コンパレータ回路及びそれを有するアナログデジタルコンバータ
【課題】判定時間を短くしたコンパレータ回路と,それを有するADCを提供する。
【解決手段】コンパレータ回路は,入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力する。そして,コンパレータ回路は,入力信号と第1の比較値とを比較し判定結果を有する第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,入力信号と,第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し判定結果を有する第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して判定信号として出力する出力選択回路とを有する。
【解決手段】コンパレータ回路は,入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力する。そして,コンパレータ回路は,入力信号と第1の比較値とを比較し判定結果を有する第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,入力信号と,第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し判定結果を有する第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して判定信号として出力する出力選択回路とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コンパレータ回路及びそれを有するアナログデジタルコンバータに関し,特に,比較動作を高速化したコンパレータ回路及びそれを有するアナログデジタルコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
コンパレータ回路は,2つの入力電圧を比較し,それらの微少な電圧差を増幅し,比較結果を出力する。特に,正帰還回路を内蔵するラッチコンパレータ回路は,正帰還回路により高速に増幅動作を行うことができる。
【0003】
このようなコンパレータ回路は,様々な回路に内蔵される。たとえば,アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタルコンバータ(以下ADCと称する。)は,サンプルホールドしたアナログ入力電圧と基準電圧とを比較して各ビットを判定するコンパレータ回路を内蔵する。デジタル出力信号の複数ビットを逐次検出する逐次比較型ADCは,コンパレータ回路が判定動作を複数回おこなうため,コンパレータ回路の動作速度がADCの変換速度に影響する。
【0004】
逐次比較型ADCについては,例えば,特許文献1,2などに記載されている。
【0005】
逐次比較型ADCは,コンパレータ回路が,一定の周期でサンプルホールドされるアナログ入力電圧を,デジタル出力のビット数の回数,アナログ入力電圧と判定電圧との判定動作を繰り返す。逐次比較型ADCは,ホールド周期をビット数で除算した判定周期でこの判定動作を繰り返す同期式逐次比較型ADCと,各ビットの判定動作が終了するたびに次のビットの判定動作を開始する非同期式逐次比較型ADCとに分類される。
【0006】
非同期式の逐次比較型ADCについては,例えば非特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平8−107354号公報
【特許文献2】特開2002−26731号公報
【非特許文献1】A 6-bit 600-MS/s 5.3mW Asynchronous ADC in 0.13-um CMOS”, S-W. M. Chen et al., IEEE JSSC, Dec. 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同期式の逐次比較型ADCは,コンパレータ回路は一定の周期で動作する。その周期は,コンパレータ回路の判定動作に必要な時間に基づいて決定される。コンパレータ回路の判定動作は,微小な電圧差の判定になるほど長い時間を要する。よって,比較動作周期はある程度の微小な電圧差を判定するために必要な時間を見込んで設定するため,ADCの動作速度は遅くなりがちである。一方,非同期式の逐次比較型ADCでは,コンパレータ回路の動作は一定の周期ではなく,ある判定が完了すると即座に次の判定に移行する。電圧差が大きいほどコンパレータ回路の判定動作は短時間で完了するので,その分同期式に比べてADCの動作速度は速くなる。しかし,判定完了を受けて動作するため,電圧差が微小になるとホールド周期内で判定が完了しない場合がある。これがADCの途中のビット判定時に生じると,それ以下のビット判定はなされず,デジタル出力信号は大きな誤差を含むことになる。なお,同期式では必ず全ビットの判定が行われるため、この誤差は小さくなる。
【0008】
上記のように,同期式,非同期式にかかわらず,逐次比較型ADCは,コンパレータ回路の判定時間が変換速度に影響するので,コンパレータ回路の判定時間を短縮することが,変換速度の向上には重要である。特に,ADCがより高い分解能を必要とする場合や,低電源電圧化により信号振幅が小さくなる場合は,コンパレータ回路の入力電圧の差がさらに小さくなり,コンパレータ回路の判定時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コンパレータ回路は,入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力する。そして,コンパレータ回路は,前記入力信号と第1の比較値とを比較し判定結果を有する第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し判定結果を有する第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,前記第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有する。
【発明の効果】
【0010】
コンパレータ回路の判定動作時間が短くなり,それを利用したADCは変換時間が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0012】
図1は,コンパレータ回路の構成と動作を示す図である。図1(A)は,コンパレータ回路の構成図を示している。コンパレータ回路COMPは,第1の入力信号Vi1をゲートに入力し第1の出力端子Vq1に第1の電流I1を供給する第1のPチャネルトランジスタP1と,判定値または比較値である第2の入力信号Vi2をゲートに入力し第2の出力端子Vq2に第2の電流I2を供給する第2のPチャネルトランジスタP2とを有する。これらのトランジスタP1,P2のソースは電源Vccに接続されている。また,コンパレータ回路は,第1及び第2の電流I1,I2による第1及び第2の出力端子Vq1,Vq2の電位差に応じて,第1及び第2の出力端子の電位差を増幅する増幅回路とを有する。この増幅回路は,ゲートとドレインが交差接続されたPチャネルトランジスタP3,P4と,ゲートとドレインが交差接続されたNチャネルトランジスタN5,N6とを有し,ラッチ機能を有する。したがって,図1のコンパレータ回路は,ラッチコンパレータとも称される。
【0013】
さらに,コンパレータ回路は,リセット動作時にオンになり第1及び第2の出力端子をグランドGND電位にするスイッチ対SW1,SW2を有する。図1(A)の左側のリセット動作時はスイッチSW1,SW2がオン状態になり,図1(A)の右側の判定動作時はスイッチSW1,SW2がオフ状態になる。
【0014】
図1(B)はコンパレータ回路の動作を示している。リセット動作期間Resetでは,制御クロックΦc=1となり,両出力端子Vq1,Vq2は共にグランド電位になっている。判定動作期間Comp1,2では,制御クロックΦc=0となり,両出力端子Vq1,Vq2はグランドから切り離される。そして,トランジスタP1,P2が,入力信号Vi1,Vi2の電位差に応じて第1,第2の電流I1,I2を生成する。リセット時に両出力端子Vq1,Vq2は共にグランド(Lレベル)にされトランジスタP3,P4は導通状態であり,第1,第2の電流I1,I2により両出力端子Vq1,Vq2の電位が上昇する。この電位上昇の傾きは第1,第2の電流I1,I2の電流差に比例する。そして,両出力端子Vq1,Vq2の電位差がある値以上になると,トランジスタP3,P4のいずれか一方が強く導通し,トランジスタN5,N6のいずれか他方が強く導通し,これらのトランジスタからなる増幅回路が出力端子Vq1,Vq2の電位を電源VccのHレベルかグランドGNDのLレベルかに引き上げまたは引き下げてラッチし,判定動作を完了する。このように,判定動作が完了すると出力端子Vq1,Vq2の電位はHレベルとLレベルになる。
【0015】
図1(B)の判定動作Comp1では,入力信号Vi1,Vi2の電位差が比較的小さく,両出力端子Vq1,Vq2がH,Lレベルになる判定動作完了まで比較的長い時間を要している。それに対して,図1(B)の判定動作Comp2では,入力信号Vi1,Vi2の電位差が比較的大きく,比較的短い時間で判定動作が完了している。
【0016】
図2は,コンパレータ回路の判定動作を示す図である。図2(A)は,入力信号Vi1,Vi2の電位差が大きく,第1の電流I1が第2の電流I2より十分に大きい(I1>>I2)例である。I1>>I2であるため,出力端子Vq1,Vq2の電位差は短時間で大きくなり,増幅回路のラッチ動作により出力端子Vq1,Vq2の電圧は短い判定時間JTimeでHレベルとLレベルになる。一方,図2(B)は,入力信号Vi1,Vi2の電位差が微少で,第1,第2の電流I1,I2がほぼ等しい例である。第1,第2の電流I1,I2がほぼ等しいため,出力端子Vq1,Vq2の電位差はなかなか大きくならず,増幅回路のラッチ動作まで長い時間を要する。そのため,判定時間JTimeは長くなる。
【0017】
ラッチ機能付きのコンパレータ回路は,図1の例以外に,トランジスタP3,P4,N5,N6からなる増幅回路が,トランジスタP1,P2からなる差動回路の出力を入力し,増幅する構成でもよい。
【0018】
図3は,同期式の逐次比較型ADCを示す図である。図3(A)はADCの構成図を示している。このADCは,アナログ入力信号AinをサンプルクロックΦsに同期してサンプルホールドするサンプルホールド回路SHと,判定クロックΦcに同期して,ホールドされた入力電圧Vaと判定電圧Vcとを比較し入力電圧Vaが判定電圧Vcより大きいか小さいかの判定結果を示す判定信号Vqを生成するコンパレータ回路COMPとを有する。さらに,ADCは,判定クロックΦcに同期して,判定信号Vqを逐次保存しデジタル出力信号Doutとして出力するSARロジック回路(Successive Approximation Register Logic Circuit)10と,判定結果に応じてSARロジック回路10により生成されるデジタル入力信号DIに応じて判定電圧Vcを生成する判定電圧生成ユニット12とを有する。このSARロジック回路10は,判定信号Vqを逐次保存するレジスタと,デジタル入力信号DIを生成する論理回路とを有する。また,判定電圧生成ユニット12は,デジタル入力信号DIをアナログの判定電圧Vcに変換するデジタルアナログコンバータ(DAC)である。
【0019】
図3(B)はサンプルクロックΦsと判定クロックΦcとの関係を示す。サンプルクロックΦcは,サンプル周波数fsの逆数の周期1/fsで生成され,サンプルホールド回路SHは,このサンプルクロックΦcに同期してアナログ入力Ainをサンプリングしホールドする。一方,判定クロックΦcは,サンプル周波数fsのn倍の周波数n*fsの逆数の周期1/n*fsで生成される。この判定クロックΦcの周期または周波数は,サンプルクロックΦsとデジタル出力信号Doutのビット数nに依存した関係を有する。
【0020】
図3(C)に示されるとおり,判定クロックΦcに同期して,判定電圧生成ユニット12が判定電圧Vcを生成し,コンパレータ回路COMPが入力電圧Vaが判定電圧Vcより大きいか小さいかを判定し,判定信号Vq=「1011」を生成する。各ビットの判定結果に応じて,SARロジック回路10がデジタル入力信号DIを生成し,それに基づいて判定電圧生成ユニット12が判定電圧VcをVR/2,3VR/4,5VR/8と変更する。nビット全て判定が完了すると,SARロジック回路10はnビットのデジタル出力信号Doutを出力する。なお,ここでVRはAD変換のフルスケール電圧である。
【0021】
同期式の逐次比較型ADCは,判定クロックΦc及びサンプルクロックΦsに同期して変換動作を行うが,これらのクロック周期は,コンパレータ回路COMPの最長判定時間に基づいて設定される。よって,コンパレータ回路の判定時間が短ければADCの変換動作時間を短くすることができる。
【0022】
図4は,非同期式の逐次比較型ADCを示す図である。図4(A)はADCの構成図を示している。このADCは,図3の同期式と同様に,サンプルホールド回路SHと,コンパレータ回路COMPと,SARロジック回路10と,判定電圧生成ユニット12とを有する。ただし,図3の同期式と異なり,タイミング生成回路14が,コンパレータ回路COMPの判定完了に伴い生成される判定信号Vqに応答して,判定クロックΦqを生成する。つまり,非同期式のADCは,コンパレータ回路によるビット判定完了というイベントに応答して次の判定クロックΦcが生成されビット判定が行われるイベントドリブン型である。
【0023】
図4(B)はサンプルクロックΦsと判定クロックΦqとの関係を示す。図3と同様に,サンプルクロックΦcは,サンプル周波数fsの逆数の周期1/fsで生成され,サンプルホールド回路SHは,このサンプルクロックΦcに同期してアナログ入力Ainをサンプリングしホールドする。一方,判定クロックΦqは,ビット判定時間JTimeに依存したLレベルの期間(判定期間)を有する。よって,ビット判定時間JTimeは,上位ビットでは短く,下位ビットになるにしたがってだんだん長くなる。
【0024】
図4の非同期式の逐次比較型ADCは,サンプリングクロックΦsの周期1/fs内にNビットのビット判定を完了することが求められる。しかし,上記の通りイベントドリブン型であり,アナログ入力電圧の値によってはビット判定がホールド周期内に完了せず,その結果,SARロジック回路10内のレジスタのあるビット以下の値が初期値のまま出力される場合がある。この場合,デジタル出力信号Doutの精度は低くなる。よって,非同期式のADCでも,コンパレータ回路の判定時間を短くすることが要求される。
【0025】
図5は,本実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。このコンパレータ回路COMPは,入力信号Vaが判定値Vrより大きいか小さいかを示す判定信号Voを出力する。そして,コンパレータ回路は,入力信号Vaと第1の比較値Vr+V1とを比較し判定結果を有する第1の判定信号Vq1,Vq1bを生成する第1のコンパレータCOMP1と,入力信号Vaと,第1の比較値と異なる第2の比較値Vr+V2とを比較し判定結果を有する第2の判定信号Vq2,Vq2bを生成する第2のコンパレータCOMP2と,第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して判定信号Voとして出力する出力選択回路16とを有する。
【0026】
図6は,本実施の形態におけるコンパレータ回路の動作を説明する図である。図6(A)は,図1に示したコンパレータ回路の入力電圧Va(図1ではVi1)と判定値Vth(図1ではVi2)との比較による判定時間JTimeを示す。横軸が入力電圧Va,縦軸が判定時間JTimeである。前述のとおり,コンパレータ回路は,入力電圧Vaが判定値Vthより十分に小さいまたは大きいと判定時間JTimeは短いが,一方で,入力電圧Vaが判定値Vthに近づくにつれて判定時間JTimeは長くなる。
【0027】
図6(B)は図5のコンパレータ回路の判定時間を示す。図5のコンパレータ回路は,入力電圧Vaと,比較値Vth1=Vr+V1,Vth2=Vr+V2とをそれぞれ比較して判定する第1,第2のコンパレータCOMP1,COMP2とを有する。第1,第2のコンパレータCOMP1,COMP2が生成する第1,第2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間は,図6(B)の破線に示すとおりである。そして,出力選択回路16が,第1,第2の判定信号Vq1,Vq2のうち先に生成される信号を判定し,その信号を選択し判定信号Voとして出力する。つまり,出力選択回路16は,2つのコンパレータCOMP1,2のうち,先に判定が完了した判定信号を検出し,それを選択して判定信号Voとして出力する。出力回路の構成は後述する。
【0028】
図6(B)において,第1の判定信号Vq1は,入力電圧Vaが第1の比較値Vth1より低ければ「0」高ければ「1」になるが,第2の判定信号Vq2は,入力電圧Vaが第2の比較値Vth2より低ければ「0」高ければ「1」になる。そして,出力選択回路16は,判定時間JTimeが短いほうの判定信号Vq1,Vq2を選択して判定信号Qoとして出力する。その結果,判定信号Voの判定結果は,第1,第2の比較値Vth1,Vth2の中点の理想判定値Vthidealを境にして,下線で示すとおり「0」と「1」になる。しかも,判定信号Qoの判定時間JTimeは,図6(B)中太線で示されるとおり,第1,第2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間よりも短くなる。
【0029】
図5のコンパレータ回路COMPは,第1のコンパレータCOMP1の比較電圧Vth1は,判定電圧Vrにずれ値V1を加えたVth1=Vr+V1であり,第2のコンパレータCOMP2の比較電圧Vth2は,判定電圧Vrにずれ値V2を加えたVth2=Vr+V2である。コンパレータ回路が理想的な判定値Vthidealで入力電圧Vaを判定するためには,Vr=Vthideal,V1=−V2であることが望ましい。つまり,Vth1=Vr+dV,Vth2=Vr−dVであれば,図6(B)に示すとおり,コンパレータ回路は,理想的な判定値Vthidealに基づく判定信号Qoを生成することができる。
【0030】
図5では,第1,第2の比較電圧Vth1,Vth2は,図中の加算器により生成されている。それ以外の方法としては,両コンパレータCOMP1,2に同じ判定電圧Vrを比較値として与え,コンパレータCOMP1のトランジスタP1のサイズをP2より大きくし,逆にコンパレータCOMP2のトランジスタP1のサイズをP2より小さくし,実質的に両コンパレータCOMP1,2の判定レベルを異ならせることでもよい。
【0031】
図7は,本実施の形態における同期式の逐次比較型ADCの構成図である。このADCは,図3のADCのコンパレータ回路COMPの代わりに,図5のコンパレータ回路COMPを有する。すなわち,コンパレータ回路COMPは,2つのコンパレータCOMP1,2と,出力選択回路16とからなる。出力選択回路16は,前述のとおり,両判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bからいずれのコンパレータが先に判定結果を生成したかを検出し,先に生成された信号を選択して出力する。この同期式の逐次比較型ADCは,判定クロックΦcに同期して2つのコンパレータCOMP1,2が入力電圧Vaをそれぞれ異なる比較電圧に基づいて比較・判定動作を行う。コンパレータ回路COMPの判定時間が短くなっているので,判定クロックΦcの周期を短くでき,ADCの変換時間も短くなる。
【0032】
図8は,本実施の形態における非同期式の逐次比較型ADCの構成図である。このADCは,図4のADCのコンパレータ回路COMPの代わりに,図5のコンパレータ回路COMPを有する。すなわち,コンパレータ回路COMPは,2つのコンパレータCOMP1,2と,出力選択回路16とからなる。出力選択回路16は,図7と同様に,両判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bからいずれのコンパレータが先に判定結果を生成したかを検出し,先に生成された信号を選択して出力する。
【0033】
そして,この非同期式の逐次比較型ADCでは,出力選択回路16が,判定信号Voを出力するタイミングで,判定クロックΦqを両コンパレータCOMP1,2に供給する。また,出力選択回路16は,判定クロックΦqの出力と共に,SARロジック回路10に出力Voを取り込む制御信号Φrを出力する。
【0034】
図8の例では,コンパレータ回路COMPの判定時間が短くなっている分,ADCの変換時間も短くなる。または,ADCはサンプルクロックΦsの周期内にNビットの判定動作を完了することができ,デジタル出力信号Doutの精度を高くすることができる。
【0035】
図9は,図8の非同期式の逐次比較型ADCの動作を示すタイミング波形図である。時間t0でサンプルクロックΦsがHレベルになり,それに応答してサンプルホールド回路SHがアナログ入力信号Ainをサンプリングする。時間t1からのホールド期間中に,コンパレータ回路COMPがホールドした入力電圧Vaと判定値との判定動作をビット数の回数繰り返す。図9では2回の判定動作が示されている。
【0036】
時間t1で判定クロックΦqはHレベルになり,2つのコンパレータCOMP1,2はリセット動作を行う。そして,時間t2で判定クロックΦqがLレベルになり,2つのコンパレータCOMP1,2は判定動作を行う。この例では,第1の判定信号Vq1/Vq1bが第2の判定信号Vq2/Vq2bよりも先にH,Lレベルになっている。つまり,第1のコンパレータCOMP1の判定結果が第2のコンパレータCOMP2の判定結果よりも早く生成されている。その結果,出力選択回路16は,第1の判定信号Vq1を選択して,判定信号Voとして出力する。
【0037】
出力選択回路16は,この判定信号Voの出力に同期して制御クロックΦqibを生成し,それから一定時間遅延後に判定クロックΦqをHレベルに立ち上げる。その結果,時間t3から両コンパレータCOMP1,2はリセット動作を行い,その間にSARロジック回路10が判定結果Voに応じてデジタル入力DIを出力し,比較値生成ユニット12に判定電圧Vcを変更させる。
【0038】
そして,時間t4で判定クロックΦqがLレベルに立ち下がり,両コンパレータCOMP1,2は判定動作を行う。このときは,第2の判定信号Vq2/Vq2bが第1の判定信号Vq1/Vq1bよりも先にH,Lレベルになっている。つまり,第2のコンパレータCOMP2の判定結果が第1のコンパレータCOMP1の判定結果よりも早く生成され,出力選択回路16は,第2の判定信号Vq2を選択して,判定信号Voとして出力する。
【0039】
前述と同様に,出力選択回路16は,判定信号Voの出力に同期して制御クロックΦqibを生成し,それから一定時間遅延後に判定クロックΦqをHレベルに立ち上げる。その結果,時間t5から両コンパレータCOMP1,2はリセット動作を行い,その間にSARロジック回路10が判定結果Voに応じてデジタル入力DIを出力し,比較値生成ユニット12に判定電圧Vcを変更させる。以降,同様にしてビット判定動作が繰り返される。
【0040】
図10は,出力選択回路の構成図である。出力選択回路16は,2つのコンパレータCOMP1,2の差動の判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bがH,LまたはL,Hレベルになったことを検出する判定完了検出部161と,いずれの判定信号が先に判定を完了したかを検出する判定完了順序検出部162と,先に判定が完了したほうの判定信号Vq1,Vq2を選択する出力選別部163とを有する。
【0041】
判定完了検出部161は,第1の判定信号Vq1/Vq1bを入力する第1のENORゲート20と,第2の判定信号Vq2/Vq2bを入力する第2のENORゲート21とを有する。これらのENOR回路は,差動の判定信号がH,LまたはL,Hになると,Lレベルを出力する。判定完了順序検出部162は,フリップフロップFF1,FF2を有する。そして,出力選別部163は,2つのスイッチS1,S2を有する。
【0042】
図11は,出力選択回路16の動作を示すタイミング波形図である。図11を参照して図10の出力選択回路の動作を説明する。
【0043】
コンパレータがリセットされた状態では,第1,第2の判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bは全てLレベルで,ENORゲート20,21の出力A1,A2は共にHレベルである。そのため,NORゲート22,23の出力M1,M2は共にLレベルである。また,フリップフロップFF1,FF2はリセット状態になりそれらの出力B1,B2はLレベルである。よって,出力Voは高インピーダンスHi−Z状態にあり,EORゲート25の出力である制御信号ΦqiはLである。
【0044】
図11の例では,第1のコンパレータの判定が先に完了し,判定信号Vq1,Vq1bが先にH,LまたはL,Hレベルになっている。これに応答して,ENORゲート20の出力がLレベルになり,NORゲート22の出力M1がHレベルになる。これに応答して,フリップフロップFF1が電源Vdd=Hを取り込んで出力Q(B1)をHレベルにする。これにより,スイッチS1がオンして,第1の判定信号Vq1が選択されて出力Voとなる。また,EORゲート25の入力がH,Lレベルとなり,制御信号ΦqiはHレベルになり,NORゲート22,23の出力をLレベルに固定し,その後の第2の判定信号Vq2,Vq2bがH,LレベルになってもそれがフリップフロップFF2に伝達されることはない。そして,遅延回路DELAYによる遅延後に制御信号ΦqidがHレベルになり,両フリップフロップFF1,FF2をリセットし,信号B1,B2は共にLレベルになり,スイッチS1,S2はオフ状態になり,出力Voは高インピーダンス状態になる。また,EORゲート25の出力であるΦqiは再びLレベルになる。
【0045】
この制御信号Φqiは,図示されていないが,反転され遅延されて制御信号Φqになり,図8に示したようにコンパレータCOMP1,2をリセットする。その結果,ENORゲート20,21の出力A1,A2はHレベルにされる。
【0046】
以上のように,出力選択回路16は,第1,第2のコンパレータCOMP1,2のうち先に判定信号をH,LまたはL,Hにしたことを検出し,検出した判定信号Vq1,Vq2を選択して出力する。そして,検出した判定信号を出力したあとに,制御信号ΦqiをLレベルにして,図8のようにコンパレータCOMP1,2をリセットする。
【0047】
図12は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。コンパレータ回路COMPは,第1,第2のコンパレータCOMP1,2と,それらの判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bを遅延させる第1,第2の遅延回路delay1,2と,遅延回路で遅延した遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdのうち先に判定結果を示すレベルになったほうを選択し,判定出力Voとして出力する出力選択回路16とを有する。
【0048】
この遅延回路delay1,2を設け,それらの遅延時間を個別に制御する遅延制御信号TC1,TC2により遅延時間を調整することで,第1に,コンパレータCOMP1,2のオフセット特性を修正して,コンパレータ回路COMPが理想的な判定値との比較結果を出力することができる。第2に,コンパレータCOMP1,2の比較値Vr+V1,Vr+V2の値にかかわらず,コンパレータ回路COMPの判定値を任意の値に設定することができる。
【0049】
図13は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の動作原理図である。図13(A)に示されるとおり,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の比較値にVthideal+dVとVthideal-dVとが入力されている場合,コンパレータ回路COMPはそれら比較値の中間の理想的な判定値Vthidealに基づいて入力電圧Vaを判定する。したがって,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間JTimeは,図示されるとおりである。
【0050】
しかし,第1のコンパレータCOMP1にオフセットOffsetが含まれる場合,その判定信号はVq1(Offset)のようになる。その結果,コンパレータ回路COMPは,Vq1(Offset)とVq2で示した判定時間のうち早いほうを選択して出力するので,その判定レベルVth(Offset)は,Vthideal+dV+OffsetとVthideal-dVの中間値になり,理想的な判定値Vthidealからずれてしまう。このようなずれは,コンパレータ回路COMPをADCに使用した場合にDNL(Differential Non-Linearity)の原因になる。
【0051】
そこで,図12の遅延回路delay1の遅延時間を調整して,遅延された第1の判定信号Vq1dの実質的な判定時間を第2の判定信号Vq2に比較して長くする。その結果,図13(B)に示されるとおり,Vq1dとVq2で示された判定時間JTimeは,理想的な判定値Vthidealで交差する。つまり,遅延回路delay1,2で遅延量を調整すれば,各コンパレータCOMP1,2のオフセットを校正して,コンパレータ回路COMPの判定値を理想的な値Vthidealに修正することができる。
【0052】
図14は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の動作原理図である。図14(A)に示されるとおり,第1のコンパレータCOMP1の比較値はVr+V1に,第2のコンパレータCOMP2の比較値はVr+V2に設定されている。これにより,両コンパレータCOMP1,2が共にオフセットを有しない場合には,コンパレータ回路COMPの判定値は,両比較値の中間値Vthになる。この中間値Vthが理想的な判定値Vthidealよりずれていると,図13と同様にDNLの原因になる。
【0053】
そこで,図14(B)に示されるとおり,図12の遅延回路delay1の遅延時間を調整して,遅延された第1の判定信号Vq1dの判定時間JTimeを長く調整することで,Vq1dとVq2で示された判定時間の交点を理想的な判定値Vthidealに一致させることができる。つまり,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の比較値を任意の値にしても,遅延回路の遅延時間を調整することで,コンパレータの判定値を理想的な値にすることができる。この場合,各コンパレータCOMP1,2のオフセット特性を気にする必要はない。
【0054】
図13,14の原理図に示された理想の判定値Vthidealに調整する方法は,次のとおりである。すなわち,図12において,入力電圧Vaとして理想の判定値Vthidealを入力し,第1,第2の遅延された遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdの判定完了時間が一致するように,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2により調整する。
【0055】
図15は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の構成図である。図12と異なるところは,出力選択回路16の出力Voに基づいて遅延制御信号TC1,TC2を調整する遅延量調整回路18が設けられていることである。それ以外は,図12と同じである。この遅延量調整回路18は,自動的に遅延制御信号TCq,TC2を調整して,コンパレータ回路COMPの判定値が理想値Vthidealと一致するように校正することができる。図12の例では,遅延制御信号TC1,TC2は,試験装置などの外部回路から供給されてもよい。
【0056】
図16は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の自動校正動作を示すタイミング波形図である。まず,図15に示されるとおり入力電圧Vaを理想的判定値Vthidealにする。そして,遅延量調整回路18が,出力選択回路16の出力Voの値を監視しながら,第1,第2の遅延回路delay1,2のいずれかの遅延量を遅延制御信号TC1,TC2により調整し,出力Voが1から0,または0から1に変化する時を検出する。
【0057】
まず,遅延制御信号TC1,TC2は初期状態とする。その状態で,時間t1では,第1の判定信号Vq1,Vq1bのほうが先に判定結果状態になり,出力VoはVq1=0になる。そこで,遅延量調整回路18は,遅延制御信号TC1を変更して第1の遅延回路delay1の遅延量を単位時間だけ増加させる。その結果,図13(B),図14(B)のdelay1に示されるように第1の判定信号VCq1,Vq1b側の判定時間が長くなる。その状態で,時間t2でも,時間t1と同様の結果になり,出力VoはVq1=0になる。したがって,遅延量調整回路18は,再度遅延制御信号TC1を変更して第1の遅延回路delay1の遅延量を単位時間だけ増加させる。
【0058】
この状態で,時間t3では,第2の判定信号Vq2,Vq2bのほうが先に判定結果状態になり,出力VoはVq2=1になる。つまり,出力Voのレベルが反転する。したがって,この遅延状態が,第1,第2の遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdの判定時間がほぼ一致する状態である。そこで,この時の遅延制御信号TC1,TC2が遅延回路delay1,2に設定される。または,時間t2での遅延制御信号TC1,TC2に設定されてもよい。
【0059】
図17は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用したADCの構成図である。このADCは,同期式の逐次比較型ADCである。図7のADCと比較すると,コンパレータCOMP1,2と出力選択回路16との間に遅延回路delay1,2が設けられている。それ以外の構成は,図7と同じである。前述のとおり,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2で調整することで,コンパレータCOMP1,2のオフセットによる判定値の誤差を修正することができる。または,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2で調整することで,電圧V1,V2にかかわらず,所望の判定値に調整することができる。
【0060】
図18は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用した別のADCの構成図である。このADCは,非同期式の逐次比較型ADCである。図8のADCと比較すると,コンパレータCOMP1,2と出力選択回路16との間に遅延回路delay1,2が設けられている。それ以外の構成は,図8と同じである。遅延回路delay1,2を設けたことによる作用効果は,図17と同じである。
【0061】
図17,図18のADCにおいて,遅延回路delay1,2の遅延時間を前述のとおり適切に調整することで,ADCのDNLを抑制することができる。
【0062】
図19は,遅延回路delay1,2の構成図である。遅延回路は,複数のインバータを有する遅延ユニットD0,D1〜Dnと,遅延ユニットのいずれかの出力を選択して出力するセレクタSELとを有する。このセレクタSELは,遅延制御信号TC1,TC2により選択される。
【0063】
以上の実施の形態において,ADCは,コンパレータ回路がサンプルホールドした入力電圧Vaと判定値生成ユニット12により生成される判定値とを比較している。しかし,これ以外の構成のADCとして,デジタルアナログコンバータDACからなる判定電圧値成ユニット12が,サンプルホールドしたアナログ入力電圧をホールドし,その後,判定結果に応じてSARロジック回路10により生成されるデジタル入力信号DIに応じてホールドした入力電圧を変更し,その変更された電圧をコンパレータが基準値Vthと比較して判定する構成にしてもよい。かかるADCは,例えば,非特許文献のJens Sauerbrey, Doris Schmitt-Landsiedel, Roland Thewes; A 0.5V, 1μW successive approximation ADC, Proceedings of the 28th European Solid-State Circuits Conference, September 2002.のFig.2に記載されている。ここで使用されている判定電圧値生成ユニットは,最初にホールドしたアナログ入力電圧による電荷をデジタル入力信号DIに応じて再分配する電荷分配型ADCである。
【0064】
以上,本実施の形態におけるコンパレータ回路は,入力電圧にかかわらずある程度の短い時間で判定動作を完了することができる。よって,そのコンパレータ回路を有する逐次比較型ADCの変換時間も短くすることができる。
【0065】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0066】
(付記1)
入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力するコンパレータ回路において、
前記入力信号と第1の比較値とを比較し第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,
前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,
前記第1及び第2の判定信号のうち先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0067】
(付記2)
付記1において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【0068】
(付記3)
付記1において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号のいずれかが判定結果の値に変化したことに応答して,当該判定結果の値に変化した第1または第2の判定信号を選択して出力することを特徴とするコンパレータ回路。
【0069】
(付記4)
付記1または3において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力することを特徴とするコンパレータ回路。
【0070】
(付記5)
付記1において,
前記第1,第2のコンパレータは,それぞれ,
前記入力信号をゲートに入力し第1の出力端子に第1の電流を供給する第1のトランジスタと,前記第1又は第2の比較値をゲートに入力し第2の出力端子に第2の電流を供給する第2のトランジスタと,前記第1及び第2の出力端子の前記第1及び第2の電流による電位差に応じて前記第1及び第2の出力端子の電位差を増幅する増幅回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0071】
(付記6)
付記5において,
前記増幅回路は,前記第1及び第2の出力端子の電位をHレベルとLレベルとにラッチすることを特徴とするコンパレータ回路。
【0072】
(付記7)
付記1において,
さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように遅延時間が設定されることを特徴とするコンパレータ回路。
【0073】
(付記8)
付記7において,
さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかを検出し、検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0074】
(付記9)
付記7または8において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【0075】
(付記10)
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する逐次比較型アナログデジタルコンバータにおいて,
付記1に記載のコンパレータ回路と,
前記コンパレータ回路が出力する前記判定信号を逐次記憶し前記デジタル出力信号を出力するレジスタ回路と,
前記判定信号の判定結果に応じて,前記第1及び第2の比較値を逐次生成する比較値生成ユニットとを有し,
前記デジタル出力信号のビット数の回数,前記コンパレータ回路が前記判定信号を逐次出力することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0076】
(付記11)
付記10において,
前記アナログ入力信号が前記コンパレータ回路に前記入力信号として入力され,
前記比較値生成ユニットは,前記判定信号の判定結果に応じて前記判定値を生成する判定値生成回路を有し,前記判定値に第1及び第2のずれ値を加算して前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0077】
(付記12)
付記10または11において,
前記コンパレータは,判定クロックに同期して,リセット動作と判定動作とを繰り返すことを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0078】
(付記13)
付記10または11において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力し,
前記コンパレータは,前記判定終了信号に応答して,リセット動作と判定動作とを行い,
前記比較値生成ユニットは,前記判定終了信号に応答して,前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0079】
(付記14)
付記10または11において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように前記遅延の時間が設定されることを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0080】
(付記15)
付記14において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかの検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】コンパレータ回路の構成と動作を示す図である。
【図2】コンパレータ回路の判定動作を示す図である。
【図3】同期式の逐次比較型ADCを示す図である。
【図4】非同期式の逐次比較型ADCを示す図である。
【図5】本実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。
【図6】本実施の形態におけるコンパレータ回路の動作を説明する図である。
【図7】本実施の形態における同期式の逐次比較型ADCの構成図である。
【図8】本実施の形態における非同期式の逐次比較型ADCの構成図である。
【図9】図8の非同期式の逐次比較型ADCの動作を示すタイミング波形図である。
【図10】出力選択回路の構成図である。
【図11】出力選択回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図12】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。
【図13】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の動作原理図である。
【図14】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の動作原理図である。
【図15】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の構成図である。
【図16】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の自動校正動作を示すタイミング波形図である。
【図17】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用したADCの構成図である。
【図18】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用した別のADCの構成図である。
【図19】遅延回路delay1,2の構成図である。
【符号の説明】
【0082】
COMP:コンパレータ回路
COMP1,2:第1,第2のコンパレータ
Va:入力電圧
Vr+V1,Vr+V2:比較値
Vq1,Vq1b,Vq2,Vq2b:第1,第2の判定信号
16:出力選択回路
Vo:判定信号
【技術分野】
【0001】
本発明は,コンパレータ回路及びそれを有するアナログデジタルコンバータに関し,特に,比較動作を高速化したコンパレータ回路及びそれを有するアナログデジタルコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
コンパレータ回路は,2つの入力電圧を比較し,それらの微少な電圧差を増幅し,比較結果を出力する。特に,正帰還回路を内蔵するラッチコンパレータ回路は,正帰還回路により高速に増幅動作を行うことができる。
【0003】
このようなコンパレータ回路は,様々な回路に内蔵される。たとえば,アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するアナログデジタルコンバータ(以下ADCと称する。)は,サンプルホールドしたアナログ入力電圧と基準電圧とを比較して各ビットを判定するコンパレータ回路を内蔵する。デジタル出力信号の複数ビットを逐次検出する逐次比較型ADCは,コンパレータ回路が判定動作を複数回おこなうため,コンパレータ回路の動作速度がADCの変換速度に影響する。
【0004】
逐次比較型ADCについては,例えば,特許文献1,2などに記載されている。
【0005】
逐次比較型ADCは,コンパレータ回路が,一定の周期でサンプルホールドされるアナログ入力電圧を,デジタル出力のビット数の回数,アナログ入力電圧と判定電圧との判定動作を繰り返す。逐次比較型ADCは,ホールド周期をビット数で除算した判定周期でこの判定動作を繰り返す同期式逐次比較型ADCと,各ビットの判定動作が終了するたびに次のビットの判定動作を開始する非同期式逐次比較型ADCとに分類される。
【0006】
非同期式の逐次比較型ADCについては,例えば非特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平8−107354号公報
【特許文献2】特開2002−26731号公報
【非特許文献1】A 6-bit 600-MS/s 5.3mW Asynchronous ADC in 0.13-um CMOS”, S-W. M. Chen et al., IEEE JSSC, Dec. 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同期式の逐次比較型ADCは,コンパレータ回路は一定の周期で動作する。その周期は,コンパレータ回路の判定動作に必要な時間に基づいて決定される。コンパレータ回路の判定動作は,微小な電圧差の判定になるほど長い時間を要する。よって,比較動作周期はある程度の微小な電圧差を判定するために必要な時間を見込んで設定するため,ADCの動作速度は遅くなりがちである。一方,非同期式の逐次比較型ADCでは,コンパレータ回路の動作は一定の周期ではなく,ある判定が完了すると即座に次の判定に移行する。電圧差が大きいほどコンパレータ回路の判定動作は短時間で完了するので,その分同期式に比べてADCの動作速度は速くなる。しかし,判定完了を受けて動作するため,電圧差が微小になるとホールド周期内で判定が完了しない場合がある。これがADCの途中のビット判定時に生じると,それ以下のビット判定はなされず,デジタル出力信号は大きな誤差を含むことになる。なお,同期式では必ず全ビットの判定が行われるため、この誤差は小さくなる。
【0008】
上記のように,同期式,非同期式にかかわらず,逐次比較型ADCは,コンパレータ回路の判定時間が変換速度に影響するので,コンパレータ回路の判定時間を短縮することが,変換速度の向上には重要である。特に,ADCがより高い分解能を必要とする場合や,低電源電圧化により信号振幅が小さくなる場合は,コンパレータ回路の入力電圧の差がさらに小さくなり,コンパレータ回路の判定時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コンパレータ回路は,入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力する。そして,コンパレータ回路は,前記入力信号と第1の比較値とを比較し判定結果を有する第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し判定結果を有する第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,前記第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有する。
【発明の効果】
【0010】
コンパレータ回路の判定動作時間が短くなり,それを利用したADCは変換時間が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0012】
図1は,コンパレータ回路の構成と動作を示す図である。図1(A)は,コンパレータ回路の構成図を示している。コンパレータ回路COMPは,第1の入力信号Vi1をゲートに入力し第1の出力端子Vq1に第1の電流I1を供給する第1のPチャネルトランジスタP1と,判定値または比較値である第2の入力信号Vi2をゲートに入力し第2の出力端子Vq2に第2の電流I2を供給する第2のPチャネルトランジスタP2とを有する。これらのトランジスタP1,P2のソースは電源Vccに接続されている。また,コンパレータ回路は,第1及び第2の電流I1,I2による第1及び第2の出力端子Vq1,Vq2の電位差に応じて,第1及び第2の出力端子の電位差を増幅する増幅回路とを有する。この増幅回路は,ゲートとドレインが交差接続されたPチャネルトランジスタP3,P4と,ゲートとドレインが交差接続されたNチャネルトランジスタN5,N6とを有し,ラッチ機能を有する。したがって,図1のコンパレータ回路は,ラッチコンパレータとも称される。
【0013】
さらに,コンパレータ回路は,リセット動作時にオンになり第1及び第2の出力端子をグランドGND電位にするスイッチ対SW1,SW2を有する。図1(A)の左側のリセット動作時はスイッチSW1,SW2がオン状態になり,図1(A)の右側の判定動作時はスイッチSW1,SW2がオフ状態になる。
【0014】
図1(B)はコンパレータ回路の動作を示している。リセット動作期間Resetでは,制御クロックΦc=1となり,両出力端子Vq1,Vq2は共にグランド電位になっている。判定動作期間Comp1,2では,制御クロックΦc=0となり,両出力端子Vq1,Vq2はグランドから切り離される。そして,トランジスタP1,P2が,入力信号Vi1,Vi2の電位差に応じて第1,第2の電流I1,I2を生成する。リセット時に両出力端子Vq1,Vq2は共にグランド(Lレベル)にされトランジスタP3,P4は導通状態であり,第1,第2の電流I1,I2により両出力端子Vq1,Vq2の電位が上昇する。この電位上昇の傾きは第1,第2の電流I1,I2の電流差に比例する。そして,両出力端子Vq1,Vq2の電位差がある値以上になると,トランジスタP3,P4のいずれか一方が強く導通し,トランジスタN5,N6のいずれか他方が強く導通し,これらのトランジスタからなる増幅回路が出力端子Vq1,Vq2の電位を電源VccのHレベルかグランドGNDのLレベルかに引き上げまたは引き下げてラッチし,判定動作を完了する。このように,判定動作が完了すると出力端子Vq1,Vq2の電位はHレベルとLレベルになる。
【0015】
図1(B)の判定動作Comp1では,入力信号Vi1,Vi2の電位差が比較的小さく,両出力端子Vq1,Vq2がH,Lレベルになる判定動作完了まで比較的長い時間を要している。それに対して,図1(B)の判定動作Comp2では,入力信号Vi1,Vi2の電位差が比較的大きく,比較的短い時間で判定動作が完了している。
【0016】
図2は,コンパレータ回路の判定動作を示す図である。図2(A)は,入力信号Vi1,Vi2の電位差が大きく,第1の電流I1が第2の電流I2より十分に大きい(I1>>I2)例である。I1>>I2であるため,出力端子Vq1,Vq2の電位差は短時間で大きくなり,増幅回路のラッチ動作により出力端子Vq1,Vq2の電圧は短い判定時間JTimeでHレベルとLレベルになる。一方,図2(B)は,入力信号Vi1,Vi2の電位差が微少で,第1,第2の電流I1,I2がほぼ等しい例である。第1,第2の電流I1,I2がほぼ等しいため,出力端子Vq1,Vq2の電位差はなかなか大きくならず,増幅回路のラッチ動作まで長い時間を要する。そのため,判定時間JTimeは長くなる。
【0017】
ラッチ機能付きのコンパレータ回路は,図1の例以外に,トランジスタP3,P4,N5,N6からなる増幅回路が,トランジスタP1,P2からなる差動回路の出力を入力し,増幅する構成でもよい。
【0018】
図3は,同期式の逐次比較型ADCを示す図である。図3(A)はADCの構成図を示している。このADCは,アナログ入力信号AinをサンプルクロックΦsに同期してサンプルホールドするサンプルホールド回路SHと,判定クロックΦcに同期して,ホールドされた入力電圧Vaと判定電圧Vcとを比較し入力電圧Vaが判定電圧Vcより大きいか小さいかの判定結果を示す判定信号Vqを生成するコンパレータ回路COMPとを有する。さらに,ADCは,判定クロックΦcに同期して,判定信号Vqを逐次保存しデジタル出力信号Doutとして出力するSARロジック回路(Successive Approximation Register Logic Circuit)10と,判定結果に応じてSARロジック回路10により生成されるデジタル入力信号DIに応じて判定電圧Vcを生成する判定電圧生成ユニット12とを有する。このSARロジック回路10は,判定信号Vqを逐次保存するレジスタと,デジタル入力信号DIを生成する論理回路とを有する。また,判定電圧生成ユニット12は,デジタル入力信号DIをアナログの判定電圧Vcに変換するデジタルアナログコンバータ(DAC)である。
【0019】
図3(B)はサンプルクロックΦsと判定クロックΦcとの関係を示す。サンプルクロックΦcは,サンプル周波数fsの逆数の周期1/fsで生成され,サンプルホールド回路SHは,このサンプルクロックΦcに同期してアナログ入力Ainをサンプリングしホールドする。一方,判定クロックΦcは,サンプル周波数fsのn倍の周波数n*fsの逆数の周期1/n*fsで生成される。この判定クロックΦcの周期または周波数は,サンプルクロックΦsとデジタル出力信号Doutのビット数nに依存した関係を有する。
【0020】
図3(C)に示されるとおり,判定クロックΦcに同期して,判定電圧生成ユニット12が判定電圧Vcを生成し,コンパレータ回路COMPが入力電圧Vaが判定電圧Vcより大きいか小さいかを判定し,判定信号Vq=「1011」を生成する。各ビットの判定結果に応じて,SARロジック回路10がデジタル入力信号DIを生成し,それに基づいて判定電圧生成ユニット12が判定電圧VcをVR/2,3VR/4,5VR/8と変更する。nビット全て判定が完了すると,SARロジック回路10はnビットのデジタル出力信号Doutを出力する。なお,ここでVRはAD変換のフルスケール電圧である。
【0021】
同期式の逐次比較型ADCは,判定クロックΦc及びサンプルクロックΦsに同期して変換動作を行うが,これらのクロック周期は,コンパレータ回路COMPの最長判定時間に基づいて設定される。よって,コンパレータ回路の判定時間が短ければADCの変換動作時間を短くすることができる。
【0022】
図4は,非同期式の逐次比較型ADCを示す図である。図4(A)はADCの構成図を示している。このADCは,図3の同期式と同様に,サンプルホールド回路SHと,コンパレータ回路COMPと,SARロジック回路10と,判定電圧生成ユニット12とを有する。ただし,図3の同期式と異なり,タイミング生成回路14が,コンパレータ回路COMPの判定完了に伴い生成される判定信号Vqに応答して,判定クロックΦqを生成する。つまり,非同期式のADCは,コンパレータ回路によるビット判定完了というイベントに応答して次の判定クロックΦcが生成されビット判定が行われるイベントドリブン型である。
【0023】
図4(B)はサンプルクロックΦsと判定クロックΦqとの関係を示す。図3と同様に,サンプルクロックΦcは,サンプル周波数fsの逆数の周期1/fsで生成され,サンプルホールド回路SHは,このサンプルクロックΦcに同期してアナログ入力Ainをサンプリングしホールドする。一方,判定クロックΦqは,ビット判定時間JTimeに依存したLレベルの期間(判定期間)を有する。よって,ビット判定時間JTimeは,上位ビットでは短く,下位ビットになるにしたがってだんだん長くなる。
【0024】
図4の非同期式の逐次比較型ADCは,サンプリングクロックΦsの周期1/fs内にNビットのビット判定を完了することが求められる。しかし,上記の通りイベントドリブン型であり,アナログ入力電圧の値によってはビット判定がホールド周期内に完了せず,その結果,SARロジック回路10内のレジスタのあるビット以下の値が初期値のまま出力される場合がある。この場合,デジタル出力信号Doutの精度は低くなる。よって,非同期式のADCでも,コンパレータ回路の判定時間を短くすることが要求される。
【0025】
図5は,本実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。このコンパレータ回路COMPは,入力信号Vaが判定値Vrより大きいか小さいかを示す判定信号Voを出力する。そして,コンパレータ回路は,入力信号Vaと第1の比較値Vr+V1とを比較し判定結果を有する第1の判定信号Vq1,Vq1bを生成する第1のコンパレータCOMP1と,入力信号Vaと,第1の比較値と異なる第2の比較値Vr+V2とを比較し判定結果を有する第2の判定信号Vq2,Vq2bを生成する第2のコンパレータCOMP2と,第1及び第2の判定信号のうちいずれが先に生成されたかを検出し,先に生成された信号を選択して判定信号Voとして出力する出力選択回路16とを有する。
【0026】
図6は,本実施の形態におけるコンパレータ回路の動作を説明する図である。図6(A)は,図1に示したコンパレータ回路の入力電圧Va(図1ではVi1)と判定値Vth(図1ではVi2)との比較による判定時間JTimeを示す。横軸が入力電圧Va,縦軸が判定時間JTimeである。前述のとおり,コンパレータ回路は,入力電圧Vaが判定値Vthより十分に小さいまたは大きいと判定時間JTimeは短いが,一方で,入力電圧Vaが判定値Vthに近づくにつれて判定時間JTimeは長くなる。
【0027】
図6(B)は図5のコンパレータ回路の判定時間を示す。図5のコンパレータ回路は,入力電圧Vaと,比較値Vth1=Vr+V1,Vth2=Vr+V2とをそれぞれ比較して判定する第1,第2のコンパレータCOMP1,COMP2とを有する。第1,第2のコンパレータCOMP1,COMP2が生成する第1,第2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間は,図6(B)の破線に示すとおりである。そして,出力選択回路16が,第1,第2の判定信号Vq1,Vq2のうち先に生成される信号を判定し,その信号を選択し判定信号Voとして出力する。つまり,出力選択回路16は,2つのコンパレータCOMP1,2のうち,先に判定が完了した判定信号を検出し,それを選択して判定信号Voとして出力する。出力回路の構成は後述する。
【0028】
図6(B)において,第1の判定信号Vq1は,入力電圧Vaが第1の比較値Vth1より低ければ「0」高ければ「1」になるが,第2の判定信号Vq2は,入力電圧Vaが第2の比較値Vth2より低ければ「0」高ければ「1」になる。そして,出力選択回路16は,判定時間JTimeが短いほうの判定信号Vq1,Vq2を選択して判定信号Qoとして出力する。その結果,判定信号Voの判定結果は,第1,第2の比較値Vth1,Vth2の中点の理想判定値Vthidealを境にして,下線で示すとおり「0」と「1」になる。しかも,判定信号Qoの判定時間JTimeは,図6(B)中太線で示されるとおり,第1,第2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間よりも短くなる。
【0029】
図5のコンパレータ回路COMPは,第1のコンパレータCOMP1の比較電圧Vth1は,判定電圧Vrにずれ値V1を加えたVth1=Vr+V1であり,第2のコンパレータCOMP2の比較電圧Vth2は,判定電圧Vrにずれ値V2を加えたVth2=Vr+V2である。コンパレータ回路が理想的な判定値Vthidealで入力電圧Vaを判定するためには,Vr=Vthideal,V1=−V2であることが望ましい。つまり,Vth1=Vr+dV,Vth2=Vr−dVであれば,図6(B)に示すとおり,コンパレータ回路は,理想的な判定値Vthidealに基づく判定信号Qoを生成することができる。
【0030】
図5では,第1,第2の比較電圧Vth1,Vth2は,図中の加算器により生成されている。それ以外の方法としては,両コンパレータCOMP1,2に同じ判定電圧Vrを比較値として与え,コンパレータCOMP1のトランジスタP1のサイズをP2より大きくし,逆にコンパレータCOMP2のトランジスタP1のサイズをP2より小さくし,実質的に両コンパレータCOMP1,2の判定レベルを異ならせることでもよい。
【0031】
図7は,本実施の形態における同期式の逐次比較型ADCの構成図である。このADCは,図3のADCのコンパレータ回路COMPの代わりに,図5のコンパレータ回路COMPを有する。すなわち,コンパレータ回路COMPは,2つのコンパレータCOMP1,2と,出力選択回路16とからなる。出力選択回路16は,前述のとおり,両判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bからいずれのコンパレータが先に判定結果を生成したかを検出し,先に生成された信号を選択して出力する。この同期式の逐次比較型ADCは,判定クロックΦcに同期して2つのコンパレータCOMP1,2が入力電圧Vaをそれぞれ異なる比較電圧に基づいて比較・判定動作を行う。コンパレータ回路COMPの判定時間が短くなっているので,判定クロックΦcの周期を短くでき,ADCの変換時間も短くなる。
【0032】
図8は,本実施の形態における非同期式の逐次比較型ADCの構成図である。このADCは,図4のADCのコンパレータ回路COMPの代わりに,図5のコンパレータ回路COMPを有する。すなわち,コンパレータ回路COMPは,2つのコンパレータCOMP1,2と,出力選択回路16とからなる。出力選択回路16は,図7と同様に,両判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bからいずれのコンパレータが先に判定結果を生成したかを検出し,先に生成された信号を選択して出力する。
【0033】
そして,この非同期式の逐次比較型ADCでは,出力選択回路16が,判定信号Voを出力するタイミングで,判定クロックΦqを両コンパレータCOMP1,2に供給する。また,出力選択回路16は,判定クロックΦqの出力と共に,SARロジック回路10に出力Voを取り込む制御信号Φrを出力する。
【0034】
図8の例では,コンパレータ回路COMPの判定時間が短くなっている分,ADCの変換時間も短くなる。または,ADCはサンプルクロックΦsの周期内にNビットの判定動作を完了することができ,デジタル出力信号Doutの精度を高くすることができる。
【0035】
図9は,図8の非同期式の逐次比較型ADCの動作を示すタイミング波形図である。時間t0でサンプルクロックΦsがHレベルになり,それに応答してサンプルホールド回路SHがアナログ入力信号Ainをサンプリングする。時間t1からのホールド期間中に,コンパレータ回路COMPがホールドした入力電圧Vaと判定値との判定動作をビット数の回数繰り返す。図9では2回の判定動作が示されている。
【0036】
時間t1で判定クロックΦqはHレベルになり,2つのコンパレータCOMP1,2はリセット動作を行う。そして,時間t2で判定クロックΦqがLレベルになり,2つのコンパレータCOMP1,2は判定動作を行う。この例では,第1の判定信号Vq1/Vq1bが第2の判定信号Vq2/Vq2bよりも先にH,Lレベルになっている。つまり,第1のコンパレータCOMP1の判定結果が第2のコンパレータCOMP2の判定結果よりも早く生成されている。その結果,出力選択回路16は,第1の判定信号Vq1を選択して,判定信号Voとして出力する。
【0037】
出力選択回路16は,この判定信号Voの出力に同期して制御クロックΦqibを生成し,それから一定時間遅延後に判定クロックΦqをHレベルに立ち上げる。その結果,時間t3から両コンパレータCOMP1,2はリセット動作を行い,その間にSARロジック回路10が判定結果Voに応じてデジタル入力DIを出力し,比較値生成ユニット12に判定電圧Vcを変更させる。
【0038】
そして,時間t4で判定クロックΦqがLレベルに立ち下がり,両コンパレータCOMP1,2は判定動作を行う。このときは,第2の判定信号Vq2/Vq2bが第1の判定信号Vq1/Vq1bよりも先にH,Lレベルになっている。つまり,第2のコンパレータCOMP2の判定結果が第1のコンパレータCOMP1の判定結果よりも早く生成され,出力選択回路16は,第2の判定信号Vq2を選択して,判定信号Voとして出力する。
【0039】
前述と同様に,出力選択回路16は,判定信号Voの出力に同期して制御クロックΦqibを生成し,それから一定時間遅延後に判定クロックΦqをHレベルに立ち上げる。その結果,時間t5から両コンパレータCOMP1,2はリセット動作を行い,その間にSARロジック回路10が判定結果Voに応じてデジタル入力DIを出力し,比較値生成ユニット12に判定電圧Vcを変更させる。以降,同様にしてビット判定動作が繰り返される。
【0040】
図10は,出力選択回路の構成図である。出力選択回路16は,2つのコンパレータCOMP1,2の差動の判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bがH,LまたはL,Hレベルになったことを検出する判定完了検出部161と,いずれの判定信号が先に判定を完了したかを検出する判定完了順序検出部162と,先に判定が完了したほうの判定信号Vq1,Vq2を選択する出力選別部163とを有する。
【0041】
判定完了検出部161は,第1の判定信号Vq1/Vq1bを入力する第1のENORゲート20と,第2の判定信号Vq2/Vq2bを入力する第2のENORゲート21とを有する。これらのENOR回路は,差動の判定信号がH,LまたはL,Hになると,Lレベルを出力する。判定完了順序検出部162は,フリップフロップFF1,FF2を有する。そして,出力選別部163は,2つのスイッチS1,S2を有する。
【0042】
図11は,出力選択回路16の動作を示すタイミング波形図である。図11を参照して図10の出力選択回路の動作を説明する。
【0043】
コンパレータがリセットされた状態では,第1,第2の判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bは全てLレベルで,ENORゲート20,21の出力A1,A2は共にHレベルである。そのため,NORゲート22,23の出力M1,M2は共にLレベルである。また,フリップフロップFF1,FF2はリセット状態になりそれらの出力B1,B2はLレベルである。よって,出力Voは高インピーダンスHi−Z状態にあり,EORゲート25の出力である制御信号ΦqiはLである。
【0044】
図11の例では,第1のコンパレータの判定が先に完了し,判定信号Vq1,Vq1bが先にH,LまたはL,Hレベルになっている。これに応答して,ENORゲート20の出力がLレベルになり,NORゲート22の出力M1がHレベルになる。これに応答して,フリップフロップFF1が電源Vdd=Hを取り込んで出力Q(B1)をHレベルにする。これにより,スイッチS1がオンして,第1の判定信号Vq1が選択されて出力Voとなる。また,EORゲート25の入力がH,Lレベルとなり,制御信号ΦqiはHレベルになり,NORゲート22,23の出力をLレベルに固定し,その後の第2の判定信号Vq2,Vq2bがH,LレベルになってもそれがフリップフロップFF2に伝達されることはない。そして,遅延回路DELAYによる遅延後に制御信号ΦqidがHレベルになり,両フリップフロップFF1,FF2をリセットし,信号B1,B2は共にLレベルになり,スイッチS1,S2はオフ状態になり,出力Voは高インピーダンス状態になる。また,EORゲート25の出力であるΦqiは再びLレベルになる。
【0045】
この制御信号Φqiは,図示されていないが,反転され遅延されて制御信号Φqになり,図8に示したようにコンパレータCOMP1,2をリセットする。その結果,ENORゲート20,21の出力A1,A2はHレベルにされる。
【0046】
以上のように,出力選択回路16は,第1,第2のコンパレータCOMP1,2のうち先に判定信号をH,LまたはL,Hにしたことを検出し,検出した判定信号Vq1,Vq2を選択して出力する。そして,検出した判定信号を出力したあとに,制御信号ΦqiをLレベルにして,図8のようにコンパレータCOMP1,2をリセットする。
【0047】
図12は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。コンパレータ回路COMPは,第1,第2のコンパレータCOMP1,2と,それらの判定信号Vq1/Vq1b,Vq2/Vq2bを遅延させる第1,第2の遅延回路delay1,2と,遅延回路で遅延した遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdのうち先に判定結果を示すレベルになったほうを選択し,判定出力Voとして出力する出力選択回路16とを有する。
【0048】
この遅延回路delay1,2を設け,それらの遅延時間を個別に制御する遅延制御信号TC1,TC2により遅延時間を調整することで,第1に,コンパレータCOMP1,2のオフセット特性を修正して,コンパレータ回路COMPが理想的な判定値との比較結果を出力することができる。第2に,コンパレータCOMP1,2の比較値Vr+V1,Vr+V2の値にかかわらず,コンパレータ回路COMPの判定値を任意の値に設定することができる。
【0049】
図13は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の動作原理図である。図13(A)に示されるとおり,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の比較値にVthideal+dVとVthideal-dVとが入力されている場合,コンパレータ回路COMPはそれら比較値の中間の理想的な判定値Vthidealに基づいて入力電圧Vaを判定する。したがって,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の判定信号Vq1,Vq2の判定時間JTimeは,図示されるとおりである。
【0050】
しかし,第1のコンパレータCOMP1にオフセットOffsetが含まれる場合,その判定信号はVq1(Offset)のようになる。その結果,コンパレータ回路COMPは,Vq1(Offset)とVq2で示した判定時間のうち早いほうを選択して出力するので,その判定レベルVth(Offset)は,Vthideal+dV+OffsetとVthideal-dVの中間値になり,理想的な判定値Vthidealからずれてしまう。このようなずれは,コンパレータ回路COMPをADCに使用した場合にDNL(Differential Non-Linearity)の原因になる。
【0051】
そこで,図12の遅延回路delay1の遅延時間を調整して,遅延された第1の判定信号Vq1dの実質的な判定時間を第2の判定信号Vq2に比較して長くする。その結果,図13(B)に示されるとおり,Vq1dとVq2で示された判定時間JTimeは,理想的な判定値Vthidealで交差する。つまり,遅延回路delay1,2で遅延量を調整すれば,各コンパレータCOMP1,2のオフセットを校正して,コンパレータ回路COMPの判定値を理想的な値Vthidealに修正することができる。
【0052】
図14は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の動作原理図である。図14(A)に示されるとおり,第1のコンパレータCOMP1の比較値はVr+V1に,第2のコンパレータCOMP2の比較値はVr+V2に設定されている。これにより,両コンパレータCOMP1,2が共にオフセットを有しない場合には,コンパレータ回路COMPの判定値は,両比較値の中間値Vthになる。この中間値Vthが理想的な判定値Vthidealよりずれていると,図13と同様にDNLの原因になる。
【0053】
そこで,図14(B)に示されるとおり,図12の遅延回路delay1の遅延時間を調整して,遅延された第1の判定信号Vq1dの判定時間JTimeを長く調整することで,Vq1dとVq2で示された判定時間の交点を理想的な判定値Vthidealに一致させることができる。つまり,第1,第2のコンパレータCOMP1,2の比較値を任意の値にしても,遅延回路の遅延時間を調整することで,コンパレータの判定値を理想的な値にすることができる。この場合,各コンパレータCOMP1,2のオフセット特性を気にする必要はない。
【0054】
図13,14の原理図に示された理想の判定値Vthidealに調整する方法は,次のとおりである。すなわち,図12において,入力電圧Vaとして理想の判定値Vthidealを入力し,第1,第2の遅延された遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdの判定完了時間が一致するように,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2により調整する。
【0055】
図15は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の構成図である。図12と異なるところは,出力選択回路16の出力Voに基づいて遅延制御信号TC1,TC2を調整する遅延量調整回路18が設けられていることである。それ以外は,図12と同じである。この遅延量調整回路18は,自動的に遅延制御信号TCq,TC2を調整して,コンパレータ回路COMPの判定値が理想値Vthidealと一致するように校正することができる。図12の例では,遅延制御信号TC1,TC2は,試験装置などの外部回路から供給されてもよい。
【0056】
図16は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の自動校正動作を示すタイミング波形図である。まず,図15に示されるとおり入力電圧Vaを理想的判定値Vthidealにする。そして,遅延量調整回路18が,出力選択回路16の出力Voの値を監視しながら,第1,第2の遅延回路delay1,2のいずれかの遅延量を遅延制御信号TC1,TC2により調整し,出力Voが1から0,または0から1に変化する時を検出する。
【0057】
まず,遅延制御信号TC1,TC2は初期状態とする。その状態で,時間t1では,第1の判定信号Vq1,Vq1bのほうが先に判定結果状態になり,出力VoはVq1=0になる。そこで,遅延量調整回路18は,遅延制御信号TC1を変更して第1の遅延回路delay1の遅延量を単位時間だけ増加させる。その結果,図13(B),図14(B)のdelay1に示されるように第1の判定信号VCq1,Vq1b側の判定時間が長くなる。その状態で,時間t2でも,時間t1と同様の結果になり,出力VoはVq1=0になる。したがって,遅延量調整回路18は,再度遅延制御信号TC1を変更して第1の遅延回路delay1の遅延量を単位時間だけ増加させる。
【0058】
この状態で,時間t3では,第2の判定信号Vq2,Vq2bのほうが先に判定結果状態になり,出力VoはVq2=1になる。つまり,出力Voのレベルが反転する。したがって,この遅延状態が,第1,第2の遅延判定信号Vq1d/Vq1bd,Vq2d/Vq2bdの判定時間がほぼ一致する状態である。そこで,この時の遅延制御信号TC1,TC2が遅延回路delay1,2に設定される。または,時間t2での遅延制御信号TC1,TC2に設定されてもよい。
【0059】
図17は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用したADCの構成図である。このADCは,同期式の逐次比較型ADCである。図7のADCと比較すると,コンパレータCOMP1,2と出力選択回路16との間に遅延回路delay1,2が設けられている。それ以外の構成は,図7と同じである。前述のとおり,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2で調整することで,コンパレータCOMP1,2のオフセットによる判定値の誤差を修正することができる。または,遅延回路delay1,2の遅延時間を遅延制御信号TC1,TC2で調整することで,電圧V1,V2にかかわらず,所望の判定値に調整することができる。
【0060】
図18は,第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用した別のADCの構成図である。このADCは,非同期式の逐次比較型ADCである。図8のADCと比較すると,コンパレータCOMP1,2と出力選択回路16との間に遅延回路delay1,2が設けられている。それ以外の構成は,図8と同じである。遅延回路delay1,2を設けたことによる作用効果は,図17と同じである。
【0061】
図17,図18のADCにおいて,遅延回路delay1,2の遅延時間を前述のとおり適切に調整することで,ADCのDNLを抑制することができる。
【0062】
図19は,遅延回路delay1,2の構成図である。遅延回路は,複数のインバータを有する遅延ユニットD0,D1〜Dnと,遅延ユニットのいずれかの出力を選択して出力するセレクタSELとを有する。このセレクタSELは,遅延制御信号TC1,TC2により選択される。
【0063】
以上の実施の形態において,ADCは,コンパレータ回路がサンプルホールドした入力電圧Vaと判定値生成ユニット12により生成される判定値とを比較している。しかし,これ以外の構成のADCとして,デジタルアナログコンバータDACからなる判定電圧値成ユニット12が,サンプルホールドしたアナログ入力電圧をホールドし,その後,判定結果に応じてSARロジック回路10により生成されるデジタル入力信号DIに応じてホールドした入力電圧を変更し,その変更された電圧をコンパレータが基準値Vthと比較して判定する構成にしてもよい。かかるADCは,例えば,非特許文献のJens Sauerbrey, Doris Schmitt-Landsiedel, Roland Thewes; A 0.5V, 1μW successive approximation ADC, Proceedings of the 28th European Solid-State Circuits Conference, September 2002.のFig.2に記載されている。ここで使用されている判定電圧値生成ユニットは,最初にホールドしたアナログ入力電圧による電荷をデジタル入力信号DIに応じて再分配する電荷分配型ADCである。
【0064】
以上,本実施の形態におけるコンパレータ回路は,入力電圧にかかわらずある程度の短い時間で判定動作を完了することができる。よって,そのコンパレータ回路を有する逐次比較型ADCの変換時間も短くすることができる。
【0065】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0066】
(付記1)
入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力するコンパレータ回路において、
前記入力信号と第1の比較値とを比較し第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,
前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,
前記第1及び第2の判定信号のうち先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0067】
(付記2)
付記1において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【0068】
(付記3)
付記1において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号のいずれかが判定結果の値に変化したことに応答して,当該判定結果の値に変化した第1または第2の判定信号を選択して出力することを特徴とするコンパレータ回路。
【0069】
(付記4)
付記1または3において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力することを特徴とするコンパレータ回路。
【0070】
(付記5)
付記1において,
前記第1,第2のコンパレータは,それぞれ,
前記入力信号をゲートに入力し第1の出力端子に第1の電流を供給する第1のトランジスタと,前記第1又は第2の比較値をゲートに入力し第2の出力端子に第2の電流を供給する第2のトランジスタと,前記第1及び第2の出力端子の前記第1及び第2の電流による電位差に応じて前記第1及び第2の出力端子の電位差を増幅する増幅回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0071】
(付記6)
付記5において,
前記増幅回路は,前記第1及び第2の出力端子の電位をHレベルとLレベルとにラッチすることを特徴とするコンパレータ回路。
【0072】
(付記7)
付記1において,
さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように遅延時間が設定されることを特徴とするコンパレータ回路。
【0073】
(付記8)
付記7において,
さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかを検出し、検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とするコンパレータ回路。
【0074】
(付記9)
付記7または8において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【0075】
(付記10)
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する逐次比較型アナログデジタルコンバータにおいて,
付記1に記載のコンパレータ回路と,
前記コンパレータ回路が出力する前記判定信号を逐次記憶し前記デジタル出力信号を出力するレジスタ回路と,
前記判定信号の判定結果に応じて,前記第1及び第2の比較値を逐次生成する比較値生成ユニットとを有し,
前記デジタル出力信号のビット数の回数,前記コンパレータ回路が前記判定信号を逐次出力することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0076】
(付記11)
付記10において,
前記アナログ入力信号が前記コンパレータ回路に前記入力信号として入力され,
前記比較値生成ユニットは,前記判定信号の判定結果に応じて前記判定値を生成する判定値生成回路を有し,前記判定値に第1及び第2のずれ値を加算して前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0077】
(付記12)
付記10または11において,
前記コンパレータは,判定クロックに同期して,リセット動作と判定動作とを繰り返すことを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0078】
(付記13)
付記10または11において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力し,
前記コンパレータは,前記判定終了信号に応答して,リセット動作と判定動作とを行い,
前記比較値生成ユニットは,前記判定終了信号に応答して,前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0079】
(付記14)
付記10または11において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように前記遅延の時間が設定されることを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【0080】
(付記15)
付記14において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかの検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】コンパレータ回路の構成と動作を示す図である。
【図2】コンパレータ回路の判定動作を示す図である。
【図3】同期式の逐次比較型ADCを示す図である。
【図4】非同期式の逐次比較型ADCを示す図である。
【図5】本実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。
【図6】本実施の形態におけるコンパレータ回路の動作を説明する図である。
【図7】本実施の形態における同期式の逐次比較型ADCの構成図である。
【図8】本実施の形態における非同期式の逐次比較型ADCの構成図である。
【図9】図8の非同期式の逐次比較型ADCの動作を示すタイミング波形図である。
【図10】出力選択回路の構成図である。
【図11】出力選択回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図12】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の構成図である。
【図13】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の動作原理図である。
【図14】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の動作原理図である。
【図15】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の別の構成図である。
【図16】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路の自動校正動作を示すタイミング波形図である。
【図17】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用したADCの構成図である。
【図18】第2の実施の形態におけるコンパレータ回路を使用した別のADCの構成図である。
【図19】遅延回路delay1,2の構成図である。
【符号の説明】
【0082】
COMP:コンパレータ回路
COMP1,2:第1,第2のコンパレータ
Va:入力電圧
Vr+V1,Vr+V2:比較値
Vq1,Vq1b,Vq2,Vq2b:第1,第2の判定信号
16:出力選択回路
Vo:判定信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力するコンパレータ回路において,
前記入力信号と第1の比較値とを比較し第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,
前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,
前記第1及び第2の判定信号のうち先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項2】
請求項1において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項3】
請求項1において,
さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように遅延時間が設定されることを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項4】
請求項3において,
さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかを検出し,検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項5】
請求項3または4において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項6】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する逐次比較型アナログデジタルコンバータにおいて,
請求項1に記載のコンパレータ回路と,
前記コンパレータ回路が出力する前記判定信号を逐次記憶し前記デジタル出力信号を出力するレジスタ回路と,
前記判定信号の判定結果に応じて,前記第1及び第2の比較値を逐次生成する比較値生成ユニットとを有し,
前記デジタル出力信号のビット数の回数,前記コンパレータ回路が前記判定信号を逐次出力することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項7】
請求項6において,
前記アナログ入力信号が前記コンパレータ回路に前記入力信号として入力され,
前記比較値生成ユニットは,前記判定信号の判定結果に応じて前記判定値を生成する判定値生成回路を有し,前記判定値に第1及び第2のずれ値を加算して前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項8】
請求項6または7において,
前記コンパレータは,判定クロックに同期して,リセット動作と判定動作とを繰り返すことを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項9】
請求項6または7において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力し,
前記コンパレータは,前記判定終了信号に応答して,リセット動作と判定動作とを行い,
前記比較値生成ユニットは,前記判定終了信号に応答して,前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項10】
請求項6または7において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように前記遅延の時間が設定されることを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項1】
入力信号が判定値より大きいか小さいかを示す判定信号を出力するコンパレータ回路において,
前記入力信号と第1の比較値とを比較し第1の判定信号を生成する第1のコンパレータと,
前記入力信号と,前記第1の比較値と異なる第2の比較値とを比較し第2の判定信号を生成する第2のコンパレータと,
前記第1及び第2の判定信号のうち先に生成された信号を選択して前記判定信号として出力する出力選択回路とを有することを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項2】
請求項1において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項3】
請求項1において,
さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように遅延時間が設定されることを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項4】
請求項3において,
さらに,前記出力選択回路による第1または第2の判定信号のいずれが先に生成されたかを検出し,検出結果に応じて,前記第1及び第2の判定信号に対応する第1及び第2の遅延調整信号を前記遅延回路に供給する遅延量調整回路を有することを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項5】
請求項3または4において,
前記第1の比較値は前記判定値より所定のずれ値大きく,第2の比較値は前記判定値より前記所定のずれ値小さいことを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項6】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する逐次比較型アナログデジタルコンバータにおいて,
請求項1に記載のコンパレータ回路と,
前記コンパレータ回路が出力する前記判定信号を逐次記憶し前記デジタル出力信号を出力するレジスタ回路と,
前記判定信号の判定結果に応じて,前記第1及び第2の比較値を逐次生成する比較値生成ユニットとを有し,
前記デジタル出力信号のビット数の回数,前記コンパレータ回路が前記判定信号を逐次出力することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項7】
請求項6において,
前記アナログ入力信号が前記コンパレータ回路に前記入力信号として入力され,
前記比較値生成ユニットは,前記判定信号の判定結果に応じて前記判定値を生成する判定値生成回路を有し,前記判定値に第1及び第2のずれ値を加算して前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項8】
請求項6または7において,
前記コンパレータは,判定クロックに同期して,リセット動作と判定動作とを繰り返すことを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項9】
請求項6または7において,
前記出力選択回路は,前記第1または第2の判定信号の選択に応答して,判定終了信号を出力し,
前記コンパレータは,前記判定終了信号に応答して,リセット動作と判定動作とを行い,
前記比較値生成ユニットは,前記判定終了信号に応答して,前記第1及び第2の比較値を生成することを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【請求項10】
請求項6または7において,
前記コンパレータ回路は,さらに,前記第1の判定信号または第2の判定信号の少なくともいずれか一方を遅延して前記出力選択回路に供給する遅延回路を有し,
前記遅延回路は,前記入力信号に前記判定値が入力されたとき,前記第1及び第2の判定信号が前記出力選択回路に出力されるタイミングが一致するように前記遅延の時間が設定されることを特徴とする逐次比較型アナログデジタルコンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−45579(P2010−45579A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207942(P2008−207942)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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