説明

ケースの溶接方法

【課題】 クリアランスがある蓋およびケース本体に対して溶接用のレーザ光を同時に照射すると、レーザ光の一部がクリアランスを通過し、溶接に用いられない。
【解決手段】 対象物(20)を収容するケース本体(11)の開口部(11a)の内側に、開口部に対してクリアランス(CL)を設けた状態で蓋(12)を配置するステップを有する。蓋の外縁および開口部の一方を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、蓋の外縁および開口部の他方を、第2レーザ光の照射によって溶融させて、一方の溶融部分と接触させるステップとを有する。溶融状態にある蓋の外縁および開口部を、第3レーザ光の照射によって更に溶融させるステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースを構成するケース本体および蓋を固定するための溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池(単電池)は、一般的には、充放電を行う発電要素と、発電要素を収容するケースとで構成されている。ケースは、発電要素を収容させるために、少なくとも2つの部材によって構成されている。具体的には、発電要素を収容させるための開口部を有するケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐ蓋とによって、二次電池のケースを構成することができる。
【0003】
蓋は、ケース本体の開口部に固定され、ケースの内部は、密閉状態となる。蓋およびケース本体を固定する方法として、蓋およびケース本体が金属で形成されていれば、溶接を行うことができる。具体的には、蓋およびケース本体に対してレーザ光を照射することにより、蓋およびケース本体を溶融させて接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−338622号公報
【特許文献2】特開2007−207453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋およびケース本体を溶接するときには、蓋およびケース本体に対して同時にレーザ光を照射すれば、蓋およびケース本体を同時に溶融させて接合することができる。しかし、蓋およびケース本体の間にクリアランスが設けられている場合には、レーザ光がクリアランスを通過してしまう。クリアランスを通過したレーザ光は、蓋およびケース本体の溶接に用いられず、無駄になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明であるケースの溶接方法は、対象物を収容するケース本体の開口部の内側に、開口部に対してクリアランスを設けた状態で蓋を配置するステップを有する。また、蓋の外縁および開口部の一方を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、蓋の外縁および開口部の他方を、第2レーザ光の照射によって溶融させて、一方の溶融部分と接触させるステップとを有する。さらに、溶融状態にある蓋の外縁および開口部を、第3レーザ光の照射によって更に溶融させるステップを有する。
【0007】
ここで、第1レーザ光、第2レーザ光および第3レーザ光は、互いに異なる期間に照射することができる。また、第1レーザ光、第2レーザ光および第3レーザ光は、同時に照射することができる。3種類のレーザ光を同時に照射すれば、1回の照射処理によって、蓋および開口部を溶接することができる。
【0008】
蓋および開口部に到達した第3レーザ光の径は、蓋および開口部のそれぞれに到達した第1レーザ光および第2レーザ光の径よりも大きくすることができる。これにより、溶融状態にある蓋および開口部を更に溶融させるときに、溶融領域を広げることができる。広範囲の領域を溶融させることにより、蓋および開口部の溶接部分の強度を確保することができる。
【0009】
第1レーザ光および第2レーザ光よりもエネルギ密度が高い第3レーザ光を用いることができる。これにより、蓋および開口部の溶け込み深さを確保することができ、蓋および開口部の溶接部分の強度を確保することができる。一方、ケース本体の内壁面は、平坦面で構成することができる。これにより、ケース本体を簡素な構成とすることができる。
【0010】
本願第2の発明であるケースの溶接方法は、対象物を収容するケース本体の開口部の内側に蓋を配置するステップを有する。また、開口部および蓋の接触部分を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、溶融状態にある開口部および蓋に対して、第1レーザ光よりもエネルギ密度の高い第2レーザ光を照射して溶融させるステップと、を有する。
【0011】
本願第2の発明によれば、開口部および蓋を溶接するときの溶け込み深さを確保することができ、開口部および蓋の溶接部分の強度を確保することができる。
【0012】
ここで、開口部および蓋に到達した第2レーザ光の径は、開口部および蓋に到達した第1レーザ光の径よりも小さくすることができる。これにより、開口部および蓋に到達したときの第2レーザ光のエネルギ密度を、開口部および蓋に到達したときの第1レーザ光のエネルギ密度よりも高くすることができる。開口部および蓋の表面上の一点に第2レーザ光を集光させれば、第2レーザ光のエネルギ密度を最も高めることができる。
【0013】
本願第1および第2の発明において、対象物としては、二次電池の内部に設けられ、充放電を行う発電要素を用いることができる。
【0014】
本願第3の発明は、充放電を行う発電要素がケース本体に収容され、ケース本体の開口部が蓋で塞がれた蓄電素子の製造方法であって、発電要素をケース本体に収容するステップと、開口部の内側に、開口部に対してクリアランスを設けた状態で蓋を配置するステップとを有する。また、蓋の外縁および開口部の一方を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、蓋の外縁および開口部の他方を、第2レーザ光の照射によって溶融させて、一方の溶融部分と接触させるステップと、溶融状態にある蓋の外縁および開口部を、第3レーザ光の照射によって更に溶融させるステップと、を有する。
【0015】
本願第3の発明によれば、開口部および蓋の間のクリアランスをレーザ光が通過して、発電要素にレーザ光が到達してしまうのを阻止することができる。また、開口部および蓋の溶接部分に対して、レーザ光を無駄なく照射することができる。
【0016】
本願第4の発明は、充放電を行う発電要素がケース本体に収容され、ケース本体の開口部が蓋で塞がれた蓄電素子の製造方法であって、発電要素をケース本体に収容するステップと、開口部の内側に蓋を配置するステップとを有する。また、開口部および蓋の接触部分を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、溶融状態にある開口部および蓋に対して、第1レーザ光よりもエネルギ密度の高い第2レーザ光を照射して溶融させるステップと、を有する。
【0017】
本願第4の発明によれば、開口部および蓋を溶接するときの溶け込み深さを確保することができ、開口部および蓋の溶接部分(蓄電素子)の強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本願第1の発明によれば、開口部および蓋の間のクリアランスをレーザ光が通過するのを防止することができる。そして、開口部および蓋の溶接部分に対して、レーザ光を無駄なく照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における二次電池の外観図である。
【図2】実施例1における二次電池の内部構造を示す図である。
【図3】実施例1における発電要素の展開図である。
【図4】実施例1において、レーザ光の照射システムを示す概略図である。
【図5】実施例1において、レーザ光の照射によって蓋を溶融させる処理を示す図である。
【図6】実施例1において、レーザ光の照射によってケース本体を溶融させる処理を示す図である。
【図7】実施例1において、レーザ光の照射によって、蓋およびケース本体の溶融部分を増加させる処理を示す図である。
【図8】実施例2において、3種類のレーザ光の照射パターンを示す図である。
【図9】実施例2の変形例において、3種類のレーザ光の照射パターンを示す図である。
【図10】実施例3において、蓋およびケース本体に対して第1レーザ光を照射した状態を示す図である。
【図11】実施例3において、蓋およびケース本体に対して第2レーザ光を照射した状態を示す図である。
【図12】蓋およびケース本体に対して第2レーザ光だけを照射した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1であるケースの製造方法(溶接方法)について説明する。本実施例におけるケースは、二次電池(蓄電素子に相当する)の外装を構成するケースとして用いられる。まず、二次電池の構成について、図1および図2を用いて説明する。図1は、二次電池の外観図であり、図2は、二次電池の内部構造を示す図である。
【0022】
二次電池1としては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池を用いることができる。また、複数の二次電池1を用いて組電池を構成し、組電池を車両に搭載することができる。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、組電池と、燃料電池又は内燃機関とを用いて走行エネルギを生成する車両であり、電気自動車は、組電池だけを用いて走行エネルギを生成する車両である。
【0023】
二次電池1は、ケース10と、ケース10に収容される発電要素20とを有する。ケース10は、金属製(例えば、アルミニウム)のケース本体11および蓋12を有している。ケース本体11は、発電要素20を収容するためのスペースを形成しており、開口部11aを有する。開口部11aは、発電要素20をケース本体11に組み込むときに用いられる。
【0024】
ケース本体11は、底面と、互いに向かい合う2組の側面とで構成されている。また、ケース本体11の内壁面は、平坦な面で構成されている。
【0025】
蓋12は、ケース本体11の開口部11aを塞ぐ位置に配置される。ここで、蓋12は、開口部11aの内側に位置するように配置される。すなわち、蓋12の外縁は、開口部11aの内側に位置しており、ケース本体11の内壁面と向かい合う。開口部11aの内側に蓋12を配置し易くするために、開口部11aおよび蓋12の間には、クリアランスが設けられる。クリアランスが無くなるように、蓋12およびケース本体11のサイズを設定すると、ケース本体11の開口部11aに蓋12が取り付け難くなる。
【0026】
蓋12および開口部11aは、溶接されることにより、ケース10の内部は密閉状態となる。蓋12および開口部11aの溶接方法については、後述する。
【0027】
蓋12には、正極端子31および負極端子32が固定されている。また、蓋12には、安全弁33が設けられており、安全弁33は、正極端子31および負極端子32の間に位置している。安全弁33は、ケース10の内部で発生したガスを、ケース10の外部に排出させるために用いられる。
【0028】
発電要素20は、充放電を行うことができる要素である。発電要素20は、図3に示すように、正極素子21と、負極素子22と、正極素子21および負極素子22の間に配置されるセパレータ(電解液を含む)23とを有する。正極素子21は、集電板21aと、集電板21aの表面に形成された正極活物質層21bとを有する。正極活物質層21bは、集電板21aの両面に形成されており、集電板21aの一部の領域には、正極活物質層21bが形成されていない。正極活物質層21bには、正極活物質、導電剤および結着剤などが含まれている。
【0029】
負極素子22は、集電板22aと、集電板22aの表面に形成された負極活物質層22bとを有する。負極活物質層22bは、集電板22aの両面に形成されており、集電板22aの一部の領域には、負極活物質層22bが形成されていない。負極活物質層22bには、負極活物質、導電剤および結着剤などが含まれている。集電板21a,22aは、アルミニウムや銅といった金属で形成することができる。
【0030】
正極素子21、負極素子22およびセパレータ23を図3に示すように積層し、この積層体を巻くことにより、図2に示す発電要素20が得られる。図2において、発電要素20の領域Aは、正極活物質層21bおよび負極活物質層22bが互いに重なっている領域である。
【0031】
図2に示す発電要素20の一端(領域Aの左側)には、正極素子21の集電板21aだけが巻かれた領域、言い換えれば、正極活物質層21bが形成されていない領域がある。図2に示す発電要素20の他端(領域Aの右側)には、負極素子22の集電板22aだけが巻かれた領域、言い換えれば、負極活物質層22bが形成されていない領域がある。
【0032】
図2に示すように、発電要素20の一端に位置する集電板21a(正極素子21)は、正極タブ24を介して正極端子31と電気的に接続される。正極タブ24は、集電板21aに溶接されているとともに、正極端子31に溶接されている。発電要素20の他端に位置する集電板22a(負極素子22)は、負極タブ25を介して負極端子32と電気的に接続される。負極タブ25は、集電板22aに溶接されているとともに、負極端子32に溶接されている。
【0033】
本実施例では、正極素子21、負極素子22およびセパレータ23の積層体を巻くことにより、発電要素20を構成しているが、これに限るものではない。具体的には、発電要素20は、正極素子21、負極素子22およびセパレータ23を積層しただけの構成であってもよい。
【0034】
次に、二次電池1の製造方法について、簡単に説明する。
【0035】
まず、上述したように発電要素20を用意しておき、発電要素20をケース本体11に収容する。そして、ケース本体11の開口部11aに蓋12を溶接する。ケース10の内部を密閉状態とした後は、ケース10の内部に電解液を充填した後、ケース10に形成された電解液の充填口を塞ぐ。これにより、二次電池1が得られる。
【0036】
次に、ケース本体11および蓋12を溶接する処理について説明する。本実施例では、ケース本体11および蓋12にレーザ光を照射することによって、ケース本体11および蓋12を溶接している。図4に示すように、レーザ照射装置100からは、ケース本体11および蓋12に対してレーザ光Lが照射される。図4に示す構成では、レーザ照射装置100は固定されており、レーザ照射装置100は、レーザ光Lの照射方向を変更することにより、ケース本体11および蓋12の溶接部分に対してレーザ光Lを到達させている。
【0037】
レーザ照射装置100は、光源と、光源から射出した光を集光させる光学系とで構成することができる。ここで、光学系の焦点距離を変更することにより、ケース本体11や蓋12に到達するレーザ光Lの径を変更することができる。これにより、所望の領域だけにレーザ光Lを到達させることができる。光学系の焦点距離を変更するための構成としては、光学系内の一部のレンズを光軸方向に移動させる構成や、光学系内の一部のレンズを切り替えたりする構成を用いることができる。
【0038】
本実施例では、レーザ照射装置100を固定しているが、レーザ照射装置100を移動させることもできる。具体的には、蓋12と平行な二次元平面内において、レーザ照射装置100を移動させながら、レーザ光Lを照射することができる。
【0039】
次に、レーザ光Lの照射方法について、図5から図7を用いて説明する。図5から図7は、ケース本体11および蓋12の溶接部分を示す拡大図である。図5から図7に示すように、蓋12の外面には、溝12aが形成されており、溝12aよりも蓋12の外縁側に位置する領域Rは、溶接部分となる。図5に示すCLは、蓋12およびケース本体11のクリアランスを示す。
【0040】
まず、レーザ照射装置100は、図5に示すように、蓋12の領域Rに対してレーザ光Lを照射する。ここで、レーザ照射装置100は、上述したように、レーザ光Lの径を調節することができるため、蓋12の領域Rだけにレーザ光Lを到達させることができる。蓋12に溝12aを形成し、領域Rを設けることにより、領域Rにレーザ光Lを集中させて、領域Rの溶融を効率良く行うことができる。
【0041】
蓋12の領域Rは、蓋12の外縁に沿って形成されているため、レーザ照射装置100は、蓋12の外縁に沿ってレーザ光Lを移動させる。蓋12の領域Rにレーザ光Lを照射することにより、蓋12の領域Rを溶融させることができる。蓋12の領域Rを溶融させれば、蓋12の溶融部分をケース本体11に近づけることができ、蓋12およびケース本体11のクリアランスCLを小さくすることができる。
【0042】
次に、レーザ照射装置100は、図6に示すように、ケース本体11に対してレーザ光Lを照射する。上述したように、レーザ照射装置100は、ケース本体11だけにレーザ光Lを到達させることができる。そして、レーザ照射装置100は、ケース本体11の開口部11aに沿ってレーザ光Lを移動させる。これにより、ケース本体11の上部を溶融させることができ、ケース本体11の溶融部分を、蓋12の溶融部分に接触させることができる。
【0043】
次に、レーザ照射装置100は、図7に示すように、蓋12の溶融部分とケース本体11の溶融部分に対して、レーザ光Lを照射する。本実施例では、図7で照射されるレーザ光Lの径は、図5および図6で照射されるレーザ光Lの径よりも大きい。ここでいうレーザ光Lの径は、ケース本体11や蓋12に到達したときのレーザ光Lの径である。
【0044】
蓋12およびケース本体11の溶融部分にレーザ光Lを照射することにより、蓋12およびケース本体11の溶融部分を増加させて、蓋12およびケース本体11を溶接することができる。図7に示すレーザ光Lの照射処理では、蓋12の溶融部分およびケース本体11の溶融部分が互いに接触しているため、レーザ光Lが蓋12およびケース本体11のクリアランスを通過するのを阻止することができる。
【0045】
図7に示す照射状態は、レーザ光Lが一点に集光する手前の状態において、蓋12およびケース本体11の溶融部分に到達しているが、これに限るものではない。具体的には、蓋12およびケース本体11の溶融部分の表面上において、レーザ光Lを一点に集光させることができる。レーザ光Lを集光させるほど、エネルギ密度を高めることができ、蓋12およびケース本体11の溶け込み深さを増加させることができる。
【0046】
ここで、蓋12およびケース本体11の溶融部分の全体に対して、図7に示すレーザ光Lを照射することにより、蓋12およびケース本体11の溶融部分を増加させた後に、一点に集光させた状態のレーザ光Lを蓋12およびケース本体11の溶融部分に到達させることができる。
【0047】
図5から図7で説明したレーザ光Lの照射方法では、蓋12にレーザ光Lを照射してから、ケース本体11にレーザ光Lを照射しているが、これに限るものではない。具体的には、ケース本体11にレーザ光Lを照射した後に、蓋12にレーザ光Lを照射することができる。
【0048】
本実施例によれば、蓋12およびケース本体11のそれぞれを溶融させて、溶融部分を互いに接触させた後に、蓋12およびケース本体11の溶融部分にレーザ光Lを照射しているため、レーザ光Lが蓋12およびケース本体11のクリアランスを通過するのを防止することができる。これにより、レーザ光Lが、ケース10に収容された発電要素20に到達するのを阻止することができる。
【0049】
蓋12およびケース本体11に対してレーザ光Lを同時に照射すると、レーザ光Lの一部が蓋12およびケース本体11のクリアランスを通過してしまう。この場合には、レーザ光Lの一部は、溶接に用いられず、レーザ光Lのエネルギが無駄になってしまう。これに対して、本実施例では、蓋12およびケース本体11に対して、無駄なくレーザ光Lを照射することができる。
【0050】
ここで、レーザ光Lがケース10の内部に進入しないように、ケース本体11の内壁面の形状を適宜設定することが考えられる。この場合には、ケース本体11の加工が複雑になってしまう。本実施例では、ケース本体11の内壁面を平坦な面で構成しながらも、レーザ光Lがケース10の内部に進入するのを防止することができる。
【0051】
本実施例では、二次電池1のケース10について説明しているが、これに限るものではない。具体的には、二次電池1の代わりに、一次電池や電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。また、本実施例では、いわゆる角型の二次電池1について説明しているが、いわゆる円筒型の二次電池であっても、本発明を適用することができる。すなわち、円筒状のケース本体に蓋を溶接する場合において、本発明を適用することができる。
【0052】
本実施例では、二次電池1のケース10を溶接する場合について説明したが、これに限るものではない。すなわち、ケース10の内部に収容する物は、発電要素20に限るものではない。具体的には、本実施例と同様の構成を有するケース本体11および蓋12を用いるのであれば、本発明を適用することができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施例2である溶接方法について説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。実施例1(図5〜図7参照)では、レーザ光Lを3回に分けて照射しているが、本実施例では、レーザ光Lの照射回数を1回としている。以下、本実施例について、具体的に説明する。
【0054】
本実施例のレーザ照射装置100は、図8に示すように、3つのレーザ光L1〜L3を同時に照射している。図8は、二次電池1の上方から、ケース本体11および蓋12を見たときの図である。
【0055】
レーザ光L1は、蓋12に照射されており、蓋12の溶融に用いられる。レーザ光L2は、ケース本体11に照射されており、ケース本体11の溶融に用いられる。レーザ光L3は、レーザ光L1による蓋12の溶融部分と、レーザ光L2によるケース本体11の溶融部分に対して照射され、蓋12およびケース本体11の溶融に用いられる。
【0056】
3つのレーザ光L1〜L3は、図8に示す位置関係を保ちながら、矢印Dの方向に移動する。すなわち、3つのレーザ光L1〜L3は、ケース本体11の開口部11aに沿って移動する。本実施例において、レーザ光L1,L2は、同一の径を有しており、レーザ光L3は、各レーザ光L1,L2の径よりも大きな径を有している。なお、レーザ光L1〜L3の径は、溶融すべき領域に基づいて、適宜設定することができる。
【0057】
3つのレーザ光L1〜L3は、レーザ照射装置100に3つの光源を設けることにより、生成することができる。また、1つの光源から射出したレーザ光を、3つのレーザ光L1〜L3に分割することもできる。
【0058】
本実施例では、レーザ光L1,L2が蓋12およびケース本体11をそれぞれ溶融させることにより、蓋12の溶融部分およびケース本体11の溶融部分を互いに接触させることができ、蓋12およびケース本体11のクリアランスCLを無くすことができる。また、レーザ光L3を用いることにより、蓋12およびケース本体11の溶融部分を増加させることができる。図8に示す領域Mは、蓋12およびケース本体11が溶融した領域を示している。
【0059】
本実施例によれば、3つのレーザ光L1〜L3を用いることにより、1回の照射処理によって、蓋12およびケース本体11を溶接することができる。また、実施例1と同様に、レーザ光L1は蓋12だけに照射され、レーザ光L2はケース本体11だけに照射されるため、レーザ光L1,L2がクリアランスCLを通過してしまうことはない。また、蓋12およびケース本体11の溶融部分が互いに接触している状態において、レーザ光L3が照射されるため、レーザ光L3がケース10の内部に進入することもない。
【0060】
本実施例では、図8に示すように、レーザ光L1,L2の照射位置が互いに隣り合う位置となっているが、これに限るものではない。例えば、蓋12およびケース本体11の溶融時間に差が発生するときには、図9に示すように、レーザ光L1,L2の照射位置を移動方向Dにおいて、ずらすことができる。具体的には、溶融時間が長い部材には、溶融時間が短い部材よりも早いタイミングにおいて、レーザ光を照射させることができる。この場合には、すべてのレーザ光L1〜L3が、移動方向Dにおいて、互いにずれることになる。なお、図9に示す例では、レーザ光L1よりも早いタイミングでレーザ光L2が到達する構成となっているが、逆の構成であってもよい。
【0061】
本実施例では、蓋12やケース本体11に到達した各レーザ光L1〜L3の形状が円形に形成されているが、これに限るものではない。レーザ光L1〜L3の形状は、適宜設定することができる。実施例1で説明したレーザ光Lについても同様である。なお、レーザ光L1〜L3の形状が円形であれば、光源から射出した光を効率良く蓋12やケース本体11に到達させやすくなる。
【実施例3】
【0062】
本発明の実施例3である溶接方法について説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例は、蓋12およびケース本体11の溶接領域(言い換えれば、溶け込み深さ)を増大させるものである。
【0063】
まず、蓋12の外縁(エッジ)をケース本体11の内壁面に接触させる。そして、蓋12およびケース本体11の接触部分に対して、図10に示すように、第1レーザ光L4を照射する。ここで、第1レーザ光L4は、一点に集光する前の状態において、蓋12およびケース本体11に到達している。
【0064】
蓋12およびケース本体11に対して第1レーザ光L4を同時に照射することにより、蓋12およびケース本体11を同時に溶融させることができる。ここで、第1レーザ光L4は、一点に集光する前の状態で、蓋12およびケース本体11に到達しているため、このときの第1レーザ光L4のエネルギ密度は、第1レーザ光L4が一点に集光したときのエネルギ密度よりも低くなる。このため、蓋12およびケース本体11を溶融させることはできても、十分な溶け込み深さを確保しにくい。
【0065】
そこで、本実施例では、第1レーザ光L4を照射して蓋12およびケース本体11を溶融させた後に、図11に示すように、蓋12およびケース本体11の溶融部分に対して、第2レーザ光L5を照射している。
【0066】
第2レーザ光L5は、蓋12およびケース本体11の溶融部分における表面上の一点で集光するようになっている。このように、溶融部分の表面上の一点に対して第2レーザ光L5を集光させることにより、最も高いエネルギ密度を有する第2レーザ光L5を溶融部分に到達させることができる。これにより、第2レーザ光L5の照射方向において、蓋12およびケース本体11の溶け込み深さを確保することができる。
【0067】
上述したように、2つのレーザ光L4,L5を使い分けることにより、蓋12およびケース本体11の溶接領域を増大させることができる。すなわち、蓋12およびケース本体11の溶接部分における強度を向上させることができる。
【0068】
蓋12およびケース本体11に対して、第2レーザ光L5だけを照射すると、蓋12およびケース本体11に到達する第2レーザ光L5の面積が不十分となりやすい。すなわち、第2レーザ光L5は、エネルギ密度が最も高くなるが、第2レーザ光L5の到達する領域が制限されてしまう。
【0069】
この場合には、図12に示すように、蓋12やケース本体11を溶融させることができても、蓋12の溶融部分と、ケース本体11の溶融部分とを互いに接触させることができないおそれがある。特に、蓋12およびケース本体11の間に僅かなクリアランスが存在していれば、蓋12の溶融部分と、ケース本体11の溶融部分とを互いに接触させにくくなる。これにより、蓋12およびケース本体11の溶接が不十分となってしまう。
【0070】
一方、レーザ光L4,L5を照射する順序を、本実施例の照射順序と逆にしても、蓋12およびケース本体11の溶接領域を増大させることはできない。すなわち、第2レーザ光L5を最初に照射したときには、図12を用いて説明したように、蓋12およびケース本体11の溶接が不十分となる。このような状態において、第1レーザ光L4を照射したとしても、蓋12およびケース本体11の表面部分だけを溶融させることができるだけであり、十分な溶け込み深さを確保し難くなる。
【符号の説明】
【0071】
1:二次電池(蓄電素子) 10:ケース
11:ケース本体 11a:開口部
12:蓋 12a:溝
20:発電要素 21:正極素子
21a:集電板 21b:正極活物質層
22:負極素子 22a:集電板
22b:負極活物質層 23:セパレータ
24:正極タブ 25:負極タブ
31:正極端子 32:負極端子
33:安全弁 100:レーザ光照射装置
L,L1〜L5:レーザ光 CL:クリアランス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容するケース本体の開口部の内側に、前記開口部に対してクリアランスを設けた状態で蓋を配置するステップと、
前記蓋の外縁および前記開口部の一方を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、
前記蓋の外縁および前記開口部の他方を、第2レーザ光の照射によって溶融させて、前記一方の溶融部分と接触させるステップと、
溶融状態にある前記蓋の外縁および前記開口部を、第3レーザ光の照射によって更に溶融させるステップと、
を有することを特徴とするケースの溶接方法。
【請求項2】
前記第1レーザ光、前記第2レーザ光および前記第3レーザ光を、互いに異なる期間に照射することを特徴とする請求項1に記載のケースの溶接方法。
【請求項3】
前記第1レーザ光、前記第2レーザ光および前記第3レーザ光を、同時に照射することを特徴とする請求項1に記載のケースの溶接方法。
【請求項4】
前記蓋および前記開口部に到達した前記第3レーザ光の径は、前記蓋および前記開口部のそれぞれに到達した前記第1レーザ光および前記第2レーザ光の径よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のケースの溶接方法。
【請求項5】
前記第3レーザ光は、前記第1レーザ光および前記第2レーザ光よりもエネルギ密度が高いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のケースの溶接方法。
【請求項6】
前記ケース本体の内壁面が平坦面であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のケースの溶接方法。
【請求項7】
対象物を収容するケース本体の開口部の内側に蓋を配置するステップと、
前記開口部および前記蓋の接触部分を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、
溶融状態にある前記開口部および前記蓋に対して、前記第1レーザ光よりもエネルギ密度の高い第2レーザ光を照射して溶融させるステップと、
を有することを特徴とするケースの溶接方法。
【請求項8】
前記開口部および前記蓋に到達した前記第2レーザ光の径は、前記開口部および前記蓋に到達した前記第1レーザ光の径よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載のケースの溶接方法。
【請求項9】
前記第2レーザ光は、前記開口部および前記蓋の表面上の一点に集光していることを特徴とする請求項8に記載のケースの溶接方法。
【請求項10】
前記対象物は、二次電池の内部に設けられ、充放電を行う発電要素であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載のケースの溶接方法。
【請求項11】
充放電を行う発電要素がケース本体に収容され、前記ケース本体の開口部が蓋で塞がれた蓄電素子の製造方法であって、
前記発電要素を前記ケース本体に収容するステップと、
前記開口部の内側に、前記開口部に対してクリアランスを設けた状態で前記蓋を配置するステップと、
前記蓋の外縁および前記開口部の一方を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、
前記蓋の外縁および前記開口部の他方を、第2レーザ光の照射によって溶融させて、前記一方の溶融部分と接触させるステップと、
溶融状態にある前記蓋の外縁および前記開口部を、第3レーザ光の照射によって更に溶融させるステップと、
を有することを特徴とする蓄電素子の製造方法。
【請求項12】
充放電を行う発電要素がケース本体に収容され、前記ケース本体の開口部が蓋で塞がれた蓄電素子の製造方法であって、
前記発電要素を前記ケース本体に収容するステップと、
前記開口部の内側に前記蓋を配置するステップと、
前記開口部および前記蓋の接触部分を、第1レーザ光の照射によって溶融させるステップと、
溶融状態にある前記開口部および前記蓋に対して、前記第1レーザ光よりもエネルギ密度の高い第2レーザ光を照射して溶融させるステップと、
を有することを特徴とする蓄電素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−130946(P2012−130946A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285754(P2010−285754)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】