説明

コンクリート塊運搬作業台車およびこれを用いたコンクリート塊撤去方法

【課題】コンクリート塊の撤去作業に伴う安全性を確保しつつ、その作業効率を上げることができるコンクリート塊運搬作業台車およびこれを用いたコンクリート塊撤去方法を提供する。
【解決手段】大型作業台車1は、台車本体2と、昇降装置3と、昇降台4と、油圧ユニット5とを備えている。昇降装置3は駆動すると、昇降体31、31が上下に移動するように構成されている。昇降台4は、コンクリート塊を載せるものであり、昇降体31、31の上面に固定されている。これにより、昇降台4は、昇降体31,31が上下に移動することにより上下に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、例えば、トンネル内等の上空制限がある場所で、コンクリート塊を撤去するのに使用されるコンクリート塊運搬作業台車およびこれを用いたコンクリート塊撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既設トンネルの側壁(コンクリート壁)に新設トンネルを結合する工事においては、側壁において新設トンネルとの結合部分を開ける方法が採られている。その場合には、まず最初にワイヤーソーを用いて結合部分をブロック状に切断して多数のコンクリート塊にする。そして、上空制限がない場所では、クレーンを用いてこれらのコンクリート塊を吊り上げて外部に運び出して撤去する。
【0003】
一方、上空制限がある場所では、作業者は単管パイプ等の足場材を用いて足場を組み、その上で、側壁からチェーンブロックやレバーブロックを用いてコンクリート塊を引き出す。そして、そのコンクリート塊をフォークリフト等の搬送手段に引き渡して、クレーンの吊り上げ位置まで運搬する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−252563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、足場の上でのコンクリート塊の引き出し作業や引渡し作業は不安定で危険を伴う。また、コンクリート塊の撤去作業の作業位置が横に移動する度に足場を解体し、新しい作業位置に足場を組まなければならない。そのため、作業位置の移動に時間がかかってしまう。また、コンクリート塊の引き出し位置の高さを変える場合には、そのたびに足場を下げなければならないので、その作業に時間がかかってしまう。
【0006】
このように、足場を組んで行うコンクリート塊の撤去作業は危険を伴うものであり、また作業効率が悪い。そこで、コンクリート塊の運搬作業を行う台車を用いてこの問題を解決することが要求されている。
【0007】
本件発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート塊の撤去作業に伴う安全性を確保しつつ、その作業効率を上げることができるコンクリート塊運搬作業台車およびこれを用いたコンクリート塊撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本件発明のコンクリート塊運搬作業台車は、自走可能な台車本体と、この台車本体に昇降装置を介して上下に移動可能に設けられ、コンクリート壁がブロック状に切断されて得られるコンクリート塊を載せるための昇降台とを備えることを特徴としている。
【0009】
ここで、昇降台には、コンクリート壁を押圧するための壁押しジャッキを設けることが好ましい。
【0010】
また、台車本体には、接地面を押圧するためのアウトリガージャッキを設けることが好ましい。
【0011】
さらに、昇降装置には、昇降台の水平状態を保つための水平維持手段を設けることが好ましい。
【0012】
また、昇降装置を、シザーリフトと、その下側に配置したシリンダー式昇降装置とから構成し、昇降台がシザーリフトに支持されて固定されるようにしても良い。
【0013】
また、本件発明のコンクリート塊撤去方法では、本件発明のコンクリート塊運搬作業台車を用いてコンクリート塊を搬出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本件発明のコンクリート塊運搬作業台車およびコンクリート塊撤去方法では、昇降台の上でコンクリート塊の引き出し作業や引渡し作業が行われるので、足場を組む場合に比べてこれらの作業を安定して行うことができる。
【0015】
また、台車本体を自走させるようにしたので、足場を組む場合に比べて、コンクリート塊の撤去作業の作業位置を容易に移動することができる。また、昇降装置を利用して昇降台の高さを変えられるようにしたので、足場を組む場合に比べて、作業位置の高さを容易に変えることができる。
【0016】
よって、本件発明のコンクリート塊運搬作業台車およびコンクリート塊撤去方法は、コンクリート塊の撤去作業に伴う安全性を確保しつつ、作業効率を上げることができる。
【0017】
また、本件発明では、コンクリート塊運搬作業台車を作業位置に配置する際に、壁押しジャッキがコンクリート壁に押圧することにより、昇降台が壁押しジャッキを介してコンクリート壁に固定される。これにより、コンクリート塊の引き出し作業時には、壁押しジャッキの押圧力の反力を利用することが可能になるので、引き出し作業を容易に行うことができる。よって、本件発明は、コンクリート塊の撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0018】
また、本件発明では、コンクリート塊運搬作業台車を作業位置に配置する際に、アウトリガージャッキが接地面に押圧することにより、台車本体が接地面に固定される。したがって、コンクリート塊の引き出し作業時や引渡し作業時に台車本体が勝手に動いてしまうのが抑えられる。よって、本件発明は、コンクリート塊の撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0019】
また、本件発明では、水平維持手段を用いることにより昇降台を常に水平に維持することが可能になるため、昇降台がどの高さに位置していても、コンクリート塊の引き出し作業や引渡し作業を安定した状態で行うことができる。よって、本件発明は、コンクリート塊の撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0020】
また、本件発明では、昇降台をシザーリフトとシリンダー式昇降装置とを介して台車本体に固定することにより、昇降台をシザーリフトのみで台車に固定した場合に比べて、昇降台が高く上げられても昇降台が安定する。したがって、この状態で昇降台にコンクリート塊が載せられても昇降台がぐらつくことがない。よって、本件発明は、コンクリート塊の撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本件発明の一実施の形態を示すトンネルの結合工事の平面図である。
【図2】同実施の形態を示す大型作業台車の左側面図である。
【図3】同実施の形態を示す大型作業台車の後面図である。
【図4】同実施の形態を示す大型作業台車の昇降装置の説明図である。
【図5】同実施の形態を示す大型作業台車の使用説明図である。
【図6】同実施の形態を示す小型作業台車の左側面図である。
【図7】同実施の形態を示す小型作業台車の使用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0023】
図1は、本件発明の一実施の形態を示す地下のトンネル101、102の結合工事の平面図である。このトンネル101、102の結合工事では、既設トンネル101の側壁101aに新設トンネル102を結合した後に、側壁101aにおいて新設トンネル102との結合部分(図1のCの範囲)を開けるためにこの部分の撤去作業を行う。この撤去作業の大まかな流れについて以下に簡単に説明する。また、以下の説明では、既設トンネル101の側壁101aを既設壁101aと称して説明する。
【0024】
(1)まず最初に、既設壁101aをワイヤーソー(図示せず)を用いてブロック状に切断して多数のコンクリート塊101bにする。
(2)次に、コンクリート塊101bの一部を撤去して既設壁101aに作業空間Sを開ける。
(3)残りのコンクリート塊101b(図1の斜線部分)を撤去する。
【0025】
上記の(2)と(3)のコンクリート塊101bの撤去作業に際し、本件発明のコンクリート塊運搬作業台車が使用される。このコンクリート塊運搬作業台車は、大型作業台車1と小型作業台車11の二種類がある。
【0026】
大型作業台車1は、(2)と(3)で使用される。具体的には、大型作業台車1は、新設トンネル102の広い場所(作業エリアA)において、コンクリート塊101bの一部を撤去して作業空間Sを開け、その後に搬出方向bに後退しながら作業エリアAにあるコンクリート塊101bを撤去する。小型作業台車11は、(3)で使用される。具体的には、小型作業台車11は、作業空間Sに入り、進入方向aに進みながら作業エリアBにあるコンクリート塊101bを撤去する。まず最初に、大型作業台車1について説明する。
【0027】
(大型作業台車1)
図2は、大型作業台車1の左側面図である。この大型作業台車1は、台車本体2と、昇降装置3と、昇降台4と、油圧ユニット5とを備えている。
【0028】
台車本体2は、基台21と、一対のガイド支柱22,22と、支持台23とを備えている。
【0029】
基台21の前部には、底面の左右側にそれぞれ前輪24が取り付けられている。この前輪24は駆動用である。前輪24の近傍には、油圧モータ25が設けられている。また、左右の前輪24,24は連結軸(図示せず)で結合されている。この連結軸には操舵装置(図示せず)が取り付けられている。この操舵装置は操舵桿26を備えている。
【0030】
基台21の後部には、底面の左右側にそれぞれ後輪27が取り付けられている。この後輪27は操舵用である。左右の後輪27,27は連結軸(図示せず)で結合されている。この連結軸には操舵装置(図示せず)が取り付けられている。この操舵装置は操舵桿28を備えている。
【0031】
また、基台21において前輪24の油圧モータ25の近傍と後輪27の近傍には、アウトリガージャッキ6が設けられている。このアウトリガージャッキ6には油圧シリンダーが使用されており、シリンダー本体6aと、ピストン6bとを備えている。シリンダー本体6aは、開口面を下に向けて後部に固定されている。ピストン6bは、シリンダー本体6aに伸縮自在に内嵌されている。そして、アウトリガージャッキ6の駆動時にはピストン6bが下方に伸びて接地面Gを押圧するように構成されている。
【0032】
ガイド支柱22,22は、基台21の前部及び後部の左側に立設されている。また、前側のガイド支柱22には、タラップ7が取り付けられている。
【0033】
支持台23は、ガイド支柱22,22の下部に結合されている。図3に示すように、この支持台23は右方に延びて形成されている。さらに、支持台23の左右側は、支持部材29で基台21に結合されている。また、図2に示すように、同じ側にある支持部材29と各ガイド支柱22との間には、補強材30が斜めに掛け渡されて取り付けられている。
【0034】
また、支持台23の上面には、各ガイド支柱22の近傍に2つのクッション材23aが設けられている。このクッション材23aはゴム製である。図3に示すように、2つのクッション材23aはガイド支柱22の左右側に配置されている。
【0035】
また、図3に示すように、支持台23の上面の右側には、複数の壁押しジャッキ8が設けられている。この壁押しジャッキ8には油圧シリンダーが使用されており、シリンダー本体8aと、ピストン8bとを備えている。シリンダー本体8aは、開口面を右方に向けて支持台23に固定されている。ピストン8bは、シリンダー本体8aに伸縮自在に内嵌されている。そして、壁押しジャッキ8の駆動時にはピストン8bが右方に伸びることにより既設壁101aを押圧するように構成されている。
【0036】
昇降装置3は、図4に示すように、一対の昇降体31,31と、支持台32と、昇降装置本体とを備えている。
【0037】
昇降体31,31は、それぞれガイド支柱22に支持されている。これを具体的に説明すると、各昇降体31の内部には、4個の支持機構31aが設けられている。4個の支持機構31aは上下に2個ずつ配置されている。さらに、上下2個の支持機構31aはそれぞれガイド支柱22の左右側に対向して配置されている。
【0038】
各支持機構31aは、支持軸31bと、2個の支持ローラー31cを備えている。支持軸31bは昇降体31の前後方向に配置されている。2個の支持ローラー31cは支持軸31bに回転可能に取り付けられており、対向するもう一方の支持機構31aの2個の支持ローラー31cとでガイド支柱22を回転可能に挟持している。
【0039】
支持台32は、台車1の前後方向に長く形成されている。この支持台32は、前後端部で昇降体31、31の内側面31d、31dの下部に結合して配置されている。
【0040】
昇降装置本体は、駆動装置33と、伝達機構34と、一対のピニオン35,35と、一対のラック36,36とを備えている。
【0041】
駆動装置33は、収容体33aと、油圧モータ33bと、減速機33cと、ブレーキ(図示せず)とを備えている。収容体33aは支持台32に固定されている。油圧モータ33bは収容体33a内に固定されている。減速機33c及びブレーキは、油圧モータ33bに接続されている。
【0042】
伝達機構34は、駆動軸34aと、一対の第1伝達軸34b,34bと、一対の第2伝達軸34c,34cとを備えている。
【0043】
駆動軸34aは台車1の前後方向に沿って配置されており、減速機33cに接続している。第1伝達軸34b,34bは、駆動軸34aの両端にそれぞれチェーンカップリング34dを介して接続されている。各チェーンカップリング34dのボス34eと駆動軸34aとの締結には、本件発明の水平維持手段であるパワーロック式(摩擦式締結)が使用されている。また、各第1伝達軸34bの先端には、プーリー34fが取り付けられている。
【0044】
第2伝達軸34c,34cは、それぞれ、昇降体31の内側面31dに設けられた挿通口(図示せず)に通されて配置されている、各第2伝達軸34cの内端部には、プーリー34gが取り付けられている。このプーリー34gは、チェーン34hを介して第1伝達軸34bのプーリー34fに接続されている。そして、各第2伝達軸34cの中間部分にはピニオン35が取り付けられている。また、各第2伝達軸34cの外端部は、昇降体31に回転可能に支持されている。
【0045】
ラック36,36は、それぞれガイド支柱22の右側面22bに上下に延設されている。各ラック36は、上記のピニオン35と噛合するものである。
【0046】
そして、昇降装置3は、油圧モータ33bが駆動すると、駆動軸34a、第1伝達軸34b,34b、第2伝達軸34c,34cを介して、ピニオン35,35が正方向または逆方向に回転して、ラック36,36に沿って上昇または下降する。これに伴い、昇降装置本体のラック36以外の部分と、支持台32、昇降体31、31も上昇または下降するように構成されている。
【0047】
昇降台4は、複数個(例えば5個)のコンクリート塊101bを載せるものである。この昇降台4は、台車1の前後方向に長く延びて形成されている。昇降台4の前後部にはガイド口4aが上下に貫通して設けられている。各ガイド口4aには、ガイド支柱22が通されている。さらに、この状態で昇降台4は昇降体31,31の上面に固定されている。これにより昇降台4は、昇降体31,31が上下に移動することにより上下に移動可能に構成されている。
【0048】
また、図3に示すように、昇降台4の上面の左側には手すり9と、チェーンブロックやレバーブロック用のフック10が設けられている。さらに、昇降台4の底面の右側には、複数の壁押しジャッキ8が設けられている。この壁押しジャッキ8は、支持台23に取り付けられている壁押しジャッキ8と同じものである。したがって、壁押しジャッキ8の駆動時には、ピストン8bが右方に伸びて既設壁101aを押圧するように構成されている。
【0049】
油圧ユニット5は、前輪24の油圧モータ25、アウトリガージャッキ6、壁押しジャッキ8、昇降装置3の油圧モータ33b等の駆動制御を行うものである。この油圧ユニット5は操作盤5aを備えている。この操作盤5aには、開始・停止ボタン、走行レバー、アウトリガージャッキレバー、壁押しジャッキレバー、昇降レバー等が設置されている。
【0050】
以上のように構成されている大型作業台車1において、次に、大型作業台車1を用いたコンクリート塊101bの撤去方法について説明する。ここでは、大型作業台車1を台車1と称して説明する。
【0051】
(1)台車1は、最初に操作盤5aの開始ボタンが押されることにより左右の前輪24,24の油圧モータ25,25を駆動する。次に、走行レバーと操舵桿26、28の操作により自走して図1の作業エリアAに入り、既設壁101aの開口位置の前で停止する。このとき、台車1は、図3に示すように右端が既設壁101aに近接するようにする。
【0052】
(2)次に、台車1は、アウトリガージャッキレバーの操作により、図3に示すようにアウトリガージャッキ6のピストン6bを接地面Gに押しつける。
【0053】
(3)次に、台車1は、昇降レバーの操作により、図3に示すように昇降台4をコンクリート塊101bの引き出し位置まで上げる。
【0054】
(4)次に、台車1は、壁押しジャッキレバーの操作により、図3に示すように壁押しジャッキ8のピストン8bを既設壁101aに押しつける。
【0055】
(5)そして、作業者は、チェーンブロックやレバーブロック(図示せず)を用いて既設壁101aからコンクリート塊101bを引き出し、図5に示すように昇降台4に載せる。
【0056】
(6)昇降台4に、複数個(例えば5個)のコンクリート塊101bが載せられたら、台車1は、壁押しジャッキレバーの操作によって壁押しジャッキ8の既設壁101aに対する押圧状態を解除し、アウトリガージャッキレバーの操作によりアウトリガージャッキ6の接地面Gに対する押圧状態を解除する。
【0057】
(7)次に、台車1は、昇降レバーの操作により昇降台4を下げて(重心を下げて)、その後に走行レバーの操作により図5に示す搬出方向bに後退する。作業者は、昇降台4に載せられているコンクリート塊101bを電動ホイスト201を利用してハンドパレット202に移す。
【0058】
(8)ハンドパレット202に移されたコンクリート塊101bは、クレーン203の吊り上げ位置まで運ばれる。クレーン203は、吊り上げ位置に運ばれてきたコンクリート塊101bを吊り上げて外部に運び出し、トラック204に移す。
【0059】
(9)一方、台車1は、コンクリート塊101bがハンドパレット202に移されたら、走行レバーと操舵桿26、28の操作により任意の作業位置まで前進して上記の(2)〜(7)の作業を行う。
【0060】
(10)そして、上記の(2)〜(9)の作業を繰り返すことにより、開口位置にあるコンクリート塊101bが撤去されて作業空間Sが形成される。そして、台車1を搬出方向bに後退させていきながら(2)〜(9)の作業を繰り返し行う。
【0061】
以上のようにして、図1の作業エリアAにあるコンクリート塊101bが撤去される。次に、小型作業台車11について説明する。
【0062】
(小型作業台車11)
図6は、小型作業台車11の左側面図である。この小型作業台車11は、台車本体12と、昇降装置(シリンダー式昇降装置13、シザーリフト14)と、昇降台15と、油圧ユニット16とを備えている。
【0063】
台車本体12は箱枠状に形成されている。図6では、昇降装置の説明のために台車本体12の左側の部分を省いている。この台車本体12の前部には、底面の左右側にそれぞれ前輪12aが取り付けられている。この前輪12aは駆動用である。前輪12aの近傍には、油圧モータ12bが設けられている。
【0064】
台車本体12の後部には、底面の左右側にそれぞれ後輪12cが取り付けられている。この後輪12cは操舵用である。後輪12cの近傍には、操舵用油圧シリンダー(図示せず)が設けられている。
【0065】
また、台車本体12において前輪12aと後輪12cの近傍には、アウトリガージャッキ17が取り付けられている。このアウトリガージャッキ17には油圧シリンダーが使用されており、シリンダー本体17aと、ピストン17bとを備えている。シリンダー本体17aは、開口面を下に向けて台車本体12に固定されている。ピストン17bは、シリンダー本体17aに伸縮自在に内嵌されている。そして、アウトリガージャッキ17の駆動時には、(B)に示すようにピストン17bが下方に伸びて接地面Gを押圧するように構成されている。
【0066】
また、台車本体12の上面の四隅には、ゴム製のクッション材12dが設けられている。さらに、台車本体12の後端には、タラップ51と手すり52が取り付けられている。
【0067】
シリンダー式昇降装置13は、ガイドレール131と、昇降体132と、油圧シリンダー133とを備えている。
【0068】
ガイドレール131は、台車本体12の内底面の中央部分に立設されている。ガイドレール131には、上面から内部の下方にかけて油圧シリンダー133用の収容空間131aが設けられている。
【0069】
昇降体132は、一対の昇降部材132a,132aが、ガイドレール131の前後側に対向して配置されている。昇降部材132a,132aは上下に延びて形成されており、その上面には上台132bが固定されている。また、昇降部材132a,132aの下部の左右の外側面には、それぞれ連結部材132cが結合されている。さらに、昇降部材132a,132aの内壁の下部には、それぞれガイドローラ132dが左右に2個ずつ設けられている。これらのガイドローラ132dは、ガイドレール131の前後面を回転可能に挟持している。なお、図6(B)では、前側の昇降部材132aの左側に設けられた2個のガイドローラ132dと、後側の昇降部材132aの左側に設けられた2個のガイドローラ132dを示す。
【0070】
油圧シリンダー133は、シリンダー本体133aと、ピストン133bとを備えている。シリンダー本体133aは、開口面を上にしてガイドレール131の収容空間131aに収容されている。ピストン133bは、シリンダー本体133aに伸縮自在に内嵌されている。さらに、ピストン133bの上面は昇降体132の上台132bの下面に固定されている。これにより、油圧シリンダー133の駆動時にピストン133bが伸縮すると、昇降体132が上下に駆動するように構成されている。
【0071】
シザーリフト14は、基台141と、パンタグラフ式のリンク機構142と、油圧シリンダー143とを備えている。基台141は、昇降体132の上台132bの上面に固定されている。リンク機構142は、基台141の上面に固定されている。油圧シリンダー143は、シリンダー本体143aと、ピストン143bとを備えている。シリンダー本体143aは一方のリンク142aの下部に固定され、ピストン143bは他方のリンク142bの上部に固定されている。そして、シザーリフト14の駆動時にはピストン143bが伸縮することにより、リンク機構142が上下に伸縮するように構成されている。
【0072】
昇降台15は、1個のコンクリート塊101bを載せるものである。この昇降台15は、大型作業台車1の昇降台4よりも前後に短く形成されている。また、この昇降台15は、シザーリフト14のリンク機構142に支持されて固定されている。これにより、昇降台15は、昇降体132が上下に駆動したり、シザーリフト14のリンク機構142が上下に伸縮したりするのを利用して昇降するように構成されている。
【0073】
また、昇降台15の前部の底面には、複数の壁押しジャッキ18が取り付けられている。この壁押しジャッキ18には油圧シリンダーが使用されており、シリンダー本体18aと、ピストン18bとを備えている。シリンダー本体18aは、開口面を前方に向けて昇降台15に固定されている。ピストン18bは、シリンダー本体18aに伸縮自在に内嵌されている。そして、壁押しジャッキ18の駆動時には、ピストン18bが前方に伸びて既設壁101aを押圧するように構成されている。
【0074】
また、昇降台15の上面の後部には、チェーンブロックやレバーブロック用のフック15aが設けられている。また、昇降台15の後端からシザーリフト14の後端にかけて、タラップ53と手すり54が取り付けられている。
【0075】
油圧ユニット16は、前輪12aの油圧モータ12b、操舵油圧シリンダー、アウトリガージャッキ17、壁押しジャッキ18、シリンダー式昇降装置13、シザーリフト14等の駆動制御を行うものである。この油圧ユニット16は、操作盤16aを備えている。この操作盤16aには、開始・停止スィッチ、走行レバー、操舵レバー、アウトリガージャッキレバー、壁押しジャッキレバー、昇降レバー等が設置されている。
【0076】
以上のように構成されている小型作業台車11において、次に、小型作業台車11を用いたコンクリート塊101bの撤去作業について説明する。ここでは、小型作業台車11を台車11と称して説明する。
【0077】
(1)台車11は、最初に操作盤16aの開始ボタンが押されることにより左右の前輪12a,12aの油圧モータ12b,12bを駆動する。次に、走行レバーと操舵レバーの操作によって自走して作業空間S内に入り停止する。このとき、台車11は、図6(A)に示すように前端が既設壁101aに近接するようにする。
【0078】
(2)次に、台車11は、アウトリガージャッキレバーの操作により、図6(B)に示すようにアウトリガージャッキ17のピストン17bを接地面Gに押しつける。
【0079】
(3)次に、台車11は、昇降レバーの操作により、昇降台15を、図6(B)に示すコンクリート塊101bの引き出し位置まで上げる。
【0080】
(4)次に、台車11は、壁押しジャッキレバーの操作により、図6(B)に示すように壁押しジャッキ18のピストン18bを既設壁101aに押しつける。
【0081】
(5)そして、作業者は、チェーンブロックやレバーブロック(図示せず)を用いて既設壁101aからコンクリート塊101bを引き出し、このコンクリート塊101bを図7に示すように昇降台15に載せる。
【0082】
(6)昇降台15にコンクリート塊101bが載せられたら、台車11は、壁押しジャッキレバーの操作によって壁押しジャッキ18の既設壁101aに対する押圧状態を解除し、アウトリガージャッキレバーの操作によってアウトリガージャッキ17の接地面Gに対する押圧状態を解除する。
【0083】
(7)次に、台車11は、昇降レバーの操作により昇降台15を下げて(重心を下げて)、その後に走行レバーの操作により、図7に示すように搬出方向bに少し後退する。作業者は、コンクリート塊101bをトロリーチェーンブロック205に移す。
【0084】
(8)トロリーチェーンブロック205に移されたコンクリート塊101bは、搬出方向bに所定位置まで搬送する。所定位置に搬送されたコンクリート塊101bは、ハンドパレット202や電動ホイスト201を利用してクレーン203の吊り上げ位置まで運ばれる。クレーン203は、吊り上げ位置に運ばれてきたコンクリート塊101bを吊り上げて外部に運び出し、トラック204に移す。
【0085】
(9)一方、台車11は、コンクリート塊101bがトロリーチェーンブロック205に移されたら、走行レバーの操作によって再び既設壁101aまで前進して上記の(2)〜(7)の作業を行う。
【0086】
(10)そして、上記の(2)〜(9)の作業を繰り返すことによって、図1の作業エリアBにあるコンクリート塊101bが撤去される。
【0087】
このように、大型作業台車1と小型作業台車11とにより、図1の作業エリアA、Bにあるコンクリート塊101bが撤去される。その結果、図1の結合部分Cにある全てのコンクリート塊101bが撤去される。
【0088】
以上説明したように本実施の形態では、大型作業台車1や小型作業台車11を使用することにより、コンクリート塊101bの引き出し作業や引渡し作業を昇降台4、15の上で行うようにした。したがって、足場を組む場合に比べてこれらの作業を安定して行うことができる。
【0089】
また、台車本体2、12を自走させるようにしたので、足場を組む場合に比べて、コンクリート塊101bの撤去作業の作業位置を容易に移動することができる。また、昇降装置3、13,14を利用して昇降台4、15の高さを変えられるようにしたので、足場を組む場合に比べて、作業位置の高さを容易に変えることができる。
【0090】
このように、本実施の形態のコンクリート塊運搬作業台車1、11は、コンクリート塊101bの撤去作業に伴う安全性を確保しつつ、その作業効率を上げることができる。また、このコンクリート塊運搬作業台車1、11を用いたコンクリート塊撤去方法についても同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、本実施の形態では、昇降台4、15に載せられたコンクリート塊101bをフォークリフトに引き渡して、フォークリフトがクレーン203の吊り上げ位置までコンクリート塊101bを運ぶようにしても良い。ここで、フォークリフトが届かないような高い位置にあるコンクリート塊101bをフォークリフトに引き渡す場合には、昇降レバーの操作により昇降台4、15を下げれば良いので、足場を下げる場合に比べて引き渡し作業を効率よく行うことができる。
【0092】
また、大型作業台車1や小型作業台車11を作業位置に配置する際に、アウトリガージャッキ6、17を接地面Gに押圧するようにしたので、台車本体2、12が接地面Gに固定される。したがって、コンクリート塊101bの引き出し作業時や引渡し作業時に台車本体2、12が勝手に動いてしまうのを抑えることができる。
【0093】
さらに、壁押しジャッキ8、18を既設壁101aに押圧するようにしたので、昇降台4、15が壁押しジャッキ8、18を介して既設壁101aに固定される。したがって、コンクリート塊101bの引き出し作業時には壁押しジャッキ8、18の押圧力の反力を利用するので、引き出し作業を容易に行うことができる。
【0094】
よって、本実施の形態のコンクリート塊運搬作業台車1、11は、コンクリート塊101bの撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0095】
また、大型作業台車1においては、図4で示したように、チェーンカップリング34dのボス34eと駆動軸34aとの締結に、本件発明の水平維持手段であるパワーロック式(摩擦式締結)を用いた。これにより、昇降台4の昇降の際には、駆動軸34aの回転駆動力が伝達軸34b、34bにスムーズに伝わるので、昇降台4を常に水平に維持したままで昇降することが可能になる。そのため、昇降台4がどの高さに位置していても、コンクリート塊101bの引き出し作業や引渡し作業を安定した状態で行うことができる。よって、本実施の形態の大型作業台車1は、コンクリート塊101bの撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0096】
また、小型作業台車11においては、図6で示したように、昇降台15をシザーリフト14と、その下側に配置したシリンダー式昇降装置13とを介して台車本体12に固定した。したがって、この小型作業台車11は、昇降台15をシザーリフトのみで台車本体12に固定した場合に比べて、昇降台15を高く上げても昇降台15が安定する。したがって、昇降台15にコンクリート塊101bが載せられても昇降台15がぐらつくことがない。よって、本実施の形態の小型作業台車11は、コンクリート塊101bの撤去作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0097】
さらに、小型作業台車11においては、昇降体132にガイドローラ132dを使用したので、昇降体132をスムーズに上下に駆動させることができ、これによって昇降台15をスムーズに昇降させることができる。
【0098】
また、大型作業台車1や小型作業台車11には、図2や図3、図6で示すように、クッション材23a、12dを備えている。したがって、昇降体31,31、昇降体132が下降して台車本体2、12に接触したときに台車本体2、12にかかる衝撃を和らげることができる。
【0099】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0100】
例えば、小型作業台車11には、昇降台15に壁押しジャッキ18を設けたが、大型作業台車1と同様に台車本体12にも壁押しジャッキ18を設けても良い。
【0101】
また、小型作業台車11には、シリンダー式昇降装置13とシザーリフト14を使用したが、大型作業台車1と同様にラックとピニオンを用いた昇降装置を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように本件発明では、コンクリート塊の撤去作業に伴う安全性を確保しつつ、作業効率を上げることができる。したがって、本件発明を、コンクリート塊の撤去技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 大型作業台車(コンクリート塊運搬作業台車)
2 台車本体
3 昇降装置
4 昇降台
6 アウトリガージャッキ
8 壁押しジャッキ
11 小型作業台車(コンクリート塊運搬作業台車)
13 シリンダー式昇降装置
14 シザーリフト
15 昇降台
101a 既設壁(コンクリート壁)
101b コンクリート塊
132 昇降体
133 油圧シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な台車本体と、
この台車本体に昇降装置を介して上下に移動可能に設けられ、コンクリート壁がブロック状に切断されて得られるコンクリート塊を載せるための昇降台と
を備えることを特徴とするコンクリート塊運搬作業台車。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート塊運搬作業台車において、
前記昇降台に、前記コンクリート壁を押圧するための壁押しジャッキを設けたことを特徴とするコンクリート塊運搬作業台車。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンクリート塊運搬作業台車において、
前記台車本体に、接地面を押圧するためのアウトリガージャッキを設けたことを特徴とするコンクリート塊運搬作業台車。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート塊運搬作業台車において、
前記昇降装置に、前記昇降台の水平状態を保つための水平維持手段を設けたことを特徴とするコンクリート塊運搬作業台車。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコンクリート塊運搬作業台車において、
前記昇降装置は、前記台車本体に固定されてシリンダーを用いて昇降体を上下に駆動するシリンダー式昇降装置と、前記昇降体の上面に固定されたシザーリフトとを備え、
前記昇降台は、前記シザーリフトに支持されて固定されていることを特徴とするコンクリート塊運搬作業台車。
【請求項6】
コンクリート壁がブロック状に切断されて得られるコンクリート塊を、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート塊運搬作業台車を用いて搬出することを特徴とするコンクリート塊撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−105474(P2011−105474A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263580(P2009−263580)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(599019258)株式会社 ちよだ製作所 (3)
【Fターム(参考)】