コンクリート画像抽出方法
【課題】背景や障害物を含むコンクリート構造物の画像から、誤差となるコンクリート面以外の背景や障害物を除去すること。
【解決手段】コンクリート構造物の色と同じ色であって、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素をコンクリート候補領域として構造物抽出部131で抽出し、Cannyエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素をコンクリート領域として抽出し、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いてコンクリート領域を障害物のエッジに到達するまで拡大する。
【解決手段】コンクリート構造物の色と同じ色であって、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素をコンクリート候補領域として構造物抽出部131で抽出し、Cannyエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素をコンクリート領域として抽出し、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いてコンクリート領域を障害物のエッジに到達するまで拡大する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いたコンクリート構造物の診断法に関する。建物や電柱等のコンクリート構造物の表面に生じたひび割れを画像処理によって検知する際に、画像にコンクリート面以外の物体が撮像されている場合には、これがひび割れ誤検知の主要因となるため、これら誤検知要因を排除し、撮像した画像からコンクリート面を構成する画素のみを抽出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、戦後の高度成長期に建設された老朽化した高速道路や近年の施工不良マンション等のコンクリート構造物に対する不安が社会問題化している。コンクリート構造物の耐久性を検査する際の最重要項目の一つに、コンクリート表面のひび割れ検査を挙げることができる。ひび割れは、地震等によってコンクリート構造物に応力が加わることにより、コンクリートが破断して生じるものである。コンクリート表面にひび割れが発生した場合、そのひび割れた箇所から雨水等が侵入し、コンクリート内部の鉄筋に到達すると腐食が始まり、鉄筋の強度が落ちてコンクリート構造物の耐久性低下を引き起こす。このようなコンクリート構造物の耐久性低下を未然に防止するには、コンクリート表面のひび割れを早期に発見し、補修や補強を適宜実施することが重要である。
【0003】
そして、補修を要するひび割れの程度を判断する際には、コンクリート表面に現れたひび割れの「幅」を指標とする場合が多い。鉄筋への到達と直接的に関わる「深さ」も重要な指標ではあるが、ひび割れ幅から深さをある程度予測できるため、表面のひび割れ幅を用いて補修実施の要否を判断することが一般的となっている。なお、コンクリート構造物の耐久性に関する許容ひび割れ幅については、地理的な位置によって地質性・環境性が異なるため、各国の提案基準によって若干のバラツキがある。大凡ではあるが、乾燥空気中であれば幅0.3〜0.4mm、湿空中であればそれ以下の値を許容ひび割れ幅と規定しているものが多い。また、幅が0.2mm以上に到達したひび割れについては、充填材や被覆による補修、或いは鋼製アンカー等による補強の実施対象としている(非特許文献1参照)。
【0004】
さて、現在のひび割れ診断は目視による検査が主流であるが、熟練した作業員であっても、長時間の作業において、サブミリメートル幅のひび割れを見落とさない集中力を維持することは困難である。ゆえに、機械によるひび割れ検査の自動化が望まれているが、機材の入手し易さや現場作業の簡易さという観点から、デジタルカメラによってコンクリート構造物の壁面を遠隔撮影し、その画像から画像処理ソフトウェアによってひび割れの検知を試みるというアプローチが有力視されている。
【0005】
これに対し、コンクリート壁面の画像からひび割れを画像処理により検知するアルゴリズムは既にいくつか提供されており(非特許文献2参照)、このような既存のアルゴリズムでは、一般に、エッジという特徴量を用いてひび割れを検知している。エッジとは隣り合う画素の濃淡が急峻に変化することによって生じた輪郭線であり、ひび割れは画像中において筋状の陰影線として現れるため、エッジは、ひび割れを示す唯一無二の特徴量として捉えることができる。従って、これらの既存のアルゴリズムを用いることにより、コンクリート構造物の壁面のみに検知すべきひび割れが映った画像に対しては、ひび割れの自動検知が有効に機能することになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」、社団法人日本コンクリート工学協会編著、2003年、p274-279
【非特許文献2】岡宗一、外3名、「ニューラルネットワークによるミリ波近接場画像からのコンクリートひび割れ抽出」、基礎・境界公園論文集、2009年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会、A−4−3、2009年、p66
【非特許文献3】高木幹雄、外1名 監修、「画像処理ハンドブック」、東京大学出版会、p28-29,p516-523,p550-565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際の現場では、建物ならば窓やサッシ等、電柱ならばケーブルや足場釘等といった、コンクリート構造物の後方に存在する背景や前方に存在する障害物が複雑に入り組んでいる状況が殆どであるため、ひび割れ検査の対象となるコンクリートのみを撮影することは困難である。よって、そのような背景や障害物が複雑に入り組んで撮影されたコンクリートの画像を用いた場合には、それら背景や障害物の輪郭エッジがひび割れとして誤検知されてしまい、前述のひび割れ検知アルゴリズムは上手く機能しないという問題があった。
【0008】
このような課題を克服するには、ひび割れ検知を試みる前に背景や障害物を画像から除去する処理が必要であるが、背景や障害物の種類は千差万別であるため、非特許文献3に代表されるようなパターン認識技術を適用して様々な背景および障害物を自動的に除去することは困難である。
【0009】
以上のような理由から、背景や障害物を含むコンクリート構造物の画像から、コンクリート面以外の背景や障害物を削除した後に、ひび割れを検知する技術が要求されている。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、エッジを用いてコンクリート面のひび割れを検知するのに先立って、コンクリート構造物の画像から誤差となるコンクリート面以外の背景や障害物を除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、コンピュータにより、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像する第1のステップと、撮像された前記コンクリート構造物を有する撮像画像を記憶手段に記憶する第2のステップと、前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定する第3のステップと、前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定する第4のステップと、前記コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出する第5のステップと、所定のエッジ抽出法を用いて前記コンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出する第6のステップと、前記コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、前記複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出する第7のステップと、所定の領域拡大法を用いて前記コンクリート領域を前記前景のエッジに到達するまで拡大する第8のステップと、拡大された前記コンクリート領域を抽出する第9のステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像し、コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定し、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定し、コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出し、所定のエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、任意の一画素をコンクリート領域として抽出し、所定の領域拡大法を用いてコンクリート領域を前景のエッジに到達するまで拡大し、拡大されたコンクリート領域を抽出するので、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記第4のステップが、前記撮像画像から縦n個横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素を選択し、選択された前記n2個の画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度をそれぞれ規格化し、規格化された前記n2個の画素の輝度の標準偏差を前記正方形の中央画素のテクスチャ値とすることを前記撮像画像の各画素について求め、当該各画素のテクスチャ値が、前記コンクリート構造物のテクスチャ値として予め設定された所定の範囲に含まれるか否かにより前記判定を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記複数の近傍画素が、輝度値iを有する前記任意の一画素から、右方向に一画素離れた近傍画素δk=1と、右方向に二画素離れた近傍画素δk=2と、右方向に三画素離れた近傍画素δk=3と、右方向に四画素離れた近傍画素δk=4と、右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5と、右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6と、右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7と、右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8と、上方向に一画素離れた近傍画素δk=9と、上方向に二画素離れた近傍画素δk=10と、上方向に三画素離れた近傍画素δk=11と、上方向に四画素離れた近傍画素δk=12と、左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13と、左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14と、左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15と、左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16と、であって、各近傍画素の輝度値がjである確率をPδk(i,j)とした場合に、前記第7のステップは、
【0015】
【数1】
上記式(1)を用いて各近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、k=9のときにテクスチャ量Skが最大値であって、かつ、テクスチャ量Skの分散値が0.0001以上の場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、前記第1のステップが、前記検査対象である前記コンクリート構造物に焦点を合わせて撮像することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、前記第5のステップが、前記コンクリート候補領域のうち、単位面積当りの密度が所定の規定値以上の領域を前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明は、前記コンクリート構造物は円柱の形状を有するものであって、前記第1のステップは、前記デジタルカメラのレンズの光軸を前記円柱の回転軸に直交させ、かつ、画像の上下方向が当該回転軸に一致するように前記コンクリート構造物を撮像することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の本発明は、前記第5のステップが、前記コンクリート候補領域のうち画像の上下方向の画素数のヒストグラムが所定の閾値以上の場合に、前記撮像画像における上下方向の画素の全てを前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、前記第6のステップが、Cannyエッジ抽出法を用いることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の本発明は、前記第8のステップが、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ひび割れ検知システムを構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。
【図2】探査領域抽出部を構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。
【図3】コンクリート構造物を撮像した撮像画像の一例を示す図である。
【図4】図3に示した撮像画像を市販のひび割れ検知ソフトウェアによって処理した結果を示す図である。
【図5】色判定部の処理を説明する図である。
【図6】テクスチャ判定部の処理を説明する図である。
【図7】構造物判定部の処理を説明する図である。
【図8】障害物のエッジの抽出結果を示す図である。
【図9】コンクリート画素の塗り潰し開始点を決定する処理を説明する図である。
【図10】コンクリート面と非コンクリート面とにおけるテクスチャ量を比較して示す図である。
【図11】コンクリート画素抽出部の処理を説明する図である。
【図12】コンクリート面の抽出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述したように、建物や電柱等のコンクリート構造物をデジタルカメラ等で撮像し、コンクリート構造物の表面に生じたひび割れを画像処理により検知する方法は既に技術開示されている。しかしながら、画像内にコンクリート面以外の物体が併せて撮像されている場合には、当該物体がひび割れ誤検知の主要因となる。したがって、ひび割れを検知する前に、撮像画像からコンクリート面以外の画像要素を除去することが必要である。以下、本実施の形態では、コンクリート構造物の後方に存在する背景と、コンクリート構造物の前方に前景として存在する障害物とを除去する方法について説明する。
【0025】
本実施の形態に係るコンクリート画像抽出方法は、デジタルカメラで撮像した画像から、検査対象ではない背景や障害物の特徴を有する画素を抽出して除去するのではなく、検査対象であるコンクリート構造物の特徴を有する画素を抽出し、当該画素に適合しない画素を除去することを特徴としている。また、撮像時において、検査対象であるコンクリート構造物を撮像した画素や画像上の特徴が、コンクリート構造物の特徴を最大限に表すように撮像することも特徴としている。以下、一実施の形態に係るコンクリート画像抽出方法の画像処理アルゴリズムについて説明する。
【0026】
図1は、ひび割れ検知システムを構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。本実施の形態に係るひび割れ検知システム1は、撮像部11と、画像記憶部12と、探査領域抽出部13と、ひび割れ探査部14と、表示部15とで構成されている。
【0027】
撮像部11は、検査対象であるコンクリート構造物を、当該コンクリート構造物に焦点(ピント)を合わせてデジタルカメラで撮像する機能を有している。
【0028】
画像記憶部12は、撮像部11で撮像されたコンクリート構造物を有する撮像画像を読出可能に記憶しておく機能を有している。なお、このような画像記憶部12としては、メモリやハードディスク等の記憶装置で実現可能である。
【0029】
探査領域抽出部13は、画像記憶部12から撮像画像を読み出して、コンクリート構造物を映した当該撮像画像から、ひび割れ探査範囲となるコンクリート面の画素(コンクリート領域)を抽出する機能を有している。
【0030】
ひび割れ探査部14は、探査領域抽出部13により抽出されたコンクリート領域を探査範囲として、非特許文献2等に開示されたアルゴリズムを用いて、ひび割れ箇所を探査する機能を有している。
【0031】
表示部15は、ひび割れ探査部14により探査されたひび割れ箇所をひび割れ検知システム1の利用者が視認可能に表示する機能を有している。
【0032】
次に、探査領域抽出部13について詳細に説明する。図2は、探査領域抽出部を構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。探査領域抽出部13は、色判定部131aと、テクスチャ判定部131bと、構造物判定部131cとで構成され、検査対象であるコンクリート構造物の特徴を有する画素を抽出する構造物抽出部131と、障害物エッジ抽出部132aと、コンクリート画素抽出部132bとで構成され、構造物抽出部131により抽出された画素からコンクリート面のみを抽出するコンクリート面抽出部132とで構成されている。以下、コンクリート構造物として図3に示す電柱の撮像画像を一例に用いて、探査領域抽出部13を構成する上記各機能部の機能について詳細に説明する。
【0033】
図4は、図3に示した撮像画像を市販のひび割れ検知ソフトウェアによって処理した結果である。図4の拡大図から分かるように、建物・木・ベルト・ケーブル・足場釘等がひび割れとして誤検知されている。ゆえに、後段のひび割れ探査部14でひび割れ検知処理を行う前に、これら障害物を除去する必要がある。
【0034】
まず、構造物抽出部131について説明する。図5は、色判定部の処理を説明する図である。色判定部131aでは、撮像画像を構成している各画素の色(例えば、輝度値、濃淡値、彩度値等)を用いてコンクリート面の可能性を有する色の画素と、それ以外の色の画素とを判定し、それぞれ抽出する。一般的に、コンクリート面の色は灰色であることから、例えば、図5(a)に示すCIE Lab表色系(色評価系の一例)を用いて色の彩度を表現し、彩度が0に近い画素をコンクリート面として判定する。図5(b)は、色の判定結果であり、コンクリート面の色を有する画素に判定結果1が割り当てられ、コンクリート面の色を有しない画素に判定結果0を割り当てられている。
【0035】
ここで、撮像画像にはコンクリート構造物と同色の家屋等が混在しているため、色の判定結果のみからでは、コンクリート構造物である電柱を抽出することは困難である。そこで、電柱のみを正確に抽出するには、上記色情報に加えて、以下に説明するテクスチャ情報を追加して利用することが必要がある。
【0036】
図6は、テクスチャ判定部の処理を説明する図である。テクスチャ判定部131bでは、コンクリート面の可能性を有するテクスチャの画素と、それ以外のテクスチャの画素とを判定し、それぞれ抽出する。コンクリート面の可能性が高いと判断されるテクスチャについては、例えば、以下の通り判別する。
【0037】
まず、ある任意の一画素(中央画素)と、当該中央画素に対して上下左右斜め方向に隣接する周辺8近傍の各隣接画素(図6(a)参照)とに対して輝度を規格化する。具体的には、中央画素を含めた9画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度を規格化する。
【0038】
次に、この9画素について、規格化した輝度の標準偏差でテクスチャを数値化し、規格化された9画素の輝度の標準偏差を中央画素のテクスチャ値とする。この数値化した結果を図6(b)に示す。規格化した輝度の標準偏差のテクスチャ値は、0に近いほど滑らかな表面を持つ物体の画像を現すものとなる。
【0039】
その結果、コンクリート面の標準偏差値を解析すると0.05以上かつ0.10未満に収まることから、この範囲にテクスチャ分散値を持つ画素に判定結果1を割り当て、それ以外の画素に判定結果0を割り当てる。すなわち、テクスチャ判定部131bにより判定結果が1である画素は、コンクリートの画像である可能性を有するものとなる。
【0040】
以上では、縦3個×横3個からなる正方形の9画素を一例に説明したが、テクスチャの判定に用いる画素数は、縦n個×横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素としてもよい。すなわち、縦n個×横n個のn2個の画素を選択し、選択されたn2個の画素について、輝度の標準偏差(最も大きな画素の輝度が1となるように、各画素の輝度を規格化したもの)でテクスチャを数値化し、その結果が、例えば0.05以上かつ0.1未満に収まる場合に判定結果1を中央画素に適用し、当該結果が上記範囲に収まらない場合に判定結果0を適用する。nの値を大きくすることにより、標準偏差における統計母数が大きくなることから判定処理速度が遅くなるものの、処理後の画像がより滑らかになることが期待される。
【0041】
また、前述した撮像部11は、検査対象であるコンクリート構造物が電柱のような円柱の形状の場合に、デジタルカメラのレンズの光軸を円柱の回転軸に直交させ、かつ、デジタルカメラの撮像画像の上下方向が当該回転軸に一致するように電柱を撮像することも可能である。この場合、電柱は画像枠の水平方向に対して垂直に撮像されるため、電柱と背景との境界も当該画像枠の水平方向に対して垂直となる。これにより、テクスチャ判定部131bの処理結果から得られるコンクリート面の可能性を有する画素が分布している場所と、その他の画素との境界についても、上記画像枠の水平方向に対して垂直にすることができる。
【0042】
図7は、構造物判定部の処理を説明する図である。構造物判定部131cは、色判定部131aの出力結果と、テクスチャ判定部131bの出力結果とを乗算する(ANDをとる)ことにより、検査対象であるコンクリートの候補領域を抽出する。図7(a)は、その乗算結果を示しており、コンクリート面の可能性を有する画素がコンクリート候補領域として抽出されている。この画像に対して上下方向(縦方向)のヒストグラムを求めたものが図7(b)であり、特定の閾値で分離処理(閾値カット)を施すことにより、図7(c)に示すように電柱を抽出することができる。なお、分散処理に用いる特定の閾値としては、例えば、ピーク値の半分を用いることができる。
【0043】
なお、コンクリート構造物と背景との境界が画像枠の水平方向に対して垂直となるように撮像されている場合には、上下方向の画素数のヒストグラムが特定の閾値以上であれば、その上下方向の画素の全部をコンクリート構造物の画素と判定するようにしてもよい。この場合、撮像方法に制約がつくものの、判定処理演算が簡易になることから、誤判定の低下や処理コストの低下が期待できる。
【0044】
また、コンクリート構造物が円柱でない場合や、デジタルカメラのレンズの光軸を円柱の回転軸に直交しない場合や、デジタルカメラの画像の上下方向が回転軸と一致するように撮影しない場合には、上述の処理結果から得られるコンクリート面の可能性を有する画素が分布している場所と、その他の画素との境界は、画像の水平方向に対して垂直となるとは限らない。そのような場合には、乗算結果から得られるコンクリート面の可能性を有するコンクリート候補領域の単位面積当りの密度が一定の規定値以上の領域を、コンクリート候補領域と判定するようにしてもよい。この場合には判定演算処理は高度になるものの、撮像方法に制約はないという利点がある。
【0045】
また、背景に他のコンクリート構造物が映っている場合であっても、検査対象に焦点(ピント)が合わせて撮像されているので、背景のコンクリート構造物はボケて映り、手前の検査対象のみを抽出することが可能となる。これにより、焦点(ピント)が合っている検査対象のコンクリート構造物の画素に比べて、背景のコンクリート構造物の画素では周辺画素との輝度の差が小さくなることから、標準偏差も小さくなる。従って、背景のコンクリート構造物は、テクスチャ判定部131bにおいて計算されるテクスチャ値によって排除することができる。このように、テクスチャ判定部131bの標準偏差による計算を用いることにより、デジタルカメラの焦点(ピント)を検査対象のコンクリート構造物に合わせるだけで、検査対象のコンクリート構造物を背景のコンクリート構造物から簡単に分離することが可能となるという効果がある。
【0046】
以上は、検査対象のコンクリート構造物を背景画像から分離して抽出する方法について説明したものである。コンクリート構造物から、コンクリート構造物内に前景として存在する障害物を分離して排除することは上記の方法のみでは不可能であり、これ以降で説明する方法と組み合わせることにより実現される。
【0047】
次に、コンクリート面抽出部132について説明する。図7(c)に示した構造物抽出部131の処理結果によれば、背景領域を除いた電柱領域のみが抽出されているが、電柱の前にケーブル・ベルト・足場釘等のひび割れ誤検知の要因となる障害物が覆い被さっているため、後段のひび割れ探査部14でひび割れ検知処理を行うには未だ不完全である。これらの障害物を避けてコンクリート面のみを抽出するには、まず、障害物エッジ抽出部132aにおいて、前景として存在する障害物のエッジを抽出する。このエッジ抽出処理は、例えば、Cannyエッジ抽出法を用いることで実現可能である。図8に、エッジの抽出結果を示す。
【0048】
次に、コンクリート画素抽出部132bにおいて、コンクリート画素の抽出を行う。構造物抽出部131で抽出されたコンクリート候補領域内で、図9に示すように、ある任意の一画素(中央画素)Aに近傍する近傍16箇所の各近傍画素δk=1〜16(中央画素Aから、右方向に一画素離れた近傍画素δk=1、右方向に二画素離れた近傍画素δk=2、右方向に三画素離れた近傍画素δk=3、右方向に四画素離れた近傍画素δk=4、右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5、右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6、右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7、右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8、上方向に一画素離れた近傍画素δk=9、上方向に二画素離れた近傍画素δk=10、上方向に三画素離れた近傍画素δk=11、上方向に四画素離れた近傍画素δk=12、左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13、左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14、左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15、左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16)の各輝度値を用いて、以下の式(1)で定義される均質性と呼ばれるテクスチャ量Skを中央画素Aについて計算する。
【0049】
【数2】
但し、k(=1,2,…,16)は、近傍画素の位置である。Pδ(i,j)は、輝度値iの中央画素Aからδ(r,θ)離れた近傍画素δkの輝度値がjである確率である。rは、中央画素Aと近傍画素δkとの間の距離であり、θは、中央画素Aからみた画像の水平方向に対する近傍画素δkの角度である。なお、i,jの画素の輝度値は256階調であることが一般的であるが、計算時間を短縮するために8階調に圧縮するのが望ましい。また、テクスチャ量Skの具体的な計算方法については、非特許文献3の517頁〜521頁に記載されているため、ここではその計算方法は省略する。
【0050】
ここで、16箇所の近傍画素について式(1)を計算すると、中央画素Aに対する16個のテクスチャ量Skをスカラ量として得ることができる。図10(a)及び図10(b)は、近傍画素δkの位置kとテクスチャ量Skとの関係をプロットしたものであり、図10(a)はコンクリート面、図10(b)は非コンクリート面のある領域を表している。図10(a)から分かるように、コンクリート面は、近傍画素δ9においてテクスチャ量Sが最大となることを特徴としている。
【0051】
ゆえに、「位置k=9のときにテクスチャ量Sが最大となり、かつ、テクスチャ量Sの分散値が0.0001以上の場合に、中央画素Aはコンクリート画素である」と定義する。補足すると、凹凸量が少ない非コンクリート面では、テクスチャ量Skの値が全体的にフラットになり、k=9のときにテクスチャ量Sが偶発的に僅差で最大となることが有り得るため、テクスチャ量S9が最大というだけではコンクリート面の特徴量を規定するのに不十分である。そこで、後段の「テクスチャ量Sの分散値が0.0001以上」という条件が必要となる。
【0052】
構造物抽出部131によって抽出された電柱領域の中から、上記定義に該当する画素をコンクリート領域として抽出し、図11に示すように、コンクリート画素抽出部132bにより、抽出された画素を塗り潰しの開始点として、モルフォロジーのDilationと呼ばれる領域拡大法を用いて開始点を膨張させる。この画素の膨張は、障害物エッジ抽出部132aで抽出された障害物のエッジに衝突したときに停止させる。これにより、コンクリート構造物領域内で障害物を除くコンクリート面のみを抽出することが可能となる。
【0053】
なお、構造物抽出部131とコンクリート面抽出部132とで各々別のテクスチャ計算を行うのは、計算コストの違いによるものである。構造物抽出部131では撮像画像の全体を処理するため、計算コストの小さい8近傍の標準偏差を用いている。一方、コンクリート面抽出部132では塗り潰しの開始点を数回程度探すだけであるため、計算コストは大きいが精度の高い16近傍の同時生起行列を用いている。
【0054】
図12は、コンクリート面の抽出結果を示す図である。ひび割れ探査部14は、上述したように非特許文献2に開示されたアルゴリズムを用いて、探査領域抽出部13で抽出されたコンクリート領域のみを処理範囲対象として、ひび割れ検知を行う。その後、表示部15により、パソコンのモニタを用いて検知結果が表示される。
【0055】
続いて、ひび割れ検知システムのコンクリート画像抽出処理フローについて説明する。まず、撮像部11により、検査対象であるコンクリート構造物がデジタルカメラで撮像される(S1)。
【0056】
次いで、画像記憶部12により、S1で撮像されたコンクリート構造物を有する撮像画像が記憶される(S2)。
【0057】
次いで、色判定部131aにより、画像記憶部12から撮像画像が読み出され、コンクリート構造物の色と同じ色の画素と、当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とが判定される(S3)。
【0058】
次いで、テクスチャ判定部131bにより、画像記憶部12から撮像画像が読み出され、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と、当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とが判定される(S4)。
【0059】
次いで、構造物判定部131cにより、S3でコンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、S4でコンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素がコンクリート候補領域として抽出される(S5)。
【0060】
次いで、障害物エッジ抽出部132aにより、Cannyエッジ抽出法を用いて、S5で抽出されたコンクリート候補領域から、当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジが抽出される(S6)。
【0061】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素がコンクリート領域として抽出される(S7)。
【0062】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いて、S7で抽出されたコンクリート領域が、S6で抽出された障害物のエッジに到達するまで拡大される(S8)。
【0063】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、S8で拡大されたコンクリート領域が抽出される(S9)。
【0064】
次いで、ひび割れ探査部14により、S9で抽出されたコンクリート領域を対象にひび割れ検知が行われる(S10)。
【0065】
最後に、表示部15により、S10のひび割れ検知結果がモニタに表示される(S11)。
【0066】
以上に示した通り、本実施の形態を用いることにより、コンクリート構造物の画像からコンクリート面以外の背景や障害物を削除した後に、ひび割れを検知することが可能となる。
【0067】
最後に、本ひび割れ検知システム1は、CPU等の演算処理装置やメモリ等の記憶装置を備えたコンピュータにより構成可能なものであり、各部の処理はプログラムによって実行される。また、このプログラムは記憶装置に記憶されており、記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能であるをこと付言しておく。
【0068】
本実施の形態によれば、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像し、当該撮像画像を用いて、コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出し、Cannyエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素をコンクリート領域として抽出し、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いてコンクリート領域を障害物のエッジに到達するまで拡大し、拡大されたコンクリート領域を抽出するので、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…ひび割れ検知システム
11…撮像部
12…画像記憶部
13…探査領域抽出部
131…構造物抽出部
131a…色判定部
131b…テクスチャ判定部
131c…構造物判定部
132…コンクリート面抽出部
132a…障害物エッジ抽出部
132b…コンクリート画素抽出部
14…ひび割れ探査部
15…表示部
S1〜S11…ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を用いたコンクリート構造物の診断法に関する。建物や電柱等のコンクリート構造物の表面に生じたひび割れを画像処理によって検知する際に、画像にコンクリート面以外の物体が撮像されている場合には、これがひび割れ誤検知の主要因となるため、これら誤検知要因を排除し、撮像した画像からコンクリート面を構成する画素のみを抽出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、戦後の高度成長期に建設された老朽化した高速道路や近年の施工不良マンション等のコンクリート構造物に対する不安が社会問題化している。コンクリート構造物の耐久性を検査する際の最重要項目の一つに、コンクリート表面のひび割れ検査を挙げることができる。ひび割れは、地震等によってコンクリート構造物に応力が加わることにより、コンクリートが破断して生じるものである。コンクリート表面にひび割れが発生した場合、そのひび割れた箇所から雨水等が侵入し、コンクリート内部の鉄筋に到達すると腐食が始まり、鉄筋の強度が落ちてコンクリート構造物の耐久性低下を引き起こす。このようなコンクリート構造物の耐久性低下を未然に防止するには、コンクリート表面のひび割れを早期に発見し、補修や補強を適宜実施することが重要である。
【0003】
そして、補修を要するひび割れの程度を判断する際には、コンクリート表面に現れたひび割れの「幅」を指標とする場合が多い。鉄筋への到達と直接的に関わる「深さ」も重要な指標ではあるが、ひび割れ幅から深さをある程度予測できるため、表面のひび割れ幅を用いて補修実施の要否を判断することが一般的となっている。なお、コンクリート構造物の耐久性に関する許容ひび割れ幅については、地理的な位置によって地質性・環境性が異なるため、各国の提案基準によって若干のバラツキがある。大凡ではあるが、乾燥空気中であれば幅0.3〜0.4mm、湿空中であればそれ以下の値を許容ひび割れ幅と規定しているものが多い。また、幅が0.2mm以上に到達したひび割れについては、充填材や被覆による補修、或いは鋼製アンカー等による補強の実施対象としている(非特許文献1参照)。
【0004】
さて、現在のひび割れ診断は目視による検査が主流であるが、熟練した作業員であっても、長時間の作業において、サブミリメートル幅のひび割れを見落とさない集中力を維持することは困難である。ゆえに、機械によるひび割れ検査の自動化が望まれているが、機材の入手し易さや現場作業の簡易さという観点から、デジタルカメラによってコンクリート構造物の壁面を遠隔撮影し、その画像から画像処理ソフトウェアによってひび割れの検知を試みるというアプローチが有力視されている。
【0005】
これに対し、コンクリート壁面の画像からひび割れを画像処理により検知するアルゴリズムは既にいくつか提供されており(非特許文献2参照)、このような既存のアルゴリズムでは、一般に、エッジという特徴量を用いてひび割れを検知している。エッジとは隣り合う画素の濃淡が急峻に変化することによって生じた輪郭線であり、ひび割れは画像中において筋状の陰影線として現れるため、エッジは、ひび割れを示す唯一無二の特徴量として捉えることができる。従って、これらの既存のアルゴリズムを用いることにより、コンクリート構造物の壁面のみに検知すべきひび割れが映った画像に対しては、ひび割れの自動検知が有効に機能することになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」、社団法人日本コンクリート工学協会編著、2003年、p274-279
【非特許文献2】岡宗一、外3名、「ニューラルネットワークによるミリ波近接場画像からのコンクリートひび割れ抽出」、基礎・境界公園論文集、2009年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ大会、A−4−3、2009年、p66
【非特許文献3】高木幹雄、外1名 監修、「画像処理ハンドブック」、東京大学出版会、p28-29,p516-523,p550-565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際の現場では、建物ならば窓やサッシ等、電柱ならばケーブルや足場釘等といった、コンクリート構造物の後方に存在する背景や前方に存在する障害物が複雑に入り組んでいる状況が殆どであるため、ひび割れ検査の対象となるコンクリートのみを撮影することは困難である。よって、そのような背景や障害物が複雑に入り組んで撮影されたコンクリートの画像を用いた場合には、それら背景や障害物の輪郭エッジがひび割れとして誤検知されてしまい、前述のひび割れ検知アルゴリズムは上手く機能しないという問題があった。
【0008】
このような課題を克服するには、ひび割れ検知を試みる前に背景や障害物を画像から除去する処理が必要であるが、背景や障害物の種類は千差万別であるため、非特許文献3に代表されるようなパターン認識技術を適用して様々な背景および障害物を自動的に除去することは困難である。
【0009】
以上のような理由から、背景や障害物を含むコンクリート構造物の画像から、コンクリート面以外の背景や障害物を削除した後に、ひび割れを検知する技術が要求されている。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、エッジを用いてコンクリート面のひび割れを検知するのに先立って、コンクリート構造物の画像から誤差となるコンクリート面以外の背景や障害物を除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、コンピュータにより、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像する第1のステップと、撮像された前記コンクリート構造物を有する撮像画像を記憶手段に記憶する第2のステップと、前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定する第3のステップと、前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定する第4のステップと、前記コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出する第5のステップと、所定のエッジ抽出法を用いて前記コンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出する第6のステップと、前記コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、前記複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出する第7のステップと、所定の領域拡大法を用いて前記コンクリート領域を前記前景のエッジに到達するまで拡大する第8のステップと、拡大された前記コンクリート領域を抽出する第9のステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像し、コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定し、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定し、コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出し、所定のエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、任意の一画素をコンクリート領域として抽出し、所定の領域拡大法を用いてコンクリート領域を前景のエッジに到達するまで拡大し、拡大されたコンクリート領域を抽出するので、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記第4のステップが、前記撮像画像から縦n個横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素を選択し、選択された前記n2個の画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度をそれぞれ規格化し、規格化された前記n2個の画素の輝度の標準偏差を前記正方形の中央画素のテクスチャ値とすることを前記撮像画像の各画素について求め、当該各画素のテクスチャ値が、前記コンクリート構造物のテクスチャ値として予め設定された所定の範囲に含まれるか否かにより前記判定を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記複数の近傍画素が、輝度値iを有する前記任意の一画素から、右方向に一画素離れた近傍画素δk=1と、右方向に二画素離れた近傍画素δk=2と、右方向に三画素離れた近傍画素δk=3と、右方向に四画素離れた近傍画素δk=4と、右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5と、右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6と、右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7と、右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8と、上方向に一画素離れた近傍画素δk=9と、上方向に二画素離れた近傍画素δk=10と、上方向に三画素離れた近傍画素δk=11と、上方向に四画素離れた近傍画素δk=12と、左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13と、左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14と、左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15と、左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16と、であって、各近傍画素の輝度値がjである確率をPδk(i,j)とした場合に、前記第7のステップは、
【0015】
【数1】
上記式(1)を用いて各近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、k=9のときにテクスチャ量Skが最大値であって、かつ、テクスチャ量Skの分散値が0.0001以上の場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、前記第1のステップが、前記検査対象である前記コンクリート構造物に焦点を合わせて撮像することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明は、前記第5のステップが、前記コンクリート候補領域のうち、単位面積当りの密度が所定の規定値以上の領域を前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明は、前記コンクリート構造物は円柱の形状を有するものであって、前記第1のステップは、前記デジタルカメラのレンズの光軸を前記円柱の回転軸に直交させ、かつ、画像の上下方向が当該回転軸に一致するように前記コンクリート構造物を撮像することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の本発明は、前記第5のステップが、前記コンクリート候補領域のうち画像の上下方向の画素数のヒストグラムが所定の閾値以上の場合に、前記撮像画像における上下方向の画素の全てを前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、前記第6のステップが、Cannyエッジ抽出法を用いることを特徴とする。
【0021】
請求項9に記載の本発明は、前記第8のステップが、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ひび割れ検知システムを構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。
【図2】探査領域抽出部を構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。
【図3】コンクリート構造物を撮像した撮像画像の一例を示す図である。
【図4】図3に示した撮像画像を市販のひび割れ検知ソフトウェアによって処理した結果を示す図である。
【図5】色判定部の処理を説明する図である。
【図6】テクスチャ判定部の処理を説明する図である。
【図7】構造物判定部の処理を説明する図である。
【図8】障害物のエッジの抽出結果を示す図である。
【図9】コンクリート画素の塗り潰し開始点を決定する処理を説明する図である。
【図10】コンクリート面と非コンクリート面とにおけるテクスチャ量を比較して示す図である。
【図11】コンクリート画素抽出部の処理を説明する図である。
【図12】コンクリート面の抽出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述したように、建物や電柱等のコンクリート構造物をデジタルカメラ等で撮像し、コンクリート構造物の表面に生じたひび割れを画像処理により検知する方法は既に技術開示されている。しかしながら、画像内にコンクリート面以外の物体が併せて撮像されている場合には、当該物体がひび割れ誤検知の主要因となる。したがって、ひび割れを検知する前に、撮像画像からコンクリート面以外の画像要素を除去することが必要である。以下、本実施の形態では、コンクリート構造物の後方に存在する背景と、コンクリート構造物の前方に前景として存在する障害物とを除去する方法について説明する。
【0025】
本実施の形態に係るコンクリート画像抽出方法は、デジタルカメラで撮像した画像から、検査対象ではない背景や障害物の特徴を有する画素を抽出して除去するのではなく、検査対象であるコンクリート構造物の特徴を有する画素を抽出し、当該画素に適合しない画素を除去することを特徴としている。また、撮像時において、検査対象であるコンクリート構造物を撮像した画素や画像上の特徴が、コンクリート構造物の特徴を最大限に表すように撮像することも特徴としている。以下、一実施の形態に係るコンクリート画像抽出方法の画像処理アルゴリズムについて説明する。
【0026】
図1は、ひび割れ検知システムを構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。本実施の形態に係るひび割れ検知システム1は、撮像部11と、画像記憶部12と、探査領域抽出部13と、ひび割れ探査部14と、表示部15とで構成されている。
【0027】
撮像部11は、検査対象であるコンクリート構造物を、当該コンクリート構造物に焦点(ピント)を合わせてデジタルカメラで撮像する機能を有している。
【0028】
画像記憶部12は、撮像部11で撮像されたコンクリート構造物を有する撮像画像を読出可能に記憶しておく機能を有している。なお、このような画像記憶部12としては、メモリやハードディスク等の記憶装置で実現可能である。
【0029】
探査領域抽出部13は、画像記憶部12から撮像画像を読み出して、コンクリート構造物を映した当該撮像画像から、ひび割れ探査範囲となるコンクリート面の画素(コンクリート領域)を抽出する機能を有している。
【0030】
ひび割れ探査部14は、探査領域抽出部13により抽出されたコンクリート領域を探査範囲として、非特許文献2等に開示されたアルゴリズムを用いて、ひび割れ箇所を探査する機能を有している。
【0031】
表示部15は、ひび割れ探査部14により探査されたひび割れ箇所をひび割れ検知システム1の利用者が視認可能に表示する機能を有している。
【0032】
次に、探査領域抽出部13について詳細に説明する。図2は、探査領域抽出部を構成する画像処理アルゴリズムの機能ブロックを示す図である。探査領域抽出部13は、色判定部131aと、テクスチャ判定部131bと、構造物判定部131cとで構成され、検査対象であるコンクリート構造物の特徴を有する画素を抽出する構造物抽出部131と、障害物エッジ抽出部132aと、コンクリート画素抽出部132bとで構成され、構造物抽出部131により抽出された画素からコンクリート面のみを抽出するコンクリート面抽出部132とで構成されている。以下、コンクリート構造物として図3に示す電柱の撮像画像を一例に用いて、探査領域抽出部13を構成する上記各機能部の機能について詳細に説明する。
【0033】
図4は、図3に示した撮像画像を市販のひび割れ検知ソフトウェアによって処理した結果である。図4の拡大図から分かるように、建物・木・ベルト・ケーブル・足場釘等がひび割れとして誤検知されている。ゆえに、後段のひび割れ探査部14でひび割れ検知処理を行う前に、これら障害物を除去する必要がある。
【0034】
まず、構造物抽出部131について説明する。図5は、色判定部の処理を説明する図である。色判定部131aでは、撮像画像を構成している各画素の色(例えば、輝度値、濃淡値、彩度値等)を用いてコンクリート面の可能性を有する色の画素と、それ以外の色の画素とを判定し、それぞれ抽出する。一般的に、コンクリート面の色は灰色であることから、例えば、図5(a)に示すCIE Lab表色系(色評価系の一例)を用いて色の彩度を表現し、彩度が0に近い画素をコンクリート面として判定する。図5(b)は、色の判定結果であり、コンクリート面の色を有する画素に判定結果1が割り当てられ、コンクリート面の色を有しない画素に判定結果0を割り当てられている。
【0035】
ここで、撮像画像にはコンクリート構造物と同色の家屋等が混在しているため、色の判定結果のみからでは、コンクリート構造物である電柱を抽出することは困難である。そこで、電柱のみを正確に抽出するには、上記色情報に加えて、以下に説明するテクスチャ情報を追加して利用することが必要がある。
【0036】
図6は、テクスチャ判定部の処理を説明する図である。テクスチャ判定部131bでは、コンクリート面の可能性を有するテクスチャの画素と、それ以外のテクスチャの画素とを判定し、それぞれ抽出する。コンクリート面の可能性が高いと判断されるテクスチャについては、例えば、以下の通り判別する。
【0037】
まず、ある任意の一画素(中央画素)と、当該中央画素に対して上下左右斜め方向に隣接する周辺8近傍の各隣接画素(図6(a)参照)とに対して輝度を規格化する。具体的には、中央画素を含めた9画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度を規格化する。
【0038】
次に、この9画素について、規格化した輝度の標準偏差でテクスチャを数値化し、規格化された9画素の輝度の標準偏差を中央画素のテクスチャ値とする。この数値化した結果を図6(b)に示す。規格化した輝度の標準偏差のテクスチャ値は、0に近いほど滑らかな表面を持つ物体の画像を現すものとなる。
【0039】
その結果、コンクリート面の標準偏差値を解析すると0.05以上かつ0.10未満に収まることから、この範囲にテクスチャ分散値を持つ画素に判定結果1を割り当て、それ以外の画素に判定結果0を割り当てる。すなわち、テクスチャ判定部131bにより判定結果が1である画素は、コンクリートの画像である可能性を有するものとなる。
【0040】
以上では、縦3個×横3個からなる正方形の9画素を一例に説明したが、テクスチャの判定に用いる画素数は、縦n個×横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素としてもよい。すなわち、縦n個×横n個のn2個の画素を選択し、選択されたn2個の画素について、輝度の標準偏差(最も大きな画素の輝度が1となるように、各画素の輝度を規格化したもの)でテクスチャを数値化し、その結果が、例えば0.05以上かつ0.1未満に収まる場合に判定結果1を中央画素に適用し、当該結果が上記範囲に収まらない場合に判定結果0を適用する。nの値を大きくすることにより、標準偏差における統計母数が大きくなることから判定処理速度が遅くなるものの、処理後の画像がより滑らかになることが期待される。
【0041】
また、前述した撮像部11は、検査対象であるコンクリート構造物が電柱のような円柱の形状の場合に、デジタルカメラのレンズの光軸を円柱の回転軸に直交させ、かつ、デジタルカメラの撮像画像の上下方向が当該回転軸に一致するように電柱を撮像することも可能である。この場合、電柱は画像枠の水平方向に対して垂直に撮像されるため、電柱と背景との境界も当該画像枠の水平方向に対して垂直となる。これにより、テクスチャ判定部131bの処理結果から得られるコンクリート面の可能性を有する画素が分布している場所と、その他の画素との境界についても、上記画像枠の水平方向に対して垂直にすることができる。
【0042】
図7は、構造物判定部の処理を説明する図である。構造物判定部131cは、色判定部131aの出力結果と、テクスチャ判定部131bの出力結果とを乗算する(ANDをとる)ことにより、検査対象であるコンクリートの候補領域を抽出する。図7(a)は、その乗算結果を示しており、コンクリート面の可能性を有する画素がコンクリート候補領域として抽出されている。この画像に対して上下方向(縦方向)のヒストグラムを求めたものが図7(b)であり、特定の閾値で分離処理(閾値カット)を施すことにより、図7(c)に示すように電柱を抽出することができる。なお、分散処理に用いる特定の閾値としては、例えば、ピーク値の半分を用いることができる。
【0043】
なお、コンクリート構造物と背景との境界が画像枠の水平方向に対して垂直となるように撮像されている場合には、上下方向の画素数のヒストグラムが特定の閾値以上であれば、その上下方向の画素の全部をコンクリート構造物の画素と判定するようにしてもよい。この場合、撮像方法に制約がつくものの、判定処理演算が簡易になることから、誤判定の低下や処理コストの低下が期待できる。
【0044】
また、コンクリート構造物が円柱でない場合や、デジタルカメラのレンズの光軸を円柱の回転軸に直交しない場合や、デジタルカメラの画像の上下方向が回転軸と一致するように撮影しない場合には、上述の処理結果から得られるコンクリート面の可能性を有する画素が分布している場所と、その他の画素との境界は、画像の水平方向に対して垂直となるとは限らない。そのような場合には、乗算結果から得られるコンクリート面の可能性を有するコンクリート候補領域の単位面積当りの密度が一定の規定値以上の領域を、コンクリート候補領域と判定するようにしてもよい。この場合には判定演算処理は高度になるものの、撮像方法に制約はないという利点がある。
【0045】
また、背景に他のコンクリート構造物が映っている場合であっても、検査対象に焦点(ピント)が合わせて撮像されているので、背景のコンクリート構造物はボケて映り、手前の検査対象のみを抽出することが可能となる。これにより、焦点(ピント)が合っている検査対象のコンクリート構造物の画素に比べて、背景のコンクリート構造物の画素では周辺画素との輝度の差が小さくなることから、標準偏差も小さくなる。従って、背景のコンクリート構造物は、テクスチャ判定部131bにおいて計算されるテクスチャ値によって排除することができる。このように、テクスチャ判定部131bの標準偏差による計算を用いることにより、デジタルカメラの焦点(ピント)を検査対象のコンクリート構造物に合わせるだけで、検査対象のコンクリート構造物を背景のコンクリート構造物から簡単に分離することが可能となるという効果がある。
【0046】
以上は、検査対象のコンクリート構造物を背景画像から分離して抽出する方法について説明したものである。コンクリート構造物から、コンクリート構造物内に前景として存在する障害物を分離して排除することは上記の方法のみでは不可能であり、これ以降で説明する方法と組み合わせることにより実現される。
【0047】
次に、コンクリート面抽出部132について説明する。図7(c)に示した構造物抽出部131の処理結果によれば、背景領域を除いた電柱領域のみが抽出されているが、電柱の前にケーブル・ベルト・足場釘等のひび割れ誤検知の要因となる障害物が覆い被さっているため、後段のひび割れ探査部14でひび割れ検知処理を行うには未だ不完全である。これらの障害物を避けてコンクリート面のみを抽出するには、まず、障害物エッジ抽出部132aにおいて、前景として存在する障害物のエッジを抽出する。このエッジ抽出処理は、例えば、Cannyエッジ抽出法を用いることで実現可能である。図8に、エッジの抽出結果を示す。
【0048】
次に、コンクリート画素抽出部132bにおいて、コンクリート画素の抽出を行う。構造物抽出部131で抽出されたコンクリート候補領域内で、図9に示すように、ある任意の一画素(中央画素)Aに近傍する近傍16箇所の各近傍画素δk=1〜16(中央画素Aから、右方向に一画素離れた近傍画素δk=1、右方向に二画素離れた近傍画素δk=2、右方向に三画素離れた近傍画素δk=3、右方向に四画素離れた近傍画素δk=4、右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5、右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6、右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7、右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8、上方向に一画素離れた近傍画素δk=9、上方向に二画素離れた近傍画素δk=10、上方向に三画素離れた近傍画素δk=11、上方向に四画素離れた近傍画素δk=12、左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13、左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14、左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15、左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16)の各輝度値を用いて、以下の式(1)で定義される均質性と呼ばれるテクスチャ量Skを中央画素Aについて計算する。
【0049】
【数2】
但し、k(=1,2,…,16)は、近傍画素の位置である。Pδ(i,j)は、輝度値iの中央画素Aからδ(r,θ)離れた近傍画素δkの輝度値がjである確率である。rは、中央画素Aと近傍画素δkとの間の距離であり、θは、中央画素Aからみた画像の水平方向に対する近傍画素δkの角度である。なお、i,jの画素の輝度値は256階調であることが一般的であるが、計算時間を短縮するために8階調に圧縮するのが望ましい。また、テクスチャ量Skの具体的な計算方法については、非特許文献3の517頁〜521頁に記載されているため、ここではその計算方法は省略する。
【0050】
ここで、16箇所の近傍画素について式(1)を計算すると、中央画素Aに対する16個のテクスチャ量Skをスカラ量として得ることができる。図10(a)及び図10(b)は、近傍画素δkの位置kとテクスチャ量Skとの関係をプロットしたものであり、図10(a)はコンクリート面、図10(b)は非コンクリート面のある領域を表している。図10(a)から分かるように、コンクリート面は、近傍画素δ9においてテクスチャ量Sが最大となることを特徴としている。
【0051】
ゆえに、「位置k=9のときにテクスチャ量Sが最大となり、かつ、テクスチャ量Sの分散値が0.0001以上の場合に、中央画素Aはコンクリート画素である」と定義する。補足すると、凹凸量が少ない非コンクリート面では、テクスチャ量Skの値が全体的にフラットになり、k=9のときにテクスチャ量Sが偶発的に僅差で最大となることが有り得るため、テクスチャ量S9が最大というだけではコンクリート面の特徴量を規定するのに不十分である。そこで、後段の「テクスチャ量Sの分散値が0.0001以上」という条件が必要となる。
【0052】
構造物抽出部131によって抽出された電柱領域の中から、上記定義に該当する画素をコンクリート領域として抽出し、図11に示すように、コンクリート画素抽出部132bにより、抽出された画素を塗り潰しの開始点として、モルフォロジーのDilationと呼ばれる領域拡大法を用いて開始点を膨張させる。この画素の膨張は、障害物エッジ抽出部132aで抽出された障害物のエッジに衝突したときに停止させる。これにより、コンクリート構造物領域内で障害物を除くコンクリート面のみを抽出することが可能となる。
【0053】
なお、構造物抽出部131とコンクリート面抽出部132とで各々別のテクスチャ計算を行うのは、計算コストの違いによるものである。構造物抽出部131では撮像画像の全体を処理するため、計算コストの小さい8近傍の標準偏差を用いている。一方、コンクリート面抽出部132では塗り潰しの開始点を数回程度探すだけであるため、計算コストは大きいが精度の高い16近傍の同時生起行列を用いている。
【0054】
図12は、コンクリート面の抽出結果を示す図である。ひび割れ探査部14は、上述したように非特許文献2に開示されたアルゴリズムを用いて、探査領域抽出部13で抽出されたコンクリート領域のみを処理範囲対象として、ひび割れ検知を行う。その後、表示部15により、パソコンのモニタを用いて検知結果が表示される。
【0055】
続いて、ひび割れ検知システムのコンクリート画像抽出処理フローについて説明する。まず、撮像部11により、検査対象であるコンクリート構造物がデジタルカメラで撮像される(S1)。
【0056】
次いで、画像記憶部12により、S1で撮像されたコンクリート構造物を有する撮像画像が記憶される(S2)。
【0057】
次いで、色判定部131aにより、画像記憶部12から撮像画像が読み出され、コンクリート構造物の色と同じ色の画素と、当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とが判定される(S3)。
【0058】
次いで、テクスチャ判定部131bにより、画像記憶部12から撮像画像が読み出され、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と、当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とが判定される(S4)。
【0059】
次いで、構造物判定部131cにより、S3でコンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、S4でコンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素がコンクリート候補領域として抽出される(S5)。
【0060】
次いで、障害物エッジ抽出部132aにより、Cannyエッジ抽出法を用いて、S5で抽出されたコンクリート候補領域から、当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジが抽出される(S6)。
【0061】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素がコンクリート領域として抽出される(S7)。
【0062】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いて、S7で抽出されたコンクリート領域が、S6で抽出された障害物のエッジに到達するまで拡大される(S8)。
【0063】
次いで、コンクリート画素抽出部132bにより、S8で拡大されたコンクリート領域が抽出される(S9)。
【0064】
次いで、ひび割れ探査部14により、S9で抽出されたコンクリート領域を対象にひび割れ検知が行われる(S10)。
【0065】
最後に、表示部15により、S10のひび割れ検知結果がモニタに表示される(S11)。
【0066】
以上に示した通り、本実施の形態を用いることにより、コンクリート構造物の画像からコンクリート面以外の背景や障害物を削除した後に、ひび割れを検知することが可能となる。
【0067】
最後に、本ひび割れ検知システム1は、CPU等の演算処理装置やメモリ等の記憶装置を備えたコンピュータにより構成可能なものであり、各部の処理はプログラムによって実行される。また、このプログラムは記憶装置に記憶されており、記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能であるをこと付言しておく。
【0068】
本実施の形態によれば、検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像し、当該撮像画像を用いて、コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出し、Cannyエッジ抽出法を用いてコンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に前景として存在する障害物のエッジを抽出し、コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の中央画素に対する16個の近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が位置k=9にあって、16個のテクスチャ量の分散値が0.0001以上である場合に、当該中央画素をコンクリート領域として抽出し、モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いてコンクリート領域を障害物のエッジに到達するまで拡大し、拡大されたコンクリート領域を抽出するので、コンクリート構造物の撮像画像からコンクリート面以外の背景や障害物を除去することが可能となる。これにより、現状の目視点検におけるひび割れの見落としの危険性を確実に低下することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…ひび割れ検知システム
11…撮像部
12…画像記憶部
13…探査領域抽出部
131…構造物抽出部
131a…色判定部
131b…テクスチャ判定部
131c…構造物判定部
132…コンクリート面抽出部
132a…障害物エッジ抽出部
132b…コンクリート画素抽出部
14…ひび割れ探査部
15…表示部
S1〜S11…ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより、
検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像する第1のステップと、
撮像された前記コンクリート構造物を有する撮像画像を記憶手段に記憶する第2のステップと、
前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定する第3のステップと、
前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定する第4のステップと、
前記コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出する第5のステップと、
所定のエッジ抽出法を用いて前記コンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出する第6のステップと、
前記コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、前記複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出する第7のステップと、
所定の領域拡大法を用いて前記コンクリート領域を前記前景のエッジに到達するまで拡大する第8のステップと、
拡大された前記コンクリート領域を抽出する第9のステップと、
を有することを特徴とするコンクリート画像抽出方法。
【請求項2】
前記第4のステップは、
前記撮像画像から縦n個横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素を選択し、選択された前記n2個の画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度をそれぞれ規格化し、規格化された前記n2個の画素の輝度の標準偏差を前記正方形の中央画素のテクスチャ値とすることを前記撮像画像の各画素について求め、
当該各画素のテクスチャ値が、前記コンクリート構造物のテクスチャ値として予め設定された所定の範囲に含まれるか否かにより前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項3】
前記複数の近傍画素は、輝度値iを有する前記任意の一画素から、
右方向に一画素離れた近傍画素δk=1と、
右方向に二画素離れた近傍画素δk=2と、
右方向に三画素離れた近傍画素δk=3と、
右方向に四画素離れた近傍画素δk=4と、
右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5と、
右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6と、
右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7と、
右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8と、
上方向に一画素離れた近傍画素δk=9と、
上方向に二画素離れた近傍画素δk=10と、
上方向に三画素離れた近傍画素δk=11と、
上方向に四画素離れた近傍画素δk=12と、
左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13と、
左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14と、
左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15と、
左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16と、
であって、
各近傍画素の輝度値がjである確率をPδk(i,j)とした場合に、
前記第7のステップは、
【数3】
上記式(1)を用いて各近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、k=9のときにテクスチャ量Skが最大値であって、かつ、テクスチャ量Skの分散値が0.0001以上の場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項4】
前記第1のステップは、
前記検査対象である前記コンクリート構造物に焦点を合わせて撮像することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項5】
前記第5のステップは、
前記コンクリート候補領域のうち、単位面積当りの密度が所定の規定値以上の領域を前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項6】
前記コンクリート構造物は円柱の形状を有するものであって、
前記第1のステップは、
前記デジタルカメラのレンズの光軸を前記円柱の回転軸に直交させ、かつ、画像の上下方向が当該回転軸に一致するように前記コンクリート構造物を撮像することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項7】
前記第5のステップは、
前記コンクリート候補領域のうち画像の上下方向の画素数のヒストグラムが所定の閾値以上の場合に、前記撮像画像における上下方向の画素の全てを前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする請求項6に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項8】
前記第6のステップは、
Cannyエッジ抽出法を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項9】
前記第8のステップは、
モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項1】
コンピュータにより、
検査対象であるコンクリート構造物をデジタルカメラで撮像する第1のステップと、
撮像された前記コンクリート構造物を有する撮像画像を記憶手段に記憶する第2のステップと、
前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物の色と同じ色の画素と当該コンクリート構造物の色以外の色の画素とを判定する第3のステップと、
前記記憶手段から前記撮像画像を読み出して、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャの画素と当該コンクリート構造物のテクスチャ以外のテクスチャの画素とを判定する第4のステップと、
前記コンクリート構造物の色と同じ色として判定され、かつ、前記コンクリート構造物のテクスチャと同じテクスチャとして判定された画素をコンクリート候補領域として抽出する第5のステップと、
所定のエッジ抽出法を用いて前記コンクリート候補領域から当該コンクリート候補領域内に存在する前景のエッジを抽出する第6のステップと、
前記コンクリート候補領域内の各画素の輝度値を用いて任意の一画素に対する複数の近傍画素のテクスチャ量をそれぞれ計算し、最大のテクスチャ量を有する近傍画素が所定の位置にあって、前記複数のテクスチャ量の分散値が所定の規定値以上である場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出する第7のステップと、
所定の領域拡大法を用いて前記コンクリート領域を前記前景のエッジに到達するまで拡大する第8のステップと、
拡大された前記コンクリート領域を抽出する第9のステップと、
を有することを特徴とするコンクリート画像抽出方法。
【請求項2】
前記第4のステップは、
前記撮像画像から縦n個横n個(nは正の奇数)の正方形を構成するn2個の画素を選択し、選択された前記n2個の画素のうち最も輝度の大きな画素の輝度が1となるように各画素の輝度をそれぞれ規格化し、規格化された前記n2個の画素の輝度の標準偏差を前記正方形の中央画素のテクスチャ値とすることを前記撮像画像の各画素について求め、
当該各画素のテクスチャ値が、前記コンクリート構造物のテクスチャ値として予め設定された所定の範囲に含まれるか否かにより前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項3】
前記複数の近傍画素は、輝度値iを有する前記任意の一画素から、
右方向に一画素離れた近傍画素δk=1と、
右方向に二画素離れた近傍画素δk=2と、
右方向に三画素離れた近傍画素δk=3と、
右方向に四画素離れた近傍画素δk=4と、
右方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=5と、
右方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=6と、
右方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=7と、
右方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=8と、
上方向に一画素離れた近傍画素δk=9と、
上方向に二画素離れた近傍画素δk=10と、
上方向に三画素離れた近傍画素δk=11と、
上方向に四画素離れた近傍画素δk=12と、
左方向に一画素離れ、上方向に一画素離れた近傍画素δk=13と、
左方向に二画素離れ、上方向に二画素離れた近傍画素δk=14と、
左方向に三画素離れ、上方向に三画素離れた近傍画素δk=15と、
左方向に四画素離れ、上方向に四画素離れた近傍画素δk=16と、
であって、
各近傍画素の輝度値がjである確率をPδk(i,j)とした場合に、
前記第7のステップは、
【数3】
上記式(1)を用いて各近傍画素のテクスチャ量Skをそれぞれ計算し、k=9のときにテクスチャ量Skが最大値であって、かつ、テクスチャ量Skの分散値が0.0001以上の場合に、前記任意の一画素をコンクリート領域として抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項4】
前記第1のステップは、
前記検査対象である前記コンクリート構造物に焦点を合わせて撮像することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項5】
前記第5のステップは、
前記コンクリート候補領域のうち、単位面積当りの密度が所定の規定値以上の領域を前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項6】
前記コンクリート構造物は円柱の形状を有するものであって、
前記第1のステップは、
前記デジタルカメラのレンズの光軸を前記円柱の回転軸に直交させ、かつ、画像の上下方向が当該回転軸に一致するように前記コンクリート構造物を撮像することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項7】
前記第5のステップは、
前記コンクリート候補領域のうち画像の上下方向の画素数のヒストグラムが所定の閾値以上の場合に、前記撮像画像における上下方向の画素の全てを前記コンクリート候補領域として抽出することを特徴とする請求項6に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項8】
前記第6のステップは、
Cannyエッジ抽出法を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【請求項9】
前記第8のステップは、
モルフォロジーのDilation領域拡大法を用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコンクリート画像抽出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−163866(P2011−163866A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25639(P2010−25639)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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