説明

グロープラグ制御装置、及び当該グロープラグ制御装置の製造方法

【課題】マルチチップモジュールを金型に固定することなく、当該モジュールのインサート部の周囲を成形材料によって覆うことのできるグロープラグ制御装置及びグロープラグ制御装置の製造方法の提供。
【解決手段】金型20内のキャビティ27にゲート25を通じて充填される成形材料によって周囲を覆われた板状の一次成型部と、一次成型部70に収容されてグロープラグの発熱を制御する制御部40とを備えるGCU100である。一次成型部70においてキャビティ27に開口するゲート25の開口部25aと対向する対向縁部71は、開口部25aに近接するほど板厚の減少する形状である。キャビティ27に充填される成形材料を、対向縁部71に沿って円滑に流動させることにより、成形材料から一次成型部70に作用する抵抗力は、低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロープラグの発熱を制御するグロープラグ制御装置、及びグロープラグ制御装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼル機関の始動性を改善するためのグロープラグの発熱を制御するグロープラグ制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、グロープラグの発熱を制御する制御部としての複数のICチップと、これら複数のICチップを収容するモールド樹脂とを備えたグロープラグ通電制御装置が開示されている。特許文献1に開示のグロープラグ通電制御装置では、複数のICチップ及びモールド樹脂等からなる板状のマルチチップモジュールは、樹脂製のハウジングに収容されている。
【0003】
一方、特許文献2には、ICチップ等の半導体集積基板をモールド樹脂に収容した板状のICパッケージを備えるコネクタ付半導体装置が開示されている。特許文献2に開示のコネクタ付き半導体装置では、半導体集積基板を収容したICパッケージは、エポキシ樹脂等の成形材料によって周囲を覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164005号公報
【特許文献2】実公昭63−102246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、本願発明者らは、特許文献1に開示のようなグロープラグ制御装置において、複数のICチップを収容するマルチチップモジュールの周囲を、さらに樹脂等の成形材料によって覆う構成を想到した。この構成では、マルチチップモジュールを金型内のキャビティに収容し、マルチチップモジュールを金型に対して固定する。そして、型締めされた金型内のキャビティにゲートを通じて成形材料を充填することによって、マルチチップモジュールは、周囲を成形材料によって覆われる。
【0006】
しかし、上述した構成及び工程において、キャビティに充填される成形材料は、キャビティ内を流動することにより、マルチチップモジュールにおいてキャビティに開口するゲートの開口部と対向する部分に接触する。すると、成形材料は、マルチチップモジュールの接触した部分によって流動を一旦止められてしまう。以上により、成形材料からインサート部に抵抗力が作用する。そのため、マルチチップモジュールを金型に固定しなければ、マルチチップモジュールの周囲を成形材料によって覆うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、マルチチップモジュール等のインサート部を金型に固定することなく、当該インサート部の周囲を成形材料によって覆うことのできるグロープラグ制御装置及びグロープラグ制御装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、金型内のキャビティにゲートを通じて充填される成形材料によって周囲を覆われた板状のインサート部と、インサート部に収容され、グロープラグと接続されることによりグロープラグの発熱を制御する制御部と、を備えるグロープラグ制御装置であって、インサート部においてキャビティに開口するゲートの開口部と対向する対向縁部は、開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、金型内のキャビティにゲートを通じて充填される成形材料は、キャビティ内を流動することにより、板状に形成されたインサート部において、キャビティに開口するゲートの開口部と対向する対向縁部に接触する。インサート部の対向縁部は、ゲートの開口部に近接するほど板厚の減少する形状である。故に、成形材料は、対向縁部によって流動を止められることなく、対向縁部に沿って円滑に流動し得る。以上により、成形材料からインサート部に作用する抵抗力は、低減される。したがって、インサート部を金型に固定することなく、当該インサート部の周囲を成形材料によって覆ったグロープラグ制御装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、対向縁部は、インサート部の板面方向に沿う仮想平面に対して面対称な一対の傾斜面を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、対向縁部に沿って流動する成形材料は、インサート部の板厚方向の抵抗力を当該対向縁部に作用させる。この対向縁部の有する一対の傾斜面がインサート部の板面方向に沿う仮想平面に対して面対称であることにより、成形材料によって生じる板厚方向の抵抗力は、互いに相殺し合う。故に、板厚方向におけるインサート部の固定がさらに確実でなくても、インサート部の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、グロープラグ制御装置は、インサート部の内部にて制御部と接続され、当該インサート部の外部に延出するリード部材と、キャビティ内においてリード部材を保持する保持部材と、をさらに備え、対向縁部の先端部分は、インサート部の板面方向に沿い且つ当該インサート部の板厚方向の中心を通る仮想中心面よりも、保持部材側にずれて位置することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、対向縁部の先端部分は、インサート部の板厚方向の中心を通る仮想中心面よりも、保持部材側にずれて位置している。故に、対向縁部に沿って流動する成形材料は、板厚方向において保持部材側に向かう抵抗力をインサート部に作用させる。この抵抗力によって、インサート部の外部に延出するリード部材は、保持部材に向けて押し付けられる。成形材料の抵抗力によって押し付けられたリード部材は、保持部材に確実に保持され得る。したがって、保持部材を金型に固定することによれば、金型へのインサート部の固定が確実でなくても、インサート部の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、対向縁部は、成形材料としての熱可塑性樹脂と接触することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、熱可塑性樹脂は、一般に高い粘度を有している。故に、成形材料としての熱可塑性樹脂と接触する場合、インサート部は、抵抗力を受けることとなる。しかし、板厚の減少する対向縁部の形状によって、成形材料の流動が円滑化されるので、抵抗力の増加は抑制される。以上のように、対向縁部の板厚を減少させることにより抵抗力を低減する作用は、成形材料として粘度の高い熱可塑性樹脂を用いる形態において、特に有効なのである。
【0016】
請求項5に記載の発明では、グロープラグ制御装置は、インサート部の内部にて制御部と接続され、当該インサート部の外部に延出する帯板状のリード部材、をさらに備え、リード部材の幅方向は、開口部から離間する離間方向に沿うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、インサート部の外部に延出する帯板状のリード部材の幅方向が、開口部から離間する離間方向に沿っている。キャビティ内を流動する成形材料が開口部から離間する離間方向に沿って流動することによれば、リード部材の幅方向は、成形材料の流動に沿うようになる。以上により、成形材料からリード部材に作用する抵抗力は、低減される。故に、制御部と接続されたリード部材を通じてインサート部に作用する抵抗力は、低減される。したがって、インサート部は、外部にリード部材の延出する構成であっても、金型に固定されることなく、成形材料によって周囲を確実に覆われる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、リード部材の幅方向に向かい合う一対の側部のうち、離間方向と対向する一方の対向側部は、開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、リード部材において離間方向と対向する対向側部が、ゲートの開口部に近接するほど板厚の減少する形状である。故に、離間方向に沿って流動する成形材料は、対向側部によって流動を止められることなく、対向側部に沿って円滑に流動し得る。以上により、リード部材を通じて成形材料からインサート部に作用する抵抗力は、低減される。したがって、インサート部は、外部にリード部材の延出する構成であっても、金型に固定されることなく、周囲を成形材料によって確実に覆われる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、グロープラグ制御装置は、離間方向へのインサート部の移動を規制する規制部を有し、キャビティ内においてリード部材を保持する保持部材、をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、成形材料からの抵抗力の作用によって、開口部から離間する離間方向にインサート部が移動しようとしても、当該インサート部は、保持部材の有する規制部によって移動を規制される。したがって、保持部材を金型に固定することにより、金型へのインサート部の固定が確実になされなくても、インサート部の周囲を成形材料によって覆うことができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、金型に対向するように形成された一対のゲートを通じて充填される成形材料によって周囲を覆われたインサート部を備えるグロープラグ制御装置であって、キャビティに開口する一対のゲートの各開口部と個々に対向する一対の対向縁部は、対応する開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、一対のゲートのうちの一方からキャビティ内に充填される成形材料の流れと、一対のゲートのうちの他方からキャビティ内に充填される成形材料の流れとは、互いに対向する。故に、一方のゲートから充填される成形材料が当該一方のゲートの開口部と対向する対向縁部に作用させる抵抗力と、他方のゲートから充填される成形材料が当該他方のゲートの開口部と対向する対向縁部に作用させる抵抗力とは、互いに相殺し合う。以上により、インサート部の固定がさらに確実でなくても、インサート部の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、金型内のキャビティにゲートを通じて充填される成形材料によって周囲を覆われた板状のインサート部と、インサート部に収容され、グロープラグと接続されることによりグロープラグの発熱を制御する制御部と、を備えるグロープラグ制御装置の製造方法であって、インサート部において板厚の減少する形状である対向縁部が、キャビティに開口するゲートの開口部に対向するように、インサート部をキャビティ内に設置する設置工程と、設置工程において、インサート部の設置されたキャビティ内に、ゲートを通じて溶融された成形材料を充填する充填工程と、を含むことを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、充填工程において、キャビティにゲートを通じて充填される溶融された成形材料は、板状に形成されたインサート部に接触する。設置工程によって設置されたインサート部において板厚の減少するテーパ形状である対向縁部が、ゲートの開口部に対向している。故に、充填された成形材料は、テーパ形状の対向縁部に接触し、対向縁部によって流動を止められることなく、対向縁部に沿って円滑に流動し得る。以上により、成形材料からインサート部に作用する抵抗力は、低減される。したがって、設置工程においてインサート部が金型に固定されなくても、インサート部の周囲は、成形材料によって覆われる。
【0026】
請求項10に記載の発明の設置工程では、開口部から離間する離間方向にインサート部の板面方向が沿うように、当該インサート部を設置することを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、設置工程において設置されたインサート部の板面方向は、開口部から離間する離間方向に沿っている。キャビティ内を流動する成形材料が開口部から離間する離間方向に沿って流動することによれば、インサート部の板面方向は、成形材料の流動に沿うようになる。以上により、インサート部の対向縁部以外の部分に成形材料から作用する抵抗力は、低減される。故に、インサート部に作用する抵抗力の総和は、確実に低減される。したがって、インサート部は、金型に固定されることなく、周囲を成形材料によって確実に覆われる。
【0028】
尚、請求項2〜8に記載の構成は、請求項9及び10に記載の製造方法によって製造されるグロープラグ制御装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態によるGCUの構成を説明する図であって、(a)は、GCUの平面図であり、(b)は、GCUの正面図であり、(c)は、GCUのコネクタ側より見た図であり、(d)は、GCUの側面図である。
【図2】GCUを製造する工程のうち、設置工程を詳しく説明するための図であって、(a)は、マルチチップモジュールの設置された金型の平面図であり且つ(b)のIIA−IIA線断面図であり、(b)は、マルチチップモジュールの設置された金型の側面図であり且つ(a)のIIB−IIB線断面図である。
【図3】GCUを製造する工程のうち、充填工程を詳しく説明するための図である。
【図4】GCUを製造する工程のうち、離型工程を詳しく説明するための図である。
【図5】本発明の第二実施形態によるGCUの特徴部分を説明するための図であって、図1(b)の領域Vを拡大した拡大図である。
【図6】リード部材の延出部の断面形状を説明するための図であって、(a)は、図5のVIA−VIA線断面図であり、(b)は、図5のVIB−VIB線断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態によるGCUを製造する工程のうち、充填工程を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態によるGCUの特徴部分を説明するための図である。
【図9】リード部材の延出部の断面形状を説明するための図であって、(a)は、図8のIXA−IXA線断面図であり、(b)は、図5のIXB−IXB線断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態によるGCUを製造する工程のうち、充填工程を示す図である。
【図11】本発明の第四実施形態によるGCUの構成を説明する図であって、図1の別の変形例を示す図である。
【図12】本発明の第四実施形態によるGCUを製造する工程のうち、充填工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0031】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態によるグロープラグコントロールユニット(GCU:GLOW plug Control Unit)100を示している。GCU100は、電流の印加によって発熱する複数のグロープラグ、車両に搭載された内燃機関を制御する機関制御装置、及びバッテリ等の電源と接続されている。GCU100は、機関制御装置からの制御信号に基づいて、電源から供給される電力を、各グロープラグに供給する。
【0032】
各グロープラグは、内燃機関に形成された各燃焼室に突出するよう、当該内燃機関に設置されている。グロープラグには、セラミックヒータ等の通電により発熱する構成が内蔵されている。例えば内燃機関の始動直後等、燃焼安定化のために燃焼室内を昇温させなければならない場合に、グロープラグへの通電が実施されることにより、燃焼室内の温度は、摂氏900度程度に維持される。
【0033】
GCU100は、マルチチップモジュール10、ターミナル部材60、及び二次成型部80を備えている。マルチチップモジュール10は、一次成型部70、制御部40、リード部材50等によって構成されている。
【0034】
一次成型部70は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂によって形成されている。一次成型部70は、長手方向を有する板状を呈している。一次成型部70は、二次成型部80によって周囲を覆われている。一次成型部70は、リード部材50の一部、及び制御部40を収容している。
【0035】
制御部40は、一次成型部70に収容されている。制御部40は、リード部材50及びターミナル部材60等を通じて、機関制御装置、電源、及び複数のグロープラグと接続されている。制御部40は、制御IC41及びスイッチング素子として作動する複数のパワーIC42を有している。制御IC41は、一次成型部70の内部において、各パワーIC42とワイヤーボンディング等によって接続さている。制御IC41は、リード部材50及びターミナル部材60等を通じて機関制御装置と接続されており、機関制御装置からの制御信号を取得する。制御IC41は、制御信号に基づいて、各パワーIC42に駆動信号を出力することにより、各パワーIC42のスイッチングを制御する。
【0036】
パワーIC42は、例えば、Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor(MOSFET)である。パワーIC42は、内燃機関の気筒数、即ちGCU100に接続されるグロープラグの数に応じて、一次成型部70内に埋設されている。第一実施形態における制御部40は、四つのパワーIC42を有している。各パワーIC42のゲートは、制御IC41と接続されている。各パワーIC42のドレインは、リード部材50及びターミナル部材60等を通じて電源と接続されている。各パワーIC42のソースは、リード部材50及びターミナル部材60等を通じて、複数のグロープラグのうちの一つと接続されている。各パワーIC42は、制御IC41からの駆動信号に基づいて、電源から供給された電力を各グロープラグに供給する。以上の構成により、制御部40は、グロープラグと接続された各パワーIC42のスイッチング動作を制御IC41によって制御することにより、グロープラグの発熱を制御する。
【0037】
リード部材50は、銅合金等の導電性に優れた金属材料によって形成されている。リード部材50は、GCU100に複数設けられている。各リード部材50は、一部を一次成型部70の内部に収容されており、一次成型部70の内部にて制御部40と接続されている。各リード部材50は、一次成型部70の長手方向に沿って伸びる側面から、一次成型部70の外部に延出する帯板状の延出部50aを有している。各延出部50aは、延伸方向の中間部分において屈曲されることにより、第一延伸部分51及び第二延伸部分52を形成している。第一延伸部分51は、一次成型部70の側面から、一次成型部70の板面方向に沿って延伸している部位である。第二延伸部分52は、リード部材50の屈曲により、第一延伸部分51と連続しつつ、一次成型部70の板厚方向に沿って延伸している部位である。第二延伸部分52の延伸方向の先端部分は、一次成型部70の板面方向に沿うように屈曲されており、ターミナル部材60に抵抗溶接等によって接続されている。
【0038】
ターミナル部材60は、銅合金等の導電性に優れた金属材料によって形成されている。ターミナル部材60は、一次成型部70の外部に延出する延出部50aの数に応じて、GCU100に複数設けられている。尚、各図面においては、図面を見易くするために、延出部50a及びターミナル部材60の数を実際よりも減らして図示している。
【0039】
各ターミナル部材60は、一方向に延伸する帯板状であって、中間部分において屈曲されることにより、保持部61及び電気接続部65を形成している。保持部61は、二次成型部80の内部に収容されている。保持部61は、第二延伸部分52の延伸方向の先端部分に沿って延伸している。各保持部61は、各第二延伸部分52の各先端部分と接続されることにより、リード部材50を保持している。電気接続部65は、一次成型部70の板厚方向に沿って保持部61から延伸することにより、二次成型部80の外部に露出している。
【0040】
二次成型部80は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)樹脂又はポリフェニレンサルファイド(PPS:polyphenylene sulfide)樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成されている。二次成型部80は、コネクタ部81を有している。コネクタ部81は、GCU100外部の機関制御装置、電源、及びグロープラグと、制御部40とを接続するための構成である。コネクタ部81には、図示しない相手側コネクタ部が嵌合する。コネクタ部81は、嵌合空間81a及び係止爪82を形成している。嵌合空間81aは、コネクタ部81に嵌合する相手側コネクタ部を収容するための空間である。嵌合空間81aには、ターミナル部材60の電気接続部65が露出している。コネクタ部81への相手側コネクタ部の嵌合によって、電気接続部65は、相手側コネクタ部内に設けられた電気接点と電気的に接続される。係止爪82は、収容空間を囲む壁部から、電気接続部65の延伸方向と交差する方向に突出している。係止爪82は、相手側コネクタ部を係止することにより、コネクタ部81からの相手側コネクタ部の離脱を防止する。
【0041】
(特徴部分)
次に、GCU100の特徴部分について詳細に説明する。
【0042】
一次成型部70は、本体部75及び対向縁部71を有している。本体部75は、矩形の板状に形成されている。対向縁部71は、本体部75の外縁を囲む複数の縁部のうちの一つである。対向縁部71は、外縁に向かうほど、板厚の減少するテーパ形状に形成されている。一次成型部70の板面方向に沿い且つ当該一次成型部70の板厚方向の中心を通る仮想平面を中心面CPとすると、対向縁部71は、一次成型部70の中心面CPに対して面対称な一対の傾斜面74を有している。傾斜面74は、長手方向に対する板厚の変化を示す変化率が一定である。対向縁部71の延伸方向の先端部分72は、中心面CP上に位置している。また、対向縁部71の一対の角部73には、面取りが施されている。これにより、一次成型部70の対向縁部71の幅は、外縁に向かうほど減少している。
【0043】
次に、GCU100を製造する工程において、一次成型部70の周囲に二次成型部80を形成する工程で用いられる金型20について、図2に基づいて説明する。
【0044】
金型20は、複数の割型21,22,23等に分割されている。金型20には、ゲート25及びキャビティ27が形成されている。ゲート25は、キャビティ27内に溶融した熱可塑性樹脂を充填させるための通路である。キャビティ27は、二次成型部80(図1(b)参照)を補完する形状に形成されている。尚、便宜的に、三つに分割された金型20のうち、ゲート25を有するものを割型21とし、主にコネクタ部81(図1(b)参照)を形成するものを割型22とし、これら以外のものを割型23とする。以上の金型20を用いて、GCU100を製造する工程について、以下図2〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0045】
(設置工程)
図2に示される設置工程では、マルチチップモジュール10が、金型20に形成されたキャビティ27に設置される。具体的には、リード部材50の延出部50aと接続されたターミナル部材60が、割型22によって保持される。一次成型部70の対向縁部71がキャビティ27に開口するゲート25の開口部25aに対向するように、マルチチップモジュール10は、キャビティ27内に設置される。これにより、対向縁部71は、開口部25aに近接するほど板厚が減少する。また、一次成型部70の板面方向及びリード部材50の延出部50aの幅方向が、開口部25aから離間する離間方向に沿うように、マルチチップモジュール10は、キャビティ27内に設置される。
【0046】
(型締め工程)
設置工程によって、キャビティ27内にマルチチップモジュール10を設置した後、各割型21〜23は、型閉じされる。そして、充填時の圧力によるキャビティ27からの成形材料の漏洩防止のために、各割型21〜23は型締めされる。
【0047】
(充填工程)
図3に示される充填工程では、型締め工程によって型締めされた金型20のキャビティ27に、溶融された成形材料が、ゲート25を通じて、予め設定された圧力にて充填される。ここで、充填された成形材料は、ゲート25の延伸方向に沿って開口部25aから離間する離間方向に流動する。故に、離間方向を、以下、成形材料の流動方向FDとする。ゲート25を通じてキャビティ27に充填された成形材料としての熱可塑性樹脂は、開口部25aと対向している対向縁部71に接触し、対向縁部71の一対の傾斜面74に沿って流動する。そして、成形材料は、一次成型部70等の周囲を囲む二次成型部80を形成する。
【0048】
(離型工程)
図4に示される離型工程では、充填工程によって充填された成形材料の凝固の後、各割型21〜23は型開きされる。そして、成形された二次成型部80を有するGCU100が、金型20内のキャビティ27から離型される。
【0049】
ここまで説明した第一実施形態では、キャビティ27に充填された成形材料の接触する対向縁部71は、テーパ形状である。故に、成形材料は、対向縁部71によって流動を止められることなく、対向縁部71に沿って円滑に流動し得る。以上により、成形材料から一次成型部70に作用する抵抗力は、低減される。したがって、一次成型部70を含むマルチチップモジュール10を金型20に固定することなく、一次成型部70の周囲を成形材料によって覆ったGCU100を提供することができる。
【0050】
加えて第一実施形態では、対向縁部71の有する一対の傾斜面74が一次成型部70の中心面CPに対して面対称であることにより、成形材料によって生じる板厚方向の抵抗力は、互いに相殺し合う。
【0051】
また第一実施形態では、設置工程において金型20に設置された一次成型部70の板面方向は、キャビティ27内を流動する成形材料の流動方向FDに沿っている。故に、対向縁部71に沿って流動した成形材料から、一次成型部70の本体部75に作用する抵抗力は、低減される。加えて、リード部材50の延出部50aの幅方向も、キャビティ27内を流動する成形材料の流動方向FDに沿っている。故に、成形材料から延出部50aを通じて一次成型部70に作用する抵抗力は、低減される。
【0052】
さらに第一実施形態では、成形材料は、対向縁部71の面取りされた角部73に沿って、一次成型部70の長手方向の側面に円滑に廻り込み得る。故に、成形材料から一次成型部70に作用する抵抗力は、さらに低減される。
【0053】
これらによって、一次成型部70に作用する抵抗力の総和は、確実に低減される。したがって、一次成型部70を含むマルチチップモジュール10の金型20への固定がさらに確実でなくても、一次成型部70の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0054】
また加えて第一実施形態では、キャビティ27に充填される成形材料としての熱可塑性樹脂は、一般に熱硬化性樹脂よりも高い粘度を有している。故に、成形材料としての熱可塑性樹脂と接触する場合、一次成型部70は、抵抗力を受けることとなる。しかし、板厚の減少する対向縁部71の形状によって、成形材料の流動が円滑化されるので、抵抗力の増加は抑制される。このように、対向縁部71の板厚を減少させることにより抵抗力を低減する作用は、成形材料として粘度の高い熱可塑性樹脂を用いる形態において、特に有効なのである。
【0055】
さらに加えて、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と比較して、一般に靭性に優れる。GCUは、内燃機関の近傍に設置されるため、激しい温度変化、振動、さらに例えば小石等との衝突といった多大な使用環境ストレスを受ける。二次成型部80を熱可塑性樹脂によって形成することによれば、このような使用環境ストレスを受けても、二次成型部80は、破損し難くなる。したがって、GCU100の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0056】
尚、第一実施形態において、ターミナル部材60が特許請求の範囲の「保持部材」に相当し、一次成型部70が特許請求の範囲の「インサート部」に相当し、GCU100が特許請求の範囲の「グロープラグ制御装置」に相当する。
【0057】
(第二実施形態)
図5〜図7に示される本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態によるGCU200は、第一実施形態のマルチチップモジュール10(図1(a)参照)に相当するマルチチップモジュール210を備えている。また、GCU200を製造する工程において用いられる金型220が、第一実施形態の金型20(図2参照)とは異なっている。以下、第二実施形態によるGCU200の製造方法について、詳細に説明する。
【0058】
図7に示されるように、マルチチップモジュール210の一次成型部270は、一対の対向縁部271a,271bを有している。一対の対向縁部271a,271bは、一次成型部270の長手方向の両縁部である。各対向縁部271a,271bは、外縁に向かうほど、板厚の減少するテーパ形状に形成されている。各対向縁部271a,271bは、第一実施形態の対向縁部71(図1(d)参照)と実質的に同一の形状であって、一次成型部270の板厚方向における中心面CPに対して面対称であり、且つ角部273a,273bに面取りが施されている。
【0059】
図5及び図6に示されるように、マルチチップモジュール210のリード部材250は、第一実施形態の延出部50a(図1(a)参照)に相当する延出部250aを有している。各延出部250aは、第一実施形態の第一延伸部分51及び第二延伸部分52(図1(b)参照)と実施的に同一である、第一延伸部分251及び第二延伸部分252を形成している。第一延伸部分251は、一次成型部270の側面から、一次成型部270の板面方向に沿って延伸している部位である。第二延伸部分252は、リード部材250の屈曲により、第一延伸部分251と連続しつつ、一次成型部270の板厚方向に沿って延伸している部位である。延出部250aの延出方向に沿う一対の対向側部252a,252bであって、第一延伸部分251から第二延伸部分252に亘って延伸している対向側部252a,252bは、外縁に向かうほど、板厚の減少するテーパ形状に形成されている。第一延伸部分251及び第二延伸部分252の板面方向に沿い且つ第一延伸部分251及び第二延伸部分252の板厚方向の中心を通る仮想面を中心面CP1とすると、各対向側部252a,252bは、中心面CP1に対して面対称な形状である。
【0060】
図7に示されるように、第二実施形態によるGCU200を製造する工程において用いられる金型220は、割型21及び割型22と、第一実施形態の割型23(図2参照)に相当する割型223と、を備えている。割型223は、キャビティ27に溶融した成形材料を充填するためのゲート226を有している。ゲート226は、割型21に形成されたゲート25と対向している。
【0061】
以上の金型220を用いて、GCU200を製造する工程について、以下図5〜図7に基づいて詳細に説明する。尚、第一実施形態の製造方法と実質的に同一である型締め工程及び離型工程は、説明を省略する。
【0062】
(設置工程)
設置工程では、一次成型部270の一方の対向縁部271aがキャビティ27に開口するゲート25の開口部25aに対向するように、マルチチップモジュール210は、キャビティ27内に設置される。このマルチチップモジュール210の設置により、一次成型部270の他方の対向縁部271bは、キャビティ27に開口するゲート226の開口部226aに対向する。以上により、一対の開口部25a,226aと個々に対向する一対の対向縁部271a,271bは、対応する開口部25a,226aに近接するほど板厚が減少する。
【0063】
また、開口部25aからキャビティ27に充填される成形材料は、ゲート25の延伸方向に沿って開口部25aから離間する離間方向に流動する。故に、開口部25aから離間する離間方向を、成形材料の流動方向FD1とする。一方、開口部226aからキャビティ27に充填される成形材料は、ゲート226の延伸方向に沿って開口部226aから離間する離間方向に流動する。故に、開口部226aから離間する離間方向を、成形材料の流動方向FD2とする。マルチチップモジュール210は、一次成型部270の板面方向及び延出部250aの幅方向がこれら流動方向FD1,FD2に沿うように、キャビティ27内に設置される。これにより、一対の対向側部252a,252bは、対応する各開口部25a,226aに近接するほど板厚が減少する。
【0064】
(充填工程)
充填工程では、型締め工程によって型締めされた金型220のキャビティ27に、溶融された成形材料が、ゲート25及びゲート226を通じて、予め設定された圧力にて充填される。ゲート25を通じてキャビティ27に充填された成形材料は、開口部25aと対向している対向縁部271aに接触し、対向縁部271aに沿って流動する。また、ゲート226を通じてキャビティ27に充填された成形材料は、開口部226aと対向している対向縁部271bに接触し、対向縁部271bに沿って流動する。そして、成形材料は、一次成型部270等の周囲を囲む二次成型部80を形成する。以上の充填工程の後、離型工程を経て、GCU200は製造される。
【0065】
ここまで説明した第二実施形態では、ゲート25を通じてキャビティ27に充填される成形材料は、対向縁部271aによって流動を止められることなく、対向縁部271aに沿って円滑に流動し得る。加えて、ゲート226を通じてキャビティ27に充填される成形材料は、対向縁部271bによって流動を止められることなく、対向縁部271bに沿って円滑に流動し得る。以上により、金型220に互いに対向する一対のゲート25,226が形成されていても、成形材料から一次成型部270に作用する抵抗力は、低減される。したがって、一次成型部270を含むマルチチップモジュール210を金型220に固定することなく、一次成型部270の周囲を成形材料によって覆ったGCU200を提供することができる。
【0066】
加えて第二実施形態では、ゲート25からキャビティ27内に充填される成形材料の流動方向FD1と、ゲート226からキャビティ27内に充填される成形材料の流動方向FD2とは、互いに対向する。故に、ゲート25から充填される成形材料が対向縁部271aに作用させる抵抗力と、ゲート226から充填される成形材料が対向縁部271bに作用させる抵抗力とは、互いに相殺し合う。
【0067】
また第二実施形態では、リード部材250の対向側部252a,252bは、各ゲート25,226の各開口部25a,226aに近接するほど板厚の減少する形状である。故に、成形材料は、対向側部252a,252bによって流動を止められることなく、対向側部252a,252bに沿って円滑に流動し得る。以上により、リード部材250を通じて成形材料から一次成型部270に作用する抵抗力は、低減される。
【0068】
これらによって、一次成型部270に作用する抵抗力の総和は、確実に低減される。したがって、一次成型部270を含むマルチチップモジュール210の金型220への固定がさらに確実でなくても、一次成型部270の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0069】
尚、第二実施形態において、一次成型部270が特許請求の範囲の「インサート部」に相当し、GCU200が特許請求の範囲の「グロープラグ制御装置」に相当する。
【0070】
(第三実施形態)
図8〜図10に示される本発明の第三実施形態は、第二実施形態の変形例である。第三実施形態によるGCU300は、第二実施形態のマルチチップモジュール210(図5参照)に相当する、マルチチップモジュール310を備えている。以下、第三実施形態によるGCU300について、詳細に説明する。
【0071】
マルチチップモジュール310の一次成型部370は、一対の対向縁部371a,371bを有している。一対の対向縁部371a,371bは、一次成型部370の長手方向の両縁部である。各対向縁部371a,371bは、外縁に向かうほど、板厚の減少するテーパ形状に形成されている。各対向縁部371a,371bの各先端部分372a,372bは、一次成型部370の中心面CPよりもターミナル部材60側にずれて位置している。また、各対向縁部371a,371bの角部373a,373bには、面取りが施されている。
【0072】
マルチチップモジュール310のリード部材350は、第二実施形態の延出部250a(図5参照)に相当する延出部350aを有している。延出部350aの延出方向と直交する断面の形状は、台形形状である。延出部350aの第一延伸部分351の幅は、ターミナル部材60から離間するに従って狭くなっている。延出部350aの第二延伸部分352の幅は、一次成型部370から離間するほど狭くなっている。以上により、延出部350aの一対の対向側部352a,352bは、外縁に向かうほど、板厚が減少している。
【0073】
ここまで説明した第三実施形態のように、各対向縁部371a,371bの各先端部分372a,372bが中心面CPに対してずれて位置していても、成形材料は、各対向縁部371a,371bに沿って円滑に流動し得る。故に、成形材料は、対向縁部371a,371bによって流動を止められることはない。以上により、成形材料から一次成型部370に作用する抵抗力は、低減される。したがって、一次成型部370を含むマルチチップモジュール310を金型220に固定することなく、一次成型部370の周囲を成形材料によって覆ったGCU300を提供することができる。
【0074】
加えて第三実施形態では、各先端部分372a,372bが、中心面CPよりもターミナル部材60側にずれて位置している。故に、各対向縁部371a,371bに沿って流動する成形材料は、板厚方向においてターミナル部材60側に向かう抵抗力RFを一次成型部370に作用させる。これにより、一次成型部370から延出する延出部350aは、ターミナル部材60に向けて押し付けられる。
【0075】
また、延出部350aの第一延伸部分351に沿って流動する成形材料は、ターミナル部材60側に向かう抵抗力RF11をリード部材350に作用させる。この抵抗力RF11によって、延出部350aは、ターミナル部材60に向けて押し付けられる。また、延出部350aの第二延伸部分352に成形材料から作用する抵抗力RF12は、一次成型部370の長手方向に二列で並ぶ延出部350aの配置によって、互いに相殺し合う。故に、延出部350aのターミナル部材60への保持は、第二延伸部分352に作用する抵抗力RF12によっては妨げられない。
【0076】
これらの抵抗力RF及び抵抗力RF11によって押し付けられた延出部350aは、ターミナル部材60に確実に保持され得る。したがって、ターミナル部材60を割型22に固定することによれば、マルチチップモジュール310の金型220への固定が確実でなくても、一次成型部370の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0077】
尚、第三実施形態において、一次成型部370が特許請求の範囲の「インサート部」に相当し、GCU300が特許請求の範囲の「グロープラグ制御装置」に相当する。
【0078】
(第四実施形態)
図11及び図12に示される本発明の第四実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。第四実施形態によるGCU400では、一部のターミナル部材460の形状が第一実施形態のターミナル部材60(図1(b)参照)と異なっている。以下、第四実施形態によるGCU400について、詳細に説明する。
【0079】
図11に示されるように、一対のターミナル部材460は、一次成型部70の長手方向に沿って並ぶ複数のターミナル部材の一部である。一対のターミナル部材460は、複数のターミナル部材のうちで、対向縁部71から最も離間して位置している。各ターミナル部材460は、保持部61及び電気接続部65に加えて、規制部463を有している。
【0080】
規制部463は、ターミナル部材460において、保持部61及び電気接続部65間から分岐している。規制部463は、一次成型部70の長手方向に沿って対向縁部71から離間する方向に一旦延伸している。規制部463は、中間部分で一次成型部70の板厚方向に沿って曲がっている。一次成型部70の長手方向において対向縁部71と反対側に位置する当接縁部476に向かって、規制部463の先端部分は延伸している。規制部463は、先端部分を当接縁部476に当接させることにより、対向縁部71から当接縁部476に向かう方向への一次成型部70の移動を規制する。
【0081】
ここまで説明した第四実施形態の充填工程において、ゲート25を通じてキャビティ27に充填された成形材料は、開口部25aと対向している対向縁部71に接触し、対向縁部71に沿って流動する。このとき、成形材料からの抵抗力の作用によって、開口部25aから離間する離間方向であって、対向縁部71から当接縁部476に向かう方向に、一次成型部70は移動しようとする。しかし、一次成型部70は、割型22に固定されたターミナル部材460の有する規制部463によって、離間方向への移動を規制される。故に、金型20への一次成型部70の固定が確実になされなくても、一次成型部70の周囲は、成形材料によって確実に覆われる。
【0082】
尚、第四実施形態において、ターミナル部材460が特許請求の範囲の「保持部材」に相当し、GCU400が特許請求の範囲の「グロープラグ制御装置」に相当する。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0084】
上記実施形態において、対向縁部の有する一対の傾斜面は、共に長手方向に対する板厚方向の変化率が一定であった。しかし、傾斜面の傾斜の変化率は、一定でなくてもよい。例えば、長手方向に対する板厚方向の変化率は、対向縁部の外縁に向かうに従って大きくなっていてもよい。又は、長手方向に対する板厚方向の変化率は、対向縁部の外縁に向かうに従って小さくなっていてもよい。
【0085】
上記第一実施形態等において、対向縁部の先端部分は、一次成型部の仮想の中心面上に位置していた。また、上記第三実施形態において、対向縁部の先端部分は、仮想の中心面に対して、ターミナル部材側にずれて位置していた。しかし、対向縁部の位置は、仮想の中心面に対して、ターミナル部材とは反対側にずれて位置していてもよい。
【0086】
上記実施形態において、一次成型部の板面方向は、キャビティ内を流動する成形材料の流動方向に沿っていた。また、リード部材の延出部の幅方向は、キャビティ内を流動する成形材料の流動方向に沿っていた。しかし、これら板面方向及び幅方向は、成形材料の流動方向に沿っていなくてもよい。
【0087】
上記実施形態において、一次成型部は、熱硬化性樹脂によって形成されていた。また、二次成型部は、熱可塑性樹脂によって形成されていた。しかし、例えば一次成型部が、熱可塑性樹脂によって形成されていてもよい。又は、二次成型部が、熱硬化性樹脂によって形成されていてもよい。さらに、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂として上記実施形態で例示したもの以外の樹脂材料が、一次成型部及び二次成型部の成形材料として、適宜用いられてもよい。
【符号の説明】
【0088】
RF,RF11,RF12 抵抗力
FD,FD1,FD2 流動方向
CP 一次成型部の仮想中心面
CP1 延出部の仮想中心面
10,210,310 マルチチップモジュール
20,220 金型
21,22,23,223 割型
25,226 ゲート
25a,226a 開口部
27 キャビティ
40 制御部
41 制御IC
42 パワーIC
50,250,350 リード部材
50a,250a,350a 延出部
51,251,351 第一延伸部
52,252,352 第二延伸部
252a,252b,352a,352b 対向側部
60,460 ターミナル部材(保持部材)
61 保持部
463 規制部
65 電気接続部
70,270,370 一次成型部(インサート部)
71,271a,271b,371a,371b 対向縁部
72,372a,372b 先端部分
73,273a,273b,373a,373b 角部
74 傾斜面
75 本体部
476 当接縁部
80 二次成型部
81 コネクタ部
81a 嵌合空間
82 係止爪
100,200,300,400 GCU(グロープラグ制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内のキャビティにゲートを通じて充填される成形材料によって周囲を覆われた板状のインサート部と、前記インサート部に収容され、グロープラグと接続されることにより前記グロープラグの発熱を制御する制御部と、を備えるグロープラグ制御装置であって、
前記インサート部において前記キャビティに開口する前記ゲートの開口部と対向する対向縁部は、前記開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とするグロープラグ制御装置。
【請求項2】
前記対向縁部は、前記インサート部の板面方向に沿う仮想平面に対して面対称な一対の傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項3】
前記インサート部の内部にて前記制御部と接続され、当該インサート部の外部に延出するリード部材と、
前記キャビティ内において前記リード部材を保持する保持部材と、をさらに備え、
前記対向縁部の先端部分は、前記インサート部の板面方向に沿い且つ当該インサート部の板厚方向の中心を通る仮想中心面よりも、前記保持部材側にずれて位置することを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項4】
前記対向縁部は、前記成形材料としての熱可塑性樹脂と接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項5】
前記インサート部の内部にて前記制御部と接続され、当該インサート部の外部に延出する帯板状のリード部材、をさらに備え、
前記リード部材の幅方向は、前記開口部から離間する離間方向に沿うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項6】
前記リード部材の幅方向に向かい合う一対の側部のうち、前記離間方向と対向する一方の対向側部は、前記開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とする請求項5に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項7】
前記離間方向への前記インサート部の移動を規制する規制部を有し、前記キャビティ内において前記リード部材を保持する保持部材、をさらに備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項8】
前記金型に対向するように形成された一対の前記ゲートを通じて充填される前記成形材料によって周囲を覆われた前記インサート部を備えるグロープラグ制御装置であって、
前記キャビティに開口する前記一対のゲートの各開口部と個々に対向する一対の前記対向縁部は、対応する前記開口部に近接するほど板厚の減少する形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のグロープラグ制御装置。
【請求項9】
金型内のキャビティにゲートを通じて充填される成形材料によって周囲を覆われた板状のインサート部と、前記インサート部に収容され、グロープラグと接続されることにより前記グロープラグの発熱を制御する制御部と、を備えるグロープラグ制御装置の製造方法であって、
前記インサート部において板厚の減少する形状である対向縁部が、前記キャビティに開口する前記ゲートの開口部に対向するように、前記インサート部を前記キャビティ内に設置する設置工程と、
前記設置工程において、前記インサート部の設置された前記キャビティ内に、前記ゲートを通じて溶融された前記成形材料を充填する充填工程と、
を含むことを特徴とするグロープラグ制御装置の製造方法。
【請求項10】
前記設置工程では、前記開口部から離間する離間方向に前記インサート部の板面方向が沿うように、当該インサート部を設置することを特徴とする請求項9に記載のグロープラグ制御装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−172632(P2012−172632A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37405(P2011−37405)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】