説明

コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤

【課題】安全でかつ簡便に用いることができる、ヒト等の哺乳類におけるコラーゲン産生能、ヒアルロン酸産生能を促進させる、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【解決手段】マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は外側から角層、表皮、基底膜および真皮より構成されており、真皮はその中でも最も領域の広い部分であり、表皮ほど細胞が密に詰まっておらず、むしろ細胞外空間が多く、「細胞外マトリックス」と呼ばれる巨大分子の網目構造によって満たされている。この細胞外マトリックスは、真皮内の線維芽細胞等において産生され、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸等の酸性ムコ多糖と呼ばれる多糖類と、コラーゲン、エラスチン等の線維性タンパク質で構成されている。細胞外マトリックスは、皮膚の弾力性、はり、みずみずしさ、新陳代謝等に直接的に関わっており、線維芽細胞等における細胞外マトリックスの産生が鈍ると、皮膚の弾力性やみずみずしさが失われ、シワ、小ジワ、肌荒れが発生しやすくなり、皮膚老化がもたらされる一因になる。
【0003】
上記線維性タンパク質は主にコラーゲンからなり、その中でもI型コラーゲンが全体の80%を占める。I型コラーゲンのほかにはIII、V、XII、およびXIV型コラーゲンの存在が知られている。老化皮膚に見られるシワ・たるみの成因の一つは、皮膚組織が加齢に伴ない菲薄化することによる。老化した皮膚において、真皮の主要なマトリックス成分であるコラーゲン線維の減少が著しく、このことが皮膚の厚さが減少する主たる原因となっている可能性が高い。したがって、コラーゲンの産生を促進させてコラーゲン量を維持することが、シワ・たるみの予防・改善に有効であると考えられる。
【0004】
またコラーゲンの産生促進は、上記以外にも、皮膚の創傷治癒の改善のほか、骨粗しょう症、関節炎、腱鞘炎等の治療、高血圧の防止などにも有効である。
【0005】
一方、上記多糖類中のヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保持、組織内にジェリー状のマトリックスを形成することに基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持、機械的障害等の外力に対する抵抗、および細菌感染の防止など、多くの機能を有している。昨今、癌転移との関連についても多くの研究がなされている。そして、真皮での線維芽細胞等におけるヒアルロン酸の産生促進剤として、例えばブプレウルム属植物抽出物を含む細胞外マトリックス産生促進剤が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ヒアルロン酸はまた、上記した真皮での線維芽細胞等における産生のほかに、表皮(特には表皮基底細胞など)での産生も知られており、表皮におけるヒアルロン酸量を増大させるヒアルロン酸産生促進剤も報告されている(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0007】
ヒアルロン酸は皮膚のほか、関節液、硝子体、靱帯等、生体に広く分布しており、ヒアルロン酸の産生促進は、保湿効果向上に加え、関節痛(変形性膝関節症)治療、皮膚のたるみ改善、ドライアイを主とした角結膜上皮障害治療、白内障・角膜移植手術時における前房保持などにも有効である。
【0008】
このようにコラーゲン、ヒアルロン酸は、シワ、小ジワ、肌のたるみ、肌荒れ等の改善・防止、皮膚老化の防止のほか、膝関節症の改善剤や眼科手術用製剤などに適用し得ることから、コラーゲン、ヒアルロン酸の両者の産生促進効果のある物質が見出せれば、1つの物質で上記の症状改善や予防・治療等に広く適用することができるという利点がある。
【0009】
なお後述するように、本発明はシカクマメ属植物の抽出物を利用した技術であるが、シカクマメ抽出物については、これまでに、表皮細胞におけるラミニン5の産生能を有することや、女性・妊婦用の薬草由来の健康保護、促進および栄養補助剤に用いられることなどが報告されている(例えば特許文献4〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第99/17715号パンフレット
【特許文献2】特開平9−176036号公報
【特許文献3】特開2007−262012号公報
【特許文献4】特開2003−313135号公報
【特許文献5】特表2005−500074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の事情に鑑み、本発明は、安全でかつ簡便に用いることができる、ヒト等の哺乳類におけるコラーゲン産生能、ヒアルロン酸産生能を促進させる、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題の解決を解決するために広く種々の物質についてヒト皮膚由来線維芽細胞のコラーゲンの産生促進作用およびヒアルロン酸産生促進作用、並びに、ヒト表皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を調べた結果、マメ科シカクマメ属の植物またはその抽出物に、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用(線維芽細胞、表皮細胞の両者による産生促進作用)をすべて併せもつという極めて優れた効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明によれば、マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進剤が提供される。
【0014】
また本発明によれば、マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるヒアルロン酸産生促進剤が提供される。
【0015】
また本発明によれば、マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤が提供される。
【0016】
なお、シカクマメ抽出物の作用については、上記従来技術の欄で記載したように、特許文献4〜5等に示されているが、シカクマメまたはその抽出物がコラーゲン産生促進作用およびヒアルロン酸産生促進作用(線維芽細胞、表皮細胞の両者による産生促進作用)をすべて併せもつということは、本発明者らが知る限りにおいて、これまで報告されていない。
【発明の効果】
【0017】
本発明はコラーゲン産生促進効果およびヒアルロン酸産生促進効果(線維芽細胞、表皮細胞の両者による産生促進効果)が高いため、それを利用した皮膚外用剤、経口用組成物(例えば機能剤、飲食品など)、医薬製剤等を提供することができ、コラーゲンやヒアルロン酸が関与する種々の症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等に役立つ。具体的適用例としては、例えば、肌荒れ改善、シワ予防・防止、皮膚のたるみ改善、関節痛(変形性膝関節症)治療、ドライアイを主とした角結膜上皮障害治療、白内障・角膜移植手術時における前房保持、皮膚の創傷治癒の改善、骨粗しょう症、関節炎、腱鞘炎等の治療、高血圧の防止等が挙げられる。ただしこれら例示に適用が限定されるものでない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
本発明で用いるシカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物は、マメ科の熱帯産つる性の草本である。本発明ではシカクマメ属に属する植物であれば特に限定されるものでなく、各種、亜種、品種等、任意に用いることができる。本発明では中でもシカクマメ(P. tetragonolobus)が好ましく用いられる。シカクマメ(P. tetragonolobus)は日本にも移入され、栽培されている。改良品種として「ウリズン」等が知られている。本発明ではこれら改良品種も含むことはもちろんである。
【0020】
シカクマメは生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0021】
シカクマメの使用部位としては、種子、葉、花、根、全草等、任意に用いられ得る。中でも種子が好ましく用いられる。シカクマメの抽出物は常法より得ることができ、例えば、シカクマメを必要により乾燥した後、抽出溶媒に一定期間浸漬するか、あるいは加熱還流している抽出溶媒と接触させ、次いで濾過し、濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いるか、あるいはこれらエキスを吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD−2)のカラムにて吸着させた後、メタノールまたはエタノールで溶出し、濃縮したものも使用することができる。また分配法、例えば水/酢酸エチルで抽出した抽出物等も用いられる。
【0022】
このようにして得たシカクマメ抽出物は、安全性が高く、優れたコラーゲン産生促進作用およびヒアルロン酸産生促進作用を有する。シカクマメおよびその抽出物にコラーゲン産生促進作用およびヒアルロン酸産生促進作用があることはこれまで全く知られておらず、本発明者らによってこれら作用をもつことが初めて確認されたものである。
【0023】
本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、あるいはコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤は、皮膚外用剤に配合してヒトおよび動物に用いることができる他、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合して摂取させることができる。また医薬製剤としてヒトおよび動物に投与することができる。
【0024】
本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、あるいはコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を皮膚外用剤に配合する場合、シカクマメ抽出物の配合量(乾燥質量)は外用剤全量中、0.0001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%である。0.0001質量%未満であると、本発明の効果が十分に発揮されず、一方、50質量%を超えて配合しても効果のさらなる増加は実質上望めないし、皮膚外用剤への配合も難しくなる傾向にある。
【0025】
本発明を皮膚外用剤に適用する場合、上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0027】
またこの皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も、皮膚に適用できるものであればいずれでもよく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。
【0028】
使用形態も任意であり、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料、芳香化粧料、浴用剤等に用いることができる。
【0029】
また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型及び形態に、本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、並びにコラーゲン促進およびヒアルロン酸産生促進剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【0030】
本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、あるいはコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を飲食品や飼料等に配合する場合、シカクマメ抽出物の配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、飲食品全量中に0.0001〜50質量%程度とすることができる。特に、保健用飲食品等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。
【0031】
飲食品や飼料の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または、液体状に任意に成形することができる。これらには、飲食品等に含有することが認められている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。
【0032】
本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、あるいはコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を医薬製剤として用いる場合、該製剤は経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【0033】
本発明のコラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、あるいはコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤を、皮膚外用剤、飲食品、飼料、医薬製剤等として用いる場合、コラーゲンやヒアルロン酸が関与する種々の症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等に役立つ。具体的適用例としては、例えば、肌荒れ改善、シワ予防・防止、関節痛(変形性膝関節症)治療、皮膚のたるみ改善、ドライアイを主とした角結膜上皮障害治療、白内障・角膜移植手術時における前房保持、皮膚の創傷治癒の改善、骨粗しょう症、関節炎、腱鞘炎等の予防・治療、高血圧の予防・治療等に好適に用いられる。また上記症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等の生理機能をコンセプトとして、その旨を表示した皮膚外用剤、機能性飲食品、疾病者用食品、特定保健用食品等に応用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
1.シカクマメ抽出物の調製
シカクマメ(Psophocarpus tetragonolobus)の種子部分50gを、室温で1週間90%エタノールに浸漬し、抽出液を濃縮し、90%エタノール抽出物(乾燥物)2.9gを得た。
【0036】
2.コラーゲン、ヒアルロン酸産生促進効果測定
(実施例1:I型コラーゲン産生評価)
96穴プレートにヒト線維芽細胞を10%牛胎児血清添加DMEM培地にて1×104cells/well播種し、4時間後血清濃度を0.5%に置換した。1日後、シカクマメ抽出物を所定濃度添加した0.5%血清添加DMEM培地と交換した。細胞播種より4日目に、培地上清中のコラーゲン測定及び、細胞についてDNA量を測定し、細胞数の指標とした。
【0037】
コラーゲン量は、ヒト線維芽細胞が産生するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(PIP:Procollagen type I carboxyterminal propeptide)を宝酒造社製キットMK−101を用いてELISA法にて測定した。PIP量はDNAあたりに換算した。DNA量の測定はHoechst社のH33342を用いた蛍光測定法で実施した。抽出液を添加していない試料(コントロール)のDNAあたりのPIP量を100としたときの、シカクマメ抽出物添加試料のDNAあたりのPIP量を、コラーゲン産生促進率(%)とした。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例2:真皮ヒアルロン酸産生評価)
96穴プレートにヒト線維芽細胞を10%牛胎児血清添加DMEM培地にて1×104cells/well播種し、4時間後血清濃度を0.5%に置換した。1日後、シカクマメ抽出物を所定濃度添加した0.5%血清添加DMEM培地と交換した。細胞播種より4日目に、培地上清中のヒアルロン酸測定及び、細胞についてDNA量を測定し、細胞数の指標とした。
【0040】
ヒアルロン酸量は、ヒアルロン酸測定キット(中外製薬(株)製)を用いて測定しDNAあたりに換算した。DNA量の測定はHoechst社のH33342を用いた蛍光測定法で実施した。抽出液を添加していない試料(コントロール)のDNAあたりのPIP量を100としたときの、シカクマメ抽出物添加試料のDNAあたりのヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸産生促進率(%)とした。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
(実施例3:表皮ヒアルロン酸産生評価)
24穴プレートに正常ヒト皮膚由来表皮細胞を4×104cells/well播種し、シカクマメ抽出物を所定濃度添加したDMEM/F12培地で1日培養した。被験溶液の濃度は、DMSOが培地に対して最終濃度0.5%になるように調整した。
【0043】
培養後、培地を採取し、ヒアルロン酸測定キット(中外製薬(株)製)を用いてヒアルロン酸量を測定した。またプレート中のDNA量を測定し、細胞数の指標とした。DNA量の測定はHoechst社のH33342を用いた蛍光測定法で行った。なお、上記実験濃度では細胞毒性は認められなかった。抽出物無添加群(コントロール)のDNAあたりのヒアルロン酸量を100とした時の、シカクマメ抽出物添加試料の値をヒアルロン酸産生促進率(%)とした。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明に用いられるシカクマメ抽出物は、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用(線維芽細胞、表皮細胞の両者による産生促進作用)をすべて併せもつという極めて優れた効果があることが確認された。
【0046】
以下にさらに処方例を示す。なお各処方例中、シカクマメ抽出物は上記1.で調製したものを使用した。抽出物の配合量は乾燥分(実分)を示す。
【0047】
(配合処方例1:化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
水 残余
エタノール 10
ブチレングリコール 7
ジプロピレングリコール 5
グリセリン 2
ポリエチレングリコール(PEG−6) 0.5
ポリエチレングリコール(PEG−32) 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
コラーゲン産生促進剤(シカクマメ抽出物) 0.2
アルギニン 0.01
イザヨイバラエキス 0.2
加水分解酵母エキス 0.02
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
イチヤクソウエキス 0.2
水溶性コラーゲン 0.2
アセンヤクエキス 0.1
ポリプロピレングリコール−13デシルテトラデセス−24 0.5
クエン酸ナトリウム 0.05
メタリン酸ナトリウム 0.05
クエン酸 0.05
防腐剤 適量
香料 適量
【0048】
(配合処方例2:美容液)
(配 合 成 分) (質量%)
(A相)
水 残余
グリセリン 6
エタノール 5
ジプロピレングリコール 5
ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール
−14/7ジメチルエーテル 3
ポリエチレングリコール−400 1
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.05
ヒアルロン酸産生促進剤(シカクマメ抽出物) 0.3
アルギニン 0.01
ケイヒエキス 0.1
真珠蛋白エキス 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
水溶性コラーゲン 0.2
アセンヤクエキス 0.1
ノバラエキス 0.2
カルボキシビニルポリマー 0.3
ブチレングリコール 3
水酸化カリウム 0.15
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30)コポリマー 0.1
メタリン酸ナトリウム 0.03
(B相)
シクロメチコン 2.5
ジメチコン 2
ポリエチレングリコール−60水添ヒマシ油 0.5
防腐剤 適量
香料 適量
(製法)
それぞれ均一に溶解したA相およびB相を室温にて混合し、ホモミキサー処理を行った。
【0049】
(配合処方例3:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(A相)
水 残余
ブチレングリコール 8
エタノール 5
ジプロピレングリコール 5
グリセリン 5
ジメチコン 2
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD) 0.08
カルボキシビニルポリマー 0.15
EDTA−3Na 0.05
キサンタンガム 0.1
コラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤
(シカクマメ抽出物) 0.1
アルギニン 0.01
ユズ種子エキス 0.2
加水分解酵母エキス 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
イチヤクソウエキス 0.3
水溶性コラーゲン 0.2
(B相)
ベヘニルアルコール 0.4
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5
ポリエチレングリコール−60水添ヒマシ油 0.5
水添ポリデセン 2
水添パーム油 0.5
バチルアルコール 0.4
パーム核油 0.4
パーム油 0.1
防腐剤 適量
香料 適量
(製法)
A相(油相部)とB相(水相部)をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した。A相をB相に加えてよく撹拌した後、乳化機で乳化した。得られた乳化物を、熱交換器を用いて冷却した。
【0050】
(配合処方例4:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(A相)
水 残余
グリセリン 8
エタノール 5
ジプロピレングリコール 4
水添ポリデセン 4
ポリエチレングリコール−20 3
カルボキシビニルポリマー 0.09
キサンタンガム 0.05
メタリン酸ナトリウム 0.02
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD) 0.03
コラーゲン産生促進剤(シカクマメ抽出物) 0.2
アルギニン 0.01
セイヨウバラエキス 0.3
オクラエキス 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
水溶性コラーゲン 0.5
(B相)
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3
エチルヘキサン酸セチル 2
水添パーム油 2
ワセリン 1.5
ジメチコン 1
ステアリン酸ポリエチレングリコール−5グリセリル 1
イソステアリン酸ポリエチレングリコール−60グリセリル 1
ベヘニルアルコール 0.5
ジイソステアリン酸グリセリル 0.4
バチルアルコール 0.2
防腐剤 適量
香料 適量
(製法)
A相(油相部)とB相(水相部)をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した。A相をB相に加えてよく撹拌した後、乳化機で乳化した。得られた乳化物を熱交換器を用いて冷却した。
【0051】
(配合処方例5:キャンディー 4,000mg/日 中)
(配 合 成 分) (mg) (質量%)
砂糖 2,000 50
水飴 1,920 48
ヒアルロン酸産生促進剤(シカクマメ抽出物) 40 1
香料 40 1
【0052】
(配合処方例6:錠剤 1,500mg/日 中)
(配 合 成 分) (mg) (質量%)
ショ糖エステル 70 4.7
結晶セルロース 74 4.9
メチルセルロース 36 2.4
グリセリン 25 1.7
コラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤
(シカクマメ抽出物) 475 31.7
N−アセチルグルコサミン 200 13.3
ヒアルロン酸 150 10.0
ビタミンE 30 2.0
ビタミンB6 20 1.3
ビタミンB2 10 0.7
α−リポ酸 20 1.3
コエンザイムQ 40 2.7
セラミド(コンニャク抽出物) 50 3.3
L−プロリン 300 20.0
【0053】
(配合処方例7:ソフトカプセル 1,500mg/日 中)
(配 合 成 分) (mg) (質量%)
食用大豆油 530 35.3
トチュウエキス 50 3.3
ニンジンエキス 50 3.3
コラーゲン産生促進剤(シカクマメ抽出物) 100 6.7
ローヤルゼリー 50 3.3
マカ 30 2.0
γ−アミノ酪酸(GABA) 30 2.0
ミツロウ 60 4.0
ゼラチン 375 25.0
グリセリン 120 8.0
グリセリン脂肪酸エステル 105 7.0
【0054】
(配合処方例8:ソフトカプセル 1,500mg/日 中)
(配 合 成 分) (mg) (質量%)
玄米胚芽油 659 43.9
ヒアルロン酸産生促進剤(シカクマメ抽出物) 500 33.3
レスベラトロール 1 0.1
ハス胚芽エキス 100 6.7
エラスチン 180 12.0
DNA 30 2.0
葉酸 30 2.0
【0055】
(配合処方例9:顆粒 1,200mg/日 中)
(配 合 成 分) (mg) (質量%)
コラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤
(シカクマメ抽出物) 400 33.4
ビタミンC 100 8.3
大豆イソフラボン 250 20.8
還元乳糖 300 25.0
大豆オリゴ糖 36 3.0
エリスリトール 36 3.0
デキストリン 30 2.5
香料 24 2.0
クエン酸 24 2.0
【0056】
(配合処方例10:ドリンク 50mL/日 中)
(配 合 成 分) (mL) (質量%)
トチュウエキス 1.6 3.2
ニンジンエキス 1.6 3.2
コラーゲン産生促進剤(シカクマメ抽出物) 1.6 3.2
還元麦芽糖水飴 28 56.0
エリスリトール 8 16.0
クエン酸 2 4.0
香料 1.3 2.6
N−アセチルグルコサミン 1 2.0
ヒアルロン酸 0.5 1.0
ビタミンE 0.3 0.6
ビタミンB6 0.2 0.4
ビタミンB2 0.1 0.2
α−リポ酸 0.2 0.4
セラミド(コンニャク抽出物) 0.4 0.8
L−プロリン 2 4.0
【0057】
(配合処方例11:クッキー)
(配 合 成 分) (質量%)
薄力粉 45.0
バター 17.5
グラニュー糖 20.0
ヒアルロン酸産生促進剤(シカクマメ抽出物) 4.0
卵 12.5
香料 1.0
(製法)
バターを撹拌しながら、グラニュー糖を徐々に添加した後、卵、シカクマメエキス、および香料を添加し、さらに撹拌した。十分に撹拌した後、均一に振るった薄力粉を加え、低速にて撹拌し、塊状で冷蔵庫にて寝かせた。その後、成型し、170℃、15分間焼成しクッキーとした。
【0058】
(配合処方例12:軟膏)
(配 合 成 分) (質量%)
コラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤
(シカクマメ抽出物) 2.0
ステアリルアルコール 18.0
モクロウ 20.0
ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.25
グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
ワセリン 40.0
精製水 残余
(製造方法)
精製水にシカクマメエキスを加えて溶解し、70℃に保つ(水相)。残りの成分を70℃にて混合溶解する(油相)。水相に油相を加え、ホモミキサーで均一に乳化後、冷却して軟膏を得た。
【0059】
(配合処方例13:貼付剤)
(配 合 成 分) (質量%)
ヒアルロン酸産生促進剤(シカクマメ抽出物) 1.0
クロタミトン 3.2
エステル油(「パナセート875R」) 2.5
スクワラン 1.0
dl−カンフル 0.07
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.2
濃グリセリン 5.0
ゼラチン 1.2
ポリビニルピロリドン 0.6
メチルパラベン 適量
d−ソルビトール液 35.0
水酸化アルミニウム 0.2
亜硫酸ナトリウム 適量
エデト酸ナトリウム 適量
クエン酸 適量
カルボキシビニルポリマー 0.22
ポリアクリル酸ナトリウム 0.24
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.8
カオリン 1.0
精製水 残量
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明はコラーゲン産生促進効果およびヒアルロン酸産生促進効果が高いため、それを利用した皮膚外用剤、経口用組成物(例えば機能剤、飲食品など)、医薬製剤等を提供することができ、コラーゲンやヒアルロン酸が関与する種々の症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等に役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項3】
マメ科シカクマメ(Psophocarpus)属に属する植物の中から選ばれる1種または2種以上の植物またはその抽出物からなるコラーゲン産生促進およびヒアルロン酸産生促進剤。

【公開番号】特開2010−24222(P2010−24222A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99591(P2009−99591)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】