説明

コンバインのトランスミッション

【課題】湿田での作業走行時に湿田モードとすることにより、走行機体の旋回を乾田作業時と概ね同じ状態で行わせることにより、乾田作業及び湿田作業の何れにおいても走行機体の操縦をスムーズに行うと共に、乾田旋回モードと湿田旋回モードの切り換えを自動的に行うことができるコンバインのトランスミッションを提供する。
【解決手段】旋回クラッチ(43L),(43R)の接続圧力を変更することにより、乾田作業時の乾田旋回モードと湿田作業時の湿田旋回モードとを切り換え可能に構成すると共に、走行機体(1)の設定速度(S)と実質速度(K)との差異を走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段を設け、該速度差異判断手段が所定値以上の滑り率と判断した時に、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを自動的に切り換える乾湿切換制御手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインのトランスミッションとして、左右の走行装置にそれぞれ対応させて旋回クラッチを設け、いずれか一方の旋回クラッチを作動させて旋回させるもので、当該走行装置を複数の旋回モードで作動させ駆動力を伝動するものは、特許文献1に示されるように既に公知である。
上記コンバインは、操作パネル部に設置される操向レバーと緩旋回スイッチと、操作パネル部の側方に設置される副変速レバー(スピンドライブターン切替レバー)を選択操作することによって複数の旋回モードの切り換えを行い、走行機体を複数の旋回半径で旋回することができる。
【0003】
上記複数の旋回モードは、旋回の内側の走行装置の駆動を、旋回外側の走行装置の駆動に対して、0を超える速度の範囲内で低下させて走行機体を旋回させる緩旋回モードと、旋回内側の走行装置にブレーキをかけ、駆動を停止させて走行機体を旋回させるブレーキ旋回モードと、旋回の内側の走行装置の駆動を、旋回外側の走行装置の駆動方向の反対側(逆転方向)に駆動して走行機体を旋回させる急旋回モードと、旋回の内側の走行装置をフリーにするクラッチ旋回モードとからなる。
【特許文献1】特開平11−291934公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記トランスミッションを備えるコンバインは、圃場内で走行作業を行うとき、走行装置に圃場地面側からかかる抵抗や負荷によって、旋回クラッチが入り作動する圧力が変動することになり、圃場条件が異なる場合、例えば乾田圃場と湿田圃場或いは同一圃場内において、乾田状態地面の走行と湿田状態地面の走行をする際に、操向レバーを同一位置に操作しても旋回フィーリングが異なる欠点がある。
このため圃場内での作業走行時において、走行機体の旋回を圃場条件や作業条件に合わせて詳細に行うことができ、且つ乾田及び湿田でも同様な旋回フィーリングで操作性に優れた旋回を行うことができるトランスミッションが望まれていた。
【0005】
そこで上記課題に対し本願出願人は、既に特願2004−072006で提案したように、トランスミッションのコントローラに乾田状態地面の走行に適した乾田旋回モードと湿田状態地面の走行に適した湿田旋回モードとを、手動によって切り換え可能に設けることにより、乾田及び湿田でも同様な旋回フィーリングを備えたコンバインを提供した。
【0006】
然し提案のコンバインは、乾田状態地面と湿田状態地面等の圃場の状態を人為的に判断し、切り換えスイッチ(湿田切換スイッチ)を切り換え操作することにより乾田旋回モードと湿田旋回モードを選択する方式であるため、圃場状態毎に湿田切換スイッチの切り換え操作を必要とすること、及びオペレータが圃場状態を看過し易い欠点があることが課題となった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、左右の走行装置2と、走行機体1の操向を行う操向レバー7を備え、旋回内側の走行装置2に旋回用の動力を伝達する左右の旋回クラッチ43L,43Rを備えたトランスミッション11を設け、操向レバー7の操作に応じて上記
旋回クラッチ43L,43Rの接続圧力を制御して走行機体1を旋回させる構成としたコンバインにおいて、上記接続圧力を変更することにより、乾田作業時の乾田旋回モードと湿田作業時の湿田旋回モードとを切り換え可能に構成すると共に、走行機体1の設定速度Sと実質速度Kとの差異を走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段を設け、該速度差異判断手段が所定値以上の滑り率と判断した時に、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを自動的に切り換える乾湿切換制御手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の構成によると、湿田での作業走行時に湿田旋回モードとすることにより、走行機体の旋回を乾田作業時と概ね同じ状態で行わせることができ、圃場条件に応じて旋回フィーリングが変わること等の不都合を防止し、乾田作業及び湿田作業の何れにおいても走行機体の操縦を行い易くすることができる。また湿田作業時に緩旋回時の旋回半径が必要以上に大きくなるという不都合が防止され、走行機体の旋回をスムーズに行うことができる。
【0009】
また乾田作業時の乾田旋回モードと湿田作業時の湿田旋回モードとの切り換えを、走行機体の設定速度と実質速度との差異を走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段によって自動的に行うので、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを手動で切り換える必要がなく、乾田状態地面の走行と湿田状態地面の走行とでの切り換えミスを防止し、走行作業を能率よく簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明のトランスミッションを採用したコンバインの側面図である。走行機体1は、左右にクローラ式の走行装置2を備え、前方に前処理部3が上下昇降揺動自在に設けられている。また走行機体1には操縦部4が設けられている他、脱穀部が搭載されており、前処理部3により刈り取られた穀稈の脱穀を行う。脱穀部の側方には脱穀後の穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンク5が設けられている。
【0011】
図2は操縦部の平面図である。操縦部4内には、従来同様前処理部3の昇降操作及び走行機体1の操向を操作する1本のマルチレバー(操向レバー)7と、前処理部3及び脱穀部の駆動を入り切り操作する単一の作業機刈取クラッチレバー8と、走行速度を変速する主変速レバー9および副変速レバー10と、後述する湿田切換スイッチ64と、湿田自動スイッチ65と、調節ダイヤル(ボリューム)66が設けられている。上記湿田自動スイッチ65と調節ダイヤル66は1つのスイッチとして運転席4に設置され、このスイッチを押動操作すると湿田自動スイッチ65として機能し、回転操作すると調節ダイヤル66として機能する。
【0012】
次に、図3を参照してトランスミッション11の伝動構造について説明する。ミッションケース12にはHST13が取り付けられている。HST13の入力軸13aにはエンジン側から駆動力が入力される。HST13は主変速レバー9によって変速操作が行われ、HST13の出力は出力軸13bから、前述の副変速レバー10の前後操作によって切り換えられる副変速機構17を介して中継軸18に出力される。ミッションケース12の側面にはミッション回転センサ71が設けてあり、中継軸18の回転を検出している。
【0013】
中継軸18に伝動された駆動力は、中継軸18から中継ギヤ19を介して駆動伝動ギヤ21に伝動され、この駆動伝動ギヤ21に伝動された駆動力が、駆動伝動ギヤ21から左右のサイドクラッチ機構23L,23Rを介して左右の走行装置2の駆動ギヤ24L,24Rに伝動され、左右の駆動軸26L,26Rが駆動される。これにより駆動軸26L,26Rに設けられる駆動輪27L,27Rが等速で駆動され、左右の走行装置2が等速で回転駆動され、走行機体1が直線上に前後進(直進)する。
【0014】
中継軸18に伝動された駆動力は、中継軸18から旋回中継ギヤ32と旋回駆動ギヤ33を介して旋回駆動クラッチ36にも伝動されている。旋回駆動クラッチ36は、旋回中継軸34に緩旋回駆動力又はブレーキとを切り換えて出力する。旋回中継軸34は、旋回駆動クラッチ36によって、緩旋回駆動力が出力された状態、又はブレーキがかかった状態となる。
【0015】
旋回中継軸34には出力用のギヤ37が軸支されている。旋回駆動軸39に設けられた旋回切換クラッチ41の緩旋回駆動ギヤ38と上記ギヤ37とが噛合している。上記旋回切換クラッチ41の急旋回駆動ギヤ42は上記中継ギヤ19から駆動力が伝動されている。急旋回駆動ギヤ42は逆回転の駆動力を伝動する。以上により、旋回駆動軸39は、前述の副変速レバー10の左右操作によって切り換えられる旋回切換クラッチ41によって、急旋回駆動力(逆回転)が入力された状態と、緩旋回駆動力が入力された状態、又はブレーキがかかった状態とに切り換えられる。
【0016】
旋回駆動軸39の左右両側には、旋回駆動軸39に与えられる旋回駆動力(緩旋回駆動力,急旋回駆動力)又はブレーキ力を、左右のサイドクラッチ23L,23R側に伝動する旋回クラッチ43L,43Rが設けられている。旋回クラッチ43L又は43Rを入り状態とすることによって、該旋回クラッチ43L又は43Rから旋回ギヤ44L又は44Rを介してサイドクラッチ機構23L又は23Rに、上記旋回駆動力又はブレーキ力を伝動することができる。
【0017】
このため左右いずれかのサイドクラッチ機構23L又は23Rを切り状態とし、駆動伝動ギヤ21からの駆動力の入力を断ち、旋回ギヤ44L又は44Rからの駆動力が入力されるように切り換え、切り状態となったサイドクラッチ機構23L又は23R側の旋回クラッチ43L又は43Rを入り作動させると、切り作動させられたサイドクラッチ機構23L又は23R側の駆動軸26L又は26Rに、前記旋回駆動力又はブレーキ力が伝動される。
【0018】
このとき緩旋回駆動力→ブレーキ力→急旋回駆動力の順に、旋回の外側の走行装置2の駆動力に対して旋回内側の走行装置2の駆動力が小さくなり、トランスミッション11が、緩旋回駆動力を使用する緩旋回モード、又はブレーキ力を使用するブレーキ旋回モード、又は急旋回駆動力を使用する急旋回モードに切り換えられる。
【0019】
なお、旋回クラッチ43L,43Rには、上記入り状態のほか、旋回ギヤ44L,44Rと旋回駆動軸39との伝動を断ち、旋回ギヤ44L,44Rを自由回転自在とする切り状態が有る。このため左右いずれかのサイドクラッチ機構23L又は23Rを切り状態とし、切り状態となったサイドクラッチ機構23L又は23R側の旋回クラッチ43L又は43Rを切り状態とすると、切り作動させられたサイドクラッチ機構23L又は23R側の駆動軸26L又は26Rがフリーとなり、トランスミッション11が、クラッチ旋回モードとなる。
【0020】
図4は制御装置のブロック図であり、マイコンユニット47の入力側にはマルチレバー7の左右揺動角度を検出するポテンショメータ56と、穀粒が穀粒タンク5内の1/3程度の場合にONとなる1/3スイッチ58、籾が穀粒タンク5内の2/3程度の場合にONとなる2/3スイッチ59、穀粒が穀粒タンク5内で満杯になるとONとなる満杯スイッチ61、穀粒のオーバフロー状態でONとなるオーバフロースイッチ62よりなる穀粒センサ57と、作業機刈取クラッチレバー8を作業機クラッチ入り位置に操作するとオンする作業機クラッチスイッチ63と、湿田・乾田旋回モードを手動で切り換える湿田切換スイッチ64と、後述する乾湿切換制御の自動制御をON・OFFする湿田自動スイッチ
65と、左右の旋回電磁比例弁53L,53Rが旋回クラッチ43L,43R側に与える油圧を微調節する調節ダイヤル(ボリューム)66と、ミッション回転センサ71と、角速度センサ73を接続している。
【0021】
また、マイコンユニット47の出力側には左右のサイドクラッチ電磁弁49L,49Rと、サイドクラッチ用のアンロードバルブ(電磁弁)51と、PWMデータ又はデジタルデータ等の入力により比例弁を操作する比例弁ドライバ部を介して旋回駆動電磁比例弁52,左右の旋回電磁比例弁53L,53Rが接続されている。
【0022】
次に、図5〜7を用いてマルチレバー7に対する走行機体1の旋回について説明する。図5はマルチレバー単体の正面図、図6は乾田旋回モード時に旋回クラッチに与えられる圧力を示す線図、図7は湿田旋回モード時に旋回クラッチに与えられる圧力を示す線図である。
【0023】
最初は、圃場内を走行する際の制御であるマルチ作動モードについて説明する。
まず、マルチレバー7が中立位置から左又は右に操作されてイ位置に至ると、旋回駆動電磁比例弁52を作動させて旋回駆動クラッチ36を緩旋回駆動側に入り作動させ、旋回駆動軸39に緩旋回駆動力を与え、次いでマルチレバー7がロ位置に至ると、サイドクラッチ電磁弁49L又は49Rを作動させ、左又は右のサイドクラッチ機構23L又は23Rを切り作動させる。
【0024】
そして、マルチレバー7がハ位置に至ると緩旋回範囲Aに入り、左又は右の旋回電磁比例弁53L又は53Rを所定の圧力で作動させる。次いで、マルチレバー7が操作されその傾斜角度がニ位置となるまで、旋回電磁比例弁53L又は53Rの圧力を徐々に上昇させ、旋回クラッチ43L又は43Rを入り作動させる。
つまり、マルチレバー7のハ位置からニ位置の範囲内で、旋回クラッチ43L又は43Rが接続するように緩やかな傾斜で圧力設定することで旋回フィーリングを向上させている。
【0025】
さらに、マルチレバー7が操作されてニ位置を超えてホ位置に至ると、図示しないデテント機構が設けられており、該デテント機構によって操作者はマルチレバー7の操作位置が緩旋回位置であることを認識することができる。なお、ホ位置を越えてヘ位置までは緩旋回を継続する。
【0026】
さらに、マルチレバー7がへ位置に至ると、旋回駆動電磁比例弁52の圧力を0にして旋回駆動クラッチ36をブレーキ旋回駆動側に入り作動させ、左又は右の旋回電磁比例弁53L又は53Rを所定の圧力まで低下させる。次いで、マルチレバー7がト位置を越えると、左又は右の旋回電磁比例弁53L又は53Rを所定の最大圧力まで上昇させてブレーキ旋回となる。
【0027】
ただし、圃場状況により旋回クラッチ43L,43Rが入り作動する圧力は変化する。湿田の場合は圃場からの抵抗や負荷が大きくなるため、旋回クラッチ43L又は43Rを入り作動させるためには、より高い圧力を旋回クラッチ43L又は43Rに与える必要がある。図6は旋回電磁比例弁53L又は53Rの設定が乾田時の圧力である乾田旋回モードとなっており、図7のように、旋回電磁比例弁53L又は53Rの設定を高めた湿田時の圧力である湿田旋回モードを備えて、圃場状況により乾田旋回モードと湿田旋回モードを切り換えるようにしている。
【0028】
よって、乾田走行時には乾田旋回モードを使用し、湿田走行時には湿田旋回モードを使用することによって、乾田及び湿田で走行機体1が緩旋回モードで旋回を開始するマルチ
レバー7の揺動角度が略同じとなり、また旋回内側への駆動力の伝動度合いが乾田及び湿田で概ね同じとなるため旋回半径が異なる等の不都合を防止される。
【0029】
このため緩旋回において圃場条件に応じて操作フィーリングが変わる等の不都合が防止され、乾田作業及び湿田作業のいずれにおいてもコンバインを同じような操縦感覚で円滑に操縦することができる。特に旋回半径が大きい緩旋回において、湿田作業時に旋回半径が必要以上に大きくなるという不都合が防止され、走行機体1の旋回が円滑に行われる。
【0030】
次に、路上走行時または急旋回モード時に使用するシングル作動モードについて説明する。
マルチ作動モードで走行装置2側への走行面からの抵抗や負荷が小さい路上走行時等の場合は、緩旋回モードからブレーキ旋回モードへの切り換えの瞬間、つまり旋回駆動クラッチ36が旋回中継軸34に緩旋回力を出力する入り状態からブレーキをかける切り状態に移行する途中での一瞬に、旋回中継軸34がフリーとなる部分が必ずあり、この時点でクラッチ旋回モードのような状態となり、瞬間的に走行機体1の走行方向が直進する方向に変更されるような動作を行うので走行機体1の若干ギクシャクした動作を感じ、運転フィーリングが低下する場合がある。
【0031】
シングル作動モードはマルチ作動モードと比較して、マルチレバー7が中立位置から左又は右に操作されてイ位置に至っても、旋回駆動電磁比例弁52を作動させず旋回駆動クラッチ36をブレーキ旋回駆動側に入り保持させ、旋回駆動軸39にブレーキ駆動力を与えている。また、マルチレバー7のハ位置からニ位置の範囲内の圧力設定を全体的に下げて、走行装置2側への走行面からの抵抗や負荷が小さい路上走行時等でも、旋回クラッチ43L又は43Rが確実に接続するようにしている。さらに、マルチレバー7がへ位置に至っても、左又は右の旋回電磁比例弁53L又は53Rは最大圧力を維持してブレーキ旋回を継続させる。
よって、路上走行時にはシングル作動モードを選択することで、旋回モードが途中で切り換ることが無いため、運転者が上記ギクシャク感を感じることがなく運転フィールを損なうことを防止することができる。
【0032】
なお、マルチレバー7のハ位置からニ位置までの範囲内の圧力は、上記のとおり走行装置2側への走行面からの抵抗や負荷により異なるので、調節ダイヤル66により乾田旋回モード及び湿田旋回モードでの旋回クラッチ43L,43R側に与えられる圧力を微調節できるようにしている。これにより乾田旋回モード及び湿田旋回モードにおいて走行機体1の旋回状態をより正確に設定調節するようにしている。
【0033】
よって、微調節の範囲は図6,7の破線に示されるように、標準(実線)に対して高圧側と低圧側に複数段階に調節可能となっている。また湿田旋回モードによる圧力は、乾田旋回モードによる圧力に対して予め設定されている所定の割合で増加するように設定されているため、調節ダイヤル66によって乾田旋回モード及び湿田旋回モードの両圧力が一方に依存した状態で同時に自動的に調節される。
【0034】
また、急旋回モード時は、副変速レバー10を左側に操作すると、旋回駆動軸39には旋回切換クラッチ41により急旋回駆動力(逆回転)が入力された状態(緩旋回モード、ブレーキ旋回モードは使用不能状態)に切り換えられるので、自動的にシングル作動モードに切り換わる。
【0035】
次に、本発明の要部である旋回モード切換制御について図8,9のフローチャートをもとに説明する。
まず、S1において作業機クラッチスイッチ63の状態を判断して、ONの場合はS2
で旋回モードをマルチ作動モードに設定し、S3の乾湿切換制御に進む。また、OFFの場合はS4に進む。
次にS4で穀粒センサ57の状態を判断し、いずれかONであればS2に進み、いずれもOFFであればステップS5で旋回モードをシングル作動モードに設定して次に進む。
【0036】
次に、S3の乾湿切換制御において説明する。
まず、S11において、湿田自動スイッチ65の状態を判断して、ONならばS12に進み、OFFならばステップS13に進む。
次に、S12で作業機クラッチスイッチ63の状態を判断して、ONならばS14に進み、OFFならば次に進む。
次に、S14で作業機クラッチスイッチ63の前回の状態を判断して、ONならばS16に進み、OFFならばS15で制御モードを乾田に設定し、判定モードフラグをONに設定して次に進む。
【0037】
次に、S16で判定モードフラグの状態を判断して、ONならばS17に進み、OFFならば次に進む。
次に、ステップS17でミッション回転センサ71の入力を基に、走行機体1が10m走行済みか否かが判断され、YESであればS18に進み、NOであれば次に進む。
次に、S18で後述する速度差判定が行われ、差が大ならばS19で制御モードを湿田に設定してS20で判定モードのフラグにして次に進み、差が小ならばS20を経て次に進む。
【0038】
次に、S13で湿田切換スイッチ64の状態を判断して、ONならばS21で制御モードを湿田に設定して次に進み、OFFならばS22で制御モードを乾田に設定して次に進む。
【0039】
次に、本発明の旋回モード切換制御の作用について説明する。
本発明の制御装置は、記憶されたモード切換プログラムによって、上記マルチ作動モードとシングル作動モードとの切換えを自動で行い、マルチ作動モード時の乾田旋回モードと湿田旋回モードとの切換えは、自動又は手動によって行う。
【0040】
まず、旋回モードの切り換えは、作業中であるか否かを判断するために、作業機クラッチの接続状態または穀粒センサの検出状態を判断して、非作業中(作業機クラッチスイッチ63と穀粒センサ57がいずれもOFF)の場合はシングル作動モードに切り換え、作業中(作業機クラッチスイッチ63と穀粒センサ57のいずれかがON)の場合はシングル作動モードに切り換える。
【0041】
次に、乾湿モードの切り換えは、自動(湿田自動スイッチ65がON)の場合、作業を開始してから10m走行するまでの滑り率により、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを自動的に切り換える。
具体的には、初期状態は乾田旋回モードに設定されており、ミッション回転センサ71の検出値から換算した加速度Sと、角速度センサ73の検出値から換算した加速度Kとを、図10で示されるように、作業機クラッチスイッチ63がONしてから10m走行するまでのデータを比較して、走行機体1の設定走行速度と実質走行速度との差異を、走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段(滑り率判定手段)によって行うようにしている。
【0042】
即ち、上記速度差異の判断は、図10の斜線の面積で示される設定速度Sと実質速度Kを比較して行われる。そして、両者の比較値が所定値(許容滑り率)より大きい場合には、走行装置2が設定速度Sより許容滑り率よりスリップダウンした実質速度Kになってい
ることから、コントローラ46はこの圃場面を湿田状態であると判断し湿田旋回モードに自動的に切り換えることができる。
【0043】
これにより、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを手動で切り換える必要がなく、乾田圃場と湿田圃場或いは同一圃場内において、乾田状態地面の走行と湿田状態地面の走行とでの走行作業の切り換えミスを防止することができる。
【0044】
従って、上記のように制御されるコンバインは、乾田圃場と湿田圃場或いは同一圃場内において、乾田状態地面の走行と湿田状態地面での走行が、設定速度Sと実質速度Kの滑り率によって自動的に判断され、且つこの滑り率の大きさにより乾田旋回モードと湿田旋回モードの切り換えが自動的に行われるので、走行作業の切り換えミスが防止されコンバイン作業を能率よく行うことができる。
【0045】
また、乾湿モードの切り換えは、手動(湿田自動スイッチ65がOFF)の場合、湿田切換スイッチ64により乾田旋回モードと湿田旋回モードを任意に切り換えられる。
【0046】
尚、この実施形態では、走行機体1の設定速度Sを検出する設定速度検出手段を回転センサ71とし、走行機体1の実際の実質速度Kを検出する実質速度検出手段としては、ジャイロ方式の加速度センサ73を用いた例について説明したが、上記実質速度検出手段は、例えば走行機体1に設置されて車速を測定することが可能な光学方式非接触型等の車速センサにすることもできる。
【0047】
また乾田作業時の乾田旋回モードと湿田作業時の湿田旋回モードとの切り換えは、走行機体1の設定速度Sと実質速度Kとの差異を走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段の他に、走行機体1が乾田走行から湿田走行に移動するときの、機体の沈下量(沈下状態)の程度を検出する、例えば地面に接触して滑走するフロート型センサ、或いは機体に設置された光学方式非接触型等の沈下量検出センサ等の検出結果に基づいて行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】操縦部の平面図である。
【図3】トランスミッションの伝動線図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】マルチレバー単体の正面図である。
【図6】乾田旋回モード時に旋回クラッチに与えられる圧力を示す線図である。
【図7】湿田旋回モード時に旋回クラッチに与えられる圧力を示す線図である。
【図8】旋回モード切換制御のフローチャート図である。
【図9】乾湿切換制御のフローチャート図である。
【図10】走行機体の設定速度と実質速度の速度線図である。
【符号の説明】
【0049】
1 走行機体
2 走行装置
5 穀粒タンク
7 マルチレバー(操向レバー)
11 トランスミッション
43L 左旋回クラッチ
43R 右旋回クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行装置(2)と、走行機体(1)の操向を行う操向レバー(7)を備え、旋回内側の走行装置(2)に旋回用の動力を伝達する左右の旋回クラッチ(43L),(43R)を備えたトランスミッション(11)を設け、操向レバー(7)の操作に応じて上記旋回クラッチ(43L),(43R)の接続圧力を制御して走行機体(1)を旋回させる構成としたコンバインにおいて、上記接続圧力を変更することにより、乾田作業時の乾田旋回モードと湿田作業時の湿田旋回モードとを切り換え可能に構成すると共に、走行機体(1)の設定速度(S)と実質速度(K)との差異を走行時の滑り率として判断する速度差異判断手段を設け、該速度差異判断手段が所定値以上の滑り率と判断した時に、乾田旋回モードと湿田旋回モードとを自動的に切り換える乾湿切換制御手段を設けたコンバインのトランスミッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−75093(P2006−75093A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263327(P2004−263327)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】