説明

コアスリーブを有する電磁弁およびコアスリーブを溶接する方法

本発明は、弁要素(4)を縦方向に変位可能に配置したコアスリーブ(3)と、コアスリーブ(3)を包囲係合し、外側から設けられる溶接部(13)によってコアスリーブ(3)と結合される少なくとも1つのケーシングスリーブ(11)とを備える電磁弁に関する。溶接部(13)が、ケーシングスリーブ(11)の1つの周部分または複数の周部分にわたって少なくとも1つの溶接されない領域(19)を設けて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁要素を縦方向に変位可能に配置したコアスリーブと、コアスリーブを包囲係合し、外側から設けられる溶接部によってコアスリーブと結合される少なくとも1つのケーシングスリーブとを備える電磁弁に関する。本発明は、さらに溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の電磁弁は既知である。例えば、自動車のブレーキシステムなどの液圧装置の制御および調整弁として、弁要素を縦方向に変位可能に配置したコアスリーブを備える電磁弁が使用され、コアスリーブはケーシングスリーブによって包囲係合される。ケーシングスリーブは、一般に薄板からなり、この薄板は、一般に鋼からなるコアスリーブに溶接され、2つの部分は相互に解除不能に結合される。この溶接により、コスト高な結合要素を省略することができる。溶接は、一般に外周にわたって周方向に溶接継ぎ目が幾分オーバラップした状態で、すなわち、周方向に角度>360°にわたって行われる。溶接時には、エネルギー供給により溶接継ぎ目を形成するためにコアスリーブとケーシングスリーブとは互いに直接に接触する必要がある。溶接したいコアスリーブと共に溶接装置に沿ってケーシングスリーブを周方向に旋回させて溶接部を形成するか、または溶接装置を電磁弁の周囲で移動させなければならない。この場合に、コアスリーブとケーシングスリーブとの相互配置に関して高い精度が要求され、同様に周方向の溶接には回転が必要であり、構造的な観点でも、必要とされる加工時間の観点でも手間がかかる。
【発明の概要】
【0003】
本願発明で有利なことは、加工時間を低減でき、必要とされる加工精度を実現できることである。このために、弁要素を縦方向に変位可能に配置したコアスリーブと、コアスリーブを包囲係合し、外側から設けられる溶接部によってコアスリーブと結合される少なくとも1つのケーシングスリーブとを備える電磁弁が提案される。この場合、溶接部は、ケーシングスリーブの1つの周部分または複数の周部分にわたって少なくとも1つの溶接されない領域を設けて形成されている。したがって、従来技術とは異なり、溶接部は、環状に、または周方向にオーバラップして(角度>360°)設けられるのではなく、ケーシングスリーブの1つの周部分または複数の周部分にわたって設けられる。したがって、溶接部は、連続的に形成されるのではなく、少なくとも1つの溶接されない領域を設けて形成される。この場合、特にケーシングスリーブの複数の周部分が溶接され、複数の周部分が溶接されない領域として形成される。すなわち、例えば、周方向に見て、溶接部には溶接されない領域が続き、この溶接されない領域には再び溶接部が続き、この溶接部には再び溶接されない領域が続いている。これにより、必要とされる加工時間が著しく低減される。同時に、コアスリーブとケーシングスリーブとの間には使用の際にも耐久性のある結合部が構成される。
【0004】
好ましくは、溶接部はレーザ溶接部として形成されており、したがって、溶接部はレーザ溶接装置によって外側から設けられる。
【0005】
好ましい実施形態では、溶接されていない領域ではコアスリーブとケーシングスリーブとの間の半径方向間隔が、溶接部を備える少なくとも1つの隣接する溶接された領域よりも大きい。この実施形態では、コアスリーブとケーシングスリーブとの間の半径方向間隔が極めて小さい領域よりも大きい領域では、ケーシングスリーブにエネルギーが供給されることによって不都合な熱負荷が生じることや、またはケーシングスリーブが、例えば燃焼によって破壊されるまでの損傷が生じることなしに、コアスリーブとケーシングスリーブとを信頼性良く溶接することが可能である。
【0006】
このようにより大きい半径方向間隔は、例えば、電磁弁によって接続された媒体によりコアスリーブを洗浄することが必要な場合、または形状適合のために、例えばコアスリーブをガイドするために直径を低減することが望ましい場合に必要である。例えば、任意の方向、好ましくは軸線方向に設けた面取り部または所定の溝の形態で、単に円形横断面形状とは異ならせることによって、このような直径の低減を行ってもよい。拡大された半径方向間隔の配置に応じて、ケーシングスリーブの軸線方向に見て、例えば、溶接されていない領域および溶接部を同じ軸線方向高さに配置するのではなく、例えば、異なる軸線方向高さまたは複数の軸線方向高さに配置することも可能である。
【0007】
さらに、弁要素を縦方向に変位可能に配置した、電磁弁のコアスリーブと、コアスリーブを包囲係合する、電磁弁のケーシングスリーブとを溶接するための方法が提案され、コアスリーブとケーシングスリーブとを結合するための溶接部は外側から設けられる。この場合、ケーシングスリーブの1つの周部分または複数の周部分にわたって少なくとも1つの溶接されていない領域を残して溶接部が設けられる。したがって、溶接は周にわたって連続的に環状に行うのではなく、部分的に、すなわち、ケーシングスリーブの少なくとも1つの周部分が溶接部を備え、ケーシングスリーブの少なくとも1つの別の周部分が溶接されない、すなわち、溶接されていない領域を備えるように構成されている。
【0008】
別の好ましい実施形態では、溶接部はレーザ溶接部として構成されている。
【0009】
他の有利な実施形態が従属請求項およびこれら組み合わせから生じる。
【0010】
次に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電磁弁の部分的な縦断面図である。
【図2】電磁弁の溶接領域を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、電磁弁1、すなわち、非通電状態で開放されたいわゆる吸入弁2である。電磁弁1はコアスリーブ3を備え、コアスリーブ3の内部には弁要素4が縦方向に変位可能に配置されており、弁要素4は、端面に弁プランジャ6を備える磁気アンカ5として構成されており、弁プランジャ6は、弁体7の半径方向中央に軸線方向に配置された弁座8と協働して電磁弁1を開閉する。この場合、磁気アンカ5は、磁気アンカ5に関して弁プランジャ6の反対側に磁気アンカ5に配置された磁極コア9によって操作され、磁極コア9は、ここには図示しない電磁弁のコイル体によって少なくとも部分的に係合され、磁気アンカ5を操作するための磁力を伝達し、これにより弁プランジャ6を開放するか、または電磁弁1において図示しない媒体の容積流を遮断するための役割を果たす。外部に対するシールのために、電磁弁はケーシング10によって包囲されており、ケーシング10は、ケーシングスリーブ11におけるコアスリーブ3の領域で、軸線方向に見てほぼ弁プランジャ6の領域でケーシングスリーブに結合された、図示しない弁ブロック内に電磁弁1を組み込むためのケーシング終端部12を備える。コアスリーブ3にケーシングスリーブ11を耐圧性を確保して固定するために、断面線A−Aの領域に溶接部13が形成されており、この溶接部13は、外側からコアスリーブ3の上方でケーシングスリーブ11に被せられるレーザ溶接部14として構成されている。溶接部13によって、ハウジングスリーブ11は図示の位置でコアスリーブ3に溶接されている。
【0013】
図2は、図1に示した断面線A−Aの領域における電磁弁1の横断面図を示す。ケーシングスリーブ11はコアスリーブ3を包囲係合し、ケーシングスリーブ内壁15はコアスリーブ外壁16に対して極めて小さい間隔をもって、好ましくは直接に接触した状態で向かい合っている。軸線方向に12時の位置に示すように、コアスリーブ3に、すなわち、コアスリーブ外壁16には、半径方向内側に中央18に向けて溝17が設けられている。ケーシングスリーブ11とコアスリーブ3との間には、例えば、ほぼ1時位置から11時位置に至る間の領域で溶接部13が外側からレーザ溶接部14として形成され、これにより、コアスリーブ3とハウジングスリーブ11とはこの領域で相互に溶接される。ほぼ11時位置と1時位置との間には、溝17の領域をいわば除いておいて、溶接されない領域19が形成されている。この溶接されない領域19の領域では、ケーシングスリーブ11にエネルギー供給が行われない(レーザ溶接は、コアスリーブ3に熱による作用を及ぼして外側からケーシングスリーブ11を通過して行われる。)このようにして、断面A−Aの領域、特に溝17の領域、すなわち、コアスリーブ3がケーシングスリーブ11の内側幾何学形状とは異なっている領域では、ケーシングスリーブ11の熱による損傷、特に燃焼が極めて有利に防止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁要素(4)を縦方向に変位可能に配置したコアスリーブ(3)と、該コアスリーブ(3)を包囲係合し、外側から設けられる溶接部(13)によってコアスリーブ(3)と結合される少なくとも1つのケーシングスリーブ(11)とを備える電磁弁(1)において、
前記溶接部(13)が、前記ケーシングスリーブ(11)の1つの周部分または複数の周部分にわたって少なくとも1つの溶接されない領域(19)を設けて形成されていることを特徴とする、電磁弁(1)。
【請求項2】
前記溶接部(13)が、レーザ溶接部(14)として形成されている、請求項1に記載の電磁弁(1)。
【請求項3】
前記溶接されていない領域(19)では、前記コアスリーブ(3)と前記ケーシングスリーブ(11)との間の半径方向間隔が、前記溶接部(13)を備える少なくとも1つの隣接する溶接された領域よりも大きい、請求項1または2に記載の電磁弁(1)。
【請求項4】
弁要素(4)を縦方向に変位可能に配置した、電磁弁(1)のコアスリーブ(3)と、該コアスリーブ(3)を包囲係合する、電磁弁(1)のケーシングスリーブ(11)とを溶接するための方法であって、前記コアスリーブ(3)と前記ケーシングスリーブ(11)とを結合するための溶接部(13)が外側から設けられる方法において、
前記ケーシングスリーブ(11)の1つの周部分または複数の周部分にわたって少なくとも1つの溶接されていない領域(19)を残して溶接部(13)を設けることを特徴とする、方法。
【請求項5】
前記溶接部(13)をレーザ溶接部(14)として形成する、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516583(P2013−516583A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547464(P2012−547464)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067350
【国際公開番号】WO2011/082869
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】