説明

コンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置とその起動制御方法

【課題】コンバインドサイクル発電プラント起動時において蒸気タービン通気運転を行う際、蒸気タービンの運転制約に基づいた計画通りの主蒸気温度上昇率及び起動時間の実現に最適な起動制御装置と方法を提供する。
【解決手段】ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおける起動制御装置であって、前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記主蒸気の実測温度に基づいて、前記主蒸気の温度が前記所定の設定値の温度変化率で上昇するように、前記ガスタービンの排気温度を補正制御する補正制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所のコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置、およびその起動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模な火力発電所においては、ガスタービン(GT:Gas Turbine)設備とその高温の排気を用いて排熱回収ボイラで発生させた蒸気を利用する蒸気タービン(ST:Steam Turbine)設備とで発電するコンバインドサイクル発電(複合サイクル発電)が多く採用されている。
コンバインドサイクル発電プラントの起動においては、蒸気タービン運転制約(熱応力制限・車室伸び差制限)により蒸気タービンの熱応力の許容限界を考慮し、その通気する主蒸気を許容し得る温度に調節する。特に、蒸気タービン通気運転開始時、すなわち排熱回収ボイラから発生した主蒸気を蒸気タービンへ供給し、蒸気を定格温度まで上昇させる過程においては、蒸気タービン各部の温度状態によって、蒸気タービン軸やその内部で過度な熱応力が発生する恐れがある。そのため、蒸気タービンへの主蒸気を蒸気タービン車室温度(蒸気タービン各部の温度状態を計測して推定)によって定められた温度に制御し、さらに定格温度まで様々な起動パターンにより規定される熱応力を十分に低減した規定の蒸気温度上昇率にて温度上昇を実施する必要がある。
【0003】
一般にコンバインドサイクル発電プラントでは、前記したようにガスタービンから出る排ガス(排気)を加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させるものである。そのため、排熱回収ボイラから発生する主蒸気の温度は、ガスタービンの排気温度に依存しており、またガスタービンの負荷に依存している。ガスタービンの排気温度は、温度マッチング機能と呼ばれるガスタービンIGV(Inlet Guide Vane)開度制御(排気温度減温操作)、及びガスタービン負荷上昇制御(排気温度昇温操作)により制御を行う。したがって、発電プラント起動時は前記したガスタービン温度マッチング機能によりIGV開度制御および負荷上昇制御を行いガスタービンの排気温度調整をして、それによって主蒸気温度制御を行うことで、蒸気タービンの熱応力を低減した通気運転を実施している。
【0004】
これまでの主蒸気温度制御としては、特許文献1に計画段階においてシミュレーション等で決定された主蒸気温度パターンを目標値としたガスタービン負荷上昇制御の技術が開示されている。また、特許文献2に蒸気タービン運転制約条件や蒸気系主要部温度などに基づいて、設計時に決定される所定のガスタービン排気温度目標値及びガスタービン排気温度の温度上昇率で制御する技術が開示されている。また、コンバインドサイクル発電プラントの起動制御に関わる一般的な技術が特許文献3〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−116416号公報
【特許文献2】特開平07−310505号公報
【特許文献3】特開2002−106305号公報
【特許文献4】特開平08−260911号公報
【特許文献5】特開平03−070804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのような起動時の蒸気タービン自体の温度等の主蒸気温度上昇率を決める主要素があらかじめ設計時に決定される方法、いわばフィードフォワード制御方法では、実機での起動過程におけるプロセスデータが必ずしも反映されないため、計画された主蒸気温度の上昇率(計画主蒸気温度上昇率、変化率)が実現できずに、試運転時において、実運転の結果により、その都度、制御設定値を調整してきた。また、同様に計画された起動時間(計画起動時間)についても、実際の大気温度の影響等により偏差が生じていた、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところは、コンバインドサイクル発電プラントの起動時において、蒸気タービン通気運転を行う際に、蒸気タービンの運転制約に基づいた計画通りの主蒸気温度上昇率(変化率)及び起動時間の実現に最適な起動制御装置とその起動制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおける起動制御装置であって、前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記主蒸気の実測温度に基づいて、前記主蒸気の温度が前記所定の設定値の温度変化率で上昇するように、前記ガスタービンの排気温度を補正制御する補正制御部を備える。
また、前記蒸気タービンの主蒸気の温度をフィードバックし、前記ガスタービンの排気温度を補正する補正制御部を備える。
【0009】
かかる構成により、コンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置は、前記主蒸気温度を所定の変化率で上昇させ、実際の蒸気タービン入口の主蒸気温度をフィードバックし、ガスタービンの排気温度を適宜補正しながら所定の主蒸気温度変化率で制御するので、蒸気タービンの熱応力を低減したプラント起動制御を実現する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンバインドサイクル発電プラントの起動時において、蒸気タービン通気運転を行う際に、蒸気タービンの運転制約に基づいた計画通りの主蒸気温度上昇率(変化率)及び起動時間の実現に最適な起動制御装置とその起動制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に備えられたガスタービン排気温度変化率補正係数発生部の操作量と補正係数の特性を示す特性図である。
【図3】本発明の実施形態によるST(蒸気タービン)通気時のGT(ガスタービン)運転状態量の概略を示す特性図である。
【図4】比較例のST通気時のGT運転状態量の概略を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を次に説明する。
(第1の実施形態)
以下、本発明に関するコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置の第1の実施形態を、図(図1〜図3)を参照して説明する。
【0013】
<コンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置の概略の構成>
図1はコンバインドサイクル発電プラント、およびその起動制御装置の概略の構成を示す図である。
図1に示すように、コンバインドサイクル発電プラントC(適宜「発電プラントC」という)は、ガスタービン設備1、排熱回収ボイラ2、蒸気タービン設備3を備える。また、ガスタービン設備1は制御部1Cを、蒸気タービン設備3は制御部3Cをそれぞれ有する。コンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置10(適宜「起動制御装置10」という)は、各制御部1C、3Cとガスタービン排気温度変化率補正制御回路4を備える。ガスタービン排気温度変化率補正制御回路4は、図1において一点鎖線4で囲まれたような各構成を有する。
なお、ガスタービン1GT(ガスタービン設備1)を制御する制御部1Cに制御部1CPが含まれている。
【0014】
コンバインドサイクル発電プラントCの各構成1〜3において、ガスタービン設備1はガスタービン1GTを備えていて、燃料を燃焼させた高温高圧のガスでタービンを回転駆動する。そして、その原動力でガスタービン設備1に備えられた発電機(不図示)が発電をする。その際にガスタービン1GTは高温の排ガス(排気)を出す。
排熱回収ボイラ2はガスタービン1GTの排ガスを回収して、その排熱によって、蒸気(水蒸気)を発生する。
蒸気タービン設備3は蒸気タービン3STを備えていて、排熱回収ボイラ2で発生した蒸気を用いてタービンを回転駆動する(通気運転)。そして、その原動力で蒸気タービン設備3に備えられた発電機(不図示)が発電をする。
なお、図1において、ガスタービン設備1と、そのなかに備えられたガスタービン[1GT]を同じブロックで表現している。また、蒸気タービン設備3とそのなかに備えられた蒸気タービン[3ST]を同じブロックで表現している。
【0015】
発電プラントCの起動時において、蒸気タービン3STの通気運転移行後は主蒸気の温度を定格の温度に上昇させる必要がある。しかし、急激に温度上昇をすると様々な問題を起こす。
そのひとつの問題は蒸気タービン3STにおける過度な熱応力の発生である。高温の主蒸気を低温の蒸気タービン3STに供給すると、蒸気タービン3STの各部分において、温度の相違が生じ、各部分で異なる熱膨張を引き起こす。この温度の相違が限界を超すと過度な熱応力が蒸気タービン3STにおいて発生する。
【0016】
もうひとつの問題は蒸気タービン3STにおける車室伸び差制限である。蒸気タービン3STは、大別して車室とロータから構成されているが、高温の主蒸気によって蒸気タービン3STが温度上昇する際に、車室とロータの温度上昇に時差がある。したがって、高温の主蒸気によって蒸気タービン3STが急激に温度上昇すると、例えばロータの熱膨張が早いと、車室との伸び差が生じ、軸振動等の問題が発生する。これを避けるために蒸気タービン3STにおいては、車室とロータ各部が略同温度で上昇することが可能な温度上昇率であることが必要である。
なお、排熱回収ボイラ2や蒸気タービン3STにおいて、大量の蒸気が存在するが、そのうち蒸気タービン3STの回転駆動に寄与するものを主蒸気と表記する。
【0017】
以上の理由から、蒸気タービン3STには、規定の主蒸気温度変化率(温度上昇率)が要求される。この定められた主蒸気温度変化率を実現することで、蒸気タービン3STの前記した過度な熱応力と車室伸び差制限を抑えた発電プラントCの起動が可能となる。
この主蒸気は排熱回収ボイラ2から供給されるものであって、排熱回収ボイラ2から発生する主蒸気の温度はガスタービン1GTの排気温度に依存しており、また併せてガスタービン1GTの負荷に依存している。したがって、前記した蒸気タービン3STの適正な主蒸気温度変化率を実現するためには、ガスタービン1GTの排気温度とその変化率を適正に制御する必要がある。この適正な制御を実現するのが起動制御装置10に備わるガスタービン排気温度変化率補正制御回路4である。
【0018】
<ガスタービン排気温度変化率補正制御回路>
ガスタービン排気温度変化率補正制御回路4において、制御する際の入力情報(入力信号)としては、蒸気タービン設備3に備えられた蒸気タービン3STの制御に係る制御部3Cからの信号である蒸気タービン起動時車室温度信号(22S)と、蒸気タービン入口主蒸気温度信号(12S)と、蒸気タービン3STのロータ等における過度な熱応力の発生を検知する過度熱応力発生信号(17S)である。
なお、蒸気タービン起動時車室温度信号(22S)は、蒸気タービン3STの車室に設置された温度検出器(不図示)による計測によって、起動時における蒸気タービン3ST自体の温度を検出した信号である。
【0019】
また、蒸気タービン入口主蒸気温度信号(12S)は、蒸気タービン入口において温度検出器(不図示)による計測によって、主蒸気温度を検出した信号である。
また、過度熱応力発生信号(17S)は、蒸気タービン3STの制御に係る制御部3Cに備えられた蒸気タービン熱応力計算部(不図示)が蒸気タービン3STのロータを含めた各部の熱応力を計算して熱応力が制限値を超えた場合に発生する信号である。
【0020】
また、ガスタービン排気温度変化率補正制御回路4において、制御する際の出力情報(出力信号)としてはガスタービン1GTの排気温度制御をする補正後ガスタービン排気温度変化率信号(16S)である。補正後ガスタービン排気温度変化率信号(16S)は、ガスタービン1GTの制御に係る制御部1Cの一部である制御部1CPに備えられたガスタービン排気温度変化率設定器11に入力され、この信号に基づいて生成されるガスタービン負荷上昇制御信号(28S、ガスタービン負荷上昇制御器28で出力)とガスタービンIGV開度制御信号(29S、ガスタービンIGV開度制御器29で出力)により、ガスタービン排気温度制御を行う。
なお、ガスタービン負荷上昇制御とガスタービンIGV開度制御については後記する。
【0021】
≪蒸気タービン起動時の車室温度に係る制御≫
前記したように、ガスタービン排気温度変化率補正制御回路4において入力情報(入力信号)としては3信号あるが、そのひとつの信号である蒸気タービン起動時車室温度信号(22S)に係る制御について説明する。
蒸気タービン起動時車室温度信号(22S)は前記したように蒸気タービン3STの起動時における蒸気タービン3ST各部の温度を検出したものであり、ガスタービン排気温度変化率設定部23に入力する。
【0022】
なお、蒸気タービン3STの主蒸気温度変化率は、発電プラントC起動時の蒸気タービン3STの温度状況、実際には蒸気タービン3STの車室温度に基づいて定められる。これは起動時の蒸気タービン3STの温度によって、その後の蒸気タービン3STの主蒸気温度を如何に変化させるのが適正なのかが異なるためである。また、蒸気タービン3STの主蒸気温度はガスタービン1GTの排気温度によって変化するものであるので、蒸気タービン3STの主蒸気温度変化率を制御するためにガスタービン排気温度変化率を制御する必要がある。
したがって、ガスタービン排気温度変化率設定部23は入力した蒸気タービン起動時車室温度信号(22S)に基づき、ガスタービン排気温度変化率を計算し、ガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)を出力する。なお、ガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)の中にガスタービン排気温度変化率設定値(23A)が含まれている。
【0023】
また、図1のガスタービン排気温度変化率設定部23のブロック内では、「ガスタービン排気温度変化率設定信号」を簡略化して「設定信号」と表記している。このガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)は、比較回路21と補正係数掛算部16に出力される。ガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)が入力する比較回路21と補正係数掛算部16については後記する。
【0024】
また、前記したように蒸気タービン3ST起動時の車室温度、つまり蒸気タービン3STの温度を反映する蒸気タービン3STの備えられた車室の温度によって、それに適合するガスタービン排気温度変化率がガスタービン排気温度変化率設定部23で計算される。そして、このガスタービン排気温度変化率は、それを含むガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)を情報として有する補正後ガスタービン排気温度変化率信号(16S)によってガスタービン排気温度変化率設定器11に入力される。したがって、このガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)には蒸気タービン3ST起動時の車室温度が反映されている。
【0025】
蒸気タービン3ST起動時は一般的には蒸気タービン要求温度がガスタービンIGV開度制御相当であるため、蒸気タービン通気後はガスタービンIGV開度が閉方向に制御されることによりガスタービンの排気温度を上昇させる。また、蒸気タービン3STが停止した後に間もなく再起動させた場合において、蒸気タービン起動時の蒸気タービン要求温度が充分に高い場合にはガスタービン負荷上昇制御が選択される場合もある。
ガスタービン温度制御選択部27以降については後記する。
【0026】
≪蒸気タービン入口主蒸気温度とガスタービン排気温度変化率設定値とに係る制御≫
また、蒸気タービン3STの入口の主蒸気温度を示す蒸気タービン入口主蒸気温度信号(12S)が主蒸気温度変化率計算部13に入力される。この主蒸気温度変化率計算部13において実際の主蒸気温度変化率が計算され、主蒸気温度変化率信号(13A)が出力される。また、この主蒸気温度変化率信号(13A)は、比較回路21に出力される。
【0027】
比較回路21は、入力された主蒸気温度変化率信号(13A)と、前記したガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)に含まれているガスタービン排気温度変化率設定値(23A)とを比較し、偏差信号(21A)を出力する。この偏差信号(21A)は蒸気タービン3STの主蒸気温度変化率とガスタービン排気温度変化率という異質なものの比較にも見えるが、ガスタービン1GTの排気によって蒸気タービン3STの主蒸気温度が定まるので、変化率という観点では同一事象の比較となり、設定値通りに制御を行うことを意図するものである。
なお、ガスタービン排気温度変化率設定値(23A)は蒸気タービン3ST起動時の車室温度によって変わるものの、起動開始後は一定の設定値である。
また、偏差信号(21A)はフィードバック制御部14に出力される。
【0028】
フィードバック制御部14は比較回路21の偏差信号(21A)を受けて、設定値の変化率と実際の変化率との乖離を補正する制御を行うものである。具体的にはガスタービン排気温度変化率設定値(23A)と蒸気タービン入口主蒸気温度(12S)に相当する主蒸気温度の主蒸気温度変化率(13A)との差異を制御に用いるものである。これはまた、実際に測定した主蒸気温度を反映させるという意味において、主蒸気温度をフィードバックしているともいえる。
なお、フィードバック制御部14は、偏差信号(21A)を基に計算した操作量(14A)の信号をガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15に出力している。次に、操作量(14A)とガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15について説明する。
【0029】
ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15は、フィードバック制御部14から出力された操作量(14A)に基づいて、ガスタービン排気温度変化率補正係数(15A)を算出する。なお、ガスタービン排気温度変化率補正係数(15A)は、図1において(15A)補正係数と簡略化して表記している。
操作量(14A)とガスタービン排気温度変化率補正係数(15A)の関係を図2に示す。なお、図2においても、ガスタービン排気温度変化率補正係数(15A)を補正係数と簡略化して表記している。
【0030】
図2はガスタービン排気温度変化率補正係数(15A、図1)を算出する関係を示した図である。図2において、縦軸は補正係数、つまりガスタービン排気温度変化率補正係数(15A)であり、横軸は操作量(14A、図1)である。偏差信号(21A、図1)を基に計算した操作量(14A)によって、補正係数(15A)を図2の特性の関係にしたがって算出し、出力する。
【0031】
次に「操作量(14A)」について説明する。偏差信号(21A、図1)に基づいて補正制御を行うことになるが、この制御はPI制御で行う。PI制御は偏差信号に比例した制御を行うP制御(Proportional、比例)と、偏差信号を積分した制御を行うI制御(Integral、積分)とからなり、操作量は次の関係式(式1)、(式2)で表せる。

y(t)=K×e(t)+K∫e(t)dt ・・・(式1)
=K/T ・・・(式2)

ここで、Kは比例ゲイン(固定値)、Kは積分ゲイン(固定値)、Tは積分時間(固定値)、e(t)は偏差(ガスタービン排気温度変化率設定値−主蒸気温度変化率)である。
また、y(t)は出力信号であり、操作量(manipulating variable)と称する。出力信号y(t)の単位は制御する状態量であるが、図2においては、最大の偏差を分母として、偏差の比率計算を行い、百分率の%で表記している。
なお、前記したe(t)とy(t)は時間tの関数である。
【0032】
図2において、横軸の百分率%で表された操作量において、−100%〜−10%の部分と、−10%〜10%の部分と、10%〜100%の部分とに分かれている。また、これに対応して、縦軸は0〜1.0の部分と、1.0の部分と、1.0〜2.0の部分とによって特性線が異なっている。この理由について次に説明する。
【0033】
蒸気タービン入口の主蒸気温度変化率(13A、図1)がガスタービン排気温度変化率設定値(23A、図1)より速いと判定された場合は、後記するようにガスタービン排気温度変化率設定信号(23S、図1)に補正係数を掛けるが、この補正係数を1.0以下の係数とする。この補正によって、蒸気タービン入口の主蒸気温度変化率を小さくする動作をさせるためである。
また、蒸気タービン入口主蒸気の温度変化率がガスタービン排気温度変化率設定値(23A、図1)より遅いと判定された場合は、ガスタービン排気温度変化率設定信号(23S、図1)に1.0以上の係数を掛けて、補正する。この補正によって、蒸気タービン入口の主蒸気温度変化率を大きくする動作をさせるためである。
【0034】
これは、実際のガスタービン排気温度変化率設定に対し、蒸気タービン3STに供給される蒸気タービン入口の主蒸気温度が追従しない場合に、ガスタービン排気温度変化率に補正を掛けるというものであり、この操作により所定の変化率で上昇させる制御をすることが可能となる。
【0035】
なお、図2においては、操作量が−10%〜10%の場合には補正係数を1.0としている。これは操作量が−10%〜10%程度の差異しかない場合には補正係数は1.0でよいとしているからである。
また、操作量が−100%〜−10%の範囲では補正係数は0〜1.0である。これは前記した蒸気タービン入口の主蒸気温度変化率(13A、図1)がガスタービン排気温度変化率設定値(23A、図1)より速いと判定された場合に相当する。
また、操作量が10%〜100%の範囲では補正係数は1.0〜2.0としている。これは、前記した蒸気タービン入口の主蒸気温度変化率(13A、図1)がガスタービン排気温度変化率設定値(23A、図1)より遅いと判定された場合に相当する。
【0036】
≪過度熱応力発生と蒸気タービン入口主蒸気温度とガスタービン排気温度変化率設定信号とに係る制御≫
また、蒸気タービン3STの主蒸気温度上昇にあたっては蒸気タービン3STの熱応力についても配慮しなければならない。蒸気タービン設備3に備えられた蒸気タービン3STの制御に係る制御部3Cの有する蒸気タービン熱応力計算部(不図示)が蒸気タービン3STのロータを含めた各部の熱応力を計算しており、熱応力が制限値を超えた場合には過度熱応力発生信号(17S)が発生して、ガスタービン排気温度変化率補正制御回路4の蒸気タービン補正制御選択部18に入力する。蒸気タービン補正制御選択部18は入力した過度熱応力発生信号(17S)によって、適切な補正制御を選択し、ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15の出力信号である補正係数(15A)の信号の行き先を切り替える。したがって、蒸気タービン補正制御選択部18は信号切替器(18)とも云える。
【0037】
過度な熱応力の発生が無い場合には、蒸気タービン補正制御選択部18によって、蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御器18Aが動作し、蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御(18A)が選択される。
また、過度な熱応力の発生が有る場合には、蒸気タービン補正制御選択部18によって、蒸気タービン熱応力補正制御器18Bが動作し、蒸気タービン熱応力補正制御(18B)が選択される。
【0038】
なお、過度熱応力発生信号(17S)により、蒸気タービン熱応力補正制御器18Bが選択された場合には、蒸気タービン3STに過度な熱応力が発生しているのであるから、蒸気タービン3STの温度上昇を中断する、もしくは上昇率に制限をかけるように、ガスタービン排気温度の上昇制御も中断、もしくは上昇率に制限をかける。この中断、もしくは上昇率に制限をかけた結果、蒸気タービン3STにおいて、過度な熱応力が解消され、過度熱応力発生信号(17S)が消えた段階で、蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御(18A)が再び選択され、蒸気タービン3STの温度上昇の制御が行われる。
【0039】
蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御(18A)もしくは蒸気タービン熱応力補正制御(18B)による信号は出力されて、補正係数掛算部16に入力される。
また、前記したガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)も補正係数掛算部16に入力される。そして、ガスタービン排気温度変化率設定信号(23S)に含まれているガスタービン排気温度変化率設定値(23A)に、蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御(18A)、または蒸気タービン熱応力補正制御(18B)による信号の補正係数が掛けられることによって、ガスタービン排気温度変化率設定値(23A)は補正される。この補正されたものを補正後ガスタービン排気温度変化率(16S)と表記する。
【0040】
補正係数掛算部16で補正された補正後ガスタービン排気温度変化率(16S)を含む補正後ガスタービン排気温度変化率信号(16S)は、ガスタービン排気温度変化率設定器11に入力する。
ガスタービン排気温度変化率設定器11は、入力した補正後ガスタービン排気温度変化率信号(16S)に基づき、ガスタービン1GTの排気温度を制御する信号をガスタービン温度制御選択部27に出力する。
そしてガスタービン排気温度変化率設定器11がガスタービンIGV開度制御を指示するものであれば、ガスタービンIGV開度制御器29からガスタービンIGV開度制御信号(29S)が出力される。
【0041】
また、ガスタービン排気温度変化率設定器11がガスタービン負荷上昇制御を指示するものであれば、ガスタービン負荷上昇制御器28からガスタービン負荷上昇制御信号(28S)が出力される。
ガスタービン1GTの排気温度は、温度を下げる場合にはガスタービンIGV開度が開方向に制御される。また、温度を上げる場合にはガスタービンIGV開度を最小とし、燃料流量弁開による負荷上昇を行うガスタービン負荷上昇制御がなされる。なお、ガスタービンIGV開度が閉方向に制御されればガスタービン1GTの排気温度は上昇する。これらのガスタービンIGV開度制御とガスタービン負荷上昇制御により温度調整をすることを温度マッチング機能と称する。
【0042】
このとき、ガスタービンIGV開度制御信号(29S)、およびガスタービン負荷上昇制御信号(28S)には前記した補正後ガスタービン排気温度変化率(16S)が反映されている。
ガスタービン1GTはガスタービンIGV開度制御信号(29S)もしくはガスタービン負荷上昇制御信号(28S)によって温度制御される。
【0043】
以上の構成によって、蒸気タービン3STの起動時の蒸気タービン3STの温度(車室温度)を反映して、蒸気タービン3STの温度上昇率に相応しいガスタービン排気温度変化率が計算され、このガスタービン排気温度変化率を基準(設定値)として、蒸気タービン3STの主蒸気温度(蒸気タービン入口主蒸気温度信号12S)から計算された主蒸気温度変化率と比較し、その偏差に基づいてガスタービン排気温度変化率を補正してガスタービン1GTを制御している。したがって、補正設定されたガスタービン排気温度変化率に見合った変化率で蒸気タービン3STの主蒸気温度は直線的に上昇する。
【0044】
もしも何らかの理由で蒸気タービン3STの主蒸気温度(蒸気タービン入口主蒸気温度信号12S)が設定値から外れて低い温度(もしくは温度上昇率、温度変化率)となれば、その偏差に基づいてガスタービン排気温度変化率を補正してガスタービン1GTの温度制御を設定値より高くすることにより、当初の設定値に戻すように作用する。
また、何らかの理由で蒸気タービン3STの主蒸気温度(蒸気タービン入口主蒸気温度信号12S)が設定値から外れて高い温度(もしくは温度上昇率、温度変化率)となれば、その偏差に基づいてガスタービン排気温度変化率を補正してガスタービン1GTの温度制御を設定値より低くすることにより、当初の設定値に戻すように作用する。
【0045】
また、蒸気タービン3STの停止から再起動までの時間は様々である。停止した直後から、間もなく再起動した場合においては、蒸気タービン3STの温度(車室温度)は高温である。このときには、その状態に相応しい温度上昇率(温度変化率)で定格温度まで温度上昇させることが適切である。また、長い停止後においては、蒸気タービン3STの温度(車室温度)は、周囲の環境温度(大気温度など)にほぼ等しい低温であることがある。この場合には、低温である蒸気タービン3STの温度(車室温度)に相応しい温度上昇率(温度変化率)で定格温度まで温度上昇させることが適切である。
以上から、蒸気タービン3STの起動時の蒸気タービン3STの温度(車室温度)を反映した、蒸気タービン3STの一定した温度上昇率(温度変化率)で、定格温度まで上昇するので、過度な熱応力も発生せずに、所定の計画起動時間で蒸気タービン3STの起動ができる。
【0046】
したがって、前記した過度熱応力発生信号(17S)により、過度な熱応力の発生が有る場合には、蒸気タービン補正制御選択部18によって、蒸気タービン熱応力補正制御器18Bが動作し、蒸気タービン熱応力補正制御(18B)が選択される構成はとっているものの、前述したように、蒸気タービン3STの一定した温度上昇率(温度変化率)で、定格温度まで上昇するので、過度な熱応力も発生せず、所定の計画起動時間で蒸気タービン3STの起動ができる。
【0047】
<実施形態のST通気時のGT運転状態量の概略>
図3に第1の実施形態の蒸気タービン3ST通気時のガスタービン1GT運転状態量の概略のタイムチャートを示す。なお、図3では簡略化して「本実施形態によるST通気時のGT運転状態量概略」と表記している。また、ガスタービンIGV開度制御を「IGV開度制御」、そしてガスタービン負荷上昇制御を「GT負荷制御」と、それぞれ簡略化して表記している。また、以下の説明においても適宜、それぞれ「IGV開度制御」、「GT負荷制御」と表記する。
図3において、横軸は経過時間であり、縦軸に蒸気タービン出力、ガスタービン負荷、IGV開度、ガスタービン排気温度、実測値の蒸気タービン入口主蒸気温度(黒点もしくは黒囲点)、および目標設定値の蒸気タービン入口主蒸気温度(直線)を示している。なお、縦軸においては前記した複数の項目を互いの位置をずらして表記しているので、それぞれの基準点の位置については明示していない。
【0048】
≪経過時間t以前≫
図3において、経過時間t以前において既に蒸気タービン3STには主蒸気は蒸気温度が約400℃程度で通気している。ガスタービン排気温度は蒸気温度より約10℃高い410℃程度である。IGV開度は約80度(全開は約90度)であって空気をかなり取り入れている。また、ガスタービン負荷は、概ね定格値の10%程度である。蒸気タービン出力は前記した低温での蒸気温度において、若干の出力をすることもできる。
なお、この経過時間t以前においては、ガスタービン1GTは通常の運転(GT負荷制御)はできない領域である。
【0049】
≪経過時間t〜経過時間tの間≫
経過時間t〜経過時間tの間は、定格運転に向けて蒸気タービン3STの主蒸気温度の上昇を開始する区間である。ただし、定格に達するのは経過時間t以降であって、経過時間tにおいても定格運転にはならない。
蒸気タービン入口主蒸気温度が相対的に低い間はガスタービン排気温度も低く、ガスタービン1GTのIGV開度制御が主体となる。IGV開度制御によってIGV開度は経過時間tにおける約80度から経過時間tにおける約60度へと閉じていくことにより、空気の量を少なくして、ガスタービン排気温度を上昇させていく。また、ガスタービン負荷は経過時間t以前と同様の概ね定格値の10%程度である。
なお、経過時間tにおけるガスタービン排気温度は約460℃であり、蒸気タービン入口主蒸気温度は約450℃である。
【0050】
経過時間t〜経過時間tの間はガスタービン1GTのIGV開度制御が主体となって、蒸気温度の測定値をフィードバックしながらガスタービン排気温度を制御している。したがって、図3においては、IGV開度とガスタービン排気温度が変動しながら経過時間とともに変化している。この変動はフィードバックによる制御(可変レート動作)をしているために起こるものである。
また、この主蒸気温度の測定値をフィードバックしながらガスタービン排気温度を制御しているために蒸気タービン入口主蒸気温度は、目標設定値通りに一定の温度変化率で直線的に上昇している。
【0051】
≪経過時間t〜経過時間tの間≫
また、蒸気タービン入口主蒸気温度が上昇(概ね450℃)してくると、IGV開度制御からGT負荷制御に切り替わり(経過時間t)、ガスタービン負荷を上昇させていく。このガスタービン負荷の上昇により、ガスタービン排気温度は上昇する。また、これによって蒸気タービン入口主蒸気温度も上昇する。ガスタービン排気温度が概ね570℃、蒸気タービン入口主蒸気温度が概ね560℃に達すると蒸気タービン入口主蒸気温度が定格温度に達する。
【0052】
経過時間t〜経過時間tの間はガスタービン1GTのGT負荷制御が主体となって、蒸気温度の測定値をフィードバックしながらガスタービン排気温度を制御している。
図3においてはガスタービン負荷とガスタービン排気温度が変動しながら経過時間とともに変化している。この変動はフィードバックによる制御(可変レート動作)をしているために起こるものである。
また、この蒸気温度の測定値をフィードバックしながらガスタービン排気温度を制御しているために蒸気タービン入口主蒸気温度は、目標設定値通りに一定の温度変化率で直線的に上昇している。
【0053】
≪経過時間t以降≫
経過時間tに達すると、前記したように、ガスタービン排気温度が概ね570℃、蒸気タービン入口主蒸気温度が概ね560℃となる。この蒸気タービン入口主蒸気温度は定格温度であるので、蒸気タービン3STが定格運転可能となる。その後は排熱回収ボイラ出口温度制御等により、蒸気温度を概ね560℃に保ちながら、定格運転に移行していく。
【0054】
以上、IGV開度制御とGT負荷制御によって、ガスタービン排気温度をフィードバックしながら制御することにより、蒸気タービン入口主蒸気温度の実測値は、蒸気タービン入口主蒸気温度の目標値とほぼ一致して、直線的に上昇している。したがって、熱応力による損傷も起こらずに、速やかに蒸気タービン入口主蒸気温度は所定の温度に達する。つまり、速やかなコンバインドサイクル発電プラントCの起動ができる。
【0055】
<比較例>
前記した本実施形態の比較例として、図4に比較例の蒸気タービン通気時のガスタービン運転状態量の概略を示す。なお、図4では簡略化して「比較例のST通気時のGT運転状態量概略」と表記している。
図4においては、横軸と、縦軸の項目は図3と同様である。図4において図3と異なるのは、IGV開度制御においては、IGV開度を一定の下降値(閉じていく)で制御し、GT負荷制御においては、ガスタービン負荷を一定の上昇値で制御していることである。つまり、特には主蒸気温度の実測値を制御回路にフィードバックをかけていない。
この結果、ガスタービン排気温度は一定の値で上昇している。このため、蒸気タービン入口主蒸気温度(実測値、黒点もしくは黒囲点)は蒸気タービン入口主蒸気温度(目標値)からはずれこともありながら変動しながら上昇している。したがって、熱応力による蒸気タービンの損傷の危険性がある、あるいは過度の熱応力が検出された場合には、一時、温度上昇を中断するので起動時間が長くなるという発電プラントの起動方法となる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上においては、蒸気タービン3STは、ガスタービン1GT(ガスタービン設備1)の排ガスを用いて排熱回収ボイラ2で発生させた蒸気で回転駆動されているが、排熱回収ボイラ2が回収するガスタービン1GTの軸数(台数)は、複数でもひとつでもよい。
また、コンバインドサイクル発電プラントCは多軸でも一軸でもよい。
【0057】
また、過度の熱応力発生信号による蒸気タービン補正制御選択部18による蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御と蒸気タービン熱応力補正制御を選択する手法は、本実施形態の制御が良好に作用している場合には過度熱応力発生信号が発生する確率は非常に低くなるが、安全性の観点から採用している。
【0058】
また、ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15は比較回路21の偏差信号(21A)を直接、入力して操作量(14A)の演算をガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15が行ってもよい。
【0059】
また、図2において、ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部15の補正係数(15A)と操作量(14A)の関係を示す特性(係数補正関数)を示したが、これは一例に過ぎない。
例えば、操作量が−10%〜10%の間は補正係数を1.0としているが、補正係数を1.0とする操作量の範囲を狭くすることも広げることも可能である。また、補正係数は操作量が−100%〜−10%で0〜1.0であり、操作量が10%〜100%で1.0〜2.0であるが、補正係数の値を変えることも可能である。
【0060】
また、図3を参照し、蒸気タービン通気時の特性(ST通気時のGT運転状態量概略)を説明した過程において、蒸気タービン入口主蒸気温度、ガスタービン排気温度、IGV開度の概略値を例としてあげたが、それらは一例であって、実際には様々に異なる値の場合がある。
【0061】
以上、説明したように、本実施形態のコンバインドサイクル発電プラント制御装置は、実際の蒸気タービン入口の主蒸気温度をフィードバックしガスタービンの排気温度を適宜補正しながら所定の主蒸気温度変化率で制御するため、蒸気タービンの熱応力を低減したプラント起動制御を実現できる。それとともに、所定の主蒸気温度上昇率の実現により、計画起動時間を守ることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
C コンバインドサイクル発電プラント、発電プラント
1 ガスタービン設備
1C、1CP 制御部、ガスタービンの制御部(補正制御部)
1GT ガスタービン
2 排熱回収ボイラ
3 蒸気タービン設備
3C 制御部、蒸気タービンの制御部(補正制御部)
3ST 蒸気タービン
4 ガスタービン排気温度変化率補正制御回路(補正制御部)
10 コンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置、起動制御装置
11 ガスタービン排気温度変化率設定器
12S 蒸気タービン入口主蒸気温度信号
13 主蒸気温度変化率計算部
13A 主蒸気温度変化率
14 フィードバック制御部
14A 操作量
15 ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部
15A 補正係数、ガスタービン排気温度変化率補正係数
16 補正係数掛算部
16S 補正後ガスタービン排気温度変化率、補正後ガスタービン排気温度変化率信号
17S 過度熱応力発生信号
18 蒸気タービン補正制御選択部(信号切替器)
18A 蒸気タービン入口主蒸気温度変化率補正制御器
18B 蒸気タービン熱応力補正制御器
21 比較回路
21A 偏差信号
22S 蒸気タービン起動時車室温度信号
23 ガスタービン排気温度変化率設定部
23A ガスタービン排気温度変化率設定値
23S ガスタービン排気温度変化率設定信号、設定信号
27 ガスタービン温度制御選択部
28 ガスタービン負荷上昇制御器
28S ガスタービン負荷上昇制御信号
29 ガスタービンIGV開度制御器
29S ガスタービンIGV開度制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記主蒸気の実測温度に基づいて、前記主蒸気の温度が前記所定の設定値の温度変化率で上昇するように、前記ガスタービンの排気温度を補正制御する補正制御部を備えることを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置。
【請求項2】
ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記蒸気タービンの主蒸気の温度をフィードバックし、前記ガスタービンの排気温度を補正する補正制御部を備えることを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置。
【請求項3】
蒸気タービンと発電機を具備する蒸気タービン設備と、ガスタービンと発電機を具備するガスタービン設備と、排熱回収ボイラと、を有するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
ガスタービン排気温度変化率補正制御回路と、
ガスタービンの制御部と、
蒸気タービンの制御部と、
を備え、
前記ガスタービンの排気ガスを熱源に用いた前記排熱回収ボイラからの蒸気を前記蒸気タービンに供給し該蒸気タービンの通気運転を開始する際に、前記蒸気タービンの制御部の信号を基に前記ガスタービン排気温度変化率補正制御回路が制御方法を演算し、前記ガスタービンの制御部に制御信号を伝達してガスタービン排気温度を制御することにより前記蒸気タービンの主蒸気温度を制御し、
前記ガスタービン排気温度変化率補正制御回路が演算する前記制御方法は、前記主蒸気温度を所定の変化率で上昇させる制御であることを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置。
【請求項4】
蒸気タービンと発電機を具備する蒸気タービン設備と、ガスタービンと発電機を具備するガスタービン設備と、排熱回収ボイラと、を有するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
ガスタービン排気温度変化率補正制御回路と、
ガスタービンの制御部と、
蒸気タービンの制御部と、
を備え、
前記ガスタービンの排気ガスを熱源に用いた前記排熱回収ボイラからの蒸気を前記蒸気タービンに供給し該蒸気タービンの通気運転を開始する際に、前記蒸気タービンの制御部の信号を基に前記ガスタービン排気温度変化率補正制御回路が制御方法を演算し、前記ガスタービンの制御部に制御信号を伝達してガスタービン排気温度を制御することにより前記蒸気タービンの主蒸気温度を制御し、
前記ガスタービン排気温度変化率補正制御回路が演算する前記制御方法は、前記主蒸気温度をフィードバックし、前記ガスタービン排気温度を補正する制御であることを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置。
【請求項5】
前記ガスタービン排気温度変化率補正制御回路は、
前記蒸気タービンの制御部の信号を基に前記蒸気タービンの入口温度の変化率を計算する主蒸気温度変化率計算部と、
前記蒸気タービンの制御部の信号を基に前記蒸気タービン起動時の車室温度によって定められる主蒸気温度変化率を得るためのガスタービンの排気温度変化率を設定するガスタービン排気温度変化率設定部と、
前記主蒸気温度変化率計算部の計算した主蒸気温度変化率と前記ガスタービン排気温度変化率設定部の設定したガスタービン排気温度変化率との差異を前記主蒸気温度変化率計算部の計算にフィードバックするフィードバック制御部と、
前記主蒸気温度変化率計算部の計算した主蒸気温度変化率と前記ガスタービン排気温度変化率設定部の設定したガスタービン排気温度変化率との差異によって補正係数を発生するガスタービン排気温度変化率補正係数発生部と、
前記ガスタービン排気温度変化率補正係数発生部の発生した補正係数を前記ガスタービン排気温度変化率設定部の設定したガスタービン排気温度変化率に掛ける補正係数掛算部と、
前記ガスタービン排気温度変化率設定部の信号によってガスタービンの温度制御方法をガスタービンIGV開度制御とガスタービン負荷上昇制御のいずれかを選択するガスタービン温度制御選択部と、を備え、
前記補正係数掛算部から出力される補正されたガスタービン排気温度変化率を前記ガスタービン温度制御選択部に入力し、当該の補正されたガスタービン排気温度変化率に基づいてガスタービンIGV開度制御またはガスタービン負荷上昇制御を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のコンバインドサイクル発電プラントの起動制御装置。
【請求項6】
ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記主蒸気の実測温度に基づいて、前記主蒸気の温度が前記所定の設定値の温度変化率で上昇するように、前記ガスタービンの排気温度を補正制御することを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御方法。
【請求項7】
ガスタービンから出る排ガスを加熱源として排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに供給することで、前記ガスタービンにより得られる動力および前記蒸気タービンにより得られる動力を用いて発電するコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
前記コンバインドサイクル発電プラントの起動時に、前記蒸気タービンの主蒸気の温度変化率が所定の設定値となるように、前記ガスタービンの排気温度を制御するとともに、前記蒸気タービンの主蒸気の温度をフィードバックし、前記ガスタービンの排気温度を補正制御することを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの起動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57585(P2012−57585A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203925(P2010−203925)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】