説明

グルコースを感知するための医療デバイス

(i)例えば不必要なセンサが作動しないようにしてそれが他のセンサに悪影響を及ぼすのを防止するために、リザーバ内容物の放出または露出を中断するためのリザーバ内容物破壊機構、(ii)リザーバキャップ崩壊時にはセンサ膜およびセンサを保護しその後除去される、リザーバキャップの下のセンサ上方に位置する保護被覆材料層、(iii)センサを浅く幅の広いリザーバ構造体内に収容し、分子の拡散距離を最小化することによってセンサの露出度を高めるデバイス設計、(iv)埋め込み型センサユニットおよび別個の薬物送達ユニット、または(v)それらの組み合わせを有する、多数のリザーバを用いてセンサまたは他のリザーバ内容物を保護し、かつ選択的に露出する医療デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、サブデバイス、サブコンポーネント、および/または化学物質を選択的に放出もしくは露出する手段を有する、サブデバイス、サブコンポーネント、および/または診断試薬ならびに他の化学物質の格納・保護用のリザーバを有する小型化デバイスの分野に属し、詳細には、診断用感知に適した医療デバイスの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
引用により本明細書に組み込まれる、Santiniらに付与された特許文献1および特許文献2は、制御される放出機構および露出機構を用いて、リザーバから化学分子を放出するかまたはリザーバ内に配置されたセンサを露出するデバイスについて記載している。それらのデバイスは、微小規模の領域または体積内で、化学反応、分析、もしくは測定を持続的または特定の時点に開始および制御するのに用いることができる。それらのデバイスのいくつかでは、リザーバ開放機構に、リザーバを開放してリザーバ内容物が該デバイス外部の環境に放出または露出されるのを可能にするために選択的に崩壊される、リザーバを覆うリザーバキャップが用いられている。
【特許文献1】米国特許第5、797、898号明細書
【特許文献2】米国特許第6、551、838号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、いくつかの場合には、リザーバが開放された後に放出または露出を中断することが望ましいであろう。例えば、あるデバイスは、各々がグルコースオキシダーゼをベースとするセンサを収容する密集したリザーバのアレイ(例えば数十個または数百個の)を有することができる。第1のセンサを用いたある期間の運転後、センサは一般に、不正確さが次第に増していくことになる。そこで、第2のリザーバが開放され、第2のセンサが新たに露出され、使用される。しかしながら、第1のセンサは、それがもはや使用されなくなった後も、過酸化物を生成し続ける可能性がある。過酸化物が第2のセンサに拡散し、グルコース測定値を狂わせることもあり得る。さらに、グルコースオキシダーゼの触媒作用を利用した反応は、酸素を局所的に消費することにもなる。より一般的に述べれば、第1のセンサ(第1のリザーバ)内に収容された酵素の触媒作用により、第2のセンサ近傍の酸素などの反応物質または過酸化物などの生成物の濃度にムラが生じる可能性がある。従って、第1のセンサがもはや役に立たなくなった後は、第1のリザーバからの過酸化物の放出を停止することが望ましいであろう。同様に、他のリザーバ内容物の放出または露出を選択的に中断することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
埋め込み型センサのような改良された医療デバイスを提供する。
【0005】
一態様では、二次デバイスの制御露出用であり、二次デバイスがもはや正常に作動しなくなった場合などに、該二次デバイスを選択的に作動しないようにするかまたは作動不能にする手段を含むデバイスを提供する。一実施形態では、本デバイスは、基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバ(例えばマイクロリザーバ)と、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された動作可能な二次デバイスと、該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、該リザーバキャップを崩壊もしくは浸透性化して該二次デバイスを該環境要素に露出する手段と、該二次デバイスを選択的に作動不能にする手段とを備える。基板は、例えば共に結合された2つまたはそれ以上の部分を含んでいてもよく、基板を一体構造としてもよい。
【0006】
好ましい実施形態では、二次デバイスは、センサまたは感知要素を備える。一実施形態では、センサまたは感知要素は、グルコースセンサを備える。例えば、このセンサまたはセンサ要素は、グルコース酸化酵素を備えることができる。1つの特定の実施形態では、センサは、少なくとも1つの作用電極と、1つの対極と、該少なくとも1つの作用電極に備えられた酵素と、該酵素および該少なくとも1つの作用電極の少なくとも一部分を覆う半透膜とを備える。
【0007】
二次デバイスを選択的に作動不能にする様々な手段を提供する。一実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、電流が二次デバイスを流れると同時に作動状態の二次デバイスを作動不能にする熱焼灼用電極を備える。別の実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、抵抗ヒータを備える。1つの特定の実施形態では、センサまたはセンサ要素は、例えばグルコース酸化酵素などの酵素を備え、抵抗ヒータは、該酵素を不活性にするのに有効な熱を発生する。別の実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、反応してエネルギー、膨張ガス、または他の反応生成物を生成し、作動状態の二次デバイスを作動不能にする、1つまたはそれ以上の化学反応物質を備える。
【0008】
様々な実施形態において、リザーバキャップを崩壊または浸透性化する手段は、別のデバイスからの信号の受信した時に、もしくは特定の感知された状態の検出した時に、指定された時刻に崩壊または浸透性化を開始するようにプログラムされたマイクロプロセッサを備える。
【0009】
一実施形態では、本デバイスは、リザーバキャップの下のリザーバ内に配置された、二次デバイスを保護する生分解性中間体をさらに備える。別の実施形態では、本デバイスは、リザーバキャップの下に配置された構造材料の薄層と、リザーバ内の二次デバイスと該構造材料層の間に位置する真空または気体を充填した空間とをさらに含む。さらに別の実施形態では、本デバイスは、埋め込み型センサユニットの一部であり、該埋め込み型センサユニットは、放出用の少なくとも1つの治療薬を備える薬物送達ユニットをも含む医療デバイスの一部であり、該薬物送達ユニットは、埋め込み型センサユニットと連通しており、該センサの環境要素の感知に応答して治療薬を放出する。
【0010】
別の態様では、二次デバイスの制御露出用であり、リザーバ開放工程時に該二次デバイスを保護する手段を含むデバイスを提供する。一実施形態では、本デバイスは、基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバ(例えばマイクロリザーバ)と、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された二次デバイスと、該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、該リザーバキャップの下の該リザーバ内に配置された、該二次デバイスを保護する生分解性中間体と、該リザーバキャップを崩壊もしくは浸透性化し、該生分解性中間体を本デバイス外部からの流体に露出して該生分解性中間体を崩壊させ、該二次デバイスを該環境要素に露出する手段とを備える。一実施形態では、本デバイスは、リザーバキャップ下方の生分解性中間体と該リザーバキャップの間に配置された、誘電体などの構造材料の層をさらに含む。一実施形態では、生分解性中間体は、水溶性の固体、液体、またはゲルを含む。別の実施形態では、生分解性中間体は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはポリ(乳酸−co−グリコール酸)のコポリマーを含む。
【0011】
別の実施形態では、二次デバイスの制御露出用であり、基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバ(例えばマイクロリザーバ)と、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された二次デバイスと、該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、該リザーバ内の該リザーバキャップと該二次デバイスの間に配置された真空または気体を充填した空間と、該リザーバキャップを崩壊もしくは浸透性化して該二次デバイスを該環境要素に露出する手段とを備えるデバイスを提供する。
【0012】
別の態様では、(a)二次デバイスを有する基板であって、該二次デバイスが該基板内のリザーバ内に配置された基板を準備する工程と、(b)該リザーバ内の該二次デバイスの上に水溶性物質を堆積させる工程と、(c)該水溶性物質の上にリザーバキャップ材料を堆積させる工程と、(d)該水溶性物質を水性溶媒と接触させて該水溶性物質を溶解する工程と、(e)1つまたはそれ以上の開口部を通じて該リザーバから該水溶性物質および溶媒を除去し、堆積された水溶性物質の代わりに該リザーバ内に開放空間を形成する工程と、(f)該1つまたはそれ以上の開口部をふさぐ工程とを包含する、二次デバイスの制御露出用デバイスを製造する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、リザーバキャップ材料を堆積させる工程の前に、例えば誘電体などの構造材料の層を水溶性物質の上に堆積させる工程をさらに包含する。別の実施形態では、本方法は、構造材料層を貫いて1つまたはそれ以上の開口部をエッチングにより形成する工程をさらに包含する。一実施形態では、本方法は、構造材料層の上にリザーバキャップ材料を堆積させる工程を包含する。一実施形態では、開口部をふさぐ工程は、該開口部をリザーバキャップ材料で充填する工程を包含することができ、また、別の実施形態では、該開口部は、高分子材料で充填される。
【0013】
別の態様では、ある部位である特性を検出または測定する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載するリザーバデバイスのうちの1つを該部位に配置する工程と、次いでリザーバキャップを崩壊もしくは浸透性化して該リザーバのうちの1つの内部にあるセンサまたは感知要素を露出する工程と、次いで露出されたセンサまたはセンサ要素の内部の、もしくはそれに隣接する特性を検出あるいは測定する工程とを包含する。一実施形態では、本方法は、センサまたはセンサ要素を作動不能にする工程をさらに包含する。例えば、センサまたはセンサ要素は、該センサまたは感知要素の近位に配置されたヒューズもしくは抵抗ヒータに電流を流すことによって作動不能にすることができる。
【0014】
別の態様では、感知と薬物送達両用の医療機器を提供する。好ましい実施形態では、本機器は、(a)複数のリザーバと、該リザーバ内に備えられたセンサまたはセンサ要素と、該センサを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバを覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該センサを該環境要素に露出する手段とを備える少なくとも1つの埋め込み型センサユニットと、(b)該埋め込み型センサユニットと連通し、該センサの該環境要素の感知に応答して治療薬を放出する、患者へ送達するための少なくとも1つの治療薬を備える少なくとも1つの薬物送達ユニットとを備える。例えば、センサは、患者の血糖値を測定することができ、薬物送達ユニットは、インスリンを放出することができる。
【0015】
一実施形態では、薬物送達ユニットは、これらのユニットを接続する少なくとも1つの可撓性導体を介してセンサユニットと連通する。例えば、この可撓性導体は、これらのユニットを分離・相互接続するためのコネクタ手段を含むことができる。薬物送達ユニットと埋め込み型センサユニットとの間の連通は、例えば、デジタル信号またはアナログ信号の伝達を含むことができる。他の実施形態では、薬物送達ユニットと埋め込み型センサユニットとの間の連通は、光、電磁エネルギー、音波エネルギー、水力エネルギー、またはそれらの組み合わせの伝達を含むことができる。種々の実施形態において、薬物送達ユニットと埋め込み型センサユニットとの間の連通は、1本またはそれ以上のワイヤ、光ファイバ、流体を充填した管腔、またはそれらの組み合わせなどの導体を含む。別の実施形態では、薬物送達ユニットと埋め込み型センサユニットとの間の連通は、これら2つのユニットを物理的に接続する導体なしで行われる。例えば、本機器は、1つまたはそれ以上の信号符号器/変換器、エミッタ、受信機、復号器/変換器、もしくはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0016】
一実施形態では、薬物送達ユニットは、埋め込み可能であり、代替的実施形態では、薬物送達ユニットは、患者によって体外に装着されるように適合されている。例えば、薬物送達ユニットは、患者の体内にポンプで治療薬を注入するための埋め込み型ポンプまたは体外ポンプを含むことができる。一実施形態では、薬物送達ユニットは、基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバと、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に備えられた少なくとも1つの治療薬と、該治療薬を該リザーバの内部に隔離するために該リザーバを覆っているリザーバキャップと、該リザーバキャップのうちの1つもしくはそれ以上を崩壊または浸透性化して該リザーバのうちの1つまたはそれ以上から該治療薬を放出する手段とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
改良されたマルチリザーバデバイス、およびそれらの製造法ならびに使用法が開発された。本デバイスおよび方法は、例えばヒトまたは他の動物におけるグルコースの生体内感知に用いられるような埋め込み型センサを備えるのが好ましい。本デバイスおよび方法は、任意選択的に、センサと連通する薬物送達手段をさらに備えることができる。
【0018】
本明細書に説明するデバイスは、リザーバの内容物(センサまたは反応物質などの)を収容する複数のリザーバを含み、各リザーバは、選択的に除去可能なリザーバキャップ(すなわち障壁層)で覆われ、該リザーバキャップは、露出もしくは放出が所望される時まで、周囲環境の1つまたはそれ以上の構成要素からリザーバの内容物を保護する。これらの環境要素の例には、化学物質、細胞、蛋白質、水、空気または他の気体、体液およびそれらの成分、ならびに光もしくは熱などの特定の形態のエネルギーが含まれる。
【0019】
本改良物は、(1)例えば不必要なセンサが作動しないようにしてそれが他の(近隣の)センサに悪影響を及ぼすのを防止するために、リザーバ内容物の放出または露出を中断するためのリザーバ内容物破壊機構と、(2)リザーバキャップの崩壊時にはセンサ膜およびセンサを保護し、その後除去される、リザーバキャップの下のセンサ上方に位置する保護被覆材料層と、(3)センサを浅く幅の広いリザーバ構造体内に収容し、分子の拡散距離を最小化することによってセンサの露出度を高めるデバイス設計と、(4)埋め込み型センサユニットならびに別個の薬物送達ユニットを有するデバイスと、(5)それらの組み合わせとを含む。
【0020】
一態様では、二次デバイス、特にグルコースセンサなどのセンサを制御して露出するための埋め込み型医療デバイスを提供する。一実施形態では、本デバイスは、少なくとも1つの基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバと、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された動作可能な二次デバイスと、該リザーバの各々を覆って該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するリザーバキャップであって、該リザーバが該環境要素に対して不浸透性であるリザーバキャップと、該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該二次デバイスを該環境要素に露出する手段と、該二次デバイスを選択的に作動不能にする手段とを含む。別の実施形態では、本デバイスは、少なくとも1つの基板と、該基板内に設けられた複数のリザーバと、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された二次デバイスと、該リザーバの各々を覆って該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するリザーバキャップであって、該リザーバが該環境要素に対して不浸透性であるリザーバキャップと、リザーバキャップと、該リザーバキャップの下の該リザーバ内に配置された、該二次デバイスを保護する生分解性中間体と、該リザーバキャップを崩壊もしくは浸透性化して該生分解性中間体を露出し、該生分解性中間体を崩壊させて該二次デバイスを該環境要素に露出する手段とを含む。好ましい実施形態では、生分解性中間体は、水溶性の固体、液体またはゲル、親水性ポリマーマトリックス(例えばヒドロゲル)、もしくは水性流体と容易に混合する液体のように水混和性である。混合液体は、被検体(グルコースなどの)がそれを通って拡散し、その下のセンサへ到達することができるようにしなければならない。
【0021】
別の態様では、埋め込み型センサ部分(またはセンサユニット)および別個の薬物送達部分(または薬物ユニット)を含む医療デバイスを提供する。薬物送達部は、埋め込み型としても、体外に装着するように設計してもよい。センサ部分および薬物送達部分は、連携して作動して生体内で化学物質または生理学的状態を感知し、センサ部分からの信号に少なくとも部分的に基づいて、治療上指示された1つまたはそれ以上の薬物を送達する。
【0022】
本明細書において使用する用語「備える」、「備えている」、「含む」、および「含んでいる」は、逆のことを明示しない限り、開かれた、非限定的用語であることを意図されている。
【0023】
(例示的実施形態)
(作動停止機構を有するセンサデバイス)
一実施形態では、センサまたはリザーバ内容物は、熱焼灼機構もしくは電熱焼灼機構によって破壊される。米国特許出願公開第2004/0121486 A1号に記載されている電熱焼灼は、導電性構造体に電流を通し、それを「破断」するのに実効のある量だけそれを局所的に加熱する工程、例えば、一方または両方ともが該構造体を電流が流れる結果生じる該構造体内における熱の発生に起因する相変化(例えば融解または気化)による該構造体の破損および/または構造上の完全性の損失を引き起こす電気的に誘導された熱衝撃を含んでいる。どのような理論にも拘束されるものではないが、加熱は、融解(または気化)、熱衝撃、および/もしくは熱膨張率の不一致、過電流の通過と同時に従来の簡素な電気ヒューズが熱くなり、次いで崩壊する(例えば切れる)プロセスに類似したものによって構造体を劣化させるとみられている。この破断可能な構造体は、本明細書において「ヒューズ」と呼ばれることもある。
【0024】
一実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、電熱焼灼をベースとする破壊機構を備える。図1に示すように、1つの好ましい実施形態では、リザーバ内のグルコース酸化酵素をベースとするセンサの下にヒューズが備えられている。簡略化のために、図1には単一の開放されたリザーバを示しているが、本デバイス30は複数のリザーバを含んでおり、それらの各々が、該リザーバの起動に先立ってリザーバキャップでシールされることになる。デバイス30は、下基板部32aとリザーバ34が中に配置された上基板部32bとからなる基板を含む。センサは、リザーバ内に備えられ、作用電極42、対極44、およびグルコース酸化酵素46を含む。本デバイス30は、ヒューズ36およびヒューズトレース38aならびに38bを含むセンサ作動停止機構をさらに含む。絶縁誘電体層40が、作用電極42および対極44を、ヒューズ36ならびにヒューズトレース38から分離している。センサがもはや必要ではなくなると、ヒューズ36がとばされ、これによって該センサが破壊される。残余の活性グルコース酸化酵素は、残存する可能性がある。
【0025】
別の実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、従来の抵抗加熱に基づく熱破壊機構を備える。図2に示すように、別の好ましい実施形態では、リザーバ内のグルコース酸化酵素をベースとするセンサの下に、抵抗器が備えられている。図2も、簡略化のために単一の開放されたリザーバを示しているが、デバイス50は、複数のリザーバを含んでおり、それらの各々が、該リザーバの起動に先立ってリザーバキャップでシールされることになる。デバイス50は、下基板部32aとリザーバ34が中に配置された上基板部32bとからなる基板を含む。センサは、リザーバ内に備えられ、作用電極42、対極44、およびグルコース酸化酵素46を含む。本デバイス50は、抵抗器51および電流トレース52aならびに52bを含むセンサ作動停止機構をさらに含む。薄い絶縁誘電体層40が、作用電極42および対極44を、抵抗器51ならびに電流トレース52から分離している。センサがもはや必要ではなくなると、抵抗器51に電流が流され、グルコース酸化酵素が、該酵素を不活性にするのに有効な温度まで加熱される。これにより、残留過酸化物の形成およびその結果生じるセンサのクロストークの可能性が排除されることになる。必ずしもそうであるとは限らないが、一般に、「作動不能にする」工程は、センサまたはセンサ要素が露出され、それを用いて検出または測定が行われた後に用いられることになる。
【0026】
図1および図2にはリザーバ/センサを1つだけ示しているが、デバイス30またはデバイス50を備える医療デバイスは、それぞれ、数十個もしくは数百個のそのようなリザーバ/センサのアレイを備えるのが好ましい。さらに、図には示していないが、酵素46は、任意選択的にまた好ましくは、該酵素へのグルコースおよび/または他の分子の拡散を制御するための、当業界で既知の選択的に多孔質の膜で覆われている。例えば、引用により本明細書に組み込まれる、米国特許第4、759、828号を参照されたい。またさらに、図には示していないが、本医療デバイスは、リザーバキャップ、およびグルコースセンサがそれらを露出することが所望されるまで周囲環境から保護されるように、該リザーバキャップを選択的に崩壊または浸透性化してリザーバを開放し、その内部にあるセンサを露出する機構を含むのが好ましい。有益な能動的リザーバキャップ開放機構の例は、引用により本明細書に組み込まれる、米国特許第5、797、898号、第6、527、762号、第6、491、666号および第6、551、838号、ならびにUhlandらに付与された米国特許出願公開第2004/0121486号に記載されている。
【0027】
さらに別の実施形態では、二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、化学反応機構を含む。例えば、センサの下で化学反応を開始し、エネルギー、膨張ガス、または該センサを化学的に作動しないようにする反応生成物を生成することができるであろう。
【0028】
別の実施形態(図示せず)では、単一のリザーバが、1つより多いセンサを収容する。例えば、2つのセンサを並列に配置し、例えば相対的により大きいリザーバ内に備えることができる。これらは、同時に作動して例えば2つの信号を同時に提供してもよく、例えば第1のセンサが故障したときに第2のセンサを用いる場合の冗長センサとしてもよい。
【0029】
(保護被覆を有するセンサデバイス)
別の態様では、リザーバキャップの下方、リザーバ内のセンサ上方に保護被覆材料が備えられる。保護被覆材料は、例えば電熱焼灼機構によるリザーバキャップ崩壊中、センサ膜およびセンサを保護する。ひとたびリザーバキャップが開放されれば、保護被覆材料は身体によって除去されるかまたは他の方法で排除され、機能するセンサが露出され、作動する。例えば、保護被覆は、身体内に溶解し、これによりセンサが1つまたはそれ以上の環境要素(例えば被検体、蛋白質、抗体等)もしくは力(例えば圧力)に接触することができる。保護被覆の例には、生体適合性気体および生分解性の固体ならびに液体が含まれる。
【0030】
一実施形態では、保護被覆は、生分解性中間体である。本明細書において使用する用語「生分解性中間体」は、水混和性または生体内で患者の身体によって溶解され、化学的もしくは物理的に劣化されかつ/もしくは吸収される、固体、液体、またはゲル状物質を指す。好ましい実施形態では、生分解性中間体は、水溶性の固体、液体またはゲル、親水性ポリマーマトリックス(例えばヒドロゲル)、もしくは水性流体と容易に混合する液体のように水混和性である。混合液体は、被検体(グルコースなどの)が該混合液体を通って拡散し、その下に位置するセンサへ到達することを可能にしなければならない。適した水溶性物質の例には、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)などの生体適合性ポリマーが含まれる。代替的実施形態では、本物質は、水溶性ポリマーではなく、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)のコポリマーなどの生体内崩壊性ポリマーまたは生分解性ポリマーである。生分解性中間体は、溶解速度または崩壊速度を高めるために、多孔質形状とすることができる。
【0031】
別の実施形態では、保護被覆は、真空の空間または気体を充填した空間である。気体の例には、空気、酸素、窒素、ヘリウム、またはアルゴンが含まれる。電熱焼灼によって開くリザーバキャップの下に気層を含むのが特に望ましいかもしれない。なぜなら、そのような構造によって、開放機構の効率が向上するかもしれないからである。例えば、リザーバキャップが熱を逃がしやすい媒体(例えば、高い熱伝導率を有する固体または液体)と接触していれば、リザーバキャップを電気熱によって焼灼するのに、リザーバキャップが気体もしくは他の良好な断熱材と接触している場合に必要であるよりも多くの電流を必要とすることになるからである。従って、保護層として空気を用いることにより、リザーバキャップを破損点まで加熱するために、すなわち、電気熱によってそれを焼灼するかまたは「ヒューズをとばす」ために流さなければならない電流が少なくなる。
【0032】
1つの好ましい実施形態を図4に示す。デバイス99(例えば埋め込み型医療デバイスの一部分となろう)は、リザーバ103を有する基板100を含んでおり、該リザーバ103は、作用電極106、対極108、酵素110、およびセンサ膜112を含むセンサを収容している。リザーバは、電気トレース104aおよび104bに接続されたリザーバキャップ102で覆われている。水溶性物質114が、リザーバキャップとセンサとの間に、保護被覆として備えられている。任意選択的に、デバイス99は、基板内/上のセンサの下に構築されたセンサ作動停止機構(図示せず)をさらに含むことができる。
【0033】
別の好ましい実施形態を図5に示す。デバイス109(例えば埋め込み型医療デバイスの一部分となろう)は、リザーバ103を有する基板100を含んでおり、該リザーバ103は、作用電極106、対極108、酵素110、およびセンサ膜112を含むセンサを収容している。リザーバは、電気トレース104aおよび104bに接続されたリザーバキャップ102で覆われている。中空のキャビティ118が、センサ膜の上および薄い誘電体または他の構造層116の下に設けられている。任意選択的に、デバイス109は、基板内/上のセンサの下に構築されたセンサ作動停止機構(図示せず)をさらに含むことができる。誘電体および中空のキャビティは、リザーバキャップの崩壊中、センサ膜ならびにセンサを保護する。リザーバキャップが崩壊される(例えば電熱焼灼によって)際に、誘電体/構造層も破壊され、機能センサが露出し、作動する。
【0034】
デバイス109の中空キャビティは、いくつかの異なる製造法で作製することができるであろう。一実施形態では、センサ膜の上に、水溶性ポリマーなどの可溶性物質が堆積され、次いで、該可溶性物質の上に薄い誘電体層または他の構造層が堆積される。次に、水溶性物質の上の構造層を貫いて小径の穴またはスラットがエッチングにより形成され、次いで、該構造体が溶媒、例えば水の中に浸され、それによって可溶性物質が溶出し、その場所に中空のキャビティが残る。水溶性物質などの犠牲層を溶解してキャビティを形成する技法は、超微細加工の業界では周知である。(ミシガン大学のMEMS神経プローブの作用に関する研究者達は、シリコンを溶解して流路を形成する、この概念を実証するいくつかの論文を発表した。)任意選択的に、この中空のキャビティを気体または液体のような流体で充填してもよい。穴またはスラットは、リザーバキャップをそれらの上に堆積することができるか、もしくはリザーバキャップの堆積に先立って高分子材料を用いて該穴またはスラットをふさぐことができるように十分に小さい。
【0035】
(基板上にセンサ/リザーバを有するセンサデバイス)
図1〜図5には、比較的深いリザーバの内部(およびその底部近傍)に配置されたセンサ層を示している。しかしながら、いくつかの実施形態では、(1)センサの表面と基板の外面との間に距離がほとんどまたはまったくないように、リザーバが浅く、かつ/または(2)リザーバキャップとセンサ層との間に未充填の空間または何もない空間がないように、センサ層を基板上に配置するのがより好ましいであろう。これが、例えば分子がリザーバ内に拡散してセンサと接触するのに要する距離を減少させることによる、拡散による物質移動(例えばグルコースまたは他の被検体の)を増大させることになろう。
【0036】
一実施形態では、センサデバイスは、2つの基板を共に結合する代わりに、層別に構築される。従って、「リザーバ」は、電極、酵素、および高分子膜を含むセンサ材料を収容する、リザーバキャップの下に位置する空間である。そのような場合、「リザーバ」と表示される領域を、実際には、一般に基板と呼ばれるものの「上方」に空間的に配置することが可能であり、従って、センサの底部を、基板の上面上に製造することができる。そのような場合には、用語「リザーバ」は、センサがリザーバキャップの下の画定された空間に配置された実施形態を含み、用語「基板」は、下基板およびその上ならびにセンサの周りに構築された他の構造材料層を含む。そのような実施形態の例を図7〜図9に示す。
【0037】
図7に、基板202と、リザーバキャップ204内に画定されたリザーバと、構造材料207とを含むデバイス200を示す。リザーバは、作用電極206、対極208、半透性のセンサ膜210、センサの化学成分212、および空間214を備えるセンサを収容している。例えば、化学成分は、結合剤と混合されたグルコース酸化酵素とすることができる。空間は、何も入っていなくても、例えば気体または水溶性物質で充填してもよい。作用電極206および対極208は、ビア206b、208bならびに電気トレース206a、208aを通じて他のデバイスの電子機器に電気的に接続されている。作動時、入力導線205aおよび出力導線205bを通じてリザーバキャップ204に電流が流されて該リザーバキャップが電気熱によって焼灼され、それが崩壊し、その下にあるセンサが露出する。この実施形態では、リザーバキャップ204とセンサ膜210との間には隙間も空間もない。
【0038】
本デバイスの別の変形形態を図8に示す。デバイス250は、基板202と、リザーバキャップ204内に画定されたリザーバと、構造材料207とを含む。リザーバは、作用電極206、対極208、半透性のセンサ膜210、センサの化学成分212、および空間215を備えるセンサを収容している。作用電極206および対極208は、ビア206b、208bならびに電気トレース206a、208aを通じて他のデバイスの電子機器に電気的に接続されている。作動時、入力導線205aおよび出力導線205bを通じてリザーバキャップ204に電流が流されて該リザーバキャップが電気熱によって焼灼され、それが崩壊し、その下にあるセンサが露出する。この実施形態では、空間215は、リザーバキャップ204とセンサ膜210との間に広がっている。空間は、何も入っていなくても、例えば気体または水溶性物質で充填してもよい。
【0039】
本デバイスの別の変形形態を図9に示す。デバイス260は、基板202と、リザーバキャップ204と、構造材料層207に内蔵されたセンサとを含む。センサは、作用電極206と、対極208と、半透性のセンサ膜210と、センサの化学成分212とを備える。作用電極206および対極208は、ビア206b、208bならびに電気トレース206a、208aを通じて他のデバイスの電子機器に電気的に接続されている。作動時、入力導線205aおよび出力導線205bを通じてリザーバキャップ204に電流が流されて該リザーバキャップが電気熱によって焼灼され、それが崩壊し、その下にあるセンサが露出する。この実施形態では、センサとリザーバキャップとの間には、隙間も、空間も、生分解性/水溶性物質もない。
【0040】
(センサデバイスの製造法)
別の態様では、センサデバイスを製造する方法を提供する。本明細書に説明するデバイスは、種々の工程を用いて製造することができる。一実施形態では、各材料/各層は、当業界で既知の堆積技術およびエッチング技術を用いた一連の工程を用いて構築される。用いることができるかまたは本デバイスを製造するのに適合させることのできる当業界で既知の他の製造法および超微細製造法には、リソグラフィおよびエッチング、射出成形ならびに熱エンボス加工、電鋳法/電気メッキ、マイクロドリリング(例えば機械的ドリリング、レーザドリリング、超音波ドリリング)、マイクロミリング、放電加工(EDM)、光重合、表面微細加工、高アスペクト比加工法(例えばLIGA)、マイクロステレオリソグラフィ、シリコン微細加工、高速プロトタイピング、DEEMO(ドライエッチング、電気メッキ、成形)、およびLTCC(低温焼成セラミックス)などの構築技術またはラミネート加工技術が含まれる。例えば、米国特許第6、123、861号および米国特許第6、808、522号を参照されたい。
【0041】
図3に示す一実施形態では、センサ基板の下位部品62が製造され、リザーバ/開口基板の下位部品60が製造され、次いで、該2つの下位部品が共に結合され、リザーバの内部に密封されたセンサを有する完全なデバイス70が形成される。リザーバ/開口基板の下位部品60は、基板部分64と、リザーバ63と、リザーバキャップ68(起動回路は図示せず)を含む。センサ基板の下位部品62は、グルコースセンサ69(例えば、作用電極・対極およびグルコース酸化酵素)と、基板部分66上に配置されたセンサ作動停止用ヒューズ51を含む。結合工程には、グルコース酸化酵素を早期に損傷することになる高温の回避が必要となる。本デバイスを製造するのに役立つことのできる結合技術および密封技術は、引用により本明細書に組み込まれる、Uhlandらに付与された米国特許出願公開第2003/0010808号、および米国特許出願第10/894、265号に記載されている。当業界で既知の他の結合技術も用いることができるであろう。代替的実施形態では、センサおよび保護要素(すなわち、リザーバならびに開放機構)は、単一の基板上に製造することができ、結合工程を必要としない。
【0042】
(マルチユニットセンサおよび薬物送達デバイス)
別の態様では、埋め込み型センサ部分(またはセンサユニット)および別個の薬物送達部分(または薬物ユニット)を含む医療デバイスを提供する。薬物送達部は、埋め込み型としても、体外に装着するように設計してもよい。センサ部分および薬物送達部分は、連携して作動して生体内で化学物質または生理学的状態を感知し、センサ部分からの信号に少なくとも部分的に基づいて、治療上指示された1つまたはそれ以上の薬物を送達する。好ましい実施形態では、センサユニットは、上に説明し、図1〜図5および図7〜図9に示すリザーバをベースとするセンサを有するマルチリザーバデバイスを備える。
【0043】
本デバイスは、薬物送達部分とセンサ部分との間の連通用の機構を含む。種々の実施形態において、連通は、導体の有無にかかわらず、デジタル/アナログの光、電磁気(例えばRF)、音波/音響エネルギー、水力エネルギー、またはそれらの組み合わせの伝達により、組織および/または空気を通じて行われる。導体の例には、ワイヤ、光ファイバ、および音波エネルギーまたは水力エネルギーの伝導用の流体を充填した管腔が含まれる。例示的な実施形態では、連通機構は、信号符号器/変換器、エミッタ、受信機、および復号器/変換器のうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0044】
2つの部分が例えばワイヤなどの導体でつなぎ合わせられる実施形態では、該ワイヤは、2つの部分を必要に応じて分離および接続することを可能にする、プラグまたは他の選択的に接続を切ることのできるコネクタなどの接続用ハードウェアを備えるのが好ましい。そのような機能は、例えば埋め込んだ部分を患者の体内に残した状態で、他の部分に支障を来たすことなく1つの部分を交換する(例えば、電池を交換するかまたは薬物を再搭載する)ことが必要な場合に望ましいであろう。
【0045】
2部分デバイスの例を図6に示す。この図には、ワイヤ16および18で接続されるセンサユニット12ならびに薬物送達ユニット14を備えるデバイス10を示しており、ワイヤ16および18は、メスコネクタ20aならびにオスコネクタ20bで結合することができる。薬物送達ユニット14は、可撓性のカテーテル22を通じて薬物を放出するポンプである。センサユニット12は、各々がセンサを収容するリザーバ24のアレイを備える。センサユニットは、ワイヤ16および18を介して薬物送達ユニットへ命令を中継することができる制御装置を備える。
【0046】
一実施形態では、薬物ユニットは、長期間にわたって持続的または間欠的に薬物を注入することを目的とした、完全に埋め込み可能な薬物注入ポンプ(IIP)を備える。投与経路は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、クモ膜下腔、硬膜外、および脳室内を含むことができる。一般に、IIPは、鎖骨下部窩下方の皮下ポケットまたは腹壁に手術によって配置され、IIPから延びるカテーテルが、治療上望ましい位置に通される。別の実施形態では、薬物ユニットは、体外に装着される注入ポンプであり、患者の皮膚を貫通するカテーテルを備える。ポンプは、蠕動、フルオロカーボン推進剤、浸透圧、圧電ディスクベンダ、または浸透圧と振動ピストンの組み合わせを含むいくつかの駆動機構によって作動することができる。駆動機構の代表的な例には、Grayらに付与された米国特許第6、805、693号、Nezhadianらに付与された米国特許第6、554、800号、およびNasonらに付与された米国特許第6、375、638号に記載されているものが含まれる。
【0047】
一実施形態では、薬物送達部分は、能動放出機構を有するマルチリザーバデバイスを備える。一例では、薬物送達部分は、放出用の1つまたはそれ以上の薬物を収容するマイクロリザーバのアレイを含む1つまたはそれ以上のマイクロチップデバイスを備える。別の例では、薬物送達部分は、Cppetaらに付与された米国特許出願公開第2004/0106914 A1号に記載されている加速放出用のマイクロチューブデバイスまたは他のデバイスを備える。さらに別の例では、薬物送達部分は、マイクロリザーバのような多数のリザーバを上に配置した1つまたはそれ以上の領域もしくは表面領域を有する、円筒体または球体を有する。
【0048】
一実施形態では、糖尿病の管理に用いるための機器を提供する。本機器は、インスリン供給・送達ユニットと、グルコース監視(感知)ユニットと、両ユニットと連通する制御装置とを含む。一実施形態では、インスリン供給・送達ユニット(体外に装着してもよく、完全に埋め込み型としてもよい)は、(1)インスリンを含む再充填可能なリザーバと、(2)患者にインスリンを送達するためのポンプとを備える。一実施形態では、グルコース監視ユニットは、選択的に除去可能なリザーバキャップで覆われた、各々が個々のグルコースセンサを備える別個のリザーバのアレイを備える。通常マイクロプロセッサを備える制御装置は、インスリン送達ユニットまたはグルコース監視ユニットの一部としてもよく、グルコースセンサとインスリン送達ユニットの両方と動作可能に連通するように適合された別個のユニットとしてもよい。制御装置は、患者の血糖値を監視することができ、かつ監視した血糖値に応じて、多かれ少なかれ、インスリンを送達するようにインスリンユニットに命令することができる。制御装置は、受け入れ可能なアルゴリズムに基づいて、投与量を決定することになる。制御装置は、各グルコースセンサの精度および安定性をも監視することができる。作動中のセンサが適切に読み取りを行っていない場合(例えばそれが故障したために)、制御装置は、別のリザーバを開放して新たなセンサを露出するように監視ユニットに命令することができる。任意選択的に、制御装置は、新たなセンサの動作との潜在的干渉を回避するために、旧センサの破壊を命じることができる。
【0049】
別の実施形態では、癌の治療またはホルモン療法に用いるための医療デバイスを提供する。癌の治療またはホルモン療法においては、長期にわたる薬物送達が必要であり、生体内センサを用いて、送達すべき治療薬の適切な投与量を決定するのに役立つ生理化学物質または生理的状態を監視することができる。
【0050】
(本デバイスの追加説明)
好ましい実施形態では、本感知デバイスは、センサ、および任意選択的に放出用の薬物分子を収容する複数のリザーバを有する基板を含む。基板、リザーバ、リザーバキャップ、制御回路、および電源については、本明細書および米国特許第5、797、898号、第6、123、861号、第6、551、838号、第6、491、666号、および第6、527、762号、ならびに米国特許出願公開第2002/0138067号、第2002/0072784号、第2002/0151776号および第2002/0107470号に説明されている。一実施形態では、リザーバキャップ開放の制御は、引用により本明細書に組み込まれる、Uhlandらに付与された米国特許出願公開第2004/0121486号に記載されている電熱焼灼技術を含む。本デバイスは、マイクロチップデバイスであってもよく、リザーバ/センサ/リザーバキャップを別の種類のデバイスに一体化してもよい。
【0051】
本明細書では、用語「リザーバデバイス」は、場合によっては、リザーバデバイスのリザーバ内に配置された「二次デバイス」と区別して、基板およびリザーバを備えるデバイスを指すために用いられる。
【0052】
(基板およびリザーバ)
基板は、その内部またはその上にリザーバが形成される構造体(例えばデバイスの一部分)である。上に述べたように、リザーバは、その中にリザーバの内容物を格納する井戸、容器、または他の空間とすることができる。当業界で既知のMEMS法、マイクロ成形、および微細加工技術を用いて、種々の材料から基板/リザーバを製造することができる。例えば、米国特許第6、123、861号および米国特許出願公開第2002/0107470号を参照されたい。
【0053】
適した基板材料には、金属、セラミックス、半導体、および分解性高分子ならびに非分解性高分子が含まれる。基板材料の生体適合性は一般に、生体内デバイス用途に好ましい。基板、またはその各部分は、使用前に、生体適合性材料(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン様材料、不活性セラミックス、ダイヤモンド様材料、チタン等)でコーティングするか、該生体適合性材料内にカプセル封入するか、または他の方法で収容することができる。一例では、基板は、シリコンで形成される。一実施形態では、基板は、密封されている。すなわち、この基板は、送達されることになる分子および周囲の気体または流体(例えば、水、血液、電解質または他の溶液)に対して不浸透性である。別の実施形態では、基板は、所定の期間にわたって分解または溶解して生体適合性成分となる強固な材料で製造される。生体適合性高分子の例には、ポリ(乳酸)類、ポリ(グリコール酸)類、およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)類、ならびに分解性ポリ(アンヒドリド−コ−イミド)が含まれる。基板は、1つのみの材料からなっていてもよく、複合物またはマルチラミネート材、すなわち共に結合された同一もしくは異なる基板材料のいくつかの層からなっていてもよい。
【0054】
基板は、可撓性であっても剛性であってもよく、また種々の形状をとることができ、かつ一連の異なる形状の表面を有していてもよい。基板は、例えば、円板状、円筒状、または球状から選択される形状とすることができる。例えば、それは、リザーバ内容物の放出/露出用の第1の側および第2の反対側を有することができ、その場合、放出側は湾曲した組織表面または体腔内に適合するような形状を有し、裏面(放出側の末端)は付着面に適合するような形状を有する。
【0055】
基板の厚みは、本明細書に記載する起動システムを用いる特定のデバイスおよび用途に応じて変えることができる。例えば、デバイスの厚みは、約10μmから約数ミリメートル(例えば500μm)まで変えることができる。基板の全厚およびリザーバの容積は、基板材料のウエハまたは層を共に結合もしくは付着させることによって増大させることができる。デバイスの厚みは、各リザーバの容積に影響を及ぼす可能性があり、かつ/または1つの基板上に組み込むことができるリザーバの最大数に影響を及ぼす可能性がある。基板およびリザーバの大きさならびに数は、特定の用途に対して必要なリザーバ内容物の量および体積を収容できるように選択することができるが、製造上の限界またはデバイス全体の大きさの限界(例えば、患者の体内へ埋め込むための)などの他の制約も、重要な設計要素となる可能性がある。例えば、生体内用途用のデバイスは、トロカール手技または注入手技によるような低侵襲手技を用いて埋め込むのに十分に小さいことが望ましいであろう。
【0056】
基板は、少なくとも2個の、好ましくは数十個または数百個のリザーバを含む。基板は、例えば、各々が1つのセンサを収容する200個〜400個のリザーバを含むことができる。簡略化のために、本明細書では、1個または2個のみのリザーバを各図に示しているが、デバイス、特に埋め込み型医療デバイスははるかに多くのリザーバのアレイを含むのが好ましいことが分かる。
【0057】
1つの好ましい実施形態では、リザーバは、500μLに等しいかまたはそれより小さく(例えば、250μLより小さい、100μLより小さい、50μLより小さい、25μLより小さい、10μLより小さい等)かつ約1nLより大きい(例えば、5nLより大きい、10nLより大きい、約25nLより大きい、約50nLより大きい、約1μLより大きい等)容積を有する。さらに別の実施形態、特にセンサ露出用の領域が大きいことが望ましい実施形態では、リザーバの容積は、500μLより大きい。そのような実施形態では、引用により本明細書に組み込まれる米国特許出願第60/606、387号に記載されているように、単一のリザーバが2つまたはそれ以上のリザーバキャップを含むことができるのが好ましい。
【0058】
(センサおよび他のリザーバ内容物)
本デバイスは、露出が所望されるまで周囲の環境要素から保護する必要のある、センサ、センサ要素、または他のデバイスもしくはデバイス構成要素を含んでいる。これらのセンサ、センサ要素、または他のデバイスもしくはデバイス構成要素は、本明細書では「二次デバイス」と呼ばれることもある。リザーバは、代替的または付加的に、反応成分などの他のリザーバ内容物を含むことができる。
【0059】
好ましい実施形態では、二次デバイスは、センサまたは感知要素である。本明細書において使用する「感知要素」は、ある部位において化学種またはイオン種、エネルギー、もしくは1つまたはそれ以上の物理的特性(例えば、pH、圧力)の存在、欠如、あるいは変化を測定または分析するのに用いられる構成要素を含む。センサの種類には、バイオセンサ、化学センサ、物理センサ、または光学センサが含まれる。好ましいセンサは、生物活性、化学的活性、pH、温度、圧力、光学的特性、放射能、および導電率などの特性を測定する。他の測定可能な特性には、グルコースおよび酸素ならびに二酸化炭素などの血液ガスが含まれる。これらは、個別のセンサ(例えば「市販の」センサ)であっても、基板内または基板上に一体化されたセンサであってもよい。バイオセンサは一般に、酵素または抗体もしくは核酸などの認識成分を含む。被検体と認識成分との間の相互作用を電気信号に変換するために用いられる変換器は、性質上、例えば、電気化学式、光学式、圧電式、または熱式とすることができる。微細加工法を用いて構築されるバイオセンサの代表的な例は、Cozzetteらに付与された米国特許第5、200、051号、第5、466、575号、第5、837、446号、および第5、466、575号に記載されている。
【0060】
一実施形態では、センサは、差動酸素センサまたは2つ(もしくはそれ以上の)作用電極を有する当業界で既知の他のセンサを備える。例えば、グルコース酸化酵素または他の酵素を1つの作用電極上に固定化し、第2の作用電極上にはそれを行わず、検出レベル間の差を用いて被検体の濃度を判定することができる。例えば、引用により明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第6、498、043号を参照されたい。
【0061】
本デバイスはまた、化学物質とデバイスのどのような組み合わせも格納および露出することができる。例えば、各リザーバが、放出用のことなる化学物質または分子を収容することができる。一実施形態では、リザーバ内に収容される化学物質は、酵素、いくつかのグルコース感知デバイスに用いられるグルコース酸化酵素である。別の実施形態では、本デバイスのリザーバは、別の種類のグルコースセンサを収容する。
【0062】
完全に異なる機能を有する多数のデバイスを、本デバイスの各リザーバの内部または近傍に配置することができることも分かる。例えば、3種類の分子を検出および定量化する3つのセンサを同一のリザーバ内に配置することができ、それと同時に3種類の異なる分子を検出するための3つの完全に異なるセンサを近隣のリザーバ内に配置することができる。代替的に、単一のデバイスが、異なるリザーバ内に各々配置された3つの構成要素からなっていてもよい。この技術を用いれば、医療デバイスは、各化学物質、デバイス、またはデバイス構成要素をリザーバ外部の環境に選択的に露出し、各リザーバと関連する化学物質およびデバイスの数ならびに種類を変える機能を有する。
【0063】
本リザーバデバイス内に配置されたデバイスによって取得されたデータを受信および分析するためのいくつかの異なる選択肢がある。第1、本デバイスからの出力信号は、書き込み可能なコンピュータメモリチップに記録および格納することができる。第2、本デバイスからの出力信号は、分析および処理のためにマイクロプロセッサに向けることができる。第3、信号を本リザーバデバイスから離れた遠隔地に送信することができる。例えば、本リザーバデバイスは、本リザーバデバイスからの信号(例えばデータ)をコンピュータまたは他の遠隔受信機に送信するために、送信機(RF、超音波、磁気等)を備えることができる。本リザーバデバイスは、同一または類似の伝送機構を用いて制御することもできる。電力は、電池によって局所的に、または無線伝送によって遠隔で本リザーバデバイスに供給することができる。
【0064】
特に明示的に指定しない限り、本明細書において使用する用語「反応成分」は、試薬を含む反応、酵素、金属、およびゼオライトを含む触媒、蛋白質、核酸、多糖類、ポリマー、細胞、ならびに診断用薬を含む有機分子または無機分子に関与することができるあらゆる化学種を含む。リザーバ内に収容される反応成分は、どのような形態(例えば、固体、液体、ゲル、または気体)で存在してもよい。それは、純粋な形態でも、または他の物質との混合物としても、リザーバ内に存在することができる。例えば、化学物質は、非晶質と結晶質の混合粉、多孔質または非多孔質の一体構造の個体混合物、および固体相互貫入ネットワークなどの個体混合物、エマルジョン、コロイド懸濁液、およびスラリーを含む混合液体もしくは溶液、ならびにヒドロゲルなどのゲル混合物の形態をとることができる。リザーバキャップがリザーバから除去される際に、リザーバ内の化学物質は、リザーバ内に留まっていてもよく、リザーバから放出されてもよい。
【0065】
化学物質がリザーバ内に留まる一実施形態では、該化学物質は、不均一反応に用いられるゼオライトである。リザーバキャップが除去される際に、試薬がリザーバ内に拡散し、該リザーバ内に留まっているゼオライト触媒の表面または内部において反応する。
【0066】
リザーバ内の物質は、1つまたはそれ以上の凍結乾燥成分を含むことができる。そのような凍結乾燥成分は、凍結乾燥後にリザーバ内に搭載してもよく、代替的に、該物質を含む流体成分をリザーバ内に搭載し、次いで、それに続いて凍結乾燥してもよい。
【0067】
一実施形態では、本デバイスは、患者の身体内部の信号を検出および/または測定することのできる1つもしくはそれ以上のバイオセンサ(使用するために必要となるまでリザーバ内に封入することができる)を含む。本明細書において使用する用語「バイオセンサ」は、関心のある被検体の化学ポテンシャルを電気信号に変換する感知デバイス(例えば、イオン選択性電界効果トランジスタすなわちISFET)、および電気信号を直接的または間接的に測定する(例えば、機械的エネルギーもしくは熱エネルギーを電気信号に変換することによって)電極を含む。例えば、バイオセンサは、生体内の様々な位置において、固有の電気信号(EKG、EEG、または他の神経信号)、圧力、温度、pH、または組織構造上の機械的負荷を測定することができる。バイオセンサからの電気信号は、次いで、例えばマイクロプロセッサ/制御装置によって測定することができ、該マイクロプロセッサ/制御装置は、次いで、遠隔制御装置、別の局所制御装置、またはそれらの両方に情報を伝送することができる。例えば、本システムは、患者のバイタルサインまたは薬物濃度などの埋め込み環境に関する情報を中継もしくは記録するために用いることができる。
【0068】
好ましい実施形態では、リザーバ内容物には、センサまたは試薬と上方の空間の間に組み込まれた拘束層がさらに含まれる。拘束層は、被検体が試薬またはセンサに到達するのを可能にし、1つもしくはそれ以上の非被検体物質が該試薬またはセンサに接触するのを防止し、またセンサ/試薬を確保もしくは収容して、センサ/試薬を劣化させるおそれがあるかまたは患者の身体に対して有害となるおそれのある身体内への放散を防止する。いくつかの実施形態では、拘束層は、ポリマー、微孔構造、またはヒドロゲルである。
【0069】
(リザーバキャップ)
本明細書において使用する用語「リザーバキャップ」は、リザーバの内容物を該リザーバ外部の環境から分離するのに適した膜または他の構造体を含む。それは通常、リザーバ開口部全体にわたって自己支持性である。しかしながら、本デバイスは、リザーバキャップを機械的に支持するために製造された付加構造をさらに含むことができる。別の実施形態では、リザーバキャップは、薬物調合物またはバイオセンサなどの被覆/保護すべき物質によって支持されるか、または直接もしくは間接的にその上に位置している。
【0070】
別の実施形態では、引用により本明細書に組み込まれる米国特許出願第60/60、387号に記載されているように、多数のリザーバキャップを個々のリザーバの上に配置し、グリッド構造体によって支持することができる。そのような多数のキャップにより、単一の大きいキャップを用いて実現することができるよりも広いリザーバ領域を露出することが可能となる。例えば、大きいキャップの開放には、いくつかのより小さいキャップの開放に比べて、組織またはセンサを損傷することもあり得るより多くの電力またはより多くの熱の生成が必要となる可能性がある。より小さいキャップは、同時または順次に開放することができる。
【0071】
リザーバキャップを選択的に除去することまたはそれを浸透性にすることは、次いでリザーバの内容物を該リザーバを取り囲む環境(またはその選択された要素)に「露出」することとなる。好ましい実施形態では、リザーバキャップは、選択的に崩壊される。本明細書において使用する用語「崩壊する」は、下記機構のうちの特定の1つを指定しない限り、限定することなく、分解、溶解、破断、破砕または他の何らかの形の機械的破壊、および化学反応(例えば電気化学的分解)もしくは温度変化に応答した相変化(例えば融解)含むために広く用いる。1つの特定の実施形態では、「崩壊」は、米国特許第5、797、898号に記載されているような電気化学的活性化技術による。別の特定の実施形態では、リザーバキャップの「崩壊」または「破断」は、米国特許第6、527、762号もしくは米国特許第6、491、666号に記載されている機構によって行われる。さらに別の特定の実施形態では、「崩壊」は、Uhlandらに付与された米国特許出願公開第2004/0121486号に記載されている電熱焼灼技術による。これらの特許および出願は、引用により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0072】
能動放出デバイスでは、リザーバキャップは通常、加えられた刺激、例えば電界または電流、磁場、pHの変化に応答するか、もしくは熱的手段、化学的手段、電気化学的手段あるいは機械的手段によって崩壊または浸透性化することのできる任意の物質を含む。
【0073】
一実施形態では、リザーバキャップは金属薄膜であり、周囲環境(例えば、体液または他の塩化物含有溶液)に対して不浸透性である。一変形形態では、金属のリザーバキャップに特定の電位が印加され、次いで、該リザーバキャップが電気化学反応によって酸化・崩壊され、該リザーバ内に配置されたセンサが露出される。適したリザーバキャップ材料には、金、銀、銅、および亜鉛が含まれる。
【0074】
別の変形形態では、リザーバキャップは、該リザーバキャップを融解させ、リザーバから排除してリザーバを開放するために、加熱(例えば抵抗加熱によって)される。この後者の変形形態は、例えば、金属材料または非金属、例えばポリマーで形成されたリザーバキャップと共に用いることができるであろう。さらに別の変形形態では、あらかじめ選択された温度への加熱と同時に、感知機能に含まれる分子に対してリザーバキャップが浸透性化されるように、該リザーバキャップは、浸透性が温度依存性の変化を受けるポリマーまたは他の物質で形成される。
【0075】
さらに別の実施形態では、Uhlandらに付与された米国特許出願公開第2004/0121486号に記載されているように、リザーバキャップは、金属膜などの導電性材料で形成されており、該導電性材料に電流を流し、それを電気熱によって焼灼することができる。適したリザーバキャップ材料の代表的な例には、当業界で既知の、金、銅、アルミニウム、銀、プラチナ、チタン、パラジウム、種々の合金(例えば、Au/Si、Au/Ge、Pt−Ir、Ni−Ti、Pt−Si、SS304、SS 316)、および導電性を増大させるために不純物をドープしたシリコンが含まれる。一実施形態では、リザーバキャップは、プラチナ/チタン/プラチナの多層/積層構造などの多層構造の形態をとっている。リザーバキャップは、該リザーバキャップを通る電流の流れを促進するために、動作可能に(例えば電気によって)入力導線および出力導線に接続されている。有効量の電流が導線およびリザーバキャップを通じて印加されると、抵抗加熱によってリザーバキャップの温度が局所的に上昇し、リザーバキャップ内に生成された熱が、電気熱によるリザーバキャップの焼灼(破断または崩壊)を生じさせるのに十分なだけ温度を上昇させる。
【0076】
受動開放デバイスでは、リザーバキャップは、時間の経過と共に分解、溶解、または崩壊するかもしくは分解、溶解、または崩壊しないが分子もしくはエネルギーに対して浸透性であるかまたは浸透性となる1つの材料あるいは複数の材料の混合物で形成される。リザーバキャップ材料の代表的な例には、高分子材料、多孔質形態の金属、半導体、およびセラミックスなどの非高分子材料が含まれる。受動半導体リザーバキャップ材料には、ナノ多孔質またはマイクロ多孔質のシリコン膜が含まれる。
【0077】
受動的および/または能動的リザーバ開放機構の任意の組み合わせを用いることができる。
【0078】
(センサの露出制御)
本デバイスは、リザーバを開放しかつ/またはセンサを露出する時を制御するための制御手段を備えるのが好ましい。制御手段の特定の機能は、本明細書に説明するリザーバキャップ作動の機構によって決定される。
【0079】
例えば、制御手段は、起動(すなわち開放)のために電流を電源から選択されたリザーバキャップへ制御して送達するために必要な、ハードウェア、電気部品、およびソフトウェアを含むことができる。制御手段は、入力源、マイクロプロセッサ、タイマ、デマルチプレクサ(またはマルチプレクサ)、および電源を含むことができる。本明細書において使用する用語「デマルチプレクサ」は、マルチプレクサも指す。電源は、エネルギーを提供して選択されたリザーバを作動させる。例えば、リザーバ開放システムの動作は、コンピュータ上に直接置かれたマイクロプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサは、埋め込み型デバイスまたは挿入型デバイスの内部にある)によって制御することができる。マイクロプロセッサは、あらかじめ選択された時に、または別のデバイスからの信号受信(例えば遠隔制御あるいは無線法による)もしくはバイオセンサなどのセンサを用いた特定の状態の検出を含む1つまたはそれ以上の信号もしくは測定パラメータに応答して、リザーバキャップの崩壊または浸透性化を開始するようにプログラムすることができる。別の実施形態では、それが一般にマイクロプロセッサよりも簡素で小さくかつ/または使用電力が少ないので、単純状態マシンが用いられる。本デバイスは、例えばSheppardらに付与されたU.S.20020072784A1に記載されている、無線手段を用いて起動または電力を供給することもできる。一実施形態では、起動手段は、1つまたはそれ以上のキャパシタを備える。例えば、キャパシタは、熱焼灼リザーバ開放回路に用いることができるであろう。別の実施形態では、起動手段は、電力および変調された超音波エネルギーの使用を含むデータ伝送手段を備える。例えば、Poratらに付与された米国特許第6、432、050号を参照されたい。
【0080】
一実施形態では、本デバイスは、その中に配列されたリザーバの二次元アレイを有する基板と、該リザーバの各々を覆う陽極リザーバキャップと、陽極近傍の基板上に配置された陰極と、リザーバキャップの崩壊を能動的に制御する手段とを含む。本手段は、電源と、電位エネルギーを制御・送達するための回路を含む。すなわち、制御回路は、選択された陽極と陰極との間の反応を駆動するための定電圧/定電流機能を有することができる。電極間への電位の印加と同時に、外部回路を通じて陽極から陰極へ電子が流れ、陽極材料(リザーバキャップ)を酸化させて周囲の流体中に溶解させ、例えば生体内で、センサを周囲の流体に露出する。マイクロプロセッサは、EPROM、遠隔制御、またはバイオセンサによる指示のとおり、デマルチプレクサを通じて、電力を特定の電極対に向ける。
【0081】
別の実施形態では、制御手段は、リザーバキャップの電熱焼灼を制御する。例えば、本デバイスは、導電性材料で形成されたリザーバキャップと、該リザーバキャップに接続された入力導線と、該リザーバに接続された出力導線と、入力導線および出力導線を介して該リザーバキャップに有効量の電流を流し、該リザーバキャップを局所的に加熱し破断させてセンサを露出する制御手段とを含む。一実施形態では、リザーバキャップおよび導電性導線は、同一の材料で形成されており、リザーバキャップが基板よりも熱伝導性の低い媒体内に支持されているために、印加された電流を受けて、リザーバキャップの温度が局所的に上昇する。代替的形態では、リザーバキャップおよび導電性導線は、同一の材料で形成されており、該リザーバキャップは、電流の流れの方向により小さい断面積を有し、該リザーバキャップを流れる電流密度の上昇により、局所加熱が増大する。代替的に、リザーバキャップは、導線を形成する材料と異なる材料で形成することができ、この場合、該リザーバキャップを形成する材料は、異なる電気抵抗率、熱拡散率、熱伝導率、および/または導線を形成する材料よりも低い融解温度を有する。これらの実施形態の種々の組み合わせを用いることができる。
【0082】
電熱焼灼開放機構を用いる一実施形態では、リザーバは、基板内で正方行列に配列されており(例えば、4個またはそれ以上のリザーバが二次元アレイに配列されて)、リザーバキャップの入力側は、横列によって電気的に並列接続され、リザーバキャップの出力側は縦列によって電気的に並列接続されている。導体材料では、入力導線、出力導線、およびリザーバキャップも形成することができる。これもやはり相互接続された横列および縦列を用いる代替的設計では、リザーバキャップは、導線と異なる材料(または導体材料の横列もしくは縦列)で形成される。短絡を防止するために、絶縁材料が縦列と横列の交差部に備えられる。絶縁材料は、縦列の上面と横列の下面との間に備えることができる。この実施形態は、入力/出力(I/O)要件が有意に縮小されたマトリックスアドレス指定アレイを提供する。導電性リザーバキャップは、アレイの横列と縦列の間に電気的接続を形成する。指定された横列および縦列に電圧/電流を印加して該横列および縦列の交差部にあるリザーバキャップを活性化すると、接続によって、電流が他のリザーバキャップに流れる。一実施形態では、早期破断を生じさせる可能性もあり得る、作動状態のリザーバキャップが比較的大きい意図されない電流に触れるという事態を防止するために、横列および縦列をさらにアレイに追加することができ、また交差部の各々に導電性要素を追加することができる。これらの追加導体は、リザーバキャップと同一の材料で製造することができるが、リザーバの上方には配置されないことになろう。別の手法では、リザーバキャップは、入力導線と出力導線の間に開回路を生成する(ほぼ同じ電気抵抗を保持するために)することなく破断するように設計されている。アレイ内の非アドレス指定リザーバキャップに電流が流れることが望ましくない実施形態では、ダイオードなどの整流要素を各リザーバキャップと直列接続で追加し、意図されない電流を排除することができる。このダイオードは、半導体接合ダイオードでも、ショットキー障壁ダイオードでもよい。シリコン基板を制御放出デバイスに用いる場合、基板と整流要素は、一体に形成することができる。拡散またはイオン注入のように、半導体内に不純物を導入してその導電性および多数電荷担体を変更し、金属・半導体接触を生成する工程は周知である。これらは、リザーバデバイス製造工程に統合することができるであろう。代替的に、トランジスタを各リザーバキャップと統合することにより、リザーバキャップの特異的活性化を達成することができる。一実施形態では、トランジスタによって、そのようなマトリックス手法が達成される。トランジスタがマイクロチップ基板上に統合される場合、多重化スイッチなどの他の能動電子部品も、リザーバデバイス内に統合することができる。
【0083】
マイクロ電子デバイスパッケージは一般に、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどの絶縁体もしくは誘電体で製造される。低コストのパッケージは、プラスチックまたは強化エポキシ(プリント基板を製造する際に用いられるものと同様の)でも製造することができる。それらの目的は、本デバイスのすべての構成要素を直近させて配置できるようにし、電源および互いに対する各構成要素の相互接続を促進し、それと同時に電子機器を環境から保護することである。埋め込み型リザーバデバイスパッケージは一般に、例えば基本的にリザーバキャップのみを露出するチタンケースに格納して密封されている。
【0084】
制御手段は、マイクロプロセッサと、タイマと、デマルチプレクサと、入力源(例えば、記憶源、信号受信機、またはバイオセンサ)と、電源とを含む。タイマおよびデマルチプレクサ回路は、電極製造時にマイクロチップの表面上に直接設計して組み込んでもよく、別個のマイクロチップに組み込んでもよい。マイクロプロセッサの選択基準は、小型、低所要電力、および記憶源、信号受信機、またはバイオセンサからの出力をデマルチプレクサを通してマイクロチップデバイス上の特定のリザーバへ電力を導くためのアドレスに変換する機能である。記憶源、信号受信機、またはバイオセンサなどのマイクロプロセッサへの入力源の選択は、マイクロチップデバイスの特定の用途、およびデバイスの操作を遠隔手段によって制御するのか、それともその環境からのフィードバック(すなわちバイオフィードバック)によって制御するのかによって決定される。
【0085】
マイクロプロセッサは、消去およびプログラム可能読取り専用記憶装置(EPROM)、タイマ、デマルチプレクサ、および電池または生物燃料電池のような電源などの記憶源と併せて用いられる。リザーバを開放すべき時およびリザーバの位置またはアドレスを含むプログラムされたイベントのシーケンスは、ユーザによってEPROM内に格納される。タイマで示された露出または放出の時刻に達すると、マイクロプロセッサは、特定のリザーバのアドレス(位置)に対応する信号をデマルチプレクサに送信する。デマルチプレクサは、電位または電流などの入力を、マイクロプロセッサによってアドレス指定されたリザーバへルーティングする。
【0086】
(本デバイスの使途)
本デバイスは、数多くの生体外用途および生体内用途を有する。本デバイスは、センサまたは他の二次デバイスを選択的に露出するか、または別個の量の薬物もしくは他の化学分子を放出することが望まれる様々な用途に用いることができる。用途には、例えば、ある種類の分子の存在の有無を検出するため、センサに露出された分子の生物活性または生物反応性を試験するため、pH、温度、別の分子との反応性、光学的性質(例えば、屈折率、色、あるいは蛍光性)、放射能、圧力、もしくは導電性などのパラメータを測定するための、制御されたまたは選択的な必要時感知が含まれる。一実施形態では、センサには、リザーバ内またはリザーバ近傍での光学的性質の変化、例えばリザーバ内もしくはリザーバに隣接する環境中での反応により生じるかもしれない変化を感知するために用いることのできる光ファイバが用いられている。関連する実施形態では、リザーバは、放射性物質の(光学的)検出を支援するためのシンチレーション流体を収容している。
【0087】
本デバイスは、触媒の環境への長期露出の結果、触媒表面の汚染または被覆物によるかもしくは触媒の化学分解によって触媒の性能が低下する用途に特に有益である。本デバイスは、各量を必要時に単独で使用可能な状態にして、多くの個別の量の触媒を1つの小さいデバイス内に収容することを可能にする。例えば、第1のリザーバの触媒が汚染した場合、第2のリザーバを開放して新たな触媒を露出し、任意の数のリザーバに対してこれを反復することができる。さらに、単一のデバイスの異なるリザーバ内に異なる触媒を準備し、それにより単一のデバイスで触媒することのできる反応の範囲を拡充することができる。
【0088】
好ましい実施形態では、本デバイスは、グルコース監視およびインスリン制御に用いるセンサを含んでいる。センサからの情報は、同一のデバイスまたは別個のインスリン送達デバイス(例えば、従来の埋め込み型もしくは体外装着型のインスリンポンプ)からのインスリン放出を能動的に制御するために用いることができる。
【0089】
一実施形態では、埋め込み型医療デバイスは、選択的露出のために複数対のセンサ、基準センサおよび稼働センサが格納されたリザーバを有する。基準センサは、稼働センサの動作をチェックするために用いられる。電源で作動するマイクロプロセッサは、例えば電圧計または他の器具類を用いて、稼働センサの動作をリザーバ内の基準センサと持続的に比較するようにプログラムすることができる。第1のリザーバ内の第1のセンサが適切に動作していない場合、マイクロプロセッサに信号を返信することができ、次いで、該マイクロプロセッサが、第2のリザーバを作動させて新たな対の電極を露出することができる。任意選択的に、マイクロプロセッサは、送信機に信号を送信し、遠隔地のコンピュータに作動能力の低下したセンサが1つ残存していることを通知するか、または他の運転上の情報を信号で伝えることができる。
【0090】
別の実施形態では、患者の現在の状態が本デバイスで測定され、統計上および医学上の関連基準による基準状態と比較される。後続の感知デバイスおよび/または別個の薬物送達デバイスによる感知ならびに/もしくは薬物送達のプログラムは、該比較の結果によって決定される。
【0091】
本デバイスは、特に分析化学および医学的診断の分野において、二次デバイスまたはデバイス構成要素、反応成分、もしくは両方を周囲環境あるいはその構成要素に生体外で選択的に露出するために用いることもできる。いくつかの生体外用途に対しては、本デバイスは、正確に制御された時間および速度で、少量の制御された量の化学的試薬または他の分子を、溶液もしくは混合物内に放出することができる。他においては、センサなどの二次デバイスは、それらが必要となるまで周囲環境から保護される。例えば、触媒(すなわち酵素)は、該酵素を露出して関心のある反応を触媒することが所望されるまで、リザーバ内で周囲環境から保護することができる。
【0092】
本明細書に引用した刊行物および目的の資料は、引用により明確に組み込まれる。本明細書に説明した方法およびデバイスの改造および変更は、前述の詳細な説明から当業者には明らかとなろう。そのような改造および変更は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、熱機構または電熱機構によってリザーバ内容物を破壊もしくは作動しないようにするためのリザーバデバイスの一実施形態の断面図である。
【図2】図2は、熱機構または電熱機構によってリザーバ内容物を破壊もしくは作動しないようにするためのリザーバデバイスの別の実施形態の断面図である。
【図3】図3は、マルチリザーバセンサデバイスを組み立てる方法の一実施形態の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は、センサ膜とリザーバキャップとの間に配置された水溶性物質を有するマルチリザーバセンサデバイスの一実施形態の断面図である。
【図5】図5は、センサ膜とリザーバキャップとの間に中空のキャビティを有するマルチリザーバセンサデバイスの別の実施形態の断面図である。
【図6】図6は、埋め込み型センサ部分(またはセンサユニット)および別個の薬物送達部分(または薬物ユニット)を有する医療デバイスの一実施形態の斜視図である。
【図7】図7は、崩壊可能なリザーバキャップで覆われたリザーバ内に配置されたセンサ電極を有するセンサデバイスの一実施形態の断面図であり、作用電極および対極が、電気的接続のために基板内のビアを通って延びている。
【図8】図8は、崩壊可能なリザーバキャップで覆われたリザーバ内に配置されたセンサ電極を有するセンサデバイスの別の実施形態の断面図であり、作用電極および対極が、電気的接続のために基板内のビアを通って延びている。
【図9】図9は、崩壊可能なリザーバキャップで覆われたリザーバ内に配置されたセンサ電極を有するセンサデバイスのさらに別の実施形態の断面図であり、作用電極および対極が、電気的接続のために基板内のビアを通って延びている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次デバイスの制御露出用デバイスであって、
基板と、
該基板内に設けられた複数のリザーバと、
該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された動作可能な二次デバイスと、
該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、
該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該二次デバイスを該環境要素に露出する手段と、
該二次デバイスを選択的に作動不能にする手段と、
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記崩壊または浸透性化する手段は、別のデバイスからの信号の受信と同時に、または特定の感知された状態の検出と同時に、指定された時に該崩壊または浸透性化を開始するようにプログラムされたマイクロプロセッサを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、電流の通過と同時に該作動状態の二次デバイスを作動不能にする熱焼灼用電極を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、抵抗ヒータを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサまたはセンサ要素は、酵素を備え、前記抵抗ヒータは、該酵素を不活性化するのに有効な熱を発生する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記酵素は、グルコース酸化酵素を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記二次デバイスを選択的に作動不能にする手段は、反応してエネルギー、膨張ガス、または他の反応生成物を生成し、該作動状態の二次デバイスを作動不能にする、1つまたはそれ以上の化学反応物質を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記リザーバキャップの下の前記リザーバ内に配置され、前記二次デバイスを保護している生分解性中間体をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記リザーバキャップの下に位置する構造材料の薄層と、前記リザーバ内の前記二次デバイスと該構造材料層の間に位置する真空または気体を充填した空間とをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
二次デバイスの制御露出用デバイスであって、
基板と、
該基板内に設けられた複数のリザーバと、
該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された二次デバイスと、
該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、
該リザーバキャップの下の該リザーバ内に配置されて該二次デバイスを保護している生分解性中間体と、
該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該生分解性中間体を該デバイス外部からの流体に露出し、該生分解性中間体を崩壊させて該二次デバイスを該環境要素に露出する手段と、
を備えるデバイス。
【請求項11】
前記生分解性中間体は、水溶性の固体、液体、またはゲルを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記生分解性中間体は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはポリ(乳酸−co−グリコール酸)のコポリマーを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記リザーバキャップの下に位置し、前記生分解性中間体と該リザーバキャップの間に配置された構造材料の層をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記構造材料は、誘電体を含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記二次デバイスを選択的に作動不能にする手段をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
二次デバイスの制御露出用デバイスであって、
基板と、
該基板内に設けられた複数のリザーバと、
該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に配置された二次デバイスと、
該二次デバイスを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバの各々を覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、
該リザーバ内の該リザーバキャップと該二次デバイスの間に配置された、真空または気体を充填した空間と、
該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該二次デバイスを該環境要素に露出する手段と、
を備えるデバイス。
【請求項17】
前記空間は、不活性気体で充填されている、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記空間は、空気、窒素、ヘリウム、およびアルゴンからなる群から選択される気体で充填されている、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記二次デバイスを選択的に作動不能にする手段をさらに備える、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
二次デバイスの制御露出用デバイスを製造する方法であって、
二次デバイスを有する基板であって、該二次デバイスが該基板内のリザーバ内に配置されている基板を準備する工程と、
該リザーバ内の該二次デバイスの上に水溶性物質を堆積させる工程と、
該水溶性物質の上にリザーバキャップ材料を堆積させる工程と、
該水溶性物質を水性溶媒と接触させ、該水溶性物質を溶解する工程と、
1つまたはそれ以上の開口部を通じて該水溶性物質および溶媒を該リザーバから除去し、該堆積された水溶性物質の代わりに該リザーバ内に開放空間を形成する工程と、
該1つまたはそれ以上の開口部をふさぐ工程と、
を包含する方法。
【請求項21】
前記リザーバキャップ材料を堆積する工程の前に、前記水溶性物質の上に構造材料の層を堆積する工程をさらに包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記構造材料層を貫いて、1つまたはそれ以上の開口部をエッチングにより形成する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記構造材料層の上にリザーバキャップ材料を堆積する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記構造材料は、誘電体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記開口部をふさぐ工程は、該開口部を前記リザーバキャップ材料で充填する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記開口部をふさぐ工程は、該開口部を高分子材料で充填する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
医療機器であって、
少なくとも1つの埋め込み型センサユニットであって、
複数のリザーバと、
該リザーバ内に備えられたセンサまたはセンサ要素と、
該センサを該リザーバ外部の環境要素から隔離するために該リザーバを覆っている、該環境要素に対して不浸透性のリザーバキャップと、
該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該センサを該環境要素に露出する手段、
とを備える、少なくとも1つの埋め込み型センサユニットと、
患者への送達用の少なくとも1つの治療薬を備える少なくとも1つの薬物送達ユニットとを備え、
該薬物送達ユニットは、該埋め込み型センサユニットと連通しており、該センサの該環境要素の感知に応答して該治療薬を放出する、
医療機器。
【請求項28】
前記薬物送達ユニットは、前記複数のユニットを接続する少なくとも1つの可撓性導体を介して前記センサユニットと連通する、請求項27に記載の機器。
【請求項29】
前記可撓性導体は、前記複数のユニットを分離および相互接続するコネクタ手段を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項30】
前記薬物送達ユニットは、埋め込み可能である、請求項27に記載の機器。
【請求項31】
前記薬物送達ユニットは、患者によって体外に装着されるように適合されている、請求項27に記載の機器。
【請求項32】
前記薬物送達ユニットは、前記治療薬を前記患者にポンプで注入するための埋め込み型ポンプまたは体外ポンプを備える、請求項27に記載の機器。
【請求項33】
前記センサは、患者の血糖値を測定し、前記治療薬は、インスリンを含む、請求項27に記載の機器。
【請求項34】
前記薬物送達ユニットは、
基板と、
該基板内に設けられた複数のリザーバと、
該リザーバのうちの1つまたはそれ以上の内部に備えられた少なくとも1つの治療薬と、
該リザーバ内部の該治療薬を隔離するために該リザーバを覆っているリザーバキャップと、
該リザーバキャップのうちの1つまたはそれ以上を崩壊もしくは浸透性化し、該リザーバのうちの1つまたはそれ以上から該治療薬を放出する手段とを備える、請求項27に記載の機器。
【請求項35】
前記薬物送達ユニットと前記埋め込み型センサユニットとの間の連通は、デジタル信号またはアナログ信号の伝達を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項36】
前記薬物送達ユニットと前記埋め込み型センサユニットとの間の連通は、光、電磁エネルギー、音波エネルギー、水力エネルギー、またはそれらの組み合わせの伝達を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項37】
前記薬物送達ユニットと前記埋め込み型センサユニットとの間の連通は、導体を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項38】
前記導体は、1本またはそれ以上のワイヤ、光ファイバ、流体を充填した管腔、もしくはそれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の機器。
【請求項39】
前記薬物送達ユニットと前記埋め込み型センサユニットとの間の連通は、該2つのユニットを物理的に接続する導体なしで行われる、請求項27に記載の機器。
【請求項40】
1つまたはそれ以上の信号符号器/変換器、エミッタ、受信機、復号器/変換器、もしくはそれらの組み合わせをさらに備える、請求項27に記載の機器。
【請求項41】
前記二次デバイスは、センサまたは感知要素を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイスもしくは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記二次デバイスは、グルコースセンサを備えるセンサまたは感知要素を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイスもしくは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記二次デバイスは、グルコース酸化酵素を備えるセンサまたは感知要素を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイスもしくは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記二次デバイスは、少なくとも1つの作用電極と、対極と、該少なくとも1つの作用電極に備えられた酵素と、該酵素および該少なくとも1つの作用電極の少なくとも一部分を覆う半透膜とを備えるセンサまたはセンサ要素を備える、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイスもしくは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記基板は、共に結合された2つまたはそれ以上の部分を含む、請求項1〜19もしくは請求項42〜44のいずれか1項に記載のデバイスあるいは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記基板は、一体となっている、請求項1〜19もしくは請求項42〜44のいずれか1項に記載のデバイスあるいは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記リザーバは、マイクロリザーバである、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項48】
医療デバイスであって、
請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載のデバイスを備える埋め込み型センサユニットと、
放出用の少なくとも1つの治療薬を備える薬物送達ユニットと、
を備え、
該薬物送達ユニットは、該埋め込み型センサユニットと連通しており、該センサの環境要素の感知に応答して該治療薬を放出する、
医療デバイス。
【請求項49】
1つの部位で1つの特性を検出または測定する方法であって、該方法は、
該部位で請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイスを準備する工程と、
該リザーバキャップを崩壊または浸透性化して該リザーバのうちの1つの内部にある該センサもしくは感知要素を露出する工程と、
該露出されたセンサまたはセンサ要素内もしくはそれに隣接する特性を検出あるいは測定する工程と、
を包含する方法。
【請求項50】
前記センサまたはセンサ要素を作動不能にする工程をさらに包含する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記センサまたはセンサ要素は、該センサまたは感知要素の近位に配置されたヒューズもしくは抵抗ヒータに電流を流すことによって作動不能にされる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記センサまたは感知要素は、グルコースセンサを備える、請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−512859(P2007−512859A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538467(P2006−538467)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036669
【国際公開番号】WO2005/041767
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】