグラフト材料と結合され得る。
【0031】
合成生体適合性材料は、ダクロンまたは延伸ポリテトラフルオロエチレンであってもよい。
【0032】
生体適合性グラフト材料は、コラーゲンのような自然発生的生体材料、特に細胞外基質(ECM)として公知の特別導出コラーゲン材料、たとえば小腸粘膜下組織(SIS)から形成されてもよい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0033】
SISは特に有用であり、バディラック(Badylak)等の米国特許第4,902,508号、カー(Carr)への米国特許第5,733,337号と17 ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 1083(1999年11月)とに記載の腸コラーゲン層、クック(Cook)等の1998年5月28日付けWIPO公報WO98/22158(PCT/US97/14855の公開出願)に記載されたやり方で作ることができる。SISなどの異種生体材料に加え、自己組織も採取可能である。加えて、エラスチン、またはエラスチン様ポリペプチド(ELP)などが、生物学的活性材料として可能性を提供する。別の代替例は、採取された天然弁組織といった同種異系移植片を使用することである。そのような組織は凍結保存された状態で商業的に入手可能である。
【0034】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第1の方法は、比較的多孔質のグラフトにSISゲルを注入することによるものであってもよい。織った生地の自然の有孔度(さまざまな織り方によって変更可能)は、グラフトの片面に真空をかけ、グラフトの自然の有孔度を形成する隙間へとSISゲルを「引く」ことにより、
グラフトへのSISゲルの注入を可能にし得る。
【0035】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第2の方法は、SISゲルを接着剤として使用して、SISシートを合成グラフト材料上に真空プレスすることによるものであってもよい。SISシートは、天然ブタ成長因子および他のタンパク質で強化されたコラーゲン足場を提供可能な実績ある生成物である。「接着剤」としてのSISゲルの使用は、SISシートをグラフトに接続し、かつさらなる組織−グラフト内方成長を促進する。可能な一製造プロセスは、グラフトの外側にSISゲルおよびSISシートを施し、次に、SISゲルがグラフトに浸透するようグラフトを「真空引き」し、その後37℃の炉で20分間、複合グラフトを重合し、次に複合グラフトを凍結乾燥および/または真空プレスすることである。
【0036】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第3の方法は、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸の使用によってSISシートを取付けることによるものであってもよい。
【0037】
SISシートは、確実で永続的な機械的取付を形成するよう、合成グラフト上に縫い付け可能である。SISゲルは次に、第2の方法で述べたステップに従うことによって「結合剤」として使用され、縫い付けプロセスによって作り出された孔を充填することができる。さらに、任意の突出する繊維が、SISゲルを所定の位置に保持する機械的足場を形成し得る。縫い付けは、縫合糸といった生体適合性糸を用いて、またはワイヤ糸の使用によって行なわれ得る。縫合糸といった生体適合性糸を用いた、またはワイヤ糸の使用による縫い付けの少なくとも一部は、ステントグラフトの外面を越えて延びて、固定を強化するためにそこから半径方向外向きに延びる複数の比較的硬い係合部分を提供することができる。
【0038】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にし、かつ適正な短期封鎖および固定を依然として提供する選択された有孔度を有している、グラフトに存在すると言われている。
【0039】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた管状本体を備えるステントグラフトであって、管状本体はそれを通す管腔を規定し、近位端と遠位端とを有しており、管状本体の近位端の長さに沿った少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にする選択された有孔度を有している、ステントグラフトに存在すると言われている。有孔度は、生体適合性グラフト材料における開口の配列によって提供されてもよい。開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と、20〜250ミクロンの間隔とを有していてもよい。
【0040】
開口は、レーザ穿孔の使用により、生体適合性グラフト材料に形成されてもよい。レーザは、小さいビームスポット、正確な穿孔深さ制御、および最小限の熱影響区域を提供する。エキシマレーザは、その精度および周辺材料への最小限の損傷で特に名高い。レーザは、さまざまな孔間距離で50ミクロンよりも小さい孔を穿孔する能力を有する。代替的な一形態では、選択された有孔度は、グラフト材料を構成する生体適合性繊維の織りパターンの修正によって提供されてもよい。たとえば、ステントグラフトの場合、ステントグラフトの近位端の領域は、経糸同士または緯糸同士の間に開口を提供するようなやり方で織られてもよい。そのような開口はその領域に20ミクロン〜100ミクロンの開口寸法を有していてもよい。
【0041】
さらに別の形態では、この発明は、人間または動物の身体における生物学的固定のため
に適合されたグラフト材料を製造する方法であって、グラフト材料に複数の開口を融蝕するステップを含み、開口は20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と20〜250ミクロンの間隔とを有する、方法に存在すると言われている。
【0042】
好ましくは、融蝕はレーザで行なわれる。
このため、この発明により、グラフトを形成する方法、および、血液の漏れを可能にするほど多孔質ではないものの細胞の内方成長を可能にする十分なサイズの制御された、かつ局所化された有孔度を有する材料から形成されたグラフトが提供されることがわかる。
【0043】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、使用されているランディングゾーンに対する局所圧力を作り出すSISまたは他の生体適合性材料でできたカフまたはカラーを含んでおり、それにより、大動脈壁に対して細胞壊死およびその後の内皮壁再構築を引起こして突出部分を収容し、ランディングゾーンへのステントグラフトの生物学的固定を強化する、ステントグラフトに存在すると言われている。
【0044】
このため、この発明により、生物学的固定を強化したステントグラフトが提供されることがわかる。
【0045】
ここでこの発明を概説するが、理解を助けるために、この発明の好ましい実施例を示す添付図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
詳細な説明
図1は、この発明の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体3の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の初期封鎖を提供する。
【0047】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流による移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0048】
追加される長期の生物学的固定は複数の係合部分17によって提供され、それらは管状本体にその近位端5に向かって留め付けられており、管状本体から半径方向外向きに延びている。この実施例では、複数の係合部分17は、硬いポリマー糸、ステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤのループによって設けられる。硬いポリマー糸は、たとえば縫合糸であり得る。ループは、ミシンまたは他の同様の機械を用いることによって管状本体に縫い付け可能である。縫製プロセス中、ステントグラフト1の管状本体の外側に小さなループ17が作られ得る。図1に示すように、ループは数列あり得る。
【0049】
図2は、図1の線2−2′に沿ったステントグラフトの断面図を示す。ステントグラフト1の管状本体3は、それに縫い込まれたワイヤループ17を有しており、内側の糸19が各ループの端を捉えている。
【0050】
図2では半円形状が示されているが、ループは多くの形状で縫い付け可能であり、最大限の固定が望まれる区域にループの多数の帯を縫い付けることが可能である。ループは必ずしも円形形状である必要はなく、むしろ、楕円または直角といったより鋭い形を取り得る。
【0051】
図3は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0052】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体3の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の初期封鎖を提供する。
【0053】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。
【0054】
この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供され、脈動する血液の力に対する追加の耐性を提供する。
【0055】
この実施例の追加される長期の生物学的固定は複数の係合部分20によって提供され、それらは、上述のように留置されるとランディングゾーンと係合するよう意図された部分において、管状本体にその近位端5に向かって留め付けられており、管状本体から半径方向外向きに延びている。この実施例では、複数の係合部分20は、硬いポリマー糸、ステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤのループによって設けられる。硬いポリマー糸は、たとえば縫合糸であり得る。ループは、ミシンまたは他の同様の機械を用いることによって管状本体に縫い付け可能である。縫製プロセス中、ステントグラフト1の管状本体の外側に小さな金属ワイヤループ20が作られ得る。図3に示すように、ループは数列あり得る。ループ20の少なくともいくつかはループの頂点で切られるなどして切断されて、留置されると体内管の壁に当たって係合し、より早い細胞反応が期待されるよう体内管の壁を意図的に刺激する一対のスパイク22を提供する。これは、老年の患者にとっては、血栓/石灰化が体内管壁で起こり得るということ、および患者の体内管の細胞がそれほど活動的ではないことを考えると、重大である場合がある。スパイクの数および場所は変更可能である。この実施例ではおよそ3つのループのうちの1つが切られているが、1つおき、またはすべてのループをスパイクへと形成することが可能である。
【0056】
図4は、図3の線4−4′に沿ったステントグラフトの断面図を示す。ステントグラフト1の管状本体3は、それに縫い込まれたワイヤループ20を有しており、内側の糸19が各ループの端を捉えている。ループの少なくともいくつかはループの頂点でスパイクになるよう切られ、または他の態様で形成されて、留置されると体内管の壁に当たって係合
する一対のスパイク22を提供する。
【0057】
図4ではループ形状について半円形状が示されているが、金属ワイヤは多くの形状で縫い付け可能であり、最大限の固定が望まれる区域にループの多数の輪を縫い付けることが可能である。ワイヤ「ループ」は必ずしも円形形状である必要はなく、むしろ、楕円または直角といったより鋭い形を取り得る。
【0058】
図5a〜5dは、この発明に従った係合部分のさまざまな形状の詳細を示す。各々の場合、係合部分はステントグラフトの管状本体30から延びている。図5aでは、係合部分32は、一連の半円となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ34から形成されている、図5bでは、係合部分36は、一連の角付き部分となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ38から形成されている。図5cでは、係合部分40は、一連のコイルまたは螺旋となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ42から形成されている。図5dでは、係合部分46は、ボタン形状に形成され、管状本体30に取付けられてステッチ50により管状本体30に縫い込まれたワイヤ48から個々に形成されている。
【0059】
前述のように、係合部分を作る材料は、それが配置される体内管の体内管壁よりも硬く、そのため壁を変形させて、係合部分の周囲で壊死および組織成長を引起こすよう選択される。このため、ワイヤの形をしたニチノールといった材料は、その高度の弾性(回復可能)歪みにより、利点を提供し得る。プラスチック材料といった他の材料、単繊維縫合糸といった比較的硬い縫合糸も使用可能である。材料はまた、それらが留置中に圧縮可能であり、解放されると外側に広がって大動脈または他の体内管の壁に係合するよう、弾力的でなければならない。
【0060】
係合突出部は、係合突出の表面上への組織付着および伸展を強化し得るナノ規模の表面構成を有していてもよい。
【0061】
図6は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0062】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15として、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0063】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流によって生じる移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0064】
ステントグラフト1は、上述のように留置されるとランディングゾーンと係合するよう意図された部分におけるステントグラフト1の近位端領域5上にワイヤステッチ62によって縫い付けられたカフまたはカラーの形をしたSIS材料60のシートを含む。ワイヤ
ステッチ62はSISシート材料を保持し、生物学的固定の強化のために細胞が材料を通り抜けて成長することを可能にする、SISおよびグラフト材料を貫通する開口を提供するという追加の利点を有する。
【0065】
ワイヤステッチ62の少なくとも一部64はSISシート60の表面から外へと延びており、ステントグラフトが留置され、グラフトに結合されたステントが半径方向外向きの圧力を与えている際に半径方向外向きに突出する部分のマトリックスを提供する。これらの突出部分は、大動脈壁に対して(毛細管圧に打ち勝つよう30mmHgよりも大きい)局所圧力を作り出すかもしれず、細胞壊死を引起こす。細胞死の後、突出部分は動脈壁に当たり続け、内皮壁再構築をもたらして突出部分を収容する。各突出部分はやがて、組織成長によって完全に封入されるかもしれない。実際、グラフトの外側に導入された突出部分は、組織(外膜)が各突出部分の周囲で成長するための足場として機能し、重要な固定および封鎖機構を作り出す。
【0066】
図7は、図6に示すSISのシートの留め付けの詳細を示す。しかしながら、図7では加えて、SISゲルは結合剤として使用されている。
【0067】
この実施例では、SISシートは、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸の使用によってグラフト材料に取付けられている。SISシートは、確実で永続的な機械的取付を形成するよう、合成グラフト上に縫い付け可能である。この手法は、突出するステッチのマトリックスを使用することによって強化可能である。さらなる強化として、SISゲルは次に、図8〜10に示す実施例で説明するステップに従うことによって「結合剤」として使用され、縫い付けプロセスによって作り出された孔を充填することができる。さらに、突出する繊維は、SISゲルを所定の位置に保持する機械的足場を形成し得る。結果として生じる、SISが縫い付けられた複合構造は、上述の取付および固定の利点をすべて採用した繊維ループを介する細胞成長を促す。
【0068】
図7では、領域61のグラフト材料3は、SIS60およびグラフト材料3の双方を通ってバックステッチ66へと延びるステッチ62を用いて縫い付けることによってそれに取付けられたSIS60のシートから形成されたカフまたはカラーを有する。SISゲルまたは分解物の中間層68は、SISシートをグラフトに接続する「接着剤」を提供し、かつさらなる組織−グラフト内方成長を促進することができる。ステッチは、ステンレススチールワイヤ、ニチノールワイヤまたは縫合材料から形成可能である。ステッチ62のループ64の一部はSISを越えて延び、それらが留置される体内管の壁に係合してループ周囲の組織成長を促すことによって生物学的固定を支援する。
【0069】
図8〜10は、強化された生物学的固定を提供するこの発明のさらに別の実施例を示す。
【0070】
この実施例では、SIS70のシートが、SISゲルまたは分解物の中間層72とともに、ステントグラフトの選択された領域においてグラフト材料3の上に置かれる。真空フード74によって真空73がかけられ、ゲルまたは分解物72はグラフト材料3内へ引込まれて図9に示す結果をもたらし、ここでSIS70のシートはSISゲル72を接着剤として使用してグラフト材料3に接着される。複合物は次に、37℃の炉で20分間加熱することによって重合され、結果として生じた生成物は凍結乾燥または真空プレスされて図10に示すような生成物を提供する。
【0071】
SISシートは、天然ブタ成長因子および他のタンパク質で強化されたコラーゲン足場を提供可能な実績ある生成物である。この製造手法は、SISシートを利用し、シートをグラフト材料に確実に取付ける。SISゲルは、SISシートをグラフトに接続する「接
着剤」として使用され、かつ、上述の実施例と同様にさらなる組織−グラフト内方成長を促進する。このため、可能な一製造プロセスは以下のとおりである。
【0072】
(a) グラフトの外側上にSIS分解物およびSISシートを施して、SISゲルがグラフトに浸透できるようグラフトを「真空引き」する。
【0073】
(b) 37℃の炉で20分間、複合グラフトを重合する。
(c) 複合グラフトを凍結乾燥および/または真空プレスする。
【0074】
図11は、この発明のさらに別の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0075】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15として、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0076】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流によって生じる移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0077】
ステントグラフト1の、近位端5のすぐ遠位の部分には、ステントグラフトの外周の周囲の領域80があり、それは、使用時、ランディングゾーンに当たって係合するよう意図されており、グラフト材料管3を通って含浸したSISゲルまたはSISの分解物を有している。
【0078】
図12および図13は、このプロセスを詳細に示している。SIS82のゲルまたは分解物が領域80においてグラフト材料3の片面に施され、次に真空フード83によって真空がかけられてSISゲルまたは分解物82がグラフト材料3内に引込まれ、図13に示す結果をもたらす。グラフト材料の自然の有孔度は、グラフトへのSISの注入量を改良するさまざまな織り手法により、または、レーザもしくは同様の装置を用いてグラフト材料に孔を穿孔または融蝕することによってステントグラフトの選択された領域に追加の有孔度を提供することにより、変更可能である。そのような有孔度は、材料に20〜100ミクロンの開口を提供し得る。
【0079】
細胞壁組織は次に、SISによって提供された足場を介してグラフト材料内へと成長する。コラーゲンベースの外膜といった新しい組織の成長によって合成繊維/繊維束が包囲されるにつれて固定が起こり、それは(グラフトと動脈壁との間に)生体力学的な取付機構を形成する。封鎖も、SIS充填グラフトを通る組織成長の副産物である。加えて、内皮細胞はグラフト壁の内側のSIS内へと成長して非常に円滑な表面を形成し、結果として抗血栓グラフト特性をもたらすようである。さらに、結果として生じた組織の内方成長は、生物学的活性がある「生きた」状態であり、純粋に合成のグラフトとは対照的に、感
染に対する自然抵抗性を結果としてもたらす。
【0080】
図14は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0081】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0082】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流による移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。ステントグラフトの、近位端5のすぐ遠位の領域には、ステントグラフトの外周の周囲の領域90があり、それは、グラフト材料管3を貫通する複数の開口92によって生成された選択された有孔度を有している。
【0083】
グラフトが動脈瘤領域へと開かれる中央グラフト領域でグラフト材料の既存の低い有孔度が維持されるように、領域90をステントグラフトの意図されたランディングゾーン部分と一致させることが意図されている。図15は、ステントグラフト1のグラフト材料3の一部の拡大図を示す。領域90の材料3は、選択された有孔度を提供するためにそれに融蝕または穿孔された複数の開口92を有する。この実施例では、開口は、50ミクロンの直径と120ミクロンの間隔とを有する。前述のように、開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と20〜250ミクロンの間隔とを有していてもよい。
【0084】
中央グラフト領域で低い有孔度を保ちながら近位端および遠位端の双方でより多孔質であるグラフトを有することが、有利であり得る。グラフトの端は動脈壁に接触し、固定および封鎖にとって重要である。
【0085】
したがって、特定された領域におけるより多孔質の設計は、細胞の内方成長を介した生体封鎖、さらにはグラフト壁の内面における内皮化を容易にし得る。レーザで穿孔された孔を通る組織の内方成長も生体力学的取付を提供し、結果として著しい長期固定をもたらす。
【0086】
この発明の好ましい一実施例では、開口は、光化学レーザ穿孔プロセスを介したグラフト材料の融蝕によって生成可能である。このレーザの性質は、化学結合を層ごとに破壊して、最小限の加熱でポリマーを蒸発させることである。このため、周囲のグラフト材料はは最小限の損傷しか受けない。このレーザの性質は、化学結合を層ごとに破壊して、最小限の加熱でポリマーを蒸発させることである。融蝕プロセス中、グラフト材料が所望の機械的特性を保てるように繊維端の融解の程度を提供するために、いくぶん局所化された加熱を用いることが好ましい。
【0087】
この明細書全体を通し、この発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明は、これらのうちのどの1つにも限定されず、ともに組合されたこれらのうちの2つ以上に存在していてもよい。例は、限定のためではなく例示のみのために与えられている。
【0088】
この発明および特許請求の範囲全体を通し、文脈が特に要求していない限り、「備える」および「含む」という用語、ならびに「備えている」および「含んでいる」といった変形は、述べられた値または値の群の包含を暗示しているものの、その他の値または値の群の除外を暗示してはいないということが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図2】図1の線2−2′に沿ったステントグラフトの断面図である。
【図3】この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図4】図3の線4−4′に沿ったステントグラフトの断面図である。
【図5a】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5b】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5c】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5d】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図6】この発明に従った生物学的固定構成の代替的な一実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図7】SISをグラフト材料と関連付けることが可能な方法を示す、図6のグラフト材料の一部の拡大図である。
【図8】SISをグラフト材料と、およびグラフト材料内に関連付けることが可能な構成を示す、グラフト材料の一部の拡大図である。
【図9】図8で開始されたプロセスの第2段階を示す図である。
【図10】結果として生じるグラフト材料の一部の拡大図である。
【図11】この発明に従った生物学的固定構成の別の実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図12】SISがグラフト材料にどのように含浸可能かを示す、図11のグラフト材料の一部の拡大図である。
【図13】図12の結果として生じるグラフト材料の一部の拡大図である。
【図14】この発明に従った生物学的固定構成の代替的な一実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図15】図14に示すグラフト材料の一部の拡大図である。
【技術分野】
【0001】
この発明はグラフト材料に関し、より特定的には、人間または動物の身体への生物学的固定のための強化された、または改良された可能性を有するグラフト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
この発明は概して、管腔内に留置されたグラフトおよびステントグラフトへのその応用に関して述べられるが、この発明はそう限定されてはおらず、人間または動物の身体に適用されるべきグラフト、および、生物学的固定が望ましい、または必要な機能である場合にも適用され得る。
【0003】
人間または動物の身体管腔への管腔内留置のためのステントグラフトは一般に、生体適合性材料でできた管とステントとから形成され、それを通す管腔を維持する。そのようなグラフトは、腹部大動脈瘤といった管腔の損傷部分に及ぶように用いられる。一般に、ステントグラフトは、ランディングゾーンと呼ばれる領域において動脈瘤の両側で管腔の壁に当たって係合する。ステントグラフトが移動しないことを確実にするために、ランディングゾーンにおける管腔の壁への何らかの固定を有することが望ましい。特に、大動脈の頸部における腹部大動脈瘤ステントグラフトの近位固定は、血管内修復の長期耐久性に関する重大な機能である。このことは、大動脈内の脈動する血液がステントグラフトにかなりの力を与え得るので、重要である。効果的でない固定はステントグラフト移動をもたらすおそれがあり、それは、その後のタイプIエンドリーク、および、リークを修復するために必要な外科医によるその後の介入の現実の可能性につながり得る。固定の問題に対する現在の解決策は大抵、機械的繋止機構に依存している。ステントグラフトと大動脈壁との間の摩擦力は、ステントグラフトの直径と、土台となるステントによって支持される大動脈壁の直径との間の締り嵌めによって作り出される。装置をそれが配置される管腔に対して大きめのサイズにするという慣例は、これらの摩擦保持力を意図的に作り出すことに直接関連している。第2の顕著な固定力は、動脈壁を完全に貫通する小さなフックまたは刺に関連している。いずれの場合も、与えられる固定力は即時のものであり、長期生物学的相互作用を必要としない。第3の固定力である組織封入は、装置によってははるかに長い時間枠にわたって(何ヶ月にも、さらには何年にもわたって)生じる。ある種の腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフト装置の腎臓ステントといった、露出したステンレススチール・ステントストラットは、組織成長によってゆくゆくは完全に封入されるようになり(各ストラットが包囲される)、追加のかつ顕著な固定をもたらす。締り嵌めおよびある程度の封入機構は、装置の目的である動脈瘤を除外するために必要な封鎖を提供する。また、動脈疾患および瘤増殖の複雑な生理学的プロセスを通じて、上述の締り嵌めが失われることによって摩擦力が打消される場合がある、という問題がある。つまり、疾患、正常な老化、またはステントの外向きの力により、大動脈の頸部がさらに広がる場合がある。このため、時間が経つと、これらの正常な機械的力の一部または全部を失うことが起こり得る。加えて、刺によって与えられる固定は、はんだ材料の腐食および大動脈壁の局所断裂により、リスク下にある場合がある。
【0004】
多くの異なる医療機器用途のために、グラフト材料内への細胞の内方成長が探求されている。生体適合性材料は、細胞が付着できるかもしれないもののその内部へと成長することはできない障壁を形成する。血管グラフトの場合、細胞の内方成長は、血栓の形成を回避し、封鎖を作り出し、グラフトを管腔内または管腔間に固定するために重要である。血栓に対する耐性が最も高い公知の材料は、内皮細胞の単層である。グラフト内への細胞の内方成長がなければ、従来のグラフト材料を用いて内皮細胞の単層を実現することは事実
上不可能であった。
【0005】
また、細胞の内方成長がなければ、装置の固定および封鎖は機械的手段に委ねられ、それは時間が経つと機能しなくなるおそれがある。
【0006】
現在、AAAグラフトといった大口径グラフトについては、最小限の有孔度を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはダクロン生地を使用する傾向がある。組織の内方成長は、タイプIVエンドリーク(有孔度が高いグラフト材料による漏れ)がなくなることを確実にするために犠牲になってきた。固定および封鎖は上述のような機械的手段を介して達成され、大口径グラフトでの速い流速により、血栓が著名な懸念として見られることはない。
【0007】
この発明の一目的は、これらの二次的な機械的繋止力に頼らない生物学的固定機構を提供すること、または、少なくとも外科医に代替的な固定機構を提供することである。
【0008】
この明細書全体を通し、大動脈、留置装置または人工器官の一部に関する遠位という用語は、心臓から離れる血流の方向においてさらに遠い方の大動脈、留置装置または人工器官の端のことであり、近位という用語は、心臓に近い方の大動脈、留置装置または人工器官の端の部分を意味する。他の体内管に適用される場合、尾部および頭部といった同様の用語が理解されるはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
したがって一形態では、この発明は、近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、使用時に使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合するよう意図された領域を備え、領域は、ランディングゾーンへの生物学的固定を強化する機械的処置を備えている、ステントグラフトに存在する。
【0010】
機械的処置は、開口の提供、後述するような比較的硬い係合部分の提供、SISゲルまたは分解物の含浸、およびSISカフまたはカラーの取付を含む群から選択可能である。
【0011】
代替的な一形態では、この発明は、近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、そこから半径方向外向きに延びて、使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合する複数の比較的硬い係合部分を備えている、ステントグラフトを含む。
【0012】
好ましくは、複数の比較的硬い係合部分は、使用時に上述のような体内管のランディングゾーンに当たって係合するよう見込まれているステントグラフトの部分に配置されている。
【0013】
この明細書では、比較的硬いという用語は、係合部分が、ステントグラフトが留置される管腔の壁に当たって係合する際に係合部分の係合領域で壁を変形させる材料から作られている、ということを意味するよう意図されている。このため、係合部分の材料は、体内管壁よりも硬いものでなければならない。
【0014】
係合部分は、金属、合成の繊維または糸、もしくはポリマー材料から構成されていてもよい。
【0015】
係合部分は、ループ、コイル、角付き部分、ボタン、スパイクまたはその他の突出部の形をしていてもよい。
【0016】
係合部分は、さらに別の材料、またはグラフトの同じ材料の余分部分を管状本体の材料に縫い付ける、接着する、または挿通することによって、管状本体上に形成されてもよい。
【0017】
好ましくは、係合部分は、管腔内留置のための導入装置内へと圧縮できるよう弾力的である。
【0018】
生物学的固定が強化されるプロセスは十分には理解されていないが、そのプロセスは以下のようなものかもしれないということが示唆される。係合部分は、ステントグラフトが留置され、グラフトに結合されたステントが半径方向外向きの圧力を与えている際に半径方向外向きに突出する部分のマトリックスを提供する。これらの突出部分は、大動脈壁に対して(毛細管圧に打ち勝つよう30mmHgよりも大きい)局所圧力を作り出し、細胞壊死を引起こす。細胞死の後、突出部分は動脈壁に当たり続け、内皮壁再構築をもたらして突出部分を収容する。各突出部分はやがて、組織成長によって完全に封入されるかもしれない。実際、グラフトの外側に導入された突出部分は、組織(外膜)が各突出部分の周囲で成長するための足場として機能し、重要な固定および封鎖機構を作り出す。
【0019】
いくつかの実施例では、管状本体上に係合部分を取付けるプロセスは、細胞がグラフト内へ、およびグラフトを通って成長するよう促してさらなる生物学的固定および封鎖を達成する「微小寸法の」厚さ貫通孔を作り出してもよい。
【0020】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、近位端は、管状本体から半径方向外向きに延びる弾力的なワイヤループの配列を含む、ステントグラフトに存在すると言われている。
【0021】
好ましくは、各ワイヤループはステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤから形成されている。
【0022】
各ワイヤループは半円、コイル、角付き部分などの形をしていてもよい。
ループのうちの少なくとも一部は切られるなどして切断されて、スパイク部分を提供してもよい。体内管壁を意図的に刺激するためにスパイクを使用するのは、より早い細胞反応が期待されるためである。これは、老年の患者にとっては、血栓/石灰化が体内管壁で起こり得るということ、および患者の体内管の細胞がそれほど活動的ではないことを考えると、重大である場合がある。スパイクの数および場所は変更可能である。
【0023】
ワイヤは3〜10ミクロンの直径を有していてもよく、管状本体上に形成されたループは管状本体から50〜200ミクロン延びていてもよい。
【0024】
ワイヤループは、生体適合性材料の織物への縫い付け、接着または挿通によって管状本体上に形成される。
【0025】
生体適合性グラフト材料は、ダクロン、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、他の合成生体適合性材料、またはコラーゲンのような自然発生的生体材料であってもよい。細胞外基質(ECM)として公知の特別導出コラーゲン材料、たとえば小腸粘膜下組織(SIS)が特に好ましい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0026】
このように、この発明により、移動を防止するのに機械的な力だけに頼らず、縫い付けられたループまたは他の種類の係合部分によって作り出される足場を介した動脈組織成長と、縫い付けプロセスによって作り出された孔を介した直接組織内方成長とに基づく固定機構が提供される、ということがわかる。
【0027】
さらに別の形態では、この発明は、合成生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部はそれと結合される生物学的活性材料を有する、グラフトに存在すると言われている。
【0028】
この生物学的活性材料は、組織の再成長および再構築を加速されたペースで促進する。このため、この発明は、強化された生物学的固定および封鎖機構を提供することにより、現在の固定手法を補う。実際、合成グラフト材料内への組織成長は、生物学的活性材料の存在によって促進される。ステントグラフトの場合、この生物学的固定強化は、固定および封鎖にとって取付が重大である近位および遠位頸部に局所化可能である。この発明の生物学的固定強化を取入れたグラフトの固定および封鎖は生物学的かつ永続的であり、どうひいき目に見ても問題がある長期のかつ信頼性の劣る機械的固定機構を必要としない。
【0029】
生物学的活性材料を合成グラフト材料と結合するためにさまざまな方法および設計が使用可能である。方法は、生物学的活性材料を、製造プロセスを乗り切ってたとえばステントグラフトの頸部にそのまま送達されるようにグラフト材料に取付、注入、封入するなどして、ようやく組織内方成長および生物学的固定が完成する、ということを含み得る。
【0030】
グラフトはステントグラフトの形をしていてもよく、生物学的活性材料は、体内管壁との係合用のランディングゾーンと呼ばれ得る領域において、ステントグラフトの少なくとも近位領域でグラフト材料と結合され得る。生物学的活性材料はまた、遠位領域ランディングゾーンでグラフト材料と結合され得る。
【0031】
合成生体適合性材料は、ダクロンまたは延伸ポリテトラフルオロエチレンであってもよい。
【0032】
生体適合性グラフト材料は、コラーゲンのような自然発生的生体材料、特に細胞外基質(ECM)として公知の特別導出コラーゲン材料、たとえば小腸粘膜下組織(SIS)から形成されてもよい。SISの他に、ECMの例は、心膜、胃粘膜下組織、肝臓基底膜、膀胱粘膜下組織、組織粘膜、および硬膜を含む。
【0033】
SISは特に有用であり、バディラック(Badylak)等の米国特許第4,902,508号、カー(Carr)への米国特許第5,733,337号と17 ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 1083(1999年11月)とに記載の腸コラーゲン層、クック(Cook)等の1998年5月28日付けWIPO公報WO98/22158(PCT/US97/14855の公開出願)に記載されたやり方で作ることができる。SISなどの異種生体材料に加え、自己組織も採取可能である。加えて、エラスチン、またはエラスチン様ポリペプチド(ELP)などが、生物学的活性材料として可能性を提供する。別の代替例は、採取された天然弁組織といった同種異系移植片を使用することである。そのような組織は凍結保存された状態で商業的に入手可能である。
【0034】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第1の方法は、比較的多孔質のグラフトにSISゲルを注入することによるものであってもよい。織った生地の自然の有孔度(さまざまな織り方によって変更可能)は、グラフトの片面に真空をかけ、グラフトの自然の有孔度を形成する隙間へとSISゲルを「引く」ことにより、
グラフトへのSISゲルの注入を可能にし得る。
【0035】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第2の方法は、SISゲルを接着剤として使用して、SISシートを合成グラフト材料上に真空プレスすることによるものであってもよい。SISシートは、天然ブタ成長因子および他のタンパク質で強化されたコラーゲン足場を提供可能な実績ある生成物である。「接着剤」としてのSISゲルの使用は、SISシートをグラフトに接続し、かつさらなる組織−グラフト内方成長を促進する。可能な一製造プロセスは、グラフトの外側にSISゲルおよびSISシートを施し、次に、SISゲルがグラフトに浸透するようグラフトを「真空引き」し、その後37℃の炉で20分間、複合グラフトを重合し、次に複合グラフトを凍結乾燥および/または真空プレスすることである。
【0036】
生物学的活性材料を合成生体適合性グラフト材料と結合することが可能な第3の方法は、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸の使用によってSISシートを取付けることによるものであってもよい。
【0037】
SISシートは、確実で永続的な機械的取付を形成するよう、合成グラフト上に縫い付け可能である。SISゲルは次に、第2の方法で述べたステップに従うことによって「結合剤」として使用され、縫い付けプロセスによって作り出された孔を充填することができる。さらに、任意の突出する繊維が、SISゲルを所定の位置に保持する機械的足場を形成し得る。縫い付けは、縫合糸といった生体適合性糸を用いて、またはワイヤ糸の使用によって行なわれ得る。縫合糸といった生体適合性糸を用いた、またはワイヤ糸の使用による縫い付けの少なくとも一部は、ステントグラフトの外面を越えて延びて、固定を強化するためにそこから半径方向外向きに延びる複数の比較的硬い係合部分を提供することができる。
【0038】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にし、かつ適正な短期封鎖および固定を依然として提供する選択された有孔度を有している、グラフトに存在すると言われている。
【0039】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた管状本体を備えるステントグラフトであって、管状本体はそれを通す管腔を規定し、近位端と遠位端とを有しており、管状本体の近位端の長さに沿った少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にする選択された有孔度を有している、ステントグラフトに存在すると言われている。有孔度は、生体適合性グラフト材料における開口の配列によって提供されてもよい。開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と、20〜250ミクロンの間隔とを有していてもよい。
【0040】
開口は、レーザ穿孔の使用により、生体適合性グラフト材料に形成されてもよい。レーザは、小さいビームスポット、正確な穿孔深さ制御、および最小限の熱影響区域を提供する。エキシマレーザは、その精度および周辺材料への最小限の損傷で特に名高い。レーザは、さまざまな孔間距離で50ミクロンよりも小さい孔を穿孔する能力を有する。代替的な一形態では、選択された有孔度は、グラフト材料を構成する生体適合性繊維の織りパターンの修正によって提供されてもよい。たとえば、ステントグラフトの場合、ステントグラフトの近位端の領域は、経糸同士または緯糸同士の間に開口を提供するようなやり方で織られてもよい。そのような開口はその領域に20ミクロン〜100ミクロンの開口寸法を有していてもよい。
【0041】
さらに別の形態では、この発明は、人間または動物の身体における生物学的固定のため
に適合されたグラフト材料を製造する方法であって、グラフト材料に複数の開口を融蝕するステップを含み、開口は20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と20〜250ミクロンの間隔とを有する、方法に存在すると言われている。
【0042】
好ましくは、融蝕はレーザで行なわれる。
このため、この発明により、グラフトを形成する方法、および、血液の漏れを可能にするほど多孔質ではないものの細胞の内方成長を可能にする十分なサイズの制御された、かつ局所化された有孔度を有する材料から形成されたグラフトが提供されることがわかる。
【0043】
さらに別の形態では、この発明は、生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、使用されているランディングゾーンに対する局所圧力を作り出すSISまたは他の生体適合性材料でできたカフまたはカラーを含んでおり、それにより、大動脈壁に対して細胞壊死およびその後の内皮壁再構築を引起こして突出部分を収容し、ランディングゾーンへのステントグラフトの生物学的固定を強化する、ステントグラフトに存在すると言われている。
【0044】
このため、この発明により、生物学的固定を強化したステントグラフトが提供されることがわかる。
【0045】
ここでこの発明を概説するが、理解を助けるために、この発明の好ましい実施例を示す添付図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
詳細な説明
図1は、この発明の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体3の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の初期封鎖を提供する。
【0047】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流による移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0048】
追加される長期の生物学的固定は複数の係合部分17によって提供され、それらは管状本体にその近位端5に向かって留め付けられており、管状本体から半径方向外向きに延びている。この実施例では、複数の係合部分17は、硬いポリマー糸、ステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤのループによって設けられる。硬いポリマー糸は、たとえば縫合糸であり得る。ループは、ミシンまたは他の同様の機械を用いることによって管状本体に縫い付け可能である。縫製プロセス中、ステントグラフト1の管状本体の外側に小さなループ17が作られ得る。図1に示すように、ループは数列あり得る。
【0049】
図2は、図1の線2−2′に沿ったステントグラフトの断面図を示す。ステントグラフト1の管状本体3は、それに縫い込まれたワイヤループ17を有しており、内側の糸19が各ループの端を捉えている。
【0050】
図2では半円形状が示されているが、ループは多くの形状で縫い付け可能であり、最大限の固定が望まれる区域にループの多数の帯を縫い付けることが可能である。ループは必ずしも円形形状である必要はなく、むしろ、楕円または直角といったより鋭い形を取り得る。
【0051】
図3は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0052】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体3の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の初期封鎖を提供する。
【0053】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。
【0054】
この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供され、脈動する血液の力に対する追加の耐性を提供する。
【0055】
この実施例の追加される長期の生物学的固定は複数の係合部分20によって提供され、それらは、上述のように留置されるとランディングゾーンと係合するよう意図された部分において、管状本体にその近位端5に向かって留め付けられており、管状本体から半径方向外向きに延びている。この実施例では、複数の係合部分20は、硬いポリマー糸、ステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤのループによって設けられる。硬いポリマー糸は、たとえば縫合糸であり得る。ループは、ミシンまたは他の同様の機械を用いることによって管状本体に縫い付け可能である。縫製プロセス中、ステントグラフト1の管状本体の外側に小さな金属ワイヤループ20が作られ得る。図3に示すように、ループは数列あり得る。ループ20の少なくともいくつかはループの頂点で切られるなどして切断されて、留置されると体内管の壁に当たって係合し、より早い細胞反応が期待されるよう体内管の壁を意図的に刺激する一対のスパイク22を提供する。これは、老年の患者にとっては、血栓/石灰化が体内管壁で起こり得るということ、および患者の体内管の細胞がそれほど活動的ではないことを考えると、重大である場合がある。スパイクの数および場所は変更可能である。この実施例ではおよそ3つのループのうちの1つが切られているが、1つおき、またはすべてのループをスパイクへと形成することが可能である。
【0056】
図4は、図3の線4−4′に沿ったステントグラフトの断面図を示す。ステントグラフト1の管状本体3は、それに縫い込まれたワイヤループ20を有しており、内側の糸19が各ループの端を捉えている。ループの少なくともいくつかはループの頂点でスパイクになるよう切られ、または他の態様で形成されて、留置されると体内管の壁に当たって係合
する一対のスパイク22を提供する。
【0057】
図4ではループ形状について半円形状が示されているが、金属ワイヤは多くの形状で縫い付け可能であり、最大限の固定が望まれる区域にループの多数の輪を縫い付けることが可能である。ワイヤ「ループ」は必ずしも円形形状である必要はなく、むしろ、楕円または直角といったより鋭い形を取り得る。
【0058】
図5a〜5dは、この発明に従った係合部分のさまざまな形状の詳細を示す。各々の場合、係合部分はステントグラフトの管状本体30から延びている。図5aでは、係合部分32は、一連の半円となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ34から形成されている、図5bでは、係合部分36は、一連の角付き部分となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ38から形成されている。図5cでは、係合部分40は、一連のコイルまたは螺旋となって管状本体30に縫い込まれたワイヤ42から形成されている。図5dでは、係合部分46は、ボタン形状に形成され、管状本体30に取付けられてステッチ50により管状本体30に縫い込まれたワイヤ48から個々に形成されている。
【0059】
前述のように、係合部分を作る材料は、それが配置される体内管の体内管壁よりも硬く、そのため壁を変形させて、係合部分の周囲で壊死および組織成長を引起こすよう選択される。このため、ワイヤの形をしたニチノールといった材料は、その高度の弾性(回復可能)歪みにより、利点を提供し得る。プラスチック材料といった他の材料、単繊維縫合糸といった比較的硬い縫合糸も使用可能である。材料はまた、それらが留置中に圧縮可能であり、解放されると外側に広がって大動脈または他の体内管の壁に係合するよう、弾力的でなければならない。
【0060】
係合突出部は、係合突出の表面上への組織付着および伸展を強化し得るナノ規模の表面構成を有していてもよい。
【0061】
図6は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0062】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15として、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0063】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流によって生じる移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0064】
ステントグラフト1は、上述のように留置されるとランディングゾーンと係合するよう意図された部分におけるステントグラフト1の近位端領域5上にワイヤステッチ62によって縫い付けられたカフまたはカラーの形をしたSIS材料60のシートを含む。ワイヤ
ステッチ62はSISシート材料を保持し、生物学的固定の強化のために細胞が材料を通り抜けて成長することを可能にする、SISおよびグラフト材料を貫通する開口を提供するという追加の利点を有する。
【0065】
ワイヤステッチ62の少なくとも一部64はSISシート60の表面から外へと延びており、ステントグラフトが留置され、グラフトに結合されたステントが半径方向外向きの圧力を与えている際に半径方向外向きに突出する部分のマトリックスを提供する。これらの突出部分は、大動脈壁に対して(毛細管圧に打ち勝つよう30mmHgよりも大きい)局所圧力を作り出すかもしれず、細胞壊死を引起こす。細胞死の後、突出部分は動脈壁に当たり続け、内皮壁再構築をもたらして突出部分を収容する。各突出部分はやがて、組織成長によって完全に封入されるかもしれない。実際、グラフトの外側に導入された突出部分は、組織(外膜)が各突出部分の周囲で成長するための足場として機能し、重要な固定および封鎖機構を作り出す。
【0066】
図7は、図6に示すSISのシートの留め付けの詳細を示す。しかしながら、図7では加えて、SISゲルは結合剤として使用されている。
【0067】
この実施例では、SISシートは、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸の使用によってグラフト材料に取付けられている。SISシートは、確実で永続的な機械的取付を形成するよう、合成グラフト上に縫い付け可能である。この手法は、突出するステッチのマトリックスを使用することによって強化可能である。さらなる強化として、SISゲルは次に、図8〜10に示す実施例で説明するステップに従うことによって「結合剤」として使用され、縫い付けプロセスによって作り出された孔を充填することができる。さらに、突出する繊維は、SISゲルを所定の位置に保持する機械的足場を形成し得る。結果として生じる、SISが縫い付けられた複合構造は、上述の取付および固定の利点をすべて採用した繊維ループを介する細胞成長を促す。
【0068】
図7では、領域61のグラフト材料3は、SIS60およびグラフト材料3の双方を通ってバックステッチ66へと延びるステッチ62を用いて縫い付けることによってそれに取付けられたSIS60のシートから形成されたカフまたはカラーを有する。SISゲルまたは分解物の中間層68は、SISシートをグラフトに接続する「接着剤」を提供し、かつさらなる組織−グラフト内方成長を促進することができる。ステッチは、ステンレススチールワイヤ、ニチノールワイヤまたは縫合材料から形成可能である。ステッチ62のループ64の一部はSISを越えて延び、それらが留置される体内管の壁に係合してループ周囲の組織成長を促すことによって生物学的固定を支援する。
【0069】
図8〜10は、強化された生物学的固定を提供するこの発明のさらに別の実施例を示す。
【0070】
この実施例では、SIS70のシートが、SISゲルまたは分解物の中間層72とともに、ステントグラフトの選択された領域においてグラフト材料3の上に置かれる。真空フード74によって真空73がかけられ、ゲルまたは分解物72はグラフト材料3内へ引込まれて図9に示す結果をもたらし、ここでSIS70のシートはSISゲル72を接着剤として使用してグラフト材料3に接着される。複合物は次に、37℃の炉で20分間加熱することによって重合され、結果として生じた生成物は凍結乾燥または真空プレスされて図10に示すような生成物を提供する。
【0071】
SISシートは、天然ブタ成長因子および他のタンパク質で強化されたコラーゲン足場を提供可能な実績ある生成物である。この製造手法は、SISシートを利用し、シートをグラフト材料に確実に取付ける。SISゲルは、SISシートをグラフトに接続する「接
着剤」として使用され、かつ、上述の実施例と同様にさらなる組織−グラフト内方成長を促進する。このため、可能な一製造プロセスは以下のとおりである。
【0072】
(a) グラフトの外側上にSIS分解物およびSISシートを施して、SISゲルがグラフトに浸透できるようグラフトを「真空引き」する。
【0073】
(b) 37℃の炉で20分間、複合グラフトを重合する。
(c) 複合グラフトを凍結乾燥および/または真空プレスする。
【0074】
図11は、この発明のさらに別の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0075】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15として、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0076】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流によって生じる移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。
【0077】
ステントグラフト1の、近位端5のすぐ遠位の部分には、ステントグラフトの外周の周囲の領域80があり、それは、使用時、ランディングゾーンに当たって係合するよう意図されており、グラフト材料管3を通って含浸したSISゲルまたはSISの分解物を有している。
【0078】
図12および図13は、このプロセスを詳細に示している。SIS82のゲルまたは分解物が領域80においてグラフト材料3の片面に施され、次に真空フード83によって真空がかけられてSISゲルまたは分解物82がグラフト材料3内に引込まれ、図13に示す結果をもたらす。グラフト材料の自然の有孔度は、グラフトへのSISの注入量を改良するさまざまな織り手法により、または、レーザもしくは同様の装置を用いてグラフト材料に孔を穿孔または融蝕することによってステントグラフトの選択された領域に追加の有孔度を提供することにより、変更可能である。そのような有孔度は、材料に20〜100ミクロンの開口を提供し得る。
【0079】
細胞壁組織は次に、SISによって提供された足場を介してグラフト材料内へと成長する。コラーゲンベースの外膜といった新しい組織の成長によって合成繊維/繊維束が包囲されるにつれて固定が起こり、それは(グラフトと動脈壁との間に)生体力学的な取付機構を形成する。封鎖も、SIS充填グラフトを通る組織成長の副産物である。加えて、内皮細胞はグラフト壁の内側のSIS内へと成長して非常に円滑な表面を形成し、結果として抗血栓グラフト特性をもたらすようである。さらに、結果として生じた組織の内方成長は、生物学的活性がある「生きた」状態であり、純粋に合成のグラフトとは対照的に、感
染に対する自然抵抗性を結果としてもたらす。
【0080】
図14は、この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図を示す。この実施例では、図1に示す実施例の対応する構成要素について、同じ参照番号が使用されている。
【0081】
ステントグラフト1は、織ったダクロンといった生物学的材料でできた管状本体3を有する。管状本体2の長さに沿って、管状本体の外側にあって管状本体に縫い付けられた自己拡張型Zステント13がある。近位端5には、同じく本体に縫い付けられた内部自己拡張型Zステント15がある。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、この近位Zステント15は、ランディングゾーンにおいて大動脈の壁に対して圧力を加える。管状本体内のZステント15により、本質的に円滑な外面が大動脈の壁に与えられ、ある程度の封鎖を提供する。
【0082】
ステントグラフト1の近位端5には、近位で延びている剥き出しの自己拡張型Zステント7もある。この近位で延びているZステント7は、ステント7のストラット11から延びている刺9を有する。人間または動物の身体の体内管、たとえば大動脈にステントグラフト1が留置されると、刺9は大動脈の壁に係合し、体内管へのステントグラフトの全く機械的な即時の固定を提供する。たとえば脈動する血流による移動に関連する問題があり、それにより刺が大動脈の壁を引き裂くようになるおそれがある。したがって、この発明により、追加される長期の生物学的固定が提供される。ステントグラフトの、近位端5のすぐ遠位の領域には、ステントグラフトの外周の周囲の領域90があり、それは、グラフト材料管3を貫通する複数の開口92によって生成された選択された有孔度を有している。
【0083】
グラフトが動脈瘤領域へと開かれる中央グラフト領域でグラフト材料の既存の低い有孔度が維持されるように、領域90をステントグラフトの意図されたランディングゾーン部分と一致させることが意図されている。図15は、ステントグラフト1のグラフト材料3の一部の拡大図を示す。領域90の材料3は、選択された有孔度を提供するためにそれに融蝕または穿孔された複数の開口92を有する。この実施例では、開口は、50ミクロンの直径と120ミクロンの間隔とを有する。前述のように、開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と20〜250ミクロンの間隔とを有していてもよい。
【0084】
中央グラフト領域で低い有孔度を保ちながら近位端および遠位端の双方でより多孔質であるグラフトを有することが、有利であり得る。グラフトの端は動脈壁に接触し、固定および封鎖にとって重要である。
【0085】
したがって、特定された領域におけるより多孔質の設計は、細胞の内方成長を介した生体封鎖、さらにはグラフト壁の内面における内皮化を容易にし得る。レーザで穿孔された孔を通る組織の内方成長も生体力学的取付を提供し、結果として著しい長期固定をもたらす。
【0086】
この発明の好ましい一実施例では、開口は、光化学レーザ穿孔プロセスを介したグラフト材料の融蝕によって生成可能である。このレーザの性質は、化学結合を層ごとに破壊して、最小限の加熱でポリマーを蒸発させることである。このため、周囲のグラフト材料はは最小限の損傷しか受けない。このレーザの性質は、化学結合を層ごとに破壊して、最小限の加熱でポリマーを蒸発させることである。融蝕プロセス中、グラフト材料が所望の機械的特性を保てるように繊維端の融解の程度を提供するために、いくぶん局所化された加熱を用いることが好ましい。
【0087】
この明細書全体を通し、この発明の範囲に関してさまざまな示唆が与えられてきたが、この発明は、これらのうちのどの1つにも限定されず、ともに組合されたこれらのうちの2つ以上に存在していてもよい。例は、限定のためではなく例示のみのために与えられている。
【0088】
この発明および特許請求の範囲全体を通し、文脈が特に要求していない限り、「備える」および「含む」という用語、ならびに「備えている」および「含んでいる」といった変形は、述べられた値または値の群の包含を暗示しているものの、その他の値または値の群の除外を暗示してはいないということが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図2】図1の線2−2′に沿ったステントグラフトの断面図である。
【図3】この発明の代替的な一実施例に従った生物学的固定構成を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図4】図3の線4−4′に沿ったステントグラフトの断面図である。
【図5a】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5b】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5c】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図5d】この発明の一実施例に従った係合部分の一形状の詳細を示す図である。
【図6】この発明に従った生物学的固定構成の代替的な一実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図7】SISをグラフト材料と関連付けることが可能な方法を示す、図6のグラフト材料の一部の拡大図である。
【図8】SISをグラフト材料と、およびグラフト材料内に関連付けることが可能な構成を示す、グラフト材料の一部の拡大図である。
【図9】図8で開始されたプロセスの第2段階を示す図である。
【図10】結果として生じるグラフト材料の一部の拡大図である。
【図11】この発明に従った生物学的固定構成の別の実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図12】SISがグラフト材料にどのように含浸可能かを示す、図11のグラフト材料の一部の拡大図である。
【図13】図12の結果として生じるグラフト材料の一部の拡大図である。
【図14】この発明に従った生物学的固定構成の代替的な一実施例を取入れたステントグラフトの一部の斜視図である。
【図15】図14に示すグラフト材料の一部の拡大図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、使用時に使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合するよう意図された領域を備え、領域は、ランディングゾーンへの生物学的固定を強化する機械的処置を備えている、ステントグラフト。
【請求項2】
機械的処置は、開口の提供、前述のような比較的硬い係合部分の提供、SISゲルまたは分解物の含浸、およびSISカフまたはカラーの取付を含む群から選択される、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、そこから半径方向外向きに延びて、使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合する複数の比較的硬い係合部分を備えている、ステントグラフト。
【請求項4】
係合部分は、金属、合成の繊維または糸、もしくはポリマー材料を含む群から選択される材料から形成される、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
係合部分は、ループ、コイル、角付き部分、ボタンまたはスパイクを含む群から選択される形をしている、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項6】
係合部分は、さらに別の材料、またはグラフトの同じ材料の余分部分を管状本体の材料に縫い付ける、接着する、または挿通することによって、管状本体上に形成される、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項7】
係合部分は、管腔内留置のための導入装置内へと圧縮できるよう弾力的である、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項8】
生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、管状本体から半径方向外向きに延びる弾力的なワイヤループの配列を含む、ステントグラフト。
【請求項9】
各ワイヤループはステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤから形成されている、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項10】
各ワイヤループは半円、コイルまたは角付き部分の形をしている、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項11】
ループのうちの少なくとも一部はループの頂点で切られるなどして切断されて、スパイク部分を提供する、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項12】
ワイヤは3〜10ミクロンの直径を有し、管状本体上に形成されたループは管状本体から50〜200ミクロン延びていてもよい、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項13】
ワイヤループの配列は、生体適合性材料の織物への縫い付け、接着または挿通によって管状本体上に形成される、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項14】
合成生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部はそれと結合される生物学的活性材料を有する、グラフト。
【請求項15】
生物学的活性材料は、コラーゲン、細胞外基質(ECM)および小腸粘膜下組織(SIS)を含む群から選択される自然発生的生体材料である、請求項14に記載のグラフト。
【請求項16】
生物学的活性材料は、そのシートを、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸のステッチによってグラフト材料に取付けることによって、合成生体適合性グラフト材料と結合される、請求項14に記載のグラフト。
【請求項17】
金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸のステッチの少なくとも一部は、グラフト材料から半径方向外向きに延びている、請求項16に記載のグラフト。
【請求項18】
生物学的活性材料は、生物学的活性材料ゲルまたは分解物でできた結合剤の使用によって、合成生体適合性グラフト材料と結合される、請求項16に記載のグラフト。
【請求項19】
生体適合性グラフト材料であって、グラフト材料の少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にし、かつ適正な短期封鎖および固定を依然として提供する選択された有孔度を有している、生体適合性グラフト材料。
【請求項20】
生体適合性グラフト材料でできた管状本体を備えるステントグラフトであって、管状本体はそれを通す管腔を規定し、近位端と遠位端とを有しており、管状本体の近位端の長さに沿った少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にする選択された有孔度を有している、ステントグラフト。
【請求項21】
有孔度は、生体適合性グラフト材料における開口の配列によって提供される、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項22】
開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と、20〜250ミクロンの間隔とを有する、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項23】
有孔度は、グラフト材料を構成する生体適合性繊維の織りパターンの修正によって提供される、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項24】
生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、使用されているランディングゾーンに対する局所圧力を作り出すSISまたは他の生体適合性材料でできたカフまたはカラーを含んでおり、それにより、大動脈壁に対して細胞壊死およびその後の内皮壁再構築を引起こして突出部分を収容し、ランディングゾーンへのステントグラフトの生物学的固定を強化する、ステントグラフト。
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、使用時に使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合するよう意図された領域を備え、領域は、ランディングゾーンへの生物学的固定を強化する機械的処置を備えている、ステントグラフト。
【請求項2】
機械的処置は、開口の提供、前述のような比較的硬い係合部分の提供、SISゲルまたは分解物の含浸、およびSISカフまたはカラーの取付を含む群から選択される、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
近位端と遠位端とを有する実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、少なくとも近位端は、そこから半径方向外向きに延びて、使用されている身体の体内管のランディングゾーンに係合する複数の比較的硬い係合部分を備えている、ステントグラフト。
【請求項4】
係合部分は、金属、合成の繊維または糸、もしくはポリマー材料を含む群から選択される材料から形成される、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
係合部分は、ループ、コイル、角付き部分、ボタンまたはスパイクを含む群から選択される形をしている、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項6】
係合部分は、さらに別の材料、またはグラフトの同じ材料の余分部分を管状本体の材料に縫い付ける、接着する、または挿通することによって、管状本体上に形成される、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項7】
係合部分は、管腔内留置のための導入装置内へと圧縮できるよう弾力的である、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項8】
生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、管状本体から半径方向外向きに延びる弾力的なワイヤループの配列を含む、ステントグラフト。
【請求項9】
各ワイヤループはステンレススチールワイヤまたはニチノールワイヤから形成されている、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項10】
各ワイヤループは半円、コイルまたは角付き部分の形をしている、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項11】
ループのうちの少なくとも一部はループの頂点で切られるなどして切断されて、スパイク部分を提供する、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項12】
ワイヤは3〜10ミクロンの直径を有し、管状本体上に形成されたループは管状本体から50〜200ミクロン延びていてもよい、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項13】
ワイヤループの配列は、生体適合性材料の織物への縫い付け、接着または挿通によって管状本体上に形成される、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項14】
合成生体適合性グラフト材料を備えるグラフトであって、グラフト材料の少なくとも一部はそれと結合される生物学的活性材料を有する、グラフト。
【請求項15】
生物学的活性材料は、コラーゲン、細胞外基質(ECM)および小腸粘膜下組織(SIS)を含む群から選択される自然発生的生体材料である、請求項14に記載のグラフト。
【請求項16】
生物学的活性材料は、そのシートを、金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸のステッチによってグラフト材料に取付けることによって、合成生体適合性グラフト材料と結合される、請求項14に記載のグラフト。
【請求項17】
金属のまたは合成の生体適合性繊維もしくは糸のステッチの少なくとも一部は、グラフト材料から半径方向外向きに延びている、請求項16に記載のグラフト。
【請求項18】
生物学的活性材料は、生物学的活性材料ゲルまたは分解物でできた結合剤の使用によって、合成生体適合性グラフト材料と結合される、請求項16に記載のグラフト。
【請求項19】
生体適合性グラフト材料であって、グラフト材料の少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にし、かつ適正な短期封鎖および固定を依然として提供する選択された有孔度を有している、生体適合性グラフト材料。
【請求項20】
生体適合性グラフト材料でできた管状本体を備えるステントグラフトであって、管状本体はそれを通す管腔を規定し、近位端と遠位端とを有しており、管状本体の近位端の長さに沿った少なくとも一部は、細胞の内方成長を可能にする選択された有孔度を有している、ステントグラフト。
【請求項21】
有孔度は、生体適合性グラフト材料における開口の配列によって提供される、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項22】
開口は、20ミクロン〜120ミクロンの範囲の直径と、20〜250ミクロンの間隔とを有する、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項23】
有孔度は、グラフト材料を構成する生体適合性繊維の織りパターンの修正によって提供される、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項24】
生体適合性グラフト材料でできた実質的に管状の本体を備えるステントグラフトであって、管状本体は近位端と遠位端とを有し、少なくとも近位端は、使用されているランディングゾーンに対する局所圧力を作り出すSISまたは他の生体適合性材料でできたカフまたはカラーを含んでおり、それにより、大動脈壁に対して細胞壊死およびその後の内皮壁再構築を引起こして突出部分を収容し、ランディングゾーンへのステントグラフトの生物学的固定を強化する、ステントグラフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−537842(P2007−537842A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527502(P2007−527502)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017878
【国際公開番号】WO2005/112821
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506255935)メッド・インスティテュート・インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】MED INSTITUTE, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017878
【国際公開番号】WO2005/112821
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506255935)メッド・インスティテュート・インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】MED INSTITUTE, INC.
【Fターム(参考)】
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