説明

グラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法

【課題】グラブバケットにより薄層浚渫を確実に行うことができるグラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法を提供する。
【解決手段】ブーム7,アーム8及びこのアーム8に連結したグラブバケット3を備えたバックフォーを浚渫船1に搭載する。グラブバケット3のバケット本体21の刃先22の位置を検出する刃先位置検出手段と、アーム8とグラブバケット3を連結し、該アーム8に対してグラブバケット3を昇降するバケット昇降手段40と、このバケット昇降手段40を制御するグラブバケット開閉制御手段とを備える。刃先位置検出手段により刃先22の位置を確認して水底面に対し刃先22を合わせ、バケット本体21を閉めながら、グラブバケット開閉制御手段の制御により水底面を薄層浚渫するように、グラブバケット3を昇降して浚渫を行うことができる。また、刃先位置検出手段は、浚渫船1に設けたGPS装置の位置情報を用いるから、刃先位置を正確に設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブバケットを備えた浚渫船とこれを用いた浚渫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラブバケット式浚渫船では、バケット本体を開閉して水底の泥土を浚渫するため、バケット本体の回動軌跡に倣って浚渫面に凹凸が生じる。
【0003】
このような問題を考慮して、センサーからの信号を処理してグラブバケットの掘削軌跡を演算する演算手段と、この演算手段で演算されたグラブバケットの掘削軌跡を表示する表示部材とを備えるグラブバケットの掘削軌跡表示装置において、前記のセンサーが、グラブバケットを開閉させる開閉ワイヤーの移動量を検出する開閉センサーと、グラブバケットを上下させる支持ワイヤーの移動量を検出する支持センサーとを備え、開閉センサーと支持センサーからの信号を演算手段が演算してグラブバケットの掘削軌跡を計算し、演算されたグラブバケットの掘削軌跡が表示部材に表示されるグラブバケットの掘削軌跡表示装置があり、オペレーターは、表示部材を見て、シェルの掘削軌跡を簡単かつ正確に確認できる。このため、オペレーターは、表示部材をみながら、シェルの掘削軌跡が水平になるように、支持ワイヤーの繰り出し量を調整して、海底を簡単かつ容易に、しかも正確に水平堀できる(例えば特許文献1)。
【0004】
また、グラブバケット浚渫装置のバケットの刃先位置を画像表示する装置において、バケットを上下移動させる支持ワイヤの繰出入れ量を検出する支持ワイヤ繰出し計と、バケットを開閉させる開閉ワイヤの繰出入れ量を検出する開閉ワイヤ繰出し計と、この支持ワイヤ繰出し計および開閉ワイヤ繰出し計が検出した検出データからバケットの側面方向における刃先位置を算出するデータ処理装置と、このデータ処理装置が算出したバケットの側面方向における刃先位置を画像表示する表示装置とを備え、この表示装置は、リアルタイムでバケットの側面方向における刃先位置の移動軌跡を画像表示するようにしたので、オペレータは土砂の中にあるバケットの側面方向における刃先位置の移動軌跡をリアルタイムで把握しながら、刃先位置を調整して水平に移動させることができるので、容易に水底を平らに浚渫することができる(例えば特許文献2)。
【0005】
しかし、上記各特許文献のように、グラブバケットの掘削軌跡を表示できても、水底を水平に掘削するには、作業者の熟練を要し、掘削精度のばらつきを生じ易いという問題があり、特に、50cm以下程度の表面層を浚渫する薄層浚渫では、操作が難しく、さらに、前記グラブバケットは支持ワイヤーにより吊設されているから、バケットが振れ易く、しかも、吊設されたグラブバケットを開閉ワイヤーにより開閉するものであるから、浚渫動作が不安定になり易い。
【特許文献1】実公平7−20208号公報
【特許文献2】特開2006−27830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、グラブバケットにより薄層浚渫を確実に行うことができるグラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ブーム,アーム及びこのアームに連結したグラブバケットを備えた浚渫手段を浚渫船に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、前記グラブバケットのバケット本体の刃先位置を検出する刃先位置検出手段と、前記アームとグラブバケットを連結し、該アームに対して前記グラブバケットを昇降するバケット昇降手段と、このバケット昇降手段を制御する制御手段とを備えるものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、ブーム,アーム及びこのアームに連結したグラブバケットを備えた浚渫手段を浚渫船に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、前記グラブバケットのバケット本体の刃先位置を検出する刃先位置検出手段と、前記浚渫船に対して前記グラブバケットを昇降するバケット昇降手段と、このバケット昇降手段を制御する制御手段とを備えものである。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記刃先位置検出手段は、前記バケット本体の位置を検出するバケット位置検出手段と、前記グラブバケットの開度検出手段とを備えるものである。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、バケット本体を開いた浚渫開始位置から前記グラブバケットを上昇しながら前記バケット本体を閉める浚渫方法である。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、バケット本体を開いた浚渫開始位置から前記グラブバケットを上昇しながら前記バケット本体を所定角度閉める開始行程と、この開始行程の高さ位置で前記バケット本体を所定角度閉め、バケット本体の回転中心と刃先位置とが略垂直となる垂直位置を含む中間行程と、前記グラブバケットを降下しながら前記バケット本体を全閉位置まで閉める終了行程とを備える浚渫方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、刃先位置検出手段により刃先の位置を確認して水底面に対し刃先を合わせ、バケット本体を閉めながら、制御手段の制御により水底面を薄層浚渫するように、グラブバケットを昇降して浚渫を行うことができる。
【0013】
この場合、グラブバケットは、アームに連結され、バケット昇降手段によりアームに対して昇降するから、グラブバケット上部からの掘削力を、グラブバケットの自重のみでなく、アーム側からも加わえることができ、浚渫面の強度に係らず、グラブバケットの刃先の軌跡を制御することができる。また、ブームとアームを用いるから、浚渫装置全体が小型化でき、高さも低くできるため、上部に障害物のある箇所などでも施工が可能となる。
【0014】
また、請求項2の構成によれば、刃先位置検出手段により刃先の位置を確認して水底面に対し刃先を合わせ、バケット本体を閉めながら、制御手段の制御により水底面を薄層浚渫するように、バケットを昇降して浚渫を行うことができる。
【0015】
この場合、グラブバケットは、アームに連結され、バケット昇降手段により浚渫船に対して昇降するから、グラブバケット上部からの掘削力を、ラブバケットの自重のみでなく、アーム側からも加わえることができ、浚渫面の強度に係らず、グラブバケットの刃先の軌跡を制御することができる。また、ブームとアームを用いるから、浚渫装置全体が小型化でき、高さも低くできるため、上部に障害物のある箇所などでも施工が可能となる。
【0016】
また、請求項3の構成によれば、アームの位置とバケットの開度とにより、刃先位置を検出することができる。
【0017】
また、請求項4の構成によれば、バケット本体の開度に応じて刃先が略水平方向に移動する。
【0018】
また、請求項5の構成によれば、開始行程では、浚渫開始位置からバケット本体を閉めるために回動すると、刃先の軌跡は降下するから、これに対応してグラブバケットを上昇することにより、刃先がほぼ水平方向に移動する。次に、前記垂直位置を含む中間行程では、高さ位置をそのままにし、前記垂直位置を挟んで刃先は略水平方向に円弧を描いて移動する。この後の最終行程では、前記垂直位置より閉まる側にグラブバケット本体を回動すると、刃先の軌跡は上昇するから、これに対応してグラブバケットを降下することにより、刃先がほぼ水平方向に移動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規なグラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法を採用することにより、従来にない機能を付加したグラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法が得られ、そのグラブバケット式浚渫船とこれを用いた浚渫方法を夫々記述する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図12は本発明の実施例1を示す。図1に示すように、本発明の浚渫装置は、グラブバケット式浚渫船1を備え、このグラブバケット式浚渫船1は、河川、湖沼あるいは港湾等で浚渫を行うものである。この浚渫船1は、泥土の浚渫場所Aの底に打設された固定用ストッパ2により位置固定され、先端に密閉式グラブバケット3が装置された浚渫手段たる周知のバックホー4を搭載している。
【0021】
このバックホー4は、走行手段たるクローラ5の上部に車体6を旋回可能に設け、この車体6にブーム7をブームシリンダ(図示せず)により上下回動自在に設け、そのブーム7にアーム8をアームシリンダ9で上下回動自在に設け、そのアーム8に前記グラブバケット3を設け、ブーム7,アーム8を上下回動することでグラブバケット3を昇降する。また、前記バックホー4のクローラ5は、図示しない固定手段により浚渫船1に固定されている。
【0022】
さらに、浚渫船1は、前記バックホー4が水底面10から浚渫した泥土から木やビニール等を分離する分離槽11と、この分離槽11を通過した泥土から、更に雑物や砂利等を分離するホッパー12と、このホッパー12からの泥土を貯めて攪拌する攪拌手段たる攪拌槽13と、この攪拌槽13から管路14へ泥土を連続圧送するポンプであるマルスポンプ15等が搭載されている。前記管路14は、水面、更には陸上に渡って敷設され、泥土処理装置設置場所まで延びており、この設置場所は、浚渫場所の水上の処理船や、地上の処理場所などが例示される。なお、ポンプは、マルスポンプ15以外に各種のものを用いることができる。
【0023】
図1ないし図7は前記グラブバケット3を示し、全閉時に内部を密閉できる密閉式であり、前記グラブバケット3は、左右のバケット本体21,21を開閉可能に有し、これらバケット本体21,21は、先端に刃先22,22を有する底板23,23と、左右の側板24,24と、上板25,25とを連続して備えると共に、それらバケット本体21,21は、前後を側壁26,26によりそれぞれ塞いでいる。尚、左右のバケット本体21,21は、左右対称であり、閉成状態で、底板23,23の刃先22,22が突き合わされると共に、側壁26,26の合せ目26A,26Aが突き合わされて閉まる。前記バケット本体21の上部には、前後に枢軸27,27が設けられ、これら枢軸27,27により、バケット本体21がグラブバケット3の基部28に枢支され、前記枢軸27の上方に作動部29が設けられ、左右のバケット21,21の作動部29,29が油圧シリンダなどの開閉手段30に連結されている。そして、開閉手段30が収縮,伸張すると共に、図示しない同期機構により、左右のバケット本体21,21が左右対称に開閉するようになっている。
【0024】
前記基部28には、4節平行リンク機構31により、前記アーム8先端のアタッチメント32が連結され、前記4節平行リンク機構31は、前記基部28に設けた第1節33の両側に第1リンク片34,34Aの基端を回動可能に連結し、それらリンク片34,34Aの先端を第2節35と第3節35Aに回動可能に連結し、それら第2節35と第3節35Aに、第2リンク片36,36Aの基端を回動可能に連結し、それら第2リンク片36,36Aの先端を、前記アタッチメント32に設けた第4節37に回動可能に設け、それら第1リンク片34と第2リンク片36Aとが平行をなし、それら第1リンク片33Aと第2リンク片36とが平行をなす。
【0025】
前記第2節35と第3節35Aとの間には、伸縮駆動手段39を設け、この伸縮駆動手段39の両端を前記第2節35と第3節35Aに連結し、伸縮駆動手段39の伸張によりアタッチメント32に対してグラブバケット3が上昇し、伸縮駆動手段39の収縮によりアタッチメント32に対してグラブバケット3が降下する。そして、それら4節平行リンク機構31と伸縮駆動手段39とにより、バケット昇降手段40を構成している。前記伸縮駆動手段39には、流体圧シリンダである油圧シリンダが用いられたり、モータによるねじの回転を伸縮に変えるねじ式伸縮装置を用いたりできる。尚、前記アタッチメント32は、その上部が枢軸8Aにより、前記アーム8の先端に連結されている。
【0026】
前記浚渫装置は、グラブバケット3のバケット本体21の開度を検出する開度検出手段41と、バケット昇降制御手段42とを備え、このバケット昇降制御手段42は、前記開度検出手段41により検出したバケット本体21,21の開度により水底の泥土を所定厚さの範囲で薄層浚渫するようにアーム8に対するグラブバケット3の高さを制御する。
【0027】
また、図10に示すように、この例では、前記開閉手段30は、2つの油圧シリンダ51,51を備え、この油圧シリンダ51は、シリンダ本体51Aとロッド付きのピストン51Bとを備える。そして、前記バケット開閉度検出手段41は、前記油圧シリンダ51に追従するバケット開閉追従シリンダ52により構成され、この油圧シリンダ52は、シリンダ本体52Aとロッド付きのピストン52Bとを備える。図10に示すように、シリンダ本体51A,51Aにヘッド側流路53を接続し、このヘッド側流路53には、切換弁54を介して、油圧供給源55と返送部56とが切換可能に接続される。また、前記切換弁54と前記バケット開閉追従シリンダ52のシリンダ本体52Aとがロッド側流路57により接続されている。さらに、前記シリンダ本体51A,51Aに接続したロッド側流路58と、前記シリンダ本体52Aに接続したヘッド側流路59とが接続されている。
【0028】
また、前記ピストン52Bのロッドには、作動片60が設けられ、この作動片60の移動位置に検出手段たる第1〜3のリミットスイッチ61,61A,61Bが設けられている。尚、前記バケット開閉追従シリンダ52及びリミットスイッチ61,61A,61Bは、浚渫船1側に設けられ、例えばバックフォー4の車体6側に設けられる。尚、図中62は、流路(油圧回路)における供給流量を調節する操作用可変絞り部であり、63は操作用可変絞り部62と並列に配置された逆止弁である。
【0029】
したがって、切換弁54を切り換えることにより、油供給源55からヘッド側流路53を通してシリンダ本体51A,51A内に油を供給すると共に、ロッド側流路57から返送部56への油の返送を許容する状態とする。この状態では、シリンダ本体51A内のヘッド側に油が送られることにより、ピストン51Bが外側に移動して油圧シリンダ51が伸長し、図4に示す全開の位置からバケット本体21,21が閉動作を開始する。ピストン51Bが外側に移動して油圧シリンダ51が伸長すると、シリンダ本体51B内のロッド側から油がロッド側流路58に押し出され、その油はヘッド側流路59からバケット開閉追従シリンダ52のシリンダ本体52A内に送られ、これにより開閉手段30のピストン51Bの移動量に応じて、開度検出手段41のビストン52Bが移動する。したがって、ピストン52Bの移動量からバケット本体21,21の開度を検出することができる。尚、バケット本体21,21を開く場合は、切換弁54を切り換え、油圧供給源55からロッド側流路57を通して、シリンダ本体52A内のロッド側に油を送り込むと、ピストン52Bがヘッド側に移動し、シリンダ本体52A内のヘッド側の油が、ヘッド側流路59とロッド側流路58を通って、シリンダ本体51B内のロッド側に送られ、油圧シリンダ51,51が収縮し、バケット本体21,21が開く。
【0030】
次に、図2などを用いてバケット本体21の開度について説明する。尚、図2において、二点鎖線は、枢軸27を中心とした刃先22の移動軌跡を示し、破線は、その刃先22の移動軌跡に対応するグラブバケットの昇降を説明する昇降動作線であり、同昇降動作線と逆向きにグラブバケット3を昇降する。そして、左右のバケット本体21,21の左右の枢軸27,27は、左右に間隔をおいて設けられており、その枢軸27の中心と刃先22の先端(下端)とを結ぶ開閉基準線Kにより開度を表す。開度基準線Kが垂直の状態で、刃先22は最下限位置となり、この位置の開度θを0度と規定し、ここから閉まる方向に回動する角度を(−)、開く方向に回動する角度を(+)で表す。この例では、開度θが−30度でバケット本体21,21が全閉し、開度が+48度でバケットが全開する。
【0031】
バケット本体21の全開位置で、刃先22を浚渫面たる水底面10の高さ位置に合わせる。この全開位置からバケット本体21,21を所定角度閉める開始行程では、所定角度は開度+48度〜+15度であり、バケット本体21の回動に応じて、アーム8に対してグラブバケット3が上昇する。この場合、バケット本体21が等角速度で回動する場合は、これに対応して、ブラケットを等速で上昇し、水底面10からの深さである浚渫深さHが40mm以下で浚渫を行い、開度θが+15度で、刃先22は水底面10より高さT(T<H)まで上昇するように、開度検出手段41とバケット昇降制御手段42とによる制御が行われる。尚、全開位置からバケット本体21,21を閉める動作を開始すると、同時にバケット昇降手段40が作動し、アーム8に対して、グラブバケット3が降下する。
【0032】
続いて、開度θが+15度〜−15度の中間工程では、バケット昇降手段40は駆動せず、グラブバケット3はそのままの高さ位置で、バケット本体21,21が回動し、開度θが0度で、浚渫深さHとなり、開度θが−15度で、刃先22は水底面10より高さT(T<H)まで上昇する。
【0033】
続いて、開度θが−15度〜−30度(全閉)の終了工程では、バケット本体21の回動に応じて、アーム8に対してグラブバケット3が降下する。この場合も、バケット本体21が等角速度で回動する場合は、これに対応して、ブラケットは等速で降下し、開度θが−30度で、刃先22は水底面10と同じ高さ位置になるように、開度検出手段41とバケット昇降制御手段42とによる制御が行われる。
【0034】
このような制御を行うため、第1〜3のリミットスイッチ61,61A,61Bは以下のように配置され、その検出信号により、バケット昇降制御手段42が制御を行う。また、第1のリミットスイッチ61は、開度θが+15度で作動片60により切り替わる位置に配置され、第1のリミットスイッチ61が切り替わると、バケット昇降制御手段42がバケット昇降手段40を停止するように制御する。第2のリミットスイッチ61Aは、開度θが−15度で作動片60により切り替わる位置に配置され、第2のリミットスイッチ61Aが切り替わると、バケット昇降制御手段42がバケット昇降手段40を駆動してグラブバケット3をアーム8に対して上昇するように制御する。
【0035】
次に、前記グラブバケット3の位置を検出する位置検出手段について説明する。前記バックフォー4は、このバックフォー4の基準位置P4に対して、アーム8の先端の位置を検出するアーム位置検出手段71を備える。尚、基準位置P4は、本体4の旋回中心上に設けることが好ましい。そして、ブーム7とアーム8の長さは既知であり、これらブーム7とアーム8の角度はブームシリンダとアームシリンダ9の伸張データなどから検出できるから、それらの検出センサなどを備えるアーム位置検出手段71によりアーム8の先端の高さ位置を検出することができ、また、車体6の旋回位置を検出する検出センサを備えるアーム位置検出手段71によりアーム8の平面位置を検出できる。
【0036】
さらに、浚渫装置は、位置管理のために、GPS装置72を備え、以下、このGPS装置72について説明すると、移動局である浚渫船1の後部には、作業者の居住区1Aが設けられており、この居住部1Aの天井部には所要の高さ位置に一対のGPSアンテナ161,171が配設されている。なお、図8に示すように、GPS受信機160,170は、浚渫船1の操作室に設けられ、GPSアンテナ161,171とはそれぞれ信号線を介して接続されている。また、GPSアンテナ161,171の配置位置は、居住部1Aの天井に限定されず、浚渫船1上の適宜の2か所であればよい。本実施形態においては、GPSアンテナ161,171は互いに距離Lだけ離間した位置関係を有して配置されている。
【0037】
181は、地上に般けられた図外の基地局からの、後述する送信データを受信するデータアンテナである。なお、GPSアンテナ161,171は、マルチバス等による電波干渉の影響を極力防止するべく、適宜な高さ位置に搭載されている。
【0038】
図11は、本装置に用いるデイファレンシヤルGPS装置のブロック図を示している。図において、基地局200は港湾近くの地上の特定の既地点に設置され、GPSアンテナ181及びGPS受信機180からなる固定GPSを備えると共に、この固定GPSで測位されたデータを移動局である浚渫船に向けて伝送するためのデータ送信機182及びデータアンテナ183を備えている。
【0039】
一方、移動局である浚渫船1は、前述したGPS受信機160,170及びGPSアンテナ161,171を備えるとともに、基地局200から伝送されてくるデータを受信するデータアンテナ191及び受信データをデコードするデータ受信機190を備える。
【0040】
100は管理システム部であって、制御部101及び測位値監視部102を備える。前記制御部101には、船体位置表示部103と、グラブバケット3の刃先22の位置情報を算出する刃先位置検出手段104とが設けられている。そして、前記制御部101には、前記アーム位置検出手段71,リミットスイッチ61,61A,61Bが電気的に接続され、それぞれの検出データが取り込まれるようになっている。
【0041】
制御部101は、GPS受信機160,170からの測位データ1,2であるGPSアンテナ161,171の3次元位置から、浚渫船1の所定位置(例えば基準位置P4)を算出し、アーム位置検出手段71からの検出データにより、刃先22の位置を計算し、前記船体位置表示部103のディスプレーなどに表示するものである。そして、刃先22の位置を示す表示データは、浚渫船1でのバックフォー4の操作指示に供される。
【0042】
測位値監視部102は、GPS受信機160,170の出力側に接続され、測位データ1,2及び予め書き込まれている距離Lを用いて、測位データ1,2が真の測位値であるかどうかを判断するものであり、後述する初期化において、特に用いられる。なお、この測位値監視部102は、初期化後においても測位値誤差を監視し、側位データの誤差が、ある閾値を越えたときは、初期化のためのリセット(初期化リセット)を指示するようにしている。
【0043】
D−GPS(デファレンシャルGPS)による測位動作を、簡単に説明すると、L1(波長19cm)またはL2(波長24cm)の搬送波であるGPS信号は、得られた位相情報がいずれのサイクルのものかを確認する必要があることから、複数個の衛星が用いられ、3次元測位を行う際には少なくとも5個の衛星が用いられ、本発明では、3次元測位と、衛星の時計と各GPS受信機の時計間の誤差修正とのために、人工衛屋の内の、少なくとも5つの衛星からのGPS信号が用いられる。
【0044】
各GPSアンテナ181,161,171は、衛星からのGPS信号、例えばL1搬送波(波長19cm)を受信する。GPS受信機180は、受信されたGPS信号から搬送波の位相情報をデータ送信機182を介してデータアンテナ183から海上に送信する。同時に、GPSアンテナ161,171で受信されたGPS信号はGPS受信機160,170で、その位相情報が検出され、データアンテナ191で受信された基地局200の位相データとを用いて、それぞれ自己のGPSアンテナ161,171の双曲面内の(波長19cm毎の)測位候補点を得る。かかる処理を複数、例えば5個の衛星に対しても行うことで5個の双曲面内での格子点が真の測位点のための候補点として得られる。GPS受信機160,170はそれぞれ得られた上記候補点の中から、時間的に位置か変化しない格子点を、公知の解析手法等を利用して求め、真の測位点と見做し得る測位値を決定する。L1搬送波によるディフアレンシヤル方式を採用することで、測位精度は使用波長の数分の1である、数センチ程度まで向上させることができる。そして、GPS受信機160,170で初期化が終了すると、初期化完了信号を出力するようにしている。
【0045】
測位値監視部102には、このようにして得られた初期化による測位結果である測位値及び初期化完了信号が導かれ、これらの情報を元に、測定値が真の測位値かどうかについて、後述の回路ブロックを用いて判断する。
【0046】
図12は、測位値監視部102の内部ブロック図である。321,322はアンド回路で、測位データ1,2と初期化完了信号とが導かれる。323は演算部で、測位データ1,2で得られた両位置間の距離D1を算出する。324は平均化回路である。325は判断部で、測位データ1,2から得られた両位置間の距離D1が所定の閾値、すなわち規定値を越えたかどうかを判断する。
【0047】
以下、図12を用いて測位値監視処理について説明する。今、GPSアンテナ161,171の船体上の特定個所(例えばバックフォー4の基準位置P4)に対する位置を座標(x10,y10,z10),(x20,y20,z20)とすると、2点間の距離Dは、
【0048】
【数1】

【0049】
で表され、この値は測位値監視部102 内に予め書き込まれている。
【0050】
一方、アンド回路321,322から出力される測位データ1,2を座標(x1,y1,x1),(x2,y2,z2)とすると、2点間の距離D1は、演算部323で数2のように計算され、
【0051】
【数2】

【0052】
となる。
【0053】
そして、測位データ1,2による2点間距離D1は、測位データ1,2が真の測位値であれば、距離Dに一致するはずであるから、ここで実測した距離DとGPS測位から得られた値D1との正誤のための照合を判断部325で行う。すなわち、数3に示す判断式において、D1が、
【0054】
【数3】

【0055】
を満足するかどうかである。
但し、測定精度の向上を図るべく、平均化回路324 において、例えば連続する3回分D11,D12,D13の距離データが平均されている。例えば、D1の4番目の値は、(D11+D12十D13)/3、のように平均化される。
【0056】
そして、値D1が規定値内、すなわちD1がD−dDより大きく、かつD1がD+dDより小さければ、判断部325からNOを示す信号が正常ステータス信号として出力される。逆に、D1がD−dDより小さいが、又はD1がD+dDより大きければ、測定値は真の測定値ではないとして、再度の初期化を指示するべく、判断部325からYESを示す信号が初期化リセット信号として出力される。
【0057】
そして、かかる測位値監視部102は、測位動作中、常に監視処理を実行することで、初期化時、初期化後の測位中の双方において、誤った測位結果が得られると即座に初期化リセット指示を行うことが可能となる。従って、従来のように、誤った状態で、数10分も経過しなければそのことが判断し得ない場合に比して極めて高精度で、信頼性の高い装置ということができる。そして、位置をセンチレベルで正確に測定し得るので、例えば50センチ以下の薄層浚渫の作業精度の要請にも充分対応することが可能となる。
【0058】
以上のようにして、正常ステータス信号が制御部101に出力されると、制御部101は、得られた測位データ1,2をもとに、GPSアンテナ161,171のいずれか一方の測位結果を用いてバックフォー4の基準位置P4を計算し、さらに、刃先22の位置が求められる。すなわち、基準位置P4から、アーム位置検出手段71によりアーム8の先端の位置を検出し、アーム8の先端の位置から開度検出手段41により開度を検出し、これらのデータにより前記刃先位置検出手段104が刃先22の位置を算出する。
【0059】
このようにグラブバケット3の上部にバケット昇降手段40を設け、バケット本体21の開度を開度検出手段41により検出し、この検出データをバケット昇降制御手段42に入力し、バケット本体21の開度に応じて、グラブバケット3を昇降することにより、グラブバケットの掘削軌跡(刃先22の移動軌跡)を略同一高さで水平に掘削することができる。したがって、オペレータの熟練度にかかわらず、掘削面である水底面10を略水平に仕上げることができる。
【0060】
また、開度検出手段41は、本実施例の油圧式以外でも、開度に対応した電気データを検出して制御手段に入力するものでもよい。
【0061】
さらに、バックフォー4にグラブバケット3を取り付けることで、装置全体が小型化され高さも低くできるため、上部に障害物がある箇所での施工が可能となる。また、装置が小型化され、組立解体移動が容易となるため、移動により河川、湖沼などにおいての浚渫が可能となる。
【0062】
また、水底面10の高さは、図示しない深度計を用いて測定し、これとGPS装置72とを組み合わせて使用することで、陸上、水中などの直接オペレータが目視でいない箇所を、略水平で必要な部分のみ掘削、浚渫することができる。
【0063】
また、ワイヤーで吊下げられたグラブバケット3と異なり、バックフォー4の鋼製のアーム8でグラブバケット3が連結されているので、バケットの振れがすくなく、グラブバケット3の位置決めを早く正確に行うことができ、さらに、グラブバケット3の上部から掘削力が該グラブバケット3の自重のみでなく、浚渫船1全体から荷重を掛けることができるので、対象部分を薄層で浚渫、掘削することができる。
【0064】
そして、グラブバケット3の容量を浚渫する土量に合せて調整することで、高濃度の浚渫を行うことができる。また、グラブバケット3は密閉式であるから、汚染された土壌等を周囲に汚染物質を拡散せずに薄層で浚渫することができる。
【0065】
このように本実施例では、請求項に対応して、ブーム7,アーム8及びこのアーム8に連結したグラブバケット3を備えた浚渫手段たるバックフォー4を浚渫船1に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、グラブバケット3のバケット本体21の刃先22の位置を検出する刃先位置検出手段104と、アーム8とグラブバケット3を連結し、該アーム8に対してグラブバケット3を昇降するバケット昇降手段40と、このバケット昇降手段40を制御する制御手段たるグラブバケット開閉制御手段42とを備えるから、刃先位置検出手段104により刃先22の位置を確認して水底面10に対し刃先22を合わせ、バケット本体21を閉めながら、グラブバケット開閉制御手段42の制御により水底面10を薄層浚渫するように、グラブバケット3を昇降して浚渫を行うことができる。
【0066】
この場合、グラブバケット3は、アーム8に連結され、バケット昇降手段40によりアーム8に対してグラブバケット3が昇降するから、グラブバケット3上部からの掘削力を、グラブバケット3の自重のみでなく、アーム8側からも加わえることができ、浚渫面の強度に係らず、グラブバケット3の刃先22の軌跡を制御することができる。また、ブーム7とアーム8を用いるから、浚渫装置全体が小型化でき、高さも低くできるため、上部に障害物のある箇所などでも施工が可能となる。
【0067】
また、このように本実施例では、請求項に対応して、刃先位置検出手段104は、浚渫装置の基本位置たるアーム8先端の枢軸8Aを検出する基本位置検出手段たるアーム位置検出手段71と、グラブバケット3の開度検出手段41とを備えるから、アーム8の位置とバケットの開度とにより、刃先22の位置を検出することができる。
【0068】
また、このように本実施例では、請求項に対応して、請求項1〜3のいずれか1項のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、刃先22が略水平方向に移動するようにバケット本体21の開度に応じてグラブバケット3を昇降するから、水底の泥土を所定厚さの範囲で薄層浚渫することができる。
【0069】
また、このように本実施例では、請求項に対応して、請求項1〜3のいずれか1項のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、バケット本体22を開いた浚渫開始位置からグラブバケット3を上昇しながらバケット本体21を所定角度閉める開始行程と、この開始行程の高さ位置でバケット本体21を所定角度閉めバケット本体21の回転中心と刃先位置とが略垂直となる垂直位置を含む中間行程と、グラブバケット3を降下しながらバケット本体21を全閉位置まで閉める終了行程とを備えるから、開始行程では、浚渫開始位置からバケット本体21を閉めるために回動すると、刃先22の軌跡は降下するから、これに対応してグラブバケット3を上昇することにより、刃先22がほぼ水平方向に移動する。次に、前記垂直位置を含む中間行程では、グラブバケット3の高さ位置をそのままにし、前記垂直位置を挟んで刃先22は略水平方向に円弧を描いて移動する。この後の最終行程では、前記垂直位置より閉まる側にグラブバケット本体21を回動すると、刃先22の軌跡は上昇するから、これに対応してグラブバケット3を降下することにより、刃先がほぼ水平方向に移動する。
【0070】
また、実施例上の効果として、既知点に設置された固定GPSを有する基地局200と、浚渫船1に配置された移動GPSを有する移動局とで構成され、衛星からのGPS信号を固定GPSたるGPSアンテナ181と、移動GPSたる第1,第2のGPSアンテナ161,171とで受信することにより浚渫船1の測位値を得るデファレンシャルGPS装置と、刃先位置検出手段104とを備え、移動GPSの測位値を用いてアーム位置検出手段71の位置情報を算出するから、衛星からのGPS信号を固定GPS及び移動GPSで受信し、固定GPSで得られた測位値により補正された移動GPSの測位値が得られ、この測位値により、アーム71及び刃先22の位置情報を算出することができるため、従来のように固定点からの測定を行う必要がなくなると共に、天候条件等にも左右されず、刃先22の位置管理を容易に行うことができる。
【0071】
また、本実施例上の効果として、移動局は、移動GPSとして浚渫船1で所定の位置関係を有して配置された第1,第2のGPSたるGPSアンテナ161,171を備えると共に、固定GPSたるGPSアンテナ181と第1の移動GPSたるGPSアンテナ161との間で実行された初期化で得られた第1の測位結果と、固定GPSたるGPSアンテナ181との間で実行された初期化で得られた第2の測位結果とが、上記所定の位置関係を満足しているかどうかを判断する判断手段たる測位値監視部102を備えるものであるから、衛星からのGPS信号が固定GPSアンテナ181及び第1,第2の移動GPSアンテナ161,171のそれぞれの受信機180,160,170で受信され、固定GPSからの測位データは、デファレンシャルGPSの送信機182を介して移動GPSに送られる。移動局では、固定GPSと第1の移動GPSで受信したGPS信号を用いて所定の初期化処理を実行し、複数の候補点の中から真の解と見做し得る測定点を決定する初期化を行って、第1の測位結果とし、同様に固定GPSと第2の移動GPSとの間でも初期化が実行されて、第2の測位結果が得られる。初期値と見做された第1、第2の測位結果は、判断手段に導かれて第1,第2の移動GPSに対する所定の位置関係を満足しているかどうかが判断される。すなわち、第1,第2の測位結果は、第1,第2の移動GPSアンテナ161,171の位置を測位したものであるから、これらの測位結果と、前記所定の位置関係を照合することによって、第1,第2の測位結果が真の測位値であることがより高い確率で判断さすることができる。また、前記所定の位置関係は、第1,第2の移動GPSアンテナ161,171の3次元位置座標であるから、第1,第2の移動GPSアンテナ161,171の位置を3次元位置座標で記憶しておくと、両者間の距離はベクトル演算で容易に求めることができる。また、GPSに係わる実施例上の効果として、前記所定の位置関係として、第1の移動GPSアンテナ161を基準とした第2の移動GPSアンテナ171の情報を用いるか、第2の移動GPSアンテナ171を基準とした第1の移動GPSアンテナ161の情報を用いたので、両移動GPSの位置関係を規定する情報量、値を小さくでき、記憶容量、計算上都合がよい。また、前記所定の位置関係として、移動GPSアンテナ161,171間の距離情報を用いたから、直接距離データを記憶しておいてその計算を省くことができる。また、前記判断手段を、前記第1の測定結果と第2の測定結果から第1,第2移動GPSアンテナ161,171間の距離を算出する距離算出部たる演算部323と、この演算部323で得られた算出距離が前記所定の位置関係と対応するかどうかを判断する一致判断部325とで構成したので、第1,第2の移動GPSアンテナ161,171間の距離を求めて、この距離情報が所定の位置関係を満足するかどうかの判断のみで、より高い精度で初期化ができる。また、前記距離算出部が、複数回の計算結果を平均する平均手段たる平均化回路324により得られた値を算出距離とするようにして、複数回の計算距離を平均化して判断部325に提供するので、判断精度の信頼性の向上を図ることができる。また、請求項3のディファレンシャルGPS測位装置において、第1,第2の移動GPSの少なくとも一方の測位値を用いて移動体の所定箇所(P4)の位置情報を算出する算出手段たる演算部323を設けたので、浚渫船1の所定箇所を第1,第2の移動GPSアンテナ161,171との関係で設定しておくだけで、この関係つけられた移動GPSの測位情報から所定箇所の位置を容易に得ることができる。
【実施例2】
【0072】
図13〜図14は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、バケット昇降手段40を設けずに、アーム8の先端に、グラブバケット3の基部28を、枢軸32Aによりアタッチメント32に連結し、すなわち、アーム8の先端に対して、グラブバケット3の高さを一定にしており、前記アーム位置検出手段71によりアーム8の先端(枢軸8A)位置を検出し、このアーム8の先端を垂直に昇降するバケット昇降手段81を備え、このバケット昇降手段81は、前記バックフォー4から構成され、バックフォー4を制御するバックフォー制御手段82は、前記ブーム7とアーム8とブームシリンダとアームシリンダ9などを制御し、前記開度制御手段42と同様に、バケット本体21の開度に応じて、グラブバケット3を昇降・停止・降下させる。
【0073】
また、この例の開度検出手段41Aは、前記枢軸27回りに設けられ前記バケット本体21の開度を電気的に検出する開度検出センサ83を備え、この開度検出センサ83のデータによりバケット本体21の開度を検出するものである。
【0074】
このように本実施例では、請求項に対応して、ブーム7,アーム8及びこのアーム8に連結したグラブバケット3を備えた浚渫手段たるバックフォー4を浚渫船1に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、グラブバケット3のバケット本体21の刃先22の位置を検出する刃先位置検出手段104と、前記浚渫船に対して前記グラブバケットを昇降するバケット昇降手段81と、このバケット昇降手段81を制御する制御手段たるグラブバケット開閉制御手段42とを備えるから、刃先位置検出手段104により刃先22の位置を確認して水底面10に対し刃先22を合わせ、バケット本体21を閉めながら、グラブバケット開閉制御手段42の制御により水底面10を薄層浚渫するように、グラブバケット3を昇降して浚渫を行うことができ、また、請求項3及び4に対応して、実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【実施例3】
【0075】
図15は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記グラブバケット3の内部に撹拌装置91を設けており、前記両方のバケット本体21,21内に従動軸92,92をそれぞれ設け、この従動軸92は、円周方向にほぼ等間隔で、撹拌爪93,93,93,93が突設されている。また、バケット本体21の外側には図示しない気密ケースが設けられ、この気密ケース内に回転駆動手段たる油圧モータ(図示せず)が設けられ、この油圧モータの回転がスプロケットとチェーンにより前記従動軸に伝達される。
【0076】
このように本実施例においても、請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、このようにバケット本体21内に撹拌装置91を設けることにより、掘削した浚渫土や土砂を撹拌混合することができ、この後の圧送や処理などを容易に行うことができる。
【実施例4】
【0077】
図16は、本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例のグラブバケット3Aは、左右のバケット本体221,221を開閉可能に有し、これらバケット本体221,221は、先端に刃先222,222を有する円弧状の底板223,223を備えると共に、それらバケット本体221,221は、前後を側壁226,226によりそれぞれ塞いでいる。尚、左右のバケット本体221,221は、左右対称であり、閉成状態で、底板223,223の刃先222,222が突き合わされると共に、側壁226,226の合せ目226A,226Aが突き合わされて閉まる。前記バケット本体221の上部には、前後に枢軸227,227が設けられ、これら枢軸227,227により、バケット本体221がグラブバケット3Aの開閉伸縮杆251の先端251Aに枢支され、また、開閉伸縮杆251の基部251Bとバケット本体221との間を、アーム252が連結し、このアーム252の両端は枢軸253,253により回動自在に連結されている。また、前記基部251Bの上方に、前記枢軸8Aが設けられている。尚、基部251Bと枢軸8Aとの間に、前記バケット昇降手段40を設けるようにしてもよい。
【0078】
そして、開閉手段たる開閉伸縮杆251が伸張することにより、バケット本体221,221が開閉し、この例では、バケット本体221,221を開いた浚渫開始位置からバケット本体221,221を閉めると、刃先222,222が降下し、この降下量は開度に対応するから、この開度に対応して、グラブバケット3Aを上昇することにより、刃先222,222が略水平方向に移動することができる。
【0079】
このように本実施例では、各請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏し、また、請求項1〜3のいずれか1項のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、刃先222が略水平方向に移動するようにバケット本体221の開度に応じてグラブバケット3Aを昇降するから、水底の泥土を所定厚さの範囲で薄層浚渫することができる。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、刃先位置検出手段は、各種の手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1を示すグラブバケットの正面図である。
【図2】同上、グラブバケットの正面図であり、刃先の移動軌跡と浚渫後の水底面の概略を示す。
【図3】同上、グラブバケットの側面図である。
【図4】同上、開度が+48度のグラブバケットの動作説明図であり、図4(A)は正面図、図4(B)は上部の側面図である。
【図5】同上、開度が+15度のグラブバケットの動作説明図であり、図5(A)は正面図、図5(B)は上部の側面図である。
【図6】同上、開度が−15度のグラブバケットの動作説明図であり、図6(A)は正面図、図6(B)は上部の側面図である。
【図7】同上、開度が−30度のグラブバケットの動作説明図であり、図7(A)は正面図、図7(B)は上部の側面図である。
【図8】同上、浚渫装置全体の側面図である。
【図9】同上、制御手段関係のブロック図である。
【図10】同上、油圧回路図である。
【図11】同上、ディファレンシャルGPS装置のブロック図である
【図12】同上、測位値監視部の内部ブロック図である。
【図13】本発明の実施例2を示すグラブバケットの側面図である。
【図14】同上、制御手段関係のブロック図である。
【図15】本発明の実施例3を示すグラブバケットの正面図である。
【図16】本発明の実施例4を示すグラブバケットの正面図である。
【符号の説明】
【0082】
A 浚渫場所
1 浚渫船
3 グラブバケット
3A グラブバケット
4 バックフォー(浚渫手段)
7 ブーム
8 アーム
8A 枢軸(基準位置)
10 水底面
21 バケット本体
22 刃先
40 バケット昇降手段
41 開度検出手段
42 バケット昇降制御手段
71 アーム位置検出手段(基準位置検出手段)
72 GPS装置
81 バケット昇降手段
82 バックフォー制御手段
91 撹拌装置
104 刃先位置検出手段
K 開閉基準線
H 浚渫深さ
T 高さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム,アーム及びこのアームに連結したグラブバケットを備えた浚渫手段を浚渫船に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、前記グラブバケットのバケット本体の刃先位置を検出する刃先位置検出手段と、前記アームとグラブバケットを連結し、該アームに対して前記グラブバケットを昇降するバケット昇降手段と、このバケット昇降手段を制御する制御手段とを備えること特徴とするグラブバケット式浚渫装置。
【請求項2】
ブーム,アーム及びこのアームに連結したグラブバケットを備えた浚渫手段を浚渫船に搭載したグラブバケット式浚渫装置において、前記グラブバケットのバケット本体の刃先位置を検出する刃先位置検出手段と、前記浚渫船に対して前記グラブバケットを昇降するバケット昇降手段と、このバケット昇降手段を制御する制御手段とを備えること特徴とするグラブバケット式浚渫装置。
【請求項3】
前記刃先位置検出手段は、前記バケット本体の位置を検出するバケット位置検出手段と、前記グラブバケットの開度検出手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のグラブバケット式浚渫装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、前記刃先が略水平方向に移動するようにバケット本体の開度に応じてグラブバケットを昇降することを特徴とする浚渫方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラブバケット式浚渫装置を用いた浚渫方法であって、バケット本体を開いた浚渫開始位置から前記グラブバケットを上昇しながら前記バケット本体を所定角度閉める開始行程と、この開始行程の高さ位置で前記バケット本体を所定角度閉め、バケット本体の回転中心と刃先位置とが略垂直となる垂直位置を含む中間行程と、前記グラブバケットを降下しながら前記バケット本体を全閉位置まで閉める終了行程とを備えることを特徴とする浚渫方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−308904(P2007−308904A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137066(P2006−137066)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000155034)株式会社本間組 (15)
【Fターム(参考)】