説明

コネクタ組立部構造及び該構造を有する減速機付モータ

【課題】ギヤボックス外側に出っ張るケースに対して、外部からの衝撃があっても、衝撃を吸収して、破壊を防ぐことのできる取付構成を提供する。
【解決手段】電源線或いは信号線の端部が固定されたコネクタハウジングに、この電源線或いは信号線と接続されるべき電源線或いは信号線の端部を固定したコネクタケースを嵌合して固定する。コネクタハウジング側面からコネクタケースへ挿入される複数の固定ピンを有する。コネクタハウジングの周壁には、固定ピンの第一の保持部を固定ピンに対応して複数設ける。コネクタケースの周壁には、コネクタハウジングから挿通される固定ピンの貫通孔を固定ピンに対応して複数設け、かつ、該貫通孔の長さ方向中央部付近において固定ピンをコネクタケースと固定するための第二の保持部を設ける。コネクタケースの第二の保持部を除く貫通孔内径は、固定ピン外径よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源線或いは信号線の端部が固定されたコネクタハウジングに、それと接続されるべき電源線或いは信号線の端部を固定したコネクタケースを嵌合して固定したコネクタ組立部構造、及び該構造を有する減速機付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、特許文献1に開示の減速機付モータを例示する図であり、(A)は、減速機付モータの全体構成を示し、(B)は、そのコネクタケース取付部の構成を示している。図示のハウジングには、駆動モータと、そのモータ出力軸に形成されたウォームと、それに噛合するヘリカルギヤが収容されている。このモータ出力軸の半径方向でハウジング外に、磁気センサを構成するホールICが2個設けられる。2個のホールICは基板に組み込まれ、更に、この基板はケースに内蔵される。ケースは、ハウジング外面に固定され、ケースの一端がハウジングにビスで螺合締め付けられる。また、ケースは、ハウジングに対して一対の熱かしめにより固定されている。各ホールICからのパルス信号は、基板上のターミナルからケース外部に送出される。
【0003】
このような減速機付モータのコネクタのように、ギヤボックス外側に出っ張る部分が大きいほど外部からの衝撃による破壊が発生しやすくなるという問題がある。例示の構成は、ケースをハウジングに対して2箇所で突起(ボス)を熱かしめすることにより強固に固定することができるものの、ギヤボックス外側に出っ張るコネクタケースに対して、外部からの衝撃があった際には、破壊が発生しやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3066376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、係る問題点を解決して、ギヤボックス外側に出っ張るコネクタケースに対して、外部からの衝撃があっても、衝撃を吸収して、破壊を防ぐことのできる取付構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタ組立部構造は、一つ以上の電源線或いは信号線の端部が固定されたコネクタハウジングに、電源線或いは信号線と接続されるべき電源線或いは信号線の端部を固定したコネクタケースを嵌合して固定する。コネクタハウジング側面からコネクタケースへ挿入される複数の固定ピンを有する。コネクタハウジングの周壁には、固定ピンの第一の保持部を固定ピンに対応して複数設ける。コネクタケースの周壁には、コネクタハウジングから挿通される固定ピンの貫通孔を固定ピンに対応して複数設け、かつ、該貫通孔の長さ方向中央部付近において固定ピンをコネクタケースと固定するための第二の保持部を設ける。コネクタケースの第二の保持部を除く貫通孔内径は、固定ピン外径よりも大きくする。
【0007】
また、本発明のコネクタ組立部構造を有する減速機付モータは、モータ部と減速機部が一体に組み立てられ、かつ、該減速機部を構成する各部品を収容した樹脂製のギヤボックスに、電源線或いは信号線若しくはその両方を接続するためのコネクタ用のケースを固定する。樹脂により一体成形されるギヤボックスは、コネクタ用のケースを収容して取り付けるための開口部を有し、かつ、この開口部の相対する両壁面のそれぞれに開けた複数個のギヤボックス穴を有する。コネクタ用のケースはギヤボックス開口部内に入り込んで固定される嵌合部を備えて、該嵌合部には、ギヤボックス穴に対応した位置において、それを貫通するよう開けた複数個の貫通孔を有し、かつ、該貫通孔は、挿入される固定ピンの長さ方向の中央にピン固定部及びその長さ方向の両側にそれぞれ、固定ピンの外径よりも大きな内径のピン逃がし部を有する。コネクタ用のケースをギヤボックス開口部に挿入した状態で、連通したギヤボックス穴及び貫通孔に固定ピンを挿入することによりケースをギヤボックスに固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ギヤボックス外側に出っ張るコネクタ用のケースに対して、外部からの衝撃があっても、固定ピンによって衝撃を吸収して、破壊を防ぐことができる。固定ピンの弾性変形による衝撃吸収効果が全方向について得られるため強度が向上する。また、コネクタ周辺近くで固定ピンを固定する穴を設けることが可能であり、これによって、コネクタ内部の空間を広くして、内部構造の設計に制約が発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を具体化した減速機付モータの一部断面図である。
【図2】図1に示した減速機付モータの斜視図である。
【図3】コネクタケースを組立前の状態で示す減速機付モータの全体構成を示す斜視図である。
【図4】図3とは異なる方向から見た一部断面で示す斜視図である。
【図5】(A)は、固定ピンを挿入していない状態のコネクタケース単独の一部断面の斜視図であり、(B)は、ギヤケース開口部に嵌合した後、固定ピンを挿入した状態で示す一部断面の斜視図である。
【図6】ECUボックスのような別のケースを取り付けた場合を例示する図である。
【図7】特許文献1に開示の減速機付モータを例示する図であり、(A)は、減速機付モータの全体構成を示し、(B)は、そのコネクタケース取付部の構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化した減速機付モータの一部断面図であり、図2は、同じ減速機付モータの斜視図を示している。この減速機付モータは、モータ部と、減速機部が一体に組み立てられたものである。金属材料により有底中空筒状に形成されたモータケースの開口部は、樹脂製のエンドベルが嵌着されて、それによって閉じられている。モータ部自体は、コミテータ及び一対のブラシを備える通常の、直流小型モータを用いることができ、このコミテータに接触する一対のブラシに接続された一対のモータ入力端子が、電気的接続のためにエンドベルを貫通してモータ部外部に突出している。
【0011】
このモータ部に取付ボルトを介して取り付けられる減速機部は、モータ部から延長した回転シャフトに固定したウォーム、及びこれに噛み合うヘリカルギヤによって構成されるウォームホイール等の構成部品を樹脂製のギヤボックス内に収容している。モータ部のモータを駆動したときに、モータ回転シャフトが回転し、この回転はウォームを介してウォームホイールを減速回転させ、これは次に、緩衝部材等を介して出力軸を回転させる。そして、この出力軸の回転により、例えば、図示しない駆動手段を介して自動車の窓ガラスを開閉することができる。以上のモータ部及び減速機部の構成は、通常の構成のものである。
【0012】
さらに、図1及び図2に例示のギヤボックス(コネクタハウジング)には、それに結合されるコネクタケースが固定される。コネクタケースは、一対のモータ入力端子に接続されるコネクタ端子を内部に取り付けている。このコネクタケースには、着脱自在のコネクタが外部より挿入可能に構成されている。コネクタがコネクタケース内部に挿入されたときには、外部よりの電源がコネクタ端子を介して、モータ入力端子に供給可能になっている。本発明は、このようなコネクタケースのギヤボックス(コネクタハウジング)への取付構成に特徴を有している。コネクタケースを、減速機部とは別に製造した後に一体に組み合わせることで、減速機部自体は標準品にした上で、コネクタケースとして、多様な構成(例えば、図6を参照して後述するECUボックス)を採用することが可能となる。
【0013】
図3及び図4を参照して、コネクタケースのギヤボックスへの取付構成を説明する。図3は、コネクタケースを組立前の状態で示す減速機付モータの全体構成を示す斜視図である。図4は、図3とは異なる方向から見た斜視図であり、一部断面で示している。樹脂により一体成形されるギヤボックスは、コネクタケースを収容して取り付けるための開口部を上部に有している。開口部は、モータ回転シャフト軸方向に伸びる平行した両壁面と、それと直交する方向に伸びる平行した両壁面により、上部より見て矩形状に構成されている。そして、このモータ回転シャフト軸方向に平行した両壁面のそれぞれに対して、中央部を避けてその両端近くに、固定ピンの第一の保持部として2個の固定ピン挿入用のギヤボックス穴が開けられている。このギヤボックス穴の内径は、挿入される固定ピン直径よりもわずかに小さく形成されて、固定ピンは圧入固定されることになる。
【0014】
コネクタケースは、ギヤボックス開口部内に入り込んで固定される嵌合部と、コネクタケースのギヤボックス開口部への挿入を停止させて位置決めする台座部と、外部からコネクタが挿入されるコネクタ挿入部とを樹脂により一体成形することにより、上部より見て矩形状に構成される。そして、コネクタケース嵌合部には、上記のギヤボックス穴に対応した位置において、それを貫通する貫通孔が開けられている。
【0015】
次に、固定ピン挿入固定部の詳細を、図5を参照して説明する。図5(A)は、固定ピンを挿入していない状態のコネクタケース単独の一部断面の斜視図であり、(B)は、ギヤケース開口部に嵌合した後、固定ピンを挿入した状態で示す一部断面の斜視図である。コネクタケース嵌合部に開けられた貫通孔(2個として例示)は、それぞれ、固定ピン長さ方向のほぼ中央に、固定ピンの第二の保持部としてのピン固定部を有し、かつ、このピン固定部の長さ方向の両側にそれぞれピン逃がし部を有している。ピン固定部は、固定ピンを圧入固定するために、例えば鉄材のような、金属製の丸棒形状或いは角形状に構成される固定ピンの外径よりもわずかに小さな内径を有している。これに対して、ピン逃がし部は、固定ピンの外径よりも大きな内径を有している。
【0016】
コネクタケースの嵌合取付に際しては、図5(B)に示すように、ギヤボックス開口部壁面上部に、コネクタケース台座部の周辺下面が係止される位置まで、コネクタケースを挿入する。この状態で、開口部両側の壁面に設けられたギヤボックス穴と、コネクタケース台座部に設けた貫通孔は、連通した状態に位置決めされる。この連通したギヤボックス穴及び貫通孔に、固定ピンを挿入する。上述したように、ギヤボックス穴及びピン固定部のそれぞれの内径はいずれも、固定ピン直径よりもわずかに小さく形成されているので、固定ピンを圧入した際には、固定ピンは、ギヤボックス開口部の両壁面と、ピン固定部で固定されることになる。そして、ピン逃がし部の内径を固定ピン直径よりも大きくして、そこに固定ピン変形の余裕を持たせているので、コネクタケースに外部より衝撃を加えられた際には、金属製固定ピンの弾性変形による衝撃吸収効果を得ることで、コネクタの強度向上を図ることが可能となる。また、固定ピンを複数本(2本として例示)とすることで全方向からの衝撃に対する衝撃吸収効果が得られる。さらに、コネクタ内部(中央部)を固定ピンが貫通することを避けることができるため、コネクタの内部構造設計の制約が無くなる。
【0017】
図6は、上述のコネクタケースに代えて、ECUボックスのような別のケースを取り付けた場合を例示している。ここでは、ギヤケース開口部の両壁面にそれぞれ3個の穴を開けて、この3個の穴にそれぞれ連通する3個の貫通孔をECUボックスに開けた点では相違するが、取付構成の詳細は、上述したものと同じにすることができる。ECU(Electronic Control Unit: 電子制御装置)ボックスは、この種の減速機付モータにおいては、周知の制御装置であって、モータとは電源線だけでなく、モータ回転位置の検知信号用などの信号線についても、接続可能に構成されている。さらに、外部から挿入されるコネクタは、ECUボックスに設けたコネクタケースに挿入されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の電源線或いは信号線の端部が固定されたコネクタハウジングに、前記電源線或いは信号線と接続されるべき電源線或いは信号線の端部を固定したコネクタケースを嵌合して固定したコネクタ組立部構造において、
前記コネクタハウジング側面から前記コネクタケースへ挿入される複数の固定ピンを有し、
前記コネクタハウジングの周壁には、前記固定ピンの第一の保持部を前記固定ピンに対応して複数設け、
前記コネクタケースの周壁には、前記コネクタハウジングから挿通される前記固定ピンの貫通孔を前記固定ピンに対応して複数設け、かつ、該貫通孔の長さ方向中央部付近において前記固定ピンを前記コネクタケースと固定するための第二の保持部を設け、
前記コネクタケースの第二の保持部を除く貫通孔内径を、前記固定ピン外径よりも大きくしたことを特徴とするコネクタ組立部構造。
【請求項2】
モータ部と減速機部が一体に組み立てられ、かつ、該減速機部を構成する各部品を収容したギヤボックスに、電源線或いは信号線若しくはその両方を接続するためのコネクタ用のケースを固定するコネクタ組立部構造を有する減速機付モータにおいて、
前記ギヤボックスは、前記コネクタケースを収容して取り付けるための開口部を有し、かつ、この開口部の相対する両壁面のそれぞれに開けた複数個のギヤボックス穴を有し、
前記コネクタケースは、前記ギヤボックスに固定される嵌合部を備えて、該嵌合部には、前記ギヤボックス穴に対応した位置において、それを貫通するよう開けた複数個の貫通孔を有し、かつ、該貫通孔は、挿入される固定ピンの長さ方向のほぼ中央にピン固定部、及びその長さ方向の両側にそれぞれ、前記固定ピンの外径よりも大きな内径のピン逃がし部を有し、
前記コネクタケースを前記ギヤボックス開口部に挿入した状態で、連通した前記ギヤボックス穴及び前記貫通孔に前記固定ピンを挿入することにより前記コネクタケースを前記ギヤボックスに固定したことから成る減速機付モータ。
【請求項3】
前記コネクタケースは、モータ入力端子に接続されるコネクタ端子を内部に取り付けて、着脱自在のコネクタが外部より挿入可能に構成されている請求項2に記載の減速機付モータ。
【請求項4】
前記コネクタケースは、モータ入力端子に接続されるコネクタ端子に加えて、信号線のためのコネクタ端子を内部に取り付けたECUボックスである請求項2に記載の減速機付モータ。
【請求項5】
前記開口部は、モータ回転シャフト軸方向に伸びる平行した両壁面と、それと直交する方向に伸びる平行した両壁面により矩形状に構成されていて、このモータ回転シャフト軸方向に平行した両壁面のそれぞれに対して、前記ギヤボックス穴が開けられ、かつ、該ギヤボックス穴内に前記固定ピンが圧入固定されるように、該固定ピンの直径に対して前記ギヤボックス穴の内径が決められている請求項2に記載の減速機付モータ。
【請求項6】
前記コネクタケースは、ギヤボックス開口部内に入り込んで固定される嵌合部と、該ケースのギヤボックス開口部への挿入を位置決めする台座部と、外部からコネクタが挿入されるコネクタ挿入部とを樹脂により一体成形することにより構成される請求項2に記載の減速機付モータ。
【請求項7】
前記ピン固定部は、前記固定ピンが圧入固定されるように、該固定ピンの直径に対して前記ピン固定部の内径が決められている請求項2に記載の減速機付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−177112(P2010−177112A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20002(P2009−20002)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000113791)マブチモーター株式会社 (69)
【Fターム(参考)】